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    金属加工の塗装の依頼方法のコツ!

    過去の記事で、各塗装方法の特徴、メリット・デメリットを解説してきました。※気になる方は、こちらの記事をご覧ください。こちらの記事では、実際に工場へ塗装を依頼する方法と、NG例を紹介します。【6分でわかる】塗装の依頼方法工場さんに塗装をお願いするときのコツを簡単に動画で解説しています!6分程度でサクッと見れるので、お時間が無い方はぜひご覧ください!YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください!一言で「塗装」と依頼するだけでは見積がつきません。下記の項目を埋めて、初めて見積や加工ができるようになります。①どの製品に塗装するのか図面を用意する②個数③色を指定④艶の具合⑤塗装方法 ※指定なしでもOK⑥用途①製品の図面を用意するサイズ・形状・材質がしっかり記載された図面を用意しましょう。サイズ・形状により、用意する塗料の量が変わります。材質により、塗装金額が変わる場合もございます。また、塗装する際は吊り下げて塗装をすることが大半です。必ず吊り穴となる穴があるように設計しましょう。穴のない製品で塗装を依頼すると、工場から吊り穴の追加をお願いされることが大半です。必ずチェックしましょう!②個数個数が多ければ多いほど製品1個あたりの塗装費は安くなります。さらに、用意するべき塗料の量も左右されるため、必ず記載しましょう。③色の指定塗装できる色は様々で、原色のものもあれば調色してご希望の色に合わせることもあります。「黒」や「白」というオーダーであればわかりやすいのですが、「緑」というオーダーであれば、工場も困ってしまいます。例えば「緑」という色でもこのように様々な「緑」があります。どの「緑」かわかるように、予め色を細かく指定しましょう。色の指定方法は大きく4つあります。マンセル値で指定マンセル値は、数字とアルファベットで色を表しています。R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)、と基本の5色相とその中間色で計10色相をアルファベットで表します。中間色とはYRの場合はR(赤)とY(黄)の中間になるので、オレンジになります。各色相は、主に2.5、5、7.5、10と数字を刻みます。5Bあたりにつきましては、青緑色になっており、一般的に青と想像できる色とずれていますのでご注意ください。また、明度と彩度も数字で表します。明度は黒を0、白を10として11段階に分割しています。しかしながら、完璧な黒、完璧な白は再現できないため、0や10はなく、最も暗い黒で1.0、最も明るい白で9.5になります。彩度は鮮やかさを0から14程度までの数値で表します。白や黒といった無彩色に近い、色味の薄い色ほど0に近く、鮮やかな色ほど数値が大きくなります。最も鮮やかな色の数値は色相によって異なり、赤は14〜16程度ありますが、青は8程度になります。ご希望の色の数値を確認したい場合は、マンセル値測定器を使うか、色見本から選択してみてください。通称:「日塗工」の色見本帳から色を選択する「日塗工」とは、一般社団法人日本塗料工業会の通称です。色見本帳を見ながら色を選択できます。「色票番号」という各色をアルファベットと数字で組み合わせた番号で色を指定します。1995年を境に色票番号の表記ルールが変わっています。現行の番号と表記が違う場合はご注意ください。色見本帳は2年毎に最新版が発行されています。こちらのページを書いた2022年4月ですと、最新版は2021年版になります。また、色見本帳の有効期限は3年と設定されています。塗料の色にも色見本帳の色にも経年劣化があり、数年経てば原色を保っていることがありませんので、色の打ち合わせは最新版でのお話をおすすめします。参考:一般社団法人 日本塗料工業会色見本サンプルを工場に送るすでに塗装されたものを塗装工場に送り、同じような色に調色してもらえるよう塗装を依頼できます。サンプルは見積依頼をする際に同意を得る前に送るのではなく、必ず工場の同意を得てから小さいサイズのものを送りましょう。色にこだわりがない場合は…こだわりがない場合は、こだわりがない旨を伝えましょう。ある程度色の希望を伝えつつ、下記のように伝えてみましょう。例)「白に近い色であれば大丈夫です。」「鮮やかな青でお願いします。塗料はあり合わせのもので大丈夫です。ない場合は原色の青でお願いします。」色の希望もない場合は、白・黒・ベージュから選択してみましょう。この3色は、よく塗装される色です。そのため、塗料を在庫している可能性が非常に高いです。都度塗料を調達する必要がなくなる可能性が高いため、塗装費が他の色と比べて安価になる可能性が高いです。どの色の指定方法も厳密にいえば、色の差が発生してしまいます。複数の部品を塗装し、組付けして、色のわずかな差が気になるようでしたら、塗装のみ同じ塗装工場へ出せるように手配するのがオススメです。④艶の具合色を選択したら次は艶です。艶の具合は、艶あり・艶なし・半艶(五分艶)・〇分艶と指定します。艶の有無は塗料に艶消し剤を入れて作っていきます。そのため、艶ありより艶なしの方が艶消し剤を入れる段取り分高価になります。艶の有無でも単価に差が生じますので、必ず指定しましょう。⑤塗装方法(指定なしでもOK)様々な塗装方法があります。各塗装方法やメリットデメリットはこちらの記事で解説しています。吹付塗装、焼付塗装、粉体塗装、電着塗装など様々な塗装方法があります。特に指定がない場合は一般的に吹付塗装か焼付塗装になります。もし、シボ加工のように表面に凹凸を出すような特殊な塗装をご希望の場合は必ず記載しましょう。対応可能な工場が限られてくる上に、通常の塗装より高価になります。⑥用途簡単で構いませんので記載しましょう。塗料にも屋内用と屋外用があります。それ以外にも用途別で塗料がラインナップされています。屋内用か屋外用かだけでも記載しましょう。塗装の依頼は、図面、個数、色、艶、塗装方法、用途の項目を揃えることでスムーズに依頼ができるようになります。一つでも欠けてしまうと見積がつかなくなる可能性が高くなりますので、必ず依頼前に確認しましょう。図番:ABC-333個数:30個色:2.5Y8/1.5艶:艶あり塗装方法:焼付塗装用途:屋内用図面に記載する箇所がない場合は、上記のように記載するとわかりやすくなります。いかがでしたか?Mitsuriでは塗装も含めた金属加工を依頼できます。見積依頼はこちらから!

  • 金属積層造形(金属3Dプリンター)とは?種類、用途、メリット・デメリット

    今回は金属積層造形の特徴や用途、種類などについて解説します。金属積層造形は、金属材料に対応した3Dプリンターを用いて製品を造形する技術のことです。3Dプリンターは、個人用で使われているものから、産業用として活用されているものまで、さまざまなラインナップがあります。主に樹脂を材料としたモデルが多く展開されていましたが、現在では金属材料に対応したモデルを活用するシーンも増えてきました。3Dプリンターのメリットは、金型や治具などを必要とせず、3DのCADデータがあれば製作できる点にあります。そのほかにも従来の金属加工とは違った魅力があるので、この記事で詳しく見てみましょう。参考:3Dプリンタとは?3Dプリンタの基礎を丁寧に解説!金属積層造形とは金属積層造形とは、主に3DのCADデータをもとにして、金属粉末の層を積み重ね、3次元の造形物を作る技術のことです。金属積層造形を行うためには、金属3Dプリンターを使用します。金属3Dプリンターに使われる金属材料は、鉄鋼系・アルミニウム系・チタン系・銅系などさまざまですが、モデルによって対応できる材料は異なります。金属積層造形の代表的な製造工程は次の通りです。1.作りたい製品の3DCADデータを、1層ごとに分けたスライスデータに変換。2.スライスデータを金属3Dプリンターに読み込ませて配置する。3.配置したスライスデータに倣って3Dプリンターの作業スペース上に金属粉末を敷く。4.金属粉末にレーザーやビームを照射して凝固させる。5.3~4の手順を繰り返して造形する。6.目的の形状に造形後、サポート材を除去するなどの後処理をして完成。金属積層造形の特徴金属積層造形は、主に以下の特徴が挙げられます。●複雑な形状の製品を作れる金属積層造形は、鋳造や切削では難しい加工にも対応が可能です。例えば鋳造では、湯を鋳型のなかに充填させるために、ある程度の厚みが必要とします。中空の製品を作る場合は、中子も必要になります。また、切削加工で製品を作る場合、刃物の大きさなどに左右されることから、複雑かつ細かな形状に切り出すのは困難です。しかし金属積層造形では、金属粉末を積層して成形する仕組みのため、薄肉のものや、すき間のある製品でも対応できます。また、金属積層造形は一体成型で製造するため、加工が困難な金属にも対応が可能です。ただし、どのような形状でも造形できるわけではなく、積層造形に適した設計にしなければならない点に注意してください。参考:砂型鋳造とは?工程、メリット・デメリット、型の種類、製品例参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説●歩留まりが良くコストを抑えられることも金属積層造形は、材料から直接製品を製造できるため、無駄な材料費、金型費、後加工に必要なコストなどを削減できます。金型や鋳型も必要せず、3Dデータがあれば製造が可能なため、試作品のような1品からの製造を行う場合にも便利です。ただし、材料費は通常のバルク材に比べて高価なため、製品によっては従来の製造方法のほうがコストがかからない場合もあります。●中間在庫の削減金属積層造形に必要なものは、金属3Dプリンター、材料、3DCADデータだけのため、非常に短い生産ラインでの製造が可能です。●試作品をいち早く評価できる金属積層造形は、金型や治具などを用意する手間がかかりません。そのため、複雑な形状の試作品でもすぐに用意でき、評価できます。金属積層造形の用途ここでは、金属積層造形を採用している製品の一例をご紹介します。●航空宇宙分野ジェットエンジンの燃料噴射ノズル、タービンブレード、ロケットエンジン部品などの造形に採用されています。●医療分野人工膝関節や人工股関節、さまざまな部位のインプラントなどの造形に採用されています。●金型金属積層造形であれば、従来の切削加工では難しいリブや溝のある金型でも製作が可能です。製作用のデータがあれば、破損してもすぐに新しいものを用意できます。●自動車分野金属積層造形は、従来の製造方法に比べて厚みや密度を変更しやすいメリットがあるので、モータースポーツ分野での部品の軽量化などに採用されることがあります。また、切削加工や鋳造で行われていた試作品を、金属3Dプリンターで作ることにより、コストの削減や製作時間の短縮に寄与します。金属積層造形の方式の種類金属積層造形と一口に言っても、モデルによって造形の仕方に違いがあります。ここでは、金属積層造形で採用されている造形方法の種類についてご紹介します。パウダーベッド方式引用元:アルテック株式会社 3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2021年最新版)パウダーベッド方式(PBF:Powder Bed Fusion)は、金属粉末を敷き詰めた床にレーザーやビームを照射して溶融・凝固を繰り返し、造形する方式です。パウダーベッド方式は、金属積層造形の種類のなかで最も多く採用されています。パウダーヘッド方式は、さらに細かく分けると、レーザー熱源方式と電子ビーム熱源方式があります。レーザー熱源方式は、造形精度が比較的高く、微細な形状を得意としますが、スピードに乏しい特徴があります。一方で電子ビーム熱源方式は、造形スピードが速いものの、精度が比較的出にくい特徴があります。パウダーベッド方式のメリット・デメリットは以下の通りです。●パウダーベッド方式のメリット・レーザーを用いた造形は、精度が比較的高い・ポピュラーな方式のため、3Dプリンターの選択肢が豊富●パウダーベッド方式のデメリット・造形に時間がかかる・サポート除去の手間がかかるメタルデポジッション方式メタルデポジッション方式は、金属粉末を吹きつけながらレーザーを照射して金属を積層し、凝固させていく方式で、別名「指向性エネルギー堆積法」とも呼ばれています。メタルデポジッション方式は、肉盛りのような形で積層していく仕組みのため、一から造形するだけでなく、欠損部分を補修することも可能です。●メタルデポジッション方式のメリット・既存製品の補修が可能・パウダーベッド方式よりも造形スピードが速い・金属粉末の除去作業を必要としない●メタルデポジッション方式のデメリット・造形できる形状に制限があるADAM方式引用元:アルテック株式会社 3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2021年最新版)ADAM方式は、樹脂材料を用いた3Dプリンターに多く採用されているFDM方式(熱溶解積層法)と同じく、材料をノズルから押し出して造形する方式です。ADAM方式では、金属材料とバインダーを混合した素材を熱で溶解して積層していきます。造形後は脱脂をして、バインダーを取り除く必要があります。バインダーを除去したあと、炉に入れて焼結させることで、金属製品ができあがります。●ADAM方式のメリット・他の方式に比べて高強度・高密度・高精度の金属製品を短い時間で造形できる・金属粉末が飛び散らないため、安全性が高い・3Dプリンターの導入コストが抑えられる●ADAM方式のデメリット・脱脂や焼結の工程が必要バインダージェット方式引用元:アルテック株式会社 3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2021年最新版)バインダージェット方式(Binder jetting)は、金属粉末にバインダーと呼ばれる液体結合剤を噴射して固形化する方式です。ADAM方式と同じく、造形後にバインダーを除去するために、脱脂・焼結の工程を必要とします。バインダージェット方式には以下のメリット・デメリットがあります。●バインダージェット方式のメリット・サポート材の除去が不要・未使用の金属粉末は再利用できる・造形速度が早い●バインダージェット方式のデメリット・表面精度が粗い・強度が弱い金属積層造形のメリットとデメリットメリット●複雑な形状の製品を製作できる金属積層造形の仕組みにより、切削や鋳造などの製法に比べて複雑な形状の製品を作ることができます。●試作品の製作に適している金属積層造形は、金型製作などにかかる時間やイニシャルコストを削減できるほか、加工に必要な刃物や治具も必要としないため、試作品の製作に適しています。スピーディーに製品が作れるので、試作品をいち早く評価できます。●サイズの小さい製品であれば、一度で複数個の造形ができる金属積層造形は、積層エリア内に収まる分だけ、造形が可能です。そのため、サイズの小さな製品の場合は、複数個の製品を一度で作ることができます。例えば試作品を作るときに、細かな設計の違いがある製品を一度に作ることで、すぐに比較・検討ができます。デメリット●材料にかかるコストが高い金属積層造形で用いる材料は、一般的なバルク材に比べて高い傾向にあるので、簡単な形状の製品を作る場合は、コストメリットを得られない場合があります。●製品の大きさが限定されやすい金属積層造形で製品を作るには、機械の造形エリア内に収まるサイズでないと製造できません。●造形のスピードが遅く、大量生産には不向き金属積層造形は、1層ごとに金属材料を積み重ねて造形する仕組みのため、1つの製品を完成させるまでに時間がかかります。●後処理の手間がかかる3Dプリンターは、造形後にサポート材と呼ばれる中空部分の土台を除去する必要があります。製品の形状によってサポート材の量は大きく変わるので、除去の手間を少なくするためには、設計の段階でサポート材が少なくなる形状にする必要があります。また、スライスデータを造形エリアに配置する際も、向きによってサポート材の量が変化するため、注意が必要です。●熱による造形後の変形金属積層造形した製品は、造形中や造形直後に熱を持ちます。そのため、造形後に熱が発散されたあと、歪みや反りが発生する場合があります。

  • 化成処理とは?種類ごとの特徴を解説

    防錆や金属の皮膜処理について調べていると化成処理という言葉を目にします。めっきと同じような処理のため「何が違うの?」「どんな特徴があるの?」といった疑問が生まれてくるかもしれません。今回は、化成処理とはどのような処理なのか、種類、目的などについて、詳しく解説していきます。化成処理とは化成処理は、金属をはじめとする加工物を溶液に浸透させて皮膜を作る表面処理のひとつです。表面に処理剤を用いて化学反応を起こさせることで、元の素材とは違った性質を与えることができます。耐食性に加えて外観の向上も見られるほか、下地として処理をすることで塗装との密着性を上げる目的としても活用されます。同じような処理方法のめっきと同列で扱われることもありますが、化成処理は化学薬品を使用したり、電気化学を応用したり、科学的方法を用いて素材に皮膜を生成するため、めっきとは別の処理として考えられることも少なくありません。化成処理の種類化成処理にはいくつか種類がありますが、その中でも代表的な4種類をご紹介します。リン酸塩処理・主に鉄鋼製品に対して採用される・リン酸塩系の処理液を用いて表面を化学反応させ、皮膜を生成する・表面保護効果に加え、塗料との親和性を高める効果があるリン酸塩処理はパーカー処理やパルホス処理とも呼ばれ、鉄をはじめとする金属系の加工物をリン酸塩系の処理液に浸漬させることで表面を化学反応させる化成処理です。使用される処理液は、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム等の種類があり、それぞれに異なる特徴を持っています。処理方法によって種類は異なりますが、いずれも表面に凹凸のある皮膜が生成される特徴があります。錆をはじめとする腐食を抑える表面保護効果に加え、塗料との親和性を高めることもできるため、塗装の下地処理としても多く活用されます。最も多く用いられているリン酸亜鉛処理は、さまざまな素材に対応できますが、処理液によっては鉄鋼製品以外には使用できないものもあるため注意が必要です。⇒リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説クロメート処理・主に亜鉛めっきが施された加工物の後処理に用いられる・六価クロム、三価クロムを含む処理液を用いた化成処理・自己修復性の皮膜によって耐食性の向上や変色防止の効果があるクロメート処理には黄銅、亜鉛、アルミニウムなどが主に使用されます。加工物を六価クロム、もしくは三価クロムを用いた含む溶液に浸漬させ、表面に酸化皮膜を生成する化成処理です。クロメート処理によって得られる酸化被膜は自己修復性を持っており、他の皮膜に比べて高い耐食性を示します。さらに、塗装の代替としても使える着色クロメートや、塗装の前処理として活用できる塗装下地クロメートなど、幅広い活用法が見込めるとして注目を集めています。クロメート処理は素材に直接処理を施すだけでなく、亜鉛めっきが施された加工物の後処理として行われることも少なくありません。これは亜鉛が変色しやすく指紋などがつきやすい性質を持っているからです。亜鉛めっきは特に、湿気のある環境では白色斑点などを生じやすい欠点を持っています。合わせてクロメート処理を施すことで、光沢性と耐食性を付加できるため、電気亜鉛めっきでは不可欠な技術となっています。この他、アルミやマグネシウムの処理に採用される場合は塗装との密着性向上を、無電解ニッケルめっきの後処理に採用する場合は耐食性と変色防止を目的とするなど、素材に応じてさまざまな用途で活用されています。⇒三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違いジンケート処理・アルミニウム合金に対し、めっきの前処理として用いられる・ジンケート(亜塩酸塩)を使った薬液に浸漬させる化成処理・アルミの酸化皮膜を溶かし、亜鉛皮膜を形成させることでめっきの密着不良を解消するジンケート処理は主にアルミニウムやマグネシウムなどの合金に対し、前処理として採用される化成処理です。近年、自動車をはじめとするさまざまな製品に対し、軽量化を目的としてアルミニウムが採用されています。このアルミニウム合金にめっき処理を施す際、前処理としてジンケート処理が不可欠です。アルミニウム合金の表面に、耐摩耗性や装飾性の向上を目的にめっき処理が行われます。しかし、アルミニウム合金は大気中の酸素によって緻密で強固な酸化被膜を形成する特性があります。この酸化被膜はめっきの密着性を阻害してしまうため、ジンケート処理を2回行うダブルジンケート処理によって密着不良を回避しています。黒染め処理・鉄鋼製品に対し、1~2μmの薄い酸化被膜を生成させる・アルカリ水溶液を使った化成処理で、黒色の皮膜が生成される・耐食性・耐熱性を持っている上に見栄えが良く、コストも安い黒染め処理は、アルカリ水溶液に鉄鋼系の加工品を浸漬させることで、表面に耐食性のある黒色の酸化皮膜を生成させる化成処理です。他の化成処理に比べて耐食性の効果は低めですが、皮膜の厚さが約1~2μmと薄く、コストが低いメリットがあります。実際には黒く染めている訳ではなく、鉄の表面が酸化して四酸化三鉄の皮膜で覆われることで黒く変色していますが、見栄えが良い上に防錆効果もあるため、黒く染める用途として採用されることも少なくありません。黒染め処理によって生成される皮膜はめっきや塗装に比べると非常に薄いですが、剥離の心配がなく、経年変化においても寸法精度がほとんど変わりません。また、見た目の美しさや耐熱性の高さ、価格の安さなど、多くのメリットを持ち合わせています。さらに、錆びている製品に対しても、酸洗い処理などによって錆を落とした後で黒染め処理をすることができ、汎用性が高い点も魅力のひとつです。⇒金属の黒染め加工とは?効果と材料向き不向き

  • リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説

    リン酸塩処理は、リン酸塩の処理液を用いて素材の表面を化学反応させることで皮膜を形成させる化成処理です。金属の錆を防止したり素材を強化したりできるため、金属加工の種類のひとつとして用いられてきました。リン酸塩処理は別名「リン酸塩皮膜処理」、処理の種類ごとに「リン酸マンガン皮膜」「リン酸亜鉛皮膜」「リューブライト」とも呼ばれます。また、リン酸塩処理を工業用途で本格的に発展させたパーカー兄弟の姓を取った「パーカーライジング」「パーカー処理」という名前も浸透しています。リン酸塩処理は用いるリン酸塩の種類によっても強度や効果が異なるため、目的や用途に応じた処理が必要です。今回は、リン酸塩処理の種類や工程、用途などについて解説していきます。リン酸塩処理とはリン酸塩処理は、鉄をはじめとする金属系の加工物に施す化成処理の一種です。表面を化学反応させることで皮膜を生成し、元の素材とは異なる性質を付与できるため、古くは武器や道具の錆・塗料の剥離防止などの目的で用いられてきました。現在でもその目的は変わらず、自動車部品をはじめとする工業製品に対して広く採用されています。リン酸塩処理は錆を含めた腐食の進行を抑える表面保護効果として塗装の下地に用いられることが多いですが、それ以外にも金属加工時に潤滑剤と併用することで塑性加工を容易にする目的でも用いられます。リン酸塩処理の種類リン酸塩処理には、リン酸亜鉛処理が最も多く用いられますが、その他にも全部で4種類の処理があります。それぞれ異なる特徴があるため、処理の成分や利点などをご紹介します。リン酸亜鉛処理リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理の中で最も多く用いられている処理方法で、主成分はリン酸イオンと亜鉛イオンで構成されます。結晶性の皮膜を形成することで耐食性、密着性を大きく向上させる効果があり、鉄鋼や亜鉛製品の塗装下地や冷間鍛造の潤滑皮膜として使用されます。また、熔解亜鉛めっきを施したスチール製品は、美観をより重厚感や高級感のあるものに変化できるため、仕上がりに自然な質感が求められる製品にも採用されます。リン酸亜鉛処理は経年変化で少しずつ変色が見られ、濃淡が落ち着いて周囲の景観と調和してくる傾向があります。処理温度60度以下のものが多く、常温で処理ができるものもあり、使いやすいことも採用されやすい理由のひとつとなっています。リン酸カルシウム処理リン酸カルシウム処理は、リン酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンから構成されており、結晶性の皮膜を形成します。同じ結晶性皮膜を構成するリン酸亜鉛処理に比べて耐熱温度が高く、高温で焼き付ける塗装下地に適しています。リン酸カルシウム処理は冷間鍛造による潤滑皮膜として用いられることもありますが、鉄鋼製品に対して用いられることが多く、処理温度は80度~90度と高いのが難点とされています。リン酸鉄処理リン酸鉄処理の主成分はリン酸イオンで、他のリン酸塩処理と違い、非晶質の皮膜が形成される特徴があります。形成される皮膜は1μm以下と非常に薄く、干渉色によって青や黄色などの皮膜外観になります。皮膜成分はリン酸鉄で、皮膜の成分に鉄を必要とするため、適応素材は鉄鋼製品に限定されます。リン酸鉄処理はリン酸亜鉛処理に比べて耐食性に劣りますが、何も処理しない場合に比べると耐食性は高いです。加えて塗装密着性も得られ、他のリン酸塩処理に比べて安価で溶液管理がしやすいため、塗装下地として好んで選ばれる傾向があります。リン酸マンガン処理リン酸マンガン処理の主成分はリン酸イオンとマンガンイオンから構成されており、結晶性の皮膜が形成されます。皮膜の主成分はヒューリオライトで、リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く、表面の粒子が粗い特徴があります。リン酸マンガン処理は耐摩耗性に優れ潤滑作用が大きいことから、ギアやピストン、ベアリングをはじめとする摺動部品に多く採用されます。リン酸鉄処理と同様、加工は鉄製品に限定されるほか、処理温度も80度~90度と高く、処理時間も5~30分程度かかってしまう欠点があります。リン酸塩処理の工程リン酸塩処理の工程は主に以下の5つに分けられます。1.アルカリ脱脂剤を用いた洗浄2.水によるすすぎ洗い3.リン酸塩による処理4.水によるすすぎ洗い5.熱温風による乾燥1と3の工程で薬剤が使用され、各処理に合わせて1分から長い場合は10分以上かけるものもあります。また、防錆、塗装、塑性加工などの目的に応じて処理が異なります。リン酸塩処理の目的が防錆である場合は、表面に防錆油を塗布します。塗装が目的の場合は電着塗装や溶剤塗装と同一ライン内で施され、必要に応じて上塗り塗装まで続けてなされます。塑性加工が目的の場合、乾燥前に追加工程としてステアリン酸ナトリウムを主成分とする石鹸処理が施されます。

  • ダイカストとは?製品例、メリット・デメリット、鍛造との違い

    金属を融点よりも高い温度に熱し、ドロドロの液体にした後で型に流し込む「鋳造」は、古代から伝わる金属加工技術のひとつ。その歴史は古く、紀元前3600年頃のメソポタミア文明で、青銅を加工したことが始まりと言われています。以降、金型を使った鋳造は技術の発展と共に進化を遂げ、複雑かつ強度の高い部品を生成できるダイカスト技術が誕生しました。ダイカストとはダイカストは、高温に熱して液体化した非鉄金属を金型に流し込み、圧力をかけて金型に流し込むことで複雑な形状の製品を製造する鋳造技術のひとつ。一般的な鋳造製品に比べて寸法精度が高く、金型を用いることによって表面が滑らかな仕上がりになります。切ったり削ったりするのではなく金型を使った加工のため、複雑な三次元形状の部品も製造できる自由度の高さが魅力です。板金では叶えられない複雑な形状の部品を製造できる上、金型を使用するため大量生産に適しています。主にアルミニウムやマグネシウム、亜鉛などの製品の成形に用いられ、自動車や家電、コピー機など、さまざまな製品の製造に活用されています。ダイカストのメリット・デメリット高度な技術に裏打ちされたダイカストですが、メリットはもちろん、デメリットもあります。メリット・複雑な形状の製品を製造できる・量産が可能で、生産コストが低い・寸法精度が高く、表面粗さも良いダイカストは複雑な形状の製品をたったの1工程で量産できるため、生産コストが低く抑えられる点が魅力です。一般的な鋳造に比べて寸法精度が高く、まったく加工をせず、ちょっとした継ぎ目のバリ取りをするだけで製品として完成させられる点も大きな魅力のひとつです。デメリット・機械的強度が低い・金型の費用が高いため少量生産には向かない・パイプや中空形状など、作れない形状がある一般的にダイカスト製品は内部に鋳巣(製品内部のガス)が発生するため、強度が低いことが問題とされてきました。しかし、この問題は2007年、特殊ダイカスト法の誕生によって解決。現在ではさまざまなダイカスト法が誕生しています。ただし、鋳巣の発生が抑えられたとしても鍛造製法をはじめとする強度の高い工法にくらべると製品強度は低めになっています。鋳造は主に砂型を用いられますが、ダイカストは金型を用いるため初期費用がかなり高額になります。そのため、少量生産には向きません。さらに、部品によって3万~8万ショット程度が金型の寿命と言われており、トータルコストはあまり良くありません。ダイカストの製品例亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの非鉄金属を大量生産できるダイカストは、主に自動車関連の部品製造で採用されてきました。近年、デメリットとなっていた強度の問題が解消されるなど、技術の発達によって建築材料や通信機器、産業機械など、さまざまな分野に需要が広がっています。●自動車車関連の部品エンジン(ヘッドカバー、シリンダー、クランクケース、オイルパン)、トランスミッション(トランスミッションケース、バルブボディ、トランスファーケース)●自動車関連車以外の製品玩具(ミニカー)、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、掃除機、DVDプレーヤー、HDヘッドフォン、ミシン)、事務用品(パソコン、タブレット、プリンター、コピー機、ファックス)、日用品(カメラ、装身具、釣り具)ダイカストと鋳造の違い鋳造は金属を高温で溶かし、液状にして型に流し込む工法で、ダイカストはこれを発展させた工法です。大きな違いは圧力をかけて金属を型枠に流し込むかどうかのみですが、それだけで仕上がりの精度や表面の滑らかさ、形状の複雑さなど、さまざまな面で優れた部品の製造が可能になります。まず、砂型を使用する鋳造は製造の都度型を作る必要がありますが、ダイカストは金型を使用します。そのため、初期費用は鋳造の方が安く、ダイカストは高額になります。その分、鋳造は小ロットから中ロット向き、ダイカストは大量生産向きとなっています。さらに、加工時間や精度も鋳造に比べてダイカストの方が高くなります。また、鍛造をはじめとする強度の高い工法に比べると、鍛造、ダイカストともに強度は弱めです。そのため、サイズや形状、費用、ロット数などの条件に応じて工法を選ぶ必要があります。

  • 砂型鋳造とは?工程、メリット・デメリット、型の種類、製品例

    鋳造とは、鋳型に溶けた金属を流し込んで成型する手法です。鋳造でできた製品を鋳物と呼びます。鋳物は、鋳鉄・鋳鋼・アルミニウムなど対応する材料が多く、用途に応じて使い分けることが可能です。溶かした金属を利用して成型を行うため、鍛造や切削加工に比べて複雑な形状の製品を安く量産できます。鋳造には、砂型鋳造・ダイカスト・ロストワックス鋳造・消失模型鋳造など、さまざまな製造法がありますが、今回は砂型鋳造の基本知識について解説します。参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説砂型鋳造とは引用元:コンサルソーシング株式会社 鋳造・ダイカストとは~その種類・特徴と工程管理のポイント砂型鋳造とは、砂を材料とした型である「砂型」を使った鋳造方法です。砂型は、「原型」と呼ばれる、砂型を作るための木型や金型の模型と、砂型を収めるための「型枠」を使って用意します。砂型は上と下の型に分かれており、それらを組み合わせて鋳型を作ります。そのため、原型となる模型も、基本的に上と下型で別々に用意している場合がほとんどです。模型は一度用意すれば繰り返し使用可能で、同じ形状の製品を作る場合は、再利用されます。一方で砂型は、一度使って製品を作ると、中身の鋳物を取り出すために壊さなければなりません。そのため砂型鋳造では、同じ形状の製品を作るたびに、模型を繰り返し使って新しく鋳型を用意する必要があります。砂型鋳造で用いる材料は、溶解できる金属であれば使用できます。鉄系の材料の場合は、炭素量の違いにより鋳鋼と鋳鉄に分類されます。鋳鋼は、炭素量が2.1%以下と少ない材料で、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れています。鋳鋼はさらに細かく分けると「合金鋼鋳鋼」「炭素鋼鋳鋼」があります。鋳鉄は、鉄・炭素・ケイ素を主成分とした材料で、炭素を2.1%以上含みます。鋳鉄は鋳造性や強度に優れているのが特徴です。砂型鋳造のメリット・デメリットメリット●木型の模型だとコストが安く済む鋳造は原型を作るのにコストがかかりますが、砂型鋳造で用いる木型は金型に比べてコストが安く済ませられます。●複雑な形状の製品でも成型できる砂型鋳造は、溶かした金属を鋳型に流して固める手法のため、複雑な形状の製品でも成型が可能です。製品に空洞がある場合でも、「中子」とよばれる砂型部品を使えば成型できます。引用元:三共ワシメタル株式会社 砂型鋳造製法上図は牛乳ビンのような形状の製品を鋳造している例です。中子を用いると、中子の部分に溶かした金属が充填されなくなり、牛乳ビンのような中空のある製品でも成型できるようになります。砂型をばらした際、中子も一緒に破壊することで空洞の部分ができあがります。●大きな形状の製品にも対応できる砂型鋳造は、対応する設備さえあれば、大きな製品にも対応が可能なので、製品形状の自由度が高い特徴があります。デメリット●寸法精度に乏しい砂型鋳造は型枠に砂を込めて固める手法ですが、上下の型を組み合わせた際に、型同士のズレが発生したり、溶かした鋳鉄が凝固した際に収縮したりするため、寸法精度に乏しいデメリットがあります。また、鋳肌は梨地のように粗いので、綺麗な面を得たい場合は機械加工する必要があります。ただし後述するシェルモールドでの鋳造では、寸法精度が得られます。●木型の模型が耐久性に乏しい木型は繰り返し利用することができますが、耐久性が乏しく、何度も使用していると摩耗したり傷が付いたりして、製品に悪影響を及ぼしてしまいます。生産数の多い製品の場合は、耐久性の高い金属製の模型を使う場合があります。●鋳巣や湯回り不良などのトラブルがある鋳造では、ガスや空気の巻き込みにより、製品内部に穴ができてしまう「鋳巣」や、溶けた金属が鋳型の中に充填しきれずに欠けや薄肉ができてしまう「湯回り不良」などのトラブルが発生する場合があります。●ランニングコストが高い砂型鋳造は、ひとつの製品を作るごとに毎回砂型を破壊しなければならないため、ランニングコストが高い傾向にあります。砂型鋳造の工程・手順引用元:アイアール技術者教育研究所 【生産技術のツボ】砂型鋳造の基本を速習!鋳造工程、砂型の種類(生型/シェルモールド)などを解説ここでは、生型を使った砂型鋳造の工程について、順を追って解説します。1.模型製作砂型鋳造のうち生型と呼ばれる種類は、主に木型を使って模型を作ります。ただし製法の種類や用途によっては、金属製の模型を作る場合もあります。主に1つの製品を作るには、模型を上型と下型用で別個用意する必要があります。2.鋳込み模型を底盤にセットして型枠で囲み、鋳物砂を鋳込んで固めます。3.模型の取り出し木型の模型を砂型から取り出します。木型は再び砂型鋳造する際、繰り返し使用できます。4.砂型の組付け砂型は、上型と下型で別々に作られますが、鋳造をするにはそれらを組付ける必要があります。製品内部に空洞のある製品は、中子も一緒に組付けます。5.溶湯の流し込み組付けた砂型にある湯口に溶湯を流し込んで成型します。溶かした金属は「溶湯(湯)」とは溶かした金属のことで、「湯口」は溶湯を流し込む専用の穴のことを指します。6.冷却・凝固砂型の内部で溶湯を溶かします。7.砂型のばらし砂型をばらして鋳物を取り出します。8.不要部をカット砂型から鋳物を取り出した際に出る、湯口・ガス抜き口などにある不要部や、上型と下型の接続部などに出るバリを除去します。砂型の種類砂型鋳造は、複数の製造法がありますが、ここでは代表的な種類である「生型」と「シェルモールド」の2つについてご紹介します。生型生型は、「砂型鋳造の工程・手順」にて解説したような手順で鋳造する手法を指します。鋳物砂を乾燥させず、生のまま鋳造する手法から「生型」と呼ばれています。生型で用いる鋳物砂は、骨材としてのケイ砂、粘結剤のベントナイト、その他の添加物などから構成されています。ケイ砂は、天然産出で優れた耐熱性を有しており、入手が比較的簡単なことから、鋳物作りにおいて古くから利用されています。ベントナイトは粘度岩の一種で、水を加えることで粘結力が得られます。模型は木型が採用されていることが多いですが、成型することの多い製品では、模型の耐久性が求められるため、金属製の型を用いる場合もあります。シェルモールドシェルモールドは、加熱した金型の上にレジンサンド(細かいケイ砂に熱硬化性のフェノール樹脂の粉末を5%程度混ぜた砂)を粘結剤とした鋳物砂を吹き込み、硬化させる手法を指します。シェルモールドで作られた鋳型は、薄くて貝殻状であることから、「シェルモールド」と呼ばれています。シェルモールドは、生型に比べて寸法精度が高く、小型や薄肉の製品を作るのに適しています。また、中子を使った複雑な形状の成型にもぴったりです。砂型鋳造の製品例砂型鋳造は、自動車部品・各種構造物・建設機械部品・鉄蓋・グレーチング・車止めなど、幅広い分野で採用されています。砂型鋳造は金属材料を使い分けることで、複雑な形状でありながらも、各種類の特性を活かした製品を成型できるのが強みです。

  • Mitsuri|金属加工

    金属加工の脱脂の基礎知識

    脱脂は、その名称の通り、油を取り除くことです。金属加工では、多くの場面で油を使用するため、油分を除去する方法は極めて重要視されています。特に、錆びやすい鉄鋼などに対しては、必ずと言ってもいいほど、めっきや塗装などで表面をコーティングしますが、油分が残留しているとキレイにコーティングすることができないため、その前処理として脱脂を行うことが必要不可欠なのです。この記事では、この脱脂についてご紹介していきます。また、キレイにしたい素材によって脱脂の行い方が異なるため、方法についても詳しく解説していきます。脱脂とは脱脂とは、金属の表面に付着した油脂分を取り除く処理のことです。汚れなどの取り除く洗浄も兼ねることから、「脱脂洗浄」とも呼ばれます。金属加工では、めっき・塗装といった表面処理前の下地処理として実施されるほか、製品出荷前の洗浄処理として行われることがあります。参考:【表面処理の種類と特徴】処理方法、用途、適した材質についても解説これらの処理において、脱脂は数工程に分けて実施されますが、脱脂だけでなく、錆・汚れなどを除去する「酸洗」や、脱脂・酸洗で利用した薬品などを水・湯で洗い流す「水洗」なども併せて行われます。例えば、めっきの前処理では、「本脱脂」と「仕上げ脱脂」のように、脱脂を2工程実施するのが一般的です(下図参照)。ただし、油脂分が特に多量に付着している場合は、「予備脱脂」を本脱脂の前に行うことがあります。なお、下図中の「中和」は、仕上げ脱脂で用いたアルカリを中和すると同時に、仕上げ脱脂で形成された薄い酸化皮膜を除去する工程です。脱脂処理の必要性金属加工において脱脂処理が必要なのは、加工の過程で様々な油を使用するため、加工物への油脂分の付着が避けられないからです。金属加工で使用する油は、例えば以下が挙げられます。●機械作動油…工作機械などの機械全般の作動を潤滑にするために用いられる油のこと。機械内の歯車・軸受・油圧装置・摺動面などの接触面に供給することで、摩擦を抑えて消耗を防ぐとともに、動作を滑らかにする。●切削油…切削加工時に、加工物と工具との間へ供給する油のこと(下図参照)。加工物と工具との間の摩擦を抑える潤滑や、加工物と工具の双方に生じる切削熱を奪う冷却、加工物から発生する切り屑を取り除く洗浄などのために用いられる。参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット引用元:お役立ち情報「切削油剤の基礎とよくある質問」長岡石油株式会社●研削油…研削加工時に、加工物と砥石との間に供給する油のこと。加工物と砥石との間の摩擦を抑える潤滑や、加工物と砥石との間に発生する摩擦熱を奪う冷却、加工物から生じる切り粉や砥石から生じる砥石屑を取り除く洗浄などのために用いられる。●プレス油…プレス加工の前に、加工物へムラなく均一に塗布する油のこと。プレス加工時の加工物と金型との間の摩擦を軽減する潤滑油として用いられ、加工物や金型にキズや割れ、焼き付きなどが発生するのを防止する。●熱処理油…鉄鋼材料の焼入れや焼戻し、焼鈍し、焼ならしの際に、冷却剤として用いられる油のこと。●防錆油…調達した鉄鋼材料に塗布されていたり、鉄鋼製の原材料や仕掛品、半製品、完成品に塗布したりする油のこと。一時的な、または長期間の錆止めに用いられる。これらの油脂分は、めっきや塗装といった各種の表面処理を実施する際に、めっき液や塗料を弾いて処理を妨害したり、めっき膜や塗膜の密着性を低下させたりするほか、皮膜自体の物性をも損ないます。参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!また、完成品についても、一部防錆油を塗布するなどして出荷する製品もありますが、油脂分や汚れなどが付いていない清浄な製品を出荷するのが一般的です。そこで必要となるのが、油脂分を除去する脱脂処理です。この脱脂処理のほか、酸洗処理や水洗処理なども併せて行うことで、加工物の表面を清浄にし、表面処理や出荷に適した状態にするのです。脱脂の方法の種類脱脂の方法は、物理的方法と化学的方法に分類することができ、それぞれ多くの種類があります。物理的方法物理的方法は、金属表面から異物である油脂や汚れなどを直接的に除去する方法です。●ウェットブラスト法ウェットブラスト法は、圧縮空気によって、水と研磨材の混合液を噴射することで、金属表面を脱脂洗浄する方法です。油脂や汚れなどを、微細な研磨材で削り取ると同時に、噴射される水で洗い流します。金属表面に梨地模様を形成するブラスト加工と脱脂洗浄処理を同一工程で実行できることから、ブラスト加工を行う際の工程削減を目的によく採用されます。参考:ブラスト仕上げとは?用途、特徴、メリット・デメリット●高圧液噴射法高圧液噴射法は、高圧ポンプによって、圧力を高めた洗浄液を噴射することで、金属表面に付着した油脂や塩分、泥汚れなどを除去する方法です。洗浄液には、水・湯のほか、溶剤が使用されることもあるので、化学的方法を兼ねる場合もある脱脂法です。●蒸気洗浄法蒸気洗浄法は、蒸気発生機によって発生させた蒸気を洗浄槽内に充満させて、低温の対象物を蒸気にさらし、対象物の表面で蒸気を液化させることで、金属表面を脱脂洗浄する方法です。蒸気には、水のほか、溶剤が使用されることもあります。油脂や汚れを蒸気で浮かせて落とす方法であるため、対象物が複雑な形状でも精密に脱脂洗浄を実行できます。しかし、凝り固まった油脂や汚れに対する洗浄性は、高圧水噴射法と比べると劣ります。●超音波洗浄法超音波洗浄法は、対象物を浸漬した洗浄液中に超音波を伝播させて攪拌することで、油脂や汚れなどを除去する方法です。ただし、洗浄液が水だけでは、金属加工の過程で付着する油脂分をほぼ除去できません。洗浄液には、有機溶剤やその他の洗浄剤などを付着している油脂に合わせて選定する必要があります。●加熱法加熱法は、対象物が焼結材や鋳造材などの多孔質材料の場合に、対象物を加熱することで、内部まで浸透した油脂分を溶出して除去する方法です。化学的方法化学的方法は、金属表面の油脂や汚れなどを溶解や乳化、鹸化などの化学反応を利用して除去する方法です。●溶剤脱脂溶剤脱脂は、金属表面の油脂分を溶剤に溶かすことで脱脂洗浄する方法です。多量に付着している油脂分を除去できる方法ですが、油脂分を薄めるだけで、完全に除去できるわけでないため、主に予備洗浄として使用されます。溶剤の種類には、ハロゲン系(塩素系・臭素系・フッ素系)や炭化水素系、水・準水系があります。ただし、下表のように性質が異なることから、金属の材質や油脂・汚れの種類などに応じて選定します。<溶剤の系統ごとの性質>溶剤の系統脱脂力乾燥性引火性可燃性毒性環境負荷再生利用ハロゲン系強い良い無し無し高い大きい可能炭化水素系強い普通有り有り低い普通可能水・準水系弱い悪い無し無し低い小さい不可能また、溶剤脱脂は、上述の物理的方法と併用されることが多く、溶剤の使用方法は、以下のように多様です。・浸漬…溶剤を入れた洗浄槽に対象物を浸漬する方法。溶剤は通常、加熱して温液としたものを使用する。また、溶剤を流動させたり、対象物を回転・振動させたりして、洗浄性を向上させた方法もある。・高圧噴射…高圧にした溶剤を対象物に噴射する方法。・蒸気洗浄…蒸気にした溶剤に対象物をさらす方法。・超音波洗浄…溶剤を入れた洗浄槽に対象物を浸漬し、超音波を伝播させて攪拌する方法。●エマルジョン脱脂エマルジョン脱脂は、炭化水素系溶剤に水と界面活性剤を添加したエマルジョン溶液へ対象物を浸漬することで脱脂洗浄する方法です。ここでの、エマルジョン溶液とは、水が界面活性剤の効果によって、油(溶剤)中に分散した溶液のことです。エマルジョン脱脂では、炭化水素系溶剤の効果によって油脂分を溶解するとともに、エマルジョン溶液中に分散した界面活性剤が水溶性油や水性汚れに吸着し、これらを対象物から浮き上がらせることで除去します。エマルジョン脱脂は、多様な種類の油脂分や汚れを効果的に取り除くことができるというメリットがありますが、排水処理の負担が大きい脱脂方法です。主に予備洗浄に採用されます。●アルカリ浸漬脱脂アルカリ浸漬脱脂は、対象物をアルカリ性の水溶液に浸漬することで脱脂洗浄する方法です。その脱脂液には、多くの場合、界面活性剤も含有します。様々な種類の油脂分を強力に脱脂できることから、本脱脂として採用されることが多い脱脂方法です。アルカリ浸漬脱脂では、アルカリと油脂とが結合し、水溶性の石鹸となることで脱脂が起こります。この石鹸自体も、界面活性剤として機能し、対象物に付着した油脂に吸着して引き剥がし、水溶液中に分散します(下図参照)。さらに、分散した油脂は、乳化(エマルジョン化)して可溶化することから、再付着することもありません。引用元:小特集:ものづくりを支える洗浄技術(I)「塗装前処理における脱脂工程について」国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)アルカリ浸漬脱脂で使用される脱脂液は、水酸化ナトリウムやリン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩などを主成分としますが、そのほかに、界面活性剤やキレート剤、消泡剤などを含有します。なお、キレート剤は鹸化・乳化作用を安定化、消泡剤は脱脂不良を防止する効果があります。また、脱脂液は、一般的にアルカリ度が高く、温度が高いほど、脱脂力が強い傾向があります。しかし、非鉄金属に対しては、脱脂液のpH値が高過ぎる(アルカリ性が強過ぎる)と腐食させてしまうため、単純に脱脂力を強くすれば良いというわけではありません。加えて、脱脂液の温度が高過ぎると、界面活性剤の脱脂力が低下することがあるので注意が必要です。このように、脱脂液は、金属の材質によって、その組成や条件(pH・温度)を変えて使用します。下表は、主要な金属材料の脱脂に用いられる脱脂液の成分組成・条件例です。<主要な金属材料に対するアルカリ脱脂液の成分組成・条件例>成分名鉄鋼銅合金亜鉛合金アルミ合金化学組成 (g/L)苛性ソーダ(NaOH)20~500~10--炭酸ソーダ(Na2CO3)20~5020~5010~2010~20メタケイ酸ソーダ(Na2SiO3)20~5020~5010~300~5第三燐酸ソ-ダ(Na3PO4)-10~20--トリポリ燐酸ソーダ(Na5P3O10)--5~105~10グルコン酸ソーダ(C6H11NaO7)2~52~50~5-界面活性剤0.6~1.51.0~2.01.0~2.01.0~2.0条件項目条件pH12以上11前後11前後11前後温度60℃以上50~70℃50~70℃50~60℃参照元:商品のご案内 > 表面処理 > 工程 > 脱脂剤 > 浸漬「脱脂剤」三明化成株式会社●アルカリ電解脱脂アルカリ電解脱脂は、脱脂対象となる金属を陰極あるいは陽極として電流を流し、アルカリ水溶液を電気分解することで、金属表面を脱脂洗浄する方法です。電解液は、アルカリ浸漬脱脂と類似の溶液を使用し、アルカリを主成分とする、界面活性剤などが添加された水溶液です。アルカリ電解脱脂では、アルカリ浸漬脱脂の効果に加えて、電気分解により、電極とした対象物から発生する水素ガスあるいは酸素ガスによる表面撹拌の作用で油脂や汚れを除去します(下式参照)。さらに、これらのガスは、表面の微小な穴や割れなどの中にまで入り込むため、油脂や汚れの精密な除去が期待できます。アルカリ電解脱脂の最大の特徴は、脱脂洗浄が強力かつ精密であるということです。そのため、めっきの前処理などの確実な洗浄を求められるケースでは、仕上げ脱脂によく採用されます。しかしながら、パイプの内部など、電流が通じにくい部分の脱脂洗浄は不得意です。また、金属の材質に合った方法を選択しないと、表面に不純物が付着したり、表面強度の低下を招いたりすることがあるので注意が必要です。アルカリ電解脱脂は、脱脂対象の金属を陰極にするか、陽極にするかで、脱脂方法が陰極電解脱脂法と陽極電解脱脂法に分かれます。陰極電解脱脂法は、脱脂対象の金属を陰極にして通電し、その対象金属から発生した水素ガスを利用して脱脂洗浄する方法です(上図参照)。水素ガスは、酸素ガスの2倍量発生するため、撹拌効果が高く、脱脂洗浄力が高くなっています。水素の還元作用による錆の分解効果も期待できます。しかし、高炭素鋼に対しては水素脆化を引き起こすことがある上、脱脂液に金属イオンが溶解している場合は電解の効果で金属が析出する場合があります。非鉄金属の電解脱脂によく採用される方法です。一方、陽極電解脱脂法は、脱脂対象の金属を陽極にして通電し、その対象金属から発生した酸素ガスを利用して脱脂洗浄する方法です(上図参照)。酸素ガスによって、油脂や汚れを酸化分解して除去します。酸素ガスなので、当然水素脆化は起きません。金属をも溶解するため、通常は酸洗工程で除去するスマット(無機物を含む汚れ)も取り除くことができます。しかし、その反面、材質によっては金属表面の溶解反応が促進されて、表面を荒らすことがあるので注意が必要です。また、長時間適用すると、酸化皮膜が形成されてしまうため、後工程で酸による活性化(中和)などが必要となります。また、近年においては、対象金属の極性を陰極と陽極とで交互に切り換える方法も使われています。この陰極電解脱脂法と陽極電解脱脂法とを併用するアルカリ電解脱脂法は、PR電解脱脂法と呼ばれ、それぞれの長所と短所を平均化した方法として活用されています。

  • 型鍛造とは?特徴、メリット・デメリット、製品例

    今回は型鍛造の特徴、メリット・デメリット、製品例について解説します。鍛造とは、金属の塊に圧力をかけて目的の形に成形する加工方法です。鍛造は日本で古くから活用されており、高い強度を必要とする農具の鋤や日本刀といったものを作るのに採用されていました。鍛造には大きく分けて「型鍛造」「自由鍛造」の2種類があります。今回ご紹介する型鍛造は、専用の金型を用いて金属材料を成形する手法で、自由鍛造とは異なる特徴があります。参考:【鍛造加工とは?】加工方法や種類、歴史について1から解説します!参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説参考:【第3回】鍛造加工で使用する機械・道具とは?昔ながらの工具から最新機械までご紹介!型鍛造とは?型鍛造とは、別名「型打ち鍛造」とも呼ばれる手法で、専用の金型を用いて鍛造を行うことを指します。金型は上下で一対の構造になっており、間に金属材料を入れて圧力をかけ、成型を行います。参考:【金型製作】金型の種類と基礎や流れについて徹底解説!!型鍛造は、さらに細かく分けると「密閉鍛造」「半密閉鍛造」「閉塞鍛造」「中空鍛造」の4つがあります。●密閉鍛造引用元:株式会社イプロス Tech Note 鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?:鍛造加工の基礎知識1密閉鍛造は、上下の型に隙間なく材料を閉じ込めて成形する手法です。バリが出ないので、除去する工程を省くことができ、製造時間の短縮と材料費を削減できます。●半密閉鍛造引用元:株式会社イプロス Tech Note 鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?:鍛造加工の基礎知識1半密閉鍛造は、上下の型に材料を閉じ込めて成形を行いますが、目的の形状から余分に材料をはみ出させて鍛造する手法です。こうすることによって、型内に材料を充満させられるほか、余分な体積をバリとして逃すことができます。しかし、バリを後工程にて除去する必要があります。●閉塞鍛造引用元:鍛造事典 鍛造の種類Ⅰ(金型および変型方式・加工温度)閉塞鍛造は、上図のように上下の型に材料を閉じ込めたあと、パンチで押し込み圧力をかけて、型全体に流動させる手法です。パンチの形状や数によって複雑な形状を成形することもできます。●中空鍛造引用元:鍛造事典 鍛造の種類Ⅰ(金型および変型方式・加工温度)中空鍛造は、上図のように上下の型に材料を閉じ込めて、成型ピンを挿入することで、中空形状を成形する手法です。成型ピンは横からだけでなく、上下からも挿入させれば、より複雑な形状にすることもできます。また、鍛造には「熱間鍛造」「冷間鍛造」「温間鍛造」「半溶融鍛造」といった材料の加熱温度による違いもあります。●熱間鍛造熱間鍛造は、金属が再結晶する温度(約1200℃程度)に熱してから行う鍛造法です。高温に加熱することで金属が柔らかくなるほか、金属の結晶が正常に変化します。熱間鍛造は、複雑な形状でも強度を確保しやすいメリットがあります。●冷間鍛造冷間鍛造は、常温で行う鍛造を指します。金属が硬い状態のまま加工を行うため、高い精度が得られますが、成形するために高い圧力を必要とします。●温間鍛造温間鍛造は、熱間鍛造と冷間鍛造の間(一般的に300~800℃程度、1000℃まで拡大することも)で行われる鍛造を指します。冷間鍛造では成形が難しい複雑な形状の加工や、高硬度の材料にも対応が可能です。●半溶融鍛造半溶融鍛造は、鍛造と鋳造(溶融させた金属を成型する工法)の間のような手法で、主に車のアルミホイール成型などで採用されています。材料を半凝固状態で加圧して成形を行うため、鋳造のように自由な形状が作れるほか、鋳造で問題となる巣ができにくく、鍛造のように強度も得られます。参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説型鍛造の特徴型鍛造は、目的の製品に合った専用金型を使って成形する鍛造のため、同じ形状の製品を大量生産するのに適しています。専用金型での成形は寸法精度が高く、短時間で成形できるのもポイントです。型鍛造に限らず、自由鍛造にも共通している特徴は、「鍛流線」と呼ばれる金属組織の流れが形成されることで、金属材料が機械的性質が向上する点にあります。これにより、切削加工や鋳造で作られた製品に比べて耐久性が高く、肉厚を薄く作ることもできます。ただし型鍛造は、専用金型を作るのに初期費用がかかるので、小ロットの生産には適していません。型鍛造のメリット・デメリットメリット●材料を節約できる。型鍛造は、完成形状に近いものを成形するため、後工程で除去する金属の量が少なく済みます。これにより無駄になる材料が少なく、材料費の節約が可能です。後加工にかかる時間も削減できるので、作業効率の向上も期待できます。●内部欠陥のない成形が可能。型鍛造は、鋳造と違って内部欠陥がなく製品を成形できるほか、圧力が加えられることで金属の結晶粒が細かくなり、耐久性を向上させられます。●鍛流線の形成により、機械的性質が向上する。鍛造で作られた製品は、切削加工や鋳造で作られたものと違って「鍛流線」と呼ばれる金属組織の流れが形成されます。鍛流線が形成された金属は、硬さ・引張強度などの機械的性質を高められます。●専用金型を使った大量生産が可能。型鍛造は、目的の製品を作るために専用金型を用意します。専用金型はひとつの製品を作るのに使いまわしが効くほか、素早くに成形できるので大量生産に適しています。●自由鍛造よりも高い寸法精度が得られる。型鍛造は、専用金型による成形のため、ハンマーで叩くなどして成形する自由鍛造に比べて高い寸法精度が得られます。デメリット●専用金型の製作にコストがかかる。型鍛造は、専用金型を要するため、自由鍛造に比べて初期コストがかかります。金型の設計・製作に時間もかかるので、少ロットの生産には不向きです。●自由鍛造に比べて歩留まりが落ちる。型鍛造は、半密閉鍛造のようなバリが出る手法の場合は、後加工で除去する必要があるので、自由鍛造に比べて歩留まりが落ちるデメリットがあります。型鍛造の製品例型鍛造は、専用金型に金属材料を入れて成型する手法のため、自由鍛造に比べて小型部品や量産品を製造するのに適しています。型鍛造で作られている製品は、主に以下の製品が挙げられます。・ベアリング、フック、ボルトなどの工業製品・レンチ、スパナ、ペンチなどの工具類・クランクシャフト、コネクティングロッドなどの自動車部品・電車や航空機などに用いられる部品・ナイフ、フォーク、スプーンなどのカトラリー類・ハサミ、爪切りなどの日用品型鍛造の工程型鍛造の基本的な工程は以下の通りです。1.材料の切り出し2.材料の加熱3.鍛造4.バリ取り・表面処理型鍛造では、始めに金属の塊から材料の切り出しを行います。材料のサイズは専用の金型に合うように切り出します。加工用の寸法に切り出された金属の塊は「ビレット」と呼ばれます。次にビレットを加熱して金属を成形しやすくします。そのあと、加熱したビレットを専用金型に入れて成形します。始めに使う型は粗型で、最終形状に近いおおよその形状を作ります。次に仕上げ型を用いて精度の高い寸法に仕上げます。鍛造した製品はバリ処理や表面処理などを行い、製品が完成します。自由鍛造との比較鍛造は、専用金型を使用する「型鍛造(型打ち鍛造)」と、専用金型を使用しない「自由鍛造(フリー鍛造)」に大別されます。<型鍛造と自由鍛造の比較表>適したロット数金型にかかるコスト製品精度型鍛造多数高価高自由鍛造少数安価並型鍛造は、専用金型を使った鍛造で、製品を素早く成形できるほか、金型を使いまわせるので大量生産に適しています。また、高い寸法精度が得られるのも特徴です。しかし金型を作るため、初期コストが大きくかかります。自由鍛造は、専用金型を必要とせず、汎用金型とハンマーなどで鍛造を行う手法です。初期コストがかからないため、小ロットの製品に適しています。しかし、ひとつの製品を作るのに時間がかかるため、大量生産には適していません。精度も型鍛造と比べると劣ります。参考:自由鍛造とは?特徴、製品例、メリット・デメリット

  • 自由鍛造とは?特徴、製品例、メリット・デメリット

    今回は自由鍛造の特徴や製品例、メリット・デメリットについてご紹介します。鍛造とは、金属を叩いて鍛えることから名付けられており、日本でも刀などの製造で古くから活用されている手法です。鍛造には、大きく分けて「自由鍛造」と「型鍛造」の2種類があります。自由鍛造は、金敷の上で金属材料をハンマーなどで叩いて成形する手法で、金属内部の結晶が整い、強い金属が得られます。参考:【鍛造加工とは?】加工方法や種類、歴史について1から解説します!参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説参考:【第3回】鍛造加工で使用する機械・道具とは?昔ながらの工具から最新機械までご紹介!自由鍛造とは?自由鍛造とは、専用の金型を必要とせず、ハンマーやプレスで金属材料を叩いて成形することで、別名「フリー鍛造」とも呼ばれています。自由鍛造は、熱間加工の一種で、金敷に金属材料をのせて、据込み・鍛伸・展伸・穴あけ・穴広げ・中空・背切り・せん断などの作業を行い、目的の製品へと成形します。鍛造は、温度で見た場合、主に冷間鍛造・温間鍛造・熱間鍛造の3つに分類されます。冷間鍛造は、熱を加えずに圧力だけで加工する手法です。精度に優れていますが、高い圧力が必要なほか、使用する工具や金型は高い剛性を必要とします。温間鍛造は、材料を常温以上(一般的に300~800℃程度、1000℃まで拡大することも)に加熱して鍛造を行う手法です。冷間鍛造では成形が難しい製品の加工や、熱間鍛造よりも高い精度を得たい場合に採用されています。熱間鍛造は、金属が再結晶する温度(約1200℃程度)に加熱してから鍛造を行う手法です。金属が柔らかくなった状態で加工を施すため、より自由な成形ができるメリットがあります。ただし、温間加工は冷えるときに収縮するため、後加工が必要です。自由鍛造では、主に熱間鍛造が採用されています。自由鍛造の特徴と製品例引用元:同和鍛造株式会社 大型・自由鍛造自由鍛造は、リング・パイプ・円盤などのさまざまな形状に成形できます。自由鍛造で成形した製品は、内部欠陥がなく、優れた強度が得られるので、耐久性を要する部品に採用されていることが多くあります。以下は、自由鍛造で作られている製品の一例です。・金槌やペンチなどの工具類・スプロケットなどの産業機械部品・耕運機の爪などの農機具・クランク軸などの自動車・船舶用部品・包丁、フォーク、ナイフなどの台所用品・指輪などの装飾品自由鍛造のメリット・デメリットメリット●金型を作るコストが発生しない。型鍛造の場合は、専用の金型を用意する必要があります。しかし自由鍛造では、既存の汎用的な金型を用いて成形するため、専用金型を作るコストがかからないメリットがあります。●型鍛造では難しい大型の製品にも対応が可能。自由鍛造は、専用の金型を必要としないことから、製造が難しい大型の製品も加工できます。●歩留まりがよく、材料費と機械加工にかかるコストを抑えられる。自由鍛造では、完成品に近い形状に鍛造を行うため、歩留まりがよく、材料費を節約できます。また、機械加工にかかる時間や費用を削減できるのもポイントです。●金属の内部欠陥が発生せず、強度が向上する。鍛造は、体積移動により材料が鍛錬され、製品形状に沿った鍛流線(メタルフローライン・ファイバーフローライン)が生まれます。鍛流線とは、金属材料を鍛造した際にみられる繊維状の金属組織の流れのことです。鍛流線が得られる鍛造品は、鋳造や削り出しで製造したものに比べて、機械的性質が高められ、強度が向上します。デメリット●加工時間が長く、大量生産に不向き。自由鍛造は、ハンマーなどで1点ごとに成形する手法のため、加工時間がかかります。そのため、専用の金型で成形する型鍛造に比べて大量生産には不向きです。自由鍛造は、主に大きな製品の鍛造や、多種類の製品を小ロットで作る場合に適しています。●複雑な形状の加工は難しい。自由鍛造は、ハンマーなどで叩いて成形する手法のため、複雑かつ精度が求められる製品は難しい傾向にあります。複雑かつ精度の要求される製品を鍛造する場合は、型鍛造が適しています。●仕上がりが作業者の技術に左右されやすい。自由鍛造は、型鍛造に比べて作業者の技術に左右されやすく、製品によっては希望する精度に満たない製品にできあがる可能性があります。そのため自由鍛造を依頼する場合は、技術力と実績のある業者に依頼するようにしましょう。自由鍛造の手法自由鍛造では、さまざまな作業を使い分けることで、目的の形状に成形していきます。ここでは、自由鍛造で行われている代表的な作業の手法についてご紹介します。据込み据込みは、平行平面型を用いて上から力を加えることで、素材の高さを圧縮し、材料を横方向に広げる手法です。別名で「すえ」や「圧縮」とも呼ばれています。据込みは、「アプセット鍛造」とも呼ばれており、ボルト・釘・ピンなどの頭を成形する際に採用されます。鍛伸鍛伸は、棒状の素材を回転させながら上下から加圧することで、断面積を縮小させて、長さを得る手法です。別名「伸ばし」とも呼ばれており、主に軸部品の成形に採用されます。展伸展伸は、幅が広い工具で材料を一方向から圧力をかけて、厚みを縮小し、伸ばす手法です。別名「延べ」とも呼ばれており、包丁やブロック部品の成形に採用されます。穴広げ穴広げは、リング状の素材を穴の内側と外側とで挟んで加圧することで、リングの厚みを薄くし、穴を広げる手法です。主にリング状の部品の成形や、指輪のサイズ調整に採用されます。背切り背切りは、工具や金型を用いて材料を圧延する方法を指します。背切りを繰り返すことで、薄板状に成形できます。型鍛造との違い鍛造は、専用金型を使用する「型鍛造(型打ち鍛造)」と、専用金型を使用しない「自由鍛造(フリー鍛造)」に大別されます。型鍛造と自由鍛造は、どちらも完成した形状に近い製品が得られるので、歩留まりがよいこと、そのほかにも内部欠陥のない成形、機械的性質の向上といったメリットがあります。<型鍛造と自由鍛造の比較表>適したロット数金型にかかるコスト製品精度型鍛造多数高価高自由鍛造少数安価並型鍛造と自由鍛造の違いについては上表の通りです。型鍛造は専用金型による成形のため、ロット数の多い製品に適しています。また、自由鍛造に比べて安定した精度が得られるのも特徴です。ただし、専用金型を製作するのにコストがかかるので、小ロットの製作には適していません。自由鍛造の場合は、成形に時間がかかるため、大ロットには適していませんが、金型の製作費にかかるコストを抑えられるメリットがあります。参考:型鍛造とは?特徴、メリット・デメリット、製品例

  • 塗装とは?金属加工の塗装について解説!

    塗装と聞くと、金属をはじめとするさまざまな物に色を塗り、見た目をキレイにするイメージがありますが、それ以外にも金属をコーティングすることで保護する役割を持っています。そのため、めっきと比較されることも少なくありません。今回の記事では、塗装の特徴や種類、メリット・デメリットやめっきとの違いなどをご紹介します。金属製品を装飾したり、保護・防錆をしたりすることを目的に塗装を考えている方は、どういった種類の塗装をするのが適しているのかも含め、ぜひ参考にしてください。塗装とは塗装とは、物体に塗料を塗って塗膜を形成させることを言います。とりわけ、金属製品への塗装は、装飾に加え、コーティングによる保護を目的に用いられます。特に、錆による劣化は金属の天敵となるため、水からの保護が欠かせません。他にも、汚れや油など、さまざまなものから守るための役割を持っています。塗装の多くは常温・大気下で皮膜となる塗料を塗布することができます。一般的にはハケやローラーなどを用いて塗布する印象が強いですが、金属部品の加工にはさまざまな種類の塗装が存在しています。塗装の種類金属加工における塗装は、ただ単純に金属に色を塗れば良いというわけではありません。なぜなら、金属によって相性の良い塗装と相性の悪い塗装があるからです。もし、適切な塗装方法を選択しなかった場合、せっかく塗った塗料がすぐに剝がれてしまい、見た目が悪くなるだけでなく、目的の「保護」の役割を果たせなくなってしまう可能性があります。そのため、製品をキレイに保つためには目的に合った塗装方法を選択肢することが重要と言えます。下記は、金属加工における一般的な塗装の種類です。溶剤塗装溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に樹脂や顔料を混ぜた塗料を塗布する方法のこと。塗装の中で最もスタンダードな方法で、ハケやスプレー、ペイントローラーを使って物体に塗料を塗っていきます。溶剤塗装は他に比べて塗料が安く、製品単価を下げられるメリットがあります。ただし、有機溶剤には中毒性があり、大気汚染などの危険性があるため取り扱い方法に注意が必要です。⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!焼付塗装焼付塗装は、塗料に熱を加え揮発させることで、乾いたときに硬化し、強度を高める塗装方法のことです。皮膜を硬化させるにあたって100度~200度を超える高温にする必要があります。焼付塗装は製品と塗膜の密着性が高く、温度や湿度、風雨などに晒される屋外の環境下で高い効果を発揮できるため、自動車などのボディの下塗りにも用いられます。メラミン、フッ素、アクリルと、焼付塗装にも大きく分けて3つの種類があり、それぞれに塗装温度や硬化、安全性などに違いがあるので、目的に応じて選択が必要です。電着塗装電着塗装は、塗料が入った液体の中に加工物を入れ電気を流すことで、塗料を加工物に付着させ、塗膜を形成させる方法です。ハケやローラー、スプレーなどではムラができてしまいやすい、複雑な形状の素材にも均一な塗膜を形成させることができるほか、膜厚をはじめとする処理条件も管理しやすいため、大量生産に向いている塗装方法です。一方で、塗装をするために設備をはじめさまざまな準備が必要となるため、小ロットの生産には不向きと言えます。静電塗装静電塗装は、帯電した塗料を利用することで、静電気によって塗料が加工物に引き寄せられ、塗膜を形成する方法です。塗料を効率よく付着させることができ、均一で美しい仕上がりの塗膜になる特徴があります。一方で、高電圧の作業が必要となるため、感電や火災などの事故が発生しないよう、十分に注意しながら作業を進める必要があります。基本的には手作業よりも産業用ロボットなどを用いたライン生産方式が適しており、自動車の車体や家電、OA機器などの塗装に用いられます。粉体塗装粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気によって付着させた後、加熱溶解することで塗膜を形成する方法です。他の塗装は一般的に液状の塗料が用いられますが、それに比べてより厚い塗膜を形成しやすい特徴があります。さらに、塗料の入れ替えがしやすく、吹き付けた後、飛散した塗料を回収・再利用しやすいため、高い塗料を無駄なく活用することができます。自動車や家電製品などのライン生産に多く用いられます。塗装処理の工程塗装は主に、前処理、調合、塗布、乾燥の4ステップに分かれています。これは、溶剤塗装から粉体塗装まで、まったく異なる塗料を用いても基本的に変わることはありません。各工程において、どのような作業が発生しているのか、詳しく解説していきます。1.前処理前処理は、加工物に塗料をしっかりと密着させるための処理のこと。具体的には、材料表面の油や錆、異物などを取り除いてキレイにする作業のことです。例えば、過去に塗られていた塗装や錆をやすりなどで削っていったんキレイにする作業も前処理のひとつです。もし、前処理をしないまま作業を進めてしまうと、せっかく塗った塗料が塗装後に剥がれやすくなるなど、不具合が発生しやすくなるため、塗装後の製品をキレイなまま長持ちさせるためにも重要な工程と言えます。前処理は、研磨による機械的処理と、表面を皮膜で覆う科学的処理の2種類があります。目的や用途、加工物の状態などによってどちらをチョイスすれば良いかも変わります。2.調合調合は、塗料の準備の工程です。機能性を高めるために複数の塗料を混合したり、目的に合わせて色を調整したりするために、異なる塗料を調合することも少なくありません。また、塗装方法や作業環境に応じてシンナーの希釈剤を入れて塗料を調整することもあります。エナメルをはじめとする顔料を含んだ塗料は沈殿している場合があるため、色むらをなくすためにしっかり撹拌して使用する必要があります。また、手作業で塗料を混合する場合、比率を間違えると乾燥不良や塗膜の欠陥が出る可能性があるため、正確な作業が求められます。3.塗布塗布は、製品に塗料を付着させる工程のことです。材料に応じて塗ったり吹き付けたり、上述した塗装方法を用いて加工物に塗膜を形成させます。また、目的に応じて下塗り、中塗り、上塗りなど、複数回に分けて塗料を塗布することもあります。塗布工程は、仕上がりの見た目の美しさや均一性など、製品の品質に大きく影響するため、最も重要な工程と言えます。製品をキレイな状態で長持ちさせるためには、相性の良い塗装方法を選択し、適切に作業を進めることが大切です。4.乾燥塗料は乾燥することで塗膜の役割を果たす、いわゆるコーティングへと変化します。そのためには、常温乾燥、または加熱乾燥が必要です。常温乾燥にも、何もせずに一定期間置いておく自然乾燥と、紫外線や電子線を照射して乾燥させる方法の2種類があります。また、加熱乾燥では熱風や赤外線、電磁誘導など、複数の乾燥方法が用いられています。乾燥方法も、塗装の種類に適したカタチで行わなければ、穴があいてしまったり、硬化状態が悪かったりと、塗膜に欠陥が発生してしまう可能性があります。塗装のメリット・デメリット塗装には、めっきをはじめとする他の表面処理に比べたメリット・デメリットが存在します。●塗装のメリット・常温・大気下で塗布することができるため、汎用性が高い・塗装方法によっては現地で作業ができる・大きさに影響されにくく、大小さまざまなものに表面処理を施すことができる・金属だけでなく、ガラスやセラミック、木材などにも塗布できる・方法や塗料の種類が多いため、選択肢が多い・塗装の膜厚を薄いものから厚いものまである程度調整できる・塗り直しができる・めっきに比べてコストが安い●塗装のデメリット・製品と塗膜の密着性が他の表面加工に比べて高くない・作業者のスキルによって表面にムラが発生しやすい・めっきに比べると強度が低く、損傷しやすい・めっきに比べて剥がれやすい塗装とめっきの違いメリット・デメリットから見ても分かるように、塗装は処理方法や効果の関係上、めっきと比較されがちです。これは、塗装とめっきがいずれも表面に膜を形成し、装飾性を高めつつ、加工品を保護する役割を持っているからです。塗装に比べてめっきの方が高価な分、保護効果が高く長持ちします。一方、塗装はめっきに比べて剥がれやすい、損傷しやすいなどのデメリットはあるものの、塗り直しによって保護効果を再度高めることができるため、メンテナンスを加えることで長持ちさせることが可能です。また、めっきは取り扱う金属の種類やサイズ、環境などによって対応できない場合があり、塗装ほど汎用性に優れていません。それぞれの特徴を詳しく理解した上で、どちらをチョイスした方が良いか判断したい場合は、下記記事でより詳しい情報をチェックしておきましょう。⇒めっきと塗装の違いは?それぞれの特徴、めっき塗装に関しても解説!

  • Mitsuri|金属加工

    金属加工の塗装の依頼方法のコツ!

    過去の記事で、各塗装方法の特徴、メリット・デメリットを解説してきました。※気になる方は、こちらの記事をご覧ください。こちらの記事では、実際に工場へ塗装を依頼する方法と、NG例を紹介します。【6分でわかる】塗装の依頼方法工場さんに塗装をお願いするときのコツを簡単に動画で解説しています!6分程度でサクッと見れるので、お時間が無い方はぜひご覧ください!YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください!一言で「塗装」と依頼するだけでは見積がつきません。下記の項目を埋めて、初めて見積や加工ができるようになります。①どの製品に塗装するのか図面を用意する②個数③色を指定④艶の具合⑤塗装方法 ※指定なしでもOK⑥用途①製品の図面を用意するサイズ・形状・材質がしっかり記載された図面を用意しましょう。サイズ・形状により、用意する塗料の量が変わります。材質により、塗装金額が変わる場合もございます。また、塗装する際は吊り下げて塗装をすることが大半です。必ず吊り穴となる穴があるように設計しましょう。穴のない製品で塗装を依頼すると、工場から吊り穴の追加をお願いされることが大半です。必ずチェックしましょう!②個数個数が多ければ多いほど製品1個あたりの塗装費は安くなります。さらに、用意するべき塗料の量も左右されるため、必ず記載しましょう。③色の指定塗装できる色は様々で、原色のものもあれば調色してご希望の色に合わせることもあります。「黒」や「白」というオーダーであればわかりやすいのですが、「緑」というオーダーであれば、工場も困ってしまいます。例えば「緑」という色でもこのように様々な「緑」があります。どの「緑」かわかるように、予め色を細かく指定しましょう。色の指定方法は大きく4つあります。マンセル値で指定マンセル値は、数字とアルファベットで色を表しています。R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)、と基本の5色相とその中間色で計10色相をアルファベットで表します。中間色とはYRの場合はR(赤)とY(黄)の中間になるので、オレンジになります。各色相は、主に2.5、5、7.5、10と数字を刻みます。5Bあたりにつきましては、青緑色になっており、一般的に青と想像できる色とずれていますのでご注意ください。また、明度と彩度も数字で表します。明度は黒を0、白を10として11段階に分割しています。しかしながら、完璧な黒、完璧な白は再現できないため、0や10はなく、最も暗い黒で1.0、最も明るい白で9.5になります。彩度は鮮やかさを0から14程度までの数値で表します。白や黒といった無彩色に近い、色味の薄い色ほど0に近く、鮮やかな色ほど数値が大きくなります。最も鮮やかな色の数値は色相によって異なり、赤は14〜16程度ありますが、青は8程度になります。ご希望の色の数値を確認したい場合は、マンセル値測定器を使うか、色見本から選択してみてください。通称:「日塗工」の色見本帳から色を選択する「日塗工」とは、一般社団法人日本塗料工業会の通称です。色見本帳を見ながら色を選択できます。「色票番号」という各色をアルファベットと数字で組み合わせた番号で色を指定します。1995年を境に色票番号の表記ルールが変わっています。現行の番号と表記が違う場合はご注意ください。色見本帳は2年毎に最新版が発行されています。こちらのページを書いた2022年4月ですと、最新版は2021年版になります。また、色見本帳の有効期限は3年と設定されています。塗料の色にも色見本帳の色にも経年劣化があり、数年経てば原色を保っていることがありませんので、色の打ち合わせは最新版でのお話をおすすめします。参考:一般社団法人 日本塗料工業会色見本サンプルを工場に送るすでに塗装されたものを塗装工場に送り、同じような色に調色してもらえるよう塗装を依頼できます。サンプルは見積依頼をする際に同意を得る前に送るのではなく、必ず工場の同意を得てから小さいサイズのものを送りましょう。色にこだわりがない場合は…こだわりがない場合は、こだわりがない旨を伝えましょう。ある程度色の希望を伝えつつ、下記のように伝えてみましょう。例)「白に近い色であれば大丈夫です。」「鮮やかな青でお願いします。塗料はあり合わせのもので大丈夫です。ない場合は原色の青でお願いします。」色の希望もない場合は、白・黒・ベージュから選択してみましょう。この3色は、よく塗装される色です。そのため、塗料を在庫している可能性が非常に高いです。都度塗料を調達する必要がなくなる可能性が高いため、塗装費が他の色と比べて安価になる可能性が高いです。どの色の指定方法も厳密にいえば、色の差が発生してしまいます。複数の部品を塗装し、組付けして、色のわずかな差が気になるようでしたら、塗装のみ同じ塗装工場へ出せるように手配するのがオススメです。④艶の具合色を選択したら次は艶です。艶の具合は、艶あり・艶なし・半艶(五分艶)・〇分艶と指定します。艶の有無は塗料に艶消し剤を入れて作っていきます。そのため、艶ありより艶なしの方が艶消し剤を入れる段取り分高価になります。艶の有無でも単価に差が生じますので、必ず指定しましょう。⑤塗装方法(指定なしでもOK)様々な塗装方法があります。各塗装方法やメリットデメリットはこちらの記事で解説しています。吹付塗装、焼付塗装、粉体塗装、電着塗装など様々な塗装方法があります。特に指定がない場合は一般的に吹付塗装か焼付塗装になります。もし、シボ加工のように表面に凹凸を出すような特殊な塗装をご希望の場合は必ず記載しましょう。対応可能な工場が限られてくる上に、通常の塗装より高価になります。⑥用途簡単で構いませんので記載しましょう。塗料にも屋内用と屋外用があります。それ以外にも用途別で塗料がラインナップされています。屋内用か屋外用かだけでも記載しましょう。塗装の依頼は、図面、個数、色、艶、塗装方法、用途の項目を揃えることでスムーズに依頼ができるようになります。一つでも欠けてしまうと見積がつかなくなる可能性が高くなりますので、必ず依頼前に確認しましょう。図番:ABC-333個数:30個色:2.5Y8/1.5艶:艶あり塗装方法:焼付塗装用途:屋内用図面に記載する箇所がない場合は、上記のように記載するとわかりやすくなります。いかがでしたか?Mitsuriでは塗装も含めた金属加工を依頼できます。見積依頼はこちらから!

  • 金属積層造形(金属3Dプリンター)とは?種類、用途、メリット・デメリット

    今回は金属積層造形の特徴や用途、種類などについて解説します。金属積層造形は、金属材料に対応した3Dプリンターを用いて製品を造形する技術のことです。3Dプリンターは、個人用で使われているものから、産業用として活用されているものまで、さまざまなラインナップがあります。主に樹脂を材料としたモデルが多く展開されていましたが、現在では金属材料に対応したモデルを活用するシーンも増えてきました。3Dプリンターのメリットは、金型や治具などを必要とせず、3DのCADデータがあれば製作できる点にあります。そのほかにも従来の金属加工とは違った魅力があるので、この記事で詳しく見てみましょう。参考:3Dプリンタとは?3Dプリンタの基礎を丁寧に解説!金属積層造形とは金属積層造形とは、主に3DのCADデータをもとにして、金属粉末の層を積み重ね、3次元の造形物を作る技術のことです。金属積層造形を行うためには、金属3Dプリンターを使用します。金属3Dプリンターに使われる金属材料は、鉄鋼系・アルミニウム系・チタン系・銅系などさまざまですが、モデルによって対応できる材料は異なります。金属積層造形の代表的な製造工程は次の通りです。1.作りたい製品の3DCADデータを、1層ごとに分けたスライスデータに変換。2.スライスデータを金属3Dプリンターに読み込ませて配置する。3.配置したスライスデータに倣って3Dプリンターの作業スペース上に金属粉末を敷く。4.金属粉末にレーザーやビームを照射して凝固させる。5.3~4の手順を繰り返して造形する。6.目的の形状に造形後、サポート材を除去するなどの後処理をして完成。金属積層造形の特徴金属積層造形は、主に以下の特徴が挙げられます。●複雑な形状の製品を作れる金属積層造形は、鋳造や切削では難しい加工にも対応が可能です。例えば鋳造では、湯を鋳型のなかに充填させるために、ある程度の厚みが必要とします。中空の製品を作る場合は、中子も必要になります。また、切削加工で製品を作る場合、刃物の大きさなどに左右されることから、複雑かつ細かな形状に切り出すのは困難です。しかし金属積層造形では、金属粉末を積層して成形する仕組みのため、薄肉のものや、すき間のある製品でも対応できます。また、金属積層造形は一体成型で製造するため、加工が困難な金属にも対応が可能です。ただし、どのような形状でも造形できるわけではなく、積層造形に適した設計にしなければならない点に注意してください。参考:砂型鋳造とは?工程、メリット・デメリット、型の種類、製品例参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説●歩留まりが良くコストを抑えられることも金属積層造形は、材料から直接製品を製造できるため、無駄な材料費、金型費、後加工に必要なコストなどを削減できます。金型や鋳型も必要せず、3Dデータがあれば製造が可能なため、試作品のような1品からの製造を行う場合にも便利です。ただし、材料費は通常のバルク材に比べて高価なため、製品によっては従来の製造方法のほうがコストがかからない場合もあります。●中間在庫の削減金属積層造形に必要なものは、金属3Dプリンター、材料、3DCADデータだけのため、非常に短い生産ラインでの製造が可能です。●試作品をいち早く評価できる金属積層造形は、金型や治具などを用意する手間がかかりません。そのため、複雑な形状の試作品でもすぐに用意でき、評価できます。金属積層造形の用途ここでは、金属積層造形を採用している製品の一例をご紹介します。●航空宇宙分野ジェットエンジンの燃料噴射ノズル、タービンブレード、ロケットエンジン部品などの造形に採用されています。●医療分野人工膝関節や人工股関節、さまざまな部位のインプラントなどの造形に採用されています。●金型金属積層造形であれば、従来の切削加工では難しいリブや溝のある金型でも製作が可能です。製作用のデータがあれば、破損してもすぐに新しいものを用意できます。●自動車分野金属積層造形は、従来の製造方法に比べて厚みや密度を変更しやすいメリットがあるので、モータースポーツ分野での部品の軽量化などに採用されることがあります。また、切削加工や鋳造で行われていた試作品を、金属3Dプリンターで作ることにより、コストの削減や製作時間の短縮に寄与します。金属積層造形の方式の種類金属積層造形と一口に言っても、モデルによって造形の仕方に違いがあります。ここでは、金属積層造形で採用されている造形方法の種類についてご紹介します。パウダーベッド方式引用元:アルテック株式会社 3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2021年最新版)パウダーベッド方式(PBF:Powder Bed Fusion)は、金属粉末を敷き詰めた床にレーザーやビームを照射して溶融・凝固を繰り返し、造形する方式です。パウダーベッド方式は、金属積層造形の種類のなかで最も多く採用されています。パウダーヘッド方式は、さらに細かく分けると、レーザー熱源方式と電子ビーム熱源方式があります。レーザー熱源方式は、造形精度が比較的高く、微細な形状を得意としますが、スピードに乏しい特徴があります。一方で電子ビーム熱源方式は、造形スピードが速いものの、精度が比較的出にくい特徴があります。パウダーベッド方式のメリット・デメリットは以下の通りです。●パウダーベッド方式のメリット・レーザーを用いた造形は、精度が比較的高い・ポピュラーな方式のため、3Dプリンターの選択肢が豊富●パウダーベッド方式のデメリット・造形に時間がかかる・サポート除去の手間がかかるメタルデポジッション方式メタルデポジッション方式は、金属粉末を吹きつけながらレーザーを照射して金属を積層し、凝固させていく方式で、別名「指向性エネルギー堆積法」とも呼ばれています。メタルデポジッション方式は、肉盛りのような形で積層していく仕組みのため、一から造形するだけでなく、欠損部分を補修することも可能です。●メタルデポジッション方式のメリット・既存製品の補修が可能・パウダーベッド方式よりも造形スピードが速い・金属粉末の除去作業を必要としない●メタルデポジッション方式のデメリット・造形できる形状に制限があるADAM方式引用元:アルテック株式会社 3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2021年最新版)ADAM方式は、樹脂材料を用いた3Dプリンターに多く採用されているFDM方式(熱溶解積層法)と同じく、材料をノズルから押し出して造形する方式です。ADAM方式では、金属材料とバインダーを混合した素材を熱で溶解して積層していきます。造形後は脱脂をして、バインダーを取り除く必要があります。バインダーを除去したあと、炉に入れて焼結させることで、金属製品ができあがります。●ADAM方式のメリット・他の方式に比べて高強度・高密度・高精度の金属製品を短い時間で造形できる・金属粉末が飛び散らないため、安全性が高い・3Dプリンターの導入コストが抑えられる●ADAM方式のデメリット・脱脂や焼結の工程が必要バインダージェット方式引用元:アルテック株式会社 3Dプリンターの方式・仕組み・特徴を解説(2021年最新版)バインダージェット方式(Binder jetting)は、金属粉末にバインダーと呼ばれる液体結合剤を噴射して固形化する方式です。ADAM方式と同じく、造形後にバインダーを除去するために、脱脂・焼結の工程を必要とします。バインダージェット方式には以下のメリット・デメリットがあります。●バインダージェット方式のメリット・サポート材の除去が不要・未使用の金属粉末は再利用できる・造形速度が早い●バインダージェット方式のデメリット・表面精度が粗い・強度が弱い金属積層造形のメリットとデメリットメリット●複雑な形状の製品を製作できる金属積層造形の仕組みにより、切削や鋳造などの製法に比べて複雑な形状の製品を作ることができます。●試作品の製作に適している金属積層造形は、金型製作などにかかる時間やイニシャルコストを削減できるほか、加工に必要な刃物や治具も必要としないため、試作品の製作に適しています。スピーディーに製品が作れるので、試作品をいち早く評価できます。●サイズの小さい製品であれば、一度で複数個の造形ができる金属積層造形は、積層エリア内に収まる分だけ、造形が可能です。そのため、サイズの小さな製品の場合は、複数個の製品を一度で作ることができます。例えば試作品を作るときに、細かな設計の違いがある製品を一度に作ることで、すぐに比較・検討ができます。デメリット●材料にかかるコストが高い金属積層造形で用いる材料は、一般的なバルク材に比べて高い傾向にあるので、簡単な形状の製品を作る場合は、コストメリットを得られない場合があります。●製品の大きさが限定されやすい金属積層造形で製品を作るには、機械の造形エリア内に収まるサイズでないと製造できません。●造形のスピードが遅く、大量生産には不向き金属積層造形は、1層ごとに金属材料を積み重ねて造形する仕組みのため、1つの製品を完成させるまでに時間がかかります。●後処理の手間がかかる3Dプリンターは、造形後にサポート材と呼ばれる中空部分の土台を除去する必要があります。製品の形状によってサポート材の量は大きく変わるので、除去の手間を少なくするためには、設計の段階でサポート材が少なくなる形状にする必要があります。また、スライスデータを造形エリアに配置する際も、向きによってサポート材の量が変化するため、注意が必要です。●熱による造形後の変形金属積層造形した製品は、造形中や造形直後に熱を持ちます。そのため、造形後に熱が発散されたあと、歪みや反りが発生する場合があります。

  • 化成処理とは?種類ごとの特徴を解説

    防錆や金属の皮膜処理について調べていると化成処理という言葉を目にします。めっきと同じような処理のため「何が違うの?」「どんな特徴があるの?」といった疑問が生まれてくるかもしれません。今回は、化成処理とはどのような処理なのか、種類、目的などについて、詳しく解説していきます。化成処理とは化成処理は、金属をはじめとする加工物を溶液に浸透させて皮膜を作る表面処理のひとつです。表面に処理剤を用いて化学反応を起こさせることで、元の素材とは違った性質を与えることができます。耐食性に加えて外観の向上も見られるほか、下地として処理をすることで塗装との密着性を上げる目的としても活用されます。同じような処理方法のめっきと同列で扱われることもありますが、化成処理は化学薬品を使用したり、電気化学を応用したり、科学的方法を用いて素材に皮膜を生成するため、めっきとは別の処理として考えられることも少なくありません。化成処理の種類化成処理にはいくつか種類がありますが、その中でも代表的な4種類をご紹介します。リン酸塩処理・主に鉄鋼製品に対して採用される・リン酸塩系の処理液を用いて表面を化学反応させ、皮膜を生成する・表面保護効果に加え、塗料との親和性を高める効果があるリン酸塩処理はパーカー処理やパルホス処理とも呼ばれ、鉄をはじめとする金属系の加工物をリン酸塩系の処理液に浸漬させることで表面を化学反応させる化成処理です。使用される処理液は、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム等の種類があり、それぞれに異なる特徴を持っています。処理方法によって種類は異なりますが、いずれも表面に凹凸のある皮膜が生成される特徴があります。錆をはじめとする腐食を抑える表面保護効果に加え、塗料との親和性を高めることもできるため、塗装の下地処理としても多く活用されます。最も多く用いられているリン酸亜鉛処理は、さまざまな素材に対応できますが、処理液によっては鉄鋼製品以外には使用できないものもあるため注意が必要です。⇒リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説クロメート処理・主に亜鉛めっきが施された加工物の後処理に用いられる・六価クロム、三価クロムを含む処理液を用いた化成処理・自己修復性の皮膜によって耐食性の向上や変色防止の効果があるクロメート処理には黄銅、亜鉛、アルミニウムなどが主に使用されます。加工物を六価クロム、もしくは三価クロムを用いた含む溶液に浸漬させ、表面に酸化皮膜を生成する化成処理です。クロメート処理によって得られる酸化被膜は自己修復性を持っており、他の皮膜に比べて高い耐食性を示します。さらに、塗装の代替としても使える着色クロメートや、塗装の前処理として活用できる塗装下地クロメートなど、幅広い活用法が見込めるとして注目を集めています。クロメート処理は素材に直接処理を施すだけでなく、亜鉛めっきが施された加工物の後処理として行われることも少なくありません。これは亜鉛が変色しやすく指紋などがつきやすい性質を持っているからです。亜鉛めっきは特に、湿気のある環境では白色斑点などを生じやすい欠点を持っています。合わせてクロメート処理を施すことで、光沢性と耐食性を付加できるため、電気亜鉛めっきでは不可欠な技術となっています。この他、アルミやマグネシウムの処理に採用される場合は塗装との密着性向上を、無電解ニッケルめっきの後処理に採用する場合は耐食性と変色防止を目的とするなど、素材に応じてさまざまな用途で活用されています。⇒三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違いジンケート処理・アルミニウム合金に対し、めっきの前処理として用いられる・ジンケート(亜塩酸塩)を使った薬液に浸漬させる化成処理・アルミの酸化皮膜を溶かし、亜鉛皮膜を形成させることでめっきの密着不良を解消するジンケート処理は主にアルミニウムやマグネシウムなどの合金に対し、前処理として採用される化成処理です。近年、自動車をはじめとするさまざまな製品に対し、軽量化を目的としてアルミニウムが採用されています。このアルミニウム合金にめっき処理を施す際、前処理としてジンケート処理が不可欠です。アルミニウム合金の表面に、耐摩耗性や装飾性の向上を目的にめっき処理が行われます。しかし、アルミニウム合金は大気中の酸素によって緻密で強固な酸化被膜を形成する特性があります。この酸化被膜はめっきの密着性を阻害してしまうため、ジンケート処理を2回行うダブルジンケート処理によって密着不良を回避しています。黒染め処理・鉄鋼製品に対し、1~2μmの薄い酸化被膜を生成させる・アルカリ水溶液を使った化成処理で、黒色の皮膜が生成される・耐食性・耐熱性を持っている上に見栄えが良く、コストも安い黒染め処理は、アルカリ水溶液に鉄鋼系の加工品を浸漬させることで、表面に耐食性のある黒色の酸化皮膜を生成させる化成処理です。他の化成処理に比べて耐食性の効果は低めですが、皮膜の厚さが約1~2μmと薄く、コストが低いメリットがあります。実際には黒く染めている訳ではなく、鉄の表面が酸化して四酸化三鉄の皮膜で覆われることで黒く変色していますが、見栄えが良い上に防錆効果もあるため、黒く染める用途として採用されることも少なくありません。黒染め処理によって生成される皮膜はめっきや塗装に比べると非常に薄いですが、剥離の心配がなく、経年変化においても寸法精度がほとんど変わりません。また、見た目の美しさや耐熱性の高さ、価格の安さなど、多くのメリットを持ち合わせています。さらに、錆びている製品に対しても、酸洗い処理などによって錆を落とした後で黒染め処理をすることができ、汎用性が高い点も魅力のひとつです。⇒金属の黒染め加工とは?効果と材料向き不向き

  • リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説

    リン酸塩処理は、リン酸塩の処理液を用いて素材の表面を化学反応させることで皮膜を形成させる化成処理です。金属の錆を防止したり素材を強化したりできるため、金属加工の種類のひとつとして用いられてきました。リン酸塩処理は別名「リン酸塩皮膜処理」、処理の種類ごとに「リン酸マンガン皮膜」「リン酸亜鉛皮膜」「リューブライト」とも呼ばれます。また、リン酸塩処理を工業用途で本格的に発展させたパーカー兄弟の姓を取った「パーカーライジング」「パーカー処理」という名前も浸透しています。リン酸塩処理は用いるリン酸塩の種類によっても強度や効果が異なるため、目的や用途に応じた処理が必要です。今回は、リン酸塩処理の種類や工程、用途などについて解説していきます。リン酸塩処理とはリン酸塩処理は、鉄をはじめとする金属系の加工物に施す化成処理の一種です。表面を化学反応させることで皮膜を生成し、元の素材とは異なる性質を付与できるため、古くは武器や道具の錆・塗料の剥離防止などの目的で用いられてきました。現在でもその目的は変わらず、自動車部品をはじめとする工業製品に対して広く採用されています。リン酸塩処理は錆を含めた腐食の進行を抑える表面保護効果として塗装の下地に用いられることが多いですが、それ以外にも金属加工時に潤滑剤と併用することで塑性加工を容易にする目的でも用いられます。リン酸塩処理の種類リン酸塩処理には、リン酸亜鉛処理が最も多く用いられますが、その他にも全部で4種類の処理があります。それぞれ異なる特徴があるため、処理の成分や利点などをご紹介します。リン酸亜鉛処理リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理の中で最も多く用いられている処理方法で、主成分はリン酸イオンと亜鉛イオンで構成されます。結晶性の皮膜を形成することで耐食性、密着性を大きく向上させる効果があり、鉄鋼や亜鉛製品の塗装下地や冷間鍛造の潤滑皮膜として使用されます。また、熔解亜鉛めっきを施したスチール製品は、美観をより重厚感や高級感のあるものに変化できるため、仕上がりに自然な質感が求められる製品にも採用されます。リン酸亜鉛処理は経年変化で少しずつ変色が見られ、濃淡が落ち着いて周囲の景観と調和してくる傾向があります。処理温度60度以下のものが多く、常温で処理ができるものもあり、使いやすいことも採用されやすい理由のひとつとなっています。リン酸カルシウム処理リン酸カルシウム処理は、リン酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンから構成されており、結晶性の皮膜を形成します。同じ結晶性皮膜を構成するリン酸亜鉛処理に比べて耐熱温度が高く、高温で焼き付ける塗装下地に適しています。リン酸カルシウム処理は冷間鍛造による潤滑皮膜として用いられることもありますが、鉄鋼製品に対して用いられることが多く、処理温度は80度~90度と高いのが難点とされています。リン酸鉄処理リン酸鉄処理の主成分はリン酸イオンで、他のリン酸塩処理と違い、非晶質の皮膜が形成される特徴があります。形成される皮膜は1μm以下と非常に薄く、干渉色によって青や黄色などの皮膜外観になります。皮膜成分はリン酸鉄で、皮膜の成分に鉄を必要とするため、適応素材は鉄鋼製品に限定されます。リン酸鉄処理はリン酸亜鉛処理に比べて耐食性に劣りますが、何も処理しない場合に比べると耐食性は高いです。加えて塗装密着性も得られ、他のリン酸塩処理に比べて安価で溶液管理がしやすいため、塗装下地として好んで選ばれる傾向があります。リン酸マンガン処理リン酸マンガン処理の主成分はリン酸イオンとマンガンイオンから構成されており、結晶性の皮膜が形成されます。皮膜の主成分はヒューリオライトで、リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く、表面の粒子が粗い特徴があります。リン酸マンガン処理は耐摩耗性に優れ潤滑作用が大きいことから、ギアやピストン、ベアリングをはじめとする摺動部品に多く採用されます。リン酸鉄処理と同様、加工は鉄製品に限定されるほか、処理温度も80度~90度と高く、処理時間も5~30分程度かかってしまう欠点があります。リン酸塩処理の工程リン酸塩処理の工程は主に以下の5つに分けられます。1.アルカリ脱脂剤を用いた洗浄2.水によるすすぎ洗い3.リン酸塩による処理4.水によるすすぎ洗い5.熱温風による乾燥1と3の工程で薬剤が使用され、各処理に合わせて1分から長い場合は10分以上かけるものもあります。また、防錆、塗装、塑性加工などの目的に応じて処理が異なります。リン酸塩処理の目的が防錆である場合は、表面に防錆油を塗布します。塗装が目的の場合は電着塗装や溶剤塗装と同一ライン内で施され、必要に応じて上塗り塗装まで続けてなされます。塑性加工が目的の場合、乾燥前に追加工程としてステアリン酸ナトリウムを主成分とする石鹸処理が施されます。

  • ダイカストとは?製品例、メリット・デメリット、鍛造との違い

    金属を融点よりも高い温度に熱し、ドロドロの液体にした後で型に流し込む「鋳造」は、古代から伝わる金属加工技術のひとつ。その歴史は古く、紀元前3600年頃のメソポタミア文明で、青銅を加工したことが始まりと言われています。以降、金型を使った鋳造は技術の発展と共に進化を遂げ、複雑かつ強度の高い部品を生成できるダイカスト技術が誕生しました。ダイカストとはダイカストは、高温に熱して液体化した非鉄金属を金型に流し込み、圧力をかけて金型に流し込むことで複雑な形状の製品を製造する鋳造技術のひとつ。一般的な鋳造製品に比べて寸法精度が高く、金型を用いることによって表面が滑らかな仕上がりになります。切ったり削ったりするのではなく金型を使った加工のため、複雑な三次元形状の部品も製造できる自由度の高さが魅力です。板金では叶えられない複雑な形状の部品を製造できる上、金型を使用するため大量生産に適しています。主にアルミニウムやマグネシウム、亜鉛などの製品の成形に用いられ、自動車や家電、コピー機など、さまざまな製品の製造に活用されています。ダイカストのメリット・デメリット高度な技術に裏打ちされたダイカストですが、メリットはもちろん、デメリットもあります。メリット・複雑な形状の製品を製造できる・量産が可能で、生産コストが低い・寸法精度が高く、表面粗さも良いダイカストは複雑な形状の製品をたったの1工程で量産できるため、生産コストが低く抑えられる点が魅力です。一般的な鋳造に比べて寸法精度が高く、まったく加工をせず、ちょっとした継ぎ目のバリ取りをするだけで製品として完成させられる点も大きな魅力のひとつです。デメリット・機械的強度が低い・金型の費用が高いため少量生産には向かない・パイプや中空形状など、作れない形状がある一般的にダイカスト製品は内部に鋳巣(製品内部のガス)が発生するため、強度が低いことが問題とされてきました。しかし、この問題は2007年、特殊ダイカスト法の誕生によって解決。現在ではさまざまなダイカスト法が誕生しています。ただし、鋳巣の発生が抑えられたとしても鍛造製法をはじめとする強度の高い工法にくらべると製品強度は低めになっています。鋳造は主に砂型を用いられますが、ダイカストは金型を用いるため初期費用がかなり高額になります。そのため、少量生産には向きません。さらに、部品によって3万~8万ショット程度が金型の寿命と言われており、トータルコストはあまり良くありません。ダイカストの製品例亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの非鉄金属を大量生産できるダイカストは、主に自動車関連の部品製造で採用されてきました。近年、デメリットとなっていた強度の問題が解消されるなど、技術の発達によって建築材料や通信機器、産業機械など、さまざまな分野に需要が広がっています。●自動車車関連の部品エンジン(ヘッドカバー、シリンダー、クランクケース、オイルパン)、トランスミッション(トランスミッションケース、バルブボディ、トランスファーケース)●自動車関連車以外の製品玩具(ミニカー)、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、掃除機、DVDプレーヤー、HDヘッドフォン、ミシン)、事務用品(パソコン、タブレット、プリンター、コピー機、ファックス)、日用品(カメラ、装身具、釣り具)ダイカストと鋳造の違い鋳造は金属を高温で溶かし、液状にして型に流し込む工法で、ダイカストはこれを発展させた工法です。大きな違いは圧力をかけて金属を型枠に流し込むかどうかのみですが、それだけで仕上がりの精度や表面の滑らかさ、形状の複雑さなど、さまざまな面で優れた部品の製造が可能になります。まず、砂型を使用する鋳造は製造の都度型を作る必要がありますが、ダイカストは金型を使用します。そのため、初期費用は鋳造の方が安く、ダイカストは高額になります。その分、鋳造は小ロットから中ロット向き、ダイカストは大量生産向きとなっています。さらに、加工時間や精度も鋳造に比べてダイカストの方が高くなります。また、鍛造をはじめとする強度の高い工法に比べると、鍛造、ダイカストともに強度は弱めです。そのため、サイズや形状、費用、ロット数などの条件に応じて工法を選ぶ必要があります。

  • 砂型鋳造とは?工程、メリット・デメリット、型の種類、製品例

    鋳造とは、鋳型に溶けた金属を流し込んで成型する手法です。鋳造でできた製品を鋳物と呼びます。鋳物は、鋳鉄・鋳鋼・アルミニウムなど対応する材料が多く、用途に応じて使い分けることが可能です。溶かした金属を利用して成型を行うため、鍛造や切削加工に比べて複雑な形状の製品を安く量産できます。鋳造には、砂型鋳造・ダイカスト・ロストワックス鋳造・消失模型鋳造など、さまざまな製造法がありますが、今回は砂型鋳造の基本知識について解説します。参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説砂型鋳造とは引用元:コンサルソーシング株式会社 鋳造・ダイカストとは~その種類・特徴と工程管理のポイント砂型鋳造とは、砂を材料とした型である「砂型」を使った鋳造方法です。砂型は、「原型」と呼ばれる、砂型を作るための木型や金型の模型と、砂型を収めるための「型枠」を使って用意します。砂型は上と下の型に分かれており、それらを組み合わせて鋳型を作ります。そのため、原型となる模型も、基本的に上と下型で別々に用意している場合がほとんどです。模型は一度用意すれば繰り返し使用可能で、同じ形状の製品を作る場合は、再利用されます。一方で砂型は、一度使って製品を作ると、中身の鋳物を取り出すために壊さなければなりません。そのため砂型鋳造では、同じ形状の製品を作るたびに、模型を繰り返し使って新しく鋳型を用意する必要があります。砂型鋳造で用いる材料は、溶解できる金属であれば使用できます。鉄系の材料の場合は、炭素量の違いにより鋳鋼と鋳鉄に分類されます。鋳鋼は、炭素量が2.1%以下と少ない材料で、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れています。鋳鋼はさらに細かく分けると「合金鋼鋳鋼」「炭素鋼鋳鋼」があります。鋳鉄は、鉄・炭素・ケイ素を主成分とした材料で、炭素を2.1%以上含みます。鋳鉄は鋳造性や強度に優れているのが特徴です。砂型鋳造のメリット・デメリットメリット●木型の模型だとコストが安く済む鋳造は原型を作るのにコストがかかりますが、砂型鋳造で用いる木型は金型に比べてコストが安く済ませられます。●複雑な形状の製品でも成型できる砂型鋳造は、溶かした金属を鋳型に流して固める手法のため、複雑な形状の製品でも成型が可能です。製品に空洞がある場合でも、「中子」とよばれる砂型部品を使えば成型できます。引用元:三共ワシメタル株式会社 砂型鋳造製法上図は牛乳ビンのような形状の製品を鋳造している例です。中子を用いると、中子の部分に溶かした金属が充填されなくなり、牛乳ビンのような中空のある製品でも成型できるようになります。砂型をばらした際、中子も一緒に破壊することで空洞の部分ができあがります。●大きな形状の製品にも対応できる砂型鋳造は、対応する設備さえあれば、大きな製品にも対応が可能なので、製品形状の自由度が高い特徴があります。デメリット●寸法精度に乏しい砂型鋳造は型枠に砂を込めて固める手法ですが、上下の型を組み合わせた際に、型同士のズレが発生したり、溶かした鋳鉄が凝固した際に収縮したりするため、寸法精度に乏しいデメリットがあります。また、鋳肌は梨地のように粗いので、綺麗な面を得たい場合は機械加工する必要があります。ただし後述するシェルモールドでの鋳造では、寸法精度が得られます。●木型の模型が耐久性に乏しい木型は繰り返し利用することができますが、耐久性が乏しく、何度も使用していると摩耗したり傷が付いたりして、製品に悪影響を及ぼしてしまいます。生産数の多い製品の場合は、耐久性の高い金属製の模型を使う場合があります。●鋳巣や湯回り不良などのトラブルがある鋳造では、ガスや空気の巻き込みにより、製品内部に穴ができてしまう「鋳巣」や、溶けた金属が鋳型の中に充填しきれずに欠けや薄肉ができてしまう「湯回り不良」などのトラブルが発生する場合があります。●ランニングコストが高い砂型鋳造は、ひとつの製品を作るごとに毎回砂型を破壊しなければならないため、ランニングコストが高い傾向にあります。砂型鋳造の工程・手順引用元:アイアール技術者教育研究所 【生産技術のツボ】砂型鋳造の基本を速習!鋳造工程、砂型の種類(生型/シェルモールド)などを解説ここでは、生型を使った砂型鋳造の工程について、順を追って解説します。1.模型製作砂型鋳造のうち生型と呼ばれる種類は、主に木型を使って模型を作ります。ただし製法の種類や用途によっては、金属製の模型を作る場合もあります。主に1つの製品を作るには、模型を上型と下型用で別個用意する必要があります。2.鋳込み模型を底盤にセットして型枠で囲み、鋳物砂を鋳込んで固めます。3.模型の取り出し木型の模型を砂型から取り出します。木型は再び砂型鋳造する際、繰り返し使用できます。4.砂型の組付け砂型は、上型と下型で別々に作られますが、鋳造をするにはそれらを組付ける必要があります。製品内部に空洞のある製品は、中子も一緒に組付けます。5.溶湯の流し込み組付けた砂型にある湯口に溶湯を流し込んで成型します。溶かした金属は「溶湯(湯)」とは溶かした金属のことで、「湯口」は溶湯を流し込む専用の穴のことを指します。6.冷却・凝固砂型の内部で溶湯を溶かします。7.砂型のばらし砂型をばらして鋳物を取り出します。8.不要部をカット砂型から鋳物を取り出した際に出る、湯口・ガス抜き口などにある不要部や、上型と下型の接続部などに出るバリを除去します。砂型の種類砂型鋳造は、複数の製造法がありますが、ここでは代表的な種類である「生型」と「シェルモールド」の2つについてご紹介します。生型生型は、「砂型鋳造の工程・手順」にて解説したような手順で鋳造する手法を指します。鋳物砂を乾燥させず、生のまま鋳造する手法から「生型」と呼ばれています。生型で用いる鋳物砂は、骨材としてのケイ砂、粘結剤のベントナイト、その他の添加物などから構成されています。ケイ砂は、天然産出で優れた耐熱性を有しており、入手が比較的簡単なことから、鋳物作りにおいて古くから利用されています。ベントナイトは粘度岩の一種で、水を加えることで粘結力が得られます。模型は木型が採用されていることが多いですが、成型することの多い製品では、模型の耐久性が求められるため、金属製の型を用いる場合もあります。シェルモールドシェルモールドは、加熱した金型の上にレジンサンド(細かいケイ砂に熱硬化性のフェノール樹脂の粉末を5%程度混ぜた砂)を粘結剤とした鋳物砂を吹き込み、硬化させる手法を指します。シェルモールドで作られた鋳型は、薄くて貝殻状であることから、「シェルモールド」と呼ばれています。シェルモールドは、生型に比べて寸法精度が高く、小型や薄肉の製品を作るのに適しています。また、中子を使った複雑な形状の成型にもぴったりです。砂型鋳造の製品例砂型鋳造は、自動車部品・各種構造物・建設機械部品・鉄蓋・グレーチング・車止めなど、幅広い分野で採用されています。砂型鋳造は金属材料を使い分けることで、複雑な形状でありながらも、各種類の特性を活かした製品を成型できるのが強みです。

  • Mitsuri|金属加工

    金属加工の脱脂の基礎知識

    脱脂は、その名称の通り、油を取り除くことです。金属加工では、多くの場面で油を使用するため、油分を除去する方法は極めて重要視されています。特に、錆びやすい鉄鋼などに対しては、必ずと言ってもいいほど、めっきや塗装などで表面をコーティングしますが、油分が残留しているとキレイにコーティングすることができないため、その前処理として脱脂を行うことが必要不可欠なのです。この記事では、この脱脂についてご紹介していきます。また、キレイにしたい素材によって脱脂の行い方が異なるため、方法についても詳しく解説していきます。脱脂とは脱脂とは、金属の表面に付着した油脂分を取り除く処理のことです。汚れなどの取り除く洗浄も兼ねることから、「脱脂洗浄」とも呼ばれます。金属加工では、めっき・塗装といった表面処理前の下地処理として実施されるほか、製品出荷前の洗浄処理として行われることがあります。参考:【表面処理の種類と特徴】処理方法、用途、適した材質についても解説これらの処理において、脱脂は数工程に分けて実施されますが、脱脂だけでなく、錆・汚れなどを除去する「酸洗」や、脱脂・酸洗で利用した薬品などを水・湯で洗い流す「水洗」なども併せて行われます。例えば、めっきの前処理では、「本脱脂」と「仕上げ脱脂」のように、脱脂を2工程実施するのが一般的です(下図参照)。ただし、油脂分が特に多量に付着している場合は、「予備脱脂」を本脱脂の前に行うことがあります。なお、下図中の「中和」は、仕上げ脱脂で用いたアルカリを中和すると同時に、仕上げ脱脂で形成された薄い酸化皮膜を除去する工程です。脱脂処理の必要性金属加工において脱脂処理が必要なのは、加工の過程で様々な油を使用するため、加工物への油脂分の付着が避けられないからです。金属加工で使用する油は、例えば以下が挙げられます。●機械作動油…工作機械などの機械全般の作動を潤滑にするために用いられる油のこと。機械内の歯車・軸受・油圧装置・摺動面などの接触面に供給することで、摩擦を抑えて消耗を防ぐとともに、動作を滑らかにする。●切削油…切削加工時に、加工物と工具との間へ供給する油のこと(下図参照)。加工物と工具との間の摩擦を抑える潤滑や、加工物と工具の双方に生じる切削熱を奪う冷却、加工物から発生する切り屑を取り除く洗浄などのために用いられる。参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリット引用元:お役立ち情報「切削油剤の基礎とよくある質問」長岡石油株式会社●研削油…研削加工時に、加工物と砥石との間に供給する油のこと。加工物と砥石との間の摩擦を抑える潤滑や、加工物と砥石との間に発生する摩擦熱を奪う冷却、加工物から生じる切り粉や砥石から生じる砥石屑を取り除く洗浄などのために用いられる。●プレス油…プレス加工の前に、加工物へムラなく均一に塗布する油のこと。プレス加工時の加工物と金型との間の摩擦を軽減する潤滑油として用いられ、加工物や金型にキズや割れ、焼き付きなどが発生するのを防止する。●熱処理油…鉄鋼材料の焼入れや焼戻し、焼鈍し、焼ならしの際に、冷却剤として用いられる油のこと。●防錆油…調達した鉄鋼材料に塗布されていたり、鉄鋼製の原材料や仕掛品、半製品、完成品に塗布したりする油のこと。一時的な、または長期間の錆止めに用いられる。これらの油脂分は、めっきや塗装といった各種の表面処理を実施する際に、めっき液や塗料を弾いて処理を妨害したり、めっき膜や塗膜の密着性を低下させたりするほか、皮膜自体の物性をも損ないます。参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!また、完成品についても、一部防錆油を塗布するなどして出荷する製品もありますが、油脂分や汚れなどが付いていない清浄な製品を出荷するのが一般的です。そこで必要となるのが、油脂分を除去する脱脂処理です。この脱脂処理のほか、酸洗処理や水洗処理なども併せて行うことで、加工物の表面を清浄にし、表面処理や出荷に適した状態にするのです。脱脂の方法の種類脱脂の方法は、物理的方法と化学的方法に分類することができ、それぞれ多くの種類があります。物理的方法物理的方法は、金属表面から異物である油脂や汚れなどを直接的に除去する方法です。●ウェットブラスト法ウェットブラスト法は、圧縮空気によって、水と研磨材の混合液を噴射することで、金属表面を脱脂洗浄する方法です。油脂や汚れなどを、微細な研磨材で削り取ると同時に、噴射される水で洗い流します。金属表面に梨地模様を形成するブラスト加工と脱脂洗浄処理を同一工程で実行できることから、ブラスト加工を行う際の工程削減を目的によく採用されます。参考:ブラスト仕上げとは?用途、特徴、メリット・デメリット●高圧液噴射法高圧液噴射法は、高圧ポンプによって、圧力を高めた洗浄液を噴射することで、金属表面に付着した油脂や塩分、泥汚れなどを除去する方法です。洗浄液には、水・湯のほか、溶剤が使用されることもあるので、化学的方法を兼ねる場合もある脱脂法です。●蒸気洗浄法蒸気洗浄法は、蒸気発生機によって発生させた蒸気を洗浄槽内に充満させて、低温の対象物を蒸気にさらし、対象物の表面で蒸気を液化させることで、金属表面を脱脂洗浄する方法です。蒸気には、水のほか、溶剤が使用されることもあります。油脂や汚れを蒸気で浮かせて落とす方法であるため、対象物が複雑な形状でも精密に脱脂洗浄を実行できます。しかし、凝り固まった油脂や汚れに対する洗浄性は、高圧水噴射法と比べると劣ります。●超音波洗浄法超音波洗浄法は、対象物を浸漬した洗浄液中に超音波を伝播させて攪拌することで、油脂や汚れなどを除去する方法です。ただし、洗浄液が水だけでは、金属加工の過程で付着する油脂分をほぼ除去できません。洗浄液には、有機溶剤やその他の洗浄剤などを付着している油脂に合わせて選定する必要があります。●加熱法加熱法は、対象物が焼結材や鋳造材などの多孔質材料の場合に、対象物を加熱することで、内部まで浸透した油脂分を溶出して除去する方法です。化学的方法化学的方法は、金属表面の油脂や汚れなどを溶解や乳化、鹸化などの化学反応を利用して除去する方法です。●溶剤脱脂溶剤脱脂は、金属表面の油脂分を溶剤に溶かすことで脱脂洗浄する方法です。多量に付着している油脂分を除去できる方法ですが、油脂分を薄めるだけで、完全に除去できるわけでないため、主に予備洗浄として使用されます。溶剤の種類には、ハロゲン系(塩素系・臭素系・フッ素系)や炭化水素系、水・準水系があります。ただし、下表のように性質が異なることから、金属の材質や油脂・汚れの種類などに応じて選定します。<溶剤の系統ごとの性質>溶剤の系統脱脂力乾燥性引火性可燃性毒性環境負荷再生利用ハロゲン系強い良い無し無し高い大きい可能炭化水素系強い普通有り有り低い普通可能水・準水系弱い悪い無し無し低い小さい不可能また、溶剤脱脂は、上述の物理的方法と併用されることが多く、溶剤の使用方法は、以下のように多様です。・浸漬…溶剤を入れた洗浄槽に対象物を浸漬する方法。溶剤は通常、加熱して温液としたものを使用する。また、溶剤を流動させたり、対象物を回転・振動させたりして、洗浄性を向上させた方法もある。・高圧噴射…高圧にした溶剤を対象物に噴射する方法。・蒸気洗浄…蒸気にした溶剤に対象物をさらす方法。・超音波洗浄…溶剤を入れた洗浄槽に対象物を浸漬し、超音波を伝播させて攪拌する方法。●エマルジョン脱脂エマルジョン脱脂は、炭化水素系溶剤に水と界面活性剤を添加したエマルジョン溶液へ対象物を浸漬することで脱脂洗浄する方法です。ここでの、エマルジョン溶液とは、水が界面活性剤の効果によって、油(溶剤)中に分散した溶液のことです。エマルジョン脱脂では、炭化水素系溶剤の効果によって油脂分を溶解するとともに、エマルジョン溶液中に分散した界面活性剤が水溶性油や水性汚れに吸着し、これらを対象物から浮き上がらせることで除去します。エマルジョン脱脂は、多様な種類の油脂分や汚れを効果的に取り除くことができるというメリットがありますが、排水処理の負担が大きい脱脂方法です。主に予備洗浄に採用されます。●アルカリ浸漬脱脂アルカリ浸漬脱脂は、対象物をアルカリ性の水溶液に浸漬することで脱脂洗浄する方法です。その脱脂液には、多くの場合、界面活性剤も含有します。様々な種類の油脂分を強力に脱脂できることから、本脱脂として採用されることが多い脱脂方法です。アルカリ浸漬脱脂では、アルカリと油脂とが結合し、水溶性の石鹸となることで脱脂が起こります。この石鹸自体も、界面活性剤として機能し、対象物に付着した油脂に吸着して引き剥がし、水溶液中に分散します(下図参照)。さらに、分散した油脂は、乳化(エマルジョン化)して可溶化することから、再付着することもありません。引用元:小特集:ものづくりを支える洗浄技術(I)「塗装前処理における脱脂工程について」国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)アルカリ浸漬脱脂で使用される脱脂液は、水酸化ナトリウムやリン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩などを主成分としますが、そのほかに、界面活性剤やキレート剤、消泡剤などを含有します。なお、キレート剤は鹸化・乳化作用を安定化、消泡剤は脱脂不良を防止する効果があります。また、脱脂液は、一般的にアルカリ度が高く、温度が高いほど、脱脂力が強い傾向があります。しかし、非鉄金属に対しては、脱脂液のpH値が高過ぎる(アルカリ性が強過ぎる)と腐食させてしまうため、単純に脱脂力を強くすれば良いというわけではありません。加えて、脱脂液の温度が高過ぎると、界面活性剤の脱脂力が低下することがあるので注意が必要です。このように、脱脂液は、金属の材質によって、その組成や条件(pH・温度)を変えて使用します。下表は、主要な金属材料の脱脂に用いられる脱脂液の成分組成・条件例です。<主要な金属材料に対するアルカリ脱脂液の成分組成・条件例>成分名鉄鋼銅合金亜鉛合金アルミ合金化学組成 (g/L)苛性ソーダ(NaOH)20~500~10--炭酸ソーダ(Na2CO3)20~5020~5010~2010~20メタケイ酸ソーダ(Na2SiO3)20~5020~5010~300~5第三燐酸ソ-ダ(Na3PO4)-10~20--トリポリ燐酸ソーダ(Na5P3O10)--5~105~10グルコン酸ソーダ(C6H11NaO7)2~52~50~5-界面活性剤0.6~1.51.0~2.01.0~2.01.0~2.0条件項目条件pH12以上11前後11前後11前後温度60℃以上50~70℃50~70℃50~60℃参照元:商品のご案内 > 表面処理 > 工程 > 脱脂剤 > 浸漬「脱脂剤」三明化成株式会社●アルカリ電解脱脂アルカリ電解脱脂は、脱脂対象となる金属を陰極あるいは陽極として電流を流し、アルカリ水溶液を電気分解することで、金属表面を脱脂洗浄する方法です。電解液は、アルカリ浸漬脱脂と類似の溶液を使用し、アルカリを主成分とする、界面活性剤などが添加された水溶液です。アルカリ電解脱脂では、アルカリ浸漬脱脂の効果に加えて、電気分解により、電極とした対象物から発生する水素ガスあるいは酸素ガスによる表面撹拌の作用で油脂や汚れを除去します(下式参照)。さらに、これらのガスは、表面の微小な穴や割れなどの中にまで入り込むため、油脂や汚れの精密な除去が期待できます。アルカリ電解脱脂の最大の特徴は、脱脂洗浄が強力かつ精密であるということです。そのため、めっきの前処理などの確実な洗浄を求められるケースでは、仕上げ脱脂によく採用されます。しかしながら、パイプの内部など、電流が通じにくい部分の脱脂洗浄は不得意です。また、金属の材質に合った方法を選択しないと、表面に不純物が付着したり、表面強度の低下を招いたりすることがあるので注意が必要です。アルカリ電解脱脂は、脱脂対象の金属を陰極にするか、陽極にするかで、脱脂方法が陰極電解脱脂法と陽極電解脱脂法に分かれます。陰極電解脱脂法は、脱脂対象の金属を陰極にして通電し、その対象金属から発生した水素ガスを利用して脱脂洗浄する方法です(上図参照)。水素ガスは、酸素ガスの2倍量発生するため、撹拌効果が高く、脱脂洗浄力が高くなっています。水素の還元作用による錆の分解効果も期待できます。しかし、高炭素鋼に対しては水素脆化を引き起こすことがある上、脱脂液に金属イオンが溶解している場合は電解の効果で金属が析出する場合があります。非鉄金属の電解脱脂によく採用される方法です。一方、陽極電解脱脂法は、脱脂対象の金属を陽極にして通電し、その対象金属から発生した酸素ガスを利用して脱脂洗浄する方法です(上図参照)。酸素ガスによって、油脂や汚れを酸化分解して除去します。酸素ガスなので、当然水素脆化は起きません。金属をも溶解するため、通常は酸洗工程で除去するスマット(無機物を含む汚れ)も取り除くことができます。しかし、その反面、材質によっては金属表面の溶解反応が促進されて、表面を荒らすことがあるので注意が必要です。また、長時間適用すると、酸化皮膜が形成されてしまうため、後工程で酸による活性化(中和)などが必要となります。また、近年においては、対象金属の極性を陰極と陽極とで交互に切り換える方法も使われています。この陰極電解脱脂法と陽極電解脱脂法とを併用するアルカリ電解脱脂法は、PR電解脱脂法と呼ばれ、それぞれの長所と短所を平均化した方法として活用されています。

  • 型鍛造とは?特徴、メリット・デメリット、製品例

    今回は型鍛造の特徴、メリット・デメリット、製品例について解説します。鍛造とは、金属の塊に圧力をかけて目的の形に成形する加工方法です。鍛造は日本で古くから活用されており、高い強度を必要とする農具の鋤や日本刀といったものを作るのに採用されていました。鍛造には大きく分けて「型鍛造」「自由鍛造」の2種類があります。今回ご紹介する型鍛造は、専用の金型を用いて金属材料を成形する手法で、自由鍛造とは異なる特徴があります。参考:【鍛造加工とは?】加工方法や種類、歴史について1から解説します!参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説参考:【第3回】鍛造加工で使用する機械・道具とは?昔ながらの工具から最新機械までご紹介!型鍛造とは?型鍛造とは、別名「型打ち鍛造」とも呼ばれる手法で、専用の金型を用いて鍛造を行うことを指します。金型は上下で一対の構造になっており、間に金属材料を入れて圧力をかけ、成型を行います。参考:【金型製作】金型の種類と基礎や流れについて徹底解説!!型鍛造は、さらに細かく分けると「密閉鍛造」「半密閉鍛造」「閉塞鍛造」「中空鍛造」の4つがあります。●密閉鍛造引用元:株式会社イプロス Tech Note 鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?:鍛造加工の基礎知識1密閉鍛造は、上下の型に隙間なく材料を閉じ込めて成形する手法です。バリが出ないので、除去する工程を省くことができ、製造時間の短縮と材料費を削減できます。●半密閉鍛造引用元:株式会社イプロス Tech Note 鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?:鍛造加工の基礎知識1半密閉鍛造は、上下の型に材料を閉じ込めて成形を行いますが、目的の形状から余分に材料をはみ出させて鍛造する手法です。こうすることによって、型内に材料を充満させられるほか、余分な体積をバリとして逃すことができます。しかし、バリを後工程にて除去する必要があります。●閉塞鍛造引用元:鍛造事典 鍛造の種類Ⅰ(金型および変型方式・加工温度)閉塞鍛造は、上図のように上下の型に材料を閉じ込めたあと、パンチで押し込み圧力をかけて、型全体に流動させる手法です。パンチの形状や数によって複雑な形状を成形することもできます。●中空鍛造引用元:鍛造事典 鍛造の種類Ⅰ(金型および変型方式・加工温度)中空鍛造は、上図のように上下の型に材料を閉じ込めて、成型ピンを挿入することで、中空形状を成形する手法です。成型ピンは横からだけでなく、上下からも挿入させれば、より複雑な形状にすることもできます。また、鍛造には「熱間鍛造」「冷間鍛造」「温間鍛造」「半溶融鍛造」といった材料の加熱温度による違いもあります。●熱間鍛造熱間鍛造は、金属が再結晶する温度(約1200℃程度)に熱してから行う鍛造法です。高温に加熱することで金属が柔らかくなるほか、金属の結晶が正常に変化します。熱間鍛造は、複雑な形状でも強度を確保しやすいメリットがあります。●冷間鍛造冷間鍛造は、常温で行う鍛造を指します。金属が硬い状態のまま加工を行うため、高い精度が得られますが、成形するために高い圧力を必要とします。●温間鍛造温間鍛造は、熱間鍛造と冷間鍛造の間(一般的に300~800℃程度、1000℃まで拡大することも)で行われる鍛造を指します。冷間鍛造では成形が難しい複雑な形状の加工や、高硬度の材料にも対応が可能です。●半溶融鍛造半溶融鍛造は、鍛造と鋳造(溶融させた金属を成型する工法)の間のような手法で、主に車のアルミホイール成型などで採用されています。材料を半凝固状態で加圧して成形を行うため、鋳造のように自由な形状が作れるほか、鋳造で問題となる巣ができにくく、鍛造のように強度も得られます。参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説型鍛造の特徴型鍛造は、目的の製品に合った専用金型を使って成形する鍛造のため、同じ形状の製品を大量生産するのに適しています。専用金型での成形は寸法精度が高く、短時間で成形できるのもポイントです。型鍛造に限らず、自由鍛造にも共通している特徴は、「鍛流線」と呼ばれる金属組織の流れが形成されることで、金属材料が機械的性質が向上する点にあります。これにより、切削加工や鋳造で作られた製品に比べて耐久性が高く、肉厚を薄く作ることもできます。ただし型鍛造は、専用金型を作るのに初期費用がかかるので、小ロットの生産には適していません。型鍛造のメリット・デメリットメリット●材料を節約できる。型鍛造は、完成形状に近いものを成形するため、後工程で除去する金属の量が少なく済みます。これにより無駄になる材料が少なく、材料費の節約が可能です。後加工にかかる時間も削減できるので、作業効率の向上も期待できます。●内部欠陥のない成形が可能。型鍛造は、鋳造と違って内部欠陥がなく製品を成形できるほか、圧力が加えられることで金属の結晶粒が細かくなり、耐久性を向上させられます。●鍛流線の形成により、機械的性質が向上する。鍛造で作られた製品は、切削加工や鋳造で作られたものと違って「鍛流線」と呼ばれる金属組織の流れが形成されます。鍛流線が形成された金属は、硬さ・引張強度などの機械的性質を高められます。●専用金型を使った大量生産が可能。型鍛造は、目的の製品を作るために専用金型を用意します。専用金型はひとつの製品を作るのに使いまわしが効くほか、素早くに成形できるので大量生産に適しています。●自由鍛造よりも高い寸法精度が得られる。型鍛造は、専用金型による成形のため、ハンマーで叩くなどして成形する自由鍛造に比べて高い寸法精度が得られます。デメリット●専用金型の製作にコストがかかる。型鍛造は、専用金型を要するため、自由鍛造に比べて初期コストがかかります。金型の設計・製作に時間もかかるので、少ロットの生産には不向きです。●自由鍛造に比べて歩留まりが落ちる。型鍛造は、半密閉鍛造のようなバリが出る手法の場合は、後加工で除去する必要があるので、自由鍛造に比べて歩留まりが落ちるデメリットがあります。型鍛造の製品例型鍛造は、専用金型に金属材料を入れて成型する手法のため、自由鍛造に比べて小型部品や量産品を製造するのに適しています。型鍛造で作られている製品は、主に以下の製品が挙げられます。・ベアリング、フック、ボルトなどの工業製品・レンチ、スパナ、ペンチなどの工具類・クランクシャフト、コネクティングロッドなどの自動車部品・電車や航空機などに用いられる部品・ナイフ、フォーク、スプーンなどのカトラリー類・ハサミ、爪切りなどの日用品型鍛造の工程型鍛造の基本的な工程は以下の通りです。1.材料の切り出し2.材料の加熱3.鍛造4.バリ取り・表面処理型鍛造では、始めに金属の塊から材料の切り出しを行います。材料のサイズは専用の金型に合うように切り出します。加工用の寸法に切り出された金属の塊は「ビレット」と呼ばれます。次にビレットを加熱して金属を成形しやすくします。そのあと、加熱したビレットを専用金型に入れて成形します。始めに使う型は粗型で、最終形状に近いおおよその形状を作ります。次に仕上げ型を用いて精度の高い寸法に仕上げます。鍛造した製品はバリ処理や表面処理などを行い、製品が完成します。自由鍛造との比較鍛造は、専用金型を使用する「型鍛造(型打ち鍛造)」と、専用金型を使用しない「自由鍛造(フリー鍛造)」に大別されます。<型鍛造と自由鍛造の比較表>適したロット数金型にかかるコスト製品精度型鍛造多数高価高自由鍛造少数安価並型鍛造は、専用金型を使った鍛造で、製品を素早く成形できるほか、金型を使いまわせるので大量生産に適しています。また、高い寸法精度が得られるのも特徴です。しかし金型を作るため、初期コストが大きくかかります。自由鍛造は、専用金型を必要とせず、汎用金型とハンマーなどで鍛造を行う手法です。初期コストがかからないため、小ロットの製品に適しています。しかし、ひとつの製品を作るのに時間がかかるため、大量生産には適していません。精度も型鍛造と比べると劣ります。参考:自由鍛造とは?特徴、製品例、メリット・デメリット

  • 自由鍛造とは?特徴、製品例、メリット・デメリット

    今回は自由鍛造の特徴や製品例、メリット・デメリットについてご紹介します。鍛造とは、金属を叩いて鍛えることから名付けられており、日本でも刀などの製造で古くから活用されている手法です。鍛造には、大きく分けて「自由鍛造」と「型鍛造」の2種類があります。自由鍛造は、金敷の上で金属材料をハンマーなどで叩いて成形する手法で、金属内部の結晶が整い、強い金属が得られます。参考:【鍛造加工とは?】加工方法や種類、歴史について1から解説します!参考:【鍛造と鋳造の違いとは?】工程や製品の比較でわかりやすく解説参考:【第3回】鍛造加工で使用する機械・道具とは?昔ながらの工具から最新機械までご紹介!自由鍛造とは?自由鍛造とは、専用の金型を必要とせず、ハンマーやプレスで金属材料を叩いて成形することで、別名「フリー鍛造」とも呼ばれています。自由鍛造は、熱間加工の一種で、金敷に金属材料をのせて、据込み・鍛伸・展伸・穴あけ・穴広げ・中空・背切り・せん断などの作業を行い、目的の製品へと成形します。鍛造は、温度で見た場合、主に冷間鍛造・温間鍛造・熱間鍛造の3つに分類されます。冷間鍛造は、熱を加えずに圧力だけで加工する手法です。精度に優れていますが、高い圧力が必要なほか、使用する工具や金型は高い剛性を必要とします。温間鍛造は、材料を常温以上(一般的に300~800℃程度、1000℃まで拡大することも)に加熱して鍛造を行う手法です。冷間鍛造では成形が難しい製品の加工や、熱間鍛造よりも高い精度を得たい場合に採用されています。熱間鍛造は、金属が再結晶する温度(約1200℃程度)に加熱してから鍛造を行う手法です。金属が柔らかくなった状態で加工を施すため、より自由な成形ができるメリットがあります。ただし、温間加工は冷えるときに収縮するため、後加工が必要です。自由鍛造では、主に熱間鍛造が採用されています。自由鍛造の特徴と製品例引用元:同和鍛造株式会社 大型・自由鍛造自由鍛造は、リング・パイプ・円盤などのさまざまな形状に成形できます。自由鍛造で成形した製品は、内部欠陥がなく、優れた強度が得られるので、耐久性を要する部品に採用されていることが多くあります。以下は、自由鍛造で作られている製品の一例です。・金槌やペンチなどの工具類・スプロケットなどの産業機械部品・耕運機の爪などの農機具・クランク軸などの自動車・船舶用部品・包丁、フォーク、ナイフなどの台所用品・指輪などの装飾品自由鍛造のメリット・デメリットメリット●金型を作るコストが発生しない。型鍛造の場合は、専用の金型を用意する必要があります。しかし自由鍛造では、既存の汎用的な金型を用いて成形するため、専用金型を作るコストがかからないメリットがあります。●型鍛造では難しい大型の製品にも対応が可能。自由鍛造は、専用の金型を必要としないことから、製造が難しい大型の製品も加工できます。●歩留まりがよく、材料費と機械加工にかかるコストを抑えられる。自由鍛造では、完成品に近い形状に鍛造を行うため、歩留まりがよく、材料費を節約できます。また、機械加工にかかる時間や費用を削減できるのもポイントです。●金属の内部欠陥が発生せず、強度が向上する。鍛造は、体積移動により材料が鍛錬され、製品形状に沿った鍛流線(メタルフローライン・ファイバーフローライン)が生まれます。鍛流線とは、金属材料を鍛造した際にみられる繊維状の金属組織の流れのことです。鍛流線が得られる鍛造品は、鋳造や削り出しで製造したものに比べて、機械的性質が高められ、強度が向上します。デメリット●加工時間が長く、大量生産に不向き。自由鍛造は、ハンマーなどで1点ごとに成形する手法のため、加工時間がかかります。そのため、専用の金型で成形する型鍛造に比べて大量生産には不向きです。自由鍛造は、主に大きな製品の鍛造や、多種類の製品を小ロットで作る場合に適しています。●複雑な形状の加工は難しい。自由鍛造は、ハンマーなどで叩いて成形する手法のため、複雑かつ精度が求められる製品は難しい傾向にあります。複雑かつ精度の要求される製品を鍛造する場合は、型鍛造が適しています。●仕上がりが作業者の技術に左右されやすい。自由鍛造は、型鍛造に比べて作業者の技術に左右されやすく、製品によっては希望する精度に満たない製品にできあがる可能性があります。そのため自由鍛造を依頼する場合は、技術力と実績のある業者に依頼するようにしましょう。自由鍛造の手法自由鍛造では、さまざまな作業を使い分けることで、目的の形状に成形していきます。ここでは、自由鍛造で行われている代表的な作業の手法についてご紹介します。据込み据込みは、平行平面型を用いて上から力を加えることで、素材の高さを圧縮し、材料を横方向に広げる手法です。別名で「すえ」や「圧縮」とも呼ばれています。据込みは、「アプセット鍛造」とも呼ばれており、ボルト・釘・ピンなどの頭を成形する際に採用されます。鍛伸鍛伸は、棒状の素材を回転させながら上下から加圧することで、断面積を縮小させて、長さを得る手法です。別名「伸ばし」とも呼ばれており、主に軸部品の成形に採用されます。展伸展伸は、幅が広い工具で材料を一方向から圧力をかけて、厚みを縮小し、伸ばす手法です。別名「延べ」とも呼ばれており、包丁やブロック部品の成形に採用されます。穴広げ穴広げは、リング状の素材を穴の内側と外側とで挟んで加圧することで、リングの厚みを薄くし、穴を広げる手法です。主にリング状の部品の成形や、指輪のサイズ調整に採用されます。背切り背切りは、工具や金型を用いて材料を圧延する方法を指します。背切りを繰り返すことで、薄板状に成形できます。型鍛造との違い鍛造は、専用金型を使用する「型鍛造(型打ち鍛造)」と、専用金型を使用しない「自由鍛造(フリー鍛造)」に大別されます。型鍛造と自由鍛造は、どちらも完成した形状に近い製品が得られるので、歩留まりがよいこと、そのほかにも内部欠陥のない成形、機械的性質の向上といったメリットがあります。<型鍛造と自由鍛造の比較表>適したロット数金型にかかるコスト製品精度型鍛造多数高価高自由鍛造少数安価並型鍛造と自由鍛造の違いについては上表の通りです。型鍛造は専用金型による成形のため、ロット数の多い製品に適しています。また、自由鍛造に比べて安定した精度が得られるのも特徴です。ただし、専用金型を製作するのにコストがかかるので、小ロットの製作には適していません。自由鍛造の場合は、成形に時間がかかるため、大ロットには適していませんが、金型の製作費にかかるコストを抑えられるメリットがあります。参考:型鍛造とは?特徴、メリット・デメリット、製品例

  • 塗装とは?金属加工の塗装について解説!

    塗装と聞くと、金属をはじめとするさまざまな物に色を塗り、見た目をキレイにするイメージがありますが、それ以外にも金属をコーティングすることで保護する役割を持っています。そのため、めっきと比較されることも少なくありません。今回の記事では、塗装の特徴や種類、メリット・デメリットやめっきとの違いなどをご紹介します。金属製品を装飾したり、保護・防錆をしたりすることを目的に塗装を考えている方は、どういった種類の塗装をするのが適しているのかも含め、ぜひ参考にしてください。塗装とは塗装とは、物体に塗料を塗って塗膜を形成させることを言います。とりわけ、金属製品への塗装は、装飾に加え、コーティングによる保護を目的に用いられます。特に、錆による劣化は金属の天敵となるため、水からの保護が欠かせません。他にも、汚れや油など、さまざまなものから守るための役割を持っています。塗装の多くは常温・大気下で皮膜となる塗料を塗布することができます。一般的にはハケやローラーなどを用いて塗布する印象が強いですが、金属部品の加工にはさまざまな種類の塗装が存在しています。塗装の種類金属加工における塗装は、ただ単純に金属に色を塗れば良いというわけではありません。なぜなら、金属によって相性の良い塗装と相性の悪い塗装があるからです。もし、適切な塗装方法を選択しなかった場合、せっかく塗った塗料がすぐに剝がれてしまい、見た目が悪くなるだけでなく、目的の「保護」の役割を果たせなくなってしまう可能性があります。そのため、製品をキレイに保つためには目的に合った塗装方法を選択肢することが重要と言えます。下記は、金属加工における一般的な塗装の種類です。溶剤塗装溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に樹脂や顔料を混ぜた塗料を塗布する方法のこと。塗装の中で最もスタンダードな方法で、ハケやスプレー、ペイントローラーを使って物体に塗料を塗っていきます。溶剤塗装は他に比べて塗料が安く、製品単価を下げられるメリットがあります。ただし、有機溶剤には中毒性があり、大気汚染などの危険性があるため取り扱い方法に注意が必要です。⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!焼付塗装焼付塗装は、塗料に熱を加え揮発させることで、乾いたときに硬化し、強度を高める塗装方法のことです。皮膜を硬化させるにあたって100度~200度を超える高温にする必要があります。焼付塗装は製品と塗膜の密着性が高く、温度や湿度、風雨などに晒される屋外の環境下で高い効果を発揮できるため、自動車などのボディの下塗りにも用いられます。メラミン、フッ素、アクリルと、焼付塗装にも大きく分けて3つの種類があり、それぞれに塗装温度や硬化、安全性などに違いがあるので、目的に応じて選択が必要です。電着塗装電着塗装は、塗料が入った液体の中に加工物を入れ電気を流すことで、塗料を加工物に付着させ、塗膜を形成させる方法です。ハケやローラー、スプレーなどではムラができてしまいやすい、複雑な形状の素材にも均一な塗膜を形成させることができるほか、膜厚をはじめとする処理条件も管理しやすいため、大量生産に向いている塗装方法です。一方で、塗装をするために設備をはじめさまざまな準備が必要となるため、小ロットの生産には不向きと言えます。静電塗装静電塗装は、帯電した塗料を利用することで、静電気によって塗料が加工物に引き寄せられ、塗膜を形成する方法です。塗料を効率よく付着させることができ、均一で美しい仕上がりの塗膜になる特徴があります。一方で、高電圧の作業が必要となるため、感電や火災などの事故が発生しないよう、十分に注意しながら作業を進める必要があります。基本的には手作業よりも産業用ロボットなどを用いたライン生産方式が適しており、自動車の車体や家電、OA機器などの塗装に用いられます。粉体塗装粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気によって付着させた後、加熱溶解することで塗膜を形成する方法です。他の塗装は一般的に液状の塗料が用いられますが、それに比べてより厚い塗膜を形成しやすい特徴があります。さらに、塗料の入れ替えがしやすく、吹き付けた後、飛散した塗料を回収・再利用しやすいため、高い塗料を無駄なく活用することができます。自動車や家電製品などのライン生産に多く用いられます。塗装処理の工程塗装は主に、前処理、調合、塗布、乾燥の4ステップに分かれています。これは、溶剤塗装から粉体塗装まで、まったく異なる塗料を用いても基本的に変わることはありません。各工程において、どのような作業が発生しているのか、詳しく解説していきます。1.前処理前処理は、加工物に塗料をしっかりと密着させるための処理のこと。具体的には、材料表面の油や錆、異物などを取り除いてキレイにする作業のことです。例えば、過去に塗られていた塗装や錆をやすりなどで削っていったんキレイにする作業も前処理のひとつです。もし、前処理をしないまま作業を進めてしまうと、せっかく塗った塗料が塗装後に剥がれやすくなるなど、不具合が発生しやすくなるため、塗装後の製品をキレイなまま長持ちさせるためにも重要な工程と言えます。前処理は、研磨による機械的処理と、表面を皮膜で覆う科学的処理の2種類があります。目的や用途、加工物の状態などによってどちらをチョイスすれば良いかも変わります。2.調合調合は、塗料の準備の工程です。機能性を高めるために複数の塗料を混合したり、目的に合わせて色を調整したりするために、異なる塗料を調合することも少なくありません。また、塗装方法や作業環境に応じてシンナーの希釈剤を入れて塗料を調整することもあります。エナメルをはじめとする顔料を含んだ塗料は沈殿している場合があるため、色むらをなくすためにしっかり撹拌して使用する必要があります。また、手作業で塗料を混合する場合、比率を間違えると乾燥不良や塗膜の欠陥が出る可能性があるため、正確な作業が求められます。3.塗布塗布は、製品に塗料を付着させる工程のことです。材料に応じて塗ったり吹き付けたり、上述した塗装方法を用いて加工物に塗膜を形成させます。また、目的に応じて下塗り、中塗り、上塗りなど、複数回に分けて塗料を塗布することもあります。塗布工程は、仕上がりの見た目の美しさや均一性など、製品の品質に大きく影響するため、最も重要な工程と言えます。製品をキレイな状態で長持ちさせるためには、相性の良い塗装方法を選択し、適切に作業を進めることが大切です。4.乾燥塗料は乾燥することで塗膜の役割を果たす、いわゆるコーティングへと変化します。そのためには、常温乾燥、または加熱乾燥が必要です。常温乾燥にも、何もせずに一定期間置いておく自然乾燥と、紫外線や電子線を照射して乾燥させる方法の2種類があります。また、加熱乾燥では熱風や赤外線、電磁誘導など、複数の乾燥方法が用いられています。乾燥方法も、塗装の種類に適したカタチで行わなければ、穴があいてしまったり、硬化状態が悪かったりと、塗膜に欠陥が発生してしまう可能性があります。塗装のメリット・デメリット塗装には、めっきをはじめとする他の表面処理に比べたメリット・デメリットが存在します。●塗装のメリット・常温・大気下で塗布することができるため、汎用性が高い・塗装方法によっては現地で作業ができる・大きさに影響されにくく、大小さまざまなものに表面処理を施すことができる・金属だけでなく、ガラスやセラミック、木材などにも塗布できる・方法や塗料の種類が多いため、選択肢が多い・塗装の膜厚を薄いものから厚いものまである程度調整できる・塗り直しができる・めっきに比べてコストが安い●塗装のデメリット・製品と塗膜の密着性が他の表面加工に比べて高くない・作業者のスキルによって表面にムラが発生しやすい・めっきに比べると強度が低く、損傷しやすい・めっきに比べて剥がれやすい塗装とめっきの違いメリット・デメリットから見ても分かるように、塗装は処理方法や効果の関係上、めっきと比較されがちです。これは、塗装とめっきがいずれも表面に膜を形成し、装飾性を高めつつ、加工品を保護する役割を持っているからです。塗装に比べてめっきの方が高価な分、保護効果が高く長持ちします。一方、塗装はめっきに比べて剥がれやすい、損傷しやすいなどのデメリットはあるものの、塗り直しによって保護効果を再度高めることができるため、メンテナンスを加えることで長持ちさせることが可能です。また、めっきは取り扱う金属の種類やサイズ、環境などによって対応できない場合があり、塗装ほど汎用性に優れていません。それぞれの特徴を詳しく理解した上で、どちらをチョイスした方が良いか判断したい場合は、下記記事でより詳しい情報をチェックしておきましょう。⇒めっきと塗装の違いは?それぞれの特徴、めっき塗装に関しても解説!