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    電解加工とは?原理、電解液、メリット・デメリット

    電解加工とは、その名の通り「電気分解」のメカニズムを利用して金属を加工する技術のことです。生産性が高く、多くの金属に活用できる上、細かい部分への加工が可能なことから、航空機や自動車などの部品製造だけでなく、医療機器をはじめとする幅広い分野に活用されています。今回の記事では、電解加工の特徴やメリット・デメリット、間違いやすい放電加工との違いについて解説していきます。電解加工とは電解加工とは、電解液の中に金属を入れ、電極から電気を流すことによって微細なバリを科学的に除去する加工方法です。金属部品の製造過程でバリが付くことは避けられませんが、除去しにくいバリをそのまま放置すると後の工程で支障をきたす可能性があるため、除去しておく必要があります。しかし、部品の中には複雑な構造のものも多く、目視の確認や工具を使った作業が難しいものも存在します。そこで活躍するのが電解加工です。複雑な構造の部品に発生したバリを、表面から入り組んだ部分まで短時間で確実に除去できるため、精密性を要求される飛行機のエンジンタービンなど、重要な部品の製造にも用いられています。電解加工の原理電解加工は、下記のような原理となっています。1.電解液の中に金属を入れる2.金属に陽極(+)の電流を、対抗する電極に陰極(-)の電流を流す3.電解液中のイオンが移動し、液中に層を形成する4.陽極の表面の金属原子(バリ)が電解液中に引き出される電解加工においては、電流密度が高いほど速度・精度・表面粗さが向上します。ただし、電解液の濃度を均一化させておく必要があるため、単純に電流密度を上げれば必ず品質が向上するというわけではありません。電解加工のメリットとデメリット短時間でバリを除去することができ、部品の精度を上げてくれる電解加工ですが、メリットとデメリットが存在します。電解加工のメリット・幅広い金属に対して加工ができる・電極となる工具消耗がない・加工速度が早い・加工変質層が小さい電解加工のメリットは幅広い金属に対して短時間で加工できる点です。電極は部品ごとに専用のものを使用する必要がありますが、劣化せず使い続けることが可能なため、途中で機械を止めてメンテナンスをしたり、新しい電極に交換したりする手間がありません。そのため、多くの部品を、短時間で加工することが可能です。さらに、電解加工による金属の変質が極めて少ない点も大きなメリットです。電解加工のデメリット・精度が安定しない・加工物と電極の距離の検出が難しい・機器に耐食性の対策が必要電解加工のデメリットは主に、精度の不安定さにあります。その理由は、電解液の均一性を保つことが品質向上に大きく影響してしまうからです。電解液の濃度は一定ではない上、濃淡を目視で確認することはできません。さらに、加工による温度の上昇によっても濃度が変化してしまうため、対策が難しくなっています。他にも、周辺機器が腐食しやすい、生成物が毒性を持つ場合があるなどの短所も持っています。電解加工の電解液電解液には、電気を流す役割の他、加工物の温度を冷ます効果もあります。加工時に液量が少なすぎると金属の温度が上がり、仕上がりにムラが出てしまう可能性があり、逆に多すぎると変色の原因となってしまうことがあります。そのため、適切な液量を保って加工を進めることが重要です。電解液の種類は「中性塩溶液」「酸溶液」「アルカリ溶液」が用いられ、それぞれに違った特徴を持っています。中性塩溶液中性塩溶液は、最も一般的に用いられる電解液です。アルカリ溶液に比べて電導度は低いものの、腐食度も低く、コストパフォーマンスにも優れているため、大部分の金属材料に使用されます。一般的な塩(Nacl)を使った電解液は液中濃度を均一化しにくく、加工精度が悪くなる傾向があります。そのため、塩素酸ナトリウム(NaClO3)や硝酸ナトリウム(NaNO3)を使った電解液が使用される場合もあります。ただし、いずれも加工精度は向上するものの電流効率が低下するため、加工により多くの電力を必要とします。その結果、中性塩溶液の魅力であるコストパフォーマンスが下がってしまいます。酸溶液酸溶液は、取り扱いに注意が必要なこともあり、特殊な場合にしか用いられない電解液です。電導度は比較的高いものの、腐食性が強い他、加工を続けていくと電導度が減少していく特徴があります。アルカリ溶液アルカリ溶液は、タングステンやモリブデンなど、超硬合金の加工に対して有用な電解液です。超硬合金に対しては、中性塩溶液に比べて質の良い仕上がりとなるため、好んで用いられます。ただし、一般的な金属に対しては加工時に不溶解の生成物を発生させ、加工物の溶出を邪魔してしまうため、用いられることはありません。電解加工と放電加工の違い液中に電気を流して作業をする電解加工は、放電加工と似ているため比較されることも少なくありません。しかし、実際のメカニズムや得意分野、加工の目的は大きく異なります。例えば、電解加工は電解水に通電させることで電解水のイオンによって金属を加工しますが、放電加工は絶縁性を有する加工液に雷のような放電現象を起こし、無理やり通電させることで熱で金属を溶かして加工します。また、下表を見ても分かる通り、長所と短所も大きく異なっています。電解加工放電加工速度◎△精度△◎電極の消耗◎△製品の安定性△◎放電加工の原理も確認したい方は、下記記事を参照してください。参考記事:放電加工(EDM)の基礎知識(原理、メリット・デメリット、電極)

  • 放電加工(EDM)の基礎知識(原理、メリット・デメリット、電極)

    放電と聞いて一番に何を思い浮かべますか?雷や静電気など、普段生活していてもいくつか思いつくものはありますよね。放電とは、普段電気を通さない気体に電子が放出され、電流が流れる現象のことです。そして、放電のメカニズムを応用することで金属を彫ったり切ったり、穴を開けたりする技術のことを放電加工と呼んでいます。さまざまな機械が稼働している金属加工の現場において、放電加工にはどんな特徴があるのでしょうか。今回は、放電加工(EDM)のメカニズムやメリットについて、詳しく紹介していきます。放電加工(EDM)とは引用元:富士エンジ(YouTube)放電加工とは、加工したい金属と加工機の隙間に放電することで、6000℃以上の熱を起こし、金属を溶かしながら加工していく技術のことです。EDM(Electrical Discharge Machining)とも呼ばれています。金属の表面を1μm単位で加工できる精度に加え、ダイヤモンドに近い硬さを持つとされる超硬合金の加工もできる技術です。金属加工の現場において、部品を製造するのに必要な金型には主に超硬合金が使われます。何故なら、大きな圧力をかけて高温の鉄を流し込み、形を生成していくため、鉄と同等だったり、柔らかい素材だったりすると、型枠が変形してしまうからです。ただ、超硬合金は非常に硬く、加工が困難な素材でもあります。そのため、切削加工機のドリルではうまく加工することができないという難点があります。そこで登場するのが放電加工。1μmという高い精度で超硬合金を正確に削ることができるため、金型の製造を中心に広く用いられる加工技術になっています。放電加工の原理雷や静電気は、空気中に放電されますが、放電加工の場合、工作物を液体に沈めて加工します。そのため、放電は液中で起こります。まず、工作物を絶縁性を有する加工液に漬けます。その後、工作物に電流を流し、電極を近づけていきます。すると、1mm程度の距離まで近付いた所で工作物と電極の間にある加工液に絶縁破壊が起こり、放電が発生します。放電は一定時間で収まりますが、同じ動作を繰り返せば、また放電が発生します。これを継続的に繰り返すことで、製品を加工していく技術を放電加工と呼びます。放電加工(EDM)のメリット放電加工のメリットは下記の通りです。・材料が硬くても問題なく加工ができる・細かい精度の加工が可能・工作物に触れずに加工ができる放電加工最大のメリットは、硬い素材を加工できること。超硬合金のように硬い素材でも関係なく加工できるため、高硬度の素材加工に適しています。さらに、精度が高いことや工作物に触れずに加工ができる点も大きなメリットと言えます。工作物に触れないということは、斜面で滑ったり段差で引っかかったりすることもありません。そのため、斜めの素材であろうが、球体であろうが関係なく、高い精度での加工が可能になります。放電加工(EDM)のデメリット放電加工のデメリットは下記の通りです。・加工のスピードがおそい・電気を通す素材しか加工できない・コストが高い放電加工のデメリットはスピードがおそいこと。少しずつ金属を溶かしながら加工していくため、ペースが遅く、大量生産には向きません。さらに、素材と電極の間に電気を流し、放電を促しているため、素材が電気を通さない場合、放電加工ができません。放電加工には、電極として銅や真鍮、タングステンなどでできたワイヤーを使用します。放電が起きれば当然、素材だけでなく電極側も消耗するので、電極の交換頻度はかなり高くなり、コストがかさみます。放電加工の電極放電加工の電極とは、放電を起こす部分のこと。切削加工機で言うところの「ドリル」の役割を果たす部分です。電極は放電を繰り返すと消耗していくため、常に新しい状態にしておく必要があります。材質によっても効果が変わるので、それぞれの特徴について下記でご説明します。電極消耗放電加工では、電極として用いている素材も消耗します。消耗した電極をそのまま使い続けると工作物の加工が予定していた形状にならない可能性があるため、電極は常に新品の状態で放電を続けなければなりません。そのため、放電加工機では、電極として用いられる素材は古いものを巻き取り、常に新しい状態で放電を続ける仕組みになっています。電極の材質放電加工の電極には、銅やグラファイト、タンクステンなど、さまざまな素材が使用されています。電極は用途に合わせて交換することができ、それぞれに違った特徴を持っています。●銅銅は最もコストが安いため、一般的に多く用いられている素材です。電気抵抗が少なく、熱伝導率が高いことが特徴。ただし、耐熱性が低い弱点があります。●グラファイトグラファイトは熱に強いのが特徴。素材が熱によって変形することがなく、扱いやすい素材と言えます。グラファイトには多くの種類が存在するため、用途に合わせてチョイスが可能です。●タングステンタングステンは、熱伝導率の良い銅と合わせて使用されます。消耗率の高い超硬合金の加工で最も消耗を抑えられるため、超硬合金の加工に多く使用されています。材質は加工する素材によって相性が変化します。素材によっては無消耗加工も可能なので、それぞれの特徴やメリットを把握して活用すればコストを抑えながら高精度の加工が可能になります。

  • ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順、用途をご紹介!

    「ガス溶接・ガス切断の仕組みが知りたい」「ガス溶接・ガス切断の特徴は?」「作業するのに資格は必要?」……このような疑問を持つ方は必見です。本記事では、ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順、作業に必要な資格などについて解説します。ガス溶接・ガス切断は、その名前の通りガスを利用した加工方法です。ボンベに充填されたアセチレンなどのガスと酸素を混合し、燃焼させた炎を被加工材に当てて接合および溶断を行います。電気を使わずに加工できる点はメリットですが、その原理や仕組みの関係上、不向きな材料も存在します。ガス溶接・ガス切断についての基礎知識を得たい方は、ぜひ参考にしてみてください。参考:溶接とは?【専門家が解説】素人でも3分でわかります!ガス溶接は可燃性ガスによって起こした火を用いた加工ガス溶接は、アセチレン・水素・LPGなどの可燃性ガスが燃焼する熱を利用して溶接する方法。一般的にアセチレンを採用している加工業者が多いです。可燃性ガスは爆発や火災の危険性があります。そのため、ガス溶接は特定の国家資格がないと作業できません。ガス溶接は、薄い板材に対しては、母材同士を溶かして接合する「なめ付け」が可能ですが、厚みのある板材に対しては溶加材を用いる「ろう付け」を行い接合します。参考:ろう付けとは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説ガス溶接の特徴とメリット・デメリット代表的な溶接方法に電気を使ったアーク溶接がありますが、ガス溶接はアーク溶接と比較すると火花が発生しないため接合箇所が見やすく、溶接のミスが抑えられる点はメリットです。ガス溶接は電気を使用しないため、電気のない現場での溶接にも対応も可能。ガスの供給量の調節もしやすく、加熱し過ぎによる被加工材の割れの防止や、薄肉の板材や溶融点の低い金属の溶接に適しています。ただし、ガス溶接は加熱に時間がかかるほか、溶接温度が低いため、作業時間が比較的長くなる傾向に。このことから厚みのある板材のなめ付け溶接は不向きです。また、熱を1点に集中して与えられず、不要な箇所まで加熱をしてしまうため、ひずみが発生しやすい点もデメリットとなります。ガス溶接の原理や手順引用元:日本キャタピラーガス溶接は、酸素とガスを燃焼させた炎で金属を熱し、溶融させて接合する仕組み。ガスや火を使った危険な作業のため、上図のようにヘルメット・溶接用保護面・革手袋・革前掛けなどを着用しましょう。そのほかに準備するものとしては、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベ・圧力調整器・ホース・ガス溶接トーチ・専用ライターが必要です。まずは、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベおよびこれらに取り付けた圧力調整器・ホース・ガス溶接トーチに問題がないかを確認します。問題がなければ、可燃性ガスボンベと酸素ボンベを開栓します。このとき、ガスの漏れが無いかも注意して見ておきましょう。次にガス溶接トーチのバルブを開き、炎の大きさを調節します。トーチにもガスと酸素のバルブの2種類がありますが、まず始めにガスのバルブを開きます。引用元:モノタロウガスのバルブを開いたあと、専用ライターを用いて着火。すると上図左のように赤色の炎が出てきます。ここから、「白心」と呼ばれる火口に形成される白色の炎が、米粒ほどの大きさになるまで酸素バルブを開きます。ここから金属のガス溶接にかかります。溶接したい材料をセットし、接合部分の両端を溶接仮止めを行います。溶接は白心と材料が1~2mm程度離れた位置で炎を当てるようにしましょう。仮止めが終えたら、全体を溶接します。ガス溶接が終えたら消火作業を行います。点火の手順とは逆で、溶接ガストーチは酸素→ガスの順にバルブを閉めます。次に、可燃性ガスボンベと酸素ボンベの栓を閉め、トーチの酸素を抜きます。これらの作業手順については以下の動画も参考にしてみてください。引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオ引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオガス溶接に必要な資格ガス溶接の資格は、ガス溶接を行うすべての人に必要な「ガス溶接技能者」、ガス溶接作業者を指揮・管理をするために必要な「ガス溶接作業主任者」の2種類の国家資格があります。●ガス溶接技能者ガス溶接技能者の資格を得るには、職業訓練施設や建機メーカー教習所などで開催されている講習を受けなければなりません。講習は1日目は学科、2日目は実技と2日間にわたり行われます。学科は大きく分けて3つの科目を受講。1つ目は、ガス溶接等の業務のために使用する設備の構造や取扱方法に関する知識を学びます。2つ目は、ガス溶接で用いる可燃性ガスと酸素に関する知識。3つ目は、関係法令(法律や規則など)の講習を受けます。これらの講習は合計8時間ほどの時間を要し、そののちに講習で学んだ内容から出題される学科試験を受けなければなりません。実技では学科のように試験はないものの、実際のガス溶接を想定した作業を行うため、危険が伴います。ここでは、機器の点検およびガスの調整方法などを、5時間ほどかけて学びます。●ガス溶接作業主任者ガス溶接作業主任者の資格を得るには、各地の安全衛生技術センターで行われる試験に合格する必要があります。こちらの試験には受験資格は設けられていませんが、試験合格後に免許を申請するのに、18歳以上かつガス溶接技能講習修了者で実務経験3年以上などを証明する書類が必要です。免許取得を検討される方は、必要な書類をきちんと確認した上で試験に望むようにしてください。なお、試験科目については下記の通りです。・ガス溶接等の業務に関する知識・関係法令・アセチレン溶接装置及びガス集合溶接装置に関する知識・アセチレンその他可燃性ガス、カーバイド及び酸素に関する知識条件によっては、一部の試験科目を免除される場合もあります。詳しくは安全衛生技術試験協会公式サイトをチェックしてみてください。ガス溶接の用途ガス溶接は、他の溶接方法と比べて溶接時の温度が低いため、溶融点の低い金属や薄肉のものに適した接合方法です。また、小型の手作業用ガス用トーチが普及しているため、狭い箇所の溶接にも適しています。ガス切断はガスを用いて切断する加工ガス切断とは、ガスを使った炎で加熱し、被加工材を切断する加工方法のことです。別名「酸素切断」とも呼ばれています。使用する機材は、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベ・圧力調整器・ホース・トーチ・専用ライターとガス溶接とほぼ同じですが、トーチに関してはガス切断専用のものを扱います。ガス切断の特徴とメリット・デメリットガス切断は、数mmの薄板から数百mmの肉厚な鋼材の切断に対応しています。また、小さい規模の設備で加工を行えるため、導入費用が安く抑えられるのが特徴です。しかし、ステンレスやアルミニウムなどはガス切断には不向きです。これは、ガス切断が、母材より融点の低い酸化物を形成する鋼材のみ対応可能なため。ステンレスやアルミニウムは、高い融点の酸化物を生じるので、ガス切断ではなく、プラズマ切断やレーザー切断が採用されています。参考:プラズマ切断について専門家が解説!特徴やレーザー切断との比較もしています!また、ガス切断は手作業になるので、作業者の技術力が問われます。被加工材の厚みによって火力や切断のスピードの調節が必要なほか、切断面にブレがないように加工するには、経験を要します。ガス切断の原理と手順ガスの炎で加熱された鋼材は、火口の中心から高速で酸素を供給し、酸化鉄となります。この酸化鉄は鋼より融点が低く、酸素の噴流で吹き飛ばすことで切断する仕組みです。危険な作業のため、ガス切断を行う前の準備として、保護マスク・革手袋・革前掛け・安全靴などを着用しておきましょう。安全な服装が準備できたら、可燃性ガスボンベと酸素ボンベに圧力調整器を取り付けたのち、ホースとガス切断用トーチも繋ぎます。繋ぎ終えたら可燃性ガスボンベと酸素ボンベを開栓します。このとき、ガス漏れがないかも点検しておきましょう。引用元:一般社団法人日本溶接協会ガス切断に使うトーチは、燃料ガスバルブ・予熱酸素バルブ・切断酸素バルブの計3つのバルブがあります。まずは燃料ガスバルブを開き、専用ライターを用いて点火します。次に予熱酸素バルブを開き、青い炎が1cmほどの大きさになるように調節します。ここから被加工材に炎を当てて切断します。炎を当てている箇所が赤くなってきた段階で、トーチの切断酸素弁を開くと鋼材の切断が可能です。ここから、切断したい方向に火口を移動させましょう。切断が終わるたびに、切断酸素バルブは閉じるようにしてください。消火から片付けに関しては、準備とはほぼ逆の手順で行います。可燃性ガスボンベ・酸素ボンベの栓を閉めるまで進めたら、圧力調整器のバルブとトーチの3つのバルブも開いて、ホース内にあるガスと酸素を完全に抜く作業も行う必要があります。これらの作業手順は以下の動画も参考にしてみてください。引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオ引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオガス切断は、切断する鋼材の厚みによって火力や切断のスピードを適宜調節しながら行うのが大切です。また、薄肉の鋼材を切断する際は、火力を弱くして素早く切断すると、上手く加工できます。ガス切断のトーチは、加工する鋼材の厚みによって、1・2・3の火口番号の種類を使い分けます。厚みのある鋼材であるほど、火口番号が大きいものを使用します。小さい火口を使って無理に厚みのある板を切断しようとすると、切断面が荒れやすくなるので注意してください。ガス切断に必要な資格ガス切断をするのに必要な資格は、「ガス溶接技能者」です。また、ガス溶接・ガス切断の作業者を指揮や管理をするには「ガス溶接作業主任者」の資格が必要になります。これらは、ガス溶接と同じで、ガス切断との区別はありません。詳しくは、前述の「ガス切断に必要な資格」の項で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。ガス切断の用途ガス切断は、ステンレスやアルミニウムの加工には不向きですが、グラインダーなどでは手間のかかるような、厚みのある鋼材を切断する際に、多く利用されています。まとめ今回は、ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ガス溶接・ガス切断はともに、アセチレンなどの可燃性ガスを使った加工方法。火力の調節がしやすく、被加工材の厚みなどに合わせて、適切な溶接・加工ができる点が特徴です。また、電気を使わない加工方法のため、電気の供給ができない現場でも使えます。しかし、ガス溶接・ガス切断を行うには「ガス溶接技能者」の資格が必要です。ガス溶接・ガス切断の作業を指揮・管理をする場合は「ガス溶接作業主任者」の資格も得なければなりません。溶接についてお悩みの方は、ぜひMitsuriへご登録ください。日本全国で約250社以上の工場が登録しているので、お客様のご希望に沿う加工業者が見つかります。見積りは直接複数社から取得可能です!

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    治具の種類【基礎】使い方と事例、考え方

    治具(じぐ)(治工具(じこうぐ))は、製品の品質・精度の向上や均質化、製造の効率化などを図るために用いられており、製造業において必要不可欠なものです。金属製品は、材料に成形加工や熱処理、表面処理などを施し、さらに場合によっては組立や検査等を行って生産します。各工程では、工作機械や刃物、メッキ設備などを使用して加工等を行っていきますが、そのほとんどの場面において治工具・治具が用いられます。治具・治工具とは【わかりやすく】工具とどう違う?治具(治工具)とは、加工や組立、検査などの各工程において、製造をサポートするために用いられる器具です。加工工程において工具の位置決めや案内、材料の固定などを行ったり、組立工程において部品を所定の位置へ正確に挿入したり、多様な役割があります。図1:治具とボール盤 例えば、単にボール盤で穴を空ける場合でも、治具に材料を取り付ければ、ドリルを垂直に下ろすだけで、材料の同一位置へ正確に穴を空けることが可能です。治具を使用すれば、大量生産品の作業が容易になり、穴の位置がばらつくことも防止できます。図2:傾斜が可能な治具  汎用的に使用できるものとして、材料を傾斜・回転させて固定する治具が挙げられます。この治工具を利用すれば、角度をつけた穴を空けるなど、4軸以上の加工機がないと加工が難しい形状を成形することが可能です。参考:5軸加工機についてご紹介!3軸加工機との違いについても解説治工具と工具の違い治工具は「工具」という言葉を含みますが、工具とは異なります。工具治工具(治具)切削工具研削工具場椅子(万力)クランプブッシュ加工を直接行う道具加工に不可欠なもの加工をサポートする道具なくても一応加工はできる工具の例には、フライスやドリル等の切削工具、砥石等の研削工具などが挙げられます。これらは金属を削るなど、加工を直接的に実行する道具であり、加工に不可欠なものです。治工具の例には、バイス(万力)やクランプ、穴加工のガイドに用いるブッシュが挙げられます。これらはあくまで加工をサポートするものであり、加工そのものは治工具がなくても可能です。工具は加工そのものに使われる道具で、治工具は工具による加工をサポートする道具です。治具のメリット治工具を利用することによって、加工の簡易化や均質化、保有している設備や工作機械では加工困難な形状の実現など、様々なメリットが期待できます。治具のメリットとして、以下が挙げられます。治具のメリット・品質・精度の向上・品質・精度の均質化・難しい加工の簡易化・作業の簡易化・人的ミスの減少・不良の発生軽減・生産速度の向上治具を導入することによって、コストダウンや生産性の向上、製品価値の向上が可能になります。ただし、治具は多くの場合、部品・製品毎に用意しなくてはなりません。そのためロット数が少ない製品では、治具の製作費用自体が負担となり、コスト増に繋がる場合もあるので注意が必要です。治工具と治具の違い治具(じぐ)は、治工具とほぼ同じ意味で使われている言葉ですが、元々は工具の位置決めや案内を行う器具のみを示していました。しかし、現在では治工具と同様に、材料の位置決めや固定を行う取付具・固定具なども示し、加工や組立、検査等を補助する器具の総称として用いられており、治具と治工具は同義です。治具の種類治具には以下の種類があります。・固定治具・切断治具・挿入治具・引抜治具・溶着治具・塗装治具・カシメ治具(かしめて接合する治具)・検査治具治具の種類説明例など固定治具材料を固定して加工を補助する治具バイス、クランプ(万力)切断治具材料を決まったサイズに切断するための治具裁断機挿入治具引抜治具材料を決まった位置に挿入(決まった位置から引抜く)ための治具プーラー溶着治具材料同士を接着するための治具シーラー塗装治具材料の塗装を補助する治具(塗装しない部分を保護する治具)ステンシルカシメ治具材料同士の接合部分を固定する治具―検査治具完成品を検査するための治具―治具の使い方と加工の例(1)治具を使った穴あけ加工治具を使用した例治具を使用しない例右図は、専用の治工具を使用しない方法です。汎用クランプで材料を固定し、穴を空ける位置にケガキ及びポンチ穴加工を実施します。その後ドリルを水平方向に送って位置を合わせ、垂直に下ろして加工します。専用の治工具を用いる左図では、位置決めピンで材料の水平位置を固定すると共に、ブッシュでドリルを垂直に下ろした際のドリルチャックと材料との距離を一定にしています。この方法では、材料にあらかじめ位置決めピンをはめる穴が空いている必要がありますが、材料にケガキやポンチ穴加工を行うことなく、材料の水平位置を決めることが可能です。また、穴の深さもブッシュの厚さで決まるため、ドリルの垂直方向の送りを調整することなく、一定深さの穴を空けることができます。(2)治具を使った薄板の旋盤加工治工具を使用して、旋盤で薄板を加工する方法です。図中の左上図の板材から右下図のような部品を成形するケースです。旋盤のチャックでは板材の固定ができないため、このままでは板材から部品を成形できません。引用元:株式会社南信精機製作所板材の雌ネジ穴と締結できる雄ネジを備えた治工具を用いることで、旋盤による加工が可能になります。板材を治工具と締結して治工具を旋盤にチャックします。これによって板材の外面の加工が可能になり、部品の成形ができます。治工具・治具設計の考え方と製作の流れ図5:治具設計の流れ 治具製作は「設計」→「部品調達・製作」→「組立」の流れで行われます。(1)設計治工具は、部品や製品の加工の補助に使用するものです。そのため治工具を設計する際には、加工対象の図面検討とともに、冶具と一緒に用いる工具・工作機械についても調べておく必要があります。治工具の精度は「加工品の精度が治工具の精度よりも高くなることはない」ことを考慮して検討します。治工具が製品に触れるケースでは、製品に傷をつけないために、治工具に対する表面仕上げの必要性も考えます。治工具の設計段階で考えること・治具と一緒に用いる工具・治具と一緒に用いる工作機械・治具の精度・治具の表面仕上げの必要性これらを考慮した上で、求める効率性や精度、品質が実現できる治工具を設計します。(2)部品の調達・製作設計と要求仕様の整合性が確認できたら、治工具の製作に移ります。治工具は、材料を固定するだけの単純なものから、複数の部品を組み合わせたもの、加工を自動化するためのロボットと組み合わせたものまで、複雑さは様々です。ケースバイケースで、自社で部品を製作したり外部から部品や装置を調達したりするなどして、治工具の全ての構成要素を揃えます。(3)組立a. 組立作業構成要素がそろったら、組立に移ります。設計書を確認しながら、完成品をイメージして組み立てます。ものによっては、電気機器を含む場合があり、配線作業が必要になることがあります。b. 検査・寸法チェックなど組立作業が完了したら、寸法をチェックします。電気的なチェックを行うこともあります。c. 試運転と納品組立及び検査が完了したら、納品します。治工具は製品ではなく製造を補助する器具であるため、要求仕様通り動作するかを確認するために試運転を行うことがあります。問題があれば修正し、要求仕様とのズレがあれば調整します。治工具・治具は、導入することでコストダウンや生産性の向上が期待できるため、金属加工を行う際に広く用いられている器具です。また、大量生産において、特に有用となるものでもあります。しかし、工作機械や工具と同様、高い品質や精度が要求されるものであり、その製作には高度な技術が必要となります。① Mitsuriでのお見積りは案件を公開して待つだけ!② 複数のお見積りが届く!  ⇒金額重視or納期重視?ニーズに合うものを選べる!③ 案件の5割以上が1日以内に見積りを取得!Mitsuriでは日本全国の250社以上の業者と提携しており、治工具・治具の製作を得意とする工場をご紹介できます。お見積りは複数社から可能です。治工具・治具のお見積りをご検討中の方は、下の赤いボタンをクリックしてお問い合わせください!

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    板金における曲げ加工の限界について専門家が解説!

    板金加工と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。多数の方は自動車が思い浮かぶのではないでしょうか。実際には自動車だけでなく、家電製品の身近なものや工業製品といった普段目にしないものにまで幅広く使われている技術になります。今回は板金の曲げ加工の限界ということで、曲げや穴加工に関係する限界値や製品適用時の注意点等を解説します。具体的な数値例も出していますので、ぜひ、板金加工(曲げ)への理解を深める参考にしてください。曲げ加工による立ち上がりの限界値について曲げ加工は上下に設置された二種類の金型を使用し、上の型(ヤゲン)と下の型(ダイ)に金属の板を挟んで加工していきます。ダイの金型には溝加工がされており、加工する板の板厚によってダイの溝幅が違ってきます。ダイは一般的に〇V(〇に数字が入る)という形で呼ばれ、表記の数字が溝の幅になります。例:12V 溝の幅:12mm引用元:海内工業株式会社適切なダイの溝幅よりも狭いダイで加工すると、ワーク(金属板)に反りが発生したり、ダイによるワークへの曲げキズが深くなる場合があるので注意が必要です。板金の完成形状によっては、金型に干渉して加工できない形状があります。曲げ加工として加工可能な範囲(限界値)は、設計内容や加工メーカーにより異なります。以下の道具を使用することで、曲げ加工が可能か、特殊な金型を用いない普通の型で曲げられるのかを確認できます。使用する道具ヤゲンの断面形状シート(下図左)リターンベンドの限界グラフ(下図右)引用元:海内工業株式会社         引用元:株式会社アマダヤゲンの形状シートは実物の金型と同じ形状をしており、紙やプラスチックで作成した原寸大の形状見本や模型があれば、実際に押し当てることで干渉の有無を確認できます。リターンベンドの限界グラフは、ヤゲン(金型)の寸法や形状を図示したもので、板金加工の完成寸法と比較することで加工可否の確認を行います。曲げの限界高さ寸法について説明します。なお、曲げの限界高さ寸法(下図 L寸法の最小値)のことを最小フランジという言い方をする場合もあります。この最小とはワークの反りやキズつきが発生せず無理なく曲げられる範囲という意味になります。引用元:日本電気化学株式会社板厚と限界ダイ溝幅:板材の曲げが可能となる最大のダイ溝幅の関係については目安として以下の式で表すことができます。4 × t = 限界ダイ溝幅 (90°曲げの加工時) t:金属板の板厚曲げ加工は上のヤゲンと下のダイに板材を挟んでの加工になるので、板がこの溝に掛かっている必要があります。そのため、最小曲げ加工高さは限界ダイ溝幅に加え、溝幅の半分(4Vであれば2mm)の値と補正値(メーカーでの品質確保のための余裕)を考慮する必要があります。曲げ加工による立ち上がりの限界値2t(限界ダイ溝幅4t × ½ (溝幅の半分)) + 補正値引用元:株式会社小林機械引用元:株式会社アマダ上記限界値は考え方の一例であり、詳細はメーカーへの確認が必要です。Mitsuriは板金加工を依頼できる多数のメーカーと提携しています。お気軽にお問い合わせください。参考記事板金加工については以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。⇒第8回 板金加工の花形である【曲げ加工】の方法板金の穴と曲げ加工の関係性について板金加工後の製品組み立て時に部品が嵌らない、ネジが固くて入らないという場合は、曲げ加工の際に穴が変形している可能性があります。それは、曲げ加工が板材を押しつぶす圧縮という力と板材を引っ張りあげる引張という力の両方が1枚の板に働くためで、その力が働くことで板材が変形します。穴の変形量は、曲げ部と穴の長さ(距離)によって変化します。穴位置と曲げ加工部との距離が長くなれば穴の変形量は小さくなり、逆に穴位置と曲げ加工部との距離が短くなれば穴の変形量は大きくなります。穴の変形は穴の中心方向へ膨らみが発生するために起こります。シャフトやネジ以外でも、部品を組み合わせる際には干渉・ガタつきが発生する可能性があるため、穴位置が充分に曲げの加工位置から離れているかといった注意・考慮が必要になります。穴位置と曲げ加工位置の距離が充分に取れない場合の解決策としては、膨らみが発生した部分を削る、または曲げ工程前に逃げの穴をつけることなどが挙げられます。すでに量産化の体制となっている場合には、後工程のみの対応となってしまうため、試作・開発時に膨らみが発生するということの予測を立て、設計段階で穴位置と曲げ加工の距離、距離が取れない場合であれば逃げやぬすみを考慮しておく必要があります。断面と穴の距離に関する限界について前項で記載したように、曲げ加工時の加工部近傍に穴が存在すると、板材の変形により周辺の肉が引っ張られて穴が変形する可能性があります。このような変形を避けるためには、曲げ加工部の位置(断面)から穴は一定距離以上離して設計する必要があります。曲げ位置(断面)と穴位置との限界加工距離の目安として、参考式を以下に示します。f (穴の端から曲げの内側の距離) = 板厚 × 1.5 + r (曲げの内 R)あくまで参考値ですので、板材の材質、タップ(雌ネジの穴加工)や設計的に意識した公差等が入った穴であれば、安全を見て余裕を取った方が良い場合もあります。また、金型との関係でダレ(加工によって表面が丸みを帯びる)やカエリ(加工によって端部にカエリやバリ:ギザギザとした形状が発生)が発生する場合があります。そのため、ダレによって板材が穴の中心へ伸びることで、想定していた穴寸法よりも有効となる穴の寸法が小さくなったり、カエリが異物として残留し穴を塞いでしまうといったことを考慮する必要があります。金型の形状や摩耗状況、板金の加工形状といったその時々での製造状況によっても条件は変わってきます。板金の適切な設計や加工をするためには、板金の加工特性を知っておくこと、メーカー毎に加工可能な限界値や製造条件を知っておくことが大切です。まとめ板金における曲げ加工の限界について解説しました。板金の曲げ限界は、上型(ヤゲン)と下型(ダイ)の形状によって変化します。金型形状による加工の可否は今回紹介した道具によって確認は可能ですが、詳細な確認は必ずメーカーへの相談が必要です。穴加工された板金に曲げを行う場合、穴の中心方向へ膨らみが発生するため、穴位置は加工断面から適切な長さを取ること、穴位置と加工断面との長さが取れない場合には逃げ・ぬすみ等を作っておくことで部品の干渉を避けることができます。穴加工の位置については、曲げ加工された板金の断面から加工可能な範囲(最小距離)があるため注意が必要です。金型の形状や摩耗状況、板金の加工形状といった製造状況によっても加工可能な範囲は変わってくるため、しっかりとメーカー選定を行う必要があります。メーカーを選ぶ際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で140社以上のメーカーと提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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    電解加工とは?原理、電解液、メリット・デメリット

    電解加工とは、その名の通り「電気分解」のメカニズムを利用して金属を加工する技術のことです。生産性が高く、多くの金属に活用できる上、細かい部分への加工が可能なことから、航空機や自動車などの部品製造だけでなく、医療機器をはじめとする幅広い分野に活用されています。今回の記事では、電解加工の特徴やメリット・デメリット、間違いやすい放電加工との違いについて解説していきます。電解加工とは電解加工とは、電解液の中に金属を入れ、電極から電気を流すことによって微細なバリを科学的に除去する加工方法です。金属部品の製造過程でバリが付くことは避けられませんが、除去しにくいバリをそのまま放置すると後の工程で支障をきたす可能性があるため、除去しておく必要があります。しかし、部品の中には複雑な構造のものも多く、目視の確認や工具を使った作業が難しいものも存在します。そこで活躍するのが電解加工です。複雑な構造の部品に発生したバリを、表面から入り組んだ部分まで短時間で確実に除去できるため、精密性を要求される飛行機のエンジンタービンなど、重要な部品の製造にも用いられています。電解加工の原理電解加工は、下記のような原理となっています。1.電解液の中に金属を入れる2.金属に陽極(+)の電流を、対抗する電極に陰極(-)の電流を流す3.電解液中のイオンが移動し、液中に層を形成する4.陽極の表面の金属原子(バリ)が電解液中に引き出される電解加工においては、電流密度が高いほど速度・精度・表面粗さが向上します。ただし、電解液の濃度を均一化させておく必要があるため、単純に電流密度を上げれば必ず品質が向上するというわけではありません。電解加工のメリットとデメリット短時間でバリを除去することができ、部品の精度を上げてくれる電解加工ですが、メリットとデメリットが存在します。電解加工のメリット・幅広い金属に対して加工ができる・電極となる工具消耗がない・加工速度が早い・加工変質層が小さい電解加工のメリットは幅広い金属に対して短時間で加工できる点です。電極は部品ごとに専用のものを使用する必要がありますが、劣化せず使い続けることが可能なため、途中で機械を止めてメンテナンスをしたり、新しい電極に交換したりする手間がありません。そのため、多くの部品を、短時間で加工することが可能です。さらに、電解加工による金属の変質が極めて少ない点も大きなメリットです。電解加工のデメリット・精度が安定しない・加工物と電極の距離の検出が難しい・機器に耐食性の対策が必要電解加工のデメリットは主に、精度の不安定さにあります。その理由は、電解液の均一性を保つことが品質向上に大きく影響してしまうからです。電解液の濃度は一定ではない上、濃淡を目視で確認することはできません。さらに、加工による温度の上昇によっても濃度が変化してしまうため、対策が難しくなっています。他にも、周辺機器が腐食しやすい、生成物が毒性を持つ場合があるなどの短所も持っています。電解加工の電解液電解液には、電気を流す役割の他、加工物の温度を冷ます効果もあります。加工時に液量が少なすぎると金属の温度が上がり、仕上がりにムラが出てしまう可能性があり、逆に多すぎると変色の原因となってしまうことがあります。そのため、適切な液量を保って加工を進めることが重要です。電解液の種類は「中性塩溶液」「酸溶液」「アルカリ溶液」が用いられ、それぞれに違った特徴を持っています。中性塩溶液中性塩溶液は、最も一般的に用いられる電解液です。アルカリ溶液に比べて電導度は低いものの、腐食度も低く、コストパフォーマンスにも優れているため、大部分の金属材料に使用されます。一般的な塩(Nacl)を使った電解液は液中濃度を均一化しにくく、加工精度が悪くなる傾向があります。そのため、塩素酸ナトリウム(NaClO3)や硝酸ナトリウム(NaNO3)を使った電解液が使用される場合もあります。ただし、いずれも加工精度は向上するものの電流効率が低下するため、加工により多くの電力を必要とします。その結果、中性塩溶液の魅力であるコストパフォーマンスが下がってしまいます。酸溶液酸溶液は、取り扱いに注意が必要なこともあり、特殊な場合にしか用いられない電解液です。電導度は比較的高いものの、腐食性が強い他、加工を続けていくと電導度が減少していく特徴があります。アルカリ溶液アルカリ溶液は、タングステンやモリブデンなど、超硬合金の加工に対して有用な電解液です。超硬合金に対しては、中性塩溶液に比べて質の良い仕上がりとなるため、好んで用いられます。ただし、一般的な金属に対しては加工時に不溶解の生成物を発生させ、加工物の溶出を邪魔してしまうため、用いられることはありません。電解加工と放電加工の違い液中に電気を流して作業をする電解加工は、放電加工と似ているため比較されることも少なくありません。しかし、実際のメカニズムや得意分野、加工の目的は大きく異なります。例えば、電解加工は電解水に通電させることで電解水のイオンによって金属を加工しますが、放電加工は絶縁性を有する加工液に雷のような放電現象を起こし、無理やり通電させることで熱で金属を溶かして加工します。また、下表を見ても分かる通り、長所と短所も大きく異なっています。電解加工放電加工速度◎△精度△◎電極の消耗◎△製品の安定性△◎放電加工の原理も確認したい方は、下記記事を参照してください。参考記事:放電加工(EDM)の基礎知識(原理、メリット・デメリット、電極)

  • 放電加工(EDM)の基礎知識(原理、メリット・デメリット、電極)

    放電と聞いて一番に何を思い浮かべますか?雷や静電気など、普段生活していてもいくつか思いつくものはありますよね。放電とは、普段電気を通さない気体に電子が放出され、電流が流れる現象のことです。そして、放電のメカニズムを応用することで金属を彫ったり切ったり、穴を開けたりする技術のことを放電加工と呼んでいます。さまざまな機械が稼働している金属加工の現場において、放電加工にはどんな特徴があるのでしょうか。今回は、放電加工(EDM)のメカニズムやメリットについて、詳しく紹介していきます。放電加工(EDM)とは引用元:富士エンジ(YouTube)放電加工とは、加工したい金属と加工機の隙間に放電することで、6000℃以上の熱を起こし、金属を溶かしながら加工していく技術のことです。EDM(Electrical Discharge Machining)とも呼ばれています。金属の表面を1μm単位で加工できる精度に加え、ダイヤモンドに近い硬さを持つとされる超硬合金の加工もできる技術です。金属加工の現場において、部品を製造するのに必要な金型には主に超硬合金が使われます。何故なら、大きな圧力をかけて高温の鉄を流し込み、形を生成していくため、鉄と同等だったり、柔らかい素材だったりすると、型枠が変形してしまうからです。ただ、超硬合金は非常に硬く、加工が困難な素材でもあります。そのため、切削加工機のドリルではうまく加工することができないという難点があります。そこで登場するのが放電加工。1μmという高い精度で超硬合金を正確に削ることができるため、金型の製造を中心に広く用いられる加工技術になっています。放電加工の原理雷や静電気は、空気中に放電されますが、放電加工の場合、工作物を液体に沈めて加工します。そのため、放電は液中で起こります。まず、工作物を絶縁性を有する加工液に漬けます。その後、工作物に電流を流し、電極を近づけていきます。すると、1mm程度の距離まで近付いた所で工作物と電極の間にある加工液に絶縁破壊が起こり、放電が発生します。放電は一定時間で収まりますが、同じ動作を繰り返せば、また放電が発生します。これを継続的に繰り返すことで、製品を加工していく技術を放電加工と呼びます。放電加工(EDM)のメリット放電加工のメリットは下記の通りです。・材料が硬くても問題なく加工ができる・細かい精度の加工が可能・工作物に触れずに加工ができる放電加工最大のメリットは、硬い素材を加工できること。超硬合金のように硬い素材でも関係なく加工できるため、高硬度の素材加工に適しています。さらに、精度が高いことや工作物に触れずに加工ができる点も大きなメリットと言えます。工作物に触れないということは、斜面で滑ったり段差で引っかかったりすることもありません。そのため、斜めの素材であろうが、球体であろうが関係なく、高い精度での加工が可能になります。放電加工(EDM)のデメリット放電加工のデメリットは下記の通りです。・加工のスピードがおそい・電気を通す素材しか加工できない・コストが高い放電加工のデメリットはスピードがおそいこと。少しずつ金属を溶かしながら加工していくため、ペースが遅く、大量生産には向きません。さらに、素材と電極の間に電気を流し、放電を促しているため、素材が電気を通さない場合、放電加工ができません。放電加工には、電極として銅や真鍮、タングステンなどでできたワイヤーを使用します。放電が起きれば当然、素材だけでなく電極側も消耗するので、電極の交換頻度はかなり高くなり、コストがかさみます。放電加工の電極放電加工の電極とは、放電を起こす部分のこと。切削加工機で言うところの「ドリル」の役割を果たす部分です。電極は放電を繰り返すと消耗していくため、常に新しい状態にしておく必要があります。材質によっても効果が変わるので、それぞれの特徴について下記でご説明します。電極消耗放電加工では、電極として用いている素材も消耗します。消耗した電極をそのまま使い続けると工作物の加工が予定していた形状にならない可能性があるため、電極は常に新品の状態で放電を続けなければなりません。そのため、放電加工機では、電極として用いられる素材は古いものを巻き取り、常に新しい状態で放電を続ける仕組みになっています。電極の材質放電加工の電極には、銅やグラファイト、タンクステンなど、さまざまな素材が使用されています。電極は用途に合わせて交換することができ、それぞれに違った特徴を持っています。●銅銅は最もコストが安いため、一般的に多く用いられている素材です。電気抵抗が少なく、熱伝導率が高いことが特徴。ただし、耐熱性が低い弱点があります。●グラファイトグラファイトは熱に強いのが特徴。素材が熱によって変形することがなく、扱いやすい素材と言えます。グラファイトには多くの種類が存在するため、用途に合わせてチョイスが可能です。●タングステンタングステンは、熱伝導率の良い銅と合わせて使用されます。消耗率の高い超硬合金の加工で最も消耗を抑えられるため、超硬合金の加工に多く使用されています。材質は加工する素材によって相性が変化します。素材によっては無消耗加工も可能なので、それぞれの特徴やメリットを把握して活用すればコストを抑えながら高精度の加工が可能になります。

  • ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順、用途をご紹介!

    「ガス溶接・ガス切断の仕組みが知りたい」「ガス溶接・ガス切断の特徴は?」「作業するのに資格は必要?」……このような疑問を持つ方は必見です。本記事では、ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順、作業に必要な資格などについて解説します。ガス溶接・ガス切断は、その名前の通りガスを利用した加工方法です。ボンベに充填されたアセチレンなどのガスと酸素を混合し、燃焼させた炎を被加工材に当てて接合および溶断を行います。電気を使わずに加工できる点はメリットですが、その原理や仕組みの関係上、不向きな材料も存在します。ガス溶接・ガス切断についての基礎知識を得たい方は、ぜひ参考にしてみてください。参考:溶接とは?【専門家が解説】素人でも3分でわかります!ガス溶接は可燃性ガスによって起こした火を用いた加工ガス溶接は、アセチレン・水素・LPGなどの可燃性ガスが燃焼する熱を利用して溶接する方法。一般的にアセチレンを採用している加工業者が多いです。可燃性ガスは爆発や火災の危険性があります。そのため、ガス溶接は特定の国家資格がないと作業できません。ガス溶接は、薄い板材に対しては、母材同士を溶かして接合する「なめ付け」が可能ですが、厚みのある板材に対しては溶加材を用いる「ろう付け」を行い接合します。参考:ろう付けとは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説ガス溶接の特徴とメリット・デメリット代表的な溶接方法に電気を使ったアーク溶接がありますが、ガス溶接はアーク溶接と比較すると火花が発生しないため接合箇所が見やすく、溶接のミスが抑えられる点はメリットです。ガス溶接は電気を使用しないため、電気のない現場での溶接にも対応も可能。ガスの供給量の調節もしやすく、加熱し過ぎによる被加工材の割れの防止や、薄肉の板材や溶融点の低い金属の溶接に適しています。ただし、ガス溶接は加熱に時間がかかるほか、溶接温度が低いため、作業時間が比較的長くなる傾向に。このことから厚みのある板材のなめ付け溶接は不向きです。また、熱を1点に集中して与えられず、不要な箇所まで加熱をしてしまうため、ひずみが発生しやすい点もデメリットとなります。ガス溶接の原理や手順引用元:日本キャタピラーガス溶接は、酸素とガスを燃焼させた炎で金属を熱し、溶融させて接合する仕組み。ガスや火を使った危険な作業のため、上図のようにヘルメット・溶接用保護面・革手袋・革前掛けなどを着用しましょう。そのほかに準備するものとしては、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベ・圧力調整器・ホース・ガス溶接トーチ・専用ライターが必要です。まずは、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベおよびこれらに取り付けた圧力調整器・ホース・ガス溶接トーチに問題がないかを確認します。問題がなければ、可燃性ガスボンベと酸素ボンベを開栓します。このとき、ガスの漏れが無いかも注意して見ておきましょう。次にガス溶接トーチのバルブを開き、炎の大きさを調節します。トーチにもガスと酸素のバルブの2種類がありますが、まず始めにガスのバルブを開きます。引用元:モノタロウガスのバルブを開いたあと、専用ライターを用いて着火。すると上図左のように赤色の炎が出てきます。ここから、「白心」と呼ばれる火口に形成される白色の炎が、米粒ほどの大きさになるまで酸素バルブを開きます。ここから金属のガス溶接にかかります。溶接したい材料をセットし、接合部分の両端を溶接仮止めを行います。溶接は白心と材料が1~2mm程度離れた位置で炎を当てるようにしましょう。仮止めが終えたら、全体を溶接します。ガス溶接が終えたら消火作業を行います。点火の手順とは逆で、溶接ガストーチは酸素→ガスの順にバルブを閉めます。次に、可燃性ガスボンベと酸素ボンベの栓を閉め、トーチの酸素を抜きます。これらの作業手順については以下の動画も参考にしてみてください。引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオ引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオガス溶接に必要な資格ガス溶接の資格は、ガス溶接を行うすべての人に必要な「ガス溶接技能者」、ガス溶接作業者を指揮・管理をするために必要な「ガス溶接作業主任者」の2種類の国家資格があります。●ガス溶接技能者ガス溶接技能者の資格を得るには、職業訓練施設や建機メーカー教習所などで開催されている講習を受けなければなりません。講習は1日目は学科、2日目は実技と2日間にわたり行われます。学科は大きく分けて3つの科目を受講。1つ目は、ガス溶接等の業務のために使用する設備の構造や取扱方法に関する知識を学びます。2つ目は、ガス溶接で用いる可燃性ガスと酸素に関する知識。3つ目は、関係法令(法律や規則など)の講習を受けます。これらの講習は合計8時間ほどの時間を要し、そののちに講習で学んだ内容から出題される学科試験を受けなければなりません。実技では学科のように試験はないものの、実際のガス溶接を想定した作業を行うため、危険が伴います。ここでは、機器の点検およびガスの調整方法などを、5時間ほどかけて学びます。●ガス溶接作業主任者ガス溶接作業主任者の資格を得るには、各地の安全衛生技術センターで行われる試験に合格する必要があります。こちらの試験には受験資格は設けられていませんが、試験合格後に免許を申請するのに、18歳以上かつガス溶接技能講習修了者で実務経験3年以上などを証明する書類が必要です。免許取得を検討される方は、必要な書類をきちんと確認した上で試験に望むようにしてください。なお、試験科目については下記の通りです。・ガス溶接等の業務に関する知識・関係法令・アセチレン溶接装置及びガス集合溶接装置に関する知識・アセチレンその他可燃性ガス、カーバイド及び酸素に関する知識条件によっては、一部の試験科目を免除される場合もあります。詳しくは安全衛生技術試験協会公式サイトをチェックしてみてください。ガス溶接の用途ガス溶接は、他の溶接方法と比べて溶接時の温度が低いため、溶融点の低い金属や薄肉のものに適した接合方法です。また、小型の手作業用ガス用トーチが普及しているため、狭い箇所の溶接にも適しています。ガス切断はガスを用いて切断する加工ガス切断とは、ガスを使った炎で加熱し、被加工材を切断する加工方法のことです。別名「酸素切断」とも呼ばれています。使用する機材は、可燃性ガスボンベ・酸素ボンベ・圧力調整器・ホース・トーチ・専用ライターとガス溶接とほぼ同じですが、トーチに関してはガス切断専用のものを扱います。ガス切断の特徴とメリット・デメリットガス切断は、数mmの薄板から数百mmの肉厚な鋼材の切断に対応しています。また、小さい規模の設備で加工を行えるため、導入費用が安く抑えられるのが特徴です。しかし、ステンレスやアルミニウムなどはガス切断には不向きです。これは、ガス切断が、母材より融点の低い酸化物を形成する鋼材のみ対応可能なため。ステンレスやアルミニウムは、高い融点の酸化物を生じるので、ガス切断ではなく、プラズマ切断やレーザー切断が採用されています。参考:プラズマ切断について専門家が解説!特徴やレーザー切断との比較もしています!また、ガス切断は手作業になるので、作業者の技術力が問われます。被加工材の厚みによって火力や切断のスピードの調節が必要なほか、切断面にブレがないように加工するには、経験を要します。ガス切断の原理と手順ガスの炎で加熱された鋼材は、火口の中心から高速で酸素を供給し、酸化鉄となります。この酸化鉄は鋼より融点が低く、酸素の噴流で吹き飛ばすことで切断する仕組みです。危険な作業のため、ガス切断を行う前の準備として、保護マスク・革手袋・革前掛け・安全靴などを着用しておきましょう。安全な服装が準備できたら、可燃性ガスボンベと酸素ボンベに圧力調整器を取り付けたのち、ホースとガス切断用トーチも繋ぎます。繋ぎ終えたら可燃性ガスボンベと酸素ボンベを開栓します。このとき、ガス漏れがないかも点検しておきましょう。引用元:一般社団法人日本溶接協会ガス切断に使うトーチは、燃料ガスバルブ・予熱酸素バルブ・切断酸素バルブの計3つのバルブがあります。まずは燃料ガスバルブを開き、専用ライターを用いて点火します。次に予熱酸素バルブを開き、青い炎が1cmほどの大きさになるように調節します。ここから被加工材に炎を当てて切断します。炎を当てている箇所が赤くなってきた段階で、トーチの切断酸素弁を開くと鋼材の切断が可能です。ここから、切断したい方向に火口を移動させましょう。切断が終わるたびに、切断酸素バルブは閉じるようにしてください。消火から片付けに関しては、準備とはほぼ逆の手順で行います。可燃性ガスボンベ・酸素ボンベの栓を閉めるまで進めたら、圧力調整器のバルブとトーチの3つのバルブも開いて、ホース内にあるガスと酸素を完全に抜く作業も行う必要があります。これらの作業手順は以下の動画も参考にしてみてください。引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオ引用元:OPEN EV 沖縄県教育委員会 教育支援ビデオガス切断は、切断する鋼材の厚みによって火力や切断のスピードを適宜調節しながら行うのが大切です。また、薄肉の鋼材を切断する際は、火力を弱くして素早く切断すると、上手く加工できます。ガス切断のトーチは、加工する鋼材の厚みによって、1・2・3の火口番号の種類を使い分けます。厚みのある鋼材であるほど、火口番号が大きいものを使用します。小さい火口を使って無理に厚みのある板を切断しようとすると、切断面が荒れやすくなるので注意してください。ガス切断に必要な資格ガス切断をするのに必要な資格は、「ガス溶接技能者」です。また、ガス溶接・ガス切断の作業者を指揮や管理をするには「ガス溶接作業主任者」の資格が必要になります。これらは、ガス溶接と同じで、ガス切断との区別はありません。詳しくは、前述の「ガス切断に必要な資格」の項で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。ガス切断の用途ガス切断は、ステンレスやアルミニウムの加工には不向きですが、グラインダーなどでは手間のかかるような、厚みのある鋼材を切断する際に、多く利用されています。まとめ今回は、ガス溶接・ガス切断の特徴や加工手順について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ガス溶接・ガス切断はともに、アセチレンなどの可燃性ガスを使った加工方法。火力の調節がしやすく、被加工材の厚みなどに合わせて、適切な溶接・加工ができる点が特徴です。また、電気を使わない加工方法のため、電気の供給ができない現場でも使えます。しかし、ガス溶接・ガス切断を行うには「ガス溶接技能者」の資格が必要です。ガス溶接・ガス切断の作業を指揮・管理をする場合は「ガス溶接作業主任者」の資格も得なければなりません。溶接についてお悩みの方は、ぜひMitsuriへご登録ください。日本全国で約250社以上の工場が登録しているので、お客様のご希望に沿う加工業者が見つかります。見積りは直接複数社から取得可能です!

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    治具の種類【基礎】使い方と事例、考え方

    治具(じぐ)(治工具(じこうぐ))は、製品の品質・精度の向上や均質化、製造の効率化などを図るために用いられており、製造業において必要不可欠なものです。金属製品は、材料に成形加工や熱処理、表面処理などを施し、さらに場合によっては組立や検査等を行って生産します。各工程では、工作機械や刃物、メッキ設備などを使用して加工等を行っていきますが、そのほとんどの場面において治工具・治具が用いられます。治具・治工具とは【わかりやすく】工具とどう違う?治具(治工具)とは、加工や組立、検査などの各工程において、製造をサポートするために用いられる器具です。加工工程において工具の位置決めや案内、材料の固定などを行ったり、組立工程において部品を所定の位置へ正確に挿入したり、多様な役割があります。図1:治具とボール盤 例えば、単にボール盤で穴を空ける場合でも、治具に材料を取り付ければ、ドリルを垂直に下ろすだけで、材料の同一位置へ正確に穴を空けることが可能です。治具を使用すれば、大量生産品の作業が容易になり、穴の位置がばらつくことも防止できます。図2:傾斜が可能な治具  汎用的に使用できるものとして、材料を傾斜・回転させて固定する治具が挙げられます。この治工具を利用すれば、角度をつけた穴を空けるなど、4軸以上の加工機がないと加工が難しい形状を成形することが可能です。参考:5軸加工機についてご紹介!3軸加工機との違いについても解説治工具と工具の違い治工具は「工具」という言葉を含みますが、工具とは異なります。工具治工具(治具)切削工具研削工具場椅子(万力)クランプブッシュ加工を直接行う道具加工に不可欠なもの加工をサポートする道具なくても一応加工はできる工具の例には、フライスやドリル等の切削工具、砥石等の研削工具などが挙げられます。これらは金属を削るなど、加工を直接的に実行する道具であり、加工に不可欠なものです。治工具の例には、バイス(万力)やクランプ、穴加工のガイドに用いるブッシュが挙げられます。これらはあくまで加工をサポートするものであり、加工そのものは治工具がなくても可能です。工具は加工そのものに使われる道具で、治工具は工具による加工をサポートする道具です。治具のメリット治工具を利用することによって、加工の簡易化や均質化、保有している設備や工作機械では加工困難な形状の実現など、様々なメリットが期待できます。治具のメリットとして、以下が挙げられます。治具のメリット・品質・精度の向上・品質・精度の均質化・難しい加工の簡易化・作業の簡易化・人的ミスの減少・不良の発生軽減・生産速度の向上治具を導入することによって、コストダウンや生産性の向上、製品価値の向上が可能になります。ただし、治具は多くの場合、部品・製品毎に用意しなくてはなりません。そのためロット数が少ない製品では、治具の製作費用自体が負担となり、コスト増に繋がる場合もあるので注意が必要です。治工具と治具の違い治具(じぐ)は、治工具とほぼ同じ意味で使われている言葉ですが、元々は工具の位置決めや案内を行う器具のみを示していました。しかし、現在では治工具と同様に、材料の位置決めや固定を行う取付具・固定具なども示し、加工や組立、検査等を補助する器具の総称として用いられており、治具と治工具は同義です。治具の種類治具には以下の種類があります。・固定治具・切断治具・挿入治具・引抜治具・溶着治具・塗装治具・カシメ治具(かしめて接合する治具)・検査治具治具の種類説明例など固定治具材料を固定して加工を補助する治具バイス、クランプ(万力)切断治具材料を決まったサイズに切断するための治具裁断機挿入治具引抜治具材料を決まった位置に挿入(決まった位置から引抜く)ための治具プーラー溶着治具材料同士を接着するための治具シーラー塗装治具材料の塗装を補助する治具(塗装しない部分を保護する治具)ステンシルカシメ治具材料同士の接合部分を固定する治具―検査治具完成品を検査するための治具―治具の使い方と加工の例(1)治具を使った穴あけ加工治具を使用した例治具を使用しない例右図は、専用の治工具を使用しない方法です。汎用クランプで材料を固定し、穴を空ける位置にケガキ及びポンチ穴加工を実施します。その後ドリルを水平方向に送って位置を合わせ、垂直に下ろして加工します。専用の治工具を用いる左図では、位置決めピンで材料の水平位置を固定すると共に、ブッシュでドリルを垂直に下ろした際のドリルチャックと材料との距離を一定にしています。この方法では、材料にあらかじめ位置決めピンをはめる穴が空いている必要がありますが、材料にケガキやポンチ穴加工を行うことなく、材料の水平位置を決めることが可能です。また、穴の深さもブッシュの厚さで決まるため、ドリルの垂直方向の送りを調整することなく、一定深さの穴を空けることができます。(2)治具を使った薄板の旋盤加工治工具を使用して、旋盤で薄板を加工する方法です。図中の左上図の板材から右下図のような部品を成形するケースです。旋盤のチャックでは板材の固定ができないため、このままでは板材から部品を成形できません。引用元:株式会社南信精機製作所板材の雌ネジ穴と締結できる雄ネジを備えた治工具を用いることで、旋盤による加工が可能になります。板材を治工具と締結して治工具を旋盤にチャックします。これによって板材の外面の加工が可能になり、部品の成形ができます。治工具・治具設計の考え方と製作の流れ図5:治具設計の流れ 治具製作は「設計」→「部品調達・製作」→「組立」の流れで行われます。(1)設計治工具は、部品や製品の加工の補助に使用するものです。そのため治工具を設計する際には、加工対象の図面検討とともに、冶具と一緒に用いる工具・工作機械についても調べておく必要があります。治工具の精度は「加工品の精度が治工具の精度よりも高くなることはない」ことを考慮して検討します。治工具が製品に触れるケースでは、製品に傷をつけないために、治工具に対する表面仕上げの必要性も考えます。治工具の設計段階で考えること・治具と一緒に用いる工具・治具と一緒に用いる工作機械・治具の精度・治具の表面仕上げの必要性これらを考慮した上で、求める効率性や精度、品質が実現できる治工具を設計します。(2)部品の調達・製作設計と要求仕様の整合性が確認できたら、治工具の製作に移ります。治工具は、材料を固定するだけの単純なものから、複数の部品を組み合わせたもの、加工を自動化するためのロボットと組み合わせたものまで、複雑さは様々です。ケースバイケースで、自社で部品を製作したり外部から部品や装置を調達したりするなどして、治工具の全ての構成要素を揃えます。(3)組立a. 組立作業構成要素がそろったら、組立に移ります。設計書を確認しながら、完成品をイメージして組み立てます。ものによっては、電気機器を含む場合があり、配線作業が必要になることがあります。b. 検査・寸法チェックなど組立作業が完了したら、寸法をチェックします。電気的なチェックを行うこともあります。c. 試運転と納品組立及び検査が完了したら、納品します。治工具は製品ではなく製造を補助する器具であるため、要求仕様通り動作するかを確認するために試運転を行うことがあります。問題があれば修正し、要求仕様とのズレがあれば調整します。治工具・治具は、導入することでコストダウンや生産性の向上が期待できるため、金属加工を行う際に広く用いられている器具です。また、大量生産において、特に有用となるものでもあります。しかし、工作機械や工具と同様、高い品質や精度が要求されるものであり、その製作には高度な技術が必要となります。① Mitsuriでのお見積りは案件を公開して待つだけ!② 複数のお見積りが届く!  ⇒金額重視or納期重視?ニーズに合うものを選べる!③ 案件の5割以上が1日以内に見積りを取得!Mitsuriでは日本全国の250社以上の業者と提携しており、治工具・治具の製作を得意とする工場をご紹介できます。お見積りは複数社から可能です。治工具・治具のお見積りをご検討中の方は、下の赤いボタンをクリックしてお問い合わせください!

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    板金における曲げ加工の限界について専門家が解説!

    板金加工と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。多数の方は自動車が思い浮かぶのではないでしょうか。実際には自動車だけでなく、家電製品の身近なものや工業製品といった普段目にしないものにまで幅広く使われている技術になります。今回は板金の曲げ加工の限界ということで、曲げや穴加工に関係する限界値や製品適用時の注意点等を解説します。具体的な数値例も出していますので、ぜひ、板金加工(曲げ)への理解を深める参考にしてください。曲げ加工による立ち上がりの限界値について曲げ加工は上下に設置された二種類の金型を使用し、上の型(ヤゲン)と下の型(ダイ)に金属の板を挟んで加工していきます。ダイの金型には溝加工がされており、加工する板の板厚によってダイの溝幅が違ってきます。ダイは一般的に〇V(〇に数字が入る)という形で呼ばれ、表記の数字が溝の幅になります。例:12V 溝の幅:12mm引用元:海内工業株式会社適切なダイの溝幅よりも狭いダイで加工すると、ワーク(金属板)に反りが発生したり、ダイによるワークへの曲げキズが深くなる場合があるので注意が必要です。板金の完成形状によっては、金型に干渉して加工できない形状があります。曲げ加工として加工可能な範囲(限界値)は、設計内容や加工メーカーにより異なります。以下の道具を使用することで、曲げ加工が可能か、特殊な金型を用いない普通の型で曲げられるのかを確認できます。使用する道具ヤゲンの断面形状シート(下図左)リターンベンドの限界グラフ(下図右)引用元:海内工業株式会社         引用元:株式会社アマダヤゲンの形状シートは実物の金型と同じ形状をしており、紙やプラスチックで作成した原寸大の形状見本や模型があれば、実際に押し当てることで干渉の有無を確認できます。リターンベンドの限界グラフは、ヤゲン(金型)の寸法や形状を図示したもので、板金加工の完成寸法と比較することで加工可否の確認を行います。曲げの限界高さ寸法について説明します。なお、曲げの限界高さ寸法(下図 L寸法の最小値)のことを最小フランジという言い方をする場合もあります。この最小とはワークの反りやキズつきが発生せず無理なく曲げられる範囲という意味になります。引用元:日本電気化学株式会社板厚と限界ダイ溝幅:板材の曲げが可能となる最大のダイ溝幅の関係については目安として以下の式で表すことができます。4 × t = 限界ダイ溝幅 (90°曲げの加工時) t:金属板の板厚曲げ加工は上のヤゲンと下のダイに板材を挟んでの加工になるので、板がこの溝に掛かっている必要があります。そのため、最小曲げ加工高さは限界ダイ溝幅に加え、溝幅の半分(4Vであれば2mm)の値と補正値(メーカーでの品質確保のための余裕)を考慮する必要があります。曲げ加工による立ち上がりの限界値2t(限界ダイ溝幅4t × ½ (溝幅の半分)) + 補正値引用元:株式会社小林機械引用元:株式会社アマダ上記限界値は考え方の一例であり、詳細はメーカーへの確認が必要です。Mitsuriは板金加工を依頼できる多数のメーカーと提携しています。お気軽にお問い合わせください。参考記事板金加工については以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。⇒第8回 板金加工の花形である【曲げ加工】の方法板金の穴と曲げ加工の関係性について板金加工後の製品組み立て時に部品が嵌らない、ネジが固くて入らないという場合は、曲げ加工の際に穴が変形している可能性があります。それは、曲げ加工が板材を押しつぶす圧縮という力と板材を引っ張りあげる引張という力の両方が1枚の板に働くためで、その力が働くことで板材が変形します。穴の変形量は、曲げ部と穴の長さ(距離)によって変化します。穴位置と曲げ加工部との距離が長くなれば穴の変形量は小さくなり、逆に穴位置と曲げ加工部との距離が短くなれば穴の変形量は大きくなります。穴の変形は穴の中心方向へ膨らみが発生するために起こります。シャフトやネジ以外でも、部品を組み合わせる際には干渉・ガタつきが発生する可能性があるため、穴位置が充分に曲げの加工位置から離れているかといった注意・考慮が必要になります。穴位置と曲げ加工位置の距離が充分に取れない場合の解決策としては、膨らみが発生した部分を削る、または曲げ工程前に逃げの穴をつけることなどが挙げられます。すでに量産化の体制となっている場合には、後工程のみの対応となってしまうため、試作・開発時に膨らみが発生するということの予測を立て、設計段階で穴位置と曲げ加工の距離、距離が取れない場合であれば逃げやぬすみを考慮しておく必要があります。断面と穴の距離に関する限界について前項で記載したように、曲げ加工時の加工部近傍に穴が存在すると、板材の変形により周辺の肉が引っ張られて穴が変形する可能性があります。このような変形を避けるためには、曲げ加工部の位置(断面)から穴は一定距離以上離して設計する必要があります。曲げ位置(断面)と穴位置との限界加工距離の目安として、参考式を以下に示します。f (穴の端から曲げの内側の距離) = 板厚 × 1.5 + r (曲げの内 R)あくまで参考値ですので、板材の材質、タップ(雌ネジの穴加工)や設計的に意識した公差等が入った穴であれば、安全を見て余裕を取った方が良い場合もあります。また、金型との関係でダレ(加工によって表面が丸みを帯びる)やカエリ(加工によって端部にカエリやバリ:ギザギザとした形状が発生)が発生する場合があります。そのため、ダレによって板材が穴の中心へ伸びることで、想定していた穴寸法よりも有効となる穴の寸法が小さくなったり、カエリが異物として残留し穴を塞いでしまうといったことを考慮する必要があります。金型の形状や摩耗状況、板金の加工形状といったその時々での製造状況によっても条件は変わってきます。板金の適切な設計や加工をするためには、板金の加工特性を知っておくこと、メーカー毎に加工可能な限界値や製造条件を知っておくことが大切です。まとめ板金における曲げ加工の限界について解説しました。板金の曲げ限界は、上型(ヤゲン)と下型(ダイ)の形状によって変化します。金型形状による加工の可否は今回紹介した道具によって確認は可能ですが、詳細な確認は必ずメーカーへの相談が必要です。穴加工された板金に曲げを行う場合、穴の中心方向へ膨らみが発生するため、穴位置は加工断面から適切な長さを取ること、穴位置と加工断面との長さが取れない場合には逃げ・ぬすみ等を作っておくことで部品の干渉を避けることができます。穴加工の位置については、曲げ加工された板金の断面から加工可能な範囲(最小距離)があるため注意が必要です。金型の形状や摩耗状況、板金の加工形状といった製造状況によっても加工可能な範囲は変わってくるため、しっかりとメーカー選定を行う必要があります。メーカーを選ぶ際には、ぜひMitsuriにご相談ください。日本全国で140社以上のメーカーと提携しているため、きっとご希望に沿うメーカーが見つかるでしょう。ぜひお気軽にお問い合わせください。