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現場改善

  • マテハン機器とは?種類や特徴、耐用年数を解説

    今回は、マテハン機器の主な種類やそれぞれの特徴、耐用年数について解説します。マテハン機器とは、荷役作業の効率化などを行う機械や設備の総称で、ものを移動させるためのフォークリフトやコンベヤなどのことを指しています。マテハン機器により自動化で作業を進めている企業は、人件費にかかるコストを抑えられるほか、機械による指示や搬送でミスを減らせる効果も期待できます。マテハン機器とはマテハン機器とは、原材料・仕掛品・商品などを移動させるために利用されるもので、荷役作業の省力化・自動化・効率化するための機械や設備の総称です。マテハン機器の「マテハン」は「マテリアル・ハンドリング(Material Handling)」の略称を意味します。マテハン機器の種類一覧主なマテハン機器の種類は、以下のようなものがあります。・フォークリフト・ドッグレベラー・コンベヤ・無人搬送車・自動倉庫・ソーター(自動仕分機)・ピッキングシステム今回は、これらのマテハン機器がどのような役割を果たしているかを見てみましょう。フォークリフト引用元:RiSOKO 工場や倉庫で活躍するフォークリフト!安全に利用するためには事故事例から対策を学ぼうフォークリフトは、車体に「フォーク」と呼ばれるツメを搭載し、人の力では持ち上げられないようなものでも簡単に持ち上げたり運んだりできる運搬車両です。製造業や物流業といったあらゆる業種で使われており、代表的なマテハン機器と言えます。フォークリフトは用途によって「カウンターバランスフォークリフト」「リーチフォーク型フォークリフト」など、さまざまな種類があります。動力はエンジン式とバッテリー式に分類されます。ドッグレベラー引用元:物流倉庫3D 物流倉庫用語集 ドックレベラードッグレベラーは、工場や物流センターなどで荷物の積み降ろし作業をする際に、建物の出入口の床面と、コンテナやトラックの荷台などに生じる段差を無くすための装置です。ドッグレベラーを備えていることで、積み降ろしが容易に行えます。ドッグレベラーは、高さ調整の方式により、「機械式」、「エアー式」、「油圧式」、「簡易式」といった、さまざまな種類があります。コンベヤ引用元:村田機械株式会社 コンベヤ/垂直搬送機コンベヤは、上に載せたものを一定の速度で搬送するマテハン機器で、製造業や物流業などのさまざまな業界で利用されています。コンベヤは、粒状・粉状などのバラ物を搬送するものや、箱物などのまとめられた物体を搬送するものなど、載せるものや移動方式によってさまざまな種類が使い分けられています。無人搬送車引用元:NANOXEED AGV(無人搬送車)無人搬送車は、材料・部品・商品などを積んで、自動で目的地まで移動する機械で、「AGV(Automated guided vehicle)」とも呼ばれています。名前の通り、無人でものの運搬ができるため、省力化や業務の効率化が期待できます。一般的な無人搬送車は、床に貼った磁気テープの上を移動していましたが、昨今ではAIが搭載されて、決められたルート以外の走行も実現しています。自動倉庫引用元:TOYOTA L&F Rack Sorter自動倉庫は、ものの入庫・保管・出庫の作業を自動で行う倉庫です。コンピュータ制御でこれらの作業を行うことから、「無人倉庫」と呼ぶ場合もあります。自動倉庫は導入するのにコストが大きくかかるものの、倉庫空間を広く利用できるほか、コンピュータ制御による荷役作業の自動化および無人化で、人件費を節約できるようになります。ソーター(自動仕分機)引用元:日本通運 羽田空港貨物センターの自動仕分け機をリニューアル!ソーター(自動仕分機)は、荷物の仕分け作業を自動で行うマテハン機器です。ソーターを利用することで、仕分け作業の高速化および省力化が期待できます。ソーターは、仕組みによって「スライドシュー式」、「パン式」、「クロスベルト式」、「ポップアップ式」などのさまざまな種類があります。ピッキングシステム引用元:SANKYO 倉庫内のピッキング作業のコツ ~作業効率化と人的ミスをなくす方法とは?~ピッキングシステムは、必要な品物を集める「ピッキング作業」の補助をするシステムです。一般的なピッキングシステムは、バーコードリーダーのような機器を用いて、商品管理を行います。商品の入荷や移動をする度にバーコードで管理するので、リアルタイムのデータを管理できます。また、ピッキングシステムは、誰でも簡単に必要な商品を探せるほか、複数人でピッキングを行う必要が無くなるため、教育や人件にかかるコストを削減できます。マテハン機器の耐用年数国税庁では、設備の種類(業種)ごとに、減価償却資産の耐用年数が定められています。減価償却資産の耐用年数は、短くて3年、長いもので15年など、種類によって大きく異なりますが、これらは税額計算の便宜上定められた数字で、実際の機械の耐用年数を表しているわけではありません。マテハン機器は、定期的な保守やメンテナンスを実施していると、減価償却資産の耐用年数よりも長く使えます。各種マテハン機器のメーカーに、実際の耐用年数とメンテナンスについて確認しておき、自社でマテハン機器によるトラブルが発生しないように注意しましょう。

  • Mitsuri|製造業とDX

    【工場の省人化】事例、方法、メリット

    省人化とは、設備や作業の見直し・改善を通して、各工程での無駄をなくし、人員を削減することを意味します。人員不足などが問題となっている製造業では、特に活用されています。本記事では、省人化の事例、方法、メリットなどについて解説いたします。省人化とは?省人化とは、工場内の設備や作業内容を見直しそれらの改善を図ることで、不必要な工程を減らし、人員を削減することを指します。省力化、少人化との違い省人化に類似した用語に、省力化、少人化という言葉があります。似ている言葉ですが、意味が異なります。まず省力化とは、各工程の作業内容の改善により、無駄をなくし作業者一人当たりの作業量を減らす方法です。これにより、作業の効率化を図ります。省人化では、人員削減を目的にしていましたが、省力化では人員削減は行わず各作業者の負担を軽減することを目的としています。次に、少人化とは受注の増減に応じて、人員の数を調整する方法を指します。人員削減を行う省人化とは異なり、少人化では生産量に応じて、最少人数で効率の良い生産体制を整えることを目的としています。省人化のメリットとデメリット省人化のメリットとデメリットについて見ていきましょう。メリット省人化のメリットとして、人手不足の解消が挙げられます。昨今、多くの工場では技術者の人員不足が問題となっており、技術者一人当たりの負担が大きくなっています。省人化によって効率化を図ることで、従業員の負担を軽減し、さらに人手不足の解消にもつながります。省人化を通して人員を減らすことによる人件費の削減、利益の向上、また業務の効率化、生産性の向上によるコスト削減なども期待できます。デメリット後述しますが、省人化ではロボットなどを用いた手法が多く採られます。そのため、設備の導入コストがかかってしまうというデメリットが挙げられます。ただし、同時に人員を減らしたり、業務の効率化を行うため、長い目で見ればコスト削減につながることが多いです。また、ロボットやシステムを管理するために、新たな人材が必要になることもあるので、注意が必要です。省人化の方法省人化を行う方法としては、次のようなことが挙げられます。自動化・自働化近年では、IoT、AI、ロボットなどの技術を用いて、自動化・自働化を行う企業が増えています。設備の改善、工場のスマート化などにより、省人化を推し進めることが可能となります。作業の見直しと改善省人化の基本的な考えは、不必要な作業を洗い出し、それらをなくすということです。各工程の作業の見直しと改善を行うことで、作業の無駄を減らすことができ、業務効率のアップにつながります。参考:【製造業の現場改善】ECRSの原則ではじめるコスト改善!参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点作業の平準化や標準化作業の平準化や標準化を行うことで、一部の作業者に依存せず、作業者一人一人が複数の業務に対応できるようになり、結果的に省人化につながります。省人化の事例工場の検査工程において、目視による検査から機械を用いた検査に切り替えることで、省人化を行い、結果的に人件費の削減、歩留まりの向上などにつながった事例もあります。また、以下の記事ではDXの導入による工場の省人化を行った浜石製作所の事例についてご紹介しております。さまざまなツールやソフトを用いて、今まで人が行っていた作業をデジタル化することで、省人化を行った事例です。参考:DX導入を進める浜石製作所がやってきたこと・目指すこと

  • IE手法【レイアウト分析編】製造業の現場改善

    IE (Industrial Engineering)手法とは、工程や作業・動作、配置(レイアウト)などを論理的に分析して改善に活用し、生産性を向上させる手法のことです。製造業の生産現場で頻繁に採用されています。IE手法には様々な手法がありますが、その中でもレイアウト分析は、工場建屋・倉庫・設備・機械・材料置場・人員などの配置を最適化することによって、人の移動や物の流れを改善する手法です。つまり、人員が作業しやすく、材料や製品などの移動が容易になるようにレイアウトを変更することで業務の効率化を図ります。この記事では、製造業の現場を対象とした、レイアウト分析の詳細や進め方、そしてレイアウト分析による改善の効果について解説していきます。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善レイアウト分析とはレイアウト分析とは、工場建屋や設備・機械、材料置場、人員などの配置(レイアウト)を分析して最適化し、人の移動や物の流れを改善する手法です。これにより、生産性向上やコスト削減、ムリ・ムダ・ムラの排除、事故の防止、作業環境の改善、設備保全の確保などの実現を図ります。工場におけるレイアウト分析は、具体的に述べると以下の手順で進めます。1. 立地計画2. 基本レイアウト3. 詳細レイアウト4. 設置1. 立地計画「立地計画」では、工場の新設や既存工場の建屋や倉庫などの新設・改修を行う際に、どのような地域・場所にそれらをレイアウトするのか、人の移動や物の流れはもちろん、コストなども考慮して計画を立てます。使用していない倉庫や工場敷地内の空いている土地を有効活用する場合も、立地計画は必要になります。なお、建屋や倉庫などのレイアウトの検討が不要な場合でも、以降の基本レイアウトや詳細レイアウトを適切に行うには、面積、柱の位置や太さ、天井の高さ、搬入口といった建屋や倉庫などの情報が必要不可欠です。2. 基本レイアウト「基本レイアウト」では、対象となる工場の生産品それぞれの生産方式を検討し、各生産品の製造エリア、各製造工程の作業エリア、生産に関連する部門や倉庫のレイアウトを概略的に決定します。そのために、後述するSLPと呼ばれるレイアウトの設計手法が主に用いられます。3. 詳細レイアウト「詳細レイアウト」では、基本レイアウトの採用案に基づき、各工程の作業エリア内や部門内などのレイアウトを検討します。例えば、工程の作業エリア内のレイアウトであれば、機械・設備や作業台、工具置場、棚、通路などのレイアウト以外にも、人員の作業場所や作業範囲、機械作動中は近寄ってはならないエリアなどのレイアウトも検討します。レイアウト作成は、基本レイアウトの作成と同等の手順で行うことが可能です。そのため、詳細レイアウトの作成にも、SLPが主に採用されます。4. 設置基本レイアウトと詳細レイアウトの実行案が決まれば、いよいよ実際の「設置」に乗り出します。その際には、まず設置の計画を立て、次に計画通りに進めるために様々な部門と調整しなくてはなりません。休日の実施が望ましいものの、終日機械を稼働させているケースなどもあるため、状況に応じた柔軟な対応が必要です。設置は、可能な限り生産に影響を与えない計画を立て、実施するようにしましょう。SLP (Systematic Layout Planning)の概略と進め方SLPは、「体系的レイアウト計画」とも訳される、汎用的な工場レイアウトの設計手法です。レイアウト分析における、基本レイアウトと詳細レイアウトの決定に用いられます(上図参照)。この手法では、生産品目と生産量、生産における工程間の相互関係、各工程の必要面積などの情報から、工場内のレイアウトを検討していきます。これにより、人の移動や物の流れ、作業時間などを最適化するのです。P-Q分析P-Q (Product-Quantity)分析は、生産品目(Product)と各品目の生産量(Quantity)の関係を定量的に分析する方法です。どの生産品目をどれだけの量作るのかを算出することで、生産設備などのレイアウトを左右する生産方式を決定します。その生産方式には、例えば、以下が挙げられます。●ライン生産方式同一製品の大量生産に適した方法です。製品の製造工程に沿って生産設備を配置し、流れ作業によって製品を製造します。レイアウトは、製品毎に原料投入から加工や検査、完成品の倉庫への貯蔵までの流れを直線的に配置する製品別レイアウトです。●機能別生産方式多品種少量の多様な製品の製造に対応した方法です。製品に必要な工程を組み合わせて製造します。この方式では、ライン生産のように、各工程の作業場所が作業順序に従って整列しているわけではなく、次工程の作業場所が隣接しているわけでもないので、工程間で製品の運搬が必要になります。レイアウトは、生産設備の機能毎や作業の種類毎に作業場所をレイアウトするジョブショップ型レイアウトです。●セル生産方式ライン生産方式と機能別生産方式の中間的な生産形態です。機能別生産方式と同様、工程毎に製品を運搬して製品を製造しますが、全工程の一部に数工程の短いライン生産方式を含みます。この短いラインは、異なる製品に類似する工程が存在する場合などに有用です。レイアウトは、数工程の作業が可能な複数の設備と人員から構成される「セル」を構築するグループ別レイアウトです。レイアウト分析におけるP-Q分析では、横軸を生産品目、縦軸を生産量としたパレート図(大きい順に並べた棒グラフとその累積構成比を表す折れ線グラフから成る複合グラフ)を作成することで行います(上図参照)。例えば、上図では、生産量の累積構成比が上位から80%に入る品目をAグループ、残りの品目から95%に入る品目をBグループ、最終的に残った品目をCグループに区分しています。それによって、以下のように、生産品目に合った生産方式を導き出します。・Aグループ:ライン生産方式に向いた種類の少ない大量生産品・Bグループ:セル生産方式に向いた種類が中間的な数の中量生産品・Cグループ:機能別生産方式に向いた種類の多い少量生産品ただし、これらは、生産量の情報のみを基にして推奨している生産方式です。工場によっては、コストやスペースの制約からラインが組めない場合や、生産設備の専有が難しいためにジョブショップ型にせざるを得ない場合など、状況が異なります。そのため、P-Q分析から得られた生産方式はあくまでも叩き台と考え、状況を考慮して実際の生産方式を検討します。物の流れ分析物の流れ分析は、各製品の製造工程についての情報から、工程を通じた物の移動を図表によって見える化して分析する方法です。具体的には、P-Q分析で得た生産方式の区分を利用し、以下のようにグループ毎に異なる方法で分析します。●工程分析表(オペレーション・プロセス・チャート)少数の大量生産品であるAグループは、「工程分析表」によって、各工程を図表化することで分析を行います。工程分析表は、上表のように物の流れを加工・検査・運搬・停滞・貯蔵の5つの活動に分類して記号で表し、下図のように原材料や部品の投入から加工や検査、完成品の貯蔵までの全ての作業を工程順に上部から並べた図表です。この表により、物の流れ全体が容易に把握できます。●多品種工程分析表(多品種用オペレーション・プロセス・チャート)数種類の中量生産品であるBグループは、「多品種工程分析表」によって、複数の製品の工程をまとめて図表化することで分析を行います。多品種工程分析表は、下図のように、最左列へ加工や検査などの工程を、最上行へ製品名を記入し、製品毎の工程順序を一連の番号で表した図表です。物の流れに類似性が存在すれば、数種類の製品の工程を1つの図表に表示可能です。この表を分析することで、例えば、回り道や逆戻りを最小化した生産設備のレイアウトなどを導き出すことができます。●From-To チャート数十種類の少量生産品であるCグループは、物が「どの工程から(From)」、「どの工程へ(To)」と何回移動したかを表示する「From-To チャート」と呼ばれる表によって分析します。From-To チャートでは、下図のように、行が「どの工程から」を、列が「どの工程へ」を示し、交差する欄にそれらの工程間を移動する製品名と移動回数を記入します。この表を分析することで、隣接させた方が効率的な生産設備などが分かります。なお、対角線の下部は物の逆戻りの流れであるため、その移動回数は可能な限り最小化すべきです。引用元:「具体的レイアウト改善の進め方」改善.netアクティビティ相関図表とアクティビティ相互関係ダイヤグラムの作成工場のレイアウトには、物の流れのほか、部門や倉庫、各工程の作業エリアなどのアクティビティの間の関連性についても分析しておく必要があります。そこで用いられるのが、アクティビティ相関図表と相関図表を図式化したアクティビティ相互関係ダイヤグラムです。アクティビティ相関図表は、上図のような、アクティビティの相互関係における全ての組合せを菱形の欄に記入する交差型の図表です。下表に従って、菱形の欄の上部にはアクティビティ間の近接性評価を、菱形の欄の下部にはその理由を記入します。相関図表の作成が完了したら、続いては、アクティビティ相互関係ダイヤグラムの作成です。相互関係ダイヤグラムは、上図のように、近接性評価の高いものから下表のルールに従って作成します。このとき、線の数が多い(近接性評価が高い)アクティビティほど近接するように描きます。これらの図表とダイヤグラムを分析することによって、近くに配置すべきアクティビティや離れていても問題がないアクティビティなど、アクティビティ間の相互関係が分かります。なお、相互関係ダイヤグラムの作成段階では、「生産設備の騒音の問題から事務部門と距離を取らなくてはならない」などの現実の制約を考慮する必要はありません。相互関係ダイヤグラムは、あくまでも理想的なアクティビティのレイアウトです。条件や制限を加味したレイアウトは、後述の「レイアウト案の作成」で行います。面積(スペース)相互関係ダイヤグラムの作成続いて、作成するのが面積相互関係ダイヤグラムです。面積相互関係ダイヤグラムでは、相互関係ダイヤグラムに各アクティビティの所要面積を適用しますので、事実上の工場レイアウトになります。ここでもし、工場で利用可能な面積よりも全アクティビティの必要面積が大きくなった場合は、必要面積を縮小するなどの調整が必要です。レイアウト案の作成SLPの最後に、面積相互関係ダイヤグラムから実際的なレイアウト案を作成します。面積相互関係ダイヤグラムでもレイアウトを行いましたが、これはあくまでも理想的な配置ですので、建屋の構造や運搬方法、予算、法的規制などの様々な条件・制限を考慮、反映した代替レイアウト案をいくつか作成します。そして、作成した代替レイアウト案の生産性や安全性、コストなどを評価・検討して実行案を選択します。レイアウト分析で現場の何が改善できるかレイアウト分析で実行するのは、最も効率的に生産するための建屋や倉庫、生産エリア、生産設備、材料置場、人員などのレイアウトを検討して、実際に配置することです。そのため、以下のような事項の改善が期待できます。・生産性の向上・効率性の向上・コスト削減・ムリ・ムダ・ムラの排除・空間の有効利用しかし、効率だけでなく、以下のような事項も考え合わせなくてはなりません。・事故の防止・作業環境の改善・設備保全の確保このように、レイアウト分析は、何を重要視してレイアウトに反映するかによって、多様な改善効果が望める手法です。しかし、実際のレイアウトの変更は、一朝一夕に実行できるものではないため、綿密な分析と計画立案が必要になります。

  • 製造現場での人材採用のポイント

    近年、日本は高齢化に伴い労働人口の減少が深刻化しています。特に製造業は人材採用の雇用が難しく、募集をしても思うように人が集まらないケースが多いと言われています。では、よりスムーズに製造現場で人材採用を行うにはどのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。製造業の雇用にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。製造業の人材採用が難しい原因まずは製造業の雇用が難しい原因について探っていきましょう。3Kといった製造業へのマイナスイメージがある製造業には「キツい」「汚い」「危険」を総称した3Kといったマイナスイメージがあります。このマイナスイメージから製造業界自体になかなか人が集まらない、他業界に人が流れてしまうことが一つの要因として考えられます。実際には工場によってこのような負の現象には差がありますが、やはり業界全体へのマイナスイメージが定着してしまうと、就職を一歩踏みとどまってしまう人もいるのかもしれません。労働人口の低下日本は少子高齢化に伴い、日本の労働力人口が減り続けているのが現状です。経済産業省が公表している「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」によると、「今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定。」(引用元:経済産業省)つまり、組織の中核である経営陣でも約半数は後継者不足に悩まされているのです。若年層の東京への集中また、製造業は地方に拠点を構えるのが一般的ですが、若年層の東京への一極集中により、どうしても地方で経営を続けることも困難になるでしょう。特に地方での経営者の高齢化は深刻になっています。60歳以上の経営者割合は一番高い秋田県で66.7%と、地方経営者の6割以上が高齢化しているのが現状です。人手不足にならないための対策様々な社会的背景によって国内の労働人口は減少傾向にあり、製造業界も少なからずその影響を受けているのが現状です。しかし人手不足をこれ以上悪化させないようにと、闇雲に人材募集をすればいいわけではありません。まずは社内でできることから始めてみることが大切です。現状の離職を防ぐいくら採用活動をたくさん行っても、人がすぐに辞めてしまうと元も子もありません。下記で紹介する対策を実践する前に、一度社内での離職率を高めてしまわない策を考えることが大切です。取り組む内容としておすすめなのが、キャリアを明確に提示すること。勤続年数、仕事の成績といった評価が今後の職位やキャリアにどんな影響を与えるかがわかるようになることで、社員自身の問題解決の糸口になったり、現状の立ち位置がわかることで仕事へのモチベーションアップを引き上げたりすることができます。そのためには、従業員の評価制度を構築することが必要です。従業員のモチベーションを高く継続させるには、短期的な目標と長期的な目標設定がキーになります。定性的、定量的な評価基準を決め、昇給や昇格のために必要な項目を明らかにしましょう。他にも、従業員の仕事に繋がる本の購入や講座の支援などを導入してみるのもおすすめです。ソフトやアウトソージングなどを積極的に導入単純作業を人が行っている場合、PCやソフトを導入してみるのはいかがでしょうか。自動化できる作業をヒトが極力介入しないことで、対ヒトとのコミュニケーションやアイディア出しといった、ヒトでしかできない仕事に集中することができます。また、初期投資や運用コストがかかりますが、産業用ロボットの導入も一つの手。作業手順のカットや作業時間の短縮が可能です。女性の雇用製造業の現場労働者というと男性のイメージがありますが、女性の雇用も視野に入れなくてはいけません。経済産業省によると、製造企業における女性従業者の割合は中小企業が42.5%、大企業が22.9%と中小企業が大企業に比べて高くなっています。また女性の雇用を増やすにあたって、福利厚生の充実、育休・産休の取得のしやすさなど改善すべきところもしていくと、女性もさらに働きやすく雇用も増えるかもしれません。(引用元:経済産業省)外国人労働者の雇用日本でも外国人労働者の数が増加しています。それに伴い、製造業界でも技能実習制度を活用して外国人労働者の雇用を視野に入れている企業もあります。技能実習制度とは、外国人の技能実習生が母国では習得が困難なスキルの習得を得ることを目的としたものです。期間は最長5年、技能実習生は受け入れ先企業と雇用契約を結びます。なお、外国人技能実習制度は対象となる職種が決められていますが、製造業では約50種が対象となっています。ただし、外国人採用は日本人採用とは違う法を遵守しなければなりません。事前に環境整備などの必要な準備はしっかり行うことが必須となります。自社HP・SNSでアピール最近ではネットも使って採用活動をしている人がほとんどです。そのため、自社のHPを使って採用をアピールすることで、より採用活動者が働く姿をイメージしやすくなります。また、SNSで自社の魅力やちょっとしたニュースなどをこまめに発信することで、より身近に、そして気軽に情報発信できます。駅の自動ドアや産業機械向け減速機などを手がけるナブテスコ株式会社は、FacebookやTwitterを活用して情報発信を行っています。プレゼントキャンペーンから自社製品の紹介、開発の歴史や従業員の声など発信内容はさまざまです。気負わずにちょっとした情報を発信できることがSNSの魅力です。まずは他社がどんな情報を発信しているのかリサーチし、真似できるところはどんどん取り入れてみましょう。製造業の人材採用まとめ人材採用が難しいと言われる製造業ですが、外国人労働者・女性といったあまり重視してこなかったターゲットへのアプローチを視野に入れてみてはいかがでしょうか。さらに、自社のHPやSNSを使って採用情報や自社の魅力をアピールしていくと、よりスムーズに採用活動ができるかもしれません。採用活動を積極的に行うことも大事ですが、まずは離職率を抑えることやPCソフトの導入など社内での環境設備の見直しを行うことがキーとなります。社内の労働環境を一度見直してみて、できることから一つずつ行ってみてください。

  • TPMの8本柱と進め方基礎|製造業の生産性向上

    TPMは、全員参加の生産保全と訳される生産システムに対する管理技術の一つです。製造業で採用されることが多く、ロスを徹底的に無くすことで、生産活動を効率化し、生産性を向上させることができます。TPMの直接的な目的は、企業利益の向上ですが、企業の構成員の意識改革や企業体質の変革にも繋がるマネジメント手法とされ、日本国内だけでなく世界中の工場でも採用されています。この記事では、TPMの詳細から、TPMの具体的な活動であるTPMの8本柱、TPMを導入した際の効果、TPMの進め方までを解説していきます。TPMとは?TPM(Total Productive Maintenance)とは、製造業において生産システムで発生するあらゆるロスを無くすことによって、利益の拡大と持続的な利益の確保を実現する活動のことです。「全員参加の生産保全」などと訳され、生産部門だけでなく開発や営業などのあらゆる部門が関わり、現場の作業員からトップに至るまでの全員が参加して、ロス・ゼロの達成を目指します。16大ロスTPMでは、生産システムで発生しやすい16の基本的なロスを挙げています。その16大ロスは、大きく以下の3種類に分類されます。・設備の効率化を阻害するロス・人の効率化を阻害するロス・原単位の効率化を阻害するロス「設備の効率化を阻害するロス」は、設備の故障や取り扱い方法の不備などを原因とするロスのことです。このロスによって、操業時間内の正味の稼働時間が目減りし、製品の生産という付加価値の創出に繋がらないムダな時間が発生します(上図参照)。このロスについては、以下の8つが挙げられます。1.故障ロス2.段取り・調整ロス3.刃具交換ロス4.立上がりロス5.速度低下ロス6.チョコ停・空転ロス7.不良・手直しロス8.シャットダウン(SD)ロスなお、「チョコ停」とは、生産設備の不良や製品の欠陥などで設備にトラブルが起こり、一時的に設備や生産が停止する現象のことで、「空転ロス」とも呼ばれます。「人の効率化を阻害するロス」は、人員の不効率な配置や動作マニュアルの不備などを原因とするロスのことです。このロスによって、就業工数の内に企業利益を生み出さない工数が発生します(上図参照)。このロスについては、以下の5つが挙げられます。9.管理ロス10.動作ロス11.編成ロス12.自動化置換ロス13.測定調整ロス「自動化置換ロス」とは、自動化が可能であるにも関わらず、人手での作業を維持することで生じる人的ロスのことです。「原単位の効率化を阻害するロス」は、材料やエネルギーなどのインプットから完成品というアウトプットを生み出す際に生じるモノやエネルギーのロスのことです(上図参照)。このロスについては、以下の3つが挙げられます。14..歩留まりロス15.エネルギーロス16.型・治工具ロスTPMでは、はじめに、この16大ロスを参考にして、潜在しているロスを洗い出します。その上で、ロス・ゼロを目指した活動を行うとともに、ロスを未然防止する仕組みを構築していきます。TPMの8本柱ロスの把握が完了した後、ロスの排除と予防を行うため、「TPMの8本柱」と呼ばれる8つの活動に全員参加で取り組みます。●個別改善生産ラインごとや設備ごとなど、個別のプロセスや設備で発生しているロスを調査して把握し、排除する活動のことです。個々のロスを排除することで、生産システム全体の効率化を図ります。●自主保全作業員が自分が取り扱う設備や作業を行う現場を自主的に整備して保全する活動のことです。設備のオペレータであれば、設備の点検や部品交換、修理などを自分で行います。また、オペレータか否かに関わらず、自分が作業する現場の保全を行うとともに、作業のムリ・ムダ・ムラなどを排除して作業を改善します。●計画保全設備の故障低減や寿命延長を目的に保守部門が取り組む活動のことです。故障時の迅速な復帰のための予備品管理、故障の発生を最小化する保守作業のスケジュール管理、設備の劣化診断などを行うことによる予知保全体制の確立、保全費の最適化などを行います。●初期管理製品や設備の開発段階から生産時や稼働時に発生するロスを予想して開発を行い、事前にロスの発生を最小化する活動のことです。製品の改善情報を収集して製品開発に反映するなどの活動も含みます。●品質保全不良やクレームによるロスを防ぐ活動のことです。不良の出ない最適な条件の調査とその条件の維持管理を行うとともに、不良発生の可能性を予知して対策することで不良ロスを防ぎます。製品の検査強化ではなく、工程の最適化や設備の条件設定などにより不良ゼロとクレームゼロを目指します。●教育訓練仕事に必要な知識や技能を整理して教育・訓練を最適化し、ロスを排除・予防するためのスキルアップを図る活動のことです。●管理間接部門活動管理・間接部門が生産現場におけるロスの削減・予防の支援を行う活動のことです。管理・間接部門でも、5Sの推進や工数の削減などによって効率化を図り、ロスの削減・防止に努めます。●安全・環境管理無事故・無災害を徹底するとともに、ゴミの排出量削減やCO2削減、省エネといった環境に配慮した取り組みを実施する活動のことです。TPM導入による効果TPM導入の目的は、企業における利益の拡大と持続的な利益の確保です。しかし、TPM活動を進めていくと、利益以外の様々な効果が得られます。TPM導入は、製造コストや生産性、稼働率といった指標の向上に繋がるのはもちろん、不良やクレーム、災害の発生抑制にも効果があります。そしてそれは、製品シェアの拡大や経常利益の増大などに結びつき、結果として企業の利益を拡大させるでしょう。また、作業員の自主管理の徹底や職場環境の改善のほか、部門間のコミュニケーション活動の活発化、そして企業の構成員の成長という無形の効果も期待できます。TPM活動の進め方TPM活動を進めるにあたっては、上述したようにロスを洗い出した後にTPMの8本柱を導入していきます。しかしもちろん、ロスの種類は企業の実態に応じて変わるため、導入する柱も状況に応じて増減させるなど、柔軟に対応していくことが大切です。また、TPMを導入する前に、TPMに関する教育、推進体制の整備、活動スケジュールの設定などを準備しておくと、効果が現れやすくなるでしょう。そして、実際にTPMを導入し、展開していく際には、上図のように段階的に適用範囲を広げていくことが勧められています。第1段階は、製造現場が対象です。ここでは、製造原価に直結するロスを排除・予防します。第2段階では、生産技術や生産管理、品質保証、購買・人事の部門など、生産プロセス全体にTPMの適用を広げます。この段階では、製品原価に関わるロスを生産関連部門と連携して排除・予防します。第3段階では、ビジネスプロセス全体にTPMを適用します。全社的にTPMに取り組み、キャッシュフロー上に潜むロスの全てを排除・予防します。

  • IE手法【稼働分析】稼働率・労働時間削減へ

    この記事では、IE(Industrial Engineering)の作業測定にあたる手法の、稼働分析について解説します。作業測定は代表的な手法に、「時間研究」と「稼働分析」があります。時間研究は作業にかかる時間を測定するものであるのに対し、稼働分析は作業者・機械の稼働率や時間の構成比率を求める際に活用する手法です。これらから算出したデータは、方法研究と組み合わせて活用することで、作業の改善が期待できます。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法参考:IE手法【時間研究】タイムスタディを徹底解説参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善稼働分析とは?稼働分析とは、IEの作業測定に属する手法で、一定期間のなかで人や機械がどの要素にどれだけの時間をかけているかの比率を分析します。稼働分析により得たデータは、グラフなどを使って問題点を明らかにしたあと、方法研究を用いて改善を行います。そして、改善した現場環境を再び稼働分析により再評価する、という流れで生産現場を改善していきます。稼働分析の目的稼働分析の目的は下記の通りです。・作業改善のポイントを見つける・ムダやロスの時間を定量化する・稼働状況の時系列を把握する生産効率を上げるには、人の価値作業をいかに多くし、付随作業とムダをどれだけ減らせるかが重要です。また、機械においても価値稼働時間の割合を多くし、ロスの時間を削減する必要があります。稼働分析では、人の作業を【価値作業・付随作業・ムダ】の3つに分類して、分析を行います。作業の種類詳細例価値作業付加価値(生む)を生む作業・材料の加工・部品の組み立て付随作業直接の付加価値を生まないが必要不可欠な作業・梱包を解く・部品を取り出すムダ付加価値を生まない必要のないもの・手待ち時間・繰り返し材料や部品を取りに行く価値作業は利益を有む作業のことで、なるべく増やしたいものです。付随作業は付加価値を生まないものの、価値作業をするために必要な作業を意味します。しかし、可能であれば削減すべき作業です。ムダは付加価値に結びつかない作業を意味しており、早急に削減が必要です。次に機械の仕事の分類について見てみましょう。操業時間負荷時間計画停止稼働時間停止ロス正味稼働時間性能ロス価値稼働時間不良ロス機械の稼働には【停止ロス時間・性能ロス時間・不良ロス時間】の3つのロス時間があります。機械を稼働できる時間は、工場の操業時間内に限られます。機械は操業時間のなかで電源を入れて負荷をかけている状態のことを「負荷時間」と言います。操業時間内に機械の電源を入れていない時間は「計画停止」に分類されます。負荷時間は、実際に機械が稼働している「稼働時間」と、機械が停止している「停止ロス時間」に分かれています。稼働時間は、機械の性能を十分に発揮している時間の「正味稼働時間」と、性能を発揮できていない時間の「性能ロス時間」に分けられます。正味稼働時間は、規格や仕様通りに製品を作った「価値稼働時間」と、不良品を作った「不良ロス時間」に分けられます。これらの負荷時間のなかにある3つのロスが大きいほど、機械の作業効率が低下していることを表します。稼働分析は、人の作業の分類で解説した付随作業やムダ、機械の仕事の分類で解説した各種ロス時間を削減するための手法です。生産効率を向上するには、価値作業と価値稼働時間の割合をどれだけ増やせるかがポイントとなります。稼働分析の種類稼働分析は、代表的な手法として以下の2種類があります。・連続観測法・ワークサンプリング法連続観測法は、連続的に対象を観測して時間比率を算出します。一方、ワークサンプリング法は、瞬間的な観測を複数回行ってデータを取り、統計的に評価します。連続観測法連続観測法とは、人や機械の稼働状態を、観測者が連続的に観測する手法で、「連続稼働分析」とも呼ばれています。連続観測法は、ストップウォッチを使って記録することもあれば、動画撮影を活用する場合もあります。連続観測法のメリットとデメリットについては下記の通りです。●連続稼働分析のメリット・正確な稼働時間を把握できる・作業手順の把握ができる●連続稼働分析のデメリット・1人の観測者につき1つの対象しか観測ができない・観測中は作業者と観測者がずっと一緒になるので、お互いの精神的負担が大きいワークサンプリング法ワークサンプリング法は、人や機械の稼働状態を、あらかじめ決めたポイントに絞って観測し、統計的に分析する手法です。一般的には連続観測法よりも、比較的コストが少なく結果が得られるので、ワークサンプリング法を採用するケースが多い傾向にあります。ワークサンプリング法は、各作業に対してどれくらいの時間と工数をかけているかをチェックし、統計的にデータを算出します。連続的ではなく瞬間的に観測を行うことから、「瞬間観測法」とも呼ばれています。ワークサンプリング法のメリットとデメリットについては下記の通りです。●ワークサンプリング法のメリット・観測者が作業者に張り付いてチェックする必要がなく、負担が少ない・1人の観測者に対して複数の作業者を調査できる・長い期間での観測が可能●ワークサンプリング法のデメリット・観測回数により、データの正確性に乏しい場合がある・作業の手順や頻度を把握できないワークサンプリング法の実施手順稼働分析では、ワークサンプリング法を多く採用しているため、実施手順についても解説します。1.観測目的を明確にするまずはどの作業を観測するのかだけでなく、作業者について、または機械について分析したいのかなど、観測の目的を明確にします。目的によっては、ワークサンプリング法以外の手法が適している場合もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。2.観測範囲の選定観測する範囲を決定します。ワークサンプリング法のメリットは、1人の観測者が複数の対象を観測できる点にあります。もし1人の作業者、もしくは1つの機械といった単体の対象を測定する場合は、連続稼働分析を検討してみてください。3.観測項目のリスト化分析する作業をリスト化します。複数の対象を観測する場合は、各作業者ごとに分けてリスト化しましょう。4.調査計画(観測期間・回数・時刻・巡回経路)の決定いつまで観測を続けるのか、観測の回数はどれだけ必要か、どの時刻で観測するのかなどのルールを決定します。観測時刻は偏りがないようにランダム時刻表を用いて決めます。5.観測の実施観測対象や観測時刻をまとめた用紙を用意し、観測したデータを記入していきます。あらかじめ現場には観測の了解を得ておきましょう。6.結果のまとめ観測したデータをもとに、稼働率や余裕率などを算出します。観測結果は工程や設備の種類ごとに分けて、問題点を明確にしやすいようにグラフ化しましょう。7.改善策の検討観測結果のグラフをもとに、なぜムダな作業が行われているかを関係者で話し合い、改善策の検討を行います。ワークサンプリング法の実施ポイントワークサンプリング法でよくある失敗例は以下の通りです。・観測したデータから改善案が検討できず、再度観測が必要になる・事前調査にない作業があり、記録できないワークサンプリング法は、事前の調査が足りないことから、観測を実施したあとにやり直さなければならない場合があります。これらを防ぐには、以下のポイントを意識してみましょう。●予備調査のときに、あらかじめ問題点や改善策をイメージするワークサンプリング法は、ロスしている時間を改善するために行うものです。データを観測・分析したとしても、改善を検討できるものでなければ意味がありません。このような事態にならないためには、予備調査の段階で、あらかじめ想定できそうな問題点や改善策をイメージしながら調査します。これにより、観測項目をリスト化して観測を行ったときに、データが不十分になることを防止できます。●調査計画をしっかりと行う観測期間は、観測対象によって大きく異なるものです。例えば、1週間で作業内容が変動するものの場合は、観測期間も1週間は必要になります。ワークサンプリングに必要な回数は、標準時間や余裕時間などを求めるような場合、高い精度が必要になり、その分観測回数も多く必要とします。巡回経路についても、観測の際に混乱しないよう、あらかじめルートを決めておくことが大切です。

  • IE手法【時間研究】タイムスタディを徹底解説

    IE(インダストリアルエンジニアリング)手法は、人・モノ・設備の動きを、工程・作業・動作まで細かく分析し、生産管理を最適化するために活用されています。そのなかでも代表的な手法である時間研究は、定量的に時間を測定して問題点を分析します。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法時間研究(タイムスタディ)とは?意味と目的時間研究(タイムスタディ)の意味時間研究とは、「タイムスタディ」や「時間分析」とも呼ばれている分析方法で、要素作業単位のワークユニット(仕事の単位)の時間を実際に測定したり、データにあてはめて算出したりして分析を行います。<ワークユニット(工程・作業・動作)の分類表>工程単位作業A要素作業a動作1動作2要素作業b動作3動作4単位作業B要素作業c動作5動作6要素作業d動作7動作8要素作業は、【手をのばす・モノをつかむ】といった動作から構成されるものです。例を挙げると【材料をとる】などの行動が要素作業になります。また、要素作業が複数組み合わさると、【材料運搬・穴あけ】などといった単位作業のワークユニットになります。単位作業が複数組み合わさると、【組み立て・ギア加工】などの作業系列の完成である工程のワークユニットになります。また、時間研究は代表的な手法として【ストップウォッチ法・PTS法】の2種類があります。これらの詳細について見てみましょう。ストップウォッチ法とはストップウォッチ法とは、実際の現場にてストップウォッチを使って要素作業を測定する手法です。測定した時間は、作業者の技量を踏まえて補正する「レイティング」などを行うことで、標準時間が求められます。ストップウォッチ法は、現場の雰囲気や状況を肌で感じながら調査できるほか、その場で計測を行うので、素早く分析できるメリットがあります。一方、細かい動きが追いにくい、記録のタイミングをはかるのが難しいといったデメリットがあります。ストップウォッチ法は、さらに細かく分けると【連続観測法・反復観測法】の2種類に分けられます。●連続観測法連続観測法は、作業開始と同時にストップウォッチを作動させ、途中で止めることなく測定を行う手法です。要素作業が完了するごとに時間を確認して記録します。ストップウォッチ法を活用する際は、一般的に連続観測法が採用されています。●反復観測法反復観測法は、要素作業の開始と同時にストップウォッチを作動させ、要素作業が終了するのと同時にストップウォッチを停止して記録する手法です。また、現場ではなく、作業内容を動画撮影したものから時間を測定し、分析を行う手法の「VTR法」もあります。VTR法は、自分のペースで作業を観察・測定できるので、分析しやすいメリットがあります。また、動画を複数人でチェックして問題点を議論できるのもポイントです。しかしVTR法は、動画撮影やデータ管理する手間がかかる、現場の空気感が伝わりにくいといったデメリットがあります。PTS法とはPTS法とは、要素作業をさらに細かく分けた、動作単位の時間を組み合わせて分析を行う手法です。PTS法は標準時間を算出する際に、レイティングをする必要がなく、誰が分析しても安定した数値を得られるメリットがあります。また、動作の性質と条件に応じて、決められた時間値を当てはめる手法のため、客観的かつ公平に分析が行えます。一方でPTS法のデメリットは、分析に時間を要するので長時間を要する作業には不向きです。そのほかにも、機械や装置によりコントロールされている作業に対しては利用できません。PTS法の代表的な手法には【WF法・MTM法】の2種類があります。●WF(ワーク・ファクター)法WF(ワーク・ファクター)法は、動作する身体部位などの4つの要因・変数に対して、数値をあてはめて標準時間を得る手法です。動作時間を決める要素は、以下の4つが定められています。・使用する身体の部位・動作距離・取り扱う重量または抵抗・動作の困難性(人為的調節)WF法の例としては、「工具を取るために腕を○○インチ動かす」という動作に対して、WFの動作時間表から数値をあてはめて標準時間を算出します。●MTM(Methods Time Measurement)法MTM(Methods Time Measurement)法は、WF法と近い考え方ですが、動作を部位別ではなく、10の基本動作で分類しています。・手を伸ばす(R:Reach)・運ぶ(M:Move)・クランク運動(C:Crank Motion)・回す(T:Turn)・押す(AP:Apply Pressure)・つかむ(G:Grasp)・定置する(P:Position)・ひきはなす(D:Disengage)・放す(RL:Release)これらの動作の種類と距離により、動作時間を算出します。時間研究(タイムスタディ)の目的時間研究の目的については下記の通りです。・非生産的要素の顕在化:要素作業にかかる時間を測定・分析することで、今まで見えていなかった非生産的要素を顕在化する。・改善すべき対象の分析:作業の標準時間を設定し、実際の所要時間を測定することで、改善すべき対象を判別する。・標準時間の設定:標準時間が決まることで、工程が正しく実行されているかを判別できる。・方法研究との組み合わせによる分析:非生産的要素を定量的に把握したものを、方法研究を使って削減する。ここでの「非生産的要素」とは、作業における3つの種類のうち、「付随作業」と「ムダ」を表すものです。作業は3つの種類に分類されるIE手法を取り入れるにあたり、作業は【価値作業・付随作業・ムダ】の3種類に分けて考える必要があります。作業の種類詳細例価値作業付加価値(利益)を生む作業・材料の加工・部品の組み立て付随作業直接の付加価値を生まないが必要不可欠な作業・梱包を解く・部品を取り出すムダ付加価値を生まない必要のないもの・手待ち時間・繰り返し材料や部品を取りに行く価値作業は、利益に直結する作業のため、なるべく増やしたい作業です。付随作業は、付加価値を生むために必要な作業であるものの、可能であれば削減したい作業です。ムダに関しては、付加価値を生まないもののため、なるべく早めに削減すべき対象です。時間研究では、分析対象となる要素作業が、これらの3種類のうちどれにあたるのかを判別する必要があります。付随作業とムダに関しては、IEの代表的な手法である「方法研究」を活用して削減していきます。これらの【価値作業・付随作業・ムダ】の3種類の時間がどれくらいの割合になっているかの調査は、作業測定の代表的な手法である「稼働分析」を用います。参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善参考:IE手法【稼働分析】稼働率・労働時間削減へ時間研究の進め方・実施方法ここでは、ストップウォッチ法を用いた時間研究の進め方を解説します。ストップウォッチ法は、現場にてストップウォッチを使い、時間を計測をします。作業を動画撮影して計測するVTR法も、基本的な流れは同じです。1.対象の作業を要素作業ごとに分ける時間研究では、はじめに分析する対象の作業を要素作業ごとに分割します。分割した要素作業は記録用紙にリスト化して、それぞれの時間を計測できるように準備しましょう。このとき、分割する単位を動作まで小さくしてしまうと、測定が難しくなるので注意が必要です。2.各要素作業の時間を実際に測定・記録するあらかじめ用意した記録用紙に、作業測定した時間を記録していきます。規則的な繰り返し作業の場合は複数回の観測を行い、平均値を算出します。3.測定結果のまとめ最後に測定結果をまとめます。複数回測定したデータの平均値を出す場合、明らかに異常なデータは除外して計算しましょう。のちに手順や時間を標準化する際に異常なデータがあると、適切な設定ができなくなります。正確なデータが取れたら、作業手順や作業時間の標準化を行うためのデータとして活用できます。作業手順については、熟練した作業者のムダのない手順をベースに考え、ムダやムラがある点は改善を行いましょう。作業時間の標準化については、【時間研究の標準時間とは】の項目で解説します。時間研究の実施にあたって発生する問題点●リスト化された作業手順と異なる作業を行う時間研究に取り掛かったものの、実際に現場に行って測定してみると、リスト化してある要素作業と実際の作業とで内容が異なる場合があります。これは作業者が、部品や機器の調子に不具合があった場合などに対して、対応しようとして起こり得る問題です。また、作業者の違いによっても手順が異なる場合もあります。●雑な要素作業の区分により、改善が検討できない要素作業の分割を行った際、あまりにも大雑把な分割をしてしまうと、具体的な改善ポイントが明確にならないケースがあります。例えば、「A.ボルトをセットする」「B.ナットを締める」の2つの動作を測定した際に、どちらも同じ要素として測定してしまい、AとBとでどちらを改善すべきかが分からない場合があります。●計測そのものが難しい、または時間がかかる計測方法に慣れていないと細かい動きを追い切れず、どのタイミングで記録すればよいのか混乱してしまうものです。また、時間研究を進めたとしても、手法によっては計測に時間がかかりすぎて、なかなか分析までたどり着けないケースもあります。問題点の対策ポイント●作業手順について話し合う機会を設ける作業者間で話し合いの機会を設けて、各々の手順を共有し、作業者間による違いを無くしましょう。また、話し合いを行うことで最適な手順のアイデアが浮かぶ場合もあり、作業手順がより確立されたものになります。●どの手法が適しているかを検討するストップウォッチ法・VTR法のどちらが適しているかを検討してから、計測を行いましょう。ストップウォッチ法とVTR法では、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。これらの手法の特徴を理解したうえで、各々の現場に合った計測方法を試してみてください。時間研究の標準時間とは標準時間とは、標準的な熟練度をもつ作業者が、標準の環境下かつ作業手順を踏んだときの時間と、水分補給や用足しなどの余裕時間を加えた時間のことを指します。余裕時間とは、朝礼・休憩・水分補給・機械調整・用足しなどで発生する遅延時間のことです。標準時間は、標準時間内に作業を行えるかの習熟度の確認として使えるほか、生産計画・進捗管理の基準などにも活用できます。標準時間の要件標準時間は以下の要件が求められます。・公平であること:工場・部門ごとの差がないか・適正であること:理論に基づいた時間設定ができているか標準時間は現場の作業時間の基準となるもののため、関係する作業者や管理者が納得できる、公平な設定である必要があります。ムリやムダが多い時間設定だと、標準時間とはなりません。また、標準時間が理論に基づいた設定であるかも重要です。標準時間の設定標準時間の設定は、ストップウォッチ法・PTS法などの手法を用いて算出します。1.はじめに時間研究にて得た時間データの平均、または代表値を決定します。2.測定時間の代表値を決定したら、次に標準時間として使用するための正味時間を計算します。正味時間の計算式は下記の通りです。正味時間の計算式正味時間=測定時間×レイティング係数時間研究で得た観測時間値は、そのまま標準時間にはならないので補正を行う必要があります。一般的に正味時間の計算は「レイティング」と呼ばれています。観測時間値が、なぜ標準時間に使えないかの理由については、測定した作業者の技量などにより、作業時間に違いが出てくるためです。正味時間を計算するには、測定したときの作業者とほかの作業者を比較して【熟練・努力・作業条件・安定度】の4つの観点から「レイティング係数」を何段階かに分けて決め、観測時間値に乗算します。3.次に正味時間から、さらに補正をかけて標準時間を算出します。標準時間の計算式標準時間=正味時間×(1+余裕率)標準時間は正味時間だけでなく、水分補給や用足しなどの時間も考慮して算出する必要があります。余裕率とは、作業に必要な余裕時間の割合のことです。余裕時間は、休憩・水分補給・用足し・機械調整などにかかる時間です。余裕時間は【作業余裕・職場余裕・個人余裕・疲労余裕】の4種類に分類されています。・作業余裕:工具の取り替え・掃除・機械調整など(余裕率3~5%)・職場余裕:朝礼・連絡・整頓など(余裕率3~5%)・個人余裕:水分補給・用足しなど(余裕率2~5%)・疲労余裕:雑談・休憩など(余裕率:軽作業10%・中作業20%・重作業30%)時間研究がうまくいかないとき時間研究がうまくいかないときは、事前準備で対策をしてから実行してみてください。また、うまく計測や記録をするには回数をこなして慣れることも大切です。時間研究を行ったあとは、情報整理もその日のうちに行いましょう。計測後に情報整理すると、現場のイメージが残っている状態なので、よりよい改善策のアイデアが浮かびやすくなります。

  • IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法

    この記事では、IE手法の意味やメリット、代表的なIE手法の種類について解説します。IE手法(IE活動)とは、生産現場の工程・作業・動作を分析し、生産管理を最適化する手法のことです。IEは1900年代初期から導入されている手法で、製造業に限らずさまざまな業界で採用されています。現場の生産効率を改善できないことでお悩みの企業は、ムダや問題点を顕在化していないことが原因かもしれません。しかしIE手法を取り入れることで、問題点が顕在化され、改善策を講じられるようになります。IE活動・IE手法とは?意味・目的・メリットIE手法(IE活動)とは、「Industrial Engineering(インダストリアルエンジニアリング)」のことで、人・モノ・設備の動きを、工程・作業・動作まで細かく分析する手法を指します。日本インダストリアル・エンジニアリング協会では、IEを以下のように唱えています。「IEは、価値とムダを顕在化させ、資源を最小化することでその価値を最大限に引き出そうとする見方・考え方であり、それを実現する技術です。仕事のやり方や時間の使い方を工夫して豊かで実りある社会を築くことを狙いとしており、製造業だけでなくサービス産業や農業、公共団体や家庭生活の中でも活用されています」引用元:日本インダストリアル・エンジニアリング協会IEは、1900年初期に、アメリカの技術者兼経営学者“フレデリック・テーラー”によって提唱された手法で、幅広い業界で採用されています。IEの目的は、生産管理の最適化です。現場の3ム(ムリ・ムラ・ムダ)を顕在化し、それらを改善することで、生産性と収益の向上が期待できます。IE手法を利用するメリットには、生産管理を定量的に分析できるので検討しやすいこと、記号や図表を用いて表すので誰でも判断しやすいことが挙げられます。参考:製造業の3ム3M(ダラリ)をなくして現場改善IE手法の分類IE手法は大きく分けて【方法研究・作業測定】の2つに分類されています。方法研究とは、最善の方法を追求するための手法で、作業フローの改善と、個々の作業の改善を行うものです。作業測定とは、作業時間を定量的に測定する手法で、現状分析や評価、見積もりに使用します。また、そのほかの分類として、方法研究と作業測定を組み合わせた手法も存在します。代表的なIE手法IEは、工程・作業方法・手順を分析して改善を行う「方法研究」と、作業に必要な時間を測定・分析して、ムダな時間をなくす「作業測定」の2種類に分類されます。方法研究方法研究とは、3ム(ムリ・ムラ・ムダ)のある工程・作業・動作を分析して、改善を行う手法です。ここでは方法研究のなかでも代表的な手法、「工程分析」と「動作分析」についてご紹介します。●工程分析工程分析とは、材料が製品化されるまでの作業工程を分析することです。工程分析では【加工・運搬・検査・停滞】の4つを対象に分析します。・加工:材料の加工や部品の組み立て・運搬:機械および人力でモノを運ぶこと・検査:品質に問題がないか、規格・仕様を満たしているかの検査・停滞:各工程間の待ち時間工程分析を行うと、上記の課題が見えるようになり、工程全体を改善しやすくなります。また、工程分析には【フロープロセスチャート・アッセンブリーチャート・経路分析・フローダイヤグラム】の4種類のタイプがあります。フロープロセスチャート(加工工程分析)は、1つの材料や部品が各工程を経て変化する状態を、加工する順に沿って工程図記号で表した図で分析します。アッセンブリチャート(組立工程分析)は、複数の部品を組立てる工程を工程図記号で表した図で分析します。経路分析(類似工程分析)は、製品の品種ごとに工程の流れを調べ、類似する工程をグループごとに分けて分析する手法です。フローダイヤグラム(流れ分析)は、運搬経路分析とも呼ばれており、人とモノの流れ・動線を分析する手法です。参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善●動作分析(作業分析)動作分析(作業分析)とは、作業ごと、もしくは1つの工程について、作業者の動作内容を分析することです。生産工程におけるムダな動作や作業をなくすことで、生産効率の改善が期待できます。動作分析(作業分析)では作業員のムダな動作や作業、ムリな姿勢などを調べて改善し、作業効率の向上を図ります。また、作業員の経験やノウハウによる差異を把握し、人員・作業内容スケジュールなどを最適化します。ここでの「動作」とは、作業の最も小さな単位区分のことを指します。また、「作業」には、いくつかの動作の組合せによって構成される1つの作業「要素作業」と、作業として完結する最小の単位である「単位作業」の2つがあります。動作は“作業員が手をのばす”、要素作業は“材料を取る”、単位作業は“穴あけ加工をする”などが例となります。これは、複数の動作から要素作業が成り立ち、複数の要素作業から単位作業が成り立っていることを差します。そのため、動作分析と作業分析では着目するポイントが異なり、分析の仕方にも違いがでてきます。参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善●マテハン分析(運搬分析)マテハン分析(運搬分析)は、材料や製品の移動・運搬を分析する手法です。マテハンは「マテリアル・ハンドリング」の略で、自社内での荷下ろし・積み替え・移動・出荷作業などのモノの移動のことを指します。マテハンのコストは高い分、工程内の移動や運搬などを抑えることが生産管理の改善に繫がります。マテハン分析は、代表的なものに【運搬工程分析・運搬活性分析・カラ運搬分析】があります。運搬工程分析は、運搬工程記号を使ってモノの取り扱いを記録し、分析します。運搬活性分析は、活性(置かれたモノの移動のしやすさ)に着目し、積み込みや荷下ろしにどれだけの労力が費やされているかを分析します。カラ運搬分析は、モノの移動ではなく、運搬設備や器具のみの移動に行われる運搬(カラ運搬)を分析します。作業測定作業測定では、業務内容に標準時間を設定したのち、実際の時間を測定してムダな時間を顕在化します。●時間分析時間分析とは、作業員の業務内容に標準時間を設定して、実際にかかる時間を記録し、分析することです。標準時間は、ムリのない条件や環境下で、一定の品質の製品を作るのに必要な時間のことです。作業にかかる時間の目安になるので、スケジュールを管理するのに役立ちます。時間分析には大きく分けて【ストップウォッチ法・PTS法】の2種類があります。ストップウォッチ法は、現場にて直接自分の目で作業を観察し、ストップウォッチで時間を測って分析します。PTS法は、作業を動作要素まで分解し、その動作要素に決められた標準時間を組み合わせることで作業時間を見積もる手法です。●稼働分析稼働分析とは、人や機械がどの要素にどれだけの時間をかけているかを分析する手法です。稼働分析の代表的な手法に【連続観測法・ワークサンプリング法・セルフタイムスタディー法】の3つがあります。連続観測法は、現場観測やビデオなどで連続的に観測する手法で、手間がかかるものの正確な観測が可能です。ワークサンプリング法は、観測するタイミングを決めておき、観測した瞬間の稼働状況を分析します。セルフタイムスタディー法は、仕事の実績を表に記述したものを一定期間集計し、人の稼働の全体像を明らかにする手法です。改善対象を選ぶ改善対象を選ぶには、生産状況を定量的に把握して、作業のロスを見出す必要があります。ここでは改善対象を見極めるための手法である、代表的な分析方法【P-Q分析・P-MH分析・ワークユニット分析】をご紹介します。P-Q分析P-Q分析とは、重点的に改善すべき製品を選ぶために、製品と生産量の関係をパレート図を用いて分析する手法です。P-Q分析のPは「Product(製品)」、Qは「Quantity(生産量)」を意味します。分析には、横軸に品目、縦軸に生産量に設定したパレート図を用います。各生産量は棒グラフに、累計パーセントは折れ線グラフのパレート図で表します。完成したパレート図を確認することで、量産品・多品種少量品・個別生産品が明らかになり、よりよい生産管理の手掛かりを得られるようになります。パレート図とは、項目別のデータを値の大きい順に並べた棒グラフと、累積比率(各項目のデータ数を累積数の合計で割った値)を組み合わせた複合グラフのことです。パレート図はQCの7つ道具のうちのひとつで、製造現場の問題点を見える化するのに役立ちます。参考:製造業の生産管理を徹底解説参考:製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点P-MH分析P-MH分析とは、重点的に改善すべき製品を選ぶために、製品と工数の関係をパレート図を用いて分析する手法です。Pは「Product(製品)」、MHは「Man Hour(工数)」、工数=生産量×1個あたりの作業時間を表しています。P-MH分析もP-Q分析と似たように、製品と工数の関係をパレート図にて顕在化し、手間がかかっている製品をピックアップして改善を行います。ワークユニット分析ワークユニットとは、作業の構成や、まとまりの単位のことを指します。ワークユニット分析は、改善対象の大きさや、最適なIEを決めたいときに役立つ手法です。【ワークユニットの仕事量=ワークタイム×ワークカウント】であり、個々のワークユニットの仕事量を合計することで、製品全体の仕事量が求められます。逆を言えば製品全体の仕事量は、細かいワークユニットに切り分けが可能です。ここでの「ワークタイム」はワークユニットの作業時間、「ワークカウント」はワークユニットの発生回数のことを意味します。次に改善対象の大きさを判別する目安となる、ワークユニットのレベルを見てみましょう。<ワークユニットのレベル>レベルワークユニット詳細例6最終製品業務製品を完成するのに必要な作業・業務製造5中間製品(大工程)中間段階での作業系列のまとまった完成状態組立4課業(工程)決まった作業域での1つのまとまった作業で、作業のサイクルとして完成を見る単位ギア加工3単位作業作業として完結する最小の単位穴あけ2要素作業いくつかの動作の組合せによって構成される1つの作業材料を取る1動作作業の最も小さな単位区分要素作業を構成する測定可能な最小単位手をのばす上表のように、ワークユニットはいくつかのレベルに分類できます。レベルには定義があるわけではなく、あくまでも目安として記述しています。IE手法の改善対象を選ぶにあたり、ワークユニットのレベルによって最適な手法は異なります。現場を改善するには、どのワークユニットを対象にすべきか判断することも重要です。

  • IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善

    IE(Industrial Engineering)手法は、1900年初めに、アメリカの技術者兼経営学者“フレデリック・テーラー”によって提唱された改善手法です。人やモノの動きを可視化し、分析することで、現場のムリ・ムダ・ムラを改善します。この記事では、IE手法の代表的なものである【工程分析・作業分析・動作分析】のうち、作業分析と動作分析について解説します。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善参考:製造業の3ム3M(ダラリ)をなくして現場改善動作分析・作業分析とは何かIE手法のなかでも代表的な手法に、【工程分析・作業分析・動作分析】があります。これらの違いは、ワークユニット(作業の構成)のレベルの違いによるものです。参考として【工程・作業・動作】の分類表を以下に示します。<工程・作業・動作の分類表>工程単位作業A要素作業a動作1動作2要素作業b動作3動作4単位作業B要素作業c動作5動作6要素作業d動作7動作8上表のように、工程は単位作業による構成、単位作業は要素作業による構成、要素作業は動作の組合せにより構成されています。工程分析・作業分析・動作分析は、これらのどのワークユニットで分析するかによって名前が異なります。分析方法の種類IE手法の代表的な手法に【工程分析・作業分析・動作分析】があると述べましたが、今回は【作業分析・動作分析】に焦点を当てて解説します。作業分析作業分析の代表的な種類として【ライン作業分析・連合作業分析】の2種類があります。加工系および組立系のような、ライン編成がメインの場合は「ライン作業分析」を、作業者と作業者、もしくは設備と作業者の連携がメインの場合は「連合作業分析」を活用します。●ライン作業分析ライン作業分析とは、「ピッチダイアグラム」と呼ばれる、各工程の作業時間を棒グラフに表した図を用いて、各工程の作業時間と標準サイクルタイムを比較し、改善を行う手法です。ピッチダイアグラムにて、ラインバランスを視覚化することで、問題点が判明しやすくなります。ピッチダイアグラムの参考図は下記の通りです。<ピッチダイアグラム参考図>引用元:株式会社Key-Performanceライン作業分析では、ピッチダイアグラムを作成し、ラインバランス効率がどのようになっているか分析することができます。例えば上図では、工程3が標準サイクルタイムを超え、ボトルネックとなってしまっていますが、一方で工程2・工程4は作業時間が少ないことが分かります。そのため、ラインバランスを改善するには、行程3に人員を割り振ったり、工程2と工程4に作業時間を分配したりといった方法が考えられます。一般的にライン作業において、ラインバランス効率が85%以上あると、効率良く作業ができているとされています。ラインバランス効率の計算式は下記の通りです。ラインバランス効率の計算式ラインバランス効率(%)=各作業者の所要時間の合計/ボトルネック工程の時間×工程数ラインバランス効率が85%を下回るようなら、改善を検討しましょう。●連合作業分析連合作業分析とは、複数の作業者間、または設備と作業者間の組合せ作業に対して、【単独作業・連合作業・不稼働】の各性質に区分してチャート化し、作業ロスを浮き彫りにする手法です。【単独作業・連合作業・不稼働】の詳細については下記の通りです。1.単独作業:設備や他の作業者と関係ない作業2.連合作業:設備や他の作業者と協同する作業3.不稼働:設備や他の作業者を待っている状態連合作業分析では、サイクルタイムの短縮と、配置人員の削減を目的とします。例として連合作業分析でチャートにしたものを下に表します。<改善前のチャート(サイクルタイム:180秒)>作業者旋盤切粉除去切粉除去チャッキングチャッキング手待ち切削アンチャッキングアンチャッキング測定停止チャートでは背景がグレーの箇所を「連合作業」、黒の箇所を「単独作業」、白の箇所を「不稼働」で表しています。この図から分かるように、旋盤が切削している間は、作業者が不稼働の状態になっています。一方で作業者が測定をしている間は、旋盤が不稼働の状態です。次に改善後のチャートを以下に表します。<改善後のチャート(サイクルタイム:150秒)>作業者旋盤切粉除去切粉除去チャッキングチャッキング測定切削手待ちアンチャッキングアンチャッキング改善後は切削の間に、ひとつ前のサイクルにて加工したワークを測定することで、サイクルタイムを180秒から150秒まで短縮しています。このように連合作業分析では、組合せ作業に対してのムダを視覚化することが可能です。動作分析動作分析は、作業員の手や目の動き、移動、思考時間などを、細かく分析することによって、ムダな動きをなくしていきます。今回は動作分析の代表的な種類である【サーブリッグ分析・フィルム分析】について解説します。●サーブリッグ分析サーブリッグ分析とは、人間が作業を行うときの基本動作を18種類の動素に分類し、それぞれを記号化したものを使って、作業の流れの全体像を可視化し、問題点を浮き彫りにする手法です。サーブリッグ分析は、アメリカの“フランク・ギルブレス”が1915年に考案した手法で、各動素は以下の表のように記号化されています。<サーブリック分析記号の一覧表>1.青色の第1類:価値を生み出す必要な作業だが、距離や時間など短縮できるところは改善する。2.黄色の第2類:できればなくしたい動素。3.赤色の第3類:ムダな作業なので、完全に取り除く必要がある。引用元:OTRS (参考データは【よくわかる「IE七つ道具」の本(日刊工業新聞社)】によるもの)サーブリッグ分析では、上表の記号を用いて、下に記載しているような分析表に記入し、データを収集します。これにより、作業に含まれる人間の動作を分析して、ムダのない動きになるように改善します。<サーブリッグ作業分析表の例>要素作業左手右手ムダな点改善点要素動作サーブリッグサーブリッグ要素動作●フィルム分析フィルム分析とは、撮影機器を用いて作業動作を撮影し、各コマを分析することで、動作と動作時間を明確にする手法です。フィルム分析は、「メモモーション分析」と「マイクロモーション分析」の2種類に分けられます。メモモーション分析は、低速度撮影によりチェックする手法で、作業内容が理解できる最も遅い速度で撮影して分析します。メモモーション分析は、「作業改善」が目的で、「連合作業」や「長時間作業」の分析に使用します。一方マイクロモーション分析は、高速度撮影を行い、通常の速度で見て分析を行います。マイクロモーション分析は、「単純反復作業」などの分析に使用します。

  • IoT時代のPLMとは?製品ライフサイクル全体を管理する

    PLMは、「Product Lifecycle Management」の略で、製品ライフサイクル管理を意味します。PLMは、企画から開発・設計、生産、販売、廃棄までの一連のプロセスを統合的に管理する仕組みを指し、製品による利益を最大化する目的で、自動車産業や電機産業など、さまざまな分野において利用されています。PLMとは?基礎解説PLMは、「企画→開発→設計→生産→販売→メンテナンス→廃棄」という製品ライフサイクルの一連の流れにおける情報を管理することができるシステムです。PLMシステムには、下表に示すような、製品のライフサイクル全体を通して必要となるデータ作成機能や管理機能などが搭載されています。<PLMが備える主な機能>工程主な機能企画製品ポートフォリオ管理、予算編成、要件管理設計製品設計、型設計、モデルベースシミュレーション、CADなどのデータ管理、設計部品表(BOM)管理、原価管理、開発スケジュール管理調達取引先情報管理、購買部品管理、提案・見積管理生産準備〜生産型加工、設備設計、製造部品表(BOM)、製造工程表の管理、時間管理、製造データの管理、作業指示書メンテナンス部品管理、保守・修理の管理このように、PLMを導入し製品の情報を一元管理することで、各部門における情報の共有が効率化され、結果的にQCD(Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期))の向上につながります。PLMとPDMの違いPLMと類似している概念にPDM(Product Data Management)があります。PDMは「製品情報管理」を意味しており、CADや部品表(BOM)などの開発・設計に関するデータを管理するシステムを指します。前述した通り、PLMでは製品ライフサイクル全体の情報を管理するのに対し、PDMでは開発・設計に関するデータのみを対象として管理します。ただし、製造業では開発・設計業務と生産業務は連携して情報を共有することが望ましいことから、PLM製品にPDMの機能が付帯されていることもあります。参考:BOM(部品表)とは?例と種類・用途PLMのメリットPLMを導入し、製品ライフサイクルにおける各プロセスの情報を関連付けて一元管理することにより、各工程での作業効率がアップします。業務の効率化、製品情報の共有化が進むことによって、業務時間の短縮によるコスト削減、品質の向上、製品開発リードタイムの短縮などが可能となります。コストの削減に加え、製品開発リードタイムが短くなり市場投入までの期間を短縮することで、利益の最大化が期待されます。参考:製造業の生産リードタイム基礎知識IoT時代のPLM近年、製造業においてIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の導入が進んでいます。しかし、現状は多くが設備や製造工程に限定して使用されています。こうした中で、IoT技術のPLMへの応用が期待されています。例えば、工場の生産現場で取得した情報を設計情報と合わせて活用することで、PLMへの応用・適用が進み、新たな方法での在庫や原価の管理、品質管理が可能となるでしょう。その他にも、IoT化された製品を使用するユーザーから得られたデータを設計に反映することで、PLMを最適化し、利益をより増大させられる可能性もあります。このように、IoT時代におけるPLMでは、IoTによって得られるビッグデータを、設計など製品ライフサイクルにおける各プロセスへとフィードバックすることが求められています。参考:【イベント】「AI/IoTでささえる、かがやく子どもの未来」から学ぶ、未来創造のための技術活用

  • マテハン機器とは?種類や特徴、耐用年数を解説

    今回は、マテハン機器の主な種類やそれぞれの特徴、耐用年数について解説します。マテハン機器とは、荷役作業の効率化などを行う機械や設備の総称で、ものを移動させるためのフォークリフトやコンベヤなどのことを指しています。マテハン機器により自動化で作業を進めている企業は、人件費にかかるコストを抑えられるほか、機械による指示や搬送でミスを減らせる効果も期待できます。マテハン機器とはマテハン機器とは、原材料・仕掛品・商品などを移動させるために利用されるもので、荷役作業の省力化・自動化・効率化するための機械や設備の総称です。マテハン機器の「マテハン」は「マテリアル・ハンドリング(Material Handling)」の略称を意味します。マテハン機器の種類一覧主なマテハン機器の種類は、以下のようなものがあります。・フォークリフト・ドッグレベラー・コンベヤ・無人搬送車・自動倉庫・ソーター(自動仕分機)・ピッキングシステム今回は、これらのマテハン機器がどのような役割を果たしているかを見てみましょう。フォークリフト引用元:RiSOKO 工場や倉庫で活躍するフォークリフト!安全に利用するためには事故事例から対策を学ぼうフォークリフトは、車体に「フォーク」と呼ばれるツメを搭載し、人の力では持ち上げられないようなものでも簡単に持ち上げたり運んだりできる運搬車両です。製造業や物流業といったあらゆる業種で使われており、代表的なマテハン機器と言えます。フォークリフトは用途によって「カウンターバランスフォークリフト」「リーチフォーク型フォークリフト」など、さまざまな種類があります。動力はエンジン式とバッテリー式に分類されます。ドッグレベラー引用元:物流倉庫3D 物流倉庫用語集 ドックレベラードッグレベラーは、工場や物流センターなどで荷物の積み降ろし作業をする際に、建物の出入口の床面と、コンテナやトラックの荷台などに生じる段差を無くすための装置です。ドッグレベラーを備えていることで、積み降ろしが容易に行えます。ドッグレベラーは、高さ調整の方式により、「機械式」、「エアー式」、「油圧式」、「簡易式」といった、さまざまな種類があります。コンベヤ引用元:村田機械株式会社 コンベヤ/垂直搬送機コンベヤは、上に載せたものを一定の速度で搬送するマテハン機器で、製造業や物流業などのさまざまな業界で利用されています。コンベヤは、粒状・粉状などのバラ物を搬送するものや、箱物などのまとめられた物体を搬送するものなど、載せるものや移動方式によってさまざまな種類が使い分けられています。無人搬送車引用元:NANOXEED AGV(無人搬送車)無人搬送車は、材料・部品・商品などを積んで、自動で目的地まで移動する機械で、「AGV(Automated guided vehicle)」とも呼ばれています。名前の通り、無人でものの運搬ができるため、省力化や業務の効率化が期待できます。一般的な無人搬送車は、床に貼った磁気テープの上を移動していましたが、昨今ではAIが搭載されて、決められたルート以外の走行も実現しています。自動倉庫引用元:TOYOTA L&F Rack Sorter自動倉庫は、ものの入庫・保管・出庫の作業を自動で行う倉庫です。コンピュータ制御でこれらの作業を行うことから、「無人倉庫」と呼ぶ場合もあります。自動倉庫は導入するのにコストが大きくかかるものの、倉庫空間を広く利用できるほか、コンピュータ制御による荷役作業の自動化および無人化で、人件費を節約できるようになります。ソーター(自動仕分機)引用元:日本通運 羽田空港貨物センターの自動仕分け機をリニューアル!ソーター(自動仕分機)は、荷物の仕分け作業を自動で行うマテハン機器です。ソーターを利用することで、仕分け作業の高速化および省力化が期待できます。ソーターは、仕組みによって「スライドシュー式」、「パン式」、「クロスベルト式」、「ポップアップ式」などのさまざまな種類があります。ピッキングシステム引用元:SANKYO 倉庫内のピッキング作業のコツ ~作業効率化と人的ミスをなくす方法とは?~ピッキングシステムは、必要な品物を集める「ピッキング作業」の補助をするシステムです。一般的なピッキングシステムは、バーコードリーダーのような機器を用いて、商品管理を行います。商品の入荷や移動をする度にバーコードで管理するので、リアルタイムのデータを管理できます。また、ピッキングシステムは、誰でも簡単に必要な商品を探せるほか、複数人でピッキングを行う必要が無くなるため、教育や人件にかかるコストを削減できます。マテハン機器の耐用年数国税庁では、設備の種類(業種)ごとに、減価償却資産の耐用年数が定められています。減価償却資産の耐用年数は、短くて3年、長いもので15年など、種類によって大きく異なりますが、これらは税額計算の便宜上定められた数字で、実際の機械の耐用年数を表しているわけではありません。マテハン機器は、定期的な保守やメンテナンスを実施していると、減価償却資産の耐用年数よりも長く使えます。各種マテハン機器のメーカーに、実際の耐用年数とメンテナンスについて確認しておき、自社でマテハン機器によるトラブルが発生しないように注意しましょう。

  • Mitsuri|製造業とDX

    【工場の省人化】事例、方法、メリット

    省人化とは、設備や作業の見直し・改善を通して、各工程での無駄をなくし、人員を削減することを意味します。人員不足などが問題となっている製造業では、特に活用されています。本記事では、省人化の事例、方法、メリットなどについて解説いたします。省人化とは?省人化とは、工場内の設備や作業内容を見直しそれらの改善を図ることで、不必要な工程を減らし、人員を削減することを指します。省力化、少人化との違い省人化に類似した用語に、省力化、少人化という言葉があります。似ている言葉ですが、意味が異なります。まず省力化とは、各工程の作業内容の改善により、無駄をなくし作業者一人当たりの作業量を減らす方法です。これにより、作業の効率化を図ります。省人化では、人員削減を目的にしていましたが、省力化では人員削減は行わず各作業者の負担を軽減することを目的としています。次に、少人化とは受注の増減に応じて、人員の数を調整する方法を指します。人員削減を行う省人化とは異なり、少人化では生産量に応じて、最少人数で効率の良い生産体制を整えることを目的としています。省人化のメリットとデメリット省人化のメリットとデメリットについて見ていきましょう。メリット省人化のメリットとして、人手不足の解消が挙げられます。昨今、多くの工場では技術者の人員不足が問題となっており、技術者一人当たりの負担が大きくなっています。省人化によって効率化を図ることで、従業員の負担を軽減し、さらに人手不足の解消にもつながります。省人化を通して人員を減らすことによる人件費の削減、利益の向上、また業務の効率化、生産性の向上によるコスト削減なども期待できます。デメリット後述しますが、省人化ではロボットなどを用いた手法が多く採られます。そのため、設備の導入コストがかかってしまうというデメリットが挙げられます。ただし、同時に人員を減らしたり、業務の効率化を行うため、長い目で見ればコスト削減につながることが多いです。また、ロボットやシステムを管理するために、新たな人材が必要になることもあるので、注意が必要です。省人化の方法省人化を行う方法としては、次のようなことが挙げられます。自動化・自働化近年では、IoT、AI、ロボットなどの技術を用いて、自動化・自働化を行う企業が増えています。設備の改善、工場のスマート化などにより、省人化を推し進めることが可能となります。作業の見直しと改善省人化の基本的な考えは、不必要な作業を洗い出し、それらをなくすということです。各工程の作業の見直しと改善を行うことで、作業の無駄を減らすことができ、業務効率のアップにつながります。参考:【製造業の現場改善】ECRSの原則ではじめるコスト改善!参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点作業の平準化や標準化作業の平準化や標準化を行うことで、一部の作業者に依存せず、作業者一人一人が複数の業務に対応できるようになり、結果的に省人化につながります。省人化の事例工場の検査工程において、目視による検査から機械を用いた検査に切り替えることで、省人化を行い、結果的に人件費の削減、歩留まりの向上などにつながった事例もあります。また、以下の記事ではDXの導入による工場の省人化を行った浜石製作所の事例についてご紹介しております。さまざまなツールやソフトを用いて、今まで人が行っていた作業をデジタル化することで、省人化を行った事例です。参考:DX導入を進める浜石製作所がやってきたこと・目指すこと

  • IE手法【レイアウト分析編】製造業の現場改善

    IE (Industrial Engineering)手法とは、工程や作業・動作、配置(レイアウト)などを論理的に分析して改善に活用し、生産性を向上させる手法のことです。製造業の生産現場で頻繁に採用されています。IE手法には様々な手法がありますが、その中でもレイアウト分析は、工場建屋・倉庫・設備・機械・材料置場・人員などの配置を最適化することによって、人の移動や物の流れを改善する手法です。つまり、人員が作業しやすく、材料や製品などの移動が容易になるようにレイアウトを変更することで業務の効率化を図ります。この記事では、製造業の現場を対象とした、レイアウト分析の詳細や進め方、そしてレイアウト分析による改善の効果について解説していきます。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善レイアウト分析とはレイアウト分析とは、工場建屋や設備・機械、材料置場、人員などの配置(レイアウト)を分析して最適化し、人の移動や物の流れを改善する手法です。これにより、生産性向上やコスト削減、ムリ・ムダ・ムラの排除、事故の防止、作業環境の改善、設備保全の確保などの実現を図ります。工場におけるレイアウト分析は、具体的に述べると以下の手順で進めます。1. 立地計画2. 基本レイアウト3. 詳細レイアウト4. 設置1. 立地計画「立地計画」では、工場の新設や既存工場の建屋や倉庫などの新設・改修を行う際に、どのような地域・場所にそれらをレイアウトするのか、人の移動や物の流れはもちろん、コストなども考慮して計画を立てます。使用していない倉庫や工場敷地内の空いている土地を有効活用する場合も、立地計画は必要になります。なお、建屋や倉庫などのレイアウトの検討が不要な場合でも、以降の基本レイアウトや詳細レイアウトを適切に行うには、面積、柱の位置や太さ、天井の高さ、搬入口といった建屋や倉庫などの情報が必要不可欠です。2. 基本レイアウト「基本レイアウト」では、対象となる工場の生産品それぞれの生産方式を検討し、各生産品の製造エリア、各製造工程の作業エリア、生産に関連する部門や倉庫のレイアウトを概略的に決定します。そのために、後述するSLPと呼ばれるレイアウトの設計手法が主に用いられます。3. 詳細レイアウト「詳細レイアウト」では、基本レイアウトの採用案に基づき、各工程の作業エリア内や部門内などのレイアウトを検討します。例えば、工程の作業エリア内のレイアウトであれば、機械・設備や作業台、工具置場、棚、通路などのレイアウト以外にも、人員の作業場所や作業範囲、機械作動中は近寄ってはならないエリアなどのレイアウトも検討します。レイアウト作成は、基本レイアウトの作成と同等の手順で行うことが可能です。そのため、詳細レイアウトの作成にも、SLPが主に採用されます。4. 設置基本レイアウトと詳細レイアウトの実行案が決まれば、いよいよ実際の「設置」に乗り出します。その際には、まず設置の計画を立て、次に計画通りに進めるために様々な部門と調整しなくてはなりません。休日の実施が望ましいものの、終日機械を稼働させているケースなどもあるため、状況に応じた柔軟な対応が必要です。設置は、可能な限り生産に影響を与えない計画を立て、実施するようにしましょう。SLP (Systematic Layout Planning)の概略と進め方SLPは、「体系的レイアウト計画」とも訳される、汎用的な工場レイアウトの設計手法です。レイアウト分析における、基本レイアウトと詳細レイアウトの決定に用いられます(上図参照)。この手法では、生産品目と生産量、生産における工程間の相互関係、各工程の必要面積などの情報から、工場内のレイアウトを検討していきます。これにより、人の移動や物の流れ、作業時間などを最適化するのです。P-Q分析P-Q (Product-Quantity)分析は、生産品目(Product)と各品目の生産量(Quantity)の関係を定量的に分析する方法です。どの生産品目をどれだけの量作るのかを算出することで、生産設備などのレイアウトを左右する生産方式を決定します。その生産方式には、例えば、以下が挙げられます。●ライン生産方式同一製品の大量生産に適した方法です。製品の製造工程に沿って生産設備を配置し、流れ作業によって製品を製造します。レイアウトは、製品毎に原料投入から加工や検査、完成品の倉庫への貯蔵までの流れを直線的に配置する製品別レイアウトです。●機能別生産方式多品種少量の多様な製品の製造に対応した方法です。製品に必要な工程を組み合わせて製造します。この方式では、ライン生産のように、各工程の作業場所が作業順序に従って整列しているわけではなく、次工程の作業場所が隣接しているわけでもないので、工程間で製品の運搬が必要になります。レイアウトは、生産設備の機能毎や作業の種類毎に作業場所をレイアウトするジョブショップ型レイアウトです。●セル生産方式ライン生産方式と機能別生産方式の中間的な生産形態です。機能別生産方式と同様、工程毎に製品を運搬して製品を製造しますが、全工程の一部に数工程の短いライン生産方式を含みます。この短いラインは、異なる製品に類似する工程が存在する場合などに有用です。レイアウトは、数工程の作業が可能な複数の設備と人員から構成される「セル」を構築するグループ別レイアウトです。レイアウト分析におけるP-Q分析では、横軸を生産品目、縦軸を生産量としたパレート図(大きい順に並べた棒グラフとその累積構成比を表す折れ線グラフから成る複合グラフ)を作成することで行います(上図参照)。例えば、上図では、生産量の累積構成比が上位から80%に入る品目をAグループ、残りの品目から95%に入る品目をBグループ、最終的に残った品目をCグループに区分しています。それによって、以下のように、生産品目に合った生産方式を導き出します。・Aグループ:ライン生産方式に向いた種類の少ない大量生産品・Bグループ:セル生産方式に向いた種類が中間的な数の中量生産品・Cグループ:機能別生産方式に向いた種類の多い少量生産品ただし、これらは、生産量の情報のみを基にして推奨している生産方式です。工場によっては、コストやスペースの制約からラインが組めない場合や、生産設備の専有が難しいためにジョブショップ型にせざるを得ない場合など、状況が異なります。そのため、P-Q分析から得られた生産方式はあくまでも叩き台と考え、状況を考慮して実際の生産方式を検討します。物の流れ分析物の流れ分析は、各製品の製造工程についての情報から、工程を通じた物の移動を図表によって見える化して分析する方法です。具体的には、P-Q分析で得た生産方式の区分を利用し、以下のようにグループ毎に異なる方法で分析します。●工程分析表(オペレーション・プロセス・チャート)少数の大量生産品であるAグループは、「工程分析表」によって、各工程を図表化することで分析を行います。工程分析表は、上表のように物の流れを加工・検査・運搬・停滞・貯蔵の5つの活動に分類して記号で表し、下図のように原材料や部品の投入から加工や検査、完成品の貯蔵までの全ての作業を工程順に上部から並べた図表です。この表により、物の流れ全体が容易に把握できます。●多品種工程分析表(多品種用オペレーション・プロセス・チャート)数種類の中量生産品であるBグループは、「多品種工程分析表」によって、複数の製品の工程をまとめて図表化することで分析を行います。多品種工程分析表は、下図のように、最左列へ加工や検査などの工程を、最上行へ製品名を記入し、製品毎の工程順序を一連の番号で表した図表です。物の流れに類似性が存在すれば、数種類の製品の工程を1つの図表に表示可能です。この表を分析することで、例えば、回り道や逆戻りを最小化した生産設備のレイアウトなどを導き出すことができます。●From-To チャート数十種類の少量生産品であるCグループは、物が「どの工程から(From)」、「どの工程へ(To)」と何回移動したかを表示する「From-To チャート」と呼ばれる表によって分析します。From-To チャートでは、下図のように、行が「どの工程から」を、列が「どの工程へ」を示し、交差する欄にそれらの工程間を移動する製品名と移動回数を記入します。この表を分析することで、隣接させた方が効率的な生産設備などが分かります。なお、対角線の下部は物の逆戻りの流れであるため、その移動回数は可能な限り最小化すべきです。引用元:「具体的レイアウト改善の進め方」改善.netアクティビティ相関図表とアクティビティ相互関係ダイヤグラムの作成工場のレイアウトには、物の流れのほか、部門や倉庫、各工程の作業エリアなどのアクティビティの間の関連性についても分析しておく必要があります。そこで用いられるのが、アクティビティ相関図表と相関図表を図式化したアクティビティ相互関係ダイヤグラムです。アクティビティ相関図表は、上図のような、アクティビティの相互関係における全ての組合せを菱形の欄に記入する交差型の図表です。下表に従って、菱形の欄の上部にはアクティビティ間の近接性評価を、菱形の欄の下部にはその理由を記入します。相関図表の作成が完了したら、続いては、アクティビティ相互関係ダイヤグラムの作成です。相互関係ダイヤグラムは、上図のように、近接性評価の高いものから下表のルールに従って作成します。このとき、線の数が多い(近接性評価が高い)アクティビティほど近接するように描きます。これらの図表とダイヤグラムを分析することによって、近くに配置すべきアクティビティや離れていても問題がないアクティビティなど、アクティビティ間の相互関係が分かります。なお、相互関係ダイヤグラムの作成段階では、「生産設備の騒音の問題から事務部門と距離を取らなくてはならない」などの現実の制約を考慮する必要はありません。相互関係ダイヤグラムは、あくまでも理想的なアクティビティのレイアウトです。条件や制限を加味したレイアウトは、後述の「レイアウト案の作成」で行います。面積(スペース)相互関係ダイヤグラムの作成続いて、作成するのが面積相互関係ダイヤグラムです。面積相互関係ダイヤグラムでは、相互関係ダイヤグラムに各アクティビティの所要面積を適用しますので、事実上の工場レイアウトになります。ここでもし、工場で利用可能な面積よりも全アクティビティの必要面積が大きくなった場合は、必要面積を縮小するなどの調整が必要です。レイアウト案の作成SLPの最後に、面積相互関係ダイヤグラムから実際的なレイアウト案を作成します。面積相互関係ダイヤグラムでもレイアウトを行いましたが、これはあくまでも理想的な配置ですので、建屋の構造や運搬方法、予算、法的規制などの様々な条件・制限を考慮、反映した代替レイアウト案をいくつか作成します。そして、作成した代替レイアウト案の生産性や安全性、コストなどを評価・検討して実行案を選択します。レイアウト分析で現場の何が改善できるかレイアウト分析で実行するのは、最も効率的に生産するための建屋や倉庫、生産エリア、生産設備、材料置場、人員などのレイアウトを検討して、実際に配置することです。そのため、以下のような事項の改善が期待できます。・生産性の向上・効率性の向上・コスト削減・ムリ・ムダ・ムラの排除・空間の有効利用しかし、効率だけでなく、以下のような事項も考え合わせなくてはなりません。・事故の防止・作業環境の改善・設備保全の確保このように、レイアウト分析は、何を重要視してレイアウトに反映するかによって、多様な改善効果が望める手法です。しかし、実際のレイアウトの変更は、一朝一夕に実行できるものではないため、綿密な分析と計画立案が必要になります。

  • 製造現場での人材採用のポイント

    近年、日本は高齢化に伴い労働人口の減少が深刻化しています。特に製造業は人材採用の雇用が難しく、募集をしても思うように人が集まらないケースが多いと言われています。では、よりスムーズに製造現場で人材採用を行うにはどのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。製造業の雇用にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。製造業の人材採用が難しい原因まずは製造業の雇用が難しい原因について探っていきましょう。3Kといった製造業へのマイナスイメージがある製造業には「キツい」「汚い」「危険」を総称した3Kといったマイナスイメージがあります。このマイナスイメージから製造業界自体になかなか人が集まらない、他業界に人が流れてしまうことが一つの要因として考えられます。実際には工場によってこのような負の現象には差がありますが、やはり業界全体へのマイナスイメージが定着してしまうと、就職を一歩踏みとどまってしまう人もいるのかもしれません。労働人口の低下日本は少子高齢化に伴い、日本の労働力人口が減り続けているのが現状です。経済産業省が公表している「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」によると、「今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定。」(引用元:経済産業省)つまり、組織の中核である経営陣でも約半数は後継者不足に悩まされているのです。若年層の東京への集中また、製造業は地方に拠点を構えるのが一般的ですが、若年層の東京への一極集中により、どうしても地方で経営を続けることも困難になるでしょう。特に地方での経営者の高齢化は深刻になっています。60歳以上の経営者割合は一番高い秋田県で66.7%と、地方経営者の6割以上が高齢化しているのが現状です。人手不足にならないための対策様々な社会的背景によって国内の労働人口は減少傾向にあり、製造業界も少なからずその影響を受けているのが現状です。しかし人手不足をこれ以上悪化させないようにと、闇雲に人材募集をすればいいわけではありません。まずは社内でできることから始めてみることが大切です。現状の離職を防ぐいくら採用活動をたくさん行っても、人がすぐに辞めてしまうと元も子もありません。下記で紹介する対策を実践する前に、一度社内での離職率を高めてしまわない策を考えることが大切です。取り組む内容としておすすめなのが、キャリアを明確に提示すること。勤続年数、仕事の成績といった評価が今後の職位やキャリアにどんな影響を与えるかがわかるようになることで、社員自身の問題解決の糸口になったり、現状の立ち位置がわかることで仕事へのモチベーションアップを引き上げたりすることができます。そのためには、従業員の評価制度を構築することが必要です。従業員のモチベーションを高く継続させるには、短期的な目標と長期的な目標設定がキーになります。定性的、定量的な評価基準を決め、昇給や昇格のために必要な項目を明らかにしましょう。他にも、従業員の仕事に繋がる本の購入や講座の支援などを導入してみるのもおすすめです。ソフトやアウトソージングなどを積極的に導入単純作業を人が行っている場合、PCやソフトを導入してみるのはいかがでしょうか。自動化できる作業をヒトが極力介入しないことで、対ヒトとのコミュニケーションやアイディア出しといった、ヒトでしかできない仕事に集中することができます。また、初期投資や運用コストがかかりますが、産業用ロボットの導入も一つの手。作業手順のカットや作業時間の短縮が可能です。女性の雇用製造業の現場労働者というと男性のイメージがありますが、女性の雇用も視野に入れなくてはいけません。経済産業省によると、製造企業における女性従業者の割合は中小企業が42.5%、大企業が22.9%と中小企業が大企業に比べて高くなっています。また女性の雇用を増やすにあたって、福利厚生の充実、育休・産休の取得のしやすさなど改善すべきところもしていくと、女性もさらに働きやすく雇用も増えるかもしれません。(引用元:経済産業省)外国人労働者の雇用日本でも外国人労働者の数が増加しています。それに伴い、製造業界でも技能実習制度を活用して外国人労働者の雇用を視野に入れている企業もあります。技能実習制度とは、外国人の技能実習生が母国では習得が困難なスキルの習得を得ることを目的としたものです。期間は最長5年、技能実習生は受け入れ先企業と雇用契約を結びます。なお、外国人技能実習制度は対象となる職種が決められていますが、製造業では約50種が対象となっています。ただし、外国人採用は日本人採用とは違う法を遵守しなければなりません。事前に環境整備などの必要な準備はしっかり行うことが必須となります。自社HP・SNSでアピール最近ではネットも使って採用活動をしている人がほとんどです。そのため、自社のHPを使って採用をアピールすることで、より採用活動者が働く姿をイメージしやすくなります。また、SNSで自社の魅力やちょっとしたニュースなどをこまめに発信することで、より身近に、そして気軽に情報発信できます。駅の自動ドアや産業機械向け減速機などを手がけるナブテスコ株式会社は、FacebookやTwitterを活用して情報発信を行っています。プレゼントキャンペーンから自社製品の紹介、開発の歴史や従業員の声など発信内容はさまざまです。気負わずにちょっとした情報を発信できることがSNSの魅力です。まずは他社がどんな情報を発信しているのかリサーチし、真似できるところはどんどん取り入れてみましょう。製造業の人材採用まとめ人材採用が難しいと言われる製造業ですが、外国人労働者・女性といったあまり重視してこなかったターゲットへのアプローチを視野に入れてみてはいかがでしょうか。さらに、自社のHPやSNSを使って採用情報や自社の魅力をアピールしていくと、よりスムーズに採用活動ができるかもしれません。採用活動を積極的に行うことも大事ですが、まずは離職率を抑えることやPCソフトの導入など社内での環境設備の見直しを行うことがキーとなります。社内の労働環境を一度見直してみて、できることから一つずつ行ってみてください。

  • TPMの8本柱と進め方基礎|製造業の生産性向上

    TPMは、全員参加の生産保全と訳される生産システムに対する管理技術の一つです。製造業で採用されることが多く、ロスを徹底的に無くすことで、生産活動を効率化し、生産性を向上させることができます。TPMの直接的な目的は、企業利益の向上ですが、企業の構成員の意識改革や企業体質の変革にも繋がるマネジメント手法とされ、日本国内だけでなく世界中の工場でも採用されています。この記事では、TPMの詳細から、TPMの具体的な活動であるTPMの8本柱、TPMを導入した際の効果、TPMの進め方までを解説していきます。TPMとは?TPM(Total Productive Maintenance)とは、製造業において生産システムで発生するあらゆるロスを無くすことによって、利益の拡大と持続的な利益の確保を実現する活動のことです。「全員参加の生産保全」などと訳され、生産部門だけでなく開発や営業などのあらゆる部門が関わり、現場の作業員からトップに至るまでの全員が参加して、ロス・ゼロの達成を目指します。16大ロスTPMでは、生産システムで発生しやすい16の基本的なロスを挙げています。その16大ロスは、大きく以下の3種類に分類されます。・設備の効率化を阻害するロス・人の効率化を阻害するロス・原単位の効率化を阻害するロス「設備の効率化を阻害するロス」は、設備の故障や取り扱い方法の不備などを原因とするロスのことです。このロスによって、操業時間内の正味の稼働時間が目減りし、製品の生産という付加価値の創出に繋がらないムダな時間が発生します(上図参照)。このロスについては、以下の8つが挙げられます。1.故障ロス2.段取り・調整ロス3.刃具交換ロス4.立上がりロス5.速度低下ロス6.チョコ停・空転ロス7.不良・手直しロス8.シャットダウン(SD)ロスなお、「チョコ停」とは、生産設備の不良や製品の欠陥などで設備にトラブルが起こり、一時的に設備や生産が停止する現象のことで、「空転ロス」とも呼ばれます。「人の効率化を阻害するロス」は、人員の不効率な配置や動作マニュアルの不備などを原因とするロスのことです。このロスによって、就業工数の内に企業利益を生み出さない工数が発生します(上図参照)。このロスについては、以下の5つが挙げられます。9.管理ロス10.動作ロス11.編成ロス12.自動化置換ロス13.測定調整ロス「自動化置換ロス」とは、自動化が可能であるにも関わらず、人手での作業を維持することで生じる人的ロスのことです。「原単位の効率化を阻害するロス」は、材料やエネルギーなどのインプットから完成品というアウトプットを生み出す際に生じるモノやエネルギーのロスのことです(上図参照)。このロスについては、以下の3つが挙げられます。14..歩留まりロス15.エネルギーロス16.型・治工具ロスTPMでは、はじめに、この16大ロスを参考にして、潜在しているロスを洗い出します。その上で、ロス・ゼロを目指した活動を行うとともに、ロスを未然防止する仕組みを構築していきます。TPMの8本柱ロスの把握が完了した後、ロスの排除と予防を行うため、「TPMの8本柱」と呼ばれる8つの活動に全員参加で取り組みます。●個別改善生産ラインごとや設備ごとなど、個別のプロセスや設備で発生しているロスを調査して把握し、排除する活動のことです。個々のロスを排除することで、生産システム全体の効率化を図ります。●自主保全作業員が自分が取り扱う設備や作業を行う現場を自主的に整備して保全する活動のことです。設備のオペレータであれば、設備の点検や部品交換、修理などを自分で行います。また、オペレータか否かに関わらず、自分が作業する現場の保全を行うとともに、作業のムリ・ムダ・ムラなどを排除して作業を改善します。●計画保全設備の故障低減や寿命延長を目的に保守部門が取り組む活動のことです。故障時の迅速な復帰のための予備品管理、故障の発生を最小化する保守作業のスケジュール管理、設備の劣化診断などを行うことによる予知保全体制の確立、保全費の最適化などを行います。●初期管理製品や設備の開発段階から生産時や稼働時に発生するロスを予想して開発を行い、事前にロスの発生を最小化する活動のことです。製品の改善情報を収集して製品開発に反映するなどの活動も含みます。●品質保全不良やクレームによるロスを防ぐ活動のことです。不良の出ない最適な条件の調査とその条件の維持管理を行うとともに、不良発生の可能性を予知して対策することで不良ロスを防ぎます。製品の検査強化ではなく、工程の最適化や設備の条件設定などにより不良ゼロとクレームゼロを目指します。●教育訓練仕事に必要な知識や技能を整理して教育・訓練を最適化し、ロスを排除・予防するためのスキルアップを図る活動のことです。●管理間接部門活動管理・間接部門が生産現場におけるロスの削減・予防の支援を行う活動のことです。管理・間接部門でも、5Sの推進や工数の削減などによって効率化を図り、ロスの削減・防止に努めます。●安全・環境管理無事故・無災害を徹底するとともに、ゴミの排出量削減やCO2削減、省エネといった環境に配慮した取り組みを実施する活動のことです。TPM導入による効果TPM導入の目的は、企業における利益の拡大と持続的な利益の確保です。しかし、TPM活動を進めていくと、利益以外の様々な効果が得られます。TPM導入は、製造コストや生産性、稼働率といった指標の向上に繋がるのはもちろん、不良やクレーム、災害の発生抑制にも効果があります。そしてそれは、製品シェアの拡大や経常利益の増大などに結びつき、結果として企業の利益を拡大させるでしょう。また、作業員の自主管理の徹底や職場環境の改善のほか、部門間のコミュニケーション活動の活発化、そして企業の構成員の成長という無形の効果も期待できます。TPM活動の進め方TPM活動を進めるにあたっては、上述したようにロスを洗い出した後にTPMの8本柱を導入していきます。しかしもちろん、ロスの種類は企業の実態に応じて変わるため、導入する柱も状況に応じて増減させるなど、柔軟に対応していくことが大切です。また、TPMを導入する前に、TPMに関する教育、推進体制の整備、活動スケジュールの設定などを準備しておくと、効果が現れやすくなるでしょう。そして、実際にTPMを導入し、展開していく際には、上図のように段階的に適用範囲を広げていくことが勧められています。第1段階は、製造現場が対象です。ここでは、製造原価に直結するロスを排除・予防します。第2段階では、生産技術や生産管理、品質保証、購買・人事の部門など、生産プロセス全体にTPMの適用を広げます。この段階では、製品原価に関わるロスを生産関連部門と連携して排除・予防します。第3段階では、ビジネスプロセス全体にTPMを適用します。全社的にTPMに取り組み、キャッシュフロー上に潜むロスの全てを排除・予防します。

  • IE手法【稼働分析】稼働率・労働時間削減へ

    この記事では、IE(Industrial Engineering)の作業測定にあたる手法の、稼働分析について解説します。作業測定は代表的な手法に、「時間研究」と「稼働分析」があります。時間研究は作業にかかる時間を測定するものであるのに対し、稼働分析は作業者・機械の稼働率や時間の構成比率を求める際に活用する手法です。これらから算出したデータは、方法研究と組み合わせて活用することで、作業の改善が期待できます。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法参考:IE手法【時間研究】タイムスタディを徹底解説参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善稼働分析とは?稼働分析とは、IEの作業測定に属する手法で、一定期間のなかで人や機械がどの要素にどれだけの時間をかけているかの比率を分析します。稼働分析により得たデータは、グラフなどを使って問題点を明らかにしたあと、方法研究を用いて改善を行います。そして、改善した現場環境を再び稼働分析により再評価する、という流れで生産現場を改善していきます。稼働分析の目的稼働分析の目的は下記の通りです。・作業改善のポイントを見つける・ムダやロスの時間を定量化する・稼働状況の時系列を把握する生産効率を上げるには、人の価値作業をいかに多くし、付随作業とムダをどれだけ減らせるかが重要です。また、機械においても価値稼働時間の割合を多くし、ロスの時間を削減する必要があります。稼働分析では、人の作業を【価値作業・付随作業・ムダ】の3つに分類して、分析を行います。作業の種類詳細例価値作業付加価値(生む)を生む作業・材料の加工・部品の組み立て付随作業直接の付加価値を生まないが必要不可欠な作業・梱包を解く・部品を取り出すムダ付加価値を生まない必要のないもの・手待ち時間・繰り返し材料や部品を取りに行く価値作業は利益を有む作業のことで、なるべく増やしたいものです。付随作業は付加価値を生まないものの、価値作業をするために必要な作業を意味します。しかし、可能であれば削減すべき作業です。ムダは付加価値に結びつかない作業を意味しており、早急に削減が必要です。次に機械の仕事の分類について見てみましょう。操業時間負荷時間計画停止稼働時間停止ロス正味稼働時間性能ロス価値稼働時間不良ロス機械の稼働には【停止ロス時間・性能ロス時間・不良ロス時間】の3つのロス時間があります。機械を稼働できる時間は、工場の操業時間内に限られます。機械は操業時間のなかで電源を入れて負荷をかけている状態のことを「負荷時間」と言います。操業時間内に機械の電源を入れていない時間は「計画停止」に分類されます。負荷時間は、実際に機械が稼働している「稼働時間」と、機械が停止している「停止ロス時間」に分かれています。稼働時間は、機械の性能を十分に発揮している時間の「正味稼働時間」と、性能を発揮できていない時間の「性能ロス時間」に分けられます。正味稼働時間は、規格や仕様通りに製品を作った「価値稼働時間」と、不良品を作った「不良ロス時間」に分けられます。これらの負荷時間のなかにある3つのロスが大きいほど、機械の作業効率が低下していることを表します。稼働分析は、人の作業の分類で解説した付随作業やムダ、機械の仕事の分類で解説した各種ロス時間を削減するための手法です。生産効率を向上するには、価値作業と価値稼働時間の割合をどれだけ増やせるかがポイントとなります。稼働分析の種類稼働分析は、代表的な手法として以下の2種類があります。・連続観測法・ワークサンプリング法連続観測法は、連続的に対象を観測して時間比率を算出します。一方、ワークサンプリング法は、瞬間的な観測を複数回行ってデータを取り、統計的に評価します。連続観測法連続観測法とは、人や機械の稼働状態を、観測者が連続的に観測する手法で、「連続稼働分析」とも呼ばれています。連続観測法は、ストップウォッチを使って記録することもあれば、動画撮影を活用する場合もあります。連続観測法のメリットとデメリットについては下記の通りです。●連続稼働分析のメリット・正確な稼働時間を把握できる・作業手順の把握ができる●連続稼働分析のデメリット・1人の観測者につき1つの対象しか観測ができない・観測中は作業者と観測者がずっと一緒になるので、お互いの精神的負担が大きいワークサンプリング法ワークサンプリング法は、人や機械の稼働状態を、あらかじめ決めたポイントに絞って観測し、統計的に分析する手法です。一般的には連続観測法よりも、比較的コストが少なく結果が得られるので、ワークサンプリング法を採用するケースが多い傾向にあります。ワークサンプリング法は、各作業に対してどれくらいの時間と工数をかけているかをチェックし、統計的にデータを算出します。連続的ではなく瞬間的に観測を行うことから、「瞬間観測法」とも呼ばれています。ワークサンプリング法のメリットとデメリットについては下記の通りです。●ワークサンプリング法のメリット・観測者が作業者に張り付いてチェックする必要がなく、負担が少ない・1人の観測者に対して複数の作業者を調査できる・長い期間での観測が可能●ワークサンプリング法のデメリット・観測回数により、データの正確性に乏しい場合がある・作業の手順や頻度を把握できないワークサンプリング法の実施手順稼働分析では、ワークサンプリング法を多く採用しているため、実施手順についても解説します。1.観測目的を明確にするまずはどの作業を観測するのかだけでなく、作業者について、または機械について分析したいのかなど、観測の目的を明確にします。目的によっては、ワークサンプリング法以外の手法が適している場合もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。2.観測範囲の選定観測する範囲を決定します。ワークサンプリング法のメリットは、1人の観測者が複数の対象を観測できる点にあります。もし1人の作業者、もしくは1つの機械といった単体の対象を測定する場合は、連続稼働分析を検討してみてください。3.観測項目のリスト化分析する作業をリスト化します。複数の対象を観測する場合は、各作業者ごとに分けてリスト化しましょう。4.調査計画(観測期間・回数・時刻・巡回経路)の決定いつまで観測を続けるのか、観測の回数はどれだけ必要か、どの時刻で観測するのかなどのルールを決定します。観測時刻は偏りがないようにランダム時刻表を用いて決めます。5.観測の実施観測対象や観測時刻をまとめた用紙を用意し、観測したデータを記入していきます。あらかじめ現場には観測の了解を得ておきましょう。6.結果のまとめ観測したデータをもとに、稼働率や余裕率などを算出します。観測結果は工程や設備の種類ごとに分けて、問題点を明確にしやすいようにグラフ化しましょう。7.改善策の検討観測結果のグラフをもとに、なぜムダな作業が行われているかを関係者で話し合い、改善策の検討を行います。ワークサンプリング法の実施ポイントワークサンプリング法でよくある失敗例は以下の通りです。・観測したデータから改善案が検討できず、再度観測が必要になる・事前調査にない作業があり、記録できないワークサンプリング法は、事前の調査が足りないことから、観測を実施したあとにやり直さなければならない場合があります。これらを防ぐには、以下のポイントを意識してみましょう。●予備調査のときに、あらかじめ問題点や改善策をイメージするワークサンプリング法は、ロスしている時間を改善するために行うものです。データを観測・分析したとしても、改善を検討できるものでなければ意味がありません。このような事態にならないためには、予備調査の段階で、あらかじめ想定できそうな問題点や改善策をイメージしながら調査します。これにより、観測項目をリスト化して観測を行ったときに、データが不十分になることを防止できます。●調査計画をしっかりと行う観測期間は、観測対象によって大きく異なるものです。例えば、1週間で作業内容が変動するものの場合は、観測期間も1週間は必要になります。ワークサンプリングに必要な回数は、標準時間や余裕時間などを求めるような場合、高い精度が必要になり、その分観測回数も多く必要とします。巡回経路についても、観測の際に混乱しないよう、あらかじめルートを決めておくことが大切です。

  • IE手法【時間研究】タイムスタディを徹底解説

    IE(インダストリアルエンジニアリング)手法は、人・モノ・設備の動きを、工程・作業・動作まで細かく分析し、生産管理を最適化するために活用されています。そのなかでも代表的な手法である時間研究は、定量的に時間を測定して問題点を分析します。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法時間研究(タイムスタディ)とは?意味と目的時間研究(タイムスタディ)の意味時間研究とは、「タイムスタディ」や「時間分析」とも呼ばれている分析方法で、要素作業単位のワークユニット(仕事の単位)の時間を実際に測定したり、データにあてはめて算出したりして分析を行います。<ワークユニット(工程・作業・動作)の分類表>工程単位作業A要素作業a動作1動作2要素作業b動作3動作4単位作業B要素作業c動作5動作6要素作業d動作7動作8要素作業は、【手をのばす・モノをつかむ】といった動作から構成されるものです。例を挙げると【材料をとる】などの行動が要素作業になります。また、要素作業が複数組み合わさると、【材料運搬・穴あけ】などといった単位作業のワークユニットになります。単位作業が複数組み合わさると、【組み立て・ギア加工】などの作業系列の完成である工程のワークユニットになります。また、時間研究は代表的な手法として【ストップウォッチ法・PTS法】の2種類があります。これらの詳細について見てみましょう。ストップウォッチ法とはストップウォッチ法とは、実際の現場にてストップウォッチを使って要素作業を測定する手法です。測定した時間は、作業者の技量を踏まえて補正する「レイティング」などを行うことで、標準時間が求められます。ストップウォッチ法は、現場の雰囲気や状況を肌で感じながら調査できるほか、その場で計測を行うので、素早く分析できるメリットがあります。一方、細かい動きが追いにくい、記録のタイミングをはかるのが難しいといったデメリットがあります。ストップウォッチ法は、さらに細かく分けると【連続観測法・反復観測法】の2種類に分けられます。●連続観測法連続観測法は、作業開始と同時にストップウォッチを作動させ、途中で止めることなく測定を行う手法です。要素作業が完了するごとに時間を確認して記録します。ストップウォッチ法を活用する際は、一般的に連続観測法が採用されています。●反復観測法反復観測法は、要素作業の開始と同時にストップウォッチを作動させ、要素作業が終了するのと同時にストップウォッチを停止して記録する手法です。また、現場ではなく、作業内容を動画撮影したものから時間を測定し、分析を行う手法の「VTR法」もあります。VTR法は、自分のペースで作業を観察・測定できるので、分析しやすいメリットがあります。また、動画を複数人でチェックして問題点を議論できるのもポイントです。しかしVTR法は、動画撮影やデータ管理する手間がかかる、現場の空気感が伝わりにくいといったデメリットがあります。PTS法とはPTS法とは、要素作業をさらに細かく分けた、動作単位の時間を組み合わせて分析を行う手法です。PTS法は標準時間を算出する際に、レイティングをする必要がなく、誰が分析しても安定した数値を得られるメリットがあります。また、動作の性質と条件に応じて、決められた時間値を当てはめる手法のため、客観的かつ公平に分析が行えます。一方でPTS法のデメリットは、分析に時間を要するので長時間を要する作業には不向きです。そのほかにも、機械や装置によりコントロールされている作業に対しては利用できません。PTS法の代表的な手法には【WF法・MTM法】の2種類があります。●WF(ワーク・ファクター)法WF(ワーク・ファクター)法は、動作する身体部位などの4つの要因・変数に対して、数値をあてはめて標準時間を得る手法です。動作時間を決める要素は、以下の4つが定められています。・使用する身体の部位・動作距離・取り扱う重量または抵抗・動作の困難性(人為的調節)WF法の例としては、「工具を取るために腕を○○インチ動かす」という動作に対して、WFの動作時間表から数値をあてはめて標準時間を算出します。●MTM(Methods Time Measurement)法MTM(Methods Time Measurement)法は、WF法と近い考え方ですが、動作を部位別ではなく、10の基本動作で分類しています。・手を伸ばす(R:Reach)・運ぶ(M:Move)・クランク運動(C:Crank Motion)・回す(T:Turn)・押す(AP:Apply Pressure)・つかむ(G:Grasp)・定置する(P:Position)・ひきはなす(D:Disengage)・放す(RL:Release)これらの動作の種類と距離により、動作時間を算出します。時間研究(タイムスタディ)の目的時間研究の目的については下記の通りです。・非生産的要素の顕在化:要素作業にかかる時間を測定・分析することで、今まで見えていなかった非生産的要素を顕在化する。・改善すべき対象の分析:作業の標準時間を設定し、実際の所要時間を測定することで、改善すべき対象を判別する。・標準時間の設定:標準時間が決まることで、工程が正しく実行されているかを判別できる。・方法研究との組み合わせによる分析:非生産的要素を定量的に把握したものを、方法研究を使って削減する。ここでの「非生産的要素」とは、作業における3つの種類のうち、「付随作業」と「ムダ」を表すものです。作業は3つの種類に分類されるIE手法を取り入れるにあたり、作業は【価値作業・付随作業・ムダ】の3種類に分けて考える必要があります。作業の種類詳細例価値作業付加価値(利益)を生む作業・材料の加工・部品の組み立て付随作業直接の付加価値を生まないが必要不可欠な作業・梱包を解く・部品を取り出すムダ付加価値を生まない必要のないもの・手待ち時間・繰り返し材料や部品を取りに行く価値作業は、利益に直結する作業のため、なるべく増やしたい作業です。付随作業は、付加価値を生むために必要な作業であるものの、可能であれば削減したい作業です。ムダに関しては、付加価値を生まないもののため、なるべく早めに削減すべき対象です。時間研究では、分析対象となる要素作業が、これらの3種類のうちどれにあたるのかを判別する必要があります。付随作業とムダに関しては、IEの代表的な手法である「方法研究」を活用して削減していきます。これらの【価値作業・付随作業・ムダ】の3種類の時間がどれくらいの割合になっているかの調査は、作業測定の代表的な手法である「稼働分析」を用います。参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善参考:IE手法【稼働分析】稼働率・労働時間削減へ時間研究の進め方・実施方法ここでは、ストップウォッチ法を用いた時間研究の進め方を解説します。ストップウォッチ法は、現場にてストップウォッチを使い、時間を計測をします。作業を動画撮影して計測するVTR法も、基本的な流れは同じです。1.対象の作業を要素作業ごとに分ける時間研究では、はじめに分析する対象の作業を要素作業ごとに分割します。分割した要素作業は記録用紙にリスト化して、それぞれの時間を計測できるように準備しましょう。このとき、分割する単位を動作まで小さくしてしまうと、測定が難しくなるので注意が必要です。2.各要素作業の時間を実際に測定・記録するあらかじめ用意した記録用紙に、作業測定した時間を記録していきます。規則的な繰り返し作業の場合は複数回の観測を行い、平均値を算出します。3.測定結果のまとめ最後に測定結果をまとめます。複数回測定したデータの平均値を出す場合、明らかに異常なデータは除外して計算しましょう。のちに手順や時間を標準化する際に異常なデータがあると、適切な設定ができなくなります。正確なデータが取れたら、作業手順や作業時間の標準化を行うためのデータとして活用できます。作業手順については、熟練した作業者のムダのない手順をベースに考え、ムダやムラがある点は改善を行いましょう。作業時間の標準化については、【時間研究の標準時間とは】の項目で解説します。時間研究の実施にあたって発生する問題点●リスト化された作業手順と異なる作業を行う時間研究に取り掛かったものの、実際に現場に行って測定してみると、リスト化してある要素作業と実際の作業とで内容が異なる場合があります。これは作業者が、部品や機器の調子に不具合があった場合などに対して、対応しようとして起こり得る問題です。また、作業者の違いによっても手順が異なる場合もあります。●雑な要素作業の区分により、改善が検討できない要素作業の分割を行った際、あまりにも大雑把な分割をしてしまうと、具体的な改善ポイントが明確にならないケースがあります。例えば、「A.ボルトをセットする」「B.ナットを締める」の2つの動作を測定した際に、どちらも同じ要素として測定してしまい、AとBとでどちらを改善すべきかが分からない場合があります。●計測そのものが難しい、または時間がかかる計測方法に慣れていないと細かい動きを追い切れず、どのタイミングで記録すればよいのか混乱してしまうものです。また、時間研究を進めたとしても、手法によっては計測に時間がかかりすぎて、なかなか分析までたどり着けないケースもあります。問題点の対策ポイント●作業手順について話し合う機会を設ける作業者間で話し合いの機会を設けて、各々の手順を共有し、作業者間による違いを無くしましょう。また、話し合いを行うことで最適な手順のアイデアが浮かぶ場合もあり、作業手順がより確立されたものになります。●どの手法が適しているかを検討するストップウォッチ法・VTR法のどちらが適しているかを検討してから、計測を行いましょう。ストップウォッチ法とVTR法では、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。これらの手法の特徴を理解したうえで、各々の現場に合った計測方法を試してみてください。時間研究の標準時間とは標準時間とは、標準的な熟練度をもつ作業者が、標準の環境下かつ作業手順を踏んだときの時間と、水分補給や用足しなどの余裕時間を加えた時間のことを指します。余裕時間とは、朝礼・休憩・水分補給・機械調整・用足しなどで発生する遅延時間のことです。標準時間は、標準時間内に作業を行えるかの習熟度の確認として使えるほか、生産計画・進捗管理の基準などにも活用できます。標準時間の要件標準時間は以下の要件が求められます。・公平であること:工場・部門ごとの差がないか・適正であること:理論に基づいた時間設定ができているか標準時間は現場の作業時間の基準となるもののため、関係する作業者や管理者が納得できる、公平な設定である必要があります。ムリやムダが多い時間設定だと、標準時間とはなりません。また、標準時間が理論に基づいた設定であるかも重要です。標準時間の設定標準時間の設定は、ストップウォッチ法・PTS法などの手法を用いて算出します。1.はじめに時間研究にて得た時間データの平均、または代表値を決定します。2.測定時間の代表値を決定したら、次に標準時間として使用するための正味時間を計算します。正味時間の計算式は下記の通りです。正味時間の計算式正味時間=測定時間×レイティング係数時間研究で得た観測時間値は、そのまま標準時間にはならないので補正を行う必要があります。一般的に正味時間の計算は「レイティング」と呼ばれています。観測時間値が、なぜ標準時間に使えないかの理由については、測定した作業者の技量などにより、作業時間に違いが出てくるためです。正味時間を計算するには、測定したときの作業者とほかの作業者を比較して【熟練・努力・作業条件・安定度】の4つの観点から「レイティング係数」を何段階かに分けて決め、観測時間値に乗算します。3.次に正味時間から、さらに補正をかけて標準時間を算出します。標準時間の計算式標準時間=正味時間×(1+余裕率)標準時間は正味時間だけでなく、水分補給や用足しなどの時間も考慮して算出する必要があります。余裕率とは、作業に必要な余裕時間の割合のことです。余裕時間は、休憩・水分補給・用足し・機械調整などにかかる時間です。余裕時間は【作業余裕・職場余裕・個人余裕・疲労余裕】の4種類に分類されています。・作業余裕:工具の取り替え・掃除・機械調整など(余裕率3~5%)・職場余裕:朝礼・連絡・整頓など(余裕率3~5%)・個人余裕:水分補給・用足しなど(余裕率2~5%)・疲労余裕:雑談・休憩など(余裕率:軽作業10%・中作業20%・重作業30%)時間研究がうまくいかないとき時間研究がうまくいかないときは、事前準備で対策をしてから実行してみてください。また、うまく計測や記録をするには回数をこなして慣れることも大切です。時間研究を行ったあとは、情報整理もその日のうちに行いましょう。計測後に情報整理すると、現場のイメージが残っている状態なので、よりよい改善策のアイデアが浮かびやすくなります。

  • IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法

    この記事では、IE手法の意味やメリット、代表的なIE手法の種類について解説します。IE手法(IE活動)とは、生産現場の工程・作業・動作を分析し、生産管理を最適化する手法のことです。IEは1900年代初期から導入されている手法で、製造業に限らずさまざまな業界で採用されています。現場の生産効率を改善できないことでお悩みの企業は、ムダや問題点を顕在化していないことが原因かもしれません。しかしIE手法を取り入れることで、問題点が顕在化され、改善策を講じられるようになります。IE活動・IE手法とは?意味・目的・メリットIE手法(IE活動)とは、「Industrial Engineering(インダストリアルエンジニアリング)」のことで、人・モノ・設備の動きを、工程・作業・動作まで細かく分析する手法を指します。日本インダストリアル・エンジニアリング協会では、IEを以下のように唱えています。「IEは、価値とムダを顕在化させ、資源を最小化することでその価値を最大限に引き出そうとする見方・考え方であり、それを実現する技術です。仕事のやり方や時間の使い方を工夫して豊かで実りある社会を築くことを狙いとしており、製造業だけでなくサービス産業や農業、公共団体や家庭生活の中でも活用されています」引用元:日本インダストリアル・エンジニアリング協会IEは、1900年初期に、アメリカの技術者兼経営学者“フレデリック・テーラー”によって提唱された手法で、幅広い業界で採用されています。IEの目的は、生産管理の最適化です。現場の3ム(ムリ・ムラ・ムダ)を顕在化し、それらを改善することで、生産性と収益の向上が期待できます。IE手法を利用するメリットには、生産管理を定量的に分析できるので検討しやすいこと、記号や図表を用いて表すので誰でも判断しやすいことが挙げられます。参考:製造業の3ム3M(ダラリ)をなくして現場改善IE手法の分類IE手法は大きく分けて【方法研究・作業測定】の2つに分類されています。方法研究とは、最善の方法を追求するための手法で、作業フローの改善と、個々の作業の改善を行うものです。作業測定とは、作業時間を定量的に測定する手法で、現状分析や評価、見積もりに使用します。また、そのほかの分類として、方法研究と作業測定を組み合わせた手法も存在します。代表的なIE手法IEは、工程・作業方法・手順を分析して改善を行う「方法研究」と、作業に必要な時間を測定・分析して、ムダな時間をなくす「作業測定」の2種類に分類されます。方法研究方法研究とは、3ム(ムリ・ムラ・ムダ)のある工程・作業・動作を分析して、改善を行う手法です。ここでは方法研究のなかでも代表的な手法、「工程分析」と「動作分析」についてご紹介します。●工程分析工程分析とは、材料が製品化されるまでの作業工程を分析することです。工程分析では【加工・運搬・検査・停滞】の4つを対象に分析します。・加工:材料の加工や部品の組み立て・運搬:機械および人力でモノを運ぶこと・検査:品質に問題がないか、規格・仕様を満たしているかの検査・停滞:各工程間の待ち時間工程分析を行うと、上記の課題が見えるようになり、工程全体を改善しやすくなります。また、工程分析には【フロープロセスチャート・アッセンブリーチャート・経路分析・フローダイヤグラム】の4種類のタイプがあります。フロープロセスチャート(加工工程分析)は、1つの材料や部品が各工程を経て変化する状態を、加工する順に沿って工程図記号で表した図で分析します。アッセンブリチャート(組立工程分析)は、複数の部品を組立てる工程を工程図記号で表した図で分析します。経路分析(類似工程分析)は、製品の品種ごとに工程の流れを調べ、類似する工程をグループごとに分けて分析する手法です。フローダイヤグラム(流れ分析)は、運搬経路分析とも呼ばれており、人とモノの流れ・動線を分析する手法です。参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善●動作分析(作業分析)動作分析(作業分析)とは、作業ごと、もしくは1つの工程について、作業者の動作内容を分析することです。生産工程におけるムダな動作や作業をなくすことで、生産効率の改善が期待できます。動作分析(作業分析)では作業員のムダな動作や作業、ムリな姿勢などを調べて改善し、作業効率の向上を図ります。また、作業員の経験やノウハウによる差異を把握し、人員・作業内容スケジュールなどを最適化します。ここでの「動作」とは、作業の最も小さな単位区分のことを指します。また、「作業」には、いくつかの動作の組合せによって構成される1つの作業「要素作業」と、作業として完結する最小の単位である「単位作業」の2つがあります。動作は“作業員が手をのばす”、要素作業は“材料を取る”、単位作業は“穴あけ加工をする”などが例となります。これは、複数の動作から要素作業が成り立ち、複数の要素作業から単位作業が成り立っていることを差します。そのため、動作分析と作業分析では着目するポイントが異なり、分析の仕方にも違いがでてきます。参考:IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善●マテハン分析(運搬分析)マテハン分析(運搬分析)は、材料や製品の移動・運搬を分析する手法です。マテハンは「マテリアル・ハンドリング」の略で、自社内での荷下ろし・積み替え・移動・出荷作業などのモノの移動のことを指します。マテハンのコストは高い分、工程内の移動や運搬などを抑えることが生産管理の改善に繫がります。マテハン分析は、代表的なものに【運搬工程分析・運搬活性分析・カラ運搬分析】があります。運搬工程分析は、運搬工程記号を使ってモノの取り扱いを記録し、分析します。運搬活性分析は、活性(置かれたモノの移動のしやすさ)に着目し、積み込みや荷下ろしにどれだけの労力が費やされているかを分析します。カラ運搬分析は、モノの移動ではなく、運搬設備や器具のみの移動に行われる運搬(カラ運搬)を分析します。作業測定作業測定では、業務内容に標準時間を設定したのち、実際の時間を測定してムダな時間を顕在化します。●時間分析時間分析とは、作業員の業務内容に標準時間を設定して、実際にかかる時間を記録し、分析することです。標準時間は、ムリのない条件や環境下で、一定の品質の製品を作るのに必要な時間のことです。作業にかかる時間の目安になるので、スケジュールを管理するのに役立ちます。時間分析には大きく分けて【ストップウォッチ法・PTS法】の2種類があります。ストップウォッチ法は、現場にて直接自分の目で作業を観察し、ストップウォッチで時間を測って分析します。PTS法は、作業を動作要素まで分解し、その動作要素に決められた標準時間を組み合わせることで作業時間を見積もる手法です。●稼働分析稼働分析とは、人や機械がどの要素にどれだけの時間をかけているかを分析する手法です。稼働分析の代表的な手法に【連続観測法・ワークサンプリング法・セルフタイムスタディー法】の3つがあります。連続観測法は、現場観測やビデオなどで連続的に観測する手法で、手間がかかるものの正確な観測が可能です。ワークサンプリング法は、観測するタイミングを決めておき、観測した瞬間の稼働状況を分析します。セルフタイムスタディー法は、仕事の実績を表に記述したものを一定期間集計し、人の稼働の全体像を明らかにする手法です。改善対象を選ぶ改善対象を選ぶには、生産状況を定量的に把握して、作業のロスを見出す必要があります。ここでは改善対象を見極めるための手法である、代表的な分析方法【P-Q分析・P-MH分析・ワークユニット分析】をご紹介します。P-Q分析P-Q分析とは、重点的に改善すべき製品を選ぶために、製品と生産量の関係をパレート図を用いて分析する手法です。P-Q分析のPは「Product(製品)」、Qは「Quantity(生産量)」を意味します。分析には、横軸に品目、縦軸に生産量に設定したパレート図を用います。各生産量は棒グラフに、累計パーセントは折れ線グラフのパレート図で表します。完成したパレート図を確認することで、量産品・多品種少量品・個別生産品が明らかになり、よりよい生産管理の手掛かりを得られるようになります。パレート図とは、項目別のデータを値の大きい順に並べた棒グラフと、累積比率(各項目のデータ数を累積数の合計で割った値)を組み合わせた複合グラフのことです。パレート図はQCの7つ道具のうちのひとつで、製造現場の問題点を見える化するのに役立ちます。参考:製造業の生産管理を徹底解説参考:製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点P-MH分析P-MH分析とは、重点的に改善すべき製品を選ぶために、製品と工数の関係をパレート図を用いて分析する手法です。Pは「Product(製品)」、MHは「Man Hour(工数)」、工数=生産量×1個あたりの作業時間を表しています。P-MH分析もP-Q分析と似たように、製品と工数の関係をパレート図にて顕在化し、手間がかかっている製品をピックアップして改善を行います。ワークユニット分析ワークユニットとは、作業の構成や、まとまりの単位のことを指します。ワークユニット分析は、改善対象の大きさや、最適なIEを決めたいときに役立つ手法です。【ワークユニットの仕事量=ワークタイム×ワークカウント】であり、個々のワークユニットの仕事量を合計することで、製品全体の仕事量が求められます。逆を言えば製品全体の仕事量は、細かいワークユニットに切り分けが可能です。ここでの「ワークタイム」はワークユニットの作業時間、「ワークカウント」はワークユニットの発生回数のことを意味します。次に改善対象の大きさを判別する目安となる、ワークユニットのレベルを見てみましょう。<ワークユニットのレベル>レベルワークユニット詳細例6最終製品業務製品を完成するのに必要な作業・業務製造5中間製品(大工程)中間段階での作業系列のまとまった完成状態組立4課業(工程)決まった作業域での1つのまとまった作業で、作業のサイクルとして完成を見る単位ギア加工3単位作業作業として完結する最小の単位穴あけ2要素作業いくつかの動作の組合せによって構成される1つの作業材料を取る1動作作業の最も小さな単位区分要素作業を構成する測定可能な最小単位手をのばす上表のように、ワークユニットはいくつかのレベルに分類できます。レベルには定義があるわけではなく、あくまでも目安として記述しています。IE手法の改善対象を選ぶにあたり、ワークユニットのレベルによって最適な手法は異なります。現場を改善するには、どのワークユニットを対象にすべきか判断することも重要です。

  • IE手法【動作分析・作業分析編】製造業の現場改善

    IE(Industrial Engineering)手法は、1900年初めに、アメリカの技術者兼経営学者“フレデリック・テーラー”によって提唱された改善手法です。人やモノの動きを可視化し、分析することで、現場のムリ・ムダ・ムラを改善します。この記事では、IE手法の代表的なものである【工程分析・作業分析・動作分析】のうち、作業分析と動作分析について解説します。参考:IE活動・IE手法まとめ!概要や代表的手法参考:IE手法【工程分析編】製造業の現場改善参考:製造業の3ム3M(ダラリ)をなくして現場改善動作分析・作業分析とは何かIE手法のなかでも代表的な手法に、【工程分析・作業分析・動作分析】があります。これらの違いは、ワークユニット(作業の構成)のレベルの違いによるものです。参考として【工程・作業・動作】の分類表を以下に示します。<工程・作業・動作の分類表>工程単位作業A要素作業a動作1動作2要素作業b動作3動作4単位作業B要素作業c動作5動作6要素作業d動作7動作8上表のように、工程は単位作業による構成、単位作業は要素作業による構成、要素作業は動作の組合せにより構成されています。工程分析・作業分析・動作分析は、これらのどのワークユニットで分析するかによって名前が異なります。分析方法の種類IE手法の代表的な手法に【工程分析・作業分析・動作分析】があると述べましたが、今回は【作業分析・動作分析】に焦点を当てて解説します。作業分析作業分析の代表的な種類として【ライン作業分析・連合作業分析】の2種類があります。加工系および組立系のような、ライン編成がメインの場合は「ライン作業分析」を、作業者と作業者、もしくは設備と作業者の連携がメインの場合は「連合作業分析」を活用します。●ライン作業分析ライン作業分析とは、「ピッチダイアグラム」と呼ばれる、各工程の作業時間を棒グラフに表した図を用いて、各工程の作業時間と標準サイクルタイムを比較し、改善を行う手法です。ピッチダイアグラムにて、ラインバランスを視覚化することで、問題点が判明しやすくなります。ピッチダイアグラムの参考図は下記の通りです。<ピッチダイアグラム参考図>引用元:株式会社Key-Performanceライン作業分析では、ピッチダイアグラムを作成し、ラインバランス効率がどのようになっているか分析することができます。例えば上図では、工程3が標準サイクルタイムを超え、ボトルネックとなってしまっていますが、一方で工程2・工程4は作業時間が少ないことが分かります。そのため、ラインバランスを改善するには、行程3に人員を割り振ったり、工程2と工程4に作業時間を分配したりといった方法が考えられます。一般的にライン作業において、ラインバランス効率が85%以上あると、効率良く作業ができているとされています。ラインバランス効率の計算式は下記の通りです。ラインバランス効率の計算式ラインバランス効率(%)=各作業者の所要時間の合計/ボトルネック工程の時間×工程数ラインバランス効率が85%を下回るようなら、改善を検討しましょう。●連合作業分析連合作業分析とは、複数の作業者間、または設備と作業者間の組合せ作業に対して、【単独作業・連合作業・不稼働】の各性質に区分してチャート化し、作業ロスを浮き彫りにする手法です。【単独作業・連合作業・不稼働】の詳細については下記の通りです。1.単独作業:設備や他の作業者と関係ない作業2.連合作業:設備や他の作業者と協同する作業3.不稼働:設備や他の作業者を待っている状態連合作業分析では、サイクルタイムの短縮と、配置人員の削減を目的とします。例として連合作業分析でチャートにしたものを下に表します。<改善前のチャート(サイクルタイム:180秒)>作業者旋盤切粉除去切粉除去チャッキングチャッキング手待ち切削アンチャッキングアンチャッキング測定停止チャートでは背景がグレーの箇所を「連合作業」、黒の箇所を「単独作業」、白の箇所を「不稼働」で表しています。この図から分かるように、旋盤が切削している間は、作業者が不稼働の状態になっています。一方で作業者が測定をしている間は、旋盤が不稼働の状態です。次に改善後のチャートを以下に表します。<改善後のチャート(サイクルタイム:150秒)>作業者旋盤切粉除去切粉除去チャッキングチャッキング測定切削手待ちアンチャッキングアンチャッキング改善後は切削の間に、ひとつ前のサイクルにて加工したワークを測定することで、サイクルタイムを180秒から150秒まで短縮しています。このように連合作業分析では、組合せ作業に対してのムダを視覚化することが可能です。動作分析動作分析は、作業員の手や目の動き、移動、思考時間などを、細かく分析することによって、ムダな動きをなくしていきます。今回は動作分析の代表的な種類である【サーブリッグ分析・フィルム分析】について解説します。●サーブリッグ分析サーブリッグ分析とは、人間が作業を行うときの基本動作を18種類の動素に分類し、それぞれを記号化したものを使って、作業の流れの全体像を可視化し、問題点を浮き彫りにする手法です。サーブリッグ分析は、アメリカの“フランク・ギルブレス”が1915年に考案した手法で、各動素は以下の表のように記号化されています。<サーブリック分析記号の一覧表>1.青色の第1類:価値を生み出す必要な作業だが、距離や時間など短縮できるところは改善する。2.黄色の第2類:できればなくしたい動素。3.赤色の第3類:ムダな作業なので、完全に取り除く必要がある。引用元:OTRS (参考データは【よくわかる「IE七つ道具」の本(日刊工業新聞社)】によるもの)サーブリッグ分析では、上表の記号を用いて、下に記載しているような分析表に記入し、データを収集します。これにより、作業に含まれる人間の動作を分析して、ムダのない動きになるように改善します。<サーブリッグ作業分析表の例>要素作業左手右手ムダな点改善点要素動作サーブリッグサーブリッグ要素動作●フィルム分析フィルム分析とは、撮影機器を用いて作業動作を撮影し、各コマを分析することで、動作と動作時間を明確にする手法です。フィルム分析は、「メモモーション分析」と「マイクロモーション分析」の2種類に分けられます。メモモーション分析は、低速度撮影によりチェックする手法で、作業内容が理解できる最も遅い速度で撮影して分析します。メモモーション分析は、「作業改善」が目的で、「連合作業」や「長時間作業」の分析に使用します。一方マイクロモーション分析は、高速度撮影を行い、通常の速度で見て分析を行います。マイクロモーション分析は、「単純反復作業」などの分析に使用します。

  • IoT時代のPLMとは?製品ライフサイクル全体を管理する

    PLMは、「Product Lifecycle Management」の略で、製品ライフサイクル管理を意味します。PLMは、企画から開発・設計、生産、販売、廃棄までの一連のプロセスを統合的に管理する仕組みを指し、製品による利益を最大化する目的で、自動車産業や電機産業など、さまざまな分野において利用されています。PLMとは?基礎解説PLMは、「企画→開発→設計→生産→販売→メンテナンス→廃棄」という製品ライフサイクルの一連の流れにおける情報を管理することができるシステムです。PLMシステムには、下表に示すような、製品のライフサイクル全体を通して必要となるデータ作成機能や管理機能などが搭載されています。<PLMが備える主な機能>工程主な機能企画製品ポートフォリオ管理、予算編成、要件管理設計製品設計、型設計、モデルベースシミュレーション、CADなどのデータ管理、設計部品表(BOM)管理、原価管理、開発スケジュール管理調達取引先情報管理、購買部品管理、提案・見積管理生産準備〜生産型加工、設備設計、製造部品表(BOM)、製造工程表の管理、時間管理、製造データの管理、作業指示書メンテナンス部品管理、保守・修理の管理このように、PLMを導入し製品の情報を一元管理することで、各部門における情報の共有が効率化され、結果的にQCD(Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期))の向上につながります。PLMとPDMの違いPLMと類似している概念にPDM(Product Data Management)があります。PDMは「製品情報管理」を意味しており、CADや部品表(BOM)などの開発・設計に関するデータを管理するシステムを指します。前述した通り、PLMでは製品ライフサイクル全体の情報を管理するのに対し、PDMでは開発・設計に関するデータのみを対象として管理します。ただし、製造業では開発・設計業務と生産業務は連携して情報を共有することが望ましいことから、PLM製品にPDMの機能が付帯されていることもあります。参考:BOM(部品表)とは?例と種類・用途PLMのメリットPLMを導入し、製品ライフサイクルにおける各プロセスの情報を関連付けて一元管理することにより、各工程での作業効率がアップします。業務の効率化、製品情報の共有化が進むことによって、業務時間の短縮によるコスト削減、品質の向上、製品開発リードタイムの短縮などが可能となります。コストの削減に加え、製品開発リードタイムが短くなり市場投入までの期間を短縮することで、利益の最大化が期待されます。参考:製造業の生産リードタイム基礎知識IoT時代のPLM近年、製造業においてIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の導入が進んでいます。しかし、現状は多くが設備や製造工程に限定して使用されています。こうした中で、IoT技術のPLMへの応用が期待されています。例えば、工場の生産現場で取得した情報を設計情報と合わせて活用することで、PLMへの応用・適用が進み、新たな方法での在庫や原価の管理、品質管理が可能となるでしょう。その他にも、IoT化された製品を使用するユーザーから得られたデータを設計に反映することで、PLMを最適化し、利益をより増大させられる可能性もあります。このように、IoT時代におけるPLMでは、IoTによって得られるビッグデータを、設計など製品ライフサイクルにおける各プロセスへとフィードバックすることが求められています。参考:【イベント】「AI/IoTでささえる、かがやく子どもの未来」から学ぶ、未来創造のための技術活用