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研削研磨加工

  • バフ研磨とは?用途、種類、メリット・デメリット

    バフ研磨とは、金属や樹脂などの表面を磨き上げて、滑らかに仕上げる研磨加工の一種です。例えばグレードの高いステンレス製品は、ピカピカに磨かれているものがありますが、このような製品の研磨はバフ研磨が採用されています。バフ研磨は、使用しているバフや研磨剤によって対応できる材質や用途が異なります。ここでは、バフ研磨の用途や種類、メリット・デメリットなどについて詳しく見てみましょう。参考:研磨加工とは?種類と加工手順、除去加工まで専門家が解説!バフ研磨とは引用元:日東金属工業株式会社 バフ研磨とはバフ研磨とは、金属の表面を研磨する手法の一種です。バフ研磨に使われる「バフ」とは、綿やウールなどの素材でできたホイール状の研磨道具を指します。バフは研磨剤を付けて高速で回転させ、ワークに接触させると研磨できます。バフは、磨いて輝かせるという意味を持つ英語の「buff」が由来です。バフ研磨の用途バフ研磨は、ワークの表面を磨いて凹凸を少なくし、滑らかにするために使われます。製品の表面が滑らかになるほどキレイになり、良好な精度や外観が得られます。研磨後は表面がツルツルになっているわけではなく、表面に微細な傷がついた状態になっています。細かい目で研磨すれば、ワークの表面に光沢が生まれるのも特徴です。また、ワークの表面に付いたホコリや汚れを除去したい場合にもバフ研磨が使われます。そのため、めっきや塗装加工前に、製品表面をバフ研磨して平滑にすることが多いです。バフ研磨を必要とする製品は、タンク・配管・装飾品・半導体部品・真空チャンバー・精密機械などが代表的です。バフ研磨の種類バフは数字で「○○番」または「#○○」と種類分けされていて、数字が大きいほど目の粗さが細かく、キレイに仕上がります。細かい目で研磨する場合は、基本的に粗磨きとして目の小さいもので研磨し、徐々に大きな番手を使って仕上げます。最終的に800番や1000番の目で研磨すると材料の表面に光沢が得られます。また、バフは番手以外にも材質により特徴が異なります。バフの材質は、麻バフ・綿バフ・ウールバフ・スポンジバフなどがあります。●麻バフ:主に粗研磨に使用するバフ。●綿バフ:麻バフに比べて当たりが柔らかく、中研磨や仕上げ研磨に使用するバフ。●ウールバフ:素材のキメが細かく、厚みがあるバフ。研磨力が高く、表面を均一に磨くことが可能で、表面の傷などを目立たなくするコンパウンドやツヤ出し、仕上げ研磨に使用。●スポンジバフ:ウールバフよりも研磨力が小さく、磨き傷がつきにくいバフ。車やバイクなど、塗装した箇所の仕上げやワックス用として使用。バフ研磨剤は、油脂類とアルミナや酸化クロムなどの研磨材を配合したものです。研磨剤の種類によって、金属用・非金属用・樹脂用などがあります。研磨剤の種類については、固形研磨剤と液状研磨剤のものがあります。引用元:サンライズ研磨材 青棒 BM840固形研磨剤は、白棒・赤棒・青棒などと呼ばれるものが代表的です。白棒は中研磨から仕上げ研磨まで幅広く使われています。赤棒は粒度が粗いので粗研磨にぴったりです。青棒は主に鏡面仕上げに適しています。液状研磨剤は、主に粘度の高いエマルジョン性が採用されています。液状研磨剤は、水分を含んでいるため、固形研磨剤に比べて研磨力は劣る傾向にあります。バフ研磨のメリット・デメリットメリット・製品表面の凹凸を少なくしてバリや傷の除去できる・製品表面を高精度かつ美しくするバフ研磨は、加工した製品にある表面の凹凸を少なくして平滑化できるほか、バリや傷、溶接ビードなどを除去できます。微細な加工を行うと、製品表面の精度が高くなり、美しい外観が得られます。デメリット・手作業で行うため、他の表面仕上げ処理に比べてコストがかかる・微細な傷の隙間に研磨剤が付着する・加工技術の差によりバラツキが出るバフ研磨は手作業で行うため、他の表面仕上げ加工と比べるとコストが高くなる傾向にあります。高度な処理を行う場合、作業者の加工技術の違いにより、仕上がりにバラツキが出る点もデメリットです。また、製品のバリや傷は除去できても、微細な傷の隙間に研磨剤が付着してしまいます。付着した研磨剤は、研磨後に洗浄を行っても完全に除去できるわけではないので注意が必要です。バフ研磨可能な材質バフ研磨は、各種金属や樹脂に対して研磨できます。ただし使用する研磨剤などにより、適した材質が異なるので注意が必要です。代表的な材質は、鉄・ステンレス・アルミ・チタン・プラスチックなどが挙げられます。生活のなかでよく見るステンレスは光沢がありますが、ステンレスの光沢は材質そのものの特性ではなく、バフ研磨により得られたものになります。

  • バイブレーション研磨とは?用途、特徴、種類

    今回はバイブレーション研磨の用途や特徴について解説します。バイブレーション研磨とは、金属の表面にランダムに模様を付ける研磨です。主にステンレス材の表面仕上げとして使われており、ヘアライン研磨製品と同じく建築建材で幅広く活用されています。参考:ステンレスのヘアライン加工の種類や特徴について専門家が解説!バイブレーション研磨とは引用元:株式会社新光ステンレス研磨 研磨種類バイブレーション研磨とは、ヘアラインのような統一された方向に金属を研磨するのではなく、無差別の方向に小さな弧を描いたような研磨を施すことで、別名「ランダムヘアライン」や「パーマネントヘアライン」とも呼ばれています。さまざまな材質に対応していますが、ステンレス材(SUS304)の表面仕上げに利用されることが多いです。バイブレーション研磨は梨地研磨の一種で、鏡面仕上げのような光沢や映り込みが少なく、遠目から見ると落ち着いた雰囲気になります。研磨する粒度や形状を変化させることで、細かいものから粗いものまで自在に加工を行えます。参考:SUS304とSUS430の意味とは? 使い分けや特徴も分かりやすく解説!バイブレーション研磨の用途と特徴バイブレーション研磨の特徴は以下の通りです。・光の反射が少ない・落ち着いた雰囲気と上質感がある・傷が目立ちにくいバイブレーション研磨は、ランダムな方向の模様が入るように、粗く研磨しています。手で触れても研磨の感触は少ないものの、見た目で分かるくらいの模様が施されています。光沢を抑えて研磨している分、光の反射は少なく、落ち着いた雰囲気を与えられるのが特徴です。また、鏡面仕上げやヘアライン仕上げと違って、キレイであったり規則性があったりする模様ではないので、傷が目立ちにくいのもポイントです。ただし、傷が目立ちにくいからといっても、研磨目の薄いバイブレーション研磨の場合は、傷や指紋が入りやすいので注意してください。バイブレーション研磨は、落ち着いた雰囲気と上質感があること、傷が目立ちにくいなどの特徴から、主にエレベーターやキッチン、建築建材の内外装などに採用されています。汎用的な研磨方法のため、材質はステンレス・チタン・アルミ・銅・真鍮と幅広いほか、角パイプ・丸パイプ・アングル・チャンネルなどの形鋼にも対応できます。バイブレーション研磨の種類ステンレスのバイブレーション研磨には、No.2B・BA・#400・#700・No.8などがあります。ここでは代表的な「2Bバイブレーション」と「BAバイブレーション」についてご紹介します。2Bバイブレーション2Bバイブレーションは、もっとも広く使用されているバイブレーション研磨のことで、やや光沢のある仕上がりが特徴です。2Bとは、「No.2B」の略で使われているステンレス材です。2Bは、冷間圧延後、焼鈍→酸洗で仕上げた「No.2D」の材料に、スキンパス圧延を施したものです。スキンパス圧延とは、冷間圧延後に焼きなましした鋼板に施される軽い圧延のことで、調質圧延とも呼ばれています。ステンレスの表面仕上げは、No.2以外にもNo.1~8までありますが、数字が大きくなるほど光沢のある仕上げになります。#400などについても、数値が大きいほうが、細かい目になり、光沢のある仕上げになります。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!BAバイブレーションBAバイブレーションは、2Bバイブレーションより少し光沢があるバイブレーション研磨です。BAとは、冷間圧延後に光輝焼鈍(無酸化焼鈍)を行ったステンレス材のことを指します。光輝焼鈍は、焼きなましを大気中ではなく、不活性ガスや中性ガスの中で行い、酸化皮膜の生成を防ぎ、光沢を維持しながら焼きなましをする手法です。

  • 円筒研削とは?種類やメリット・デメリットを解説

    金属加工の中でも高速で回転する研磨砥石を用いた加工方法のことを研削加工と呼んでいます。工具を用いて金属を削り取っていく切削加工や、工作物に研磨工具を押し当てて削っていく研磨とは異なる方法として分けられています。研削加工の中には平面研削や内面研削など、さまざまな種類がありますが、その中でも円筒状の工作物を制作するのに用いられる「円筒加工」についてご紹介します。円筒加工の種類やメリットについても詳しく解説していくので、円筒状の工作物を制作したい方は、ぜひ参考にしてください。円筒研削とは?円筒研削は、回転する研削砥石に対し、反対方向に回転する工作物を当てて外面を研削する加工方法のことで、一般的に円筒状の工作物を加工する際に用いられます。仕上がりの寸法精度が、旋盤やフライスによる加工に比べてはるかに高い特徴を持っています。高速回転する研削砥石に対し、工作物を押し当てるだけで、全体的に整った寸法の製品が出来上がります。主に、円筒軸や段つき軸、テーパ軸などの加工に用いられます。円筒研削の種類円筒研削は、大きく3種類に分けられます。それぞれの特徴を解説します。トラバース研削トラバース研削は、砥石を工作物の軸方向に平行移動させながら研削を行います。何度も往復することで表面を均等に整える加工方法です。長さが砥石よりも長く、段差がないものを加工するのに適しています。また、重量が重く移動させるのが難しい工作物に対しては、砥石台を移動指せるタイプのトラバース研削も使用されるようになっています。●トラバース研削のメリットトラバース研削の魅力は加工面の仕上がりの美しさ。非常に精度が高く、鏡面加工が施された円筒を作ることが可能です。●トラバース研削のデメリット加工物が長くなると、中央がたわみやすくなるため加工精度に注意が必要です。また、シャフトが回転するときに摩擦抵抗が大きくなり、シールが切れて油漏れに繋がるトラブルが比較的高い頻度で起こります。プランジ研削回転している加工物に対し、砥石を垂直に押し当てていく加工方法です。砥石や加工物をスライドさせずに研削するため、工作物や砥石の幅よりも短いものや長いものの一部を削るのに適しています。また、切削効率が良いため、量産部品の加工に向いています。●プランジ研削のメリット左右に動かず、砥石に対して工作物をしっかりと押し当てることができるため、力が強く伝わり、効率よく研削できる点が大きなメリットです。また、動力効率が良いため機械へのダメージが少なく、耐久性が高い点も魅力的です。●プランジ研削のデメリット砥石の幅を超えるワークの切削はできません。また、深い穴などの加工をする際、チップが詰まってしまうことがあるため、切り屑の排出方法を検討する必要があります。アンギュラ研削アンギュラスライド、アングルスライドとも呼ばれる加工法で、砥石に対して斜めの位置から研削を行う切削方法のことを言います。●アンギュラ研削のメリット斜めの角度に設定されていることにより、工作物の円筒部だけでなく、端面も同時に加工することが可能です。さらに、平面だけでなく、段付きのワークも効率的に削ることができ、部品全体の加工を短時間で終えることが可能です。●アンギュラ研削のデメリットトラバース研削のような鏡面の美しさや、高精度の製品に仕上げることは難しく、凹凸の加工も高い制度や細かい凹凸を実現することはできません。加工には一般的にNC装置が用いられますが、動きのプログラムが複雑になる上、経年劣化による補正値も考慮に入れなければならないため、大量生産時には注意が必要です。円筒研削のメリットとデメリットそれぞれの研削方法によっても異なる特徴があり、それぞれに違ったメリット、デメリットがありますが、総じて円筒研削は、数ある研削の中でも精度が高く幅広い素材の加工に適応します。また、溝などがあっても加工が可能です。一方で、動きや加工範囲には制限があり、一定以上に自由度を高めようとすると精度や仕上がりの質が下がってしまいます。また、時間がかかる加工ということもあり、生産性がなかなか上がらないため、大量生産には向いていない点もデメリットと言えます。

  • Mitsuri|金属加工

    内面研削とは?種類や特徴、メリットを解説

    今回は内面研削の特徴や種類について解説します。内面研削は、平面研削と同じく研削加工の一種で、高速で回転する砥石を当てて、穴の内面を仕上げる加工を指します。参考:研削盤とは?研削盤と研削加工の種類や切削加工との違い内面研削とは引用元:SANYO DENSHI 高精度な研削加工内面研削とは、ワークの穴の内面を研削することを指します。高速回転するホイールにより研削を行い、表面粗さや形状を所定の精度で仕上げることが可能です。内面研削が行われる主な被削材は、ギア・ベアリング・シリンダー・金型などの内輪・内径が挙げられます。内面研削の特徴とメリット内面研削は、砥石を穴の中に入れて回転させ、砥石の一点が内径に当たるようにして加工を行う仕組みです。そのため前加工に依存せずに、1つの砥石でさまざまな穴径の加工に対応できます。また、段形状や、テーパー状の内面研削も可能です。内面研削盤の種類普通形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削普通形は、砥石を穴の中に入れて、ワークと砥石のどちらも回転させて研削する方法です。砥石は主軸方向にも往復しながら加工を行います。加工精度については、後述するプラネタリ形よりも普通形のほうが優れています。プラネタリ形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削プラネタリ形は、加工軸に遊星運動を与えて研削する方法です。主に大きな製品や形の複雑なワークの内面を加工する場合に用いられます。センタレス形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削センタレス形は、ワークをチャッキングせずに、ワークの外周を各種ロールで支持して内面研削する構造を指します。センタレス形は、加工部分が全長に沿って支持される仕組みのため、均一な研削が可能です。また、ワークの取り付け・取り外しが容易で、生産性に優れています。シュー形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削シュー形は、センタレス形の一種で、ワークの外径を2点のシューで支持する構造を指します。ワークの端面を基準にして磁石の力により吸着させ、ワークを回転させます。内面研削の砥石について内面研削では、ワークの穴径に入れて加工を行う仕組み上、穴径よりも小さい砥石を使わなければなりません。また、穴の長さに対応できるように、砥石軸の長さも必要とします。砥石が小さいと摩耗しやすく、ワークの加工精度に悪影響を及ぼします。また、砥石軸が長いとたわみやすくなり、同様に加工精度を損う要因となります。これらを避けるためにも、内面研削では、砥石と砥石軸のどちらも剛性を高く保つ必要があります。ホーニング加工との違いホーニング加工は、内面研削と同様にワークの穴の内径を仕上げる加工を指します。しかし、ホーニング加工と内面研削では、加工の方法に違いがあります。ホーニング加工は、マンドレルと呼ばれる円柱状の回転工具の側面に砥石を搭載し、スプリングや油圧の力でワークの内面に砥石全体を押し付けて回転させ、加工を行います。対して内面研削は、砥石の一部分のみを当て、砥石とワークを回転させて加工を行います。それぞれの加工のイメージは下図を参照してください。引用元:株式会社酒井鉄工所 現場たたき上げ技術者の機械工学 ホーニング盤、穴仕上げのスペシャリストこのことからホーニング加工の場合は、穴を仕上げる前と後で位置ズレが起こる心配がなく、高精度で穴の真円度や面粗さを仕上げられます。ただし、前加工の精度に依存するほか、マンドレルによって加工できる穴径が限られます。内面研削の場合は、穴の精度はホーニング加工に劣るものの、砥石がワークの中に入りさえすれば、機械のストローク分までの穴径に対応できます。参考:ホーニング加工とは?ホーニング加工のメリット・デメリットについても詳しく解説!

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    溶接歪みの原因について解説!修正法やそもそも歪みを出さない溶接法についてもご紹介!

    「金属を溶接で接合したいけど歪むと困るなぁ…」「知り合いに溶接を依頼したら出来上がりのものがかなり歪んでいた…」溶接歪みの発生は金属の接合を難しくしている要因であるため、製品に満足できなかったり、作りたいものがあっても一歩踏み出せない人もいるのではないでしょうか?確かに溶接歪みは金属を溶接すると必ず起こる現象で、製品の精度や見た目に大きく影響します。金属の種類によっては少しの溶接箇所で大きく歪んでしまうこともあるでしょう。しかし溶接歪みは正しい対処法があり、熟練した作業や適切な溶接方法を用いれば最小限に抑えることができます。そこでこの記事では、溶接歪みのメカニズムや対処方法、溶接歪みを発生させないファイバーレーザー溶接についてご紹介します。※溶接の基本についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。⇒溶接に関する『10の基本知見』製造業マニアの私が切る!【重要】溶接歪みとは?そもそも溶接歪みとはどのような状態なのでしょうか?金属を熱で溶かして接合する溶接は、母材の金属が非常に高温になります。高温になった金属は一旦は膨張しますが、反対に冷却されると縮小していきます。もちろん均一に戻れば歪みは発生しませんが、溶接は接合部を溶融するため、局部的に金属を熱する必要があります。そのため現代の溶接方法では対策をしなければほとんどの確率で溶接歪みが発生します。製品の中には精度が求められたり、外見上の出来栄えも求められる製品もあります。そのため溶接歪みによって製品の品質基準を満たせなくなることも少なくありません。これが溶接作業の難しい点でもあります。溶接作業は母材をきちんと接合するだけでなく、溶接歪みを小さくして出来上がりの変形を少なくするための工夫も求められるのです。溶接歪みの原因溶接歪みと言っても製品の形状により「収縮」が起こったり、「反り返り」が発生したりと様々な種類があります。さらにいくつもの歪みが重なり、複雑に変形することもあるため、製品作りの前には溶接歪みの原因を知り、どういう形状になるか把握しておく必要があります。溶接歪みの主な原因は「母材に対して必要以上に熱を与えること」とも言えるでしょう。もちろん金属の接合のためには、母材を溶かしこむだけの熱量が必要ですが、必要以上に熱を与え続けることで製品自体が大きく歪む原因にもなります。溶接のメカニズムをもう少し詳しくご説明すると、溶接によって金属に与えられた熱は周囲の金属に熱伝導していきます。例えば様々な溶接作業で用いられる「TIG溶接」ではアーク部分の温度は約4000~5000℃にもなるとも言われています。また金属自体の熱伝導率も非常に高いため、溶接作業を行うと製品全体があっという間に高温になり、高温になった金属は膨張を始めます。膨張した原子が冷却されると、伸びた原子の結合が元に戻ろうとします。均一に熱することができれば膨張も均等に起こるため、冷却後は元の形に戻ります。しかし溶接によって局部的に高温になると一部の膨張率が大きくなるものの、反対に他の部分の膨張率は小さくなります。均等に広がらず片方に力が集中すると、やがて製品に歪みが発生します。歪みは変形しやすい方向に集中するため、母材の長さや幅方向では発生しづらく、面外方向への変形が多い傾向があります。板厚の薄い母材では座屈変形が発生するため、歪み対策をしていなければ極端に変形することもあるでしょう。溶接歪みの防止方法母材に対してどれだけ溶接熱量をコントロールできるかが歪みを抑える基本となりますので、必要最低限の溶接時間となるようにするのが理想的です。しかし熱量を下げすぎると、しっかり溶融できずに溶着不良にも繋がるため、コントロールするのは容易ではありません。そのため実際の溶接現場では以下のような対策が実施されています。タイトル・治具で固定して溶接歪みを抑える・仮付けをしてから溶接する・歪み量を予想した形状の母材を使用する・溶接熱が集中しないようにする・溶接の順番を工夫して歪みをコントロールする・変形した部分を叩いて修正しながら溶接する治具で固定して溶接歪みを抑える引用元:株式会社エステーリンク溶接により製品が歪むのであれば、母材が動かないようにあらかじめ治具で固定してしまおうという方法です。通常の溶接テーブルに製品の形状に合わせたクランプで固定するため、溶接歪みによる変形を防止できます。製品によっては専用のクランプが必要であるため製作費用がかかりますが、一度固定してしまえば誰でも簡単に製品の精度が出せます。歪み量を予想した形状の母材を使用する引用元:WELDTOOL溶接歪みを完全には抑えることができないのであれば、出来上がり時に目的の形状になるよう、あらかじめ歪み量を見越した形状で溶接を始める方法もあります。歪みを修正する必要がありませんので、出来上がりの精度が高い特徴があります。一方、歪み量の予測には熟練の経験が必要であるため、高度な技術が必要とも言えるでしょう。仮付けをしてから溶接する溶接歪みにより母材が変形しないように、あらかじめ仮付け(点付け溶接)をしておきます。ただし歪自体は抑えることができないため、仮付け箇所が多いと応力の行き先がなくなり、母材自体に負荷がかかります。負荷が大きいとクラックの発生や製品が割れる可能性も高くなります。そのため仮付けのみで対応するのではなく、他の対処方法と組み合わせて利用されます。溶接熱が集中しないようにする引用元:鉄友工業株式会社溶接の熱が集中しないように母材の熱を逃がす方法もあります。例えば母材の下に熱伝導率が良い「銅板」や「鋼板」を敷いて熱を逃がしたり、鋼板に水をかけて冷却します。上の写真では水を霧状に吹き付けて溶接箇所を冷却する装置で、歪みの影響を受けやすい製品でも最小限の歪みに抑えることができます。そのほかにも、溶接で使用する電極棒の先端の接触角度でも熱の伝わり方が変わるため、必要以上に熱を発しない角度に合わせて溶接する方法もあります。溶接の順番を工夫して歪みをコントロールする何も考えすに溶接ビードを引いた場合、直線の熱が次々と伝わり歪みが大きくなるため、1点に熱が集中しないよう溶接の順番をコントロールする方法もあります。片方の溶接が終了したら反対側を溶接して熱を均等に逃したり、歪む方向を意識しながら溶接ビードを反対方向に引く方法などがあります。溶接の順番を見つけるのは熟練した人でないと難しいものの、一度最適な方法を見つけると溶接の順番をマニュアルに記載して管理できるメリットもあります。そのため誰でもできる歪み対策として、生産現場で広く活用されている方法とも言えるでしょう。参考※溶接現場で必要な資格についてはこちらで詳しくご紹介しています。⇒【溶接の資格】プロの溶接工がとっておくべき資格を“一挙大公開”!変形した部分を叩いて修正しながら溶接する溶接で変形した部分をその都度叩いて元の形に戻す方法もあります。一見力技のように聞こえるかもしれませんが、少しづつ叩きながら調整するため、製品に与えるダメージはほとんどありません。ただし修正しながらの作業はかなりの工数が必要のため、大量生産品の製造には向かないとも言えるでしょう。溶接歪みを最小限に抑える新技術【ファイバーレーザー溶接】引用元:菊川工業株式会社レーザー溶接の一種であるファイバーレーザー溶接は、「希土類添加ファイバー」を媒質とした溶接で、光軸のズレや外部要因による光損失が殆ど無く、加工面まで効率良くレーザー光を伝達できる特徴があります。そのためファイバーレーザー溶接は、以下が可能になります。・非接触加工・局所的な加熱・小径スポット他の溶接作業と比べてビード幅に対する溶け込み量が深く、焼けや歪みが少ない高品質な溶接が可能です。特に局部的に集中してレーザーを当てることで製品自体が高温になりにくく、ほとんど歪みを生じません。歪み取りの工程削減や大掛かりな治具を使用しなくても済むため、製造コストを大幅に削減できるでしょう。さらにこれまでの歪み対策のほとんどは熟練した職人の経験により管理されていたため、人によって製品の出来栄えが異なることも少なくありませんでした。しかしファイバーレーザー溶接を採用することで、誰でも均一な製品に仕上げることが可能となりました。ファイバーレーザー溶接は設備も新しく、導入されていない工場も多いのですが、もちろんMitsuriの提携工場でもファイバーレーザー溶接を導入している工場が多数ありますので、お気軽にご相談ください。※レーザー溶接についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。⇒【レーザー溶接】仕組み(原理)やメリット・デメリットなどの特徴をご紹介!!まとめ溶接歪みは必要以上の溶接熱が母材に伝わり、熱膨張や収縮によって母材自体が動き、変形してしまうことを言います。溶接歪みを抑えて精度の高い製品を仕上げるためには製品によって適切な歪み対策が必要となります。しかし高品質な溶接を求めればその分コストがかかり、製作費用についても頭を悩ませると思います。そんな時はぜひMitsuriにご相談ください!Mitsuriでは日本全国に100社以上の提携工場があり、溶接のスペシャリストとも言える工場とも多数提携しておりますので、「精度が求められる製品をコストを抑えて作りたい」と言うご相談も可能です。金属の溶接でお困りであれば、まずMitsuriにご相談ください!

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    プロジェクション溶接のメリット・デメリットを他の溶接手法と比較しながら解説します!

    一口に溶接といっても、種類や方法は様々です。大きく分けると、金属を溶かして接合させる「融接」、熱と圧力を加えることで接合させる「圧接」、はんだ付けのように溶けやすい金属を使用する「ろう接」の3つがあります。そして、そのなかでも種類や方法は細かく分かれます。今回は、熱と圧力の力で溶接する「圧接」に分類される「プロジェクション溶接」について、分かりやすく解説していきます。プロジェクション溶接とは「プロジェクション」とは突起という意味です。溶接したい金属部材の一方にプロジェクション(突起)を作り、加圧しながら集中して電流を流します。金属の抵抗発熱によりプロジェクションが溶けることで部材同士を溶接します。プロジェクション溶接には大きく分けて「エンボスプロジェクション」と「ソリッドプロジェクション」の2種類があります。それでは、この2種類について簡単に説明していきます。エンボスプロジェクション「エンボスプロジェクション」は、平板にプレス加工などで突起部を作り、そこに電流を集中させて溶接を行います。溶接点を何か所も作ることが出来るため、同時に多数の溶接をすることが可能です。また、溶接時には突起部を溶かすため、スポット溶接と同じようにナゲット(くぼみとくぼみの間の溶けた金属部)が出来ます。引用元:溶接革命ソリッドプロジェクション「ソリッドプロジェクション」は、板の角や丸棒の交差などの初めからある突起を利用して溶接を行います。エンボスプロジェクションでは突起部の間が空洞なのに対し、ソリッドプロジェクションでは空洞がありません。また、加圧や給電する部位は溶接点から距離があります。引用元:溶接革命スポット溶接との違いプロジェクション溶接は、圧接の中の「抵抗溶接」に分類される溶接方法です。抵抗溶接とは、金属部材に電極を当て加圧しつつ、数十アンペア~数万アンペアの電流を流すことで、金属の抵抗発熱(電気ポットや電気こたつなどに用いられ、金属の抵抗により強い熱が発生する)を利用して溶接する方法です。スポット溶接とプロジェクション溶接は同じ抵抗溶接という点で、類似点が多くあります。どちらも加圧・通電により溶接を行いますが、突起部を溶接するプロジェクション溶接とは違い、スポット溶接では平面の金属に電極を当て加圧・通電を行います。プロジェクション溶接機についてプロジェクション溶接機は、コンデンサ式とインバータ式が主流です。コンデンサ式プロジェクション溶接機コンデンサ式は交流式抵抗溶接機で、短時間で溶接でき、非金属にも対応できます。コンデンサ式は、コンデンサに充電することで、大電流を放電することができます。そのため入力電源の容量が小さくても、大電流を電極に通電させることができ、難溶材である熱伝導の良いアルミや銅などへ安定した溶接ができるのです。加えて、電源設備の容量も比較的低く抑えられるところも良い点です。しかし、コンデンサ式は電流の立ち上がりが急速で傾斜角を制御できないため、時間制御ができず、打点速度にも制限があり、外部回路が電源波形に影響するため、自動化することは難しいです。加圧力も大きくしないと溶融した鋼が飛散するスプラッシュが発生しやすくなります。インバータ式プロジェクション溶接機インバータ式は、電力効率も高く溶接条件範囲が広域に取れるため、品質の高い溶接が可能です。また、溶接金属の飛散(散り)や飛散した金属がワークにつくスパッタも抑えられるため、きれいな作業環境に改善することができます。三相入力による電源で、負荷バランスもとりやすくなっています。インバータ式プロジェクション溶接機には、直流と交流があります。●直流インバータ式交流式と違い直流は電流の休止時間がないため、母材に効率よく連続して電流を流し、熱を供給できます。熱効率が良いため溶接が短時間ででき、熱による歪みの影響も抑えられます。トランスが小型のタイプは、自動機に搭載することが可能です。●交流インバータ式交流インバータ式は、リード線の切断部のほころび防止やモーターコイルと端子を溶接するための熱かしめ(ヒュージング)に最適です。交流インバータ式は交流なので、直流で起きやすいペルチェ効果現象が少なくなります。ペルチェ効果とは、異なる金属を重ねて電流を流すと、金属面に熱の移動が発生する現象のことです。金属面に熱の移動が起きると、一方は発熱し、もう一方は吸熱します。金属の溶接は、発熱する側は溶着しやすくなり、吸熱側は溶着しにくくなるのです。直流の場合、電極の一方で発熱し他方が吸熱するため、発熱側を放熱して温度を下げ融点のバランスをとらないと、品質の高い溶接ができません。しかし、交流の場合は極性が反転するため、発熱と吸熱も反転して起こりペルチェ効果が相殺され、放熱などをしなくても品質の良い溶接ができます。また、交流用の溶接トランスが使用できるため、わざわざ直流に変換する工数も省けます。参考記事スポット溶接の詳細は下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。⇒スポット溶接とは【専門家が解説】 他の溶接との違いをわかりやすく お伝えします!スポット溶接では、電極の加圧力や通電する時間、電流の組み合わせなど、条件の設定は比較的自由です。しかし、プロジェクション溶接では条件設定の自由度は低くなります。例としては、電極の加圧力を極端に高くすると低い温度でプロジェクション部に圧力がかかり潰れてしまいます。すると、通電する部分が拡大し、熱が集中せずに温度が維持出来ません。また、電流が大きすぎると、温度の上がるスピードが速くなるため、溶接する部分が飛散してしまいます。これでは通電する時間を短縮しても正常な溶接が出来ません。プロジェクション溶接は、スポット溶接と比較して条件の設定は難しいですが、その分圧力と熱を集中出来るので少ない力での溶接が可能です。また、小さな部品でも治具電極などの設備の設定をすれば溶接が可能になる精密さも持ち合わせています。プロジェクション溶接の特徴部材や仕上がりなどの条件によって溶接方法には向き・不向きがあります。プロジェクション溶接のメリット・デメリットについて簡単に見ていきましょう。メリット・アーク溶接のようにスパッタ(溶接時に発生する金属の粒)や有害な紫外線が発生しない。・作業工程を自動化しやすく機械的な作業のため、アーク溶接やガス溶接のように作業者の技術の熟練度が必要ない。・短時間で効率的に溶接することが可能で、加工のコストが安価で大量に生産が出来る。・熱による変形などの影響が出ないため、仕上がりが美しい。デメリット・溶接する部分が多くなると溶接装置が大型になる。・一度に多数のプロジェクションを溶接する際に、高さを綿密に揃え平行に設定しなければならない。・溶接機が高価・溶接材へプロジェクション加工や治具電極製作が必要になるので少量生産には向いていない。・溶接部品の位置決めに治具電極製作を用いるため、設計能力が必要。プロジェクション溶接の製品事例金属部材を大量に溶接する際には、スポット溶接よりプロジェクション溶接が向いています。複雑な形状でも精密な溶接が可能で加工が難しい部材にも対応が可能です。また、位置決めや治具電極製作をすれば工程を減らすことも出来るため、極めて効率の良い溶接が可能です。それでは、具体的な製品事例を見ていきましょう。「エンボスプロジェクション」の製品事例エンボスプロジェクションは、主にオイルフィルタやガソリンタンクのレインフォースなどで用いられます。引用元:有限会社 こだま製作所上の写真のような小さな部品を溶接で組み立てる際には、精密さが要求されます。溶接する位置や範囲、圧力、電流などが多すぎると歪みの発生や、外観が損なわれる原因となります。そこで、あらかじめ部品にプレス加工でプロジェクションを作ることで、溶接部を最小限に抑えます。それにより小さな部品でも歪みや変色などの熱影響が少なく、外観の美しさや強度を持った溶接が可能になります。「ソリッドプロジェクション」の製品事例ソリッドプロジェクションはナットやボルトの溶接のほか、スタビライザやブレーキドラムなどにもよく用いられます。引用元:有限会社 こだま製作所従来、上の写真のような部材は金属棒から切削加工で成型していました。しかし、量産性を上げる必要が出たため、部品を丸板とネジに分け、ソリッドプロジェクションにより2つを溶接する事で、量産性を格段に上げることに成功しました。また、初期費用はかかりますが、結果的にコストを下げることにも成功しました。まとめ突起部に加圧しつつ電流を流すことで効率よく精密な溶接が可能なプロジェクション溶接をご紹介しました。技術の熟練が必要ないプロジェクション溶接は、治具電極などを作ってしまえば工程を自動化出来るため誰にでも簡単に溶接することが可能です。また機械自体は高価ですが、加工には手間がかからないため加工コストは安価です。一度に多くの溶接をする必要があるけれど、設備や設定が難しい・・・そんな方は、ぜひMitsuriにご相談ください!

  • バフ研磨とは?用途、種類、メリット・デメリット

    バフ研磨とは、金属や樹脂などの表面を磨き上げて、滑らかに仕上げる研磨加工の一種です。例えばグレードの高いステンレス製品は、ピカピカに磨かれているものがありますが、このような製品の研磨はバフ研磨が採用されています。バフ研磨は、使用しているバフや研磨剤によって対応できる材質や用途が異なります。ここでは、バフ研磨の用途や種類、メリット・デメリットなどについて詳しく見てみましょう。参考:研磨加工とは?種類と加工手順、除去加工まで専門家が解説!バフ研磨とは引用元:日東金属工業株式会社 バフ研磨とはバフ研磨とは、金属の表面を研磨する手法の一種です。バフ研磨に使われる「バフ」とは、綿やウールなどの素材でできたホイール状の研磨道具を指します。バフは研磨剤を付けて高速で回転させ、ワークに接触させると研磨できます。バフは、磨いて輝かせるという意味を持つ英語の「buff」が由来です。バフ研磨の用途バフ研磨は、ワークの表面を磨いて凹凸を少なくし、滑らかにするために使われます。製品の表面が滑らかになるほどキレイになり、良好な精度や外観が得られます。研磨後は表面がツルツルになっているわけではなく、表面に微細な傷がついた状態になっています。細かい目で研磨すれば、ワークの表面に光沢が生まれるのも特徴です。また、ワークの表面に付いたホコリや汚れを除去したい場合にもバフ研磨が使われます。そのため、めっきや塗装加工前に、製品表面をバフ研磨して平滑にすることが多いです。バフ研磨を必要とする製品は、タンク・配管・装飾品・半導体部品・真空チャンバー・精密機械などが代表的です。バフ研磨の種類バフは数字で「○○番」または「#○○」と種類分けされていて、数字が大きいほど目の粗さが細かく、キレイに仕上がります。細かい目で研磨する場合は、基本的に粗磨きとして目の小さいもので研磨し、徐々に大きな番手を使って仕上げます。最終的に800番や1000番の目で研磨すると材料の表面に光沢が得られます。また、バフは番手以外にも材質により特徴が異なります。バフの材質は、麻バフ・綿バフ・ウールバフ・スポンジバフなどがあります。●麻バフ:主に粗研磨に使用するバフ。●綿バフ:麻バフに比べて当たりが柔らかく、中研磨や仕上げ研磨に使用するバフ。●ウールバフ:素材のキメが細かく、厚みがあるバフ。研磨力が高く、表面を均一に磨くことが可能で、表面の傷などを目立たなくするコンパウンドやツヤ出し、仕上げ研磨に使用。●スポンジバフ:ウールバフよりも研磨力が小さく、磨き傷がつきにくいバフ。車やバイクなど、塗装した箇所の仕上げやワックス用として使用。バフ研磨剤は、油脂類とアルミナや酸化クロムなどの研磨材を配合したものです。研磨剤の種類によって、金属用・非金属用・樹脂用などがあります。研磨剤の種類については、固形研磨剤と液状研磨剤のものがあります。引用元:サンライズ研磨材 青棒 BM840固形研磨剤は、白棒・赤棒・青棒などと呼ばれるものが代表的です。白棒は中研磨から仕上げ研磨まで幅広く使われています。赤棒は粒度が粗いので粗研磨にぴったりです。青棒は主に鏡面仕上げに適しています。液状研磨剤は、主に粘度の高いエマルジョン性が採用されています。液状研磨剤は、水分を含んでいるため、固形研磨剤に比べて研磨力は劣る傾向にあります。バフ研磨のメリット・デメリットメリット・製品表面の凹凸を少なくしてバリや傷の除去できる・製品表面を高精度かつ美しくするバフ研磨は、加工した製品にある表面の凹凸を少なくして平滑化できるほか、バリや傷、溶接ビードなどを除去できます。微細な加工を行うと、製品表面の精度が高くなり、美しい外観が得られます。デメリット・手作業で行うため、他の表面仕上げ処理に比べてコストがかかる・微細な傷の隙間に研磨剤が付着する・加工技術の差によりバラツキが出るバフ研磨は手作業で行うため、他の表面仕上げ加工と比べるとコストが高くなる傾向にあります。高度な処理を行う場合、作業者の加工技術の違いにより、仕上がりにバラツキが出る点もデメリットです。また、製品のバリや傷は除去できても、微細な傷の隙間に研磨剤が付着してしまいます。付着した研磨剤は、研磨後に洗浄を行っても完全に除去できるわけではないので注意が必要です。バフ研磨可能な材質バフ研磨は、各種金属や樹脂に対して研磨できます。ただし使用する研磨剤などにより、適した材質が異なるので注意が必要です。代表的な材質は、鉄・ステンレス・アルミ・チタン・プラスチックなどが挙げられます。生活のなかでよく見るステンレスは光沢がありますが、ステンレスの光沢は材質そのものの特性ではなく、バフ研磨により得られたものになります。

  • バイブレーション研磨とは?用途、特徴、種類

    今回はバイブレーション研磨の用途や特徴について解説します。バイブレーション研磨とは、金属の表面にランダムに模様を付ける研磨です。主にステンレス材の表面仕上げとして使われており、ヘアライン研磨製品と同じく建築建材で幅広く活用されています。参考:ステンレスのヘアライン加工の種類や特徴について専門家が解説!バイブレーション研磨とは引用元:株式会社新光ステンレス研磨 研磨種類バイブレーション研磨とは、ヘアラインのような統一された方向に金属を研磨するのではなく、無差別の方向に小さな弧を描いたような研磨を施すことで、別名「ランダムヘアライン」や「パーマネントヘアライン」とも呼ばれています。さまざまな材質に対応していますが、ステンレス材(SUS304)の表面仕上げに利用されることが多いです。バイブレーション研磨は梨地研磨の一種で、鏡面仕上げのような光沢や映り込みが少なく、遠目から見ると落ち着いた雰囲気になります。研磨する粒度や形状を変化させることで、細かいものから粗いものまで自在に加工を行えます。参考:SUS304とSUS430の意味とは? 使い分けや特徴も分かりやすく解説!バイブレーション研磨の用途と特徴バイブレーション研磨の特徴は以下の通りです。・光の反射が少ない・落ち着いた雰囲気と上質感がある・傷が目立ちにくいバイブレーション研磨は、ランダムな方向の模様が入るように、粗く研磨しています。手で触れても研磨の感触は少ないものの、見た目で分かるくらいの模様が施されています。光沢を抑えて研磨している分、光の反射は少なく、落ち着いた雰囲気を与えられるのが特徴です。また、鏡面仕上げやヘアライン仕上げと違って、キレイであったり規則性があったりする模様ではないので、傷が目立ちにくいのもポイントです。ただし、傷が目立ちにくいからといっても、研磨目の薄いバイブレーション研磨の場合は、傷や指紋が入りやすいので注意してください。バイブレーション研磨は、落ち着いた雰囲気と上質感があること、傷が目立ちにくいなどの特徴から、主にエレベーターやキッチン、建築建材の内外装などに採用されています。汎用的な研磨方法のため、材質はステンレス・チタン・アルミ・銅・真鍮と幅広いほか、角パイプ・丸パイプ・アングル・チャンネルなどの形鋼にも対応できます。バイブレーション研磨の種類ステンレスのバイブレーション研磨には、No.2B・BA・#400・#700・No.8などがあります。ここでは代表的な「2Bバイブレーション」と「BAバイブレーション」についてご紹介します。2Bバイブレーション2Bバイブレーションは、もっとも広く使用されているバイブレーション研磨のことで、やや光沢のある仕上がりが特徴です。2Bとは、「No.2B」の略で使われているステンレス材です。2Bは、冷間圧延後、焼鈍→酸洗で仕上げた「No.2D」の材料に、スキンパス圧延を施したものです。スキンパス圧延とは、冷間圧延後に焼きなましした鋼板に施される軽い圧延のことで、調質圧延とも呼ばれています。ステンレスの表面仕上げは、No.2以外にもNo.1~8までありますが、数字が大きくなるほど光沢のある仕上げになります。#400などについても、数値が大きいほうが、細かい目になり、光沢のある仕上げになります。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!BAバイブレーションBAバイブレーションは、2Bバイブレーションより少し光沢があるバイブレーション研磨です。BAとは、冷間圧延後に光輝焼鈍(無酸化焼鈍)を行ったステンレス材のことを指します。光輝焼鈍は、焼きなましを大気中ではなく、不活性ガスや中性ガスの中で行い、酸化皮膜の生成を防ぎ、光沢を維持しながら焼きなましをする手法です。

  • 円筒研削とは?種類やメリット・デメリットを解説

    金属加工の中でも高速で回転する研磨砥石を用いた加工方法のことを研削加工と呼んでいます。工具を用いて金属を削り取っていく切削加工や、工作物に研磨工具を押し当てて削っていく研磨とは異なる方法として分けられています。研削加工の中には平面研削や内面研削など、さまざまな種類がありますが、その中でも円筒状の工作物を制作するのに用いられる「円筒加工」についてご紹介します。円筒加工の種類やメリットについても詳しく解説していくので、円筒状の工作物を制作したい方は、ぜひ参考にしてください。円筒研削とは?円筒研削は、回転する研削砥石に対し、反対方向に回転する工作物を当てて外面を研削する加工方法のことで、一般的に円筒状の工作物を加工する際に用いられます。仕上がりの寸法精度が、旋盤やフライスによる加工に比べてはるかに高い特徴を持っています。高速回転する研削砥石に対し、工作物を押し当てるだけで、全体的に整った寸法の製品が出来上がります。主に、円筒軸や段つき軸、テーパ軸などの加工に用いられます。円筒研削の種類円筒研削は、大きく3種類に分けられます。それぞれの特徴を解説します。トラバース研削トラバース研削は、砥石を工作物の軸方向に平行移動させながら研削を行います。何度も往復することで表面を均等に整える加工方法です。長さが砥石よりも長く、段差がないものを加工するのに適しています。また、重量が重く移動させるのが難しい工作物に対しては、砥石台を移動指せるタイプのトラバース研削も使用されるようになっています。●トラバース研削のメリットトラバース研削の魅力は加工面の仕上がりの美しさ。非常に精度が高く、鏡面加工が施された円筒を作ることが可能です。●トラバース研削のデメリット加工物が長くなると、中央がたわみやすくなるため加工精度に注意が必要です。また、シャフトが回転するときに摩擦抵抗が大きくなり、シールが切れて油漏れに繋がるトラブルが比較的高い頻度で起こります。プランジ研削回転している加工物に対し、砥石を垂直に押し当てていく加工方法です。砥石や加工物をスライドさせずに研削するため、工作物や砥石の幅よりも短いものや長いものの一部を削るのに適しています。また、切削効率が良いため、量産部品の加工に向いています。●プランジ研削のメリット左右に動かず、砥石に対して工作物をしっかりと押し当てることができるため、力が強く伝わり、効率よく研削できる点が大きなメリットです。また、動力効率が良いため機械へのダメージが少なく、耐久性が高い点も魅力的です。●プランジ研削のデメリット砥石の幅を超えるワークの切削はできません。また、深い穴などの加工をする際、チップが詰まってしまうことがあるため、切り屑の排出方法を検討する必要があります。アンギュラ研削アンギュラスライド、アングルスライドとも呼ばれる加工法で、砥石に対して斜めの位置から研削を行う切削方法のことを言います。●アンギュラ研削のメリット斜めの角度に設定されていることにより、工作物の円筒部だけでなく、端面も同時に加工することが可能です。さらに、平面だけでなく、段付きのワークも効率的に削ることができ、部品全体の加工を短時間で終えることが可能です。●アンギュラ研削のデメリットトラバース研削のような鏡面の美しさや、高精度の製品に仕上げることは難しく、凹凸の加工も高い制度や細かい凹凸を実現することはできません。加工には一般的にNC装置が用いられますが、動きのプログラムが複雑になる上、経年劣化による補正値も考慮に入れなければならないため、大量生産時には注意が必要です。円筒研削のメリットとデメリットそれぞれの研削方法によっても異なる特徴があり、それぞれに違ったメリット、デメリットがありますが、総じて円筒研削は、数ある研削の中でも精度が高く幅広い素材の加工に適応します。また、溝などがあっても加工が可能です。一方で、動きや加工範囲には制限があり、一定以上に自由度を高めようとすると精度や仕上がりの質が下がってしまいます。また、時間がかかる加工ということもあり、生産性がなかなか上がらないため、大量生産には向いていない点もデメリットと言えます。

  • Mitsuri|金属加工

    内面研削とは?種類や特徴、メリットを解説

    今回は内面研削の特徴や種類について解説します。内面研削は、平面研削と同じく研削加工の一種で、高速で回転する砥石を当てて、穴の内面を仕上げる加工を指します。参考:研削盤とは?研削盤と研削加工の種類や切削加工との違い内面研削とは引用元:SANYO DENSHI 高精度な研削加工内面研削とは、ワークの穴の内面を研削することを指します。高速回転するホイールにより研削を行い、表面粗さや形状を所定の精度で仕上げることが可能です。内面研削が行われる主な被削材は、ギア・ベアリング・シリンダー・金型などの内輪・内径が挙げられます。内面研削の特徴とメリット内面研削は、砥石を穴の中に入れて回転させ、砥石の一点が内径に当たるようにして加工を行う仕組みです。そのため前加工に依存せずに、1つの砥石でさまざまな穴径の加工に対応できます。また、段形状や、テーパー状の内面研削も可能です。内面研削盤の種類普通形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削普通形は、砥石を穴の中に入れて、ワークと砥石のどちらも回転させて研削する方法です。砥石は主軸方向にも往復しながら加工を行います。加工精度については、後述するプラネタリ形よりも普通形のほうが優れています。プラネタリ形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削プラネタリ形は、加工軸に遊星運動を与えて研削する方法です。主に大きな製品や形の複雑なワークの内面を加工する場合に用いられます。センタレス形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削センタレス形は、ワークをチャッキングせずに、ワークの外周を各種ロールで支持して内面研削する構造を指します。センタレス形は、加工部分が全長に沿って支持される仕組みのため、均一な研削が可能です。また、ワークの取り付け・取り外しが容易で、生産性に優れています。シュー形引用元:クレトイシ株式会社 内面研削シュー形は、センタレス形の一種で、ワークの外径を2点のシューで支持する構造を指します。ワークの端面を基準にして磁石の力により吸着させ、ワークを回転させます。内面研削の砥石について内面研削では、ワークの穴径に入れて加工を行う仕組み上、穴径よりも小さい砥石を使わなければなりません。また、穴の長さに対応できるように、砥石軸の長さも必要とします。砥石が小さいと摩耗しやすく、ワークの加工精度に悪影響を及ぼします。また、砥石軸が長いとたわみやすくなり、同様に加工精度を損う要因となります。これらを避けるためにも、内面研削では、砥石と砥石軸のどちらも剛性を高く保つ必要があります。ホーニング加工との違いホーニング加工は、内面研削と同様にワークの穴の内径を仕上げる加工を指します。しかし、ホーニング加工と内面研削では、加工の方法に違いがあります。ホーニング加工は、マンドレルと呼ばれる円柱状の回転工具の側面に砥石を搭載し、スプリングや油圧の力でワークの内面に砥石全体を押し付けて回転させ、加工を行います。対して内面研削は、砥石の一部分のみを当て、砥石とワークを回転させて加工を行います。それぞれの加工のイメージは下図を参照してください。引用元:株式会社酒井鉄工所 現場たたき上げ技術者の機械工学 ホーニング盤、穴仕上げのスペシャリストこのことからホーニング加工の場合は、穴を仕上げる前と後で位置ズレが起こる心配がなく、高精度で穴の真円度や面粗さを仕上げられます。ただし、前加工の精度に依存するほか、マンドレルによって加工できる穴径が限られます。内面研削の場合は、穴の精度はホーニング加工に劣るものの、砥石がワークの中に入りさえすれば、機械のストローク分までの穴径に対応できます。参考:ホーニング加工とは?ホーニング加工のメリット・デメリットについても詳しく解説!

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    テスト

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    溶接歪みの原因について解説!修正法やそもそも歪みを出さない溶接法についてもご紹介!

    「金属を溶接で接合したいけど歪むと困るなぁ…」「知り合いに溶接を依頼したら出来上がりのものがかなり歪んでいた…」溶接歪みの発生は金属の接合を難しくしている要因であるため、製品に満足できなかったり、作りたいものがあっても一歩踏み出せない人もいるのではないでしょうか?確かに溶接歪みは金属を溶接すると必ず起こる現象で、製品の精度や見た目に大きく影響します。金属の種類によっては少しの溶接箇所で大きく歪んでしまうこともあるでしょう。しかし溶接歪みは正しい対処法があり、熟練した作業や適切な溶接方法を用いれば最小限に抑えることができます。そこでこの記事では、溶接歪みのメカニズムや対処方法、溶接歪みを発生させないファイバーレーザー溶接についてご紹介します。※溶接の基本についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。⇒溶接に関する『10の基本知見』製造業マニアの私が切る!【重要】溶接歪みとは?そもそも溶接歪みとはどのような状態なのでしょうか?金属を熱で溶かして接合する溶接は、母材の金属が非常に高温になります。高温になった金属は一旦は膨張しますが、反対に冷却されると縮小していきます。もちろん均一に戻れば歪みは発生しませんが、溶接は接合部を溶融するため、局部的に金属を熱する必要があります。そのため現代の溶接方法では対策をしなければほとんどの確率で溶接歪みが発生します。製品の中には精度が求められたり、外見上の出来栄えも求められる製品もあります。そのため溶接歪みによって製品の品質基準を満たせなくなることも少なくありません。これが溶接作業の難しい点でもあります。溶接作業は母材をきちんと接合するだけでなく、溶接歪みを小さくして出来上がりの変形を少なくするための工夫も求められるのです。溶接歪みの原因溶接歪みと言っても製品の形状により「収縮」が起こったり、「反り返り」が発生したりと様々な種類があります。さらにいくつもの歪みが重なり、複雑に変形することもあるため、製品作りの前には溶接歪みの原因を知り、どういう形状になるか把握しておく必要があります。溶接歪みの主な原因は「母材に対して必要以上に熱を与えること」とも言えるでしょう。もちろん金属の接合のためには、母材を溶かしこむだけの熱量が必要ですが、必要以上に熱を与え続けることで製品自体が大きく歪む原因にもなります。溶接のメカニズムをもう少し詳しくご説明すると、溶接によって金属に与えられた熱は周囲の金属に熱伝導していきます。例えば様々な溶接作業で用いられる「TIG溶接」ではアーク部分の温度は約4000~5000℃にもなるとも言われています。また金属自体の熱伝導率も非常に高いため、溶接作業を行うと製品全体があっという間に高温になり、高温になった金属は膨張を始めます。膨張した原子が冷却されると、伸びた原子の結合が元に戻ろうとします。均一に熱することができれば膨張も均等に起こるため、冷却後は元の形に戻ります。しかし溶接によって局部的に高温になると一部の膨張率が大きくなるものの、反対に他の部分の膨張率は小さくなります。均等に広がらず片方に力が集中すると、やがて製品に歪みが発生します。歪みは変形しやすい方向に集中するため、母材の長さや幅方向では発生しづらく、面外方向への変形が多い傾向があります。板厚の薄い母材では座屈変形が発生するため、歪み対策をしていなければ極端に変形することもあるでしょう。溶接歪みの防止方法母材に対してどれだけ溶接熱量をコントロールできるかが歪みを抑える基本となりますので、必要最低限の溶接時間となるようにするのが理想的です。しかし熱量を下げすぎると、しっかり溶融できずに溶着不良にも繋がるため、コントロールするのは容易ではありません。そのため実際の溶接現場では以下のような対策が実施されています。タイトル・治具で固定して溶接歪みを抑える・仮付けをしてから溶接する・歪み量を予想した形状の母材を使用する・溶接熱が集中しないようにする・溶接の順番を工夫して歪みをコントロールする・変形した部分を叩いて修正しながら溶接する治具で固定して溶接歪みを抑える引用元:株式会社エステーリンク溶接により製品が歪むのであれば、母材が動かないようにあらかじめ治具で固定してしまおうという方法です。通常の溶接テーブルに製品の形状に合わせたクランプで固定するため、溶接歪みによる変形を防止できます。製品によっては専用のクランプが必要であるため製作費用がかかりますが、一度固定してしまえば誰でも簡単に製品の精度が出せます。歪み量を予想した形状の母材を使用する引用元:WELDTOOL溶接歪みを完全には抑えることができないのであれば、出来上がり時に目的の形状になるよう、あらかじめ歪み量を見越した形状で溶接を始める方法もあります。歪みを修正する必要がありませんので、出来上がりの精度が高い特徴があります。一方、歪み量の予測には熟練の経験が必要であるため、高度な技術が必要とも言えるでしょう。仮付けをしてから溶接する溶接歪みにより母材が変形しないように、あらかじめ仮付け(点付け溶接)をしておきます。ただし歪自体は抑えることができないため、仮付け箇所が多いと応力の行き先がなくなり、母材自体に負荷がかかります。負荷が大きいとクラックの発生や製品が割れる可能性も高くなります。そのため仮付けのみで対応するのではなく、他の対処方法と組み合わせて利用されます。溶接熱が集中しないようにする引用元:鉄友工業株式会社溶接の熱が集中しないように母材の熱を逃がす方法もあります。例えば母材の下に熱伝導率が良い「銅板」や「鋼板」を敷いて熱を逃がしたり、鋼板に水をかけて冷却します。上の写真では水を霧状に吹き付けて溶接箇所を冷却する装置で、歪みの影響を受けやすい製品でも最小限の歪みに抑えることができます。そのほかにも、溶接で使用する電極棒の先端の接触角度でも熱の伝わり方が変わるため、必要以上に熱を発しない角度に合わせて溶接する方法もあります。溶接の順番を工夫して歪みをコントロールする何も考えすに溶接ビードを引いた場合、直線の熱が次々と伝わり歪みが大きくなるため、1点に熱が集中しないよう溶接の順番をコントロールする方法もあります。片方の溶接が終了したら反対側を溶接して熱を均等に逃したり、歪む方向を意識しながら溶接ビードを反対方向に引く方法などがあります。溶接の順番を見つけるのは熟練した人でないと難しいものの、一度最適な方法を見つけると溶接の順番をマニュアルに記載して管理できるメリットもあります。そのため誰でもできる歪み対策として、生産現場で広く活用されている方法とも言えるでしょう。参考※溶接現場で必要な資格についてはこちらで詳しくご紹介しています。⇒【溶接の資格】プロの溶接工がとっておくべき資格を“一挙大公開”!変形した部分を叩いて修正しながら溶接する溶接で変形した部分をその都度叩いて元の形に戻す方法もあります。一見力技のように聞こえるかもしれませんが、少しづつ叩きながら調整するため、製品に与えるダメージはほとんどありません。ただし修正しながらの作業はかなりの工数が必要のため、大量生産品の製造には向かないとも言えるでしょう。溶接歪みを最小限に抑える新技術【ファイバーレーザー溶接】引用元:菊川工業株式会社レーザー溶接の一種であるファイバーレーザー溶接は、「希土類添加ファイバー」を媒質とした溶接で、光軸のズレや外部要因による光損失が殆ど無く、加工面まで効率良くレーザー光を伝達できる特徴があります。そのためファイバーレーザー溶接は、以下が可能になります。・非接触加工・局所的な加熱・小径スポット他の溶接作業と比べてビード幅に対する溶け込み量が深く、焼けや歪みが少ない高品質な溶接が可能です。特に局部的に集中してレーザーを当てることで製品自体が高温になりにくく、ほとんど歪みを生じません。歪み取りの工程削減や大掛かりな治具を使用しなくても済むため、製造コストを大幅に削減できるでしょう。さらにこれまでの歪み対策のほとんどは熟練した職人の経験により管理されていたため、人によって製品の出来栄えが異なることも少なくありませんでした。しかしファイバーレーザー溶接を採用することで、誰でも均一な製品に仕上げることが可能となりました。ファイバーレーザー溶接は設備も新しく、導入されていない工場も多いのですが、もちろんMitsuriの提携工場でもファイバーレーザー溶接を導入している工場が多数ありますので、お気軽にご相談ください。※レーザー溶接についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。⇒【レーザー溶接】仕組み(原理)やメリット・デメリットなどの特徴をご紹介!!まとめ溶接歪みは必要以上の溶接熱が母材に伝わり、熱膨張や収縮によって母材自体が動き、変形してしまうことを言います。溶接歪みを抑えて精度の高い製品を仕上げるためには製品によって適切な歪み対策が必要となります。しかし高品質な溶接を求めればその分コストがかかり、製作費用についても頭を悩ませると思います。そんな時はぜひMitsuriにご相談ください!Mitsuriでは日本全国に100社以上の提携工場があり、溶接のスペシャリストとも言える工場とも多数提携しておりますので、「精度が求められる製品をコストを抑えて作りたい」と言うご相談も可能です。金属の溶接でお困りであれば、まずMitsuriにご相談ください!

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    プロジェクション溶接のメリット・デメリットを他の溶接手法と比較しながら解説します!

    一口に溶接といっても、種類や方法は様々です。大きく分けると、金属を溶かして接合させる「融接」、熱と圧力を加えることで接合させる「圧接」、はんだ付けのように溶けやすい金属を使用する「ろう接」の3つがあります。そして、そのなかでも種類や方法は細かく分かれます。今回は、熱と圧力の力で溶接する「圧接」に分類される「プロジェクション溶接」について、分かりやすく解説していきます。プロジェクション溶接とは「プロジェクション」とは突起という意味です。溶接したい金属部材の一方にプロジェクション(突起)を作り、加圧しながら集中して電流を流します。金属の抵抗発熱によりプロジェクションが溶けることで部材同士を溶接します。プロジェクション溶接には大きく分けて「エンボスプロジェクション」と「ソリッドプロジェクション」の2種類があります。それでは、この2種類について簡単に説明していきます。エンボスプロジェクション「エンボスプロジェクション」は、平板にプレス加工などで突起部を作り、そこに電流を集中させて溶接を行います。溶接点を何か所も作ることが出来るため、同時に多数の溶接をすることが可能です。また、溶接時には突起部を溶かすため、スポット溶接と同じようにナゲット(くぼみとくぼみの間の溶けた金属部)が出来ます。引用元:溶接革命ソリッドプロジェクション「ソリッドプロジェクション」は、板の角や丸棒の交差などの初めからある突起を利用して溶接を行います。エンボスプロジェクションでは突起部の間が空洞なのに対し、ソリッドプロジェクションでは空洞がありません。また、加圧や給電する部位は溶接点から距離があります。引用元:溶接革命スポット溶接との違いプロジェクション溶接は、圧接の中の「抵抗溶接」に分類される溶接方法です。抵抗溶接とは、金属部材に電極を当て加圧しつつ、数十アンペア~数万アンペアの電流を流すことで、金属の抵抗発熱(電気ポットや電気こたつなどに用いられ、金属の抵抗により強い熱が発生する)を利用して溶接する方法です。スポット溶接とプロジェクション溶接は同じ抵抗溶接という点で、類似点が多くあります。どちらも加圧・通電により溶接を行いますが、突起部を溶接するプロジェクション溶接とは違い、スポット溶接では平面の金属に電極を当て加圧・通電を行います。プロジェクション溶接機についてプロジェクション溶接機は、コンデンサ式とインバータ式が主流です。コンデンサ式プロジェクション溶接機コンデンサ式は交流式抵抗溶接機で、短時間で溶接でき、非金属にも対応できます。コンデンサ式は、コンデンサに充電することで、大電流を放電することができます。そのため入力電源の容量が小さくても、大電流を電極に通電させることができ、難溶材である熱伝導の良いアルミや銅などへ安定した溶接ができるのです。加えて、電源設備の容量も比較的低く抑えられるところも良い点です。しかし、コンデンサ式は電流の立ち上がりが急速で傾斜角を制御できないため、時間制御ができず、打点速度にも制限があり、外部回路が電源波形に影響するため、自動化することは難しいです。加圧力も大きくしないと溶融した鋼が飛散するスプラッシュが発生しやすくなります。インバータ式プロジェクション溶接機インバータ式は、電力効率も高く溶接条件範囲が広域に取れるため、品質の高い溶接が可能です。また、溶接金属の飛散(散り)や飛散した金属がワークにつくスパッタも抑えられるため、きれいな作業環境に改善することができます。三相入力による電源で、負荷バランスもとりやすくなっています。インバータ式プロジェクション溶接機には、直流と交流があります。●直流インバータ式交流式と違い直流は電流の休止時間がないため、母材に効率よく連続して電流を流し、熱を供給できます。熱効率が良いため溶接が短時間ででき、熱による歪みの影響も抑えられます。トランスが小型のタイプは、自動機に搭載することが可能です。●交流インバータ式交流インバータ式は、リード線の切断部のほころび防止やモーターコイルと端子を溶接するための熱かしめ(ヒュージング)に最適です。交流インバータ式は交流なので、直流で起きやすいペルチェ効果現象が少なくなります。ペルチェ効果とは、異なる金属を重ねて電流を流すと、金属面に熱の移動が発生する現象のことです。金属面に熱の移動が起きると、一方は発熱し、もう一方は吸熱します。金属の溶接は、発熱する側は溶着しやすくなり、吸熱側は溶着しにくくなるのです。直流の場合、電極の一方で発熱し他方が吸熱するため、発熱側を放熱して温度を下げ融点のバランスをとらないと、品質の高い溶接ができません。しかし、交流の場合は極性が反転するため、発熱と吸熱も反転して起こりペルチェ効果が相殺され、放熱などをしなくても品質の良い溶接ができます。また、交流用の溶接トランスが使用できるため、わざわざ直流に変換する工数も省けます。参考記事スポット溶接の詳細は下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。⇒スポット溶接とは【専門家が解説】 他の溶接との違いをわかりやすく お伝えします!スポット溶接では、電極の加圧力や通電する時間、電流の組み合わせなど、条件の設定は比較的自由です。しかし、プロジェクション溶接では条件設定の自由度は低くなります。例としては、電極の加圧力を極端に高くすると低い温度でプロジェクション部に圧力がかかり潰れてしまいます。すると、通電する部分が拡大し、熱が集中せずに温度が維持出来ません。また、電流が大きすぎると、温度の上がるスピードが速くなるため、溶接する部分が飛散してしまいます。これでは通電する時間を短縮しても正常な溶接が出来ません。プロジェクション溶接は、スポット溶接と比較して条件の設定は難しいですが、その分圧力と熱を集中出来るので少ない力での溶接が可能です。また、小さな部品でも治具電極などの設備の設定をすれば溶接が可能になる精密さも持ち合わせています。プロジェクション溶接の特徴部材や仕上がりなどの条件によって溶接方法には向き・不向きがあります。プロジェクション溶接のメリット・デメリットについて簡単に見ていきましょう。メリット・アーク溶接のようにスパッタ(溶接時に発生する金属の粒)や有害な紫外線が発生しない。・作業工程を自動化しやすく機械的な作業のため、アーク溶接やガス溶接のように作業者の技術の熟練度が必要ない。・短時間で効率的に溶接することが可能で、加工のコストが安価で大量に生産が出来る。・熱による変形などの影響が出ないため、仕上がりが美しい。デメリット・溶接する部分が多くなると溶接装置が大型になる。・一度に多数のプロジェクションを溶接する際に、高さを綿密に揃え平行に設定しなければならない。・溶接機が高価・溶接材へプロジェクション加工や治具電極製作が必要になるので少量生産には向いていない。・溶接部品の位置決めに治具電極製作を用いるため、設計能力が必要。プロジェクション溶接の製品事例金属部材を大量に溶接する際には、スポット溶接よりプロジェクション溶接が向いています。複雑な形状でも精密な溶接が可能で加工が難しい部材にも対応が可能です。また、位置決めや治具電極製作をすれば工程を減らすことも出来るため、極めて効率の良い溶接が可能です。それでは、具体的な製品事例を見ていきましょう。「エンボスプロジェクション」の製品事例エンボスプロジェクションは、主にオイルフィルタやガソリンタンクのレインフォースなどで用いられます。引用元:有限会社 こだま製作所上の写真のような小さな部品を溶接で組み立てる際には、精密さが要求されます。溶接する位置や範囲、圧力、電流などが多すぎると歪みの発生や、外観が損なわれる原因となります。そこで、あらかじめ部品にプレス加工でプロジェクションを作ることで、溶接部を最小限に抑えます。それにより小さな部品でも歪みや変色などの熱影響が少なく、外観の美しさや強度を持った溶接が可能になります。「ソリッドプロジェクション」の製品事例ソリッドプロジェクションはナットやボルトの溶接のほか、スタビライザやブレーキドラムなどにもよく用いられます。引用元:有限会社 こだま製作所従来、上の写真のような部材は金属棒から切削加工で成型していました。しかし、量産性を上げる必要が出たため、部品を丸板とネジに分け、ソリッドプロジェクションにより2つを溶接する事で、量産性を格段に上げることに成功しました。また、初期費用はかかりますが、結果的にコストを下げることにも成功しました。まとめ突起部に加圧しつつ電流を流すことで効率よく精密な溶接が可能なプロジェクション溶接をご紹介しました。技術の熟練が必要ないプロジェクション溶接は、治具電極などを作ってしまえば工程を自動化出来るため誰にでも簡単に溶接することが可能です。また機械自体は高価ですが、加工には手間がかからないため加工コストは安価です。一度に多くの溶接をする必要があるけれど、設備や設定が難しい・・・そんな方は、ぜひMitsuriにご相談ください!