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金属材料

  • 難削材とは?種類と加工が難しい理由

    金属加工の現場でしばしば耳にする「難削材」という言葉。ニュアンスでなんとなく切削加工が難しい素材ということは分かると思いますが、具体的にどういった素材なのかと言われるとなかなか説明が難しいのではないでしょうか。そこで、今回は難削材について解説していきます。難削材に関する基礎知識や材質の種類など、知っておくことで取り扱い方法や必要とされるシーンなども分かってくるので、ぜひ知識として覚えておきましょう。難削材とは?なぜ難削材といわれるのか難削材とは、ただ削りにくいだけでなく「取り扱い自体が難しい素材」のことを指します。硬すぎて削りにくい、壊れやすくて扱いにくい、発火・引火しやすいため注意が必要など、さまざまな条件があり、一筋縄ではいかない素材の相称が、難削材です。また、データがそろっておらず、削りやすいかどうかが分からない金属も難削材に含まれます。代表的な金属の難削材の一覧難削材には大きく分けると下記のような特性があります。多くの素材が下記の1~2個の特徴を有していますが、中には3個、4個の条件を兼ね備えている、非常に加工が難しい素材もあります。・硬度が高く削りにくい・硬脆性があり、加工時に壊れやすい・加工硬化が生じやすい・工具と親和性が高く、加工時に溶着しやすい・高温強度が大きく高温下でも変形しにくい・熱伝導率が低く、加工時の温度を逃がしにくい・材料強度が大きく、せん断や引っ張りに強い・延性が大きく粘り強い性質を持つ・アブレシブ物質を含んでいる・加工時に発火、引火する可能性が高い難削材の性能を踏まえた上で、下記では、具体的な難削材の特徴と、求められている理由について解説します。ステンレス一般的な知名度の高い「ステンレス」も、実は難削材のひとつ。ステンレスは熱伝導率が低く、切削加工時に発生する熱をため込みやすい性質と、加工硬化性を兼ね備えていて、高温での加工が難しい素材です。さらに、工具との親和性が高く、切削時に出る切り粉が刃物に溶着しやすいことから、加工精度が出しにくい特徴があります。上記でも分かるように、非常に耐熱性に優れているステンレス。錆びにくさや耐水性の高さも相まって、火や水を使う場所に多く取り入れられています。また、汚れに強く衛生的にも安心な素材であることから、キッチンや浴槽、食器から車両に至るまで、幅広い分野で必要とされています。チタンチタンも切削加工が非常に難しい難削材。熱電度率が低く、工具との親和性が高いため、切削加工時に発生する切り粉が原因でビビりが発生したり、工具と化学反応を起こしたりする可能性があります。さらに、切削や研磨で発生する切り粉には発火性があるため、清掃や管理には気を配る必要があります。軽くて熱に強く、引張強度も高いチタン。耐食性にも優れ、海水に触れる環境でも使用できる数少ない金属です。調理器具やアクセサリー、自動車のエンジンやゴルフのクラブなど日常的にもさまざまなものに活用されているチタン。宮崎オーシャンドームや東京湾横断道路の橋脚など、大型の建築物にも活用されています。インコネルニッケルを主体とし、クロムや鉄、炭素などを含有したインコネル。高温強度が大きく熱伝導率が低いこともあり、切削加工が最も困難な材料とも言われています。工具との親和性も高いほか、ステンレスやチタンほど多くのものに活用されていないため切削データが少なく、加工時に切削条件を探りながら進めて行く必要があります。インコネルは高温での強度や耐酸化性、耐クリープ性が非常に高く、高温でも変形や酸化せずに強度を確保できる素材です。原子力発電所の廃液処理装置やごみ焼却炉、水処理施設、さらにはジェットエンジンやスポーツカーの部品などにも使用されています。マグネシウムマグネシウムは着火すると激しく燃える性質を持っています。さらに、過熱状態で水に触れると可燃性ガスなどを発生させる金属。高温での加工や火、水のある場所での加工は厳禁で、換気と切り粉の清掃にも注意が必要な素材です。扱いにくいだけなら手を出さない方が良いのですが、実用金属の中で最も軽いというメリットを持ち、剛性や強度も鉄やアルミニウムより優れているほか、加工自体はしやすい特徴を持っています。一般的にはアルミニウムや亜鉛などを加えた合金として扱われ、自動車の部品やノートパソコン、携帯電話、一眼レフカメラの筐体、杖、車いすなどの福祉用品などに使用されています。その他の難削材上記以外にもさまざまな難削材があります。加工の現場では型枠などに用いられる超硬合金もそのひとつ。一般的な金属よりも硬いためドリルの刃が通りにくく加工がしにくい金属です。身近なところではガラスも難削材のひとつ。硬脆性があり、加工時に割れたり壊れたりしてしまう可能性があることから、加工には向いていない素材のひとつです。金属は種類が豊富で、加工に対してデリケートなものも多くあります。同時にモノづくりでは高機能・高品質のものが求められます。硬い素材は加工できれば強度の高い製品になりますし、熱に強い素材は耐火性能の高い金属として、キッチンや自動車のエンジンなど高温になる場所でも変わらず高い性能を発揮できます。そのため、難削材を加工できれば製品に付加価値をつけることができ、ユーザーの求められる製品を提供することが可能になります。

  • 黒皮(ミルスケール)とは?特徴用途、除去方法など基礎知識を紹介

    今回は黒皮の特徴や除去方法などについて解説します。黒皮とは、別名「ミルスケール」とも呼ばれるもので、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜を指します。黒皮が付いた鉄鋼材料は黒皮材と呼ばれています。黒皮材は表面が粗く、塗装の密着性が乏しいことから、一般的に黒皮を除去する必要があります。黒皮(ミルスケール)とは引用元:横山テクノ 鉄 黒皮 丸棒材 丸鋼材(SS400・S45C) 寸法 切り売り 小口販売加工黒皮(ミルスケール)とは、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜のことを指します。上図を見ても分かるように、鉄鋼材料が黒色の皮で覆われたような外観が特徴です。また、切削加工のされていない鉄鋼材料の表面を総じて黒皮と呼ぶこともあります。黒皮で表面が覆われた鋼材のことを「黒皮材」と呼びます。熱間圧延とは、金属が加工による硬化を生じない再結晶温度以上の温度で圧延が行われることです。熱間圧延は、圧延中に高温の素材表面が大気中の酸素と結合し、黒皮を形成します。参考:【圧延】とは?工法、種類、製品例、圧延の発展の歴史についてご紹介!黒皮の特徴と用途黒皮材は、表面にピンホールや凹凸があるほか、表面の精度が低く、寸法精度を要する用途や外観性を重要視する用途に不向きです。一方で、黒皮材は熱間圧延したままの鉄鋼材料のため、価格が安く手に入る特徴があります。S45CやSS400のようなポピュラーな材料は、黒皮材とミガキ材が流通していますが、I形鋼やH形鋼などの建材用途のものは、黒皮材しか流通していません。酸化皮膜は、金属表面と空気の接触を防ぐ保護膜として機能するものですが、黒皮材の場合は鋼材と黒皮の密着強度に乏しく、表面にはピンホールや凹凸があることから、防錆目的で黒皮材が選ばれることはほとんどありません。また、塗装を施す場合も、黒皮がある状態では密着性に乏しいことから下地には不向きです。そのため、黒皮材を用いる際は、黒皮を除去してから塗装して使われるのが一般的です。黒皮の除去方法黒皮は、酸洗いにて化学的に除去するか、ショットブラストのように物理的に除去するかの方法があります。酸洗いとは、塩酸などの酸溶液を使って金属表面のスケールや酸化被膜を除去する手法で、主に表面処理の下処理として多く採用されています。引用元:株式会社ニホンケミカル ショットブラストの教科書 ミルスケール(黒皮)とは?特徴や除去方法について解説ショットブラストとは、ワークの表面に細かい砂や玉を衝突させて、表面を粗くしたり表面をバリや錆びを除去する手法のことです。ショットブラストは酸化皮膜を除去したのちに、ワークの表面に凹凸を設けるため、塗装の密着性がよくなります。黒皮材とミガキ材ミガキ材とは、冷間圧延加工にて作られた鉄鋼材料のことを指します。冷間圧延は熱間圧延と違い、常温で材料を圧延する方式です。ミガキ材は黒皮材と特徴が異なり、鉄鋼材料の表面は凹凸が少なく、表面がキレイな特徴があります。ただし、冷間圧延加工時に発生する残留応力の影響を考慮しなければならない点には注意が必要です。S45CやSS400などのポピュラーな鉄鋼材料は、熱間圧延された材料である黒皮材、もしくは冷間圧延された材料であるミガキ材から選びます。ミガキ材はコストが黒皮材に比べて高いものの、黒皮材を使えるようになるまでの加工のコストを考慮すると、ミガキ材のほうが必ずしも割高になるというわけではありません。そのため、ミガキ材と黒皮材のどちらを選択するかは、加工コストや加工時間、用途などを含めて検討する必要があります。参考:ミガキ材とは?黒皮との違いやメリット・デメリット参考:SS400とS45Cの違いを徹底解説【専門家が語る】製品による使い分け

  • ミガキ材とは?黒皮との違いやメリット・デメリット

    今回はミガキ材のメリット・デメリットや、黒皮材との違いについて解説します。ミガキ材とは、冷間圧延加工にて作られた鋼材のことを指します。鋼材は代表的なものに、S45CやSS400がありますが、これらの材料を選定する際は、ミガキ材か黒皮材かを指定しなければなりません。ミガキ材と黒皮材では特徴が異なるため、もし予定と違ったものを入手してしまった場合は、作業工程に影響を及ぼしてしまいます。この記事を参考にして、ミガキ材と黒皮材の違いを把握し、正しく選定できるようになりましょう。参考:黒皮(ミルスケール)とは?特徴用途、除去方法など基礎知識を紹介ミガキ材とは引用元:イワサ株式会社 取扱商品 磨棒鋼材(ミガキシャフト)ミガキ材とは、冷間圧延加工されて作られた、S45CやSS400などの鋼材のことを指します。ミガキ材の名前の通り、表面は磨かれたかのようなキレイな表面をしていて滑らかです。冷間圧延加工とは、2本のロールを使って材料を挟み、圧力をかけて材料を塑性加工させる「圧延」を、室温の状態で行うことを指します。「冷」という文字があるものの、冷やして加工はせずに常温のままで加工を行います。冷間圧延での加工は、酸化膜が生じないことから、ミガキ材のキレイな表面が得られるようになります。圧延加工は、冷間圧延以外に、熱間圧延があります。熱間圧延は材料を高温で軟化させてから圧延する方式で、小さい力でも圧延が可能です。熱間圧延により加工された鋼材は、黒色の酸化膜を生じることから「黒皮材」と呼びます。熱間圧延は、加工性に優れているほか、高温の材料をロールにより加工することで、金属の結晶が強固になり、粘り強い金属が得られます。ただし高温で加工するため、鋼材の表面が空気中の酸素と結合して酸化膜を生じます。参考:SS400とS45Cの違いを徹底解説【専門家が語る】製品による使い分け参考:【圧延】とは?工法、種類、製品例、圧延の発展の歴史についてご紹介!ミガキ材のメリットとデメリットミガキ材のメリットは、表面が滑らかでキレイな点にあります。精度もある程度高く、寸法精度を出したい場合に適しています。一方でミガキ材のデメリットは、冷間圧延により加工されたもののため、金属に力を加えて起こる加工硬化や、材料の内部に力が残っている残留応力の影響などを考慮しなければならない点です。また、ミガキ材のコストは、黒皮材に比べて高い傾向にありますが、黒皮材の使用するまでに行う加工のコストを考慮すると、ミガキ材のほうが必ずしも割高になるというわけではありません。そのため、ミガキ材と黒皮材のどちらを選択するかは、加工コストや加工時間、用途などを含めて検討する必要があります。ミガキ材の規格とサイズ寸法ミガキ材は、【JIS G 3123:2004 みがき棒鋼】の規格があります。JIS G 3123で規定されている、標準寸法は以下の表の通りです。●標準寸法(丸・六角・角)(単位mm)形状径・対辺距離丸5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 22 23 24 25 26 28 30 32 35 36 38 40 42 45 48 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100六角5.5 6 7 8 9 10 11 13 14 17 19 20 22 24 26 27 30 32 36 41 46 50 55 60 65 70 75 80角5 6 7 8 9 10 12 14 16 17 19 20 22 25 28 30 32 35 38 40 45 50 55 60 65 70 75 80引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼●標準寸法(平)(単位mm)厚さ幅39 12 16 19 22 25 32 38 5049 12 16 19 22 25 32 38 504.59 12 16 19 22 25 32 38 5059 12 16 19 22 25 32 38 5069 12 16 19 22 25 32 38 50 65 75 100 125 1509   12 16 19 22 25 32 38 50 65 75 100 125 15012             19 22 25 32 38 50 65 75 100 125 15016                 22 25 32 38 50 65 75 100 125 15019                      25 32 38 50 65 75 100 125 15022                           32 38 50 65 75 100 125 15025                           32 38 50 65 75 100 125 150引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼JIS G 3123:2004規定のみがき棒鋼の寸法許容差は、JIS B 0401-2の表22に基づき、軸hに対する公差等級を適用し、その値は以下表によります。●寸法許容差(単位 mm)径対辺距離厚さ及び幅軸hに対する公差等級IT6IT7IT8IT9IT10IT11IT12IT133以下 0-0.006 0-0.010 0-0.014 0-0.025 0-0.040 0-0.060 0-0.10 0-0.143を超え6以下 0-0.008 0-0.012 0-0.018 0-0.030 0-0.048 0-0.090 0-0.15 0-0.226を超え10以下- 0-0.015 0-0.022 0-0.036 0-0.058 0-0.090 0-0.15 0-0.2210を超え18以下- 0-0.021 0-0.033 0-0.052 0-0.084 0-0.13 0-0.21 0-0.3318を超え30以下- 0-0.021 0-0.033 0-0.052 0-0.084 0-0.13 0-0.25 0-0.3330を超え50以下- 0-0.025 0-0.039 0-0.074 0-0.12 0-0.19 0-0.30 0-0.4650を超え80以下- 0-0.030 0-0.046 0-0.074 0-0.12 0-0.19 0-0.30 0-0.4680を超え120以下- 0-0.035 0-0.054 0-0.087 0-0.14 0-0.22 0-0.35 0-0.54120を超え180以下------ 0-0.40 0-0.63備考1.偏径差又は偏差は、許容差の30%以下とする。2.注文者の指定によって、軸h以外(例えば、軸g、jなど)の寸法許容差を採用してもよい。その場合の寸法許容差の数値は、JIS B 0401-2の表17から表32による。引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼JIS G 3123:2004規定のみがき棒鋼の、形状及び加工方法別に適用する公差等級は以下表によります。●形状及び加工方法別公差等級形状及び加工方法丸角六角平研削引抜き切削適用する公差等級IT6・IT7IT8・IT9IT8・IT9IT10IT11・IT12IT13IT10IT11IT11IT12IT12IT13備考.受渡当事者間の協定によって、上表以外の等級を用いてもよい。引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼ミガキ材と黒皮材との違い引用元:株式会社三和鍍金 【言われてみれば】鋼材の黒皮ってなに?黒皮材は、熱間圧延にて作られた鋼材のことで、表面が酸化皮膜で覆われています。ミガキ材と違って黒皮材の表面は、ミルスケールとも呼ばれる黒皮で覆われており、凹凸があり、精度に乏しい特徴があります。黒皮を除去するには、酸洗いで黒皮を溶かすか、研磨で物理的に除去します。ミガキ材と黒皮材の違いについては、以下の表でまとめたので参考にしてください。ミガキ材黒皮材・冷間圧延加工された鋼材・表面がキレイで凹凸が少ない・精度の高い加工に適している・熱間圧延加工された鋼材・表面は凹凸があり、酸化被膜の黒皮で覆われている・精度の高い加工には不向き

  • 真鍮とは?特徴、メリット・デメリット、性質を解説

    今回は真鍮の特徴や性質について解説します。真鍮は、銅と亜鉛の合金で、別名「黄銅」とも呼ばれる材料です。私たちが生活のなかで用いている5円玉も、真鍮を材料としています。銅と同じく加工性に優れており、世の中で使われている銅の大半は、純銅と真鍮であるとも言われています。参考:真鍮の加工方法を加工実績と共に徹底紹介!!真鍮とは真鍮とは、別名「黄銅」とも呼ばれる銅と亜鉛の合金のことで、亜鉛が20%以上のものを指します。真鍮の英語表記は「Brass」で、音楽のブラスバンドで使われるトランペットなどの楽器は、真鍮で作られています。真鍮は、亜鉛の添加量により特性が大きく変わるため、材料によっては「七三黄銅」や「六四黄銅」といったように、銅と亜鉛の比率を示した名称が使われているものもあります。真鍮は、主に伸ばしたり圧縮したりする加工である、伸銅品として使われることが多い材料です。代表的なものとして、金管楽器以外にも5円硬貨や水洗トイレの給水管、金属模型などが挙げられます。また、見た目が黄金色で美しく、酸化するとアンティークな雰囲気を漂わせることから、アクセサリーに使われることも多くあります。真鍮の特徴真鍮のメリット真鍮のメリットは、優れた加工性と耐食性、電気伝導性・比較的高い強度・価格が安価な点です。加工においては、熱間鍛造性・展延性・転造性・切削加工性に優れており、めっきやはんだ付けがしやすい特徴もあります。高い電気伝導性があるので、端子コネクターのような電気製品の部品として使われることも多くあります。また、真鍮は空気中で徐々に表面が酸化し黒ずんでいくものの、酸化皮膜となって内部を保護するため、全体が腐食するのを防止します。真鍮のデメリット真鍮は、応力腐食割れの一種とされる「置割れ」が発生する場合があります。置割れは、機械加工などを施した真鍮が、日時の経過により、大気中の水分や二酸化炭素などが結晶粒界に腐食を引き起こし、粒界腐食を起こす現象を指します。置割れを回避するには、めっきや塗装を施したり、焼きなましで内部応力を除去するのが有効です。また、ラテックスなどのゴム類に接触すると、ゴムが分解腐食してしまうデメリットもあります。参考:応力腐食割れをわかりやすく!3要素と対策方法参考:焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!真鍮の種類黄銅(C2600)C2600は、七三黄銅とも呼ばれる材料で、銅と亜鉛の比率が70:30の黄銅です。銅の割合が高く、絞り加工性に優れています。C2600の主な用途は、端子コネクター・配線器具・カメラ部品などです。●C2600の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeZnC260068.5~71.50.05以下0.05以下残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3100:2018 銅及び銅合金の板及び条黄銅(C2680)C2680は、銅と亜鉛の比率が65:35の黄銅です。C2600と同様に絞り加工性がよく、深絞り用として採用されています。C2680の用途は、C2600と同じく、端子コネクターや配線器具、カメラ部品などが挙げられます。●C2680の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeZnC268064.0~68.00.05以下0.05以下残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3100:2018 銅及び銅合金の板及び条黄銅(C2801)C2801は、六四黄銅とも呼ばれる材料で、銅と亜鉛の比率が60:40の黄銅を指します。冷間加工性に劣るものの、熱間加工性や強度に優れており、展延性も良好です。C2801の主な用途は、衛生管・機械部品・配線器具などが挙げられます。●C2801の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeZnC280159.0~62.00.10以下0.07以下残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3100:2018 銅及び銅合金の板及び条参考:C2801(真鍮)の化学成分、機械的性質ネーバル黄銅(C4641)C4641は、黄銅に少量の錫を添加した材料です。C4600台の黄銅を「ネーバル黄銅(海軍黄銅)」とも呼びます。C4641は耐食性(特に耐海水性)がよく、船舶用部品やシャフトなどに用いられます。錫により硬度と強度を向上させていますが、一方で伸びは減少しています。●C4641の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeSnZnC464159.0~62.00.50以下0.20以下0.50~1.00残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3250:2021 銅及び銅合金の棒真鍮の機械的性質ここでは真鍮のC2801の機械的性質を以下に示します。●C2801の機械的性質質別製品記号引張試験曲げ試験 a)硬さ試験 a)(参考)厚さの区分(mm)引張強さ b)(N/mm2)伸び b)(%)厚さの区分(mm)曲げ角度 c)内側半径 c)厚さの区分(mm)ビッカース硬さ b)(HV)OC 2801 P-O d)0.30以上1.0以下325以上35以上0.30以上2.0以下180°厚さの1倍--1.0を超え30以下40以上C 2801 R-O d)C 2801 RS-O d)0.30以上1.0以下35以上1.0を超え3.0以下40以上1/4HC 2801 P-1/4H d)0.30以上30以下355~44025以上0.30以上2.0以下180°厚さの1.5倍0.30以上30以下85~145 f) C 2801 R-1/4H d)C 2801 RS-1/4H d)0.30以上3.0以下0.30以上3.0以下1/2HC 2801 P-1/2H d)0.30以上20以下410~49015以上0.30以上2.0以下180°厚さの1.5倍0.30以上20以下105~160 f)C 2801 R-1/2H d)C 2801 RS-1/2H d)0.30以上3.0以下0.30以上3.0以下HC 2801 P-H d)0.30以上10以下470以上-0.30以上2.0以下90°厚さの1倍0.30以上10以下130以上 f)C 2801 R-H d)C 2801 RS-H d)0.30以上3.0以下0.30以上3.0以下a):曲げ試験及び硬さ試験に関して規定した厚さの区分を外れるものは、試験を適用しない。b):数値は、整数値に丸める。c):曲げ試験の条件を示す。d):導電用の板及び条にも適用する。f):最小試験力は、4.903Nとする。引用元:JIS H 3100:銅及び銅合金の板及び条真鍮は、亜鉛量や熱処理、加工度などにより、機械的性質が大きく変化します。例えば、亜鉛を多く添加するほど引張強度は大きくなります。ただし、硬さを増すと同時に脆さも増してしまい、亜鉛の割合が45%を超えると実用的ではなくなります。

  • SGCC(溶融亜鉛めっき鋼板)の材質、板厚、性質、サイズ

    今回は、SGCCの特徴や板厚、各種性質、SECCやSGHCとの違いなどについて解説します。SGCCは、溶融亜鉛めっき鋼板のことで、トタン板とも呼ばれる材料です。溶融亜鉛めっきを施していることで優れた耐食性を有しており、主に屋根板などの雨風にさらされるようなものに採用されています。参考:亜鉛メッキ鋼板について専門家が解説!特徴や用途についてご紹介!SGCC(溶融亜鉛めっき鋼板)とは?SGCCは、冷延原板から製造された溶融亜鉛めっき鋼板です。【JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯】に規定されている11種類の冷延原板の溶融亜鉛めっき鋼板のなかで唯一、一般用の用途として適用されている鋼板です。SGCCの特徴と用途SGCCは、溶融亜鉛めっきを施した鋼板のため、膜厚があり、耐食性に優れています。SGCCは、その耐食性の高さから、雨風にさらされる雨どい、看板、屋根板、自動車、金属筺体製品などの用途で採用されています。SGCCの板厚と寸法、サイズSGCCの板・コイル・波板の適用する表示厚さ(めっき前の原板厚さ)は、【JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯】より、0.19mm以上3.2mm以下の値になります。SECCやSPCC、SGHCとの違いSGCCは溶かした亜鉛のなかに鋼板を浸してめっきするのに対し、SECCは電気を用いて亜鉛めっきを施しています。SECCは、めっき層が薄くて均一なため、外観が比較的美しく、塗装がしやすい特徴があります。一方でSGCCは、めっき層が厚く、耐食性に優れているため、塗装せずに使用されることが多い材料です。SECCとSGCCは、どちらもSPCC(冷間圧延鋼板)を母材としており、材料特性は同等の値になります。SPCCは一般的な鋼板ですが、そのままでは錆びてしまうので、めっきや塗装処理を必要とします。SGHCは、SGCCと同じ溶融亜鉛めっき鋼板かつ、JIS G 3302にて一般用に扱われているものになりますが、SGCCと違い熱延原板から作られています。また、SGHCの適用する表示厚さは、1.6mm以上6.0mm以下と、SGCCよりも厚みがあります。参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!参考:ボンデ鋼板(SECC)とは?特殊加工による錆止め効果!メリット・用途を解説!SGCCの性質ここでは【JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯】に規定されている、各種性質について紹介します。化学的性質●SGCCの化学的性質(単位:%)種類の記号CMnPSSGCC0.15以下0.80以下0.05以下0.05以下引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯 物理的性質SGCCの物理的性質については、JIS G 3302:2019より規定がありません。機械的性質●SGCCの機械的性質種類の記号曲げ性(a)引張試験特性(b)SGCC〇(c)-(a):非合金化めっきに適用し、合金化めっきには適用しない。(b):表示厚さ0.25mm未満については、引張試験特性を適用しない。(c):波板に使用する場合、曲げ性は適用しない。非合金化めっきの板、コイル及び波板の曲げ性は、JIS G 3302の曲げ試験を行い、試験片の外側表面(試験片の幅の両端からそれぞれ7mm以上内側の部分)に、肉眼で認められる素地のき裂及び破断を生じてはならない。引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯●SGCCの引張試験特性種類の記号降伏点又は耐力N/mm2引張強さN/mm2伸び%試験片と方向表示厚さmm0.25以上0.40未満0.40以上0.60未満0.60以上1.0未満1.0以上1.6未満1.6以上2.5未満2.5以上SGCC-※SGCCでは、降伏点又は耐力として205N/mm2以上、引張強さとして270N/mm2以上が使われることがある。引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯材質と成分●化学成分(単位:%)種類の記号CMnPSSGCC0.15以下0.80以下0.05以下0.05以下引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯●めっき浴成分(単位:%)Zn以外の元素Zn1.0以下 (a)残部(b)(a):意図的に添加した元素の合計。(b):不可避的に混入した元素を含むことがある。引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯

  • リップ溝形鋼とは?強度、材質、成分、規格、寸法を解説

    リップ溝形鋼とは、Cチャンネルとも呼ばれる、断面がC字型の薄肉の鋼材のことです。軽量かつ高強度で、曲がりにくく、たわみにくいため、建築分野の様々な用途で使用されています。主に鉄骨造の建物の補強材として用いられますが、高層ビル・橋梁などの構造材や基礎杭に用いられるH形鋼と比べると低強度です。しかし、背中合わせに組み合わせることで、強度の向上が図れることから、軽量鉄骨造の建物の柱や梁などに用いられることがあります。この記事では、リップ溝形鋼とは何かというところから、リップ溝形鋼の規格や寸法、断面性能、強度、成分などについて解説していきます。リップ溝形鋼とは引用元:製品案内「軽量形鋼」中山三星建材株式会社リップ溝形鋼とは、上図のような、C字型の断面形状を持つ薄肉の鋼材のことです。その形状から、「Cチャンネル」とも呼ばれます。軽量である割に強度が高く、加工性や施工性に優れていることから、重量鉄骨造の補足材や軽量鉄骨造の構造体などに用いられています。ただし、薄肉のために溶接が難しく、ボルトで接合することが多くなっています。リップ溝形鋼は、H字型やL字型、C字型などの様々な断面形状を持つ「形鋼(かたこう)」と呼ばれる鋼材の一種です。その形鋼の中でも、肉厚が薄い「一般構造用軽量形鋼」に分類されます。その軽量形鋼の中には、軽溝形鋼や軽山形鋼、ハット形鋼などがありますが、リップ溝形鋼は、軽溝形鋼に断面が唇形状となるような、「リップ」と呼ばれる部位が付いた断面形状となっています(下図参照)。ちなみに、リップは補強材として役割があり、リップ溝形鋼は、同一の高さや幅、板厚の軽溝形鋼に比べて、断面性能が高くなっています。リップ溝形鋼の具体的な用途としては、以下が挙げられます。●建築・建設…工場・倉庫・学校・体育館・病院などの重量鉄骨造である建築物の下地材(胴縁や母屋など)。事務所・住宅・プレハブ住宅・店舗・車庫などの軽量鉄骨造である建築物の構造材や下地材。●農業関係…ビニールハウス・鶏舎などの骨組み材。●その他…ラック・棚・仮設材・エアコン架台・パレットなどの各種材料。また、リップ溝形鋼の多くは表面処理が施されていて、赤い錆止め塗料が塗布されているものや溶融亜鉛メッキされて白いものが流通しています。酸化皮膜に覆われた黒皮品など、表面処理されていないものもありますが、その場合は、錆止めのための塗装仕上げなどが必要です。参考:亜鉛メッキ鋼板について専門家が解説!特徴や用途についてご紹介!リップ溝形鋼の規格と寸法リップ溝形鋼は、一般構造用軽量形鋼の一種としてJIS規格(JIS G 3350:2021)に規定されています。その中で、断面の標準的な寸法、断面積および単位質量が、以下として記載されています。なお、断面の角部の曲率半径は、板厚(t)の中心線で、通常「1.5t」とされています。寸法 (mm)断面積(cm^2)単位質量(kg/m)高さ [H]辺 [A]リップ [C]厚さ [t]25075254.518.9214.920075254.516.6713.14.014.9511.73.212.139.52204.516.2212.74.014.5511.43.211.819.2715075254.514.4211.34.012.9510.23.210.538.27204.513.9711.04.012.559.853.210.218.0165204.011.759.223.29.5677.512.37.0125.5050204.511.729.203.28.6076.762.36.3224.9612550204.510.598.324.09.5487.503.27.8076.132.35.7474.5112060254.511.729.20203.28.2876.512.36.0924.7840203.27.0075.5010050204.59.4697.434.08.5486.713.27.0075.502.35.1724.061.63.6722.887545152.34.1373.252.03.6372.861.62.9522.326030102.32.8722.251.62.0721.63リップ溝形鋼の形状及び寸法の許容差さらに、形状および寸法の許容範囲も下表のように定められています。形状・寸法の区分形状・寸法の許容差高さ [H]150mm未満±1.5mm150mm~300mm±2.0mm300mm以上±3.0mm辺 [A]30mm~75mm±1.5mmリップ [C]10mm~25mm±2.0mm隣接する平板間の角度※90°±1.5°長さ7m以下+40mm7m超1m増すごとに+5mm長さ方向の曲がり全長の0.2%以下厚さ [t]1.6mm~2.0mm±0.22mm2.0mm~2.5mm±0.25mm2.5mm~3.15mm±0.28mm3.15mm~4.0mm±0.30mm4.0mm~5.0mm±0.45mm5.0mm~6.0mm±0.60mm※平板とは、下図の塗り潰し部分のことです。リップ溝形鋼の断面性能リップ溝形鋼は、上述したように、軽溝形鋼にリップを付けることで断面性能を向上させた鋼材です。断面性能は、以下で説明している、重心位置や断面二次モーメント、断面二次半径、断面係数、せん断中心のような断面の性質によって特徴づけられます。●重心位置…断面を薄い板状の物体と捉え、その物体を水平に保持したときの重力のつりあいが取れる位置のことです。●断面二次モーメント…断面と平行方向の荷重が作用するときの曲げ変形に対する抵抗性のことで、この値が大きいほど曲げにくくなります。●断面二次半径…断面二次モーメントが、ある軸の回りに断面の面積が分布したときと等しくなるように、断面の全面積を一点に集中をさせたときのその点と軸との間の距離のことです。断面と垂直方向の荷重が作用するときの座屈(荷重と垂直方向にたわむ現象のこと)変形に対する抵抗性を示し、この値が大きいほどたわみにくくなります。●断面係数…断面と平行方向の荷重が作用するときの曲げ変形に対する材質に依らない抵抗性のことで、この値が大きいほど曲げにくくなります。●せん断中心…断面と平行方向の荷重が作用するとき、断面にねじれが生じず、曲げ変形のみが発生するようなせん断力の作用点のこと。断面性能は、JIS規格にて、規定されている寸法ごとに算出された値が記載されており、それぞれのパラメータを以下のように定義すると、下図および下表の通りとなっています。<断面性能を表すパラメータの定義>Cx, Cy:x方向、y方向の重心位置Ix, Iy:x軸、y軸回りの断面二次モーメントRx, Ry:x軸、y軸回りの断面二次半径Zx, Zy:x軸、y軸回りの断面係数Sx, Sy:x方向、y方向のせん断中心の位置S.C.:せん断中心(Shear Center)寸法 (mm)重心位置(cm)断面二次モーメント(cm^4)断面二次半径(cm)断面係数(cm^3)せん断中心(cm)H×A×CtCxCyIxIyRxRyZxZySxSy250×75×254.502.0716901299.442.6213523.85.10200×75×254.502.329901217.612.6999.023.35.604.002.328951107.742.7289.521.35.703.202.3373692.37.702.7673.617.85.70200×75×204.502.199631097.712.6096.320.65.304.002.198711007.742.6287.118.95.303.202.1971684.17.792.6771.615.85.40150×75×254.502.655011095.902.7566.922.56.304.002.6545599.85.932.7860.620.66.303.202.6637583.65.972.8250.017.36.40150×75×204.502.5048999.25.922.6665.219.86.004.002.5144591.05.952.6959.318.25.803.202.5136676.45.992.7448.915.35.10150×65×204.002.1140163.75.842.3353.514.55.003.202.1133253.85.892.3744.312.25.102.302.1224841.15.942.4233.09.375.20150×50×204.501.5436835.75.601.7549.010.53.703.201.5428028.35.711.8137.48.193.802.301.5521021.95.771.8628.06.333.80125×50×204.501.6823833.54.741.7838.010.04.004.001.6821733.14.771.8134.79.384.003.201.6818126.64.821.8529.08.024.002.301.6913720.64.881.8921.96.224.10120×60×254.502.2515258.04.632.2241.915.55.30120×60×203.202.1218640.94.742.2231.310.54.902.302.1314031.34.792.2723.38.105.10120×40×203.201.3214415.34.531.4824.05.713.40100×50×204.501.8613930.93.821.8127.79.824.304.001.8612728.73.851.8325.49.134.303.201.8610724.53.901.8721.37.814.402.301.8680.719.03.951.9216.16.064.401.601.8758.414.03.991.9511.74.474.5075×45×152.301.7237.111.83.001.699.904.244.002.001.7233.010.53.011.708.793.764.001.601.7227.18.713.031.727.243.134.1060×30×102.301.0615.63.322.331.075.201.712.501.601.0611.62.562.371.113.881.322.50リップ溝形鋼は、同一寸法の軽溝形鋼と比べると、断面性能が高くなっています。例えば、軽溝形鋼においては、200×75×4.5(高さ[H]×辺[A]×厚さ[t])の断面性能のパラメータは、以下の通りで、リップ溝形鋼よりも値が低くなっています。・断面二次モーメント…(881cm^4, 78.0cm^4)・断面二次半径…(7.64cm, 2.27cm)・断面係数…(88.1cm^3, 13.7cm^3)リップ溝形鋼の機械的性質鋼種記号厚さの区分(mm)降伏点又は耐力(N/mm^2)引張強さ(N/mm^2)伸び%SSC4001.6~5.0245以上400~54021以上5.0~6.017以上リップ溝形鋼の機械的性質は、JIS規格にて上表のように規定されています。リップ溝形鋼は、SS400とほぼ同じ化学成分を持つ材質から、熱間圧延や冷間圧延によって製造されます。そのため、SS400とほぼ同じ強度を持ちます。また、比較のため、SUS304の機械的性質を挙げると、以下の通りとなっています。<SUS304の機械的性質>・耐力…205 N/mm^2 以上・引張強さ…520 N/mm^2 以上・伸び…40 % 以上リップ溝形鋼は、SUS304に比べて、近い強度を持っていますが、延性は低めです。参考:一般構造用圧延鋼材(SS材)とは?【専門家が解説】素人でも3分で判りますリップ溝形鋼の化学成分鋼種記号化学成分 (%)炭素 (C)リン (P)硫黄 (S)SSC4000.25以下0.050以下0.050以下リップ溝形鋼の化学成分は、JIS規格にて上表のように規定されています。ただし、必要に応じて、炭素、リンおよび硫黄以外の合金元素を添加することが許されています。なお、リップ溝形鋼はSS400とほぼ同じ化学成分を持っていますが、SS400には、リンと硫黄の規定しかなく、炭素の含有量は決まっていません。リップ溝形鋼とCチャンネルの違いリップ溝形鋼とCチャンネルに違いはなく、同じ鋼材のことを示しています。JIS規格で規定されているように、リップ溝形鋼が正式名称で、この鋼材のことは、鋼材メーカーでもリップ溝形鋼と呼びます。一方、Cチャンネルは、一般的に形鋼がチャンネルと呼ばれていることと、リップ溝形鋼の断面形状がC字型であることから用いられている呼び名です。建築分野では、Cチャンネルと呼ぶことが一般的となっています。

  • SUS440Cとは?性質、規格、成分、用途

    SUS440Cは、JIS規格に規定されているステンレス鋼の中で最も硬いステンレス鋼です。マルテンサイト系ステンレス鋼の一種で、熱処理を施し、硬度を高めた状態で利用することが前提とされています。強度や耐摩耗性が必要なベアリングやシャフトなどの機械部品によく採用されるステンレス鋼で、高い強度と耐食性から刃物の用途もあります。しかし、SUS440Cにとって最も重要な硬度、さらにはステンレス鋼の大事な特性である耐食性も、熱処理条件によって変化するため、その取扱いには十分な知識が必要です。この記事では、SUS440Cの性質や規格、物理的性質、耐食性、熱処理条件によって変わる機械的性質などについて解説していきます。SUS440CとはSUS440Cとは、炭素の含有量が0.95〜1.20%と多く、焼入硬化性が特に高いマルテンサイト系ステンレス鋼の一種のことです(上図参照)。焼き入れと焼き戻しによって、ステンレス鋼の中でも最高レベルのHRC58以上という硬度を出すことができます。高硬度であるため、耐摩耗性や疲労強度が高く、引張強さも良好で、機械的性質に優れたステンレス鋼です。価格は、SUS304と同程度か、SUS304よりも少し高いくらいとなっています。参考:マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめSUS440Cの耐食性は、クロムを16.0〜18.0%とステンレス鋼の中でも比較的多く含有するため、S45Cなどの炭素鋼やSK材・SKS材といった工具鋼と比べると高くなっています。しかし、炭素含有量が多いため、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304など)やフェライト系ステンレス鋼(SUS430など)、他のマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410やSUS420など)に劣ります。参考:SUS304とSUS430の意味とは? 使い分けや特徴も分かりやすく解説!SUS440Cの被削性は、焼き入れ前(焼き鈍し後の状態)であれば、普通鋼やフェライト系ステンレス鋼と同程度で、オーステナイト系ステンレス鋼よりは良好です。しかし、焼き入れ・焼き戻し後の被削性は悪いため、焼き入れ前に最終的な形状まで成形することが多くなっています。ただし、焼き入れ・焼き戻し後にも加工を行う場合は、硬度に関係なく加工ができる放電加工を採用したり、難削材用の工具を使用したりする必要があります。なお、JIS規格には、SUS440Cに硫黄を添加して被削性を改善したSUS440Fが存在します(上図参照)。SUS440Cの焼入硬化性は特に良好で、焼き入れ・焼き戻しの適用が前提とされているステンレス鋼です。下表は、JIS規格(JIS G 4303:2021)に記載してある焼き鈍し・焼き入れ・焼き戻しの熱処理条件の例ですが、この条件以外の熱処理条件が用いられることもよくあります。熱処理方法焼き鈍し焼き入れ焼き戻し温度 (℃)800~9201010~1070100~180冷却方法徐冷油冷空冷・徐冷…炉の停止後、鋼材を炉内に入れたままにし、炉が冷えるのに合わせて鉄鋼を冷却する方法・油冷…炉の停止後、鋼材を炉から取り出し、油中に入れて冷却する方法・空冷…炉の停止後、鋼材を炉から取り出して、常温の空気中で冷却する方法参考:ステンレスの焼き入れについて専門家が紹介!SUS440Cの用途SUS440Cの用途は、以下のように、優れた硬度や耐摩耗性、比較的良好な耐食性を活かしたものが多くなっています。・ベアリング(軸受)…回転・往復運動する部品を支持する部品のこと。荷重に対する形状不変性や摩擦に対する耐性が必要であることから、SUS440Cが採用されることがあります。・刃物…包丁やハサミ、カミソリ、医療用メスなどの刃のこと。高い硬度と防錆性が必要であることから、SUS440Cがよく採用されています。・ゲージ…製品検査で形状や精度などの検証に使用する測定・検査ゲージのこと。形状不変性や防錆性が必要であることから、SUS440Cが採用されることがあります。・金型…耐摩耗性が必要。プラスチックの射出成形用の金型にSUS440Cが採用されることがあります。そのほか、ノズルやシャフト、ポンプ部品などの強度を要する機械部品に用いられています。SUS440Cの規格SUS440Cは、以下のJIS規格に定められています。・JIS G 4303:2021「ステンレス鋼棒」・JIS G 4308:2013「ステンレス鋼線材」・JIS G 4309:2013「ステンレス鋼線」・JIS G 4318:2016「冷間仕上ステンレス鋼棒」SUS440Cの板材の規格はありませんが、市場には出回っています。なお、炭素含有量だけがSUS440Cと異なる、SUS440Aの板材については、以下のJIS規格に記載があります。・JIS G 4304:2021「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯」・JIS G 4305:2021「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯」また、SUS440CのJIS規格以外の規格との対応は以下の通りです。規格記号JISISOENASTM規格名日本産業規格国際標準化機構欧州標準化委員会米国試験材料協会鋼種名SUS440CX110Cr171.4023S44004SUS440Cの機械的性質焼き鈍し状態の硬さ焼き入れ・焼き戻し状態の硬さHBWHRCHVHBWHRCHV269以下28以下284以下−58以上653以上SUS440Cの硬度は、「JIS G 4303:2021」にて上表のように規定されています。ただし、必ずしもこれらの硬度になるわけではなく、特に焼き入れ後と焼き戻し後の硬さは熱処理条件によって大きく変わります。例えば、様々な焼き入れ温度に対する焼き入れ後(焼き戻し前)の硬度は、以下のような値が報告されています。焼き入れ温度900℃950℃1000℃1050℃1150℃硬度 (HRC)4753596142参照元:シリコロイ ラボ「SUS440C」株式会社シリコロイラボ焼き入れ・焼き戻し状態については、下表のように、様々な焼き戻し温度における多種の機械的性質のデータがあります。焼き戻し温度引張強さ0.2%耐力伸び硬さMPaMPa%HRC焼き鈍し状態7584481427.71 (269HB)204℃20301900459260℃19601830457316℃18601740456371℃17901660456参照元:Penn Stainless「440C STAINLESS STEEL」Penn Stainless Products Inc1020℃で焼き入れを行い、冷却方法として油冷を採用した場合では、焼き戻し後の硬度は、下図のような値になるとのこと。引用元:Gruppo Lucefin「1.4125a440c62.pdf」LUCEFIN S.P.A.SUS440Cの物理的性質密度熱伝導率比熱*比電気抵抗*×10-8磁性*g/cm3W/(m・K)J/(g・℃)Ω・m7.7824.30.4660強磁性参照元:シリコロイ ラボ「物理的性質」株式会社シリコロイラボ、*製品カタログ・技術情報「ステンレス鋼」愛知製鋼株式会社SUS440Cの主な物理的性質は、上表の通りです。ヤング率は、温度によって値が変化しますが、下表の通りとなっています。温度 (℃)20100200300400ヤング率 (GPa)215212205200190参照元:Gruppo Lucefin「1.4125a440c62.pdf」LUCEFIN S.P.A.温度範囲によって値が変わる熱膨張係数は、下表の通りです。温度範囲 (℃)20~10020~20020~30020~40020~500熱膨張係数 ×10-6 (℃)10.410.811.211.612.0参照元:Gruppo Lucefin「1.4125a440c62.pdf」LUCEFIN S.P.A.マルテンサイト系に言えることですが、SUS440Cの物理的性質は、フェライト系と類似しており、オーステナイト系とは異なる点が多くあります。SUS440Cは、普通鋼と同じく強磁性で、この点、SUS304などのオーステナイト系と異なります。比熱や電気抵抗率、熱膨張係数は、オーステナイト系の値よりも低く、密度や熱伝導率、ヤング率は、オーステナイト系の値よりも高くなっています。SUS440Cの成分(単位:%)炭素ケイ素マンガンリン硫黄ニッケルクロムモリブデンCSiMnPSNiCrMo0.95~1.201.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下SUS440Cの化学成分は、JIS規格によって上表のように定められています。SUS440Cは、ステンレス鋼の硬度や強度、焼入性に効果がある炭素の含有量が多く、焼入性のほか、耐食性や耐熱性を向上させるクロムの含有量も比較的多いステンレス鋼です。クロムは、防錆性の源となる酸化皮膜を形成し、焼き入れ後には、炭素と結合してクロム炭化物となり、SUS440Cの硬度や強度に寄与します。SUS440Cの耐食性SUS440Cは、上述したように、酸化皮膜の素となるクロムを多く含むため、良好な耐食性を示します。しかし、焼き入れ・焼き戻しによって、クロム炭化物が析出するため、周囲のクロム含有量が減少し、耐食性が低下します。ただし、その耐食性は、焼き戻しの熱処理条件によって異なり、焼き戻し温度が高いほど、クロム炭化物の析出量が多くなるため、耐食性は低くなります。一方、焼き入れ後の耐食性が最も高く、焼き戻し温度が低いほど、耐食性の低下は抑えられます。SUS440Cの腐食耐性は、代表的なステンレス鋼と比べると下表のようになります。腐食条件代表的なステンレス鋼の腐食度 (g/(m2・hr))SUS440CSUS420J2SUS304SUS430SUS630水*0.18-0.08-0.08塩酸 (5%)10.105934.13130.439012.25680.4772硝酸 (5%)18.88310.3100    0.01370.00580.0071硫酸 (5%)15.599122.12870.40628.78070.2707塩酸性塩化第二鉄 (6%)17.119415.90904.1834-7.5868塩水 (5%)0.01290.00670.0000-0.0000参照元:シリコロイ ラボ「耐食性比較表」株式会社シリコロイラボ、*シリコロイ ラボ「耐食性の一例」株式会社シリコロイラボSUS440Cの局所的な腐食耐性は、代表的なステンレス鋼と比べると下表の通りです。孔食は点状に生じ、内部深くに侵食する腐食のことで、孔食電位は孔食の発生する下限の電位で値が小さいほど孔食が生じやすくなっています。腐食条件代表的なステンレス鋼の孔食電位 (mV)SUS440CSUS420J2SUS304SUS430SUS630塩水 (3.5%)-30020-120100参照元:シリコロイ ラボ「耐食性比較表」株式会社シリコロイラボSUS440A、SUS440Bとの違い(単位:%)鋼種炭素ケイ素マンガンリン硫黄ニッケルクロムモリブデンCSiMnPSNiCrMoSUS440A0.60~0.751.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下SUS440B0.75~0.951.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下SUS440C0.95~1.201.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下そもそも、SUS440CはSUS440Bに炭素を加えて焼入硬化性の向上を図ったもの、SUS440BはSUS440Aに炭素を加えて焼入硬化性の向上を図ったものであり、これらの間の違いは炭素含有量だけです(上表参照)。従って、これらの硬度・靭性・耐食性の関係は、以下のようになります。・硬度:SUS440C > SUS440B > SUS440A・靭性:SUS440A > SUS440B > SUS440C・耐食性:SUS440A > SUS440B > SUS440Cなお、これらの硬度の値は、「JIS G 4303:2021」にて下表のように規定されています。鋼種焼き鈍し状態の硬さ焼き入れ・焼き戻し状態の硬さHBWHRCHVHBWHRCHVSUS440A255以下25以下269以下−54以上577以上SUS440B255以下25以下269以下−56以上613以上SUS440C269以下28以下284以下−58以上653以上

  • SKD11とは?硬度、成分、規格、処理、加工方法まとめ

    SKD11は、プレス加工の金型などに用いられている合金工具鋼です。金型は、特定の部品や製品の型となる工具のことで、金属材料などを強い圧力で挟み込むことで成形します。そのため、金型の材料には、強度や耐摩耗性、形状不変性などが必要であり、SKD11はこれらの特性に優れています。しかし、SKD11の高い強度や耐摩耗性は、焼き入れを施さないと得られません。さらに、SDK11は、焼き入れ後に難削材となってしまうなどの取り扱いの難しさもあります。この記事では、SKD11とはどのような合金鋼なのかというところから、用途、特徴、規格、物理的・化学的性質、熱処理の詳細、加工方法などについて解説していきます。SKD11とはSKD11とは、炭素工具鋼にクロムやモリブデン、バナジウムを添加した合金工具鋼のことです。0.55〜1.50%の炭素を含有し、ケイ素とマンガンの含有量を調整した炭素工具鋼に、各種元素を添加して性質の向上を図ったものです。耐摩耗性に優れ、熱処理歪みが少なく、熱処理によって硬度を上げることができます。JIS規格(JIS G 4404:2015)に規定されている鋼材で、冷間金型用として分類されていることからダイス鋼とも呼ばれます。なお、SKDは、「Steel Kougu Dice」の略で、「Steel」は鉄鋼、「Kougu」は工具、「Dice」は金型を意味します。また、SKD11の「11」には、特に意味はなく、開発された順序を示しているようです。冷間金型用として主流の鋼材で、多くの鉄鋼メーカーからDC11(大同特殊鋼)やSLD(日立金属)などといった相当材が販売されています。さらに近年では、SKD11を改良したDC53(大同特殊鋼)やSLD8(日立金属)などの合金工具鋼が数多く開発されています。参考:【金型製作】金型の種類と基礎や流れについて徹底解説!!SKD11の用途SKD11は、主にプレス機械などの中量から多量生産用の金型に用いられていますが、以下のような用途にも使われています。・転造ダイス…転造盤用の金型のことです(下図参照)。SKD11の高い硬度と優れた耐摩耗性から、SKD11が転造ダイスの材質に選ばれることがあります。なお、転造は、圧力を加えながら転がすことで円筒状の金属材料を成形する加工法で、ネジのネジ山の成形などに用いられます。引用元:工具「C131647 転造丸ダイス 田野井 9M1H/8」小林機械株式会社・フォーミングロール…ロール成形用の回転工具のことです(下図参照)。硬度や耐摩耗性が必要であるため、材質にSKD11が選定されることがあります。なお、ロール成形は、帯状の鋼板を複数のフォーミングロールが組み込まれた機械に通すことで成形する加工法です。引用元:お知らせ「第20回 機械要素技術展に出展しました。」株式会社英田エンジニアリング・シャー刃…鉄板などの切断に用いられる切断機(シャーリングマシン)の刃のことです。SKD11は、焼き入れによって高い硬度が得られ、精度も維持できることから、シャー刃の材質に適しています。・治具…耐摩耗性が必要な治具の材料にSKD11を用いることがあります。・ゲージ…製品の検査工程で形状や精度などを検証するために用いられる測定ゲージ・検査ゲージのことです。SKD11は、摩耗に強い上に、形状が変化しにくく、耐食性も比較的高いことから、各種検査ゲージの材料に用いられます。・金属刃物…SKD11は、包丁の刃金の部分に使用されることがあります。刃金とは、包丁の芯となり、刃となる部分のことです。SKD11を刃金に用い、それをサビに強く、安価なステンレス鋼で挟み込んだものが多く流通しています。参考:プレス金型とは?金型の機能・名称に関しても解説!SKD11の特徴とメリット・デメリットSKD11の特徴は、上述したように、高硬度と優れた耐摩耗性です。ただし、これらの特徴は、熱処理を加えることで現れるため、成形加工後に焼き入れ焼き戻しを行うのが一般的です。SKD11を用いるメリットとしては、以下が挙げられます。●SKD11を用いるメリット・耐摩耗性に優れる・熱処理後には、HRC58~63程度の高い硬度が得られる・熱処理後の変形が小さく、精密な製品の材料に適す・冷間金型の材料の中では、流通性が良く、入手しやすい・冷間加工用であるものの、熱間強度が高く、500℃程度までなら使用に耐えうる比較のため、他の金属材料の硬度を挙げると、SUS304がHRC11(HV200)、焼きならし後のS45CがHRC4.63〜20.64(HBW167〜229)、焼き入れ焼き戻し後のS45CがHRC13.5〜27.71(HBW201~269)、焼き入れ焼き戻し後のSUS440CがHRC55〜61程度となっています。一方、SKD11を用いる際のデメリットとしては、以下が挙げられます。●SKD11を用いるデメリット・熱処理後の硬度が高く、被削性が悪い・熱処理前も、硬度(焼きなまし硬さ)がHRC25(HBW255)程度と比較的高く、被削性が良いわけではない・熱処理後には、金属組織に粗大な炭化物が分散して、高速の摺動摩耗に弱くなる・粗大な炭化物の存在によって被削性がさらに低下する・粗大な炭化物の存在によって靭性が低下し、亀裂や割れが生じやすくなる・溶接時に割れが生じやすく、350〜450℃程度の予熱と後熱が必要・焼き入れ温度が1030℃程度と高い・焼き入れ温度と焼き戻し温度によって硬度が変化するため、熱処理時には、適切な温度管理を要する(下図は焼き入れ温度975℃・1000℃・1025℃・1050℃の焼き戻し硬さ曲線)引用元:F-SDK11 テクニカルデータ「熱処理特性」双葉電子工業株式会社SKD11の性質物理的性質比重密度(g/cm3)熱伝導率(W/mK)熱膨張係数(×10-6/℃)20〜100℃縦弾性係数(GPa)磁性7.807.8026.112.0207あり参照元:特性「物理的性質」株式会社 シリコロイラボSKD11の物理的性質は、上表の通りです。SKD11は、密度や縦弾性係数(ヤング率)の値について、SS400やS45C、SUS304と大きな違いはありません。一方、SKD11の熱伝導率については、SS400の58W/mKやS45Cの41W/mKと比べると低く、SUS304の16W/mKと比べると高くなっています。熱膨張係数については、SS400やS45Cとほぼ同等の値で、SUS304の17.2×10-6/℃と比べると若干低目の値です。このように、SKD11の高温特性は、優れた耐熱材料であるステンレス鋼に近く、熱膨張係数についてはSUS304よりも低いことから、温度変化に対する形状変化も小さくなっています。そのため、プレス機械の金型などに用いる場合でも摩擦熱の影響を受けにくく、また検査ゲージなどの形状不変性が要求される材料に適しています。しかし、熱伝導率の低さから、切削加工に伴う熱が拡散しにくく、切削工具が損傷しやすくなります。化学的性質(単位:%)炭素ケイ素マンガンリン硫黄クロムモリブデンバナジウムCSiMnPSCrMoV1.40〜1.600.40以下0.60以下0.030以下0.030以下11.00〜13.000.80〜1.200.20〜0.50SKD11の化学成分は、JIS規格(JIS G 4404:2015)で規定されており、上表の通りとなっています。ただし、SKD11の化学成分の注意点として、タングステン(W)は意図的に添加してはなりません。また、上表に記載の化学成分以外の含有元素は鉄(Fe)であり、その含有量はおよそ83.4〜86.6%です。SKD11は、クロムを11~13%含有しており、そのクロム含有量はマルテンサイト系ステンレス鋼と同程度です。しかし、ステンレス鋼は、クロム含有量が10.5%以上で炭素含有量が 1.2%以下の鉄鋼のことなので、炭素含有量が1.2%超のSKD11はステンレス鋼に分類されません。また、ステンレス鋼の耐食性は、クロムの存在によって実現されているため、SKD11も比較的耐食性に優れていますが、炭素含有量が多いため、ステンレス鋼ほどの耐食性はありません。その一方、SKD11は、炭素含有量が多い分、硬度が高くなるとともに、焼き入れ性が良くなっています。さらに、モリブデンの添加は、耐摩耗性や焼入硬化性の向上に、バナジウムの添加は、耐摩耗性の向上に寄与しています。SKD11の硬度ここでは、SKD11の熱処理前と熱処理後の硬度についてご紹介します。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!焼きなましの熱処理温度と硬度焼きなまし焼きなまし硬さ温度冷却方法HRCHBWHV830〜880℃徐冷25.33以下255以下268以下上表は、JIS規格にて規定されているSKD11の焼きなまし条件と焼きなまし硬度です。SKD11は、通常、鉄鋼メーカーにより焼きなましを行った後の状態で出荷されるので、金属加工メーカーにとっては、上表の硬度が熱処理前の硬度となります。なお、焼きなましとは、鉄鋼を高い温度で維持することによって、金属組織を均一化するとともに、鉄鋼を軟らかくし、加工しやすくする熱処理のことです。また、上表の冷却方法にある「徐冷」は、炉の停止後も鉄鋼を炉内に入れたままにし、炉が冷えるのに合わせて鉄鋼を冷却する方法です。焼き入れ焼き戻しの熱処理温度と硬度焼き入れ焼き戻し焼き入れ焼き戻し硬さ温度冷却方法温度冷却方法HRCHBWHV1030℃空冷180℃空冷58以上615以上653以上上表は、SKD11に対して、焼き入れ及び焼き戻しを行った後のJIS規格にて規定されているSKD11の硬度です。SKD11は、通常、成形加工後に熱処理を行うことから、上表の硬度が加工品の使用時の硬度となります。なお、焼き入れは、鉄鋼を硬くするため、焼き戻しは、鉄鋼の硬度を調整して靭性を高めるために行われる熱処理のことです。また、上表の冷却方法にある「空冷」は、炉の停止後、鉄鋼を炉から取り出して、常温の空気中で冷えるのを待つ方法です。近年では、熱処理後のSKD11に放電加工などを行うことがあることから、様々な条件で熱処理を行うことが多くなっています。例えば、焼き入れでは、以下のような熱処理条件が採用されています。●焼き入れの熱処理条件・980〜1010℃ 油冷・1010〜1030℃ 油冷・1000〜1030℃ 空冷・1030〜1050℃ 空冷油冷は、炉の停止後、鉄鋼を炉から取り出して、油中で冷却する方法です。空冷と比較すると、迅速な冷却が可能で、硬度が高くなりますが、靭性は低くなって割れやすくなり、熱処理歪みも大きくなる傾向があります。また、焼き入れ温度によっても、鉄鋼の性質は変わります。焼き入れ温度が高いほど、焼き戻し後の硬度が高くなりますが、靭性は低くなり、熱処理歪みも大きくなります。焼き戻しの熱処理条件によっても、下表のように鉄鋼の硬度は変わります。焼き戻し焼き入れ焼き戻し硬さ温度冷却方法HRCHBWHV150〜200℃空冷60〜63654 〜 705697 〜 772200〜250℃57〜60595 〜 654633 〜 697500℃以上57以下595以下633以下焼き戻しは、焼き入れとは逆に、焼き戻し温度が高いほど、硬度や耐摩耗性は低下し、代わりに靭性が向上します。加工方法SKD11の代表的な加工方法は、切削加工と放電加工です。切削加工SKD11は、熱処理前に切削加工で成形し、熱処理後に研削加工で仕上げを行うという方法がよく採用されます。SKD11は、熱処理前でも、S45Cなどの炭素鋼よりも被削性に劣りますが、切削加工が難しいわけではありません。一方、熱処理後は、硬度が高くなるため、切削加工を行うのは困難です。そのため、熱処理前の切削加工によって、成形を完了させてしまうことがよくあります。しかし、熱処理によって変形が生じることがあるため、高い精度が必要な場合は、熱処理後に研削加工などで仕上げを行います。ただし、熱処理後のSKD11は、研削加工も困難であるため、熱処理後の加工が最小限となるよう、熱処理前の切削加工をしっかり行っておくことが重要です。放電加工SKD11は、放電加工による変形が少ないために放電加工の加工性が良く、熱処理後の加工方法として放電加工がよく採用されます。放電加工は、材料と電極との間でアーク放電を発生させ、材料表面を溶かして除去することで成形する加工法です。硬度によらない加工法であるため、高硬度である熱処理後のSKD11でも問題なく加工することができます。ただし、放電加工を行う場合は、150〜200℃の焼き戻し(低温焼き戻し)ではなく、500℃以上の焼き戻し(高温焼き戻し)を行うことが推奨されます。それは、低温焼き戻しでは、焼き入れによって金属内部に生じた炭化物や応力などが多く残留し、炭化物や残留応力が放電加工による熱影響を受けて亀裂や変形の原因となることがあるからです。しかし、高温焼き戻しを行う場合は、硬度がHRC57以下と低いため、加工品の寿命が短くなるという欠点もあります。参考:放電加工(EDM)の基礎知識(原理、メリット・デメリット、電極)表面処理方法SKD11には、表面特性を向上させるため、めっきや表面改質熱処理を適用することがあります。めっきSKD11は、クロムをマルテンサイト系ステンレス鋼と同程度含有しているので、SS400やS45Cと比べると、錆びにくい材質です。しかし、炭素量が1.4~1.6%と高いことから、ステンレス鋼ほどの耐食性はなく、めっきなどによって防サビ対策を取ることが推奨されます。SKD11に対しては、硬質クロムめっきを施すことが多く、このめっきによって耐摩耗性の向上なども期待できます。参考:クロムメッキとは【中の人が解説】特徴や加工方法について詳細をお伝えします!熱処理SKD11には、さらなる硬度や耐摩耗性を得るためや高温焼き戻しによる硬度の低下を補うために、以下のような表面改質熱処理を行うことがあります。・窒化処理…高温焼き戻し温度程度まで加熱した窒素またはアンモニアガスの雰囲気中にSKD11を保持することで、表面に窒素を浸透させて、表面を硬化します。HV1000以上の表面硬さも実現可能な方法です。・PVD(物理蒸着)…真空中で高温焼き戻し温度程度まで加熱した成膜物質(窒化チタンなど)を付着させて、SKD11の耐摩耗性や耐食性の向上を図る方法です。・CVD(化学蒸着)…真空中または大気中で焼き入れ温度程度まで成膜の元となる物質を加熱し、化学反応を励起・促進してSKD11表面に薄膜を形成する方法です。この方法もまた、耐摩耗性や耐食性の向上が期待できます。ただし、これらの方法では、SKD11を高温に暴露することになるため、熱による変形などに注意する必要があります。

  • FC250とは?特徴、規格、性質、成分まとめ

    今回は、FC250の特徴や規格値などについて解説します。FC250とは、ねずみ鋳鉄の一種で、鋳造用の材料として採用されている材質です。鋳造性に優れた材質のため、SS材やSC材などの鉄材では成形しにくい複雑な形状の製品に適しています。鋳鉄にはFCのほかにFCDがあります。今回は、FCとFCDの違いについても見てみましょう。参考:鉄・鋼・鋳鉄の違いは炭素の量|鋳物の特徴などFC250とは?FC250とは、ねずみ鋳鉄と呼ばれる鋳鉄品の一種です。ねずみ鋳鉄は破面がねずみ色であったことに由来します。鋳鉄とは、溶かした金属を型に流し込んで成形したもののことで、FC250を含むねずみ鋳鉄は、鋳物の材料として使われています。鋳鉄は複雑な形状の型に対しても材料が流れるように、炭素量を多く含有しています。FC250を含むねずみ鋳鉄品は、【JIS G 5501-1995:ねずみ鋳鉄品】にて規格が定められています。FCのあとに続く数字は100・150・200・250・300・350の6種類があります。これらの数値は、FC250の引張強さが250N/mm2以上であるように、JIS規格にて定められた別鋳込み供試材の機械的性質での引張強さを表します。FC250の特徴と用途FC250を含むねずみ鋳鉄の特徴は、耐摩耗性・振動吸収性・鋳造性などに優れている点です。一方で、鋳造ではないS45Cなどの炭素鋼と比べると、粘り気がなく脆い傾向にあります。また、炭素を多く含むため、塑性加工や溶接も不向きです。鋳鉄は複雑な形状でも成形しやすいことから、切削などの金属加工では作りにくい部品に重宝します。そのほかにも耐久性が求められる箇所や、揺れや振れが問題となる箇所に多く採用されています。用途としては、溝蓋・自動車部品・工作機械のベッドなどが代表的です。FC250の成分FC250は、【JIS G 5501-1995:ねずみ鋳鉄品】の規格では化学成分が定められておらず、受渡当事者間の協定によるものとしています。以下は、新潟県工業技術総合研究所にて記述しているFCの化学成分の参考値を示しています。・FCCEを亜共晶(4.3%未満)にする。(炭素当量 CE=C+Si/3)FC250は3.4C%以上、FC300は3.25C%以上が目安。Siはチルが出ない範囲で少ない方がよい。Si量が少ないと高強度になり、肉厚感受性も小さくなり、引けも出にくい。引けと肉厚感受性をともに小さくする配合の理想は、3.2~3.25%C、1.1~1.2%Si。硫黄(S)は0.06~0.08%。引用元:新潟県工業技術総合研究所 鋳鉄の化学成分FC250の規格と機械的性質FC250はJIS規格によると、機械的性質(引張強さ・硬度)についてのみ規定されています。なお、FCは低応力域から局部的な降伏、塑性変形、部分的な破壊が多く発生するなどの理由から、降伏点についても明確な数値が規定されておりません。参考:公益社団法人 日本鋳造工学会 鋳鉄の引張り試験を行ったとき、明瞭な降伏(弾性限)が認められないのはなぜですか?以下の物理的性質については、鋳物メーカーの参考値を記載しています。・FC250 別鋳込み供試材の機械的性質(JIS規格)種類の記号引張強さN/mm2硬さHBFC250250以上241以下引用元:JIS G 5501-1995:ねずみ鋳鉄品・FC250 物理的性質比重 密度 重さ:7.2ヤング率(E/Gpa):100比熱(cal/g℃):0.16~0.17ポアソン比:0.27引用元:友鉄工業株式会社 ねずみ鋳鉄 減衰能 潤滑性 切削性 FC250FCDとの違いFCDとはダクタイル鋳鉄と呼ばれるもので、FCと比べて耐摩耗性や機械的強度に優れています。FCは片状の黒鉛を含有しているのに対して、FCDは球状の黒鉛を含むことから、球状黒鉛鋳鉄とも呼ばれています。FCDはJIS規格にて、350~800までの記号があり、数値の大きいものほど引張強さと硬さの値が大きくなります。FCD700ほどまで硬いものだと、FCに比べて削りにくくなるので、加工の際は注意が必要です。FCDは、FCよりも耐摩耗性や強度を必要とする溝蓋や自動車部品などに加えて、マンホール蓋や上下水道用ダクタイル鋳鉄管、ストリートファニチャーなどの幅広い用途に採用されています。

  • NAK55の特徴、性質、成分、処理、加工方法まとめ

    今回はNAK55の特徴や性質についてご紹介します。NAK55とは、大同特殊鋼株式会社が取り扱う製品である快削性プリハードン鋼の一種です。プリハードン鋼とは、あらかじめ中程度の硬度に熱処理をした鋼材のことで、鋼材メーカーによってNAK**やHPM**といった名称で取り扱われています。大同特殊鋼株式会社が取り扱う快削性プリハードン鋼は、NAK55と似た特性の金属としてNAK80もラインナップしています。今回はNAK55とNAK80の違いについても見てみましょう。参考:プリハードン鋼の解説!デメリット・用途などNAK55の特徴NAK55は、プラスチック金型用鋼のことで、最適条件で37~43HRCの硬さを有しており、そのまま型彫加工を行えます。また、Ni-Al-Cu系時効硬化型の鋼であることから、被削性や肉盛溶接性が良好です。切削加工後や放電加工後の研磨も容易に行えます。使用時の歪みが少ないのもポイントで、精密性を必要とする金型に適している材料です。NAK55の用途は、高性能・精密プラスチック金型、ゴム金型、プレス金型、産業機器等各種部品が代表的です。NAK55の成分記号JIS等該当記号化学成分CSiMnNiCuMoAl快削元素NAK55-0.150.3適量3.01.00.31.0S添加引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80NAK55の規格、比重、降伏点、ヤング率・熱膨張係数(×10-6/℃)記号20~100℃20~200℃20~300℃NAK55NAK8011.312.513.4引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80・熱伝導率(W/m・K)記号25℃100℃200℃300℃400℃NAK55NAK8029.531.433.032.832.1引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80・磁気特性記号最大比透磁率飽和磁束密度(T)残留磁束密度(T)保持力(A/m)NAK55NAK803801.6350.8501100引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80・機械的特性採取方向硬さHRC0.2%耐力N/mm2(kgf/mm2)引張強さN/mm2(kgf/mm2)伸び%絞り%シャルピー衝撃値J/cm2(kgf・m/cm2)L40981(100)1,255(128)154018(1.8)T40981(100)1,275(130)143812(1.2)引張試験片:JIS4号衝撃試験片:2mmUノッチ衝撃試験温度:293K(20℃)引用元:メカトロネット事務局 NAK55 テクニカルデータ・ヤング率(縦弾性係数):201,000N/mm2(20℃)・比重:7.80g/cm3(20℃)・比熱:481J/(kg・°C)(20℃)引用元:メカトロネット事務局 NAK55 テクニカルデータ NAK55の加工方法NAK55は高い硬度を持ちながらも被削性に優れた鋼材で、金型用の材料として多く活用されています。切削時のポイントとしては、加工面の精度を向上させたい場合、切削速度を上げるのが有効です。切込み量と送り量は、加工精度に応じた調整を行います。ツールホルダの振れは、切削面の精度に大きな影響を及ぼすため、定期的にホルダの点検および取替えを行いましょう。NAK55の処理NAK55は、アルマイト処理以外であれば、どのようなめっき処理でも対応が可能です。めっき処理方法は、特別な前処理を必要とせず、通常の鉄材と同様の方法で行います。熱処理については、NAK55が時効硬化型の鋼で、HRC40程度の硬度しか入らない材料のため、焼入れ焼戻しで硬度を上げられない点に注意が必要です。硬度を上げたい場合は、窒化処理を行うことで、加工後に表面の硬度を上げられます。NAK55の長所と短所NAK55の長所●被削性が良好37~43HRCの硬さを有するものの、およそ18HRCの硬さをもつS53Cとほぼ同等かつ、30HRCのSCM440よりも遥かに被削性に優れています。●放電加工後の研磨が容易放電加工後は、加工面の硬さが上昇せず、研磨が容易に行えます。●優れた鏡面仕上げ性切削加工面が優れているため、研磨が容易に行えるほか、ピンホールが出にくくて鏡面の光沢が出やすい特徴があります。●優れた肉盛溶接性肉盛溶接部の硬さ上昇がなく良好。溶接後は時効処理を施すことで、均一なシボ加工面が得られます。●型寿命に優れている硬さがある材料のため、耐摩耗性と耐圧性に優れ、長期の型寿命を実現しています。●錆びにくいNAK55は水にさらされるプラスチック金型にも採用される材料で、錆びにくい特徴があります。NAK55の短所●焼入れ焼戻しをしても硬度が上がらないNAK55は、時効硬化による方法で硬度を上げている鋼材です。これにより、焼入れ焼戻しにより硬度を上げることができません。時効硬化とは、急冷した合金の時間経過で常温化し、合金元素を析出させて材料を硬くすることを指します。硬度を上げたい場合は、鋼の表面に窒素をしみ込ませて硬くする窒化処理を行う必要があります。NAK80との違いNAK80は、NAK55と同じく、大同特殊鋼株式会社が取り扱う快削性プリハードン鋼です。NAK80はNAK55の特徴に加えて、鏡面みがき性に優れています。また、放電加工肌は緻密で美麗なため、梨地シボの代用が可能です。ただしNAK55よりも若干被削性に劣ります。

  • 難削材とは?種類と加工が難しい理由

    金属加工の現場でしばしば耳にする「難削材」という言葉。ニュアンスでなんとなく切削加工が難しい素材ということは分かると思いますが、具体的にどういった素材なのかと言われるとなかなか説明が難しいのではないでしょうか。そこで、今回は難削材について解説していきます。難削材に関する基礎知識や材質の種類など、知っておくことで取り扱い方法や必要とされるシーンなども分かってくるので、ぜひ知識として覚えておきましょう。難削材とは?なぜ難削材といわれるのか難削材とは、ただ削りにくいだけでなく「取り扱い自体が難しい素材」のことを指します。硬すぎて削りにくい、壊れやすくて扱いにくい、発火・引火しやすいため注意が必要など、さまざまな条件があり、一筋縄ではいかない素材の相称が、難削材です。また、データがそろっておらず、削りやすいかどうかが分からない金属も難削材に含まれます。代表的な金属の難削材の一覧難削材には大きく分けると下記のような特性があります。多くの素材が下記の1~2個の特徴を有していますが、中には3個、4個の条件を兼ね備えている、非常に加工が難しい素材もあります。・硬度が高く削りにくい・硬脆性があり、加工時に壊れやすい・加工硬化が生じやすい・工具と親和性が高く、加工時に溶着しやすい・高温強度が大きく高温下でも変形しにくい・熱伝導率が低く、加工時の温度を逃がしにくい・材料強度が大きく、せん断や引っ張りに強い・延性が大きく粘り強い性質を持つ・アブレシブ物質を含んでいる・加工時に発火、引火する可能性が高い難削材の性能を踏まえた上で、下記では、具体的な難削材の特徴と、求められている理由について解説します。ステンレス一般的な知名度の高い「ステンレス」も、実は難削材のひとつ。ステンレスは熱伝導率が低く、切削加工時に発生する熱をため込みやすい性質と、加工硬化性を兼ね備えていて、高温での加工が難しい素材です。さらに、工具との親和性が高く、切削時に出る切り粉が刃物に溶着しやすいことから、加工精度が出しにくい特徴があります。上記でも分かるように、非常に耐熱性に優れているステンレス。錆びにくさや耐水性の高さも相まって、火や水を使う場所に多く取り入れられています。また、汚れに強く衛生的にも安心な素材であることから、キッチンや浴槽、食器から車両に至るまで、幅広い分野で必要とされています。チタンチタンも切削加工が非常に難しい難削材。熱電度率が低く、工具との親和性が高いため、切削加工時に発生する切り粉が原因でビビりが発生したり、工具と化学反応を起こしたりする可能性があります。さらに、切削や研磨で発生する切り粉には発火性があるため、清掃や管理には気を配る必要があります。軽くて熱に強く、引張強度も高いチタン。耐食性にも優れ、海水に触れる環境でも使用できる数少ない金属です。調理器具やアクセサリー、自動車のエンジンやゴルフのクラブなど日常的にもさまざまなものに活用されているチタン。宮崎オーシャンドームや東京湾横断道路の橋脚など、大型の建築物にも活用されています。インコネルニッケルを主体とし、クロムや鉄、炭素などを含有したインコネル。高温強度が大きく熱伝導率が低いこともあり、切削加工が最も困難な材料とも言われています。工具との親和性も高いほか、ステンレスやチタンほど多くのものに活用されていないため切削データが少なく、加工時に切削条件を探りながら進めて行く必要があります。インコネルは高温での強度や耐酸化性、耐クリープ性が非常に高く、高温でも変形や酸化せずに強度を確保できる素材です。原子力発電所の廃液処理装置やごみ焼却炉、水処理施設、さらにはジェットエンジンやスポーツカーの部品などにも使用されています。マグネシウムマグネシウムは着火すると激しく燃える性質を持っています。さらに、過熱状態で水に触れると可燃性ガスなどを発生させる金属。高温での加工や火、水のある場所での加工は厳禁で、換気と切り粉の清掃にも注意が必要な素材です。扱いにくいだけなら手を出さない方が良いのですが、実用金属の中で最も軽いというメリットを持ち、剛性や強度も鉄やアルミニウムより優れているほか、加工自体はしやすい特徴を持っています。一般的にはアルミニウムや亜鉛などを加えた合金として扱われ、自動車の部品やノートパソコン、携帯電話、一眼レフカメラの筐体、杖、車いすなどの福祉用品などに使用されています。その他の難削材上記以外にもさまざまな難削材があります。加工の現場では型枠などに用いられる超硬合金もそのひとつ。一般的な金属よりも硬いためドリルの刃が通りにくく加工がしにくい金属です。身近なところではガラスも難削材のひとつ。硬脆性があり、加工時に割れたり壊れたりしてしまう可能性があることから、加工には向いていない素材のひとつです。金属は種類が豊富で、加工に対してデリケートなものも多くあります。同時にモノづくりでは高機能・高品質のものが求められます。硬い素材は加工できれば強度の高い製品になりますし、熱に強い素材は耐火性能の高い金属として、キッチンや自動車のエンジンなど高温になる場所でも変わらず高い性能を発揮できます。そのため、難削材を加工できれば製品に付加価値をつけることができ、ユーザーの求められる製品を提供することが可能になります。

  • 黒皮(ミルスケール)とは?特徴用途、除去方法など基礎知識を紹介

    今回は黒皮の特徴や除去方法などについて解説します。黒皮とは、別名「ミルスケール」とも呼ばれるもので、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜を指します。黒皮が付いた鉄鋼材料は黒皮材と呼ばれています。黒皮材は表面が粗く、塗装の密着性が乏しいことから、一般的に黒皮を除去する必要があります。黒皮(ミルスケール)とは引用元:横山テクノ 鉄 黒皮 丸棒材 丸鋼材(SS400・S45C) 寸法 切り売り 小口販売加工黒皮(ミルスケール)とは、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜のことを指します。上図を見ても分かるように、鉄鋼材料が黒色の皮で覆われたような外観が特徴です。また、切削加工のされていない鉄鋼材料の表面を総じて黒皮と呼ぶこともあります。黒皮で表面が覆われた鋼材のことを「黒皮材」と呼びます。熱間圧延とは、金属が加工による硬化を生じない再結晶温度以上の温度で圧延が行われることです。熱間圧延は、圧延中に高温の素材表面が大気中の酸素と結合し、黒皮を形成します。参考:【圧延】とは?工法、種類、製品例、圧延の発展の歴史についてご紹介!黒皮の特徴と用途黒皮材は、表面にピンホールや凹凸があるほか、表面の精度が低く、寸法精度を要する用途や外観性を重要視する用途に不向きです。一方で、黒皮材は熱間圧延したままの鉄鋼材料のため、価格が安く手に入る特徴があります。S45CやSS400のようなポピュラーな材料は、黒皮材とミガキ材が流通していますが、I形鋼やH形鋼などの建材用途のものは、黒皮材しか流通していません。酸化皮膜は、金属表面と空気の接触を防ぐ保護膜として機能するものですが、黒皮材の場合は鋼材と黒皮の密着強度に乏しく、表面にはピンホールや凹凸があることから、防錆目的で黒皮材が選ばれることはほとんどありません。また、塗装を施す場合も、黒皮がある状態では密着性に乏しいことから下地には不向きです。そのため、黒皮材を用いる際は、黒皮を除去してから塗装して使われるのが一般的です。黒皮の除去方法黒皮は、酸洗いにて化学的に除去するか、ショットブラストのように物理的に除去するかの方法があります。酸洗いとは、塩酸などの酸溶液を使って金属表面のスケールや酸化被膜を除去する手法で、主に表面処理の下処理として多く採用されています。引用元:株式会社ニホンケミカル ショットブラストの教科書 ミルスケール(黒皮)とは?特徴や除去方法について解説ショットブラストとは、ワークの表面に細かい砂や玉を衝突させて、表面を粗くしたり表面をバリや錆びを除去する手法のことです。ショットブラストは酸化皮膜を除去したのちに、ワークの表面に凹凸を設けるため、塗装の密着性がよくなります。黒皮材とミガキ材ミガキ材とは、冷間圧延加工にて作られた鉄鋼材料のことを指します。冷間圧延は熱間圧延と違い、常温で材料を圧延する方式です。ミガキ材は黒皮材と特徴が異なり、鉄鋼材料の表面は凹凸が少なく、表面がキレイな特徴があります。ただし、冷間圧延加工時に発生する残留応力の影響を考慮しなければならない点には注意が必要です。S45CやSS400などのポピュラーな鉄鋼材料は、熱間圧延された材料である黒皮材、もしくは冷間圧延された材料であるミガキ材から選びます。ミガキ材はコストが黒皮材に比べて高いものの、黒皮材を使えるようになるまでの加工のコストを考慮すると、ミガキ材のほうが必ずしも割高になるというわけではありません。そのため、ミガキ材と黒皮材のどちらを選択するかは、加工コストや加工時間、用途などを含めて検討する必要があります。参考:ミガキ材とは?黒皮との違いやメリット・デメリット参考:SS400とS45Cの違いを徹底解説【専門家が語る】製品による使い分け

  • ミガキ材とは?黒皮との違いやメリット・デメリット

    今回はミガキ材のメリット・デメリットや、黒皮材との違いについて解説します。ミガキ材とは、冷間圧延加工にて作られた鋼材のことを指します。鋼材は代表的なものに、S45CやSS400がありますが、これらの材料を選定する際は、ミガキ材か黒皮材かを指定しなければなりません。ミガキ材と黒皮材では特徴が異なるため、もし予定と違ったものを入手してしまった場合は、作業工程に影響を及ぼしてしまいます。この記事を参考にして、ミガキ材と黒皮材の違いを把握し、正しく選定できるようになりましょう。参考:黒皮(ミルスケール)とは?特徴用途、除去方法など基礎知識を紹介ミガキ材とは引用元:イワサ株式会社 取扱商品 磨棒鋼材(ミガキシャフト)ミガキ材とは、冷間圧延加工されて作られた、S45CやSS400などの鋼材のことを指します。ミガキ材の名前の通り、表面は磨かれたかのようなキレイな表面をしていて滑らかです。冷間圧延加工とは、2本のロールを使って材料を挟み、圧力をかけて材料を塑性加工させる「圧延」を、室温の状態で行うことを指します。「冷」という文字があるものの、冷やして加工はせずに常温のままで加工を行います。冷間圧延での加工は、酸化膜が生じないことから、ミガキ材のキレイな表面が得られるようになります。圧延加工は、冷間圧延以外に、熱間圧延があります。熱間圧延は材料を高温で軟化させてから圧延する方式で、小さい力でも圧延が可能です。熱間圧延により加工された鋼材は、黒色の酸化膜を生じることから「黒皮材」と呼びます。熱間圧延は、加工性に優れているほか、高温の材料をロールにより加工することで、金属の結晶が強固になり、粘り強い金属が得られます。ただし高温で加工するため、鋼材の表面が空気中の酸素と結合して酸化膜を生じます。参考:SS400とS45Cの違いを徹底解説【専門家が語る】製品による使い分け参考:【圧延】とは?工法、種類、製品例、圧延の発展の歴史についてご紹介!ミガキ材のメリットとデメリットミガキ材のメリットは、表面が滑らかでキレイな点にあります。精度もある程度高く、寸法精度を出したい場合に適しています。一方でミガキ材のデメリットは、冷間圧延により加工されたもののため、金属に力を加えて起こる加工硬化や、材料の内部に力が残っている残留応力の影響などを考慮しなければならない点です。また、ミガキ材のコストは、黒皮材に比べて高い傾向にありますが、黒皮材の使用するまでに行う加工のコストを考慮すると、ミガキ材のほうが必ずしも割高になるというわけではありません。そのため、ミガキ材と黒皮材のどちらを選択するかは、加工コストや加工時間、用途などを含めて検討する必要があります。ミガキ材の規格とサイズ寸法ミガキ材は、【JIS G 3123:2004 みがき棒鋼】の規格があります。JIS G 3123で規定されている、標準寸法は以下の表の通りです。●標準寸法(丸・六角・角)(単位mm)形状径・対辺距離丸5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 22 23 24 25 26 28 30 32 35 36 38 40 42 45 48 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100六角5.5 6 7 8 9 10 11 13 14 17 19 20 22 24 26 27 30 32 36 41 46 50 55 60 65 70 75 80角5 6 7 8 9 10 12 14 16 17 19 20 22 25 28 30 32 35 38 40 45 50 55 60 65 70 75 80引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼●標準寸法(平)(単位mm)厚さ幅39 12 16 19 22 25 32 38 5049 12 16 19 22 25 32 38 504.59 12 16 19 22 25 32 38 5059 12 16 19 22 25 32 38 5069 12 16 19 22 25 32 38 50 65 75 100 125 1509   12 16 19 22 25 32 38 50 65 75 100 125 15012             19 22 25 32 38 50 65 75 100 125 15016                 22 25 32 38 50 65 75 100 125 15019                      25 32 38 50 65 75 100 125 15022                           32 38 50 65 75 100 125 15025                           32 38 50 65 75 100 125 150引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼JIS G 3123:2004規定のみがき棒鋼の寸法許容差は、JIS B 0401-2の表22に基づき、軸hに対する公差等級を適用し、その値は以下表によります。●寸法許容差(単位 mm)径対辺距離厚さ及び幅軸hに対する公差等級IT6IT7IT8IT9IT10IT11IT12IT133以下 0-0.006 0-0.010 0-0.014 0-0.025 0-0.040 0-0.060 0-0.10 0-0.143を超え6以下 0-0.008 0-0.012 0-0.018 0-0.030 0-0.048 0-0.090 0-0.15 0-0.226を超え10以下- 0-0.015 0-0.022 0-0.036 0-0.058 0-0.090 0-0.15 0-0.2210を超え18以下- 0-0.021 0-0.033 0-0.052 0-0.084 0-0.13 0-0.21 0-0.3318を超え30以下- 0-0.021 0-0.033 0-0.052 0-0.084 0-0.13 0-0.25 0-0.3330を超え50以下- 0-0.025 0-0.039 0-0.074 0-0.12 0-0.19 0-0.30 0-0.4650を超え80以下- 0-0.030 0-0.046 0-0.074 0-0.12 0-0.19 0-0.30 0-0.4680を超え120以下- 0-0.035 0-0.054 0-0.087 0-0.14 0-0.22 0-0.35 0-0.54120を超え180以下------ 0-0.40 0-0.63備考1.偏径差又は偏差は、許容差の30%以下とする。2.注文者の指定によって、軸h以外(例えば、軸g、jなど)の寸法許容差を採用してもよい。その場合の寸法許容差の数値は、JIS B 0401-2の表17から表32による。引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼JIS G 3123:2004規定のみがき棒鋼の、形状及び加工方法別に適用する公差等級は以下表によります。●形状及び加工方法別公差等級形状及び加工方法丸角六角平研削引抜き切削適用する公差等級IT6・IT7IT8・IT9IT8・IT9IT10IT11・IT12IT13IT10IT11IT11IT12IT12IT13備考.受渡当事者間の協定によって、上表以外の等級を用いてもよい。引用元:JIS G 3123:2004 みがき棒鋼ミガキ材と黒皮材との違い引用元:株式会社三和鍍金 【言われてみれば】鋼材の黒皮ってなに?黒皮材は、熱間圧延にて作られた鋼材のことで、表面が酸化皮膜で覆われています。ミガキ材と違って黒皮材の表面は、ミルスケールとも呼ばれる黒皮で覆われており、凹凸があり、精度に乏しい特徴があります。黒皮を除去するには、酸洗いで黒皮を溶かすか、研磨で物理的に除去します。ミガキ材と黒皮材の違いについては、以下の表でまとめたので参考にしてください。ミガキ材黒皮材・冷間圧延加工された鋼材・表面がキレイで凹凸が少ない・精度の高い加工に適している・熱間圧延加工された鋼材・表面は凹凸があり、酸化被膜の黒皮で覆われている・精度の高い加工には不向き

  • 真鍮とは?特徴、メリット・デメリット、性質を解説

    今回は真鍮の特徴や性質について解説します。真鍮は、銅と亜鉛の合金で、別名「黄銅」とも呼ばれる材料です。私たちが生活のなかで用いている5円玉も、真鍮を材料としています。銅と同じく加工性に優れており、世の中で使われている銅の大半は、純銅と真鍮であるとも言われています。参考:真鍮の加工方法を加工実績と共に徹底紹介!!真鍮とは真鍮とは、別名「黄銅」とも呼ばれる銅と亜鉛の合金のことで、亜鉛が20%以上のものを指します。真鍮の英語表記は「Brass」で、音楽のブラスバンドで使われるトランペットなどの楽器は、真鍮で作られています。真鍮は、亜鉛の添加量により特性が大きく変わるため、材料によっては「七三黄銅」や「六四黄銅」といったように、銅と亜鉛の比率を示した名称が使われているものもあります。真鍮は、主に伸ばしたり圧縮したりする加工である、伸銅品として使われることが多い材料です。代表的なものとして、金管楽器以外にも5円硬貨や水洗トイレの給水管、金属模型などが挙げられます。また、見た目が黄金色で美しく、酸化するとアンティークな雰囲気を漂わせることから、アクセサリーに使われることも多くあります。真鍮の特徴真鍮のメリット真鍮のメリットは、優れた加工性と耐食性、電気伝導性・比較的高い強度・価格が安価な点です。加工においては、熱間鍛造性・展延性・転造性・切削加工性に優れており、めっきやはんだ付けがしやすい特徴もあります。高い電気伝導性があるので、端子コネクターのような電気製品の部品として使われることも多くあります。また、真鍮は空気中で徐々に表面が酸化し黒ずんでいくものの、酸化皮膜となって内部を保護するため、全体が腐食するのを防止します。真鍮のデメリット真鍮は、応力腐食割れの一種とされる「置割れ」が発生する場合があります。置割れは、機械加工などを施した真鍮が、日時の経過により、大気中の水分や二酸化炭素などが結晶粒界に腐食を引き起こし、粒界腐食を起こす現象を指します。置割れを回避するには、めっきや塗装を施したり、焼きなましで内部応力を除去するのが有効です。また、ラテックスなどのゴム類に接触すると、ゴムが分解腐食してしまうデメリットもあります。参考:応力腐食割れをわかりやすく!3要素と対策方法参考:焼き入れとは?焼き入れの種類ごとの特徴に分けて解説!真鍮の種類黄銅(C2600)C2600は、七三黄銅とも呼ばれる材料で、銅と亜鉛の比率が70:30の黄銅です。銅の割合が高く、絞り加工性に優れています。C2600の主な用途は、端子コネクター・配線器具・カメラ部品などです。●C2600の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeZnC260068.5~71.50.05以下0.05以下残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3100:2018 銅及び銅合金の板及び条黄銅(C2680)C2680は、銅と亜鉛の比率が65:35の黄銅です。C2600と同様に絞り加工性がよく、深絞り用として採用されています。C2680の用途は、C2600と同じく、端子コネクターや配線器具、カメラ部品などが挙げられます。●C2680の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeZnC268064.0~68.00.05以下0.05以下残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3100:2018 銅及び銅合金の板及び条黄銅(C2801)C2801は、六四黄銅とも呼ばれる材料で、銅と亜鉛の比率が60:40の黄銅を指します。冷間加工性に劣るものの、熱間加工性や強度に優れており、展延性も良好です。C2801の主な用途は、衛生管・機械部品・配線器具などが挙げられます。●C2801の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeZnC280159.0~62.00.10以下0.07以下残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3100:2018 銅及び銅合金の板及び条参考:C2801(真鍮)の化学成分、機械的性質ネーバル黄銅(C4641)C4641は、黄銅に少量の錫を添加した材料です。C4600台の黄銅を「ネーバル黄銅(海軍黄銅)」とも呼びます。C4641は耐食性(特に耐海水性)がよく、船舶用部品やシャフトなどに用いられます。錫により硬度と強度を向上させていますが、一方で伸びは減少しています。●C4641の化学成分(単位:%)合金番号CuPbFeSnZnC464159.0~62.00.50以下0.20以下0.50~1.00残部 a)a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはZn以外の分析しない元素が含まれる。引用元:JIS H 3250:2021 銅及び銅合金の棒真鍮の機械的性質ここでは真鍮のC2801の機械的性質を以下に示します。●C2801の機械的性質質別製品記号引張試験曲げ試験 a)硬さ試験 a)(参考)厚さの区分(mm)引張強さ b)(N/mm2)伸び b)(%)厚さの区分(mm)曲げ角度 c)内側半径 c)厚さの区分(mm)ビッカース硬さ b)(HV)OC 2801 P-O d)0.30以上1.0以下325以上35以上0.30以上2.0以下180°厚さの1倍--1.0を超え30以下40以上C 2801 R-O d)C 2801 RS-O d)0.30以上1.0以下35以上1.0を超え3.0以下40以上1/4HC 2801 P-1/4H d)0.30以上30以下355~44025以上0.30以上2.0以下180°厚さの1.5倍0.30以上30以下85~145 f) C 2801 R-1/4H d)C 2801 RS-1/4H d)0.30以上3.0以下0.30以上3.0以下1/2HC 2801 P-1/2H d)0.30以上20以下410~49015以上0.30以上2.0以下180°厚さの1.5倍0.30以上20以下105~160 f)C 2801 R-1/2H d)C 2801 RS-1/2H d)0.30以上3.0以下0.30以上3.0以下HC 2801 P-H d)0.30以上10以下470以上-0.30以上2.0以下90°厚さの1倍0.30以上10以下130以上 f)C 2801 R-H d)C 2801 RS-H d)0.30以上3.0以下0.30以上3.0以下a):曲げ試験及び硬さ試験に関して規定した厚さの区分を外れるものは、試験を適用しない。b):数値は、整数値に丸める。c):曲げ試験の条件を示す。d):導電用の板及び条にも適用する。f):最小試験力は、4.903Nとする。引用元:JIS H 3100:銅及び銅合金の板及び条真鍮は、亜鉛量や熱処理、加工度などにより、機械的性質が大きく変化します。例えば、亜鉛を多く添加するほど引張強度は大きくなります。ただし、硬さを増すと同時に脆さも増してしまい、亜鉛の割合が45%を超えると実用的ではなくなります。

  • SGCC(溶融亜鉛めっき鋼板)の材質、板厚、性質、サイズ

    今回は、SGCCの特徴や板厚、各種性質、SECCやSGHCとの違いなどについて解説します。SGCCは、溶融亜鉛めっき鋼板のことで、トタン板とも呼ばれる材料です。溶融亜鉛めっきを施していることで優れた耐食性を有しており、主に屋根板などの雨風にさらされるようなものに採用されています。参考:亜鉛メッキ鋼板について専門家が解説!特徴や用途についてご紹介!SGCC(溶融亜鉛めっき鋼板)とは?SGCCは、冷延原板から製造された溶融亜鉛めっき鋼板です。【JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯】に規定されている11種類の冷延原板の溶融亜鉛めっき鋼板のなかで唯一、一般用の用途として適用されている鋼板です。SGCCの特徴と用途SGCCは、溶融亜鉛めっきを施した鋼板のため、膜厚があり、耐食性に優れています。SGCCは、その耐食性の高さから、雨風にさらされる雨どい、看板、屋根板、自動車、金属筺体製品などの用途で採用されています。SGCCの板厚と寸法、サイズSGCCの板・コイル・波板の適用する表示厚さ(めっき前の原板厚さ)は、【JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯】より、0.19mm以上3.2mm以下の値になります。SECCやSPCC、SGHCとの違いSGCCは溶かした亜鉛のなかに鋼板を浸してめっきするのに対し、SECCは電気を用いて亜鉛めっきを施しています。SECCは、めっき層が薄くて均一なため、外観が比較的美しく、塗装がしやすい特徴があります。一方でSGCCは、めっき層が厚く、耐食性に優れているため、塗装せずに使用されることが多い材料です。SECCとSGCCは、どちらもSPCC(冷間圧延鋼板)を母材としており、材料特性は同等の値になります。SPCCは一般的な鋼板ですが、そのままでは錆びてしまうので、めっきや塗装処理を必要とします。SGHCは、SGCCと同じ溶融亜鉛めっき鋼板かつ、JIS G 3302にて一般用に扱われているものになりますが、SGCCと違い熱延原板から作られています。また、SGHCの適用する表示厚さは、1.6mm以上6.0mm以下と、SGCCよりも厚みがあります。参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!参考:ボンデ鋼板(SECC)とは?特殊加工による錆止め効果!メリット・用途を解説!SGCCの性質ここでは【JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯】に規定されている、各種性質について紹介します。化学的性質●SGCCの化学的性質(単位:%)種類の記号CMnPSSGCC0.15以下0.80以下0.05以下0.05以下引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯 物理的性質SGCCの物理的性質については、JIS G 3302:2019より規定がありません。機械的性質●SGCCの機械的性質種類の記号曲げ性(a)引張試験特性(b)SGCC〇(c)-(a):非合金化めっきに適用し、合金化めっきには適用しない。(b):表示厚さ0.25mm未満については、引張試験特性を適用しない。(c):波板に使用する場合、曲げ性は適用しない。非合金化めっきの板、コイル及び波板の曲げ性は、JIS G 3302の曲げ試験を行い、試験片の外側表面(試験片の幅の両端からそれぞれ7mm以上内側の部分)に、肉眼で認められる素地のき裂及び破断を生じてはならない。引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯●SGCCの引張試験特性種類の記号降伏点又は耐力N/mm2引張強さN/mm2伸び%試験片と方向表示厚さmm0.25以上0.40未満0.40以上0.60未満0.60以上1.0未満1.0以上1.6未満1.6以上2.5未満2.5以上SGCC-※SGCCでは、降伏点又は耐力として205N/mm2以上、引張強さとして270N/mm2以上が使われることがある。引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯材質と成分●化学成分(単位:%)種類の記号CMnPSSGCC0.15以下0.80以下0.05以下0.05以下引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯●めっき浴成分(単位:%)Zn以外の元素Zn1.0以下 (a)残部(b)(a):意図的に添加した元素の合計。(b):不可避的に混入した元素を含むことがある。引用元:JIS G 3302:2019 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯

  • リップ溝形鋼とは?強度、材質、成分、規格、寸法を解説

    リップ溝形鋼とは、Cチャンネルとも呼ばれる、断面がC字型の薄肉の鋼材のことです。軽量かつ高強度で、曲がりにくく、たわみにくいため、建築分野の様々な用途で使用されています。主に鉄骨造の建物の補強材として用いられますが、高層ビル・橋梁などの構造材や基礎杭に用いられるH形鋼と比べると低強度です。しかし、背中合わせに組み合わせることで、強度の向上が図れることから、軽量鉄骨造の建物の柱や梁などに用いられることがあります。この記事では、リップ溝形鋼とは何かというところから、リップ溝形鋼の規格や寸法、断面性能、強度、成分などについて解説していきます。リップ溝形鋼とは引用元:製品案内「軽量形鋼」中山三星建材株式会社リップ溝形鋼とは、上図のような、C字型の断面形状を持つ薄肉の鋼材のことです。その形状から、「Cチャンネル」とも呼ばれます。軽量である割に強度が高く、加工性や施工性に優れていることから、重量鉄骨造の補足材や軽量鉄骨造の構造体などに用いられています。ただし、薄肉のために溶接が難しく、ボルトで接合することが多くなっています。リップ溝形鋼は、H字型やL字型、C字型などの様々な断面形状を持つ「形鋼(かたこう)」と呼ばれる鋼材の一種です。その形鋼の中でも、肉厚が薄い「一般構造用軽量形鋼」に分類されます。その軽量形鋼の中には、軽溝形鋼や軽山形鋼、ハット形鋼などがありますが、リップ溝形鋼は、軽溝形鋼に断面が唇形状となるような、「リップ」と呼ばれる部位が付いた断面形状となっています(下図参照)。ちなみに、リップは補強材として役割があり、リップ溝形鋼は、同一の高さや幅、板厚の軽溝形鋼に比べて、断面性能が高くなっています。リップ溝形鋼の具体的な用途としては、以下が挙げられます。●建築・建設…工場・倉庫・学校・体育館・病院などの重量鉄骨造である建築物の下地材(胴縁や母屋など)。事務所・住宅・プレハブ住宅・店舗・車庫などの軽量鉄骨造である建築物の構造材や下地材。●農業関係…ビニールハウス・鶏舎などの骨組み材。●その他…ラック・棚・仮設材・エアコン架台・パレットなどの各種材料。また、リップ溝形鋼の多くは表面処理が施されていて、赤い錆止め塗料が塗布されているものや溶融亜鉛メッキされて白いものが流通しています。酸化皮膜に覆われた黒皮品など、表面処理されていないものもありますが、その場合は、錆止めのための塗装仕上げなどが必要です。参考:亜鉛メッキ鋼板について専門家が解説!特徴や用途についてご紹介!リップ溝形鋼の規格と寸法リップ溝形鋼は、一般構造用軽量形鋼の一種としてJIS規格(JIS G 3350:2021)に規定されています。その中で、断面の標準的な寸法、断面積および単位質量が、以下として記載されています。なお、断面の角部の曲率半径は、板厚(t)の中心線で、通常「1.5t」とされています。寸法 (mm)断面積(cm^2)単位質量(kg/m)高さ [H]辺 [A]リップ [C]厚さ [t]25075254.518.9214.920075254.516.6713.14.014.9511.73.212.139.52204.516.2212.74.014.5511.43.211.819.2715075254.514.4211.34.012.9510.23.210.538.27204.513.9711.04.012.559.853.210.218.0165204.011.759.223.29.5677.512.37.0125.5050204.511.729.203.28.6076.762.36.3224.9612550204.510.598.324.09.5487.503.27.8076.132.35.7474.5112060254.511.729.20203.28.2876.512.36.0924.7840203.27.0075.5010050204.59.4697.434.08.5486.713.27.0075.502.35.1724.061.63.6722.887545152.34.1373.252.03.6372.861.62.9522.326030102.32.8722.251.62.0721.63リップ溝形鋼の形状及び寸法の許容差さらに、形状および寸法の許容範囲も下表のように定められています。形状・寸法の区分形状・寸法の許容差高さ [H]150mm未満±1.5mm150mm~300mm±2.0mm300mm以上±3.0mm辺 [A]30mm~75mm±1.5mmリップ [C]10mm~25mm±2.0mm隣接する平板間の角度※90°±1.5°長さ7m以下+40mm7m超1m増すごとに+5mm長さ方向の曲がり全長の0.2%以下厚さ [t]1.6mm~2.0mm±0.22mm2.0mm~2.5mm±0.25mm2.5mm~3.15mm±0.28mm3.15mm~4.0mm±0.30mm4.0mm~5.0mm±0.45mm5.0mm~6.0mm±0.60mm※平板とは、下図の塗り潰し部分のことです。リップ溝形鋼の断面性能リップ溝形鋼は、上述したように、軽溝形鋼にリップを付けることで断面性能を向上させた鋼材です。断面性能は、以下で説明している、重心位置や断面二次モーメント、断面二次半径、断面係数、せん断中心のような断面の性質によって特徴づけられます。●重心位置…断面を薄い板状の物体と捉え、その物体を水平に保持したときの重力のつりあいが取れる位置のことです。●断面二次モーメント…断面と平行方向の荷重が作用するときの曲げ変形に対する抵抗性のことで、この値が大きいほど曲げにくくなります。●断面二次半径…断面二次モーメントが、ある軸の回りに断面の面積が分布したときと等しくなるように、断面の全面積を一点に集中をさせたときのその点と軸との間の距離のことです。断面と垂直方向の荷重が作用するときの座屈(荷重と垂直方向にたわむ現象のこと)変形に対する抵抗性を示し、この値が大きいほどたわみにくくなります。●断面係数…断面と平行方向の荷重が作用するときの曲げ変形に対する材質に依らない抵抗性のことで、この値が大きいほど曲げにくくなります。●せん断中心…断面と平行方向の荷重が作用するとき、断面にねじれが生じず、曲げ変形のみが発生するようなせん断力の作用点のこと。断面性能は、JIS規格にて、規定されている寸法ごとに算出された値が記載されており、それぞれのパラメータを以下のように定義すると、下図および下表の通りとなっています。<断面性能を表すパラメータの定義>Cx, Cy:x方向、y方向の重心位置Ix, Iy:x軸、y軸回りの断面二次モーメントRx, Ry:x軸、y軸回りの断面二次半径Zx, Zy:x軸、y軸回りの断面係数Sx, Sy:x方向、y方向のせん断中心の位置S.C.:せん断中心(Shear Center)寸法 (mm)重心位置(cm)断面二次モーメント(cm^4)断面二次半径(cm)断面係数(cm^3)せん断中心(cm)H×A×CtCxCyIxIyRxRyZxZySxSy250×75×254.502.0716901299.442.6213523.85.10200×75×254.502.329901217.612.6999.023.35.604.002.328951107.742.7289.521.35.703.202.3373692.37.702.7673.617.85.70200×75×204.502.199631097.712.6096.320.65.304.002.198711007.742.6287.118.95.303.202.1971684.17.792.6771.615.85.40150×75×254.502.655011095.902.7566.922.56.304.002.6545599.85.932.7860.620.66.303.202.6637583.65.972.8250.017.36.40150×75×204.502.5048999.25.922.6665.219.86.004.002.5144591.05.952.6959.318.25.803.202.5136676.45.992.7448.915.35.10150×65×204.002.1140163.75.842.3353.514.55.003.202.1133253.85.892.3744.312.25.102.302.1224841.15.942.4233.09.375.20150×50×204.501.5436835.75.601.7549.010.53.703.201.5428028.35.711.8137.48.193.802.301.5521021.95.771.8628.06.333.80125×50×204.501.6823833.54.741.7838.010.04.004.001.6821733.14.771.8134.79.384.003.201.6818126.64.821.8529.08.024.002.301.6913720.64.881.8921.96.224.10120×60×254.502.2515258.04.632.2241.915.55.30120×60×203.202.1218640.94.742.2231.310.54.902.302.1314031.34.792.2723.38.105.10120×40×203.201.3214415.34.531.4824.05.713.40100×50×204.501.8613930.93.821.8127.79.824.304.001.8612728.73.851.8325.49.134.303.201.8610724.53.901.8721.37.814.402.301.8680.719.03.951.9216.16.064.401.601.8758.414.03.991.9511.74.474.5075×45×152.301.7237.111.83.001.699.904.244.002.001.7233.010.53.011.708.793.764.001.601.7227.18.713.031.727.243.134.1060×30×102.301.0615.63.322.331.075.201.712.501.601.0611.62.562.371.113.881.322.50リップ溝形鋼は、同一寸法の軽溝形鋼と比べると、断面性能が高くなっています。例えば、軽溝形鋼においては、200×75×4.5(高さ[H]×辺[A]×厚さ[t])の断面性能のパラメータは、以下の通りで、リップ溝形鋼よりも値が低くなっています。・断面二次モーメント…(881cm^4, 78.0cm^4)・断面二次半径…(7.64cm, 2.27cm)・断面係数…(88.1cm^3, 13.7cm^3)リップ溝形鋼の機械的性質鋼種記号厚さの区分(mm)降伏点又は耐力(N/mm^2)引張強さ(N/mm^2)伸び%SSC4001.6~5.0245以上400~54021以上5.0~6.017以上リップ溝形鋼の機械的性質は、JIS規格にて上表のように規定されています。リップ溝形鋼は、SS400とほぼ同じ化学成分を持つ材質から、熱間圧延や冷間圧延によって製造されます。そのため、SS400とほぼ同じ強度を持ちます。また、比較のため、SUS304の機械的性質を挙げると、以下の通りとなっています。<SUS304の機械的性質>・耐力…205 N/mm^2 以上・引張強さ…520 N/mm^2 以上・伸び…40 % 以上リップ溝形鋼は、SUS304に比べて、近い強度を持っていますが、延性は低めです。参考:一般構造用圧延鋼材(SS材)とは?【専門家が解説】素人でも3分で判りますリップ溝形鋼の化学成分鋼種記号化学成分 (%)炭素 (C)リン (P)硫黄 (S)SSC4000.25以下0.050以下0.050以下リップ溝形鋼の化学成分は、JIS規格にて上表のように規定されています。ただし、必要に応じて、炭素、リンおよび硫黄以外の合金元素を添加することが許されています。なお、リップ溝形鋼はSS400とほぼ同じ化学成分を持っていますが、SS400には、リンと硫黄の規定しかなく、炭素の含有量は決まっていません。リップ溝形鋼とCチャンネルの違いリップ溝形鋼とCチャンネルに違いはなく、同じ鋼材のことを示しています。JIS規格で規定されているように、リップ溝形鋼が正式名称で、この鋼材のことは、鋼材メーカーでもリップ溝形鋼と呼びます。一方、Cチャンネルは、一般的に形鋼がチャンネルと呼ばれていることと、リップ溝形鋼の断面形状がC字型であることから用いられている呼び名です。建築分野では、Cチャンネルと呼ぶことが一般的となっています。

  • SUS440Cとは?性質、規格、成分、用途

    SUS440Cは、JIS規格に規定されているステンレス鋼の中で最も硬いステンレス鋼です。マルテンサイト系ステンレス鋼の一種で、熱処理を施し、硬度を高めた状態で利用することが前提とされています。強度や耐摩耗性が必要なベアリングやシャフトなどの機械部品によく採用されるステンレス鋼で、高い強度と耐食性から刃物の用途もあります。しかし、SUS440Cにとって最も重要な硬度、さらにはステンレス鋼の大事な特性である耐食性も、熱処理条件によって変化するため、その取扱いには十分な知識が必要です。この記事では、SUS440Cの性質や規格、物理的性質、耐食性、熱処理条件によって変わる機械的性質などについて解説していきます。SUS440CとはSUS440Cとは、炭素の含有量が0.95〜1.20%と多く、焼入硬化性が特に高いマルテンサイト系ステンレス鋼の一種のことです(上図参照)。焼き入れと焼き戻しによって、ステンレス鋼の中でも最高レベルのHRC58以上という硬度を出すことができます。高硬度であるため、耐摩耗性や疲労強度が高く、引張強さも良好で、機械的性質に優れたステンレス鋼です。価格は、SUS304と同程度か、SUS304よりも少し高いくらいとなっています。参考:マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識まとめSUS440Cの耐食性は、クロムを16.0〜18.0%とステンレス鋼の中でも比較的多く含有するため、S45Cなどの炭素鋼やSK材・SKS材といった工具鋼と比べると高くなっています。しかし、炭素含有量が多いため、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304など)やフェライト系ステンレス鋼(SUS430など)、他のマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410やSUS420など)に劣ります。参考:SUS304とSUS430の意味とは? 使い分けや特徴も分かりやすく解説!SUS440Cの被削性は、焼き入れ前(焼き鈍し後の状態)であれば、普通鋼やフェライト系ステンレス鋼と同程度で、オーステナイト系ステンレス鋼よりは良好です。しかし、焼き入れ・焼き戻し後の被削性は悪いため、焼き入れ前に最終的な形状まで成形することが多くなっています。ただし、焼き入れ・焼き戻し後にも加工を行う場合は、硬度に関係なく加工ができる放電加工を採用したり、難削材用の工具を使用したりする必要があります。なお、JIS規格には、SUS440Cに硫黄を添加して被削性を改善したSUS440Fが存在します(上図参照)。SUS440Cの焼入硬化性は特に良好で、焼き入れ・焼き戻しの適用が前提とされているステンレス鋼です。下表は、JIS規格(JIS G 4303:2021)に記載してある焼き鈍し・焼き入れ・焼き戻しの熱処理条件の例ですが、この条件以外の熱処理条件が用いられることもよくあります。熱処理方法焼き鈍し焼き入れ焼き戻し温度 (℃)800~9201010~1070100~180冷却方法徐冷油冷空冷・徐冷…炉の停止後、鋼材を炉内に入れたままにし、炉が冷えるのに合わせて鉄鋼を冷却する方法・油冷…炉の停止後、鋼材を炉から取り出し、油中に入れて冷却する方法・空冷…炉の停止後、鋼材を炉から取り出して、常温の空気中で冷却する方法参考:ステンレスの焼き入れについて専門家が紹介!SUS440Cの用途SUS440Cの用途は、以下のように、優れた硬度や耐摩耗性、比較的良好な耐食性を活かしたものが多くなっています。・ベアリング(軸受)…回転・往復運動する部品を支持する部品のこと。荷重に対する形状不変性や摩擦に対する耐性が必要であることから、SUS440Cが採用されることがあります。・刃物…包丁やハサミ、カミソリ、医療用メスなどの刃のこと。高い硬度と防錆性が必要であることから、SUS440Cがよく採用されています。・ゲージ…製品検査で形状や精度などの検証に使用する測定・検査ゲージのこと。形状不変性や防錆性が必要であることから、SUS440Cが採用されることがあります。・金型…耐摩耗性が必要。プラスチックの射出成形用の金型にSUS440Cが採用されることがあります。そのほか、ノズルやシャフト、ポンプ部品などの強度を要する機械部品に用いられています。SUS440Cの規格SUS440Cは、以下のJIS規格に定められています。・JIS G 4303:2021「ステンレス鋼棒」・JIS G 4308:2013「ステンレス鋼線材」・JIS G 4309:2013「ステンレス鋼線」・JIS G 4318:2016「冷間仕上ステンレス鋼棒」SUS440Cの板材の規格はありませんが、市場には出回っています。なお、炭素含有量だけがSUS440Cと異なる、SUS440Aの板材については、以下のJIS規格に記載があります。・JIS G 4304:2021「熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯」・JIS G 4305:2021「冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯」また、SUS440CのJIS規格以外の規格との対応は以下の通りです。規格記号JISISOENASTM規格名日本産業規格国際標準化機構欧州標準化委員会米国試験材料協会鋼種名SUS440CX110Cr171.4023S44004SUS440Cの機械的性質焼き鈍し状態の硬さ焼き入れ・焼き戻し状態の硬さHBWHRCHVHBWHRCHV269以下28以下284以下−58以上653以上SUS440Cの硬度は、「JIS G 4303:2021」にて上表のように規定されています。ただし、必ずしもこれらの硬度になるわけではなく、特に焼き入れ後と焼き戻し後の硬さは熱処理条件によって大きく変わります。例えば、様々な焼き入れ温度に対する焼き入れ後(焼き戻し前)の硬度は、以下のような値が報告されています。焼き入れ温度900℃950℃1000℃1050℃1150℃硬度 (HRC)4753596142参照元:シリコロイ ラボ「SUS440C」株式会社シリコロイラボ焼き入れ・焼き戻し状態については、下表のように、様々な焼き戻し温度における多種の機械的性質のデータがあります。焼き戻し温度引張強さ0.2%耐力伸び硬さMPaMPa%HRC焼き鈍し状態7584481427.71 (269HB)204℃20301900459260℃19601830457316℃18601740456371℃17901660456参照元:Penn Stainless「440C STAINLESS STEEL」Penn Stainless Products Inc1020℃で焼き入れを行い、冷却方法として油冷を採用した場合では、焼き戻し後の硬度は、下図のような値になるとのこと。引用元:Gruppo Lucefin「1.4125a440c62.pdf」LUCEFIN S.P.A.SUS440Cの物理的性質密度熱伝導率比熱*比電気抵抗*×10-8磁性*g/cm3W/(m・K)J/(g・℃)Ω・m7.7824.30.4660強磁性参照元:シリコロイ ラボ「物理的性質」株式会社シリコロイラボ、*製品カタログ・技術情報「ステンレス鋼」愛知製鋼株式会社SUS440Cの主な物理的性質は、上表の通りです。ヤング率は、温度によって値が変化しますが、下表の通りとなっています。温度 (℃)20100200300400ヤング率 (GPa)215212205200190参照元:Gruppo Lucefin「1.4125a440c62.pdf」LUCEFIN S.P.A.温度範囲によって値が変わる熱膨張係数は、下表の通りです。温度範囲 (℃)20~10020~20020~30020~40020~500熱膨張係数 ×10-6 (℃)10.410.811.211.612.0参照元:Gruppo Lucefin「1.4125a440c62.pdf」LUCEFIN S.P.A.マルテンサイト系に言えることですが、SUS440Cの物理的性質は、フェライト系と類似しており、オーステナイト系とは異なる点が多くあります。SUS440Cは、普通鋼と同じく強磁性で、この点、SUS304などのオーステナイト系と異なります。比熱や電気抵抗率、熱膨張係数は、オーステナイト系の値よりも低く、密度や熱伝導率、ヤング率は、オーステナイト系の値よりも高くなっています。SUS440Cの成分(単位:%)炭素ケイ素マンガンリン硫黄ニッケルクロムモリブデンCSiMnPSNiCrMo0.95~1.201.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下SUS440Cの化学成分は、JIS規格によって上表のように定められています。SUS440Cは、ステンレス鋼の硬度や強度、焼入性に効果がある炭素の含有量が多く、焼入性のほか、耐食性や耐熱性を向上させるクロムの含有量も比較的多いステンレス鋼です。クロムは、防錆性の源となる酸化皮膜を形成し、焼き入れ後には、炭素と結合してクロム炭化物となり、SUS440Cの硬度や強度に寄与します。SUS440Cの耐食性SUS440Cは、上述したように、酸化皮膜の素となるクロムを多く含むため、良好な耐食性を示します。しかし、焼き入れ・焼き戻しによって、クロム炭化物が析出するため、周囲のクロム含有量が減少し、耐食性が低下します。ただし、その耐食性は、焼き戻しの熱処理条件によって異なり、焼き戻し温度が高いほど、クロム炭化物の析出量が多くなるため、耐食性は低くなります。一方、焼き入れ後の耐食性が最も高く、焼き戻し温度が低いほど、耐食性の低下は抑えられます。SUS440Cの腐食耐性は、代表的なステンレス鋼と比べると下表のようになります。腐食条件代表的なステンレス鋼の腐食度 (g/(m2・hr))SUS440CSUS420J2SUS304SUS430SUS630水*0.18-0.08-0.08塩酸 (5%)10.105934.13130.439012.25680.4772硝酸 (5%)18.88310.3100    0.01370.00580.0071硫酸 (5%)15.599122.12870.40628.78070.2707塩酸性塩化第二鉄 (6%)17.119415.90904.1834-7.5868塩水 (5%)0.01290.00670.0000-0.0000参照元:シリコロイ ラボ「耐食性比較表」株式会社シリコロイラボ、*シリコロイ ラボ「耐食性の一例」株式会社シリコロイラボSUS440Cの局所的な腐食耐性は、代表的なステンレス鋼と比べると下表の通りです。孔食は点状に生じ、内部深くに侵食する腐食のことで、孔食電位は孔食の発生する下限の電位で値が小さいほど孔食が生じやすくなっています。腐食条件代表的なステンレス鋼の孔食電位 (mV)SUS440CSUS420J2SUS304SUS430SUS630塩水 (3.5%)-30020-120100参照元:シリコロイ ラボ「耐食性比較表」株式会社シリコロイラボSUS440A、SUS440Bとの違い(単位:%)鋼種炭素ケイ素マンガンリン硫黄ニッケルクロムモリブデンCSiMnPSNiCrMoSUS440A0.60~0.751.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下SUS440B0.75~0.951.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下SUS440C0.95~1.201.00以下1.00以下0.040以下0.030以下0.60以下16.0~18.00.75以下そもそも、SUS440CはSUS440Bに炭素を加えて焼入硬化性の向上を図ったもの、SUS440BはSUS440Aに炭素を加えて焼入硬化性の向上を図ったものであり、これらの間の違いは炭素含有量だけです(上表参照)。従って、これらの硬度・靭性・耐食性の関係は、以下のようになります。・硬度:SUS440C > SUS440B > SUS440A・靭性:SUS440A > SUS440B > SUS440C・耐食性:SUS440A > SUS440B > SUS440Cなお、これらの硬度の値は、「JIS G 4303:2021」にて下表のように規定されています。鋼種焼き鈍し状態の硬さ焼き入れ・焼き戻し状態の硬さHBWHRCHVHBWHRCHVSUS440A255以下25以下269以下−54以上577以上SUS440B255以下25以下269以下−56以上613以上SUS440C269以下28以下284以下−58以上653以上

  • SKD11とは?硬度、成分、規格、処理、加工方法まとめ

    SKD11は、プレス加工の金型などに用いられている合金工具鋼です。金型は、特定の部品や製品の型となる工具のことで、金属材料などを強い圧力で挟み込むことで成形します。そのため、金型の材料には、強度や耐摩耗性、形状不変性などが必要であり、SKD11はこれらの特性に優れています。しかし、SKD11の高い強度や耐摩耗性は、焼き入れを施さないと得られません。さらに、SDK11は、焼き入れ後に難削材となってしまうなどの取り扱いの難しさもあります。この記事では、SKD11とはどのような合金鋼なのかというところから、用途、特徴、規格、物理的・化学的性質、熱処理の詳細、加工方法などについて解説していきます。SKD11とはSKD11とは、炭素工具鋼にクロムやモリブデン、バナジウムを添加した合金工具鋼のことです。0.55〜1.50%の炭素を含有し、ケイ素とマンガンの含有量を調整した炭素工具鋼に、各種元素を添加して性質の向上を図ったものです。耐摩耗性に優れ、熱処理歪みが少なく、熱処理によって硬度を上げることができます。JIS規格(JIS G 4404:2015)に規定されている鋼材で、冷間金型用として分類されていることからダイス鋼とも呼ばれます。なお、SKDは、「Steel Kougu Dice」の略で、「Steel」は鉄鋼、「Kougu」は工具、「Dice」は金型を意味します。また、SKD11の「11」には、特に意味はなく、開発された順序を示しているようです。冷間金型用として主流の鋼材で、多くの鉄鋼メーカーからDC11(大同特殊鋼)やSLD(日立金属)などといった相当材が販売されています。さらに近年では、SKD11を改良したDC53(大同特殊鋼)やSLD8(日立金属)などの合金工具鋼が数多く開発されています。参考:【金型製作】金型の種類と基礎や流れについて徹底解説!!SKD11の用途SKD11は、主にプレス機械などの中量から多量生産用の金型に用いられていますが、以下のような用途にも使われています。・転造ダイス…転造盤用の金型のことです(下図参照)。SKD11の高い硬度と優れた耐摩耗性から、SKD11が転造ダイスの材質に選ばれることがあります。なお、転造は、圧力を加えながら転がすことで円筒状の金属材料を成形する加工法で、ネジのネジ山の成形などに用いられます。引用元:工具「C131647 転造丸ダイス 田野井 9M1H/8」小林機械株式会社・フォーミングロール…ロール成形用の回転工具のことです(下図参照)。硬度や耐摩耗性が必要であるため、材質にSKD11が選定されることがあります。なお、ロール成形は、帯状の鋼板を複数のフォーミングロールが組み込まれた機械に通すことで成形する加工法です。引用元:お知らせ「第20回 機械要素技術展に出展しました。」株式会社英田エンジニアリング・シャー刃…鉄板などの切断に用いられる切断機(シャーリングマシン)の刃のことです。SKD11は、焼き入れによって高い硬度が得られ、精度も維持できることから、シャー刃の材質に適しています。・治具…耐摩耗性が必要な治具の材料にSKD11を用いることがあります。・ゲージ…製品の検査工程で形状や精度などを検証するために用いられる測定ゲージ・検査ゲージのことです。SKD11は、摩耗に強い上に、形状が変化しにくく、耐食性も比較的高いことから、各種検査ゲージの材料に用いられます。・金属刃物…SKD11は、包丁の刃金の部分に使用されることがあります。刃金とは、包丁の芯となり、刃となる部分のことです。SKD11を刃金に用い、それをサビに強く、安価なステンレス鋼で挟み込んだものが多く流通しています。参考:プレス金型とは?金型の機能・名称に関しても解説!SKD11の特徴とメリット・デメリットSKD11の特徴は、上述したように、高硬度と優れた耐摩耗性です。ただし、これらの特徴は、熱処理を加えることで現れるため、成形加工後に焼き入れ焼き戻しを行うのが一般的です。SKD11を用いるメリットとしては、以下が挙げられます。●SKD11を用いるメリット・耐摩耗性に優れる・熱処理後には、HRC58~63程度の高い硬度が得られる・熱処理後の変形が小さく、精密な製品の材料に適す・冷間金型の材料の中では、流通性が良く、入手しやすい・冷間加工用であるものの、熱間強度が高く、500℃程度までなら使用に耐えうる比較のため、他の金属材料の硬度を挙げると、SUS304がHRC11(HV200)、焼きならし後のS45CがHRC4.63〜20.64(HBW167〜229)、焼き入れ焼き戻し後のS45CがHRC13.5〜27.71(HBW201~269)、焼き入れ焼き戻し後のSUS440CがHRC55〜61程度となっています。一方、SKD11を用いる際のデメリットとしては、以下が挙げられます。●SKD11を用いるデメリット・熱処理後の硬度が高く、被削性が悪い・熱処理前も、硬度(焼きなまし硬さ)がHRC25(HBW255)程度と比較的高く、被削性が良いわけではない・熱処理後には、金属組織に粗大な炭化物が分散して、高速の摺動摩耗に弱くなる・粗大な炭化物の存在によって被削性がさらに低下する・粗大な炭化物の存在によって靭性が低下し、亀裂や割れが生じやすくなる・溶接時に割れが生じやすく、350〜450℃程度の予熱と後熱が必要・焼き入れ温度が1030℃程度と高い・焼き入れ温度と焼き戻し温度によって硬度が変化するため、熱処理時には、適切な温度管理を要する(下図は焼き入れ温度975℃・1000℃・1025℃・1050℃の焼き戻し硬さ曲線)引用元:F-SDK11 テクニカルデータ「熱処理特性」双葉電子工業株式会社SKD11の性質物理的性質比重密度(g/cm3)熱伝導率(W/mK)熱膨張係数(×10-6/℃)20〜100℃縦弾性係数(GPa)磁性7.807.8026.112.0207あり参照元:特性「物理的性質」株式会社 シリコロイラボSKD11の物理的性質は、上表の通りです。SKD11は、密度や縦弾性係数(ヤング率)の値について、SS400やS45C、SUS304と大きな違いはありません。一方、SKD11の熱伝導率については、SS400の58W/mKやS45Cの41W/mKと比べると低く、SUS304の16W/mKと比べると高くなっています。熱膨張係数については、SS400やS45Cとほぼ同等の値で、SUS304の17.2×10-6/℃と比べると若干低目の値です。このように、SKD11の高温特性は、優れた耐熱材料であるステンレス鋼に近く、熱膨張係数についてはSUS304よりも低いことから、温度変化に対する形状変化も小さくなっています。そのため、プレス機械の金型などに用いる場合でも摩擦熱の影響を受けにくく、また検査ゲージなどの形状不変性が要求される材料に適しています。しかし、熱伝導率の低さから、切削加工に伴う熱が拡散しにくく、切削工具が損傷しやすくなります。化学的性質(単位:%)炭素ケイ素マンガンリン硫黄クロムモリブデンバナジウムCSiMnPSCrMoV1.40〜1.600.40以下0.60以下0.030以下0.030以下11.00〜13.000.80〜1.200.20〜0.50SKD11の化学成分は、JIS規格(JIS G 4404:2015)で規定されており、上表の通りとなっています。ただし、SKD11の化学成分の注意点として、タングステン(W)は意図的に添加してはなりません。また、上表に記載の化学成分以外の含有元素は鉄(Fe)であり、その含有量はおよそ83.4〜86.6%です。SKD11は、クロムを11~13%含有しており、そのクロム含有量はマルテンサイト系ステンレス鋼と同程度です。しかし、ステンレス鋼は、クロム含有量が10.5%以上で炭素含有量が 1.2%以下の鉄鋼のことなので、炭素含有量が1.2%超のSKD11はステンレス鋼に分類されません。また、ステンレス鋼の耐食性は、クロムの存在によって実現されているため、SKD11も比較的耐食性に優れていますが、炭素含有量が多いため、ステンレス鋼ほどの耐食性はありません。その一方、SKD11は、炭素含有量が多い分、硬度が高くなるとともに、焼き入れ性が良くなっています。さらに、モリブデンの添加は、耐摩耗性や焼入硬化性の向上に、バナジウムの添加は、耐摩耗性の向上に寄与しています。SKD11の硬度ここでは、SKD11の熱処理前と熱処理後の硬度についてご紹介します。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!焼きなましの熱処理温度と硬度焼きなまし焼きなまし硬さ温度冷却方法HRCHBWHV830〜880℃徐冷25.33以下255以下268以下上表は、JIS規格にて規定されているSKD11の焼きなまし条件と焼きなまし硬度です。SKD11は、通常、鉄鋼メーカーにより焼きなましを行った後の状態で出荷されるので、金属加工メーカーにとっては、上表の硬度が熱処理前の硬度となります。なお、焼きなましとは、鉄鋼を高い温度で維持することによって、金属組織を均一化するとともに、鉄鋼を軟らかくし、加工しやすくする熱処理のことです。また、上表の冷却方法にある「徐冷」は、炉の停止後も鉄鋼を炉内に入れたままにし、炉が冷えるのに合わせて鉄鋼を冷却する方法です。焼き入れ焼き戻しの熱処理温度と硬度焼き入れ焼き戻し焼き入れ焼き戻し硬さ温度冷却方法温度冷却方法HRCHBWHV1030℃空冷180℃空冷58以上615以上653以上上表は、SKD11に対して、焼き入れ及び焼き戻しを行った後のJIS規格にて規定されているSKD11の硬度です。SKD11は、通常、成形加工後に熱処理を行うことから、上表の硬度が加工品の使用時の硬度となります。なお、焼き入れは、鉄鋼を硬くするため、焼き戻しは、鉄鋼の硬度を調整して靭性を高めるために行われる熱処理のことです。また、上表の冷却方法にある「空冷」は、炉の停止後、鉄鋼を炉から取り出して、常温の空気中で冷えるのを待つ方法です。近年では、熱処理後のSKD11に放電加工などを行うことがあることから、様々な条件で熱処理を行うことが多くなっています。例えば、焼き入れでは、以下のような熱処理条件が採用されています。●焼き入れの熱処理条件・980〜1010℃ 油冷・1010〜1030℃ 油冷・1000〜1030℃ 空冷・1030〜1050℃ 空冷油冷は、炉の停止後、鉄鋼を炉から取り出して、油中で冷却する方法です。空冷と比較すると、迅速な冷却が可能で、硬度が高くなりますが、靭性は低くなって割れやすくなり、熱処理歪みも大きくなる傾向があります。また、焼き入れ温度によっても、鉄鋼の性質は変わります。焼き入れ温度が高いほど、焼き戻し後の硬度が高くなりますが、靭性は低くなり、熱処理歪みも大きくなります。焼き戻しの熱処理条件によっても、下表のように鉄鋼の硬度は変わります。焼き戻し焼き入れ焼き戻し硬さ温度冷却方法HRCHBWHV150〜200℃空冷60〜63654 〜 705697 〜 772200〜250℃57〜60595 〜 654633 〜 697500℃以上57以下595以下633以下焼き戻しは、焼き入れとは逆に、焼き戻し温度が高いほど、硬度や耐摩耗性は低下し、代わりに靭性が向上します。加工方法SKD11の代表的な加工方法は、切削加工と放電加工です。切削加工SKD11は、熱処理前に切削加工で成形し、熱処理後に研削加工で仕上げを行うという方法がよく採用されます。SKD11は、熱処理前でも、S45Cなどの炭素鋼よりも被削性に劣りますが、切削加工が難しいわけではありません。一方、熱処理後は、硬度が高くなるため、切削加工を行うのは困難です。そのため、熱処理前の切削加工によって、成形を完了させてしまうことがよくあります。しかし、熱処理によって変形が生じることがあるため、高い精度が必要な場合は、熱処理後に研削加工などで仕上げを行います。ただし、熱処理後のSKD11は、研削加工も困難であるため、熱処理後の加工が最小限となるよう、熱処理前の切削加工をしっかり行っておくことが重要です。放電加工SKD11は、放電加工による変形が少ないために放電加工の加工性が良く、熱処理後の加工方法として放電加工がよく採用されます。放電加工は、材料と電極との間でアーク放電を発生させ、材料表面を溶かして除去することで成形する加工法です。硬度によらない加工法であるため、高硬度である熱処理後のSKD11でも問題なく加工することができます。ただし、放電加工を行う場合は、150〜200℃の焼き戻し(低温焼き戻し)ではなく、500℃以上の焼き戻し(高温焼き戻し)を行うことが推奨されます。それは、低温焼き戻しでは、焼き入れによって金属内部に生じた炭化物や応力などが多く残留し、炭化物や残留応力が放電加工による熱影響を受けて亀裂や変形の原因となることがあるからです。しかし、高温焼き戻しを行う場合は、硬度がHRC57以下と低いため、加工品の寿命が短くなるという欠点もあります。参考:放電加工(EDM)の基礎知識(原理、メリット・デメリット、電極)表面処理方法SKD11には、表面特性を向上させるため、めっきや表面改質熱処理を適用することがあります。めっきSKD11は、クロムをマルテンサイト系ステンレス鋼と同程度含有しているので、SS400やS45Cと比べると、錆びにくい材質です。しかし、炭素量が1.4~1.6%と高いことから、ステンレス鋼ほどの耐食性はなく、めっきなどによって防サビ対策を取ることが推奨されます。SKD11に対しては、硬質クロムめっきを施すことが多く、このめっきによって耐摩耗性の向上なども期待できます。参考:クロムメッキとは【中の人が解説】特徴や加工方法について詳細をお伝えします!熱処理SKD11には、さらなる硬度や耐摩耗性を得るためや高温焼き戻しによる硬度の低下を補うために、以下のような表面改質熱処理を行うことがあります。・窒化処理…高温焼き戻し温度程度まで加熱した窒素またはアンモニアガスの雰囲気中にSKD11を保持することで、表面に窒素を浸透させて、表面を硬化します。HV1000以上の表面硬さも実現可能な方法です。・PVD(物理蒸着)…真空中で高温焼き戻し温度程度まで加熱した成膜物質(窒化チタンなど)を付着させて、SKD11の耐摩耗性や耐食性の向上を図る方法です。・CVD(化学蒸着)…真空中または大気中で焼き入れ温度程度まで成膜の元となる物質を加熱し、化学反応を励起・促進してSKD11表面に薄膜を形成する方法です。この方法もまた、耐摩耗性や耐食性の向上が期待できます。ただし、これらの方法では、SKD11を高温に暴露することになるため、熱による変形などに注意する必要があります。

  • FC250とは?特徴、規格、性質、成分まとめ

    今回は、FC250の特徴や規格値などについて解説します。FC250とは、ねずみ鋳鉄の一種で、鋳造用の材料として採用されている材質です。鋳造性に優れた材質のため、SS材やSC材などの鉄材では成形しにくい複雑な形状の製品に適しています。鋳鉄にはFCのほかにFCDがあります。今回は、FCとFCDの違いについても見てみましょう。参考:鉄・鋼・鋳鉄の違いは炭素の量|鋳物の特徴などFC250とは?FC250とは、ねずみ鋳鉄と呼ばれる鋳鉄品の一種です。ねずみ鋳鉄は破面がねずみ色であったことに由来します。鋳鉄とは、溶かした金属を型に流し込んで成形したもののことで、FC250を含むねずみ鋳鉄は、鋳物の材料として使われています。鋳鉄は複雑な形状の型に対しても材料が流れるように、炭素量を多く含有しています。FC250を含むねずみ鋳鉄品は、【JIS G 5501-1995:ねずみ鋳鉄品】にて規格が定められています。FCのあとに続く数字は100・150・200・250・300・350の6種類があります。これらの数値は、FC250の引張強さが250N/mm2以上であるように、JIS規格にて定められた別鋳込み供試材の機械的性質での引張強さを表します。FC250の特徴と用途FC250を含むねずみ鋳鉄の特徴は、耐摩耗性・振動吸収性・鋳造性などに優れている点です。一方で、鋳造ではないS45Cなどの炭素鋼と比べると、粘り気がなく脆い傾向にあります。また、炭素を多く含むため、塑性加工や溶接も不向きです。鋳鉄は複雑な形状でも成形しやすいことから、切削などの金属加工では作りにくい部品に重宝します。そのほかにも耐久性が求められる箇所や、揺れや振れが問題となる箇所に多く採用されています。用途としては、溝蓋・自動車部品・工作機械のベッドなどが代表的です。FC250の成分FC250は、【JIS G 5501-1995:ねずみ鋳鉄品】の規格では化学成分が定められておらず、受渡当事者間の協定によるものとしています。以下は、新潟県工業技術総合研究所にて記述しているFCの化学成分の参考値を示しています。・FCCEを亜共晶(4.3%未満)にする。(炭素当量 CE=C+Si/3)FC250は3.4C%以上、FC300は3.25C%以上が目安。Siはチルが出ない範囲で少ない方がよい。Si量が少ないと高強度になり、肉厚感受性も小さくなり、引けも出にくい。引けと肉厚感受性をともに小さくする配合の理想は、3.2~3.25%C、1.1~1.2%Si。硫黄(S)は0.06~0.08%。引用元:新潟県工業技術総合研究所 鋳鉄の化学成分FC250の規格と機械的性質FC250はJIS規格によると、機械的性質(引張強さ・硬度)についてのみ規定されています。なお、FCは低応力域から局部的な降伏、塑性変形、部分的な破壊が多く発生するなどの理由から、降伏点についても明確な数値が規定されておりません。参考:公益社団法人 日本鋳造工学会 鋳鉄の引張り試験を行ったとき、明瞭な降伏(弾性限)が認められないのはなぜですか?以下の物理的性質については、鋳物メーカーの参考値を記載しています。・FC250 別鋳込み供試材の機械的性質(JIS規格)種類の記号引張強さN/mm2硬さHBFC250250以上241以下引用元:JIS G 5501-1995:ねずみ鋳鉄品・FC250 物理的性質比重 密度 重さ:7.2ヤング率(E/Gpa):100比熱(cal/g℃):0.16~0.17ポアソン比:0.27引用元:友鉄工業株式会社 ねずみ鋳鉄 減衰能 潤滑性 切削性 FC250FCDとの違いFCDとはダクタイル鋳鉄と呼ばれるもので、FCと比べて耐摩耗性や機械的強度に優れています。FCは片状の黒鉛を含有しているのに対して、FCDは球状の黒鉛を含むことから、球状黒鉛鋳鉄とも呼ばれています。FCDはJIS規格にて、350~800までの記号があり、数値の大きいものほど引張強さと硬さの値が大きくなります。FCD700ほどまで硬いものだと、FCに比べて削りにくくなるので、加工の際は注意が必要です。FCDは、FCよりも耐摩耗性や強度を必要とする溝蓋や自動車部品などに加えて、マンホール蓋や上下水道用ダクタイル鋳鉄管、ストリートファニチャーなどの幅広い用途に採用されています。

  • NAK55の特徴、性質、成分、処理、加工方法まとめ

    今回はNAK55の特徴や性質についてご紹介します。NAK55とは、大同特殊鋼株式会社が取り扱う製品である快削性プリハードン鋼の一種です。プリハードン鋼とは、あらかじめ中程度の硬度に熱処理をした鋼材のことで、鋼材メーカーによってNAK**やHPM**といった名称で取り扱われています。大同特殊鋼株式会社が取り扱う快削性プリハードン鋼は、NAK55と似た特性の金属としてNAK80もラインナップしています。今回はNAK55とNAK80の違いについても見てみましょう。参考:プリハードン鋼の解説!デメリット・用途などNAK55の特徴NAK55は、プラスチック金型用鋼のことで、最適条件で37~43HRCの硬さを有しており、そのまま型彫加工を行えます。また、Ni-Al-Cu系時効硬化型の鋼であることから、被削性や肉盛溶接性が良好です。切削加工後や放電加工後の研磨も容易に行えます。使用時の歪みが少ないのもポイントで、精密性を必要とする金型に適している材料です。NAK55の用途は、高性能・精密プラスチック金型、ゴム金型、プレス金型、産業機器等各種部品が代表的です。NAK55の成分記号JIS等該当記号化学成分CSiMnNiCuMoAl快削元素NAK55-0.150.3適量3.01.00.31.0S添加引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80NAK55の規格、比重、降伏点、ヤング率・熱膨張係数(×10-6/℃)記号20~100℃20~200℃20~300℃NAK55NAK8011.312.513.4引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80・熱伝導率(W/m・K)記号25℃100℃200℃300℃400℃NAK55NAK8029.531.433.032.832.1引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80・磁気特性記号最大比透磁率飽和磁束密度(T)残留磁束密度(T)保持力(A/m)NAK55NAK803801.6350.8501100引用元:大同特殊鋼株式会社 NAK55 NAK80・機械的特性採取方向硬さHRC0.2%耐力N/mm2(kgf/mm2)引張強さN/mm2(kgf/mm2)伸び%絞り%シャルピー衝撃値J/cm2(kgf・m/cm2)L40981(100)1,255(128)154018(1.8)T40981(100)1,275(130)143812(1.2)引張試験片:JIS4号衝撃試験片:2mmUノッチ衝撃試験温度:293K(20℃)引用元:メカトロネット事務局 NAK55 テクニカルデータ・ヤング率(縦弾性係数):201,000N/mm2(20℃)・比重:7.80g/cm3(20℃)・比熱:481J/(kg・°C)(20℃)引用元:メカトロネット事務局 NAK55 テクニカルデータ NAK55の加工方法NAK55は高い硬度を持ちながらも被削性に優れた鋼材で、金型用の材料として多く活用されています。切削時のポイントとしては、加工面の精度を向上させたい場合、切削速度を上げるのが有効です。切込み量と送り量は、加工精度に応じた調整を行います。ツールホルダの振れは、切削面の精度に大きな影響を及ぼすため、定期的にホルダの点検および取替えを行いましょう。NAK55の処理NAK55は、アルマイト処理以外であれば、どのようなめっき処理でも対応が可能です。めっき処理方法は、特別な前処理を必要とせず、通常の鉄材と同様の方法で行います。熱処理については、NAK55が時効硬化型の鋼で、HRC40程度の硬度しか入らない材料のため、焼入れ焼戻しで硬度を上げられない点に注意が必要です。硬度を上げたい場合は、窒化処理を行うことで、加工後に表面の硬度を上げられます。NAK55の長所と短所NAK55の長所●被削性が良好37~43HRCの硬さを有するものの、およそ18HRCの硬さをもつS53Cとほぼ同等かつ、30HRCのSCM440よりも遥かに被削性に優れています。●放電加工後の研磨が容易放電加工後は、加工面の硬さが上昇せず、研磨が容易に行えます。●優れた鏡面仕上げ性切削加工面が優れているため、研磨が容易に行えるほか、ピンホールが出にくくて鏡面の光沢が出やすい特徴があります。●優れた肉盛溶接性肉盛溶接部の硬さ上昇がなく良好。溶接後は時効処理を施すことで、均一なシボ加工面が得られます。●型寿命に優れている硬さがある材料のため、耐摩耗性と耐圧性に優れ、長期の型寿命を実現しています。●錆びにくいNAK55は水にさらされるプラスチック金型にも採用される材料で、錆びにくい特徴があります。NAK55の短所●焼入れ焼戻しをしても硬度が上がらないNAK55は、時効硬化による方法で硬度を上げている鋼材です。これにより、焼入れ焼戻しにより硬度を上げることができません。時効硬化とは、急冷した合金の時間経過で常温化し、合金元素を析出させて材料を硬くすることを指します。硬度を上げたい場合は、鋼の表面に窒素をしみ込ませて硬くする窒化処理を行う必要があります。NAK80との違いNAK80は、NAK55と同じく、大同特殊鋼株式会社が取り扱う快削性プリハードン鋼です。NAK80はNAK55の特徴に加えて、鏡面みがき性に優れています。また、放電加工肌は緻密で美麗なため、梨地シボの代用が可能です。ただしNAK55よりも若干被削性に劣ります。