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鋳造加工

  • ダイカストとは?製品例、メリット・デメリット、鍛造との違い

    金属を融点よりも高い温度に熱し、ドロドロの液体にした後で型に流し込む「鋳造」は、古代から伝わる金属加工技術のひとつ。その歴史は古く、紀元前3600年頃のメソポタミア文明で、青銅を加工したことが始まりと言われています。以降、金型を使った鋳造は技術の発展と共に進化を遂げ、複雑かつ強度の高い部品を生成できるダイカスト技術が誕生しました。ダイカストとはダイカストは、高温に熱して液体化した非鉄金属を金型に流し込み、圧力をかけて金型に流し込むことで複雑な形状の製品を製造する鋳造技術のひとつ。一般的な鋳造製品に比べて寸法精度が高く、金型を用いることによって表面が滑らかな仕上がりになります。切ったり削ったりするのではなく金型を使った加工のため、複雑な三次元形状の部品も製造できる自由度の高さが魅力です。板金では叶えられない複雑な形状の部品を製造できる上、金型を使用するため大量生産に適しています。主にアルミニウムやマグネシウム、亜鉛などの製品の成形に用いられ、自動車や家電、コピー機など、さまざまな製品の製造に活用されています。ダイカストのメリット・デメリット高度な技術に裏打ちされたダイカストですが、メリットはもちろん、デメリットもあります。メリット・複雑な形状の製品を製造できる・量産が可能で、生産コストが低い・寸法精度が高く、表面粗さも良いダイカストは複雑な形状の製品をたったの1工程で量産できるため、生産コストが低く抑えられる点が魅力です。一般的な鋳造に比べて寸法精度が高く、まったく加工をせず、ちょっとした継ぎ目のバリ取りをするだけで製品として完成させられる点も大きな魅力のひとつです。デメリット・機械的強度が低い・金型の費用が高いため少量生産には向かない・パイプや中空形状など、作れない形状がある一般的にダイカスト製品は内部に鋳巣(製品内部のガス)が発生するため、強度が低いことが問題とされてきました。しかし、この問題は2007年、特殊ダイカスト法の誕生によって解決。現在ではさまざまなダイカスト法が誕生しています。ただし、鋳巣の発生が抑えられたとしても鍛造製法をはじめとする強度の高い工法にくらべると製品強度は低めになっています。鋳造は主に砂型を用いられますが、ダイカストは金型を用いるため初期費用がかなり高額になります。そのため、少量生産には向きません。さらに、部品によって3万~8万ショット程度が金型の寿命と言われており、トータルコストはあまり良くありません。ダイカストの製品例亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの非鉄金属を大量生産できるダイカストは、主に自動車関連の部品製造で採用されてきました。近年、デメリットとなっていた強度の問題が解消されるなど、技術の発達によって建築材料や通信機器、産業機械など、さまざまな分野に需要が広がっています。●自動車車関連の部品エンジン(ヘッドカバー、シリンダー、クランクケース、オイルパン)、トランスミッション(トランスミッションケース、バルブボディ、トランスファーケース)●自動車関連車以外の製品玩具(ミニカー)、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、掃除機、DVDプレーヤー、HDヘッドフォン、ミシン)、事務用品(パソコン、タブレット、プリンター、コピー機、ファックス)、日用品(カメラ、装身具、釣り具)ダイカストと鋳造の違い鋳造は金属を高温で溶かし、液状にして型に流し込む工法で、ダイカストはこれを発展させた工法です。大きな違いは圧力をかけて金属を型枠に流し込むかどうかのみですが、それだけで仕上がりの精度や表面の滑らかさ、形状の複雑さなど、さまざまな面で優れた部品の製造が可能になります。まず、砂型を使用する鋳造は製造の都度型を作る必要がありますが、ダイカストは金型を使用します。そのため、初期費用は鋳造の方が安く、ダイカストは高額になります。その分、鋳造は小ロットから中ロット向き、ダイカストは大量生産向きとなっています。さらに、加工時間や精度も鋳造に比べてダイカストの方が高くなります。また、鍛造をはじめとする強度の高い工法に比べると、鍛造、ダイカストともに強度は弱めです。そのため、サイズや形状、費用、ロット数などの条件に応じて工法を選ぶ必要があります。

  • 砂型鋳造とは?工程、メリット・デメリット、型の種類、製品例

    鋳造とは、鋳型に溶けた金属を流し込んで成型する手法です。鋳造でできた製品を鋳物と呼びます。鋳物は、鋳鉄・鋳鋼・アルミニウムなど対応する材料が多く、用途に応じて使い分けることが可能です。溶かした金属を利用して成型を行うため、鍛造や切削加工に比べて複雑な形状の製品を安く量産できます。鋳造には、砂型鋳造・ダイカスト・ロストワックス鋳造・消失模型鋳造など、さまざまな製造法がありますが、今回は砂型鋳造の基本知識について解説します。参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説砂型鋳造とは引用元:コンサルソーシング株式会社 鋳造・ダイカストとは~その種類・特徴と工程管理のポイント砂型鋳造とは、砂を材料とした型である「砂型」を使った鋳造方法です。砂型は、「原型」と呼ばれる、砂型を作るための木型や金型の模型と、砂型を収めるための「型枠」を使って用意します。砂型は上と下の型に分かれており、それらを組み合わせて鋳型を作ります。そのため、原型となる模型も、基本的に上と下型で別々に用意している場合がほとんどです。模型は一度用意すれば繰り返し使用可能で、同じ形状の製品を作る場合は、再利用されます。一方で砂型は、一度使って製品を作ると、中身の鋳物を取り出すために壊さなければなりません。そのため砂型鋳造では、同じ形状の製品を作るたびに、模型を繰り返し使って新しく鋳型を用意する必要があります。砂型鋳造で用いる材料は、溶解できる金属であれば使用できます。鉄系の材料の場合は、炭素量の違いにより鋳鋼と鋳鉄に分類されます。鋳鋼は、炭素量が2.1%以下と少ない材料で、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れています。鋳鋼はさらに細かく分けると「合金鋼鋳鋼」「炭素鋼鋳鋼」があります。鋳鉄は、鉄・炭素・ケイ素を主成分とした材料で、炭素を2.1%以上含みます。鋳鉄は鋳造性や強度に優れているのが特徴です。砂型鋳造のメリット・デメリットメリット●木型の模型だとコストが安く済む鋳造は原型を作るのにコストがかかりますが、砂型鋳造で用いる木型は金型に比べてコストが安く済ませられます。●複雑な形状の製品でも成型できる砂型鋳造は、溶かした金属を鋳型に流して固める手法のため、複雑な形状の製品でも成型が可能です。製品に空洞がある場合でも、「中子」とよばれる砂型部品を使えば成型できます。引用元:三共ワシメタル株式会社 砂型鋳造製法上図は牛乳ビンのような形状の製品を鋳造している例です。中子を用いると、中子の部分に溶かした金属が充填されなくなり、牛乳ビンのような中空のある製品でも成型できるようになります。砂型をばらした際、中子も一緒に破壊することで空洞の部分ができあがります。●大きな形状の製品にも対応できる砂型鋳造は、対応する設備さえあれば、大きな製品にも対応が可能なので、製品形状の自由度が高い特徴があります。デメリット●寸法精度に乏しい砂型鋳造は型枠に砂を込めて固める手法ですが、上下の型を組み合わせた際に、型同士のズレが発生したり、溶かした鋳鉄が凝固した際に収縮したりするため、寸法精度に乏しいデメリットがあります。また、鋳肌は梨地のように粗いので、綺麗な面を得たい場合は機械加工する必要があります。ただし後述するシェルモールドでの鋳造では、寸法精度が得られます。●木型の模型が耐久性に乏しい木型は繰り返し利用することができますが、耐久性が乏しく、何度も使用していると摩耗したり傷が付いたりして、製品に悪影響を及ぼしてしまいます。生産数の多い製品の場合は、耐久性の高い金属製の模型を使う場合があります。●鋳巣や湯回り不良などのトラブルがある鋳造では、ガスや空気の巻き込みにより、製品内部に穴ができてしまう「鋳巣」や、溶けた金属が鋳型の中に充填しきれずに欠けや薄肉ができてしまう「湯回り不良」などのトラブルが発生する場合があります。●ランニングコストが高い砂型鋳造は、ひとつの製品を作るごとに毎回砂型を破壊しなければならないため、ランニングコストが高い傾向にあります。砂型鋳造の工程・手順引用元:アイアール技術者教育研究所 【生産技術のツボ】砂型鋳造の基本を速習!鋳造工程、砂型の種類(生型/シェルモールド)などを解説ここでは、生型を使った砂型鋳造の工程について、順を追って解説します。1.模型製作砂型鋳造のうち生型と呼ばれる種類は、主に木型を使って模型を作ります。ただし製法の種類や用途によっては、金属製の模型を作る場合もあります。主に1つの製品を作るには、模型を上型と下型用で別個用意する必要があります。2.鋳込み模型を底盤にセットして型枠で囲み、鋳物砂を鋳込んで固めます。3.模型の取り出し木型の模型を砂型から取り出します。木型は再び砂型鋳造する際、繰り返し使用できます。4.砂型の組付け砂型は、上型と下型で別々に作られますが、鋳造をするにはそれらを組付ける必要があります。製品内部に空洞のある製品は、中子も一緒に組付けます。5.溶湯の流し込み組付けた砂型にある湯口に溶湯を流し込んで成型します。溶かした金属は「溶湯(湯)」とは溶かした金属のことで、「湯口」は溶湯を流し込む専用の穴のことを指します。6.冷却・凝固砂型の内部で溶湯を溶かします。7.砂型のばらし砂型をばらして鋳物を取り出します。8.不要部をカット砂型から鋳物を取り出した際に出る、湯口・ガス抜き口などにある不要部や、上型と下型の接続部などに出るバリを除去します。砂型の種類砂型鋳造は、複数の製造法がありますが、ここでは代表的な種類である「生型」と「シェルモールド」の2つについてご紹介します。生型生型は、「砂型鋳造の工程・手順」にて解説したような手順で鋳造する手法を指します。鋳物砂を乾燥させず、生のまま鋳造する手法から「生型」と呼ばれています。生型で用いる鋳物砂は、骨材としてのケイ砂、粘結剤のベントナイト、その他の添加物などから構成されています。ケイ砂は、天然産出で優れた耐熱性を有しており、入手が比較的簡単なことから、鋳物作りにおいて古くから利用されています。ベントナイトは粘度岩の一種で、水を加えることで粘結力が得られます。模型は木型が採用されていることが多いですが、成型することの多い製品では、模型の耐久性が求められるため、金属製の型を用いる場合もあります。シェルモールドシェルモールドは、加熱した金型の上にレジンサンド(細かいケイ砂に熱硬化性のフェノール樹脂の粉末を5%程度混ぜた砂)を粘結剤とした鋳物砂を吹き込み、硬化させる手法を指します。シェルモールドで作られた鋳型は、薄くて貝殻状であることから、「シェルモールド」と呼ばれています。シェルモールドは、生型に比べて寸法精度が高く、小型や薄肉の製品を作るのに適しています。また、中子を使った複雑な形状の成型にもぴったりです。砂型鋳造の製品例砂型鋳造は、自動車部品・各種構造物・建設機械部品・鉄蓋・グレーチング・車止めなど、幅広い分野で採用されています。砂型鋳造は金属材料を使い分けることで、複雑な形状でありながらも、各種類の特性を活かした製品を成型できるのが強みです。

  • ダイカストとは?製品例、メリット・デメリット、鍛造との違い

    金属を融点よりも高い温度に熱し、ドロドロの液体にした後で型に流し込む「鋳造」は、古代から伝わる金属加工技術のひとつ。その歴史は古く、紀元前3600年頃のメソポタミア文明で、青銅を加工したことが始まりと言われています。以降、金型を使った鋳造は技術の発展と共に進化を遂げ、複雑かつ強度の高い部品を生成できるダイカスト技術が誕生しました。ダイカストとはダイカストは、高温に熱して液体化した非鉄金属を金型に流し込み、圧力をかけて金型に流し込むことで複雑な形状の製品を製造する鋳造技術のひとつ。一般的な鋳造製品に比べて寸法精度が高く、金型を用いることによって表面が滑らかな仕上がりになります。切ったり削ったりするのではなく金型を使った加工のため、複雑な三次元形状の部品も製造できる自由度の高さが魅力です。板金では叶えられない複雑な形状の部品を製造できる上、金型を使用するため大量生産に適しています。主にアルミニウムやマグネシウム、亜鉛などの製品の成形に用いられ、自動車や家電、コピー機など、さまざまな製品の製造に活用されています。ダイカストのメリット・デメリット高度な技術に裏打ちされたダイカストですが、メリットはもちろん、デメリットもあります。メリット・複雑な形状の製品を製造できる・量産が可能で、生産コストが低い・寸法精度が高く、表面粗さも良いダイカストは複雑な形状の製品をたったの1工程で量産できるため、生産コストが低く抑えられる点が魅力です。一般的な鋳造に比べて寸法精度が高く、まったく加工をせず、ちょっとした継ぎ目のバリ取りをするだけで製品として完成させられる点も大きな魅力のひとつです。デメリット・機械的強度が低い・金型の費用が高いため少量生産には向かない・パイプや中空形状など、作れない形状がある一般的にダイカスト製品は内部に鋳巣(製品内部のガス)が発生するため、強度が低いことが問題とされてきました。しかし、この問題は2007年、特殊ダイカスト法の誕生によって解決。現在ではさまざまなダイカスト法が誕生しています。ただし、鋳巣の発生が抑えられたとしても鍛造製法をはじめとする強度の高い工法にくらべると製品強度は低めになっています。鋳造は主に砂型を用いられますが、ダイカストは金型を用いるため初期費用がかなり高額になります。そのため、少量生産には向きません。さらに、部品によって3万~8万ショット程度が金型の寿命と言われており、トータルコストはあまり良くありません。ダイカストの製品例亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの非鉄金属を大量生産できるダイカストは、主に自動車関連の部品製造で採用されてきました。近年、デメリットとなっていた強度の問題が解消されるなど、技術の発達によって建築材料や通信機器、産業機械など、さまざまな分野に需要が広がっています。●自動車車関連の部品エンジン(ヘッドカバー、シリンダー、クランクケース、オイルパン)、トランスミッション(トランスミッションケース、バルブボディ、トランスファーケース)●自動車関連車以外の製品玩具(ミニカー)、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、掃除機、DVDプレーヤー、HDヘッドフォン、ミシン)、事務用品(パソコン、タブレット、プリンター、コピー機、ファックス)、日用品(カメラ、装身具、釣り具)ダイカストと鋳造の違い鋳造は金属を高温で溶かし、液状にして型に流し込む工法で、ダイカストはこれを発展させた工法です。大きな違いは圧力をかけて金属を型枠に流し込むかどうかのみですが、それだけで仕上がりの精度や表面の滑らかさ、形状の複雑さなど、さまざまな面で優れた部品の製造が可能になります。まず、砂型を使用する鋳造は製造の都度型を作る必要がありますが、ダイカストは金型を使用します。そのため、初期費用は鋳造の方が安く、ダイカストは高額になります。その分、鋳造は小ロットから中ロット向き、ダイカストは大量生産向きとなっています。さらに、加工時間や精度も鋳造に比べてダイカストの方が高くなります。また、鍛造をはじめとする強度の高い工法に比べると、鍛造、ダイカストともに強度は弱めです。そのため、サイズや形状、費用、ロット数などの条件に応じて工法を選ぶ必要があります。

  • 砂型鋳造とは?工程、メリット・デメリット、型の種類、製品例

    鋳造とは、鋳型に溶けた金属を流し込んで成型する手法です。鋳造でできた製品を鋳物と呼びます。鋳物は、鋳鉄・鋳鋼・アルミニウムなど対応する材料が多く、用途に応じて使い分けることが可能です。溶かした金属を利用して成型を行うため、鍛造や切削加工に比べて複雑な形状の製品を安く量産できます。鋳造には、砂型鋳造・ダイカスト・ロストワックス鋳造・消失模型鋳造など、さまざまな製造法がありますが、今回は砂型鋳造の基本知識について解説します。参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説砂型鋳造とは引用元:コンサルソーシング株式会社 鋳造・ダイカストとは~その種類・特徴と工程管理のポイント砂型鋳造とは、砂を材料とした型である「砂型」を使った鋳造方法です。砂型は、「原型」と呼ばれる、砂型を作るための木型や金型の模型と、砂型を収めるための「型枠」を使って用意します。砂型は上と下の型に分かれており、それらを組み合わせて鋳型を作ります。そのため、原型となる模型も、基本的に上と下型で別々に用意している場合がほとんどです。模型は一度用意すれば繰り返し使用可能で、同じ形状の製品を作る場合は、再利用されます。一方で砂型は、一度使って製品を作ると、中身の鋳物を取り出すために壊さなければなりません。そのため砂型鋳造では、同じ形状の製品を作るたびに、模型を繰り返し使って新しく鋳型を用意する必要があります。砂型鋳造で用いる材料は、溶解できる金属であれば使用できます。鉄系の材料の場合は、炭素量の違いにより鋳鋼と鋳鉄に分類されます。鋳鋼は、炭素量が2.1%以下と少ない材料で、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れています。鋳鋼はさらに細かく分けると「合金鋼鋳鋼」「炭素鋼鋳鋼」があります。鋳鉄は、鉄・炭素・ケイ素を主成分とした材料で、炭素を2.1%以上含みます。鋳鉄は鋳造性や強度に優れているのが特徴です。砂型鋳造のメリット・デメリットメリット●木型の模型だとコストが安く済む鋳造は原型を作るのにコストがかかりますが、砂型鋳造で用いる木型は金型に比べてコストが安く済ませられます。●複雑な形状の製品でも成型できる砂型鋳造は、溶かした金属を鋳型に流して固める手法のため、複雑な形状の製品でも成型が可能です。製品に空洞がある場合でも、「中子」とよばれる砂型部品を使えば成型できます。引用元:三共ワシメタル株式会社 砂型鋳造製法上図は牛乳ビンのような形状の製品を鋳造している例です。中子を用いると、中子の部分に溶かした金属が充填されなくなり、牛乳ビンのような中空のある製品でも成型できるようになります。砂型をばらした際、中子も一緒に破壊することで空洞の部分ができあがります。●大きな形状の製品にも対応できる砂型鋳造は、対応する設備さえあれば、大きな製品にも対応が可能なので、製品形状の自由度が高い特徴があります。デメリット●寸法精度に乏しい砂型鋳造は型枠に砂を込めて固める手法ですが、上下の型を組み合わせた際に、型同士のズレが発生したり、溶かした鋳鉄が凝固した際に収縮したりするため、寸法精度に乏しいデメリットがあります。また、鋳肌は梨地のように粗いので、綺麗な面を得たい場合は機械加工する必要があります。ただし後述するシェルモールドでの鋳造では、寸法精度が得られます。●木型の模型が耐久性に乏しい木型は繰り返し利用することができますが、耐久性が乏しく、何度も使用していると摩耗したり傷が付いたりして、製品に悪影響を及ぼしてしまいます。生産数の多い製品の場合は、耐久性の高い金属製の模型を使う場合があります。●鋳巣や湯回り不良などのトラブルがある鋳造では、ガスや空気の巻き込みにより、製品内部に穴ができてしまう「鋳巣」や、溶けた金属が鋳型の中に充填しきれずに欠けや薄肉ができてしまう「湯回り不良」などのトラブルが発生する場合があります。●ランニングコストが高い砂型鋳造は、ひとつの製品を作るごとに毎回砂型を破壊しなければならないため、ランニングコストが高い傾向にあります。砂型鋳造の工程・手順引用元:アイアール技術者教育研究所 【生産技術のツボ】砂型鋳造の基本を速習!鋳造工程、砂型の種類(生型/シェルモールド)などを解説ここでは、生型を使った砂型鋳造の工程について、順を追って解説します。1.模型製作砂型鋳造のうち生型と呼ばれる種類は、主に木型を使って模型を作ります。ただし製法の種類や用途によっては、金属製の模型を作る場合もあります。主に1つの製品を作るには、模型を上型と下型用で別個用意する必要があります。2.鋳込み模型を底盤にセットして型枠で囲み、鋳物砂を鋳込んで固めます。3.模型の取り出し木型の模型を砂型から取り出します。木型は再び砂型鋳造する際、繰り返し使用できます。4.砂型の組付け砂型は、上型と下型で別々に作られますが、鋳造をするにはそれらを組付ける必要があります。製品内部に空洞のある製品は、中子も一緒に組付けます。5.溶湯の流し込み組付けた砂型にある湯口に溶湯を流し込んで成型します。溶かした金属は「溶湯(湯)」とは溶かした金属のことで、「湯口」は溶湯を流し込む専用の穴のことを指します。6.冷却・凝固砂型の内部で溶湯を溶かします。7.砂型のばらし砂型をばらして鋳物を取り出します。8.不要部をカット砂型から鋳物を取り出した際に出る、湯口・ガス抜き口などにある不要部や、上型と下型の接続部などに出るバリを除去します。砂型の種類砂型鋳造は、複数の製造法がありますが、ここでは代表的な種類である「生型」と「シェルモールド」の2つについてご紹介します。生型生型は、「砂型鋳造の工程・手順」にて解説したような手順で鋳造する手法を指します。鋳物砂を乾燥させず、生のまま鋳造する手法から「生型」と呼ばれています。生型で用いる鋳物砂は、骨材としてのケイ砂、粘結剤のベントナイト、その他の添加物などから構成されています。ケイ砂は、天然産出で優れた耐熱性を有しており、入手が比較的簡単なことから、鋳物作りにおいて古くから利用されています。ベントナイトは粘度岩の一種で、水を加えることで粘結力が得られます。模型は木型が採用されていることが多いですが、成型することの多い製品では、模型の耐久性が求められるため、金属製の型を用いる場合もあります。シェルモールドシェルモールドは、加熱した金型の上にレジンサンド(細かいケイ砂に熱硬化性のフェノール樹脂の粉末を5%程度混ぜた砂)を粘結剤とした鋳物砂を吹き込み、硬化させる手法を指します。シェルモールドで作られた鋳型は、薄くて貝殻状であることから、「シェルモールド」と呼ばれています。シェルモールドは、生型に比べて寸法精度が高く、小型や薄肉の製品を作るのに適しています。また、中子を使った複雑な形状の成型にもぴったりです。砂型鋳造の製品例砂型鋳造は、自動車部品・各種構造物・建設機械部品・鉄蓋・グレーチング・車止めなど、幅広い分野で採用されています。砂型鋳造は金属材料を使い分けることで、複雑な形状でありながらも、各種類の特性を活かした製品を成型できるのが強みです。