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熱処理

  • 硬化層深さとは?硬化層深さの種類と測定方法

    今回は「硬化層深さ」の種類や測定方法について解説します。鋼は、炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れのような熱処理を行うと、表面が硬化します。硬化した部分のことを「硬化層」、硬化層の深さを「硬化層深さ」と呼びます。上記の熱処理を行った鋼材は、表面からある程度の内部まで硬化層が得られますが、内部に行くほど硬さは低下します。硬化層深さはJIS規格にて、規定された一定の硬さまでの距離を「有効硬化深さ」、材料そのものの硬さまでの距離を「全硬化層深さ」として規定されています。これらの内容について詳しく見てみましょう。硬化層深さとは硬化層深さとは、主に焼入れで硬化した層の深さのことを言います。炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れなどの熱処理では、硬化層深さが品質面において重要視されます。硬化層深さは、JIS規格にて「有効硬化層深さ」と「全硬化層深さ」の2種類が規定されています。これらの測定方法として、一般的に硬さ試験を、簡便法としてマクロ組織試験が用いられています。参考:焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!硬化層深さの種類硬化層深さは、JIS規格にて、有効硬化層深さまたは全硬化層深さの2種類が定められています。特に有効硬化層深さについては、炎焼入れ・高周波焼入れによるものと、浸炭焼入れによるもので、規定の数値に違いがあります。有効硬化層深さ有効硬化層深さとは、JIS規格にて「硬化層の表面から、規定する限界硬さの位置までの距離」のことを指しています。鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れでの、有効硬化層の限界硬さの規定については以下表の通りです。通常、鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れの焼戻し温度は200℃以下とします。・有効硬化層の限界硬さ(鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れ)鋼の炭素含有率%ビッカース硬さHVロックウェル硬さCスケールHRCロックウェルスーパーフィシャル硬さHR15NHR30NHR45N0.23以上0.33未満350367856380.33以上0.43未満400418160440.43以上0.53未満450458364490.53以上50049856854※鋼の炭素含有率は、測定しようとする鋼の規格に規定された炭素含有率範囲の中央値とする。引用元:JIS G 0559:2019 鋼の炎焼入及び高周波焼入硬化層深さ測定方法また、鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れでの限界硬さは、以下の式を用いる場合があります。限界硬さの求め方限界硬さ=0.80×最小表面硬さ最小表面硬さとは、JIS規格にて、「要求された表面硬さをいい、その値については、受渡当事者間の協定による。」と定められています。浸炭焼入れの場合の有効硬化深さは、「200°を超えない温度で焼戻しをした硬化層の表面から、ビッカース硬さ550(550HV)の位置までの距離」とJIS規格で定められています。全硬化層深さ全硬化層深さとは、JIS規格にて「硬化層の表面から、硬化層と生地との物理的又は化学的性質の差異がもはや区別できない点に至るまでの距離」と定められています。ここでの「物理的性質」とは硬さで、「化学的性質」はマクロ組織のことを際します。参考:JIS G 0202:2013 鉄鋼用語(試験)引用元:三洋金属熟練工業株式会社 浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れ処理分かりやすく解説すると、上図のように炭素が材料の表面から内部に侵入している所までの距離を意味します。炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れは、材料の表面を硬化させられますが、内部に行くほど硬さは低くなり、元の材料と同じ硬さの数値を示します。そのため全硬化層深さは、元の材料と硬さが区別できなくなるまでの位置を意味しますが、有効硬化深さのように、明確な硬さの基準が設けられているわけではありません。測定方法の種類鋼の炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れの硬化層深さの測定方法は、JIS規格にて「硬さ試験」または「マクロ組織試験」による測定方法が採用されています。今回は、これらの測定方法の概要についてご紹介します。硬さ試験法硬さ試験は、試験片の表面に垂直な断面の硬さ変化を読み取り、硬化層深さを測定する方法です。硬さ試験は、試験片の断面の複数箇所に、硬さ試験機の圧子を押し込み、その部分にできた圧痕から硬さを求めます。試験片の表面から限界硬さ、または硬さが生地と同じになる位置までの距離を定めることで、有効硬化層深さと全硬化層深さが測定できます。場合によっては、硬さ試験を2回実施して、「硬さ推移曲線」のグラフを2本作成し、それぞれから得た硬化層深さの平均値を採用することもあります。圧子の押し込み方や、硬さの計測方法などによって、ビッカース硬さや、ヌープ硬さなどの種類が分かれていますが、JIS規格に準拠した鋼の炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れの硬化層深さの試験方法では、規定によりビッカース硬さが採用されていることが多いです。試験片は、硬さ試験およびマクロ組織試験どちらの場合でも、実際に用いる製品から用意します。試験片の加工は、始めに材料を硬化した表面に対して垂直に切断し、研磨します。研磨後は適切な溶液を用いてエッチングを行います。マイクロビッカース硬さを適用する場合は、エッチングせず、研磨したままの表面にて試験します。基本的に試験片は、製品の長手方向に垂直な部位を用います。長手方向がない場合は、受渡当事者間で協定する部分の表面から垂直な部位を用います。硬化層が薄い場合は、試験片を階段状にしたものや、傾斜面状にした試験片を用いる場合があります。マクロ組織試験法マクロ組織試験法は、試験片の切断面をエッチングして、低倍率の拡大鏡で観察し、硬化層深さを測定します。主に簡便法としてマクロ組織試験による測定が採用されます。マクロ組織試験法は、硬さ試験と同様に、製品を硬化した表面から垂直に切断して材料を研磨し、適切な溶液を用いてエッチングします。エッチング後は、エタノールまたは水で洗浄したあとに、20倍を超えない倍率の拡大鏡で、エッチングによる着色状況を見ます。このとき、試験片の表面から、生地と異なって着色されている部分までの深さを測定すると、全硬化層深さが求められます。

  • 焼き戻しの種類、メリット・デメリット、硬度、冷却方法

    鋼を強くするための工程のひとつに「焼き入れ」があることは比較的よく知られています。緩んだ気持ちを引き締める時に使う「焼きを入れる」という言葉も、刀を作る際に一度熱した刀を水で冷やす「焼き入れ」から来ているため、鋼を強くするということを知らなくても何となく言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。ただ、単純に焼き入れをしただけでは鋼は決して強い素材ではないことを知っていますか?鋼を強くするためには、焼き入れと焼き戻しをセットで行う必要があります。今回は、焼き入れの後に行われる「焼き戻し」について詳しく解説していきます。焼き戻しとは?鋼の熱処理は「焼き入れ」「焼き戻し」「焼きなまし」「焼きならし」という4つの工程に分かれています。その中で、焼き戻しは一度急激に冷やした鋼をもう一度加熱する処理のことを言います。一般的に焼き入れで硬くなった鋼は強度が弱く、すぐに壊れたり傷ついたりしてしまうため商品になりません。焼き戻しをすることで、粘り強くより強靭な鋼へと変化していきます。焼き戻しは、そのまま長時間放置しておくと割れが発生してしまう可能性があるため、焼き入れ直後、1時間の間に行います。時間をかけて1回行うのではなく、時間内で焼き入れと焼き戻しを2~3回繰り返す方が、より靭性の高い鋼になります。焼き戻しの種類焼き戻しには低温焼戻しと高温焼戻しの2種類があります。それぞれ違った特徴をもっており、製品によっても使い分けられています。低温焼戻し低温焼戻しは、150℃~200℃の温度で行われる焼き戻しのこと。これにより、焼き入れによるストレスが軽減され、硬くて粘りのある素材へと変化します。経年劣化しにくく、研磨割れや耐摩耗性にも優れているため、ナイフや包丁、切削工具など、耐摩耗性が要求される工具などに多く取り入れられています。高温焼戻し550℃~650℃で行われる焼き戻しのことを高温焼戻しと呼んでいます。低温焼戻しよりもさらに高い強さを持つ素材となるため、高級刃物や歯車、シャフトなど、強靭性が求められる工具の製造に多く用いられています。焼き戻しのメリット焼き入れで硬くなった鋼に焼き戻しをすることで粘りや強靭性の高い鋼になります。さらに、高温焼戻し・低温焼戻しの特徴を把握することで、製造したい部品が求められている強度や硬度等に合わせて調整することが可能です。焼き戻しのデメリット実際に焼き戻しをすると、場合によっては靭性が増すどころか、逆に脆弱性が高くなってしまうケースがあります。これを解消するための手段として、低温焼戻しと高温焼戻しには、温度管理が徹底されています。低温焼戻しの脆弱低温焼戻しは、急速に冷やすと歪みや割れを起こしてしまう可能性があるため、空冷などを使って少しずつ冷やしていくことが望まれます。また、鋼は300℃~400℃で脆弱性が増してしまうため、必要以上に温度を上げ過ぎないことが低温焼戻しの鉄則となります。高温焼戻しの脆弱高温焼戻しは、一度目の急冷で焼き割れと同じような割れが発生する可能性があるため、必ず二回以上行う必要があります。また、鋼は300℃~400℃で脆弱性が増してしまうため、温度を下げる際に急速な冷却が必要とされます。焼き戻しに伴う硬度の推移焼き戻しによって、鋼の強度は増しますが、必ずしも硬くなるとは限りません。素材にもよりますが、多くの素材が500℃~600度で二次硬化を起こし、その後は急激に軟化していきます。ただし、硬い=強靭というわけではないため、硬さが求められる場合と強靭性が求められる場合とでは、素材選びや焼き戻しの温度選びなどをうまく調整する必要があります。目的や用途に合わせて素材や温度を調整することで、求められている硬さ、強靭性を持つ素材が完成します。焼き戻しの冷却方法焼き入れの後、温度を上昇させる焼き戻しですが、繰り返し作業を行うため、一度上げた温度をまた下げる必要があります。低温焼戻しでは、急激に冷やすと歪みや割れが生じてしまうため、空冷などでゆっくり冷やします。一方、高温焼戻しではゆっくり冷却すると鋼に脆弱性が生じる300℃から400℃の温度で長時間温度が維持されてしまうため、急激に冷却することが求められます。

  • 高周波焼入れとは?原理、適した材質、硬度、メリット・デメリット

    表面焼入れには、炎焼入れ・高周波焼入れ・電子ビーム焼入れ・レーザ焼入れの4種類がありますが、そのなかでも高周波焼入れは、最も多く利用されている表面硬化法です。高周波焼入れは、コイルを使った電磁誘導電流により材料を加熱する仕組みで、主に炭素鋼や低合金鋼の部品表面に対して耐摩耗性や耐疲労性を向上させるために行います。今回は高周波焼入れの原理や適した材料、メリット・デメリットなどについて見てみましょう。高周波焼入れとは? 引用元:旭千代田工業株式会社 高周波焼入れ高周波焼入れとは、高周波電流から発生する誘導加熱を利用した熱入れ方法で、加熱コイルにより鋼材を熱したあとに、急速に冷却して鋼材の表面を硬化させることが可能です。表面焼入れしたままだと、破損や研磨割れが発生しやすくなるため、基本的に高周波焼入れ後は200℃以下の低温焼戻しを行います。高周波電流の浸透深さは、鋼材の比透磁率や抵抗だけでなく、周波数によっても決まります。これにより、さまざまな周波数に対応する高周波発振機があります。加熱する際には、一般的に1~500kHzの広範囲の周波数が用いられています。高周波焼入れを行う主な鋼材は、炭素鋼や低合金鋼が代表的で、産業機械のベッド・シャフト・歯車などの部品に多く使用されています。高周波焼入れの特徴とメリット・デメリットメリット・必要な部分や表面だけを硬化することができる。・高い表面硬さが得られることで、耐摩耗性に優れる。・製品の内部は元の素材のままで、高い靭性が保たれる。・表面の圧縮残留応力が大きく、耐疲労性に優れる。・脱炭が発生しにくく、耐疲労性が低下する心配がない。・酸化スケールが少なく、表面が綺麗。・硬化層深さの調整が可能。・電気を用いた加熱で運転と停止がスムーズ。デメリット・焼入硬化の程度は材料に含まれる炭化物の種類や大きさに左右される。・製品形状にあった加熱コイルが必要。・突起部や鋭角的な角などエッジ箇所は加熱が過剰になりやすい。・正確な温度測定ができないため、経験が必要。高周波焼入れの原理引用元:Tech Note 表面熱処理の種類:金属熱処理の基礎知識7高周波焼入れの例として、上図に竪型移動焼入れの構造を添付しています。高周波焼入れ機は、鋼材の近くにある加熱用コイルに高周波電流を流すと、鋼材表面に渦電流が流れます。鋼材は、渦電流と鋼材の電気抵抗から発生するジュール熱によって発熱します。この熱により、鋼材をオーステナイト領域まで急速に加熱させたあと、内部温度が上昇する前に急速に冷却すると、鋼材の表面がマルテンサイト領域に入り硬化する仕組みです。渦電流の浸透深さは、周波数が高いほど浅く、周波数が低いほど深くなります。そのため、硬化層深さを浅くしたい場合は高い周波数を、深くまで硬化させたい場合は低い周波数を用います。高周波焼入れの種類定置一発焼入れ引用元:福山熱煉工業株式会社 高周波焼入れ定置一発焼入れは、部品のみ回転させて対象箇所全体を一度に加熱し、焼入れする方法です。加熱コイルや製品を大きく移動させない汎用的なタイプです。一歯毎焼入れ引用元:東洋高周波工業株式会社 技術ブログ掲載全部品 ギアの歯底一歯焼入れ一歯毎焼入れは、さまざまな種類のギアの一歯毎に焼入れすることを指します。歯の形状によってはコイル製作から行います。堅型移動焼入れ引用元:株式会社ナガト 竪型移動焼入機堅型移動焼入れは、加熱コイルと部品を縦方向に移動させて、連続で焼入れを行います。主に長尺や円柱状の部品に採用されています。横型移動焼入れ引用元:株式会社ナガト 横型移動焼入機横型移動焼入れは、コイルと部品を横方向へ移動させながら、連続で焼入れを行います。主に平面を焼入れする部品に採用されています。高周波焼入れに適した材質高周波焼入れに適した材質の例は以下の通りです。・炭素鋼:S45C・S50C・S55C・合金鋼:SCM435・SCM440・SNCM439・軸受鋼:SUJ2・ステンレス鋼:SUS420J2・SUS440C・炭素工具鋼:SK3・合金工具鋼:SKS3・SKD11高周波焼入れの硬度高周波焼入れは、炭素鋼S45Cの場合、50~60HRC程度の硬度が得られます。高周波焼入れに必要な装置と機器高周波焼入れに必要な装置は、以下のようなものがあります。・高周波発振機:高周波を発生させるための装置。・焼入れ機:材料を焼入れ部に搬送・保持・移動・回転させるための機器。・制御盤:設備全体の制御を行う装置。・操作盤:焼入れ条件の設定を行う装置。・加熱コイル:加熱したい箇所に高周波電流を誘導させるための部品。対象のワーク形状より、さまざまなコイル形状が設計される。・冷却装置(焼入れ用・電源用):焼入れ用の冷却水槽と、高周波発振機、加熱コイルなどの冷却水槽。

  • 真空浸炭焼入れの原理、メリット・デメリット、硬化層深さ、適した材質

    今回は真空浸炭焼入れの原理やメリットなどについて解説します。真空浸炭焼入れは、金属加工に用いる熱処理方法の一種です。浸炭とは、鋼の表面に炭素を浸透拡散させる処理の総称で、浸炭後に焼入れ焼戻しなどの熱処理を行うと、材料の耐摩耗性が向上します。浸炭は設備によって、液体浸炭やガス浸炭などのさまざまな方式がありますが、そのなかでも真空浸炭には豊富なメリットがあります。真空浸炭焼入れとは真空浸炭焼入れとは、減圧した炉内にメタン・プロパン・エチレン・アセチレンなどの炭化水素系のガスを直接炉内に装入して、ガスの熱分解によって生じる活性炭素を、材料の表面に浸透させる熱処理方法です。真空浸炭焼入れを施した材料は、表面が硬くなり耐摩耗性が得られます。また、材料の内部は硬さが低いため、高い靭性も有しています。真空浸炭焼入れは、主に低炭素鋼に施す熱処理で、用途としては自動車部品や機械部品などで採用されています。参考:焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!真空浸炭焼入れのメリット●耐摩耗性の向上真空浸炭焼入れは、ガス浸炭焼入れに比べて軟化層の発生がしにくく、より製品の耐摩耗性を向上させられます。浸炭を真空炉内で処理することで、浸炭深さのバラつきが抑えられるのもポイントです。●粒界酸化がなく、品質向上に繫がる真空浸炭焼入れは、名前の通り真空状態の炉内で処理を行うため、安定して材料全体に炭素を供給できるだけでなく、材料の表層部に粒界酸化が発生しない特徴があります。粒界酸化とは、酸素や二酸化炭素などの酸化性雰囲気中で熱処理をした際に、金属製品の表層部が酸化する現象のことで、ヒビの原因となるものです。以上のことから、真空浸炭焼入れを行った製品は、粒界酸化材料表面のトラブルが軽減され、品質の向上に繫がります。●ステンレス鋼の浸炭が可能真空浸炭焼入れは、ガス浸炭焼入れでは不可能だったステンレス鋼に対しても浸炭を行えます。●作業効率の向上真空浸炭焼入れは、最大1100℃程度の高温で熱処理が可能なほか、炉の立ち上がりが素早く行えます。浸炭層の深さは処理温度と時間に比例するので、高い温度で熱処理が可能な真空浸炭焼入れは、作業時間の短縮を実現します。●環境に優しい真空浸炭焼入れは、地球温暖化の原因とされているCO2などの温室効果ガスの排出が少なく、環境に優しい特徴があります。●優れた安全性真空浸炭炉内は完全密封された状態で、炎や煙が発生しません。これにより、火災や爆発のリスクがなく、安全に使用できます。真空浸炭焼入れデメリット●コストが割高になる場合がある真空浸炭焼入れは、複数の製品を混載処理する事が困難なため、ガス浸炭焼入れに比べるとコストが少し割高になる場合があります。●ススが発生しやすい場合がある真空浸炭炉内に炭化水素系ガスを供給すると、熱分解により大量のススが発生してしまいます。そのため、炉のメンテナンスが煩雑になる場合があります。ただし、浸炭ガスにアセチレンガスを用いて、低い圧力で供給するなどの手順により、ススの発生を抑える方法もあります。真空浸炭焼入れの原理と工程引用元:岡谷熱処理工業 真空浸炭焼入れ真空浸炭焼入れは、低炭素鋼を加熱・浸炭を行うことで炭素Cが材料の表面に拡散します。その後に焼入れを行うと、材料表面が高炭素濃度化し、高硬度で優れた耐摩耗性が得られます。このとき、材料の内部は低炭素濃度のままとなっており、優れた靭性も同時に得られます。真空浸炭焼入れに適した材質真空浸炭焼入れは、低炭素鋼である以下の材質が適しています。・SCM415・SS400・SPCCまた、真空浸炭焼入れは、難浸炭材と言われているSUS304のステンレス鋼に対しても対応が可能です。優れた耐食性を有するSUS304に表面硬化を行うことで、あらゆる分野の製品に活用できます。鋼の浸炭硬化層深さ真空浸炭焼入れでの品質を決める要素に、浸炭の深さがあります。真空浸炭焼入れの深さは、「有効硬化層深さ」と「全硬化層深さ」の2種類がJISにて規定されています。有効硬化層深さ有効硬化層深さは、【JIS B 6905:1995 金属製品熱処理用語】にて、「硬化層の表面から、規定する限界硬さの位置までの距離」と定義されています。また、【JIS G 0557:2019 鋼の浸炭硬化層深さ測定方法】では、限界硬さが550HVにて設定されていることから、有効硬化層深さは一般的に「焼入れのまま、又は200℃を超えない温度で焼戻しした時の表面から、550HVまでの距離」を意味します。全硬化層深さ引用元:三洋金属熱錬工業株式会社 浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れ処理全硬化層深さは、「硬化層の表面から、硬化層と生地との物理的又は化学的性質の差異が区別できない位置までの距離」とJISで定義されています。分かりやすく述べると、上図のように材料の表面から炭素が侵入している所までの距離を指します。真空浸炭焼入れを行った材料は、内部に行くにつれて硬さが低い値を示します。ただし全硬化層深さは、有効硬化層深さのように明確な硬さの基準があるわけではなく、素地と有効硬化層深さの区別がつかないところまでの距離を指しています。

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    アルミ加工の見積りでお困りならMitsuriにお任せ!【加工事例もご紹介】

    軽量でありながら高強度を誇ることで、身近な製品にさまざまな用途で用いられるアルミニウム。鉄などに比べて比較的加工の容易な材ですが、特に初めて加工を依頼する際などのアルミ加工業者選びは難しいものです。「アルミ材の切断、曲げ、抜き、溶接、切削などの加工を依頼したいけれど、初めてでどこに頼めばいいかわからない……」「他の工場で断られてしまって、依頼先に困っている……」探す中で、こんなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、アルミ材の加工について紹介します。Mitsuriで依頼できるアルミ加工の種類①切断加工レーザー切断機、シャーリング、タップ、タレパン、カッターやソーなどのアルミ切断機を使用して、材を高速・高精度にカットします。切断は、その後の工程に大きく影響し、最終的な製品の仕上がり・精度にも関わる重要な加工工程です。特にアルミはバリや反りが発生しやすいため、高精度なカットが求められます。Mitsuriでは、高速・高精度な切断加工が可能です。小サイズの切り出し、溝部分の難加工など、あらゆるシーンで正確な切断を実現します。切断加工についてはこちら【板金加工 切断】せん断やシャー切断などの切断加工を専門家が解説!②曲げ加工アルミ板金における曲げ加工では、ベンダー(折り曲げ機)を使用して直線的に折り曲げ加工を施すほか、R曲げ、V曲げ、Z曲げ、ヘミング曲げ、ロール曲げといったあらゆる曲げを、発注に応じて使い分けます。特に小ロットでの発注の場合など、金型を用いず、叩いて成型する曲げ加工を採用することもあります。アルミ材は、曲げやすいからこそ、精密な曲げ加工には熟練の技術と適切な加工が必須です。一度断られてしまった難加工も、Mitsuriにぜひお任せください。曲げ加工についてはこちら【曲げ加工】の基礎やV曲げ/L曲げ加工について徹底解説!!③溶接MAG溶接やTIG溶接といった一般的なシールドガスアーク溶接に加え、スポット溶接やレーザー溶接、抵抗溶接などあらゆる加工法を駆使して材を溶接します。またアルミ材の場合は、比較的低温で溶着可能なろう付けが用いられることも多いです。溶接加工は機械化が進んでいるものの、アルミ溶接において最後の仕上がりを左右するのはやはり人の経験と技術です。溶融点の低いアルミは、溶接するうちにどうしても歪みが発生してしまいます。また、厚みや求められる強度などによっても注意すべきポイントが異なるのですが、そんな微妙な作業の使い分けを行える職人が、Mitsuriの協力工場には揃っています。溶接についてはこちら溶接方法について専門家が解説!【協力工場130社以上】溶接でお困りならMitsuri!④切削切削加工は大きく分けて、固定した材に対して機械を回転させて切削するフライス加工と、材を回転させる旋削加工に分けられます。フライス加工は材の表面加工に適しており、アルミの場合は特に鏡面仕上げなどを施す加工がこれに当たります。そのほかにも、穴あけや溝削りといったさまざまな加工が可能です。旋削加工では、パイプ状に加工した材にテーパ加工を施したり、中ぐり、ねじ切り、突切りといった加工を行うことができます。アルミはその他の金属と比較して溶融点が低いうえに延性が大きいため、バリが発生しやすいのが難点です。対策として、良質な工具の選定が欠かせないほか、必要に応じてクーラントを使用するなどノウハウが求められます。そんな切削加工も、Mitsuriにぜひお任せください!切削加工についてはこちら【切削加工】切削加工の方法や特徴・種類を動画を交えてご紹介!!アルミ加工実績引用:有限会社 相和シボリ工業(170Φ×120Φ×560H・へら絞り加工)引用:有限会社 相和シボリ工業(20Φ×28Φ×90H・パイプ加工)引用:多摩電子株式会社引用:布施金属工業株式会社(曲げ加工・溶接・仕上げ)アルミ 加工を依頼するなら【アルミ加工のMitsuri】アルミ加工を依頼するなら、ぜひ技術と経験を備えた熟練の工場に依頼しましょう。では具体的に、アルミ加工を発注する際、・どれくらいの費用が掛かるのか・納品までどれくらいの期間が掛かるのかなどについて気になるのではないでしょうか。そんな時はMitsuriにお任せ下さい!Mitsuriでは日本全国各地、どこからでもご相談可能です。アルミ加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください!

  • 硬化層深さとは?硬化層深さの種類と測定方法

    今回は「硬化層深さ」の種類や測定方法について解説します。鋼は、炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れのような熱処理を行うと、表面が硬化します。硬化した部分のことを「硬化層」、硬化層の深さを「硬化層深さ」と呼びます。上記の熱処理を行った鋼材は、表面からある程度の内部まで硬化層が得られますが、内部に行くほど硬さは低下します。硬化層深さはJIS規格にて、規定された一定の硬さまでの距離を「有効硬化深さ」、材料そのものの硬さまでの距離を「全硬化層深さ」として規定されています。これらの内容について詳しく見てみましょう。硬化層深さとは硬化層深さとは、主に焼入れで硬化した層の深さのことを言います。炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れなどの熱処理では、硬化層深さが品質面において重要視されます。硬化層深さは、JIS規格にて「有効硬化層深さ」と「全硬化層深さ」の2種類が規定されています。これらの測定方法として、一般的に硬さ試験を、簡便法としてマクロ組織試験が用いられています。参考:焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!硬化層深さの種類硬化層深さは、JIS規格にて、有効硬化層深さまたは全硬化層深さの2種類が定められています。特に有効硬化層深さについては、炎焼入れ・高周波焼入れによるものと、浸炭焼入れによるもので、規定の数値に違いがあります。有効硬化層深さ有効硬化層深さとは、JIS規格にて「硬化層の表面から、規定する限界硬さの位置までの距離」のことを指しています。鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れでの、有効硬化層の限界硬さの規定については以下表の通りです。通常、鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れの焼戻し温度は200℃以下とします。・有効硬化層の限界硬さ(鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れ)鋼の炭素含有率%ビッカース硬さHVロックウェル硬さCスケールHRCロックウェルスーパーフィシャル硬さHR15NHR30NHR45N0.23以上0.33未満350367856380.33以上0.43未満400418160440.43以上0.53未満450458364490.53以上50049856854※鋼の炭素含有率は、測定しようとする鋼の規格に規定された炭素含有率範囲の中央値とする。引用元:JIS G 0559:2019 鋼の炎焼入及び高周波焼入硬化層深さ測定方法また、鋼の炎焼入れ及び高周波焼入れでの限界硬さは、以下の式を用いる場合があります。限界硬さの求め方限界硬さ=0.80×最小表面硬さ最小表面硬さとは、JIS規格にて、「要求された表面硬さをいい、その値については、受渡当事者間の協定による。」と定められています。浸炭焼入れの場合の有効硬化深さは、「200°を超えない温度で焼戻しをした硬化層の表面から、ビッカース硬さ550(550HV)の位置までの距離」とJIS規格で定められています。全硬化層深さ全硬化層深さとは、JIS規格にて「硬化層の表面から、硬化層と生地との物理的又は化学的性質の差異がもはや区別できない点に至るまでの距離」と定められています。ここでの「物理的性質」とは硬さで、「化学的性質」はマクロ組織のことを際します。参考:JIS G 0202:2013 鉄鋼用語(試験)引用元:三洋金属熟練工業株式会社 浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れ処理分かりやすく解説すると、上図のように炭素が材料の表面から内部に侵入している所までの距離を意味します。炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れは、材料の表面を硬化させられますが、内部に行くほど硬さは低くなり、元の材料と同じ硬さの数値を示します。そのため全硬化層深さは、元の材料と硬さが区別できなくなるまでの位置を意味しますが、有効硬化深さのように、明確な硬さの基準が設けられているわけではありません。測定方法の種類鋼の炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れの硬化層深さの測定方法は、JIS規格にて「硬さ試験」または「マクロ組織試験」による測定方法が採用されています。今回は、これらの測定方法の概要についてご紹介します。硬さ試験法硬さ試験は、試験片の表面に垂直な断面の硬さ変化を読み取り、硬化層深さを測定する方法です。硬さ試験は、試験片の断面の複数箇所に、硬さ試験機の圧子を押し込み、その部分にできた圧痕から硬さを求めます。試験片の表面から限界硬さ、または硬さが生地と同じになる位置までの距離を定めることで、有効硬化層深さと全硬化層深さが測定できます。場合によっては、硬さ試験を2回実施して、「硬さ推移曲線」のグラフを2本作成し、それぞれから得た硬化層深さの平均値を採用することもあります。圧子の押し込み方や、硬さの計測方法などによって、ビッカース硬さや、ヌープ硬さなどの種類が分かれていますが、JIS規格に準拠した鋼の炎焼入れ・高周波焼入れ・浸炭焼入れの硬化層深さの試験方法では、規定によりビッカース硬さが採用されていることが多いです。試験片は、硬さ試験およびマクロ組織試験どちらの場合でも、実際に用いる製品から用意します。試験片の加工は、始めに材料を硬化した表面に対して垂直に切断し、研磨します。研磨後は適切な溶液を用いてエッチングを行います。マイクロビッカース硬さを適用する場合は、エッチングせず、研磨したままの表面にて試験します。基本的に試験片は、製品の長手方向に垂直な部位を用います。長手方向がない場合は、受渡当事者間で協定する部分の表面から垂直な部位を用います。硬化層が薄い場合は、試験片を階段状にしたものや、傾斜面状にした試験片を用いる場合があります。マクロ組織試験法マクロ組織試験法は、試験片の切断面をエッチングして、低倍率の拡大鏡で観察し、硬化層深さを測定します。主に簡便法としてマクロ組織試験による測定が採用されます。マクロ組織試験法は、硬さ試験と同様に、製品を硬化した表面から垂直に切断して材料を研磨し、適切な溶液を用いてエッチングします。エッチング後は、エタノールまたは水で洗浄したあとに、20倍を超えない倍率の拡大鏡で、エッチングによる着色状況を見ます。このとき、試験片の表面から、生地と異なって着色されている部分までの深さを測定すると、全硬化層深さが求められます。

  • 焼き戻しの種類、メリット・デメリット、硬度、冷却方法

    鋼を強くするための工程のひとつに「焼き入れ」があることは比較的よく知られています。緩んだ気持ちを引き締める時に使う「焼きを入れる」という言葉も、刀を作る際に一度熱した刀を水で冷やす「焼き入れ」から来ているため、鋼を強くするということを知らなくても何となく言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。ただ、単純に焼き入れをしただけでは鋼は決して強い素材ではないことを知っていますか?鋼を強くするためには、焼き入れと焼き戻しをセットで行う必要があります。今回は、焼き入れの後に行われる「焼き戻し」について詳しく解説していきます。焼き戻しとは?鋼の熱処理は「焼き入れ」「焼き戻し」「焼きなまし」「焼きならし」という4つの工程に分かれています。その中で、焼き戻しは一度急激に冷やした鋼をもう一度加熱する処理のことを言います。一般的に焼き入れで硬くなった鋼は強度が弱く、すぐに壊れたり傷ついたりしてしまうため商品になりません。焼き戻しをすることで、粘り強くより強靭な鋼へと変化していきます。焼き戻しは、そのまま長時間放置しておくと割れが発生してしまう可能性があるため、焼き入れ直後、1時間の間に行います。時間をかけて1回行うのではなく、時間内で焼き入れと焼き戻しを2~3回繰り返す方が、より靭性の高い鋼になります。焼き戻しの種類焼き戻しには低温焼戻しと高温焼戻しの2種類があります。それぞれ違った特徴をもっており、製品によっても使い分けられています。低温焼戻し低温焼戻しは、150℃~200℃の温度で行われる焼き戻しのこと。これにより、焼き入れによるストレスが軽減され、硬くて粘りのある素材へと変化します。経年劣化しにくく、研磨割れや耐摩耗性にも優れているため、ナイフや包丁、切削工具など、耐摩耗性が要求される工具などに多く取り入れられています。高温焼戻し550℃~650℃で行われる焼き戻しのことを高温焼戻しと呼んでいます。低温焼戻しよりもさらに高い強さを持つ素材となるため、高級刃物や歯車、シャフトなど、強靭性が求められる工具の製造に多く用いられています。焼き戻しのメリット焼き入れで硬くなった鋼に焼き戻しをすることで粘りや強靭性の高い鋼になります。さらに、高温焼戻し・低温焼戻しの特徴を把握することで、製造したい部品が求められている強度や硬度等に合わせて調整することが可能です。焼き戻しのデメリット実際に焼き戻しをすると、場合によっては靭性が増すどころか、逆に脆弱性が高くなってしまうケースがあります。これを解消するための手段として、低温焼戻しと高温焼戻しには、温度管理が徹底されています。低温焼戻しの脆弱低温焼戻しは、急速に冷やすと歪みや割れを起こしてしまう可能性があるため、空冷などを使って少しずつ冷やしていくことが望まれます。また、鋼は300℃~400℃で脆弱性が増してしまうため、必要以上に温度を上げ過ぎないことが低温焼戻しの鉄則となります。高温焼戻しの脆弱高温焼戻しは、一度目の急冷で焼き割れと同じような割れが発生する可能性があるため、必ず二回以上行う必要があります。また、鋼は300℃~400℃で脆弱性が増してしまうため、温度を下げる際に急速な冷却が必要とされます。焼き戻しに伴う硬度の推移焼き戻しによって、鋼の強度は増しますが、必ずしも硬くなるとは限りません。素材にもよりますが、多くの素材が500℃~600度で二次硬化を起こし、その後は急激に軟化していきます。ただし、硬い=強靭というわけではないため、硬さが求められる場合と強靭性が求められる場合とでは、素材選びや焼き戻しの温度選びなどをうまく調整する必要があります。目的や用途に合わせて素材や温度を調整することで、求められている硬さ、強靭性を持つ素材が完成します。焼き戻しの冷却方法焼き入れの後、温度を上昇させる焼き戻しですが、繰り返し作業を行うため、一度上げた温度をまた下げる必要があります。低温焼戻しでは、急激に冷やすと歪みや割れが生じてしまうため、空冷などでゆっくり冷やします。一方、高温焼戻しではゆっくり冷却すると鋼に脆弱性が生じる300℃から400℃の温度で長時間温度が維持されてしまうため、急激に冷却することが求められます。

  • 高周波焼入れとは?原理、適した材質、硬度、メリット・デメリット

    表面焼入れには、炎焼入れ・高周波焼入れ・電子ビーム焼入れ・レーザ焼入れの4種類がありますが、そのなかでも高周波焼入れは、最も多く利用されている表面硬化法です。高周波焼入れは、コイルを使った電磁誘導電流により材料を加熱する仕組みで、主に炭素鋼や低合金鋼の部品表面に対して耐摩耗性や耐疲労性を向上させるために行います。今回は高周波焼入れの原理や適した材料、メリット・デメリットなどについて見てみましょう。高周波焼入れとは? 引用元:旭千代田工業株式会社 高周波焼入れ高周波焼入れとは、高周波電流から発生する誘導加熱を利用した熱入れ方法で、加熱コイルにより鋼材を熱したあとに、急速に冷却して鋼材の表面を硬化させることが可能です。表面焼入れしたままだと、破損や研磨割れが発生しやすくなるため、基本的に高周波焼入れ後は200℃以下の低温焼戻しを行います。高周波電流の浸透深さは、鋼材の比透磁率や抵抗だけでなく、周波数によっても決まります。これにより、さまざまな周波数に対応する高周波発振機があります。加熱する際には、一般的に1~500kHzの広範囲の周波数が用いられています。高周波焼入れを行う主な鋼材は、炭素鋼や低合金鋼が代表的で、産業機械のベッド・シャフト・歯車などの部品に多く使用されています。高周波焼入れの特徴とメリット・デメリットメリット・必要な部分や表面だけを硬化することができる。・高い表面硬さが得られることで、耐摩耗性に優れる。・製品の内部は元の素材のままで、高い靭性が保たれる。・表面の圧縮残留応力が大きく、耐疲労性に優れる。・脱炭が発生しにくく、耐疲労性が低下する心配がない。・酸化スケールが少なく、表面が綺麗。・硬化層深さの調整が可能。・電気を用いた加熱で運転と停止がスムーズ。デメリット・焼入硬化の程度は材料に含まれる炭化物の種類や大きさに左右される。・製品形状にあった加熱コイルが必要。・突起部や鋭角的な角などエッジ箇所は加熱が過剰になりやすい。・正確な温度測定ができないため、経験が必要。高周波焼入れの原理引用元:Tech Note 表面熱処理の種類:金属熱処理の基礎知識7高周波焼入れの例として、上図に竪型移動焼入れの構造を添付しています。高周波焼入れ機は、鋼材の近くにある加熱用コイルに高周波電流を流すと、鋼材表面に渦電流が流れます。鋼材は、渦電流と鋼材の電気抵抗から発生するジュール熱によって発熱します。この熱により、鋼材をオーステナイト領域まで急速に加熱させたあと、内部温度が上昇する前に急速に冷却すると、鋼材の表面がマルテンサイト領域に入り硬化する仕組みです。渦電流の浸透深さは、周波数が高いほど浅く、周波数が低いほど深くなります。そのため、硬化層深さを浅くしたい場合は高い周波数を、深くまで硬化させたい場合は低い周波数を用います。高周波焼入れの種類定置一発焼入れ引用元:福山熱煉工業株式会社 高周波焼入れ定置一発焼入れは、部品のみ回転させて対象箇所全体を一度に加熱し、焼入れする方法です。加熱コイルや製品を大きく移動させない汎用的なタイプです。一歯毎焼入れ引用元:東洋高周波工業株式会社 技術ブログ掲載全部品 ギアの歯底一歯焼入れ一歯毎焼入れは、さまざまな種類のギアの一歯毎に焼入れすることを指します。歯の形状によってはコイル製作から行います。堅型移動焼入れ引用元:株式会社ナガト 竪型移動焼入機堅型移動焼入れは、加熱コイルと部品を縦方向に移動させて、連続で焼入れを行います。主に長尺や円柱状の部品に採用されています。横型移動焼入れ引用元:株式会社ナガト 横型移動焼入機横型移動焼入れは、コイルと部品を横方向へ移動させながら、連続で焼入れを行います。主に平面を焼入れする部品に採用されています。高周波焼入れに適した材質高周波焼入れに適した材質の例は以下の通りです。・炭素鋼:S45C・S50C・S55C・合金鋼:SCM435・SCM440・SNCM439・軸受鋼:SUJ2・ステンレス鋼:SUS420J2・SUS440C・炭素工具鋼:SK3・合金工具鋼:SKS3・SKD11高周波焼入れの硬度高周波焼入れは、炭素鋼S45Cの場合、50~60HRC程度の硬度が得られます。高周波焼入れに必要な装置と機器高周波焼入れに必要な装置は、以下のようなものがあります。・高周波発振機:高周波を発生させるための装置。・焼入れ機:材料を焼入れ部に搬送・保持・移動・回転させるための機器。・制御盤:設備全体の制御を行う装置。・操作盤:焼入れ条件の設定を行う装置。・加熱コイル:加熱したい箇所に高周波電流を誘導させるための部品。対象のワーク形状より、さまざまなコイル形状が設計される。・冷却装置(焼入れ用・電源用):焼入れ用の冷却水槽と、高周波発振機、加熱コイルなどの冷却水槽。

  • 真空浸炭焼入れの原理、メリット・デメリット、硬化層深さ、適した材質

    今回は真空浸炭焼入れの原理やメリットなどについて解説します。真空浸炭焼入れは、金属加工に用いる熱処理方法の一種です。浸炭とは、鋼の表面に炭素を浸透拡散させる処理の総称で、浸炭後に焼入れ焼戻しなどの熱処理を行うと、材料の耐摩耗性が向上します。浸炭は設備によって、液体浸炭やガス浸炭などのさまざまな方式がありますが、そのなかでも真空浸炭には豊富なメリットがあります。真空浸炭焼入れとは真空浸炭焼入れとは、減圧した炉内にメタン・プロパン・エチレン・アセチレンなどの炭化水素系のガスを直接炉内に装入して、ガスの熱分解によって生じる活性炭素を、材料の表面に浸透させる熱処理方法です。真空浸炭焼入れを施した材料は、表面が硬くなり耐摩耗性が得られます。また、材料の内部は硬さが低いため、高い靭性も有しています。真空浸炭焼入れは、主に低炭素鋼に施す熱処理で、用途としては自動車部品や機械部品などで採用されています。参考:焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!真空浸炭焼入れのメリット●耐摩耗性の向上真空浸炭焼入れは、ガス浸炭焼入れに比べて軟化層の発生がしにくく、より製品の耐摩耗性を向上させられます。浸炭を真空炉内で処理することで、浸炭深さのバラつきが抑えられるのもポイントです。●粒界酸化がなく、品質向上に繫がる真空浸炭焼入れは、名前の通り真空状態の炉内で処理を行うため、安定して材料全体に炭素を供給できるだけでなく、材料の表層部に粒界酸化が発生しない特徴があります。粒界酸化とは、酸素や二酸化炭素などの酸化性雰囲気中で熱処理をした際に、金属製品の表層部が酸化する現象のことで、ヒビの原因となるものです。以上のことから、真空浸炭焼入れを行った製品は、粒界酸化材料表面のトラブルが軽減され、品質の向上に繫がります。●ステンレス鋼の浸炭が可能真空浸炭焼入れは、ガス浸炭焼入れでは不可能だったステンレス鋼に対しても浸炭を行えます。●作業効率の向上真空浸炭焼入れは、最大1100℃程度の高温で熱処理が可能なほか、炉の立ち上がりが素早く行えます。浸炭層の深さは処理温度と時間に比例するので、高い温度で熱処理が可能な真空浸炭焼入れは、作業時間の短縮を実現します。●環境に優しい真空浸炭焼入れは、地球温暖化の原因とされているCO2などの温室効果ガスの排出が少なく、環境に優しい特徴があります。●優れた安全性真空浸炭炉内は完全密封された状態で、炎や煙が発生しません。これにより、火災や爆発のリスクがなく、安全に使用できます。真空浸炭焼入れデメリット●コストが割高になる場合がある真空浸炭焼入れは、複数の製品を混載処理する事が困難なため、ガス浸炭焼入れに比べるとコストが少し割高になる場合があります。●ススが発生しやすい場合がある真空浸炭炉内に炭化水素系ガスを供給すると、熱分解により大量のススが発生してしまいます。そのため、炉のメンテナンスが煩雑になる場合があります。ただし、浸炭ガスにアセチレンガスを用いて、低い圧力で供給するなどの手順により、ススの発生を抑える方法もあります。真空浸炭焼入れの原理と工程引用元:岡谷熱処理工業 真空浸炭焼入れ真空浸炭焼入れは、低炭素鋼を加熱・浸炭を行うことで炭素Cが材料の表面に拡散します。その後に焼入れを行うと、材料表面が高炭素濃度化し、高硬度で優れた耐摩耗性が得られます。このとき、材料の内部は低炭素濃度のままとなっており、優れた靭性も同時に得られます。真空浸炭焼入れに適した材質真空浸炭焼入れは、低炭素鋼である以下の材質が適しています。・SCM415・SS400・SPCCまた、真空浸炭焼入れは、難浸炭材と言われているSUS304のステンレス鋼に対しても対応が可能です。優れた耐食性を有するSUS304に表面硬化を行うことで、あらゆる分野の製品に活用できます。鋼の浸炭硬化層深さ真空浸炭焼入れでの品質を決める要素に、浸炭の深さがあります。真空浸炭焼入れの深さは、「有効硬化層深さ」と「全硬化層深さ」の2種類がJISにて規定されています。有効硬化層深さ有効硬化層深さは、【JIS B 6905:1995 金属製品熱処理用語】にて、「硬化層の表面から、規定する限界硬さの位置までの距離」と定義されています。また、【JIS G 0557:2019 鋼の浸炭硬化層深さ測定方法】では、限界硬さが550HVにて設定されていることから、有効硬化層深さは一般的に「焼入れのまま、又は200℃を超えない温度で焼戻しした時の表面から、550HVまでの距離」を意味します。全硬化層深さ引用元:三洋金属熱錬工業株式会社 浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れ処理全硬化層深さは、「硬化層の表面から、硬化層と生地との物理的又は化学的性質の差異が区別できない位置までの距離」とJISで定義されています。分かりやすく述べると、上図のように材料の表面から炭素が侵入している所までの距離を指します。真空浸炭焼入れを行った材料は、内部に行くにつれて硬さが低い値を示します。ただし全硬化層深さは、有効硬化層深さのように明確な硬さの基準があるわけではなく、素地と有効硬化層深さの区別がつかないところまでの距離を指しています。

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    アルミ加工の見積りでお困りならMitsuriにお任せ!【加工事例もご紹介】

    軽量でありながら高強度を誇ることで、身近な製品にさまざまな用途で用いられるアルミニウム。鉄などに比べて比較的加工の容易な材ですが、特に初めて加工を依頼する際などのアルミ加工業者選びは難しいものです。「アルミ材の切断、曲げ、抜き、溶接、切削などの加工を依頼したいけれど、初めてでどこに頼めばいいかわからない……」「他の工場で断られてしまって、依頼先に困っている……」探す中で、こんなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、アルミ材の加工について紹介します。Mitsuriで依頼できるアルミ加工の種類①切断加工レーザー切断機、シャーリング、タップ、タレパン、カッターやソーなどのアルミ切断機を使用して、材を高速・高精度にカットします。切断は、その後の工程に大きく影響し、最終的な製品の仕上がり・精度にも関わる重要な加工工程です。特にアルミはバリや反りが発生しやすいため、高精度なカットが求められます。Mitsuriでは、高速・高精度な切断加工が可能です。小サイズの切り出し、溝部分の難加工など、あらゆるシーンで正確な切断を実現します。切断加工についてはこちら【板金加工 切断】せん断やシャー切断などの切断加工を専門家が解説!②曲げ加工アルミ板金における曲げ加工では、ベンダー(折り曲げ機)を使用して直線的に折り曲げ加工を施すほか、R曲げ、V曲げ、Z曲げ、ヘミング曲げ、ロール曲げといったあらゆる曲げを、発注に応じて使い分けます。特に小ロットでの発注の場合など、金型を用いず、叩いて成型する曲げ加工を採用することもあります。アルミ材は、曲げやすいからこそ、精密な曲げ加工には熟練の技術と適切な加工が必須です。一度断られてしまった難加工も、Mitsuriにぜひお任せください。曲げ加工についてはこちら【曲げ加工】の基礎やV曲げ/L曲げ加工について徹底解説!!③溶接MAG溶接やTIG溶接といった一般的なシールドガスアーク溶接に加え、スポット溶接やレーザー溶接、抵抗溶接などあらゆる加工法を駆使して材を溶接します。またアルミ材の場合は、比較的低温で溶着可能なろう付けが用いられることも多いです。溶接加工は機械化が進んでいるものの、アルミ溶接において最後の仕上がりを左右するのはやはり人の経験と技術です。溶融点の低いアルミは、溶接するうちにどうしても歪みが発生してしまいます。また、厚みや求められる強度などによっても注意すべきポイントが異なるのですが、そんな微妙な作業の使い分けを行える職人が、Mitsuriの協力工場には揃っています。溶接についてはこちら溶接方法について専門家が解説!【協力工場130社以上】溶接でお困りならMitsuri!④切削切削加工は大きく分けて、固定した材に対して機械を回転させて切削するフライス加工と、材を回転させる旋削加工に分けられます。フライス加工は材の表面加工に適しており、アルミの場合は特に鏡面仕上げなどを施す加工がこれに当たります。そのほかにも、穴あけや溝削りといったさまざまな加工が可能です。旋削加工では、パイプ状に加工した材にテーパ加工を施したり、中ぐり、ねじ切り、突切りといった加工を行うことができます。アルミはその他の金属と比較して溶融点が低いうえに延性が大きいため、バリが発生しやすいのが難点です。対策として、良質な工具の選定が欠かせないほか、必要に応じてクーラントを使用するなどノウハウが求められます。そんな切削加工も、Mitsuriにぜひお任せください!切削加工についてはこちら【切削加工】切削加工の方法や特徴・種類を動画を交えてご紹介!!アルミ加工実績引用:有限会社 相和シボリ工業(170Φ×120Φ×560H・へら絞り加工)引用:有限会社 相和シボリ工業(20Φ×28Φ×90H・パイプ加工)引用:多摩電子株式会社引用:布施金属工業株式会社(曲げ加工・溶接・仕上げ)アルミ 加工を依頼するなら【アルミ加工のMitsuri】アルミ加工を依頼するなら、ぜひ技術と経験を備えた熟練の工場に依頼しましょう。では具体的に、アルミ加工を発注する際、・どれくらいの費用が掛かるのか・納品までどれくらいの期間が掛かるのかなどについて気になるのではないでしょうか。そんな時はMitsuriにお任せ下さい!Mitsuriでは日本全国各地、どこからでもご相談可能です。アルミ加工でお困りの際は、ぜひMitsuriにご相談ください!