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金属の性質

  • 水素脆性割れとは?原因と対策、ベーキング処理

    水素脆性割れとは、鋼材が水素を吸収することで靭性(粘り強さ)が低下して脆くなり、割れてしまう現象のことで、別名「水素脆化」とも呼ばれています。水素は、めっき・溶接・酸洗い・腐食などによって鋼材に吸収し、脆化を引き起こします。水素脆性は、HRC(ロックウェル硬さ)40以上・抗張力130kgf/mm2などの、高張力鋼や高強度鋼で発生しやすいとされています。低強度の鋼にはほとんど影響を与えないとされていますが、水素の吸収量が多いと発生することもあり、一概にこの鋼材なら安心と言えるものはありません。本記事では、このような水素脆性割れの原因と水素脆化割れの対策について解説します。水素脆性割れの原因水素を吸収することで脆化する原因は、「水素原子が集合することで分子になり内部圧力が上昇するため」や、「水素原子が鉄同士の結合を阻害して材料の強度を下げるため」などの説があるものの、はっきりとした原因は現状不明とされています。引用元:鍋屋バイテック会社また、水素脆性割れは、遅れ破壊も引き起こす可能性があります。遅れ破壊は、引張荷重がかかっている鋼材に塑性変形が見られないものの、応力が集中している部分にクラックが発生し、後に急速に破壊してしまう現象のことをいいます。遅れ破壊は、橋梁などの建築物に使われている高力ボルトに見られやすい現象です。水素脆性割れと遅れ破壊は、酸洗いやめっきなどの過程で水素を吸収している恐れがあるため、橋梁の現場などでは1本のボルトが遅れ破壊を起こすと、同じロットで製造されたものすべての点検および交換を必要とする場合があります。参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!参考:メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!水素脆性割れの対策、ベーキング処理水素脆性割れを防ぐには、ベーキング処理を行うのが有効です。ベーキング処理とは、綴りである「baking」の名前の通り、200℃程度の温度で8~24時間ほど加熱する脱水素処理のことをいいます。温度と加熱時間については、鋼材やめっき処理の内容によってさまざまです。例えば、高温にすることで硬度が低下する鋼材に対しては、高い温度での処理を避けなければなりません。その場合は、低い温度かつ長い時間をかけて処理します。めっき皮膜に厚みがあるものは、鋼材に吸収された水素が抜けにくくなるので、こちらも同様にベーキング処理の時間を長くする必要があります。そのほかにベーキング処理で注意しておくべきポイントとして、「めっき後すぐにベーキング処理をしなかった」、「ベーキングの効果が低い亜鉛めっき・光沢めっきを行った」、「酸洗いの時間が長い、または高濃度の処理液を使用し、多くの水素を吸収した」などの場合は、水素が抜けにくく、水素脆性割れが起こる場合もあります。ベーキング処理以外の対策としては、めっき工程において酸洗いを行う際、「低濃度の酸を使う」、「短時間で酸処理を終える」、「ショットブラストなどの機械的処理を利用して長時間の酸処理を避ける」といった方法も効果的です。

  • 応力腐食割れをわかりやすく!3要素と対策方法

    応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)とは、腐食環境下において、金属材料に引張応力が作用することで、材料に割れが生じる現象を指します。部品や機器の破損を引き起こすため、さまざまな事故の原因となります。また、応力腐食割れは、主にステンレス、炭素鋼、黄銅のような合金で発生しやすく、純金属ではほとんど発生しません。応力腐食割れのメカニズムと3要素応力腐食割れは、材料的因子・環境因子・力学的因子の3つの要素が揃った時に、発生します。つまり、応力腐食割れが発生するのは、特定の材料と環境の組み合わせにおいて、ある水準以上の引張応力の付加が継続的に存在する場合に限られます。応力腐食割れが発生するメカニズムとしては、何らかの環境因子によってまず金属表面に腐食が生じ、ここに引張応力が加わることで割れが生じます。環境因子、応力が継続して存在することで、材料の応力腐食割れはさらに進行します。図:応力腐食割れのメカニズムと模式図また、下表に応力腐食割れの原因となりやすい金属材料と環境の組み合わせについて示しました。<応力腐食割れを生じる金属と環境>金属原因物質環境の例炭素鋼NO3-高温NaNO3溶液OH- 高温高濃度NaOH溶液高張力鋼H2SH2S水溶液オーステナイト系ステンレス鋼CL-高温海水OH- 高温高濃度NaOH溶液ポリチオン酸硫化した後湿性環境にさらす高温水 沸騰水型原子炉の配管黄銅NH3 NH3を含む大気アミン アミン水溶液高力アルミ合金CL-海水高力チタン合金CL-海水、熱NaCL上表のような材料を特定の腐食環境下において使用し、かつ「引張応力」が加わると応力腐食割れが発生します。この引張応力には、使用時に加わる応力の他にも、機械加工や溶接、熱処理によって生じる残留応力があります。金属材料の最大引張強さの1/10程度の小さい引張応力でも、応力腐食割れの生じる原因となります。また、焼き入れ材料については、その焼き戻し温度によっても差があり、一般に降伏点の高い材料は応力腐食割れへの感受性が高いと言われています。ステンレスの応力腐食割れステンレス鋼の中でも、特にオーステナイト系ステンレス鋼において、応力腐食割れが発生しやすくなります。オーステナイト系ステンレス鋼では、溶接などによって高温下にさらされると、結晶粒界付近で炭素とクロムが結合し、クロム炭化物を生成します。このため、粒界近傍では、鋭敏化(結晶粒界に沿って耐食性の低下する劣化現象)した状態となり、応力腐食割れが発生しやすくなります。これを、粒界型応力腐食割れと言います。また、ステンレス鋼は、塩素雰囲気(塩化物水溶液や海水など)においても、応力腐食割れを起こしやすいため注意が必要です。炭素鋼の応力腐食割れ炭素鋼では、高温,高濃度の苛性アルカリ水溶液や硝酸塩水溶液などが存在する環境において、応力腐食割れが発生しやすくなります。銅の応力腐食割れ黄銅(銅-亜鉛合金)では、アンモニア雰囲気において応力腐食割れが発生しやすいとされています。応力腐食割れの対策応力腐食割れの対策としては、原因となる3つの要素(材料的因子・環境因子・力学的因子)の内、どれか一つの因子を取り除くことが有効となります。(1)材料的因子例えば、ステンレス鋼では、前述した通りオーステナイト系ステンレス鋼(SUS303、SUS304 など)では発生しやすいため、フェライト系ステンレス鋼(SUS403 など)に材料を変更することが有効です。また、オーステナイト系ステンレス鋼の中でも炭素の含有量を減らした極低炭素鋼に変更することも有効です。極低炭素鋼では、粒界付近でのクロム炭化物の析出が生じにくいため、応力腐食割れに強い特性を持ちます。極低炭素鋼には、SUS304L、SUS316L、SUS321、SUS347などが挙げられます。参考:SUS303(ステンレス鋼)規格、成分、機械的性質参考:SUS321(ステンレス鋼)組成、成分、機械的性質(2)環境因子材料をできるだけ腐食環境因子から遠ざけること、また材料に塗装などの表面処理を施すことで、環境因子との直接的な接触を遮断することも有効です。(3)力学的因子加工・組立て時には、最小の引張応力に抑えられるよう設計を行うこと、また残留応力を除去するために、加工成形後に応力除去熱処理を行うことが対策として挙げられます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!

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    【神戸で金属加工を依頼するなら】神戸の加工メーカー6選

    「神戸で優秀な金属加工メーカーを探しているが、どこに依頼すればいいのか分からない」「いまの取引先よりも製作のコストを抑えたい」「短納期かつ柔軟な対応できる身近な加工メーカーが知りたい」このような悩みをお持ちの方は必見です。加工メーカーによって、加工できる材質や加工方法などは異なります。そのため、金属加工メーカーへ依頼する際は、事前に情報を集めておくのが大切です。しかし、複数の加工メーカーの情報を集めていると、大きく時間がかかってしまうでしょう。そこで今回の記事では、神戸のおすすめ加工メーカー6選を厳選してご紹介します。神戸や近隣にお住まいの方は、ぜひ参考にしてみてください。藤井工作所(神戸市西区)高精度の切削加工と柔軟な対応力でどんな金属もお任せ引用元:藤井工作所①会社概要所在地:兵庫県神戸市西区白水2丁目16-15TEL:078-977-0370FAX:078-977-0371創業:1971年加工:マシニングセンター、フライス加工素材:銅、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮などHP:https://www.fujii-kousakusyo.com/②会社の紹介藤井工作所は、神戸市西区に位置する加工業者。薄板の小物から厚板の大きなサイズのものまで、幅広い対象を加工できます。材質も、鉄・アルミ・ステンレスといった一般的なものから、加工が難しいとされる銅にも対応可能。電化製品や、電源装置とった半導体部品の製作も多く受け持っていることもあり、高い精度での加工を実現しています。品質においても優れており、不良品を一切出していない点もポイント。単品・試作品から、大ロットまでの製造にも対応している点や、短納期対応が可能な点もメリットです。③製品事例1.銅のマシニング加工品2.アルミ製ハンバーグ用金型3.ステンレス製マシニング加工品株式会社小野製作所(神戸市長田区)少量から量産まで対応引用元:株式会社小野製作所①会社概要所在地:兵庫県神戸市長田区梅ケ香町2丁目1番31号(神戸機械センター内)TEL:078-682-4811FAX:078-682-4830創業:1953年加工:旋盤加工、フライス加工、マシニングセンター、表面処理など素材:鉄、ステンレス、アルミニウム、真鍮などHP:http://www.ono-seisaku.co.jp/②会社の紹介株式会社小野製作所は、神戸市長田区に位置する加工業者です。主に油圧・空圧・圧縮機・ブロアー機器などの精密部品をメインに加工。特にバーフィーダー(自動給材システム)によるバー材(棒材)や、比較的小型の部品製作を得意としています。また、株式会社小野製作所では、材料の手配から切削加工、表面処理までを一貫して対応。ワンストップで対応することで、コストの削減や納期の短縮を実現しています。試作品などの単品から大量生産まで対応が可能。小型部品の製作で困っている方におすすめの加工業者です。③製品事例1.チェックペンガイド(材質:S45C-H サイズ:幅17×長さ35mm)2.RVバルブシート(材質:C3604 サイズ:高さ38mm)3.ピン(材質:SUS304 サイズ:直径12×長さ15.8mm)株式会社田中鉄工所(神戸市兵庫区)神戸の精密機械加工なら引用元:株式会社田中鉄工所①会社概要所在地:兵庫県神戸市兵庫区駅前通2丁目2番3号TEL:078-579-8620FAX:078-579-8622設立:1938年加工:マシニングセンターHP:http://www.tanaka-iron.com②会社の紹介株式会社田中鉄工所は、神戸市兵庫区に位置する加工業者。主に産業用ロボットや医療機器といった精密加工部品を手がけています。立形・横形・5軸制御といった豊富な種類のマシニングセンターを所有し、多品種少量生産や高精度の大量生産といった、あらゆる条件に対応が可能。3次元測定器も導入しているので、品質面においても安心です。③製品事例1.産業用ロボット関連機器2.医療機器関連部品3.航空機器関連部品有限会社上原製作所(神戸市西区)少量・短納期の金属加工なら引用元:有限会社上原製作所①会社概要所在地:兵庫県神戸市西区南別府1丁目1033-9TEL:078-974-1673FAX:078-974-1684設立:1980年加工:プレス加工、旋盤加工、板金加工、機械加工、レーザー加工、トムソン加工など素材:鉄、アルミ、ステンレス、銅などHP:http://uehara-co.jp/index.html②会社の紹介有限会社上原製作所は、神戸市西区に位置する加工業者。創業時はパッキンメーカーから始まった企業ですが、現在ではプレス加工・レーザー加工・設計・組立など、総合プロデュース企業として運営しています。トムソン加工と呼ばれる、木型を使った打ち抜き加工技術を有しているのも特徴。トムソン加工は、シートやゴムパッキン、軟質素材などの加工に適しています。有限会社上原製作所は、少量・多品種・短納期を得意としているため、試作品を依頼したい方にもおすすめの加工業者です。③製品事例1.レーザー加工品(材質:SUS304 厚み:0.05mm)2.プレス・旋盤加工 Oリング(材質:CUP サイズ:外径188.7mm)3.機械加工 ジョイント部品(材質:SUS316L 表面処理:ヘアライン加工仕上げ)大熔工所(神戸市兵庫区)単品でもOK引用元:大熔工所①会社概要所在地:兵庫県神戸市兵庫区和田山通1丁目2-25TEL:078-652-0548FAX:078-652-0581創業:1970年加工:溶接加工、ろう付け素材:鉄、ステンレス、アルミ、銅などHP:http://www.daiyoko.com/②会社の紹介大熔工所は、神戸市兵庫区に位置する溶接加工専門の業者。ラックや船舶用ドレン溜めといった、大型の製品の加工に対応しています。製作依頼は単品からでも製作可能。企業からだけでなく、一般の方からの依頼も受け持っています。個人で金属加工を依頼したい方や、大型の製品を依頼したい方におすすめです。③製品事例1.アルミ製試作ロボット用パソコンラック2.船舶用ドレン溜め3.アルミ製自動車ルーフラック平井工作株式会社(神戸市 西区)大型の機械加工なら引用元: 平井工作株式会社①会社概要所在地:兵庫県神戸市西区神出町紫合399-1TEL:078-965-2378FAX:078-965-1227創業:1970年加工:プレス加工、レーザー加工、旋盤加工、マシニングセンター、溶接加工など素材:鉄、ステンレス、アルミ、銅などHP:http://www.hirai-kk.co.jp/②会社の紹介平井工作株式会社は、神戸市西区に位置する加工業者。大型の機械加工を得意とし、主にビル用建築金具・鉄道車両部品・産業用はかり部品などの製造を行っています。豊富なプレス加工機を有し、せん断・曲げ・絞りといった幅広い加工に対応可能。プレス加工用金型の設計および製作についても受け持っています。また、三次元測定器を使った製品の検査も行っており、高品質を実現。高品質な大型の製品を製作したい場合におすすめの加工業者です。③製品事例1.園芸用品向けプレス部品(材質:SPCE 厚み:2.3mm)2.輸送機器プレス部品(材質:SS400 厚み:6mm)3.ステンレスメッシュ品(材質:SUS304)神戸の金属加工依頼ならMitsuri今回は神戸のおすすめ金属加工業者を6社紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。加工業者ごとに保有する設備や加工技術、ノウハウなどは異なります。そのため、得意とする分野もさまざま。例えば、今回ご紹介した加工業者のなかに、溶接を専門とする業者があったように、依頼する際は事前に加工業者の情報を確認しておくことが重要です。作りたい製品に合わせて、加工業者の情報をチェックし、気になる点があれば問い合わせてみることもおすすめします。神戸で腕の立つ金属加工メーカーをお探しの際は、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で250社以上の企業と提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。Mitsuriでのお見積りは複数社から可能です。金属加工でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

  • 水素脆性割れとは?原因と対策、ベーキング処理

    水素脆性割れとは、鋼材が水素を吸収することで靭性(粘り強さ)が低下して脆くなり、割れてしまう現象のことで、別名「水素脆化」とも呼ばれています。水素は、めっき・溶接・酸洗い・腐食などによって鋼材に吸収し、脆化を引き起こします。水素脆性は、HRC(ロックウェル硬さ)40以上・抗張力130kgf/mm2などの、高張力鋼や高強度鋼で発生しやすいとされています。低強度の鋼にはほとんど影響を与えないとされていますが、水素の吸収量が多いと発生することもあり、一概にこの鋼材なら安心と言えるものはありません。本記事では、このような水素脆性割れの原因と水素脆化割れの対策について解説します。水素脆性割れの原因水素を吸収することで脆化する原因は、「水素原子が集合することで分子になり内部圧力が上昇するため」や、「水素原子が鉄同士の結合を阻害して材料の強度を下げるため」などの説があるものの、はっきりとした原因は現状不明とされています。引用元:鍋屋バイテック会社また、水素脆性割れは、遅れ破壊も引き起こす可能性があります。遅れ破壊は、引張荷重がかかっている鋼材に塑性変形が見られないものの、応力が集中している部分にクラックが発生し、後に急速に破壊してしまう現象のことをいいます。遅れ破壊は、橋梁などの建築物に使われている高力ボルトに見られやすい現象です。水素脆性割れと遅れ破壊は、酸洗いやめっきなどの過程で水素を吸収している恐れがあるため、橋梁の現場などでは1本のボルトが遅れ破壊を起こすと、同じロットで製造されたものすべての点検および交換を必要とする場合があります。参考:【メッキ処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!参考:メッキ加工方法について!【専門家が語る】メッキされるまでの工程が丸わかり!水素脆性割れの対策、ベーキング処理水素脆性割れを防ぐには、ベーキング処理を行うのが有効です。ベーキング処理とは、綴りである「baking」の名前の通り、200℃程度の温度で8~24時間ほど加熱する脱水素処理のことをいいます。温度と加熱時間については、鋼材やめっき処理の内容によってさまざまです。例えば、高温にすることで硬度が低下する鋼材に対しては、高い温度での処理を避けなければなりません。その場合は、低い温度かつ長い時間をかけて処理します。めっき皮膜に厚みがあるものは、鋼材に吸収された水素が抜けにくくなるので、こちらも同様にベーキング処理の時間を長くする必要があります。そのほかにベーキング処理で注意しておくべきポイントとして、「めっき後すぐにベーキング処理をしなかった」、「ベーキングの効果が低い亜鉛めっき・光沢めっきを行った」、「酸洗いの時間が長い、または高濃度の処理液を使用し、多くの水素を吸収した」などの場合は、水素が抜けにくく、水素脆性割れが起こる場合もあります。ベーキング処理以外の対策としては、めっき工程において酸洗いを行う際、「低濃度の酸を使う」、「短時間で酸処理を終える」、「ショットブラストなどの機械的処理を利用して長時間の酸処理を避ける」といった方法も効果的です。

  • 応力腐食割れをわかりやすく!3要素と対策方法

    応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)とは、腐食環境下において、金属材料に引張応力が作用することで、材料に割れが生じる現象を指します。部品や機器の破損を引き起こすため、さまざまな事故の原因となります。また、応力腐食割れは、主にステンレス、炭素鋼、黄銅のような合金で発生しやすく、純金属ではほとんど発生しません。応力腐食割れのメカニズムと3要素応力腐食割れは、材料的因子・環境因子・力学的因子の3つの要素が揃った時に、発生します。つまり、応力腐食割れが発生するのは、特定の材料と環境の組み合わせにおいて、ある水準以上の引張応力の付加が継続的に存在する場合に限られます。応力腐食割れが発生するメカニズムとしては、何らかの環境因子によってまず金属表面に腐食が生じ、ここに引張応力が加わることで割れが生じます。環境因子、応力が継続して存在することで、材料の応力腐食割れはさらに進行します。図:応力腐食割れのメカニズムと模式図また、下表に応力腐食割れの原因となりやすい金属材料と環境の組み合わせについて示しました。<応力腐食割れを生じる金属と環境>金属原因物質環境の例炭素鋼NO3-高温NaNO3溶液OH- 高温高濃度NaOH溶液高張力鋼H2SH2S水溶液オーステナイト系ステンレス鋼CL-高温海水OH- 高温高濃度NaOH溶液ポリチオン酸硫化した後湿性環境にさらす高温水 沸騰水型原子炉の配管黄銅NH3 NH3を含む大気アミン アミン水溶液高力アルミ合金CL-海水高力チタン合金CL-海水、熱NaCL上表のような材料を特定の腐食環境下において使用し、かつ「引張応力」が加わると応力腐食割れが発生します。この引張応力には、使用時に加わる応力の他にも、機械加工や溶接、熱処理によって生じる残留応力があります。金属材料の最大引張強さの1/10程度の小さい引張応力でも、応力腐食割れの生じる原因となります。また、焼き入れ材料については、その焼き戻し温度によっても差があり、一般に降伏点の高い材料は応力腐食割れへの感受性が高いと言われています。ステンレスの応力腐食割れステンレス鋼の中でも、特にオーステナイト系ステンレス鋼において、応力腐食割れが発生しやすくなります。オーステナイト系ステンレス鋼では、溶接などによって高温下にさらされると、結晶粒界付近で炭素とクロムが結合し、クロム炭化物を生成します。このため、粒界近傍では、鋭敏化(結晶粒界に沿って耐食性の低下する劣化現象)した状態となり、応力腐食割れが発生しやすくなります。これを、粒界型応力腐食割れと言います。また、ステンレス鋼は、塩素雰囲気(塩化物水溶液や海水など)においても、応力腐食割れを起こしやすいため注意が必要です。炭素鋼の応力腐食割れ炭素鋼では、高温,高濃度の苛性アルカリ水溶液や硝酸塩水溶液などが存在する環境において、応力腐食割れが発生しやすくなります。銅の応力腐食割れ黄銅(銅-亜鉛合金)では、アンモニア雰囲気において応力腐食割れが発生しやすいとされています。応力腐食割れの対策応力腐食割れの対策としては、原因となる3つの要素(材料的因子・環境因子・力学的因子)の内、どれか一つの因子を取り除くことが有効となります。(1)材料的因子例えば、ステンレス鋼では、前述した通りオーステナイト系ステンレス鋼(SUS303、SUS304 など)では発生しやすいため、フェライト系ステンレス鋼(SUS403 など)に材料を変更することが有効です。また、オーステナイト系ステンレス鋼の中でも炭素の含有量を減らした極低炭素鋼に変更することも有効です。極低炭素鋼では、粒界付近でのクロム炭化物の析出が生じにくいため、応力腐食割れに強い特性を持ちます。極低炭素鋼には、SUS304L、SUS316L、SUS321、SUS347などが挙げられます。参考:SUS303(ステンレス鋼)規格、成分、機械的性質参考:SUS321(ステンレス鋼)組成、成分、機械的性質(2)環境因子材料をできるだけ腐食環境因子から遠ざけること、また材料に塗装などの表面処理を施すことで、環境因子との直接的な接触を遮断することも有効です。(3)力学的因子加工・組立て時には、最小の引張応力に抑えられるよう設計を行うこと、また残留応力を除去するために、加工成形後に応力除去熱処理を行うことが対策として挙げられます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!

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    【神戸で金属加工を依頼するなら】神戸の加工メーカー6選

    「神戸で優秀な金属加工メーカーを探しているが、どこに依頼すればいいのか分からない」「いまの取引先よりも製作のコストを抑えたい」「短納期かつ柔軟な対応できる身近な加工メーカーが知りたい」このような悩みをお持ちの方は必見です。加工メーカーによって、加工できる材質や加工方法などは異なります。そのため、金属加工メーカーへ依頼する際は、事前に情報を集めておくのが大切です。しかし、複数の加工メーカーの情報を集めていると、大きく時間がかかってしまうでしょう。そこで今回の記事では、神戸のおすすめ加工メーカー6選を厳選してご紹介します。神戸や近隣にお住まいの方は、ぜひ参考にしてみてください。藤井工作所(神戸市西区)高精度の切削加工と柔軟な対応力でどんな金属もお任せ引用元:藤井工作所①会社概要所在地:兵庫県神戸市西区白水2丁目16-15TEL:078-977-0370FAX:078-977-0371創業:1971年加工:マシニングセンター、フライス加工素材:銅、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮などHP:https://www.fujii-kousakusyo.com/②会社の紹介藤井工作所は、神戸市西区に位置する加工業者。薄板の小物から厚板の大きなサイズのものまで、幅広い対象を加工できます。材質も、鉄・アルミ・ステンレスといった一般的なものから、加工が難しいとされる銅にも対応可能。電化製品や、電源装置とった半導体部品の製作も多く受け持っていることもあり、高い精度での加工を実現しています。品質においても優れており、不良品を一切出していない点もポイント。単品・試作品から、大ロットまでの製造にも対応している点や、短納期対応が可能な点もメリットです。③製品事例1.銅のマシニング加工品2.アルミ製ハンバーグ用金型3.ステンレス製マシニング加工品株式会社小野製作所(神戸市長田区)少量から量産まで対応引用元:株式会社小野製作所①会社概要所在地:兵庫県神戸市長田区梅ケ香町2丁目1番31号(神戸機械センター内)TEL:078-682-4811FAX:078-682-4830創業:1953年加工:旋盤加工、フライス加工、マシニングセンター、表面処理など素材:鉄、ステンレス、アルミニウム、真鍮などHP:http://www.ono-seisaku.co.jp/②会社の紹介株式会社小野製作所は、神戸市長田区に位置する加工業者です。主に油圧・空圧・圧縮機・ブロアー機器などの精密部品をメインに加工。特にバーフィーダー(自動給材システム)によるバー材(棒材)や、比較的小型の部品製作を得意としています。また、株式会社小野製作所では、材料の手配から切削加工、表面処理までを一貫して対応。ワンストップで対応することで、コストの削減や納期の短縮を実現しています。試作品などの単品から大量生産まで対応が可能。小型部品の製作で困っている方におすすめの加工業者です。③製品事例1.チェックペンガイド(材質:S45C-H サイズ:幅17×長さ35mm)2.RVバルブシート(材質:C3604 サイズ:高さ38mm)3.ピン(材質:SUS304 サイズ:直径12×長さ15.8mm)株式会社田中鉄工所(神戸市兵庫区)神戸の精密機械加工なら引用元:株式会社田中鉄工所①会社概要所在地:兵庫県神戸市兵庫区駅前通2丁目2番3号TEL:078-579-8620FAX:078-579-8622設立:1938年加工:マシニングセンターHP:http://www.tanaka-iron.com②会社の紹介株式会社田中鉄工所は、神戸市兵庫区に位置する加工業者。主に産業用ロボットや医療機器といった精密加工部品を手がけています。立形・横形・5軸制御といった豊富な種類のマシニングセンターを所有し、多品種少量生産や高精度の大量生産といった、あらゆる条件に対応が可能。3次元測定器も導入しているので、品質面においても安心です。③製品事例1.産業用ロボット関連機器2.医療機器関連部品3.航空機器関連部品有限会社上原製作所(神戸市西区)少量・短納期の金属加工なら引用元:有限会社上原製作所①会社概要所在地:兵庫県神戸市西区南別府1丁目1033-9TEL:078-974-1673FAX:078-974-1684設立:1980年加工:プレス加工、旋盤加工、板金加工、機械加工、レーザー加工、トムソン加工など素材:鉄、アルミ、ステンレス、銅などHP:http://uehara-co.jp/index.html②会社の紹介有限会社上原製作所は、神戸市西区に位置する加工業者。創業時はパッキンメーカーから始まった企業ですが、現在ではプレス加工・レーザー加工・設計・組立など、総合プロデュース企業として運営しています。トムソン加工と呼ばれる、木型を使った打ち抜き加工技術を有しているのも特徴。トムソン加工は、シートやゴムパッキン、軟質素材などの加工に適しています。有限会社上原製作所は、少量・多品種・短納期を得意としているため、試作品を依頼したい方にもおすすめの加工業者です。③製品事例1.レーザー加工品(材質:SUS304 厚み:0.05mm)2.プレス・旋盤加工 Oリング(材質:CUP サイズ:外径188.7mm)3.機械加工 ジョイント部品(材質:SUS316L 表面処理:ヘアライン加工仕上げ)大熔工所(神戸市兵庫区)単品でもOK引用元:大熔工所①会社概要所在地:兵庫県神戸市兵庫区和田山通1丁目2-25TEL:078-652-0548FAX:078-652-0581創業:1970年加工:溶接加工、ろう付け素材:鉄、ステンレス、アルミ、銅などHP:http://www.daiyoko.com/②会社の紹介大熔工所は、神戸市兵庫区に位置する溶接加工専門の業者。ラックや船舶用ドレン溜めといった、大型の製品の加工に対応しています。製作依頼は単品からでも製作可能。企業からだけでなく、一般の方からの依頼も受け持っています。個人で金属加工を依頼したい方や、大型の製品を依頼したい方におすすめです。③製品事例1.アルミ製試作ロボット用パソコンラック2.船舶用ドレン溜め3.アルミ製自動車ルーフラック平井工作株式会社(神戸市 西区)大型の機械加工なら引用元: 平井工作株式会社①会社概要所在地:兵庫県神戸市西区神出町紫合399-1TEL:078-965-2378FAX:078-965-1227創業:1970年加工:プレス加工、レーザー加工、旋盤加工、マシニングセンター、溶接加工など素材:鉄、ステンレス、アルミ、銅などHP:http://www.hirai-kk.co.jp/②会社の紹介平井工作株式会社は、神戸市西区に位置する加工業者。大型の機械加工を得意とし、主にビル用建築金具・鉄道車両部品・産業用はかり部品などの製造を行っています。豊富なプレス加工機を有し、せん断・曲げ・絞りといった幅広い加工に対応可能。プレス加工用金型の設計および製作についても受け持っています。また、三次元測定器を使った製品の検査も行っており、高品質を実現。高品質な大型の製品を製作したい場合におすすめの加工業者です。③製品事例1.園芸用品向けプレス部品(材質:SPCE 厚み:2.3mm)2.輸送機器プレス部品(材質:SS400 厚み:6mm)3.ステンレスメッシュ品(材質:SUS304)神戸の金属加工依頼ならMitsuri今回は神戸のおすすめ金属加工業者を6社紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。加工業者ごとに保有する設備や加工技術、ノウハウなどは異なります。そのため、得意とする分野もさまざま。例えば、今回ご紹介した加工業者のなかに、溶接を専門とする業者があったように、依頼する際は事前に加工業者の情報を確認しておくことが重要です。作りたい製品に合わせて、加工業者の情報をチェックし、気になる点があれば問い合わせてみることもおすすめします。神戸で腕の立つ金属加工メーカーをお探しの際は、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で250社以上の企業と提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。Mitsuriでのお見積りは複数社から可能です。金属加工でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。