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  • 電縫管(溶接管)とは?規格、特徴、製造方法、腐食の対策方法

    管(パイプ)は、上下水道や化学プラントなどの配管設備、自動車のドライブシャフトや産業機械のシリンダーなどに用いられている、私たちの生活に欠かすことのできない部材・部品です。その中でも電縫管は、板を丸めて長手方向に沿って縫い合わせるように電気抵抗溶接することで成形するパイプです。生産性が高い上に、生産コストも低く、寸法精度に優れており、強度も高くなっています。最も幅広い用途に使われているパイプで、配管をはじめ、自動車部品、機械部品、建築物などに用いられています。この記事では、電縫管について解説していきます。特徴や用途、規格、製造工程など、電縫管に関する様々な事項について詳しく説明しますので参考にしてください。電縫管(溶接管)とは?特徴と用途電縫管とは、電気抵抗溶接の一種である縫合せ溶接と呼ばれる溶接法を使用して製造した鋼管のことです。電気抵抗溶接鋼管とも呼ばれます。電縫管の製造では、鋼帯コイルを連続的に引き出し、引き出した先で鋼帯を円筒状に成形して、円筒状となった鋼帯の端を溶接することで、鋼管の継ぎ目となる部分を接合してパイプにします。電縫管は、鋼帯から作製するため、肉厚の薄いパイプの製造に最適です。大量生産に向いており、コイルの引き出しと円筒形状への成形、継ぎ目の溶接などの一連の工程を連続的に行うことから、高い生産性を確保することができます。継目部(シーム部)については、溶接痕(溶接ビード)が発生してしまいますが、溶接ビードを削り取ることで滑らかに仕上げることが可能です(上図参照)。一方、シーム部以外については、シーム部周辺の溶接熱が影響した部分を除いて、素材そのままの表面性状が維持されます。また、溶接接合したシーム部の強度が懸念されることがありますが、近年の技術の高度化により、高強度かつ高品質、高精度なパイプの製造が可能となっています。材質については、多くが炭素鋼で、低炭素鋼のS10Cから、高炭素鋼のS50Cまで、様々な炭素含有量の炭素鋼が用途に合わせて使い分けられています。そのほか、ステンレス鋼やクロムモリブデン鋼、高マンガン鋼などの合金鋼も用いられます。製造可能な寸法は幅広く、外径は6.35mm~700mm、肉厚は0.6mm~28.0mm、長さは20m程度までの製品が鉄鋼メーカーなどで製造されています。参考:抵抗溶接について!原理や特徴を解説しています!電縫管の規格電縫管は、電気抵抗溶接によって製造された鋼管として、以下のJIS規格に規定されています。・JIS A 5525 鋼管ぐい・JIS A 5530 鋼管矢板・JIS C 8305 鋼製電線管・JIS G 3441 機械構造用合金鋼鋼管・JIS G 3442 水配管用亜鉛めっき鋼管・JIS G 3443 水輸送用塗覆装鋼管・JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管・JIS G 3445 機械構造用炭素鋼鋼管・JIS G 3446 機械構造用ステンレス鋼鋼管・JIS G 3447 ステンレス鋼サニタリー管・JIS G 3448 一般配管用ステンレス鋼管・JIS G 3452 配管用炭素鋼管・JIS G 3454 圧力配管用炭素鋼鋼管・JIS G 3456 高温配管用炭素鋼管・JIS G 3459 配管用ステンレス鋼管・JIS G 3460 低温配管用鋼管・JIS G 3461 ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管・JIS G 3462 ボイラ・熱交換器用合金鋼管・JIS G 3463 ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管・JIS G 3464 低温熱交換器用鋼管・JIS G 3466 一般構造用角形鋼管・JIS G 3472 自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管・JIS G 3473 シリンダチューブ用炭素鋼鋼管・JIS G 3474 鉄塔用高張力鋼管・JIS G 3475 建築構造用炭素鋼管・JIS G 3478 一般機械構造用炭素鋼鋼管・JIS G 3479 焼入性を保証した機械構造用鋼管電縫管は、その製造方法である「電気抵抗溶接」を表す記号として「E」が割り当てられており、鋼管の種類を示す記号の後に付けることと定められています。また、鋼管の仕上げ方法を表す記号も下表のように定められており、製造方法の記号の後に付けることとされています。仕上げ方法記号説明熱間仕上げH溶接後、鋼管を連続加熱炉に通して加熱したもののこと。絞り圧延機や冷牽設備で鋼管を引き伸ばす際や、金属組織の均一化を図る際に行われる。冷間仕上げと比べると寸法精度や表面性状に劣る。冷間仕上げC溶接後、加熱することなく、鋼管を金型に通して加圧し、形状を矯正したもののこと。強度や寸法精度が向上し、表面性状が良くなるものの、靭性は低下する。電気抵抗溶接ままG溶接後そのままの鋼管のこと。シーム部だけが加熱された状態であることから、素材そのままの表面性状が維持される。そのため、電縫管は、鋼管の種類を示す記号の後に以下のどれかを表示することが必要となります。・−E−H…熱間仕上電気抵抗溶接鋼管・−E−C…冷間仕上電気抵抗溶接鋼管・−E−G…電気抵抗溶接まま鋼管例えば、炭素鋼やステンレス鋼を素材とする鋼管では、以下のような表記が考えられます。・SGP−E−H…一般機械構造用炭素鋼のS45CTKを材質とする熱間仕上電気抵抗溶接鋼管・SUS304TP−E−G…配管用ステンレス鋼のSUS304TPを材質とする電気抵抗溶接まま鋼管参考:SUS304TP|jis規格の違いと使い分け、スケジュール番号電縫管の用途電縫管は元々、ガス管・水道管などの配管やガードレール・支柱などの構造物に用いられていました。しかし、近年の技術の向上によって、継ぎ目のないシームレス管が採用されていた、厳しい環境で用いられる油井掘削管やラインパイプ、高温環境で用いられるボイラやエンジン、精度の要求が高いドランスミッションやプロペラシャフトなどにも採用されるようになっています。電縫管の用途として、炭素鋼鋼管と合金鋼鋼管とを分けると、下表のようにまとめることができます。●炭素鋼鋼管規格名記号用途鋼管ぐいSKK鋼管杭鋼管矢板SKY鋼管矢板鋼製電線管-電線管水配管用亜鉛めっき鋼管SGPW水道用・給水用以外の空調用・消火用・排水用などの水配管水輸送用塗覆装鋼管STW上水道, 下水道, 工業用水道, 農業用水路一般構造用炭素鋼鋼管STK鉄塔, 足場, 支柱, 基礎杭機械構造用炭素鋼鋼管 STKM機械器具, 自動車, 自転車, 家具, 器具, その他の機械部品配管用炭素鋼鋼管SGP低圧の蒸気・上水以外の水・油・ガス・空気などの配管圧力配管用炭素鋼鋼管STPG350℃以下で用いる圧力配管高温配管用炭素鋼鋼管STPT350℃超で用いる配管低温配管用鋼管STPL0℃以下で用いる配管ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管STBボイラの水管・煙管・過熱器・空気予熱器, 化学工業・石油工業で用いる熱交換器, コンデンサ管, 触媒管低温熱交換器用鋼管STBL0℃以下で用いる熱交換器管・コンデンサ管一般構造用角形鋼管STKR土木・建築などの構造物の部材自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管STAM自動車構造用部品シリンダチューブ用炭素鋼鋼管STC油圧シリンダ・空気圧シリンダのシリンダチューブ鉄塔用高張力鋼管STKT送電鉄塔建築構造用炭素鋼鋼管STKN建築構造物の部材一般機械構造用炭素鋼鋼管S-CTK, S-CKTK機械部品参考:STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)とは?規格・特徴・比重●合金鋼鋼管規格名記号用途機械構造用ステンレス鋼鋼管SUS-TKA機械, 自動車, 自転車, 家具, 器具, 機械部品, 構造物の部材ステンレス鋼サニタリー管SUS-TBS酪農・食品工業・医療・医薬品工業などで用いるサニタリー管一般配管用ステンレス鋼鋼管SUS-TPD給水・給湯・排水・冷温水・消火用水などのための配管配管用ステンレス鋼鋼管SUS-TP耐食用・低温用・高温用・消火用などの配管ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管SUS-TBボイラの過熱器, 化学工業・石油工業で用いる熱交換器, コンデンサ管, 触媒管機械構造用合金鋼鋼管SMn-TK, SMnC-TK, SCr-TK, SCM-TK, SNC-TK, SNCM-TKSACM-TK機械部品, 自動車部品ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管STBAボイラで用いる水管・煙管・過熱器・空気予熱器, 化学工業・石油工業などで用いる熱交換器, コンデンサ管, 触媒管焼入性を保証した機械構造用鋼管SMn-HTK, SMnC-HTK, SCr-HTK, SCM-HTK, SNC-HTK, SNCM-HTK機械部品, 自動車部品電縫管(溶接管)の製造方法と製造工程電縫管は、以下のような製造工程に従って生産されます。1. 鋼帯の引き出し2. 鋼帯の成形3. 電気抵抗溶接4. 溶接ビードの除去5. 鋼管のサイジング6. 鋼管の切断7. 鋼管の仕上げ1. 鋼帯の引き出し電縫管は、上述したように、薄鋼板をロール状に丸めた鋼帯コイルを素材として用います。この工程では、鋼帯をコイル材を巻き戻すアンコイラー(材料供給装置)で供給し、供給された鋼帯をピンチローラーなどの送り装置で引き出して、次工程に鋼帯を送ります。その過程で、場合によっては、鋼帯に以下の処理を施します。・ひずみ除去…レベラーによって鋼帯の上下方向から交互に変形を与えることで、巻きぐせなどのひずみを取り除く処理。・ループコントロール…アンコイラーと送り装置との間で生じる鋼帯のたるみを管理する処理(下図参照)。たるみの程度によっては、アンコイラーや送り装置に大きな負担が掛かり引き倒されてしまうことがある。引用元:MISUMI-VONA > 技術情報「コイル材のループコントロール(材料送り異常の検出 その10)」株式会社ミスミ・エッジ処理…鋼帯の端に形成されたバリなどを除去したり、鋼帯の端の形状を整えたりする処理のことで、溶接継目の溶け込み不良などを防止し、品質のバラツキを抑制する効果がある。2. 鋼帯の成形鋼帯コイルから引き出した鋼帯を円筒状に成形する工程です。この工程では、下図のように、連続的に供給される鋼帯を種々の曲率のロールによって幅方向に曲げることで、円筒状に成形します。引用元:BAB 2.pdf「Pipa dilas (butt-welded pipe)」Research Repository of UMY Repository3. 電気抵抗溶接円筒状に成形された鋼帯の端を高周波電気抵抗溶接で接合する工程です。この工程では、上図のように、鋼管の継ぎ目となる部分を突き合わせ、高周波電流を流して溶接温度まで加熱し、スクイズロールによって圧迫することで圧着します。この圧着は、局所的かつ瞬間的に行われるため、溶接熱が影響する範囲は小さく、高速な接合が可能です。なお、高周波電流の供給方法には、同心円状のコイルに鋼管を通して非接触で通電する誘導加熱法(下図左図)と電流供給装置を鋼管に接触させて通電する直接通電法(下図右図)があります。誘導加熱法は、鋼管の凹凸に影響を受けないために溶接欠陥が生じにくく、小径・薄肉の鋼管の溶接に向いています。しかし、電力効率は低いため、鋼管のサイズが大きくなると、溶接速度が低下します。一方、直接通電法は、電力効率が高いため、大口径管の溶接が可能です。しかし、口径が小さいと通電ができない場合がある上、凹凸があると接触不良によって溶接欠陥が発生することがあります。引用元:最近の電縫管溶接装置「高周波電流の供給方法」富士電機株式会社4. 溶接ビードの除去鋼管のシーム部の内外面に生じた溶接ビードを除去する工程です。この工程では、溶接直後のシーム部の内外面にバイトを当てて溶接ビードを除去します。内面の溶接ビード除去は、溶接点の手前側の管がまだ閉じられていない箇所からロッドを差し込み、バイトを当てることで実行します(下図参照)。なお、下図は、誘導加熱法によって高周波電流を供給しているケースで、インピーダーは、誘導電流を局所化し、溶接熱の影響範囲を小さくする役割があります。引用元:小径厚肉機械構造用鋼管「内面ビード切削」JFEスチール株式会社5. 鋼管のサイジング溶接ビードの除去が完了した後は、鋼管を水などで冷却し、鋼管の寸法を整えるサイジングを行います。サイジングは、ロールによって鋼管の形状を整えたり、丸管から角管へと形状を変化させたり、絞りを加えて管を引き伸ばしたりする工程です。6. 鋼管の切断連続的に製造している鋼管を切断工具を使用して一定の長さに切断する工程です。鋼管を切断した後は、鋼管の開口部の面取りを行い、検査を実行します。仕上げを行わない電気抵抗溶接まま鋼管としては、これで製造完了です。7. 鋼管の仕上げ仕上げを実行する場合は、鋼管の切断後にさらなる処理を施します。熱間仕上げを実施する場合は、金属組織の均一化を目的に、鋼管を連続加熱炉に通して加熱します。冷間仕上げを実施する場合は、寸法精度の向上を目的に、鋼管を金型に通して加圧し、形状を矯正します。電縫管のサイズ電縫管は、上述したように、幅広いサイズのラインナップが揃っていますが、他の方法で製造された鋼管も含めて比較すると、小径から中径で比較的薄肉のサイズのものが入手可能となっています。しかし、鋼管類の寸法は、外径・厚さ・長さのほかに、JIS規格にて「A呼称」と「B呼称」という呼び径が定められており、サイズの指定の仕方が分かりにくくなっています。さらに言うと、A呼称とB呼称は、それぞれミリメートルとインチの内径サイズを反映しているように見えるものの、そのサイズは正確ではなく、単に外径サイズごとに定められた、おおよその内径を示すものとしか見ることができません。そのため、鋼管の正確な内径は、外径から2倍した厚みを引くことで算出します。 また、現場では、鋼管のサイズをB呼称で呼ぶことが多く、B呼称の分母を「8」に固定した呼び方が「通称」として用いられています。例えば、B呼称で「1/8」であれば「1分(イチブ)」、「3/4  = 6/8」であれば「6分(ロクブ)」、「1 1/4 = 1 2/8」であれば「インチ2分(インチニブ)」と呼びます。以上を前提に、代表的かつ入手可能な寸法の電縫管を挙げたのが下表です。なお、下表の「厚さ」の列では、外径サイズごとの入手可能な厚さのおおよその範囲を示しています。外径 (mm)呼び径厚さ (mm)A呼称B呼称通称10.561/81分1.0~2.413.881/42分1.2~3.017.3103/83分1.2~3.221.7151/24分1.4~5.527.2203/46分1.4~7.034.0251インチ1.0~7.042.7321 1/4インチ2分1.2~9.048.6401 1/2インチ半1.2~9.060.55022インチ1.4~11.076.3652 1/22インチ半1.6~11.089.18033インチ1.6~12.0114.310044インチ2.3~12.0139.812555インチ2.3~12.0165.215066インチ3.0~12.0216.320088インチ3.0~16.1267.42501010インチ3.2~16.1318.53001212インチ3.8~17.5355.63501414インチ4.5~23.8400.0---4.5~23.8406.44001616インチ4.5~23.8457.24501818インチ5.5~23.8500.0---5.5~25.4508.05002020インチ5.5~23.8558.85502222インチ6.0~26.0600.0---6.0~26.0609.66002424インチ6.0~26.0660.46502626インチ6.0~25.4700.0---9.0~24.0電縫管の溝状腐食と対策方法水配管として用いられる電縫管では、シーム部のみが上図のようにV字形に腐食する「溝状腐食」が起きることがあります。この溝状腐食は、水分を含む液体の輸送配管に用いられる以下の炭素鋼鋼管で主に発生します。・配管用炭素鋼鋼管(SGP)・水配管用亜鉛めっき鋼管(SGPW)・圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)この現象は、水質に関係なく起こりますが、工業用水や海水の輸送に使用された電縫管で多く見られます。特に、海水輸送に用いられた電縫管では、溝状腐食速度が年間14.0mmにも達する事例が存在します。また、溝状腐食は、進行が速く、溝状腐食が発生した電縫管の約80%が使用開始後4年までに貫通して漏水に至っています。溝状腐食の発生原理溝状腐食は、シーム部の急速な加熱と冷却で生じる、金属組織の変化と鋼帯の肉厚中央部に存在していた硫化マンガン(MnS)系非金属介在物の金属表面への露出が原因で起こるとされています。表面が露出したMnS系非金属介在物の周辺には、腐食しやすい硫化鉄(FeS)が高い濃度で形成され、溝状腐食の起点となるからです。シーム部と母材との金属組織の違いも、電位差を生じさせることから溝状腐食の引き金となります。そして、溝状腐食が進行すると、溝の水分が淀んで酸素濃度が低下し、腐食の原因となる酸素濃淡電池作用が生じて腐食が進展します。さらに、MnS自体も不安定化して溶解し、腐食を加速する硫化水素などを生成して、溝を深くしていくのです。溝状腐食の対策方法近年では、溶接後の熱処理の適用や素材の化学成分の調整といった対策方法が考案され、実行されています。溝状腐食はそもそも、金属組織の変化や含有成分の偏りから生じる現象であり、熱処理によって金属組織を均一化することで、ある程度の溝状腐食抑制効果が得られます。ただし、熱処理温度は、鉄鋼の焼なまし温度である900℃程度が必要とされ、900℃以上に加熱して10分以上保持することで溝状腐食の発生を低減できます。溝状腐食は、硫黄(S)の含有量の低減と銅やニッケル、アルミなどの添加によっても抑制することができます。Sは含有率を0.002%以下に下げて、MnS量を低減することで、溝状腐食の発生を著しく減らすことが可能です。それに加えて、ニッケルを0.1%程度添加すれば、ほぼ溝状腐食は発生しないとされています。そのほか、銅やアルミ、カルシウム、ニオブなどの添加も有効です。鉄鋼メーカーからは、化学成分を調整したSGPやSGPW、STPGが耐溝状腐食電縫鋼管として販売されており、耐溝状腐食電縫鋼管には、溝状腐食無しを意味する「MN」が表示されています。鍛接管やシームレスパイプとの違い管(パイプ)は、製造方法の違いにより、電縫管と鍛接管、アーク溶接管、シームレス管に分類することができます。ここでは、電縫管の鍛接管やシームレス管との違いについて説明します。まず、鍛接管は、加熱した鋼帯を引き出しながら円筒状に成形し、その両端を圧着して接合したパイプのことです。生産性は比較的高く、大量生産に適していますが、シーム部の強度はそれほど高くありません。また、全体を加熱するため、スケールが発生しやすく、表面性状は良くありません。続いて、シームレス管は、円筒形状の金属塊を高温に加熱し、中心に金具を押し付けることで穴をあけて成形したパイプのことです。大量生産には向いていませんが、肉厚のパイプの製造に適しています。パイプに継目がないことから高強度ですが、高温に加熱するため、表面性状は電縫管に比べて劣ります。また、寸法精度がそれほど高くなく、管の同一断面の肉厚が非均一となる「偏肉」が発生するという欠点があります。参考:配管製作について解説!おすすめの業者も紹介!電縫管と鍛接管、シームレス管との違いをまとめると下表のようになります。電縫管鍛接管シームレス管サイズ6.35mm~700mm21.7mm~114.3mm6.35mm~952.5mm肉厚0.6mm~28.0mm2.8mm~4.5mm0.9mm~65.0mm強度比較的高い低い高い生産性高い比較的高い低いコスト低い低い高い表面性状良いやや悪い悪い寸法精度高い比較的高いやや低い製造法の記号−E−H, −E−C, −E−G−B−S−H, −S−C

  • 特殊ナットの種類一覧と特徴を紹介

    ナットとは、ボルトとワンセットで使用される工具のことで、物と物を締め付けて繋げる際に使用されます。一般的には外側が六角形のドーナツ型をしていて、内側にはボルトを締め付けるための螺旋状の溝が彫られています。ナットは六角形の物ばかりではありません。四角いものや爪がついたもの、底が丸くなっているものなど、意外に多くの種類が存在していることはご存知ですか?モノづくりでは、これらをまとめて「特殊ナット」と呼んでいます。特殊ナットの種類特殊ナットは、目的や用途に合わせてさまざまな種類があります。ボルトと合わせて使い、物と物を締め付けるという目的は変わらないのに、なぜそこまでたくさんの種類があるのでしょうか。それは、ボルトとナットがモノづくりの現場において、さまざまな用途で使用されているからです。木材に使用したい、簡単に緩まないようにしたい、液体に触れる場所に使いたいなど、作りたい物に合わせて作られた結果、さまざまな種類の特殊ナットが誕生しました。特殊ナットの種類と役割は下記の通りです。ゆるみ止めナットゆるみ止めナットはその名の通り、一度締めるとねじが緩みにくいような工夫が施されたナットのことで、一般的には「Uナット(セルフロッキングナット)」と「ハードロックナット」の2種類があります。●Uナット(セルフロッキングナット)Uナットは、フリクションリングと呼ばれる特殊バネが一体になったナットのことです。ボルトを絞めつけることによってフリクションリングがボルトのねじ山に達し、ねじ面を押さえつける仕組みになっています。バネの戻ろうとする力とボルト、ナットの引っ張り合う力によって生じる摩擦トルクがゆるみを防止する作用になっています。●ハードロックナットナットが緩む理由は、ボルトとナットの間にほんの少し空間があることが理由です。そのため、この空間をなくしてしまうことができれば、ナットは緩まないということになります。ハードロックナットは、構造が第一ナット、第二ナットに分かれており、第二ナットにクサビを打ち込むハンマーと同じ機能を持たせることで優れたゆるみ止め効果を持たせています。シールロックシールロックは、シーリング材を組み込むことで、締め付けた際にナットとの間隙をなくします。これにより、ゴムや樹脂などのワッシャーを取り付けることなく、油圧制御バルブや燃料ポンプなど、液状のものが流れる場所の締結が可能です。高気圧下でも気体・液体に対して高い効果を発揮する他、シーリング材によって耐熱性を求められる場所での使用も可能です。やきつかナットステンレスは熱伝導率が低く、熱膨張率が大きいため、摩擦熱によってねじが膨張し、動かなくなってしまうことがあります。これを、「焼き付き」と呼んでいます。やきつかナットは、ステンレス製のナットに多層メッキを施すことで焼き付きを防止したナットです。鬼目ナット(インサートナット)鬼目ナットは組み立て構造の家具に組み込むことを目的として開発されたナットです。「打ち込みタイプ」と「ねじ込みタイプ」の2種類があり、いずれも木材に下穴をあけ、挿入することで食い込んで固定されます。ねじにはツバ付とツバ無があり、ツバ付はツバがあることでねじが深く挿入され過ぎることを防ぐことができます。ツバ無はツバ付に比べて部材との密着性が高く、用途に合わせて埋め込み深さを調整することが可能です。エンザート(タッピングインサート)エンザートは、アルミやプラスチックなど、ねじ山が潰れやすい素材に組み込むインサートナットです。ナットの外側と内側がどちらもねじ山になっていて、強度の低い母材に対し、ねじ部分を補強する効果があります。ねじ山の潰れを防げるほか、母材に直接ネジ穴を作るのに比べてねじ部分の強度がアップします。スプリングナットスプリングナットは、六角ナットとばね台座が一体となったナットです。ナットのゆるみを防止するためにばね座金と合わせて使うことがありますが、別々にした場合、取り外した時に落下し、機械部品の故障や事故に繋がってしまうことがあります。こういった事態を、ばね座筋とナットを一体化させることで防ぐことができるため、自動車や産業機器、農業機械などの機械部品に多く使用されています。四角ナット・板ナット四角ナットは、その名の通り、四角形のカタチをしたナットのことでスクエアナットとも呼ばれています。正方形や長方形の他、立面から見るとT字のカタチをしたナットや、ダクトの形状に合わせ、横から見るとアーチを描いている形状のナットもありますが、平面から見た時に四角形のものは一般的に四角ナットに分類されます。また、見た目がほとんど変わらない「板ナット」は、四角ナットに比べて半分近く薄い特徴があります。用途などによっても異なりますが、一般的なもので厚さ1.8mm程度の薄めのものを板ナット、3.2mm程度の厚めのものを四角ナットと呼んでいます。なぜ厚みが違うだけで別の名前がついたのかというと、四角ナットは六角ナットを用途に合わせて四角に変化させたもの、板ナットは四角い板にねじ山がほしいという要望から生まれたもので、もともとの用途は大きく異なっていたからです。現在では混同して使われていることも多く、必要な厚みや寸法に合わせて使用されています。皿ばねナット皿ばねナットは、ナットとワッシャーが一体化した構造をしています。ワッシャーはドーム型になっていて、締め付けていくことで平たくなり、ゆるみ止め防止の効果を持っています。スプリングナット同様、ワッシャーと一体化させることで作業を簡略化させることができる上、ワッシャーが分離することによる故障や事故を防ぐ効果があります。爪付きTナット(ウィット)ねじ込みにくい薄い板の締め付けや、引張強度が必要な場合におすすめのナットです。テーブルの脚の取り付けなどに使われるほか、ボルダリングのクライミングホールドにも使われます。カレイナット圧入方式で薄板や溶接に不向きな母材にナットを取り付けるのに使用されます。ナットの首下が特殊な形状になっており、高い取り付け強度が得られるため、電機筐体や計器など、さまざまな筐体に使用されています。

  • SGPとは?種類、用途、性質、接続方法

    今回はSGPの基礎知識について解説します。SGPは、配管用炭素鋼鋼管のことで、水やガスなどの配管に使われています。市場に多く出回っているもので、ホームセンターでも入手が可能です。一口にSGPと言っても、めっきの有無で種類や用途も異なります。この記事ではSGPの各種類の特徴や、SGPの接続方法について見てみましょう。SGPとは?SGPとは、「配管用炭素鋼鋼管(Carbon steel pipes for ordinary piping)」と呼ばれる鋼管のことです。SGPの名前は「Steel Gas Pipe」の略称を表しています。SGPは、製管方法が電気抵抗溶接の場合「E」、鍛接の場合は「B」の記号が付きます。仕上げ方法によっても、熱間仕上げの場合は「H」、冷間仕上げの場合は「C」、電気抵抗溶接の場合は「G」の記号が付きます。(例:熱間仕上電気抵抗溶接鋼管の場合、SPG-E-Hの表記)配管用炭素鋼鋼管の主な用途は、JIS G 3452にて、「使用圧力の比較的低い蒸気、水(上水道用を除く)、油、ガス、空気などの配管に用いる」ものとして記載があります。SGPに適用される寸法は、外径10.5~508.0mmです。SGP管の種類引用元:日本水道鋼管協会 管の種類と用途SGPは白管と黒管の2種類があります。ここでは白と黒の違いについて見てみましょう。黒管黒管のSGPは、表面処理がなく、外観が黒く見えるタイプです。主な用途は、蒸気配管・油配管・エアー配管などです。白管白管のSGPは、耐食性を高めるために亜鉛めっきが施されており、パイプの外側と内側ともに白色になっています。主な用途は、工業用水配管・空調設備配管・衛生設備配管・消火用配管などです。白管に似たものとして、水配管用のパイプである「SGPW(水配管用亜鉛めっき鋼管)」もあります。SGPWは、見た目こそSGPの白管と同じパイプになりますが、亜鉛めっきの付着量が平均600g/m2以上と、JIS G 3442で規定されています。一方でSGPの白管は、亜鉛めっきの付着量に規定がありません。SGPの接続方法ここでは、SGPの代表的な接続方法である、ねじ接合と溶接接合の方法について紹介します。ねじ接合引用元:モノタロウ 建築設備配管工事の基礎講座 3-1 炭素鋼鋼管(SGP)の切削ねじ接合方法ねじ接合は、ねじ継手を使ったSGPの一般的な接続方法です。上図のようなねじ切り機によりパイプの両端をねじ加工し、ねじ継手を用いて接続します。ただし、ねじ接続は加工と施工上の都合により、小口径管(65A程度まで)の配管で利用されています。溶接接合SGPは、溶接にて接合する場合もあります。溶接接合は、口径の大きな管(65A~350A程度)や、強度が必要な場合、水密性・気密性などを要する場合に採用されます。溶接接合の方法にも種類があり、建築設備の施工ではガス溶接と被覆アーク溶接が一般的に利用されています。SGPの性質SGPの機械的性質と、化学的性質については以下の通りです。機械的性質●SGPの引張強さ及び伸び種類の記号引張強さ伸び%引張試験片引張試験方向厚さ3mmを超え4mm以下4mmを超え5mm以下5mmを超え6mm以下6mmを超え7mm以下7mmを超え8mm未満SGP290以上11号試験片管軸方向30以上30以上30以上30以上30以上12号試験片管軸方向24以上26以上27以上28以上30以上5号試験片管軸直角方向19以上20以上22以上24以上25以上※呼び径32A以下の管については、この表の伸びの規定は通用しないが、試験の結果を記録しておかなければならない。ただし、受渡当事者間の協定によって、伸びを規定してもよい。引用元:JIS G 3452:2019 配管用炭素鋼鋼管化学的性質●SGPの化学成分(単位:%)種類の記号PSSGP0.040以下0.040以下※必要に応じて上表に規定のない合金元素を添加してもよい。引用元:JIS G 3452:2019 配管用炭素鋼鋼管

  • カプラとは?種類や材質、用途、サイズを解説

    今回はカプラの基礎知識について解説します。カプラは気体や液体などの配管に使用されており、確実かつ簡単に配管の接続や分離が行えるものです。工場では配管を通して空気や水、油などの流体を用い、機械を動かします。流体は配管がしっかりと接続されていないと漏れてしまいますが、カプラを用いることで手間なくしっかりと接続を行えます。カプラとは引用元:おしごとはくぶつかん 工場などで欠かせないという「カプラ」って何?カプラとは、空気や油などの配管を素早く着脱するための継手・コネクターのことを指します。カプラの名称以外にも「カップリング」、「クイックジョイント」、「カチット」などと呼ぶ人もいます。カプラは対となるソケットとプラグをはめ込むと、しっかりとロックされ、中にあるバルブが自動的に開く仕組みです。そのため、ソケットとプラグを接続した状態だと流体が流れ、ロックを外して切り離すとバルブが閉じて流体が止まるようになっています。カプラの用途カプラは代表的な例として、エアーコンプレッサー本体のエアー吐出口に使用されています。スプレーガンなどのエアーツール側のプラグと繋ぎ合わせ、コンプレッサーからエアーを得ることができます。そのほかにも、水や油が流れる配管や医療用機械などのさまざまな用途で採用されています。カプラの種類カプラのオスとメス引用元:サンエイエアー.jp カプラについてカプラにはオスとメスの2種類があります。差し込む側のカプラがオス、差し込まれる側のカプラをメスと呼びます。オスのカプラはプラグ(Plug)とも呼び、アルファベットの「P」と表示されています。一方メスのカプラはソケット(Socket)とも呼ぶことから、アルファベットの「S」と表示されています。カプラのオスとメスは対になっており、機械側のカプラとエアー供給側のカプラが同じタイプのものでないと使用できない場合があるので注意が必要です。カプラのおねじ、めねじ、ホース、ナットについて引用元:モノタロウ カプラの基礎知識と選定ポイントカプラにはねじを搭載したものがあります。この場合、オスのカプラは「おねじ」、メスのカプラには「めねじ」がそれぞれ搭載されています。おねじを搭載したカプラはメール(Male)という意味から「M」のアルファベットで表示されます。めねじを搭載したカプラはフィメール(Female)という意味から「F」のアルファベットで表示されています。例を挙げると、「PM」と表示されたカプラは、プラグ(P)とメール(M)を表示しているため、プラグ側のおねじを意味します。カプラのパッキンカプラはパッキン付きのものがあります。パッキンを搭載したカプラは、ジョイント部分から流体が漏れないように密閉性を高めることができます。パッキン付きのカプラは「F」のアルファベットが表示されています。例えば「PFF」という表示がされたものは、カプラのオスにめねじとパッキンが搭載されていることを意味します。カプラのサイズと流路内径カプラのサイズは一般的に2分(ニブ)や3分(サンブ)といった呼び方をします。〇分に入る数値はインチ表記した際、分母の8に固定したときの値が入ります。(例:3/8インチ→3分、1/4インチ→2分)サイズが8分のときはインチと呼びます。インチmm分1インチ25.4mm-1/2インチ12.7mm4分3/8インチ9.525mm3分1/4インチ6.35mm2分1/8インチ3.175mm1分カプラの材質カプラの材質は、鋼鉄・真鍮・ステンレスがあります。使用流体に対するカプラの適応材質は以下を参考にしてみてください。・使用流体と適応材質の一例流体名鋼鉄真鍮ステンレス空気〇〇〇酸素〇〇〇炭酸〇〇〇工業用水△〇〇硝酸ナトリウム〇△〇塩化ナトリウム×△△〇:使用可能/×:使用不可/△:使用条件によって制限引用元:モノタロウ カプラの基礎知識と選定ポイント平行ねじとテーパねじの違い引用元:PRO HONPO カプラの基礎知識カプラには平行ねじ(ストレートねじ)とテーパねじがあります。それぞれの形状を見てみると、上図左のテーパねじは根本にいくほど太くなっており、上図右の平行ねじは先端から根本にかけて平行なのが特徴です。テーパねじは、対応するめねじに締め付けると隙間が少なくなり、シール材と併用することでシールできます。テーパねじは、主にシール材と併用して、普段は取り外しを行わない箇所に使用します。平行ねじは、対応するめねじも平行になっていて、シールするにはガスケットを用います。平行ねじは、主にガスケットなどで漏れを防ぎ、取り外しが頻繁に行われる箇所で使われています。管用平行ねじと管用テーパねじの表示および規格は以下の通りです。ねじの種類新JIS規格ISO規格旧JIS規格JIS規格管用平行ねじおねじG(A)(B)PFJIS B 0202管用平行ねじめねじGPF管用テーパねじテーパおねじRPTJIS B 0203管用テーパねじテーパめねじRcPT平行めねじRpPS管用平行ねじは、新JIS規格とISO規格で「G」のアルファベットを使って表します。製品仕様欄には有効径による等級によっては「A」もしくは「B」を付け加えます。製品によっては、管用平行ねじの旧JIS規格である「PF」で表示している場合もあります。管用テーパねじは、新JIS規格とISO規格で「R」と「Rc」を使って表します。テーパおねじに対して平行めねじを使用する際は「Rp」で表されたものを使用します。「Rp」は管用平行ねじとは寸法許容差が異なるため、別物として扱われます。製品によっては、管用テーパねじの旧JIS規格である「PT」、「PS」で表示している場合もあります。

  • プランジャーの役割、種類、特徴、用途

    プランジャーは、突っ込む物や押し込む物を意味する英語の「Plunger」から来ている言葉です。機械工業の分野では、以下のような筒や穴に出し入れして用いる様々な部品がプランジャーと呼ばれます。・ディーゼルエンジンにおける燃料を高圧で噴射する噴射ポンプの棒状の構成部品。筒状のポンプ内部で軸方向に往復運動することで燃料を圧送する。・プランジャーポンプの棒状の構成部品。ポンプ内部を往復運動することで流体を引き込んで押し出す。・エレベーターにおける油圧ジャッキの棒状の構成部品。油圧ジャッキのシリンダー内部を往復運動することでワイヤーを通してカゴを押し上げ、引き下げてカゴを昇降させる。・注射器の注射筒(シリンジ)に充填された薬剤などを押し込む注射桿と呼ばれる部分のこと。・機械・材料などの位置決めや固定などを行うための機械部品。このように様々な分野で用いられるプランジャーですが、この記事では、最後に挙げた、位置決めや固定などに用いられるプランジャーに焦点を当て、その種類や特徴、役割、用途などについて解説していきます。プランジャーとはプランジャーとは、装置・器具の位置決めや固定、ワークの突き出しなどのために用いられる機械要素部品のことです。円筒形状で、先端にボール又はピンを備えています。そのボール(ピン)は、荷重を掛けると本体内部に沈み込みますが、スプリングを内蔵しているため、荷重が解けるとバネの力で元に戻ります。プランジャーは、取付けタイプの違いにより構造が異なります。ねじ込み取付けタイプでは、円筒の側面にはネジ山が、ボール(ピン)の逆側の先にはマイナス溝や六角穴などが形造られています。つまり、ねじ込み取付けタイプのプランジャーは、ネジ穴を作っておけば、ドライバーやレンチなどでねじ込むだけで取り付けが可能です。ねじ込み取付けタイプの中には、ピンがある先端に専用工具でのねじ込みが可能な専用溝が存在するものがあり、その場合は貫通していない止まり穴に対しても取り付けることができます(下図参照)。引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーション差し込み取付けタイプもあり、このタイプのプランジャーは、円筒側面の構造が平滑です。差し込み取付けタイプは、プランジャーがピッタリと嵌まる穴を作り、その穴に差し込む又は圧力を掛けて押し込むことで取り付けます。このタイプは、止まり穴に取り付けることが容易です。プランジャーの材質には、主にスチールとステンレスが採用されています。ただし大抵、プランジャー本体とボール(ピン)、スプリングの材質は異なります。例えば、スチール製の場合、本体は加工性が良好なSUM22Lなどにサビ防止の黒染めといった表面処理が施された鋼材、ボール(ピン)はSUJ2などの硬く耐摩耗性が高い鋼材、スプリングはSWP-Bなどのバネ用鋼を材質とする製品が多く流通しています。そのほか、本体とボール(ピン)が樹脂製のプランジャーや、ボール(ピン)のみが樹脂製のプランジャーなどがあり、樹脂製のプランジャーはキズを防止したい場合や絶縁したい場合などに使われます。参考:ばねの基礎 |ばねの種類やそれぞれの特徴を詳しく説明します!プランジャーの種類と特徴プランジャーの種類には、ボールを備えたボールプランジャーとピンを備えたピンプランジャー(スプリングプランジャー)、ピンの沈み込みをノブなどで操作するインデックスプランジャーがあります。ここでは、これらのプランジャーそれぞれの特徴について説明していきます。ボールプランジャーボールプランジャーは、先端にボールを備えたプランジャーです(上図参照)。先端のボールが自由に回転するものと、ボールが回転しないものがあります。ボールに接触している対象の摺動(滑らせて動かすこと)が行いやすく、摺動部(部品の間で互いに摺動する部分)の位置決めに適しています。また、ボールの部分は、水平方向からの荷重を受けても沈み込むため、スライドする機構の位置決めにも適しています。ピンプランジャーピンプランジャーは、先端にピンを備えたプランジャーです(上図参照)。ピンは、先が半球やテーパー(先細りになっていること)の円筒形のものがほとんどですが、シンプルな円筒形のものも存在します。ボールプランジャ―とは異なり、ストローク(ボール又はピンの本体内部への沈み込むことが可能な最大長さ)を長くできることから、様々なストローク長さの製品が用意されています。ピンへの横方向の荷重に対して高い耐久性を持つ製品もあり、そのような製品であれば、位置決め用の穴へピンを長めに嵌めてしっかりと固定することも可能です。参考:ピン製作のおすすめ工場をご紹介!ピン製作時のポイントについても解説!スプリングプランジャースプリングプランジャーは、スプリングを備えたプランジャーのことです。しかし、ボールプランジャ―ではなく、ピンプランジャーを指すことが多くなっています。とはいえ、メーカーによっては、ボールプランジャ―とピンプランジャーをまとめて表す言葉として使われることもあります。インデックスプランジャーインデックスプランジャーは、先端のピンの出し入れを手動で行うことができるプランジャーです。ピンがある先端の逆側に、ピンの沈み込み長さを操作できるノブを備えており、ノブを引くとピンが沈み、ノブを押すとピンが出て来ます(上図参照)。インデックスプランジャーのほとんどは、ピンプランジャーなどと同様にスプリングを内蔵しています。そのようなインデックスプランジャーでは、例えば、ピンを位置決め用の穴に当てることで、バネの作用で簡単にピンを穴に嵌めることができ、ノブを引くことで、容易に位置決めを解除することが可能です。そのため、位置決めや割り出しの解除を手動で行う装置・器具に適しています。また、インデックスプランジャーの中には、ピンを沈み込んだ状態で固定することができるロック付きのものもあります。このタイプのインデックスプランジャーでは、例えば、ノブを90度回すとピンの沈み込みがロックされ、ノブを逆に90度回すとピンのロックが解除されます(下図参照)。そのため、ピンを穴などに嵌めた後もしっかりと固定したい場合や、ワークの突き出しの長さを微調整したい場合などに最適です。引用元:役立つ技術情報「設計者のための インデックスプランジャ解説」鍋屋バイテック会社プランジャーを使用するメリットと役割プランジャーの主な役割は、機械のスライドする機構の位置決めや回転する機構の角度の割り出し、工作機械の工具・金型やワークなどの位置決めや割り出し、ストッパーです。そのほか、プレス加工における金型へ張り付いたワークの突き出し、部品や治具の一時的な固定などの役割もあります。プランジャーを使用するメリットは、装置・機器へボール又はピンのスプリングによる往復機構を容易に組み込めることです。プランジャーを使用しない場合、例えば、下図のように、ピンとバネ、バネの押さえ、嵌め込む穴を設計して用意し、組み込む必要があります。また、一度組み込んでしまうと、プランジャーとは異なり、取り外すことは困難です。一方、プランジャーを使用する場合は、嵌め込む穴を用意して取り付けるだけです。プランジャーの用途と使用例プランジャーは、工作機械や検査機器のほか、食品機械、包装機械、印刷機械、半導体製造装置といった様々な産業機械に利用されています。製品自体に使用されることは少なく、主に製品を製造する機械に用いられている部品です。プランジャーは、様々な製造機械の中で多様な機構を実現しています。例えば、ボールプランジャ―は、下図のような、穴に嵌め込まれたピラー(円筒状の部品)のストッパーに使うことができます。引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーションピンプランジャーの使用例としては、プレス加工時に金型へ張り付いたワークの突き出しが挙げられます。下図のように、ピンプランジャーを金型に組み込むことで、プレスの完了と同時に金型からワークを剥がすことが可能で、作業の効率化などが期待できます。引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーションインデックスプランジャーは、手動で位置決めを行うケースで用いられます。下図左図の使用例では、どの溝にプランジャーのピンを嵌め込むかによって、直線的にスライドするステージの位置を決定しています。下図右図の使用例では、回転ステージ側面のどの溝にプランジャーのピンを嵌め込むかによって、スライドするステージと同様に回転するステージの位置決めを行っています。引用元:MISUMI-VONA 技術情報「インデックスプランジャ選定のポイント(選定概要)」株式会社ミスミグループプランジャーの荷重・ストロークプランジャーの特性には、最小荷重と最大荷重、ストロークがあります。・最小荷重…プランジャーのボール又はピンが接地し、沈み込み始める際に必要な荷重・最大荷重…プランジャーのボール又はピンが本体内部に完全に沈み込んだ際の荷重・ストローク…ボール又はピンの本体内部への沈み込み可能な最大長さなお、プランジャーの荷重の単位には、ニュートン(N)が用いられます。プランジャーのボール又はピンが沈み込む荷重は、沈み込みが深くなっていくに従って、最小荷重から最大荷重へと直線的に変化します。そのため、プランジャーのバネ定数は、以下の式で表すことが可能です。プランジャーのバネ定数K:バネ定数F0:最小荷重F2:最大荷重S2:ストロークまた、このバネ定数から、ボール又はピンの沈み込み深さに従って変化する荷重を以下の式で求めることができます。ボール又はピンの沈み込み深さに従って変化する荷重S:ボール又はピンの沈み込み深さF:ボール又はピンがS沈み込んだ際の荷重これらの式から理解できるように、最小荷重とバネ定数が小さいプランジャーが軽荷重用、大きいプランジャーが重荷重用です。また、最小荷重が過大だと、多少の荷重を加えてもボール又はピンが沈み込まないといったことが起きるので注意が必要です。

  • アジャスターボルトの規格、耐荷重、種類

    今回は、アジャスターボルトの基礎知識について解説します。アジャスターボルトは、作業台や機器などの脚に使う高さ調節に対応したボルトのことで、DIYでもよく採用されています。アジャスターボルトは、重荷重用や傾斜用などの幅広い種類をラインナップしており、用途に合わせた製品を選ばなくてはなりません。また、安全に使用するためにも、耐荷重をチェックしておく必要もあります。アジャスターボルトとは引用元:株式会社旭押捻子製作所 アジャスターボルトアジャスターボルトとは、「アジャストボルト」とも呼ばれる、自動販売機や作業台、計測機器などの足に取り付けるボルトのことです。材質は主にユニクロめっきや三価ホワイトなどの表面処理を施した鉄とステンレスを採用しています。アジャスターボルトは、土台である受け皿に加えて、ボルトナットの機構を搭載しています。これにより水平や勾配を付けることが可能で、自在に高さ調節を行えます。アジャスターボルトは、地面に段差がある場所での設置に適しています。通常、段差がある場所に機器を設置しようとすると、水平に設置できません。しかし、高さ調節が可能なアジャスターボルトを使えば、段差のある環境でも機器を水平な状態に保ちながら設置できます。また、DIYで建物を傷つけずに柱を立てたり、ツッパリ棒代わりに使用して家具の転倒防止をしたりといった使い方をすることもあります。アジャスターボルトの規格と耐荷重アジャスターボルトは製品ごとに異なる耐荷重が設定されています。選定の際は、製品規格をよく確認して、使用機器や用途に合う十分な耐荷重を備えたボルトを選びましょう。例えば1本あたりの耐荷重が500kgfだった場合、4本のアジャスターボルトで支えるとなると耐荷重の合計が4本×500kgfで2000kgfとなりますが、4本のアジャスターボルトに均等に荷重がかかるとは限りません。そのため、アジャスターボルトの選定の際は、安全のためにも余裕のある許容荷重の製品を選ぶ必要があります。アジャスターボルトの種類アジャスターボルトは、用途によってさまざまな種類をラインナップしています。ここでは、代表的なアジャスターボルトをいくつかご紹介します。重荷重用引用元:ねじコンシェル.com アジャストボルト 重量物用重荷重用のアジャスターボルトは、標準のアジャスターボルトに比べて、より耐荷重を向上させたタイプです。標準的受け皿タイプのほかに、床への接着面積を広くしたワイドタイプをラインナップしているものもあります。重荷重用のアジャスターボルトは、主に自動販売機や制御盤、機械設備などに採用されています。アンカー固定用引用元:ねじコンシェル.com アジャストボルト 固定用アンカー固定用のアジャスターボルトは、台座部分にアンカーで固定するための穴が設けられています。アンカー固定用は、あと施工アンカーなどを用いて床面にしっかりと固定できるため、振動などによる機器の位置ズレを防止できます。傾斜用引用元:サン・ファスナー部品株式会社 傾斜面設置タイプ サンアジャストボルト PAT.P傾斜用のアジャスターボルトは、ボルト部分が土台から自由に傾斜が付けられるタイプです。傾斜を付けられる詳細な角度は製品によって異なります。標準のアジャスターボルトの場合、地面が水平でないと設置ができませんが、傾斜用であれば、多少傾斜のある地面でも機器を設置できるようになります。アジャスターボルトの受け皿と固定金具引用元:モノタロウ アジャスターボルトの特長アジャスターボルトは、ボルトナットに加えて、ベースと呼ばれる受け皿部分で構成されています。使用する環境に応じて、すべり止めタイプや床面保護タイプ、振動止タイプなどのベースを使い分けます。なかには重荷重用でベースの接地面を広く設計したワイドタイプもあります。引用元:MEKASYS アジャスタボルト用脚止め金具/プレートまた、アジャスターボルトは、オプション品として後付けで装着できる固定金具もあります。固定金具は、アンカーボルト固定用の穴を搭載しているほか、端部に六角レンチのような切り欠きが設けられています。固定金具をアジャスターボルトに装着することで、振動などのトラブルにより、高さ調整用ボルトが動くことを防止できます。

  • グリスニップル(グリースニップル)の規格、種類、構造

    今回はグリスニップルの規格・種類・構造について解説します。ニップルとは、棒やパイプの機械部品同士を接続するための管上の部品を指します。そのなかでもグリスニップル(グリースニップル)は、機械の可動部分にグリスを供給するために必要な部品です。一口にグリスニップルと言っても、A型・B型・C型などの種類があります。グリスニップル(グリースニップル)とは?グリスニップル(グリースニップル)とは、機械の可動部分にグリスを供給する配管の注入口になる部品のことです。グリスニップルの供給口は逆止弁構造になっているので、グリスガンから圧力をかけて配管に注入した際に、グリスが逆流してくることがありません。グリスニップルの材質には、主に鉄・ステンレス・真鍮が採用されています。グリスニップルの主な用途は、重機などの機械の軸受け部分に採用されています。グリスの注入箇所は作業性に乏しい箇所に配置されている場合があるので、使用する環境によって作業性のよい製品を選定する必要があります。引用元:MiSUMi-VONA 技術情報 グリスガンの種類と特長グリスを注入するにはグリスガンや専用のホースを使用します。グリスガンはストレートタイプとピストルタイプがあり、ピストルタイプは片手でもグリスを注入できます。グリスガン・グリスガン用ホース・グリスニップルは、それぞれ先端の形状が合うものを使う必要があるので選定の際は注意してください。グリスニップル(グリースニップル)の構造引用元:astamuse グリースニップルの逆止弁開放治具グリスニップの本体にはスチールボールとスプリングが内蔵されています。スプリングが、グリスニップルの先端にスチールボールを押し付けることで、逆流を防止します。グリスニップルは、グリスを注入するときの外からかけた圧力により、スチールボールが奥へと押し込まれて注入できる仕組みです。グリスニップル(グリースニップル)規格とサイズの測り方グリスニップルは、【JIS B 1575:グリースニップル】のJIS規格があります。グリスニップルの形状および寸法は、JIS規格にて決められています。しかし、メーカーによってはJIS規格に則ったものではなく、自社規格にて製造した製品もあります。正しく使うためにも、選定の際はグリスニップルとグリスガンなどの規格が合っているかを確認するようにしましょう。グリスニップルにはミリねじのもの以外に、インチでサイズ表記している管用ねじを採用している製品もあります。ミリねじや管用ねじは、サイズやねじのピッチが近いものがあり、見た目だけでは判断しにくい場合があります。これらを判別したい場合は、ノギスを使って六角の二面幅を測定し、製品仕様と見比べて判断します。グリスニップル(グリースニップル)の種類グリスニップルは本体の形状の種類により、A型・B型・C型の種類に分類されます。また、これら以外にも先端形状が異なるピンタイプやボタンヘッドと呼ばれる形状のものもあります。A型・B型・C型の違いA型はグリスガンをまっすぐ押し当てて注入するタイプです。B型は本体が斜め、C型は本体がL字になっているのが特徴です。A型が使いにくい作業環境で、B型やC型を採用します。それぞれの形状は以下の画像を参考にしてください。・A型:本体がストレートになったタイプ引用元:MiSUMi-VONA グリスニップル A型・B型:本体が斜めになったタイプ引用元:MiSUMi-VONA 注油器シリーズ ステンレスグリースニップル B型・C型:本体がL字になったタイプ引用元:MiSUMi-VONA 注油器シリーズ ステンレスグリースニップル C型

  • 六角ナットの規格、種類、特徴、用途

    今回は、六角ナットの規格や種類、特徴などを解説します。六角ナットは、おねじを持つものと組み合わせて使うことで、部材を固定できる部品です。六角ナットは大きいサイズから小さいサイズまで幅広くあり、あらゆる製品で活用されています。ただし使用する際には、いくつか注意点もあります。六角ナットとは?特徴と用途ナット類は、基本的にボルト類などのおねじを持つものと組み合わせて、部材を固定します。ナット類のなかでも六角ナットは標準的なタイプで、幅広いシーンで採用されています。六角ナットは、精密機器や橋梁、船舶などのほか、一般生活のなかでも多く使わています。六角ナットのねじ穴は貫通穴である特性上、ボルト類を通すとねじ部分が飛び出てしまいます。そのため、人が接触するような場所だとケガをする可能性があるため、使う場所には注意が必要です。引用元:宇都宮螺子株式会社 六角ナットまた、ナット類は部材の振動などによりゆるんでしまいます。ゆるみを避けるためには、上図のように六角ナットを2個使用する「ダブルナット」を採用する、ばね座金と組み合わせて使うなどの方法があります。六角ナットは、部材との気密性を高めるためや、部材をキズ付けないために、座金(ワッシャー)と組み合わせて使用します。座金には、標準的なタイプである「平座金」や、ゆるみ止め効果が期待できる「ばね座金」などがあります。引用元:トップ工業株式会社 コンビネーションレンチ六角ナットの締め付けにはスパナ、またはメガネレンチなどを使用します。工具の六角形状の部分を六角ナットにはめ込み、回転させることで締め付けが可能です。ただし、締め付けの際は、六角ナットのサイズによって、使う工具もサイズを合わせなければなりません。また、スパナで締め付けを繰り返すと、ナットを痛める場合があるので注意してください。ナットの痛みを避けたい場合は、メガネレンチを使用するのがおすすめです。あらゆるサイズの六角ナットに対応したい場合は、サイズ調整が可能なモンキースパナが便利です。六角ナットの規格とねじサイズ六角ナットの主な規格は以下の通りです。・六角ナット:JIS B 1181・六角袋ナット:JIS B 1183・フランジ付き六角ナット:JIS B 1190これらはミリねじのナット規格ですが、市場ではインチねじ(ユニファイねじ)用のナットも流通しています。強度区分JIS規格品のナットとボルトには強度区分が規定されています。強度区分とは、ナットやボルトにどれくらいまでの力がかかっても壊れないかを示す数値のことです。●ボルトの強度区分引用元:TONE 強度と強度区分について鋼製のボルトには、3.6、4.6、4.8、5.6、5.8、6.8、8.8、9.8、10.9、12.9の強度区分があります。ボルトの強度区分の数値は、12.9を例に挙げると、12は1200N/mm2の最小引張強さ、9は1200の0.9倍の値(1080N/mm2)まで塑性変形しないこと(降伏点または耐力の数値)を意味しています。ステンレス鋼のボルトは、A2-70のように鋼種区分であるA2などの記号と、強度区分である70などの数値を組み合わせて表示されています。鋼種区分の分類については上図の通りです。強度区分については、70と表示されているものの場合、最小引張強さが700N/mm2であることを意味します。●ナットの強度区分ナットは【JIS B 1052-2:炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ】規格によると、高さによって【並高さナット(スタイル1)・高ナット(スタイル2)・低ナット(スタイル0)】の3種類に分類されています。・並高さナット(スタイル1):ナットの高さの最小値が0.8D以上・高ナット(スタイル2):ナットの高さが約0.9D以上・低ナット(スタイル0):ナットの高さの最小値が0.45D以上0.8D未満ここでのDは、ねじの呼び径を意味しており、呼び径に対してナットの高さがどれくらい違うかによって分類がされています。ナットのスタイル、強度区分、ねじの呼び径の範囲の関係は以下の表の通りです。・並高さナット(スタイル1) ※ナットの高さの最小値が0.8D以上強度区分並高さナット(スタイル1)5M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×36M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×38M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×310M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M16×1.512M5×≦D≦M16・高ナット(スタイル2) ※ナットの高さが約0.9D以上強度区分高ナット(スタイル2)8M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×39M5≦D≦M3910M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×312M5×≦D≦M39、M8×1≦D≦M16×1.5・低ナット(スタイル0) ※ナットの高さの最小値が0.45D以上0.8D未満強度区分高ナット(スタイル2)04M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×305M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×3引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじボルトの強度を十分に発揮させるためには、強度区分の合う適切なナットを使う必要があります。並高さナット(スタイル1) 及び高ナット(スタイル2)の強度区分に対して、組み合わせられるおねじ部品の最大強度区分の組み合わせは下表の通りです。・並高さナット(スタイル1)及び高ナット(スタイル2)とおねじ部品の強度区分との組合わせナットの強度区分組み合わせて用いることのできるおねじ部品の最大強度区分55.866.888.899.81010.91212.9引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじナットは、JIS規格にて強度区分と製造業者識別記号を表示する規定がされています。表示はナットの側面または座面に、くぼみ加工または刻印で施すか、外周の面取り部に浮き出しで施す決まりがあります。フランジ付きナットで、製造工程中にナットの頂面に表示できない場合は、フランジ上面に表示します。数字による表示記号の例は以下の通りです。・数字による表示記号の例・表示記号(代替記号)の例引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ六角ナットの種類と使い分け一般的な六角ナット引用元:宇都宮螺子株式会社 六角ナット一般的な六角ナットは、主に1種・2種・3種の3つのタイプがあります。1種:片面のみが面取りされている六角ナット2種:両面が面取りされている六角ナット3種:1種と2種に比べて厚みが小さい六角ナットこのなかでも、最も使用されているのが1種のナットです。1~3種以外に底部に座が付いた4種の六角ナットもありますが、他のタイプに比べて使われることが少ないです。高ナット(長ナット)高ナットは、六角ナットよりも全長が長いナットのことです。「長ナット」や「ロング六角ナット」とも呼ばれています。引用元:宇都宮螺子株式会社 高ナット高ナットは、上図左のように両側へおねじを取り付けて、長さを調節するために用います。また、プリント基板などを部材から浮かせるための、スペーサーの役割として用いる場合もあります。六角袋ナット引用元:WILCO.JP 鉄 袋ナット六角袋ナットは、六角ナットの片面が閉じている六角ナットのことです。「袋ナット」「キャップナット」「化粧ナット」とも呼ばれています。六角袋ナットは、六角ナットと違って、ボルトに締結した際にねじ部が露出するのを防げます。そのため、外観性や安全性を必要とする場合に採用されています。しかし、ナットの片側が塞がれていることから、ボルトの長さを調節する必要があります。六角袋ナットは【JIS B 1183:六角袋ナット】の規格にて、以下のように区別されています。1形:六角部とキャップ部とが一体形でねじの逃げ溝のないもの2形:六角部とキャップ部とが一体形でねじの逃げ溝のあるもの3形:六角部とキャップ部とを溶接したもの六角袋ナットの多くは、2種の六角ナットの上から球状のキャップ部を溶接して作られており、主に3形2種の製品が流通しています。また、六角袋ナットはJIS規格にて「六角袋ナット」と「小形六角袋ナット」の2種類に分けられています。六角袋ナットの二面幅÷ねじの呼び径=1.45以上のものを「六角袋ナット」、1.45未満のものを「小形六角袋ナット」と分類しています。(ただし、呼び径8mmの小形六角袋ナットは例外で1.45以上)細かく分類したときの六角袋ナットは、小形六角袋ナットと区別して呼ぶ場合、「並形六角袋ナット」と呼ばれます。フランジ付き六角ナットフランジ付き六角ナットは、六角ナットの底面にフランジが付いたもののことを指します。六角ナット等は部材との気密性を高めるために座金と併せて使用することが多くありますが、フランジ付き六角ナットは、フランジが座金の役目を果たします。また、フランジ付き六角ナットには、裏側に「セレート」と呼ばれるゆるみ止め防止機能が備わっているタイプもあります。セレートを搭載したフランジ付き六角ナットは、ゆるみ止め効果が期待できる分、部材をキズ付けてしまう可能性があるため注意が必要です。フランジ付き六角ナットは、主に作業効率や外観性の向上を目的として採用されます。通常、六角ナットを取り付ける際は、座金をセットしてからナットを締め付けます。一方でフランジ付き六角ナットは、座金をセットする手間が省けるため、作業効率の向上が期待できます。また、座金をセットした六角ナットよりも、フランジ付き六角ナットを使用したときの見た目を好む設計者が多く、外観性の向上を目的として使用されることもあります。参考:フランジとは?種類・形状・規格・材質など詳しく解説

  • 六角穴付きボルトの種類、規格、長さ、材質

    今回は、六角穴付きボルトの種類や規格などについて解説します。六角穴付きボルトは、ボルトの頭部に六角穴があいたボルトのことを指します。六角穴付きボルトは、決まったサイズの六角棒スパナでないと締め付けできないことから、強い締め付けが可能です。また、わずかなスペースでも締め付けられるほか、外観性の良さなどを理由に使う場合も多くあります。六角穴付きボルトとは?特徴と用途六角穴付きボルトとは、円筒状の頭に六角穴があいているボルトのことです。「キャップボルト」、「キャップスクリュー」、「ソケットスクリュー」とも呼ばれています。六角穴付きボルトは、狭い場所でのボルト締結が可能なだけでなく、外観の良さからデザイン性が求められるシーンでも活用されています。用途は、機械や電気部品などが代表的です。引用元:宇都宮螺子株式会社 六角穴付ボルト(キャップボルト)六角穴付きボルトを締め付けるには、上図のような六角棒スパナが必要です。六角棒スパナは「六角レンチ」と呼ばれることもあります。六角穴付きボルトは、サイズの合った六角棒スパナでしか締め付けが行えない分、ボルト穴を舐めることなくしっかりと締め付けられます。また、頭の上から六角棒スパナを差し込み、回転させて締め付ける方式のため、六角ボルト用のスパナと違って作業スペースが少なく済むのもメリットです。引用元:KTC 六角棒レンチ類六角棒スパナには、先端の形状が六角の標準タイプと、ボール状になったボールポイントがあります。ボールポイントは、斜めからでも六角穴に挿入および締め付けが可能で、上図のように奥まった場所などに使えます。しかし、斜めから締め付けを行う分、力強く締結するのは難しい特徴があります。そのため、基本的に奥まった場所の締め付けを行わない場合は、強い締め付けが可能な標準タイプの六角棒スパナを使います。六角穴付きボルトの種類六角穴付きボルトは、ねじ頭の形状などにより、さまざま種類があります。キャップボルト引用元:株式会社八幡ねじ 六角穴付ボルト 半ねじ 鉄 三価黒亜鉛 キャップ・キャップボルト RoHs対応キャップボルトは、六角穴付きボルトと同じもののことです。ねじの頭が円筒状になっているのが特徴で、平らな箇所や頭が出ないように座ぐりを設けた母材に使用します。六角穴付き皿ボルト引用元:WILCO.JP UFC-0000 ステンレス 六角穴付き皿ボルト六角穴付き皿ボルトは、頭部上面が平らで、座面が円錐形状になった六角穴付きボルトです。六角穴付き皿ボルトは、「皿キャップ」とも呼ばれています。六角穴付き皿ボルトは、通常の六角穴付きボルトと違って皿座ぐりした母材に使用します。六角穴付き皿ボルトは皿子ねじと用途がほぼ同じですが、皿小ねじに比べてねじの呼び径が大きいものもラインナップしています。引用元:宇都宮螺子株式会社 六角穴付皿ボルト(皿キャップ)また、通常の六角穴付きボルトは首下からの長さを「呼び長さ」としますが、六角穴付き皿ボルトの呼び長さは、本体の全長を表している点に注意が必要です。六角穴付きボタンボルト引用元:WILCO.JP ステンレス 六角穴付きボタンボルト六角穴付きボタンボルトは、丸みのある頭が特徴の六角穴付きボルトです。「ボタンキャップ」とも呼ばれています。六角穴付きボタンボルトは、六角穴付きボルトに比べて頭の高さが低く、幅は広い特徴があります。そのため、六角穴付きボルトよりも、頭部を目立たなくしたい場合に多く採用されています。全長指定六角穴付ボルト引用元:MiSUMi-VONA 全長指定六角穴付ボルト全長指定六角穴付きボルトは、使用用途に合わせてL寸法の長さを指定できる六角穴付きボルトです。一般的に、六角穴付きボルトの呼び長さは、20mmを超えるものだと5mmや10mm単位で長さが異なります。しかし、全長指定六角穴付きボルトは、1mm単位での長さ指定が可能です。締め付ける母材に対して、ちょうどいい長さの六角穴付きボルトが必要な方に適しています。全ねじタイプ引用元:ねじコンシェル.com 六角穴付全ねじタイプは、通常半ねじになる六角穴付きボルトに対して、全ねじに加工を施したものです。「全ねじ」とは、首下部分が全てねじ切りされたボルトのことを指します。通常、短いサイズの六角穴付きボルトは全ねじになっていますが、長さのあるものだと半ねじのタイプに切り替わります。「半ねじ」とは、全ねじとは逆で、首下が途中までねじ切りされているタイプのことを指します。六角穴付きボルトは、規格によってねじ部分の長さに決まりがあります。ボルトの名前に「全ねじ」と記載されているものは、基本的に半ねじである規格品に対して、全ねじに加工したもののことを指しています。低頭タイプ引用元:株式会社アンスコ 六角穴付き低頭ボルト低頭タイプは、通常の六角穴付きボルトに比べて、頭が低い特徴があります。六角穴付きボルトよりも省スペースでボルトを使用したい場合に採用されています。低頭は製品によって頭のサイズが異なりますが、なかにはより頭を低くした「超低頭タイプ」もあります。六角穴付きボルトの長さ、規格、寸法、強度区分六角穴付きボルトの規格六角穴付きボルトは、JIS規格にて寸法や強度区分が定められています。六角穴付きボルトの主な規格は以下の通りです。・六角穴付きボルト:JIS B 1176・六角穴付き皿ボルト:JIS B 1194・六角穴付きボタンボルト:JIS B 1174六角穴付きボルトの形状と寸法六角穴付きボルトの寸法については以下の通りです。※注1:六角穴の口元には、僅かな丸み又は面取りがあってもよい。※注2:ねじ先は、JIS B 1003に規定する面取り先とする。ただしM4以下は、あら先でもよい。※注3:頭部頂面の角部は、丸み又は面取りとし、その選択は製造業者の任意とする。    頭部座面の角部は、dwまでの丸み又は面取りとし、ばり、かえりなどがあってはならない。引用元:三木プーリ 六角穴付きボルト(キャップボルト/キャップスクリュー)の形状・寸法 規格一覧表(JIS B 1176:2014抜粋)・六角穴付きボルト(並目ねじ)の寸法 表1(単位mm)※ねじの呼びに括弧を付けたものは、なるべく用いない。参考:JIS B 1176:2014 六角穴付きボルト・六角穴付きボルト(並目ねじ)の寸法 表2(単位mm)※一般に流通している呼び長さの範囲は網掛け部分である。さらに網掛け内の数値がない範囲は全ねじ(首下部の不完全ねじ部の長さは3ピッチ以内)を表わす。※ねじの呼びに括弧を付けたものは、なるべく用いない。参考:JIS B 1176:2014 六角穴付きボルト六角穴付きボルトの強度区分六角穴付きボルトの強度区分は以下の通りです。・六角穴付きボルトの強度区分(並目ねじ)材料鋼ステンレス鋼非鉄金属機械的性質強度区分d<3mm:受渡当事者間の協定による。3mm≦d≦39mm:8.8、10.9、12.9d>39mm:受渡当事者間の協定による。d≦24mm:A2-70、A3-70、A4-70、A5-7024mm<d≦39mm:A2-50、A3-50、A4-50、A5-50d>39mm:受渡当事者間の協定による。受渡当事者間の協定による。適用規格JIS B 1051JIS B 1054-1JIS B 1057引用元:JIS B 1176:2014 六角穴付きボルト鋼のボルトの場合、例えば10.9の強度区分が表示されているものは、「10」が1000N/mm2の引張強さを表し、「9」は引張強さに対して90%の荷重(900N/mm2)が降伏点であることを示しています。引用元:ネジのトミモリ 強度区分ステンレス鋼のボルトの場合、A2やA3は鋼種の種類を表しています。ハイフンの後ろにつく数字は、引張強さを示します。例えば、A2-70と記載されているものは、オーステナイト系ステンレス鋼で、700N/mm2の引張強さがあることを意味します。六角穴付きボルトの材質六角穴付きボルトの主な材質は、鋼とステンレス鋼の2種類があります。鋼は一般的に鉄とも呼ばれている材質で、十分な強度を有しているほか、市場に多く出回っていることから、経済性に優れています。ただし、ステンレス鋼に比べて耐食性に乏しいため、表面処理が必要です。表面処理の種類は、黒色酸化被膜やユニクロめっきなどがあります。ステンレス鋼は、鋼に比べてコスト面に劣りますが、十分な強度と優れた耐食性を有しています。腐食しやすい環境下では、ステンレス鋼を採用する場合が多いです。六角穴付きボルトを使用する際は、使用する環境や価格面などから、適切な材質を選ぶようにしましょう。参考:ユニクロめっきとは!?亜鉛めっき/クロメートとの違い

  • 【ドリルねじ】種類・規格・サイズ・強度・使い方

    ドリルねじは、鉄骨造の建築物や板金加工製品などで主に用いられているねじです。ねじの先端に金属板へ穴をあけることが可能なドリルが付属しており、ドリルねじ一本で穴あけからねじ穴作成、ねじ締めまでを行うことができます。鋼板同士を締結したり、木材やボード類を鋼板に固定したりする場合に特に有用であり、保持力と耐久性、そして作業性に優れた多機能ねじとして幅広く利用されています。この記事では、このドリルねじとは何かというところから、種類、規格、サイズ、強度や使い方まで、詳しく解説していきます。ドリルねじとはドリルねじとは、上図のような、ねじ切りが可能なねじ部と穴あけが可能な先端部分を持つねじのことです。タッピングねじに切れ刃形状のドリル部を付属させたものとも言えます。すなわち、ドリルねじは、それだけで、以下の3つの機能を発揮することが可能です。・下穴あけ…ドリル部によってタップ立てに必要な下穴をあける。ねじの呼び径毎に適切な下穴のサイズがある。(下図左図参照)・タップ立て…ねじ部によって下穴に雌ねじのねじ山を作る。(下図中央図参照)・締め付け…別個の部材を締結して固定する。(下図右図参照)引用元:正しく使おうドリルねじ(上)「ドリルねじとは」一般社団法人 日本金属屋根協会ドリルねじのメリット・デメリットそのため、ドリルねじは、ねじ打ちの際、予め下穴をあけておく必要はなく、効率的な締結作業が可能です。また、下穴のサイズを間違えるといったミスも防ぐことができます。さらに、ドリルねじによって作られた雌ねじは、そのドリルねじの雄ねじに専用の雌ねじとしてピッタリと嵌まるため、釘などに比べて高い保持力と長期使用に耐えうる優れた持続性を示します。ただし、ねじ打ちに大きな力が必要なため、手工具による手動でのねじ打ち作業は困難です。従って、ねじ打ち作業には、電動ドライバーなどの電動工具が必須となります。しかし、電動工具であっても、インパクトドライバーはドリルねじのねじ打ちに向いておらず、頭飛び(ねじの頭部が取れること)を起こすことがあります。やむを得ず、インパクトドライバーを使用する場合は、締め過ぎに注意が必要です。また、ドリルねじは、タッピングねじと同様、自らのネジ部でタップ立てを行うため、頻繁に着脱するような箇所には向いていません。ドリルねじの材質ドリルねじの材質には、主に炭素鋼とステンレス鋼が用いられています。炭素鋼では、冷間にて圧造することで製造するSWCH18A〜SWCH22Aがドリルねじによく使われている素材です。これらの炭素鋼は、マンガンの量を多くすることで、耐摩耗性や衝撃強度、引張強さなどの向上を図ったもので、品質の高いアルミキルド鋼(末尾のAにて指定)から製造されます。なお、「18」や「22」などの数値は炭素の含有量を示し、「18」ならばおよそ0.18%の炭素を含みます。ステンレス鋼では、主にマルテンサイト系ステンレスのSUS410やオーステナイト系ステンレスのSUS305J1・SUS304J3・SUSXM7などがドリルねじに使われています。共に耐食性の高い素材ですが、より高い強度が必要な場合には焼入れが可能なマルテンサイト系が、より高い耐食性が必要な場合にはオーステナイト系が採用されます。また、締結対象が鋼板などの硬い素材ならマルテンサイト系を、アルミ材などの比較的軟らかい素材ならオーステナイト系を使用することが多くなっています。参考:【SUS(ステンレス)種類と見分け方】用途・特徴を専門家が徹底解説!参考:SUSXM7(ステンレス鋼)成分、磁性、機械的性質、比重ドリルねじの用途ドリルねじは、あらゆる箇所の締結に用いられていますが、特に建設業と金属加工業での用途が多くなっています。具体的には、鋼板を鋼板に締結したり、ボード類や木質材を下地鋼板に締結したり、上部鋼板と下地鋼板の間に木質材やボード類を挟んで締結したりする場合に用いられ、締結対象の材料や組み合わせなどに応じて適切な種類のドリルねじが選ばれます。建設業の用途例としては、建築物の外壁・屋根・床の施工、窓枠の取り付け、看板の取り付けなどが挙げられます。一方、金属加工業では、板金工事や金属製品の組立などに用いられています。ドリルねじの種類ドリルねじには様々な種類がありますが、ドリル部とネジ部、頭部の形状によって種類を分けることが可能です。まず、ドリル部の形状には、以下の3タイプがあります。・標準タイプ…先端にドリルのみが付いているタイプ。・リーマ付き…ドリルで空けられた穴の径を広げるための刃である「リーマ(ヒレ)」が付いているタイプ。木材などの軟質材を下地鋼板に締結する場合などに用いられ、軟質材の穴径だけをねじ外径よりも大きくすることで、損傷しやすい軟質材へタップ立てを適用しないようにします(下図左図参照)。軟質材の穴を広げた後、リーマは硬い下地鋼板に達して飛散しますので、鋼板の穴が拡張されることはありません(下図中央図参照)。・パイロット(PL)付き…ねじ部とドリル部の先端との間隔を延長するための平滑な軸が付いているタイプ(下図右図参照)。平滑な軸の部分とドリル部をまとめた部分は、パイロット部と呼ばれます。パイロット部(ドリル部)に長さが必要な理由は、ドリルねじの打ち込み時、下穴が開け終わる前にネジ部が取付部材へ達してしまうと、ねじ部が食い込んで取付部材が浮き上がってしまうためです。引用元:正しく使おうドリルねじ(上)「ドリルねじとは」一般社団法人 日本金属屋根協会ドリルねじのねじ部には、以下の2タイプがよく使われています。・タッピングねじ山…並目のねじ山。ねじ締めの作業性が良好です。・マシンねじ山…細目のねじ山。保持力が高いため、締結対象が薄くても固定可能です。また、保持力を確保しやすいため、タッピングねじ山に比べて、ねじ外径を小さくすることができます。そして、ドリルねじの頭部の種類には、代表的なものだけでも以下のようなものがあります。PAN(なべ頭)ドリルねじPANドリルねじは、なべ底のような丸みを帯びた頭部を持つドリルねじです。その形状から、「なべ頭ドリルねじ」や「なべドリルねじ」とも呼ばれます。最も多く流通しているドリルねじで、駆動部の形状は十字穴であるのが一般的です。なお、十字穴が付いたねじ全般に言えることですが、十字穴は、ねじを回転させたときにドライバーやビットの先端が外れる「カムアウト」が起きやすく、カムアウトが原因で十字穴が潰れてしまうこともあります。カムアウトは、ドライバー・ビットのねじに対する、押す力が足りなかったり、軸がぶれていたり、サイズが合っていなかったりする場合に発生するので注意が必要です。皿頭ドリルねじ皿頭ドリルねじは、頭部の上面が平らで、円錐を引っ繰り返したような形の頭部を持つドリルねじです。その多くは、PANドリルねじと同じく、駆動部の形状が十字穴となっています。ねじの取付位置に皿モミ加工を施しておくことで、頭部の上面と取付部材とを面一にすることができます。ねじの頭部による引っ掛かりをなくしたい箇所や外観を良くしたい箇所などに用いられます。参考:皿モミ加工とは?一般的な寸法や加工方法について専門家が解説!HEX(六角頭)ドリルねじHEXドリルねじは、六角柱形状の頭部を持つドリルねじです。六角ボルトのドリルねじ版とも言えます。六角頭ドリルねじや六角ドリルねじとも呼ばれます。頭部の外側からスパナや六角ソケットビットで締めるため、トルク伝達力が大きく、カムアウトの心配もありません。そのため、大きなトルクが必要な太径ねじに適しています。ただし、十字穴が付いているものもあり、その場合は十字穴をねじ締めに利用することが可能です。平頭ドリルねじ平頭ドリルねじは、円柱形状の薄い頭部を持つドリルねじです。頭部の高さが低いため、頭部による出っ張りが目立ちにくく、頭部の突き出しを最小にしたい箇所に使われます。なお、平頭ドリルねじの頭部の厚みは、製品によって様々です。頭部が薄い平頭ドリルねじでは、頭部高さが1.0mmのものもあり、「薄平頭ドリルねじ」や「極薄平頭ドリルねじ」などの名称で販売されています。トラス頭ドリルねじトラス頭ドリルねじは、緩やかな丸い形状の頭部を持つドリルねじです。PANドリルねじと比べて、頭部の高さが低く、頭部の径が大きくなっています。頭部径が大きいために着座面が広く、先穴(上部の取付部材に対する予めあけておく穴のこと)やバカ穴の径がある程度大きい場合でも部材の締結が可能です(下図参照)。ドリルねじの規格とサイズドリルねじは、JIS規格(JIS B 1124 2015)にて「タッピンねじのねじ山をもつドリルねじ」として規定されています。特に規格化されているのは、以下の4種類です。・つば付き六角ドリルねじ・十字穴付きなべドリルねじ・十字穴付き皿ドリルねじ ・十字穴付き丸皿ドリルねじこれらのそれぞれに対して、以下の呼び径のドリルねじがあります。・ST2.9・ST3.5・ST4.2・ST4.8・ST5.5・ST6.3さらに、呼び径毎に、以下の呼び長さのいくつかが規定されており、同径のドリルねじでも多様な板厚に対応できるようになっています。・9.5mm・13mm・16mm・19mm・22mm・25mm・32mm・38mm・45mm・50mm例えば、つば付き六角ドリルねじのサイズは、JIS規格で以下のように規定されています。なお、以下では、「JIS B 1124 2015」のほか、「JIS B 1007 2015」も参照しています。単位:mmねじの呼びST2.9ST3.5ST4.2ST4.8ST5.5ST6.3d1ねじの外径(呼び径)最大2.903.534.224.805.466.25最小2.763.354.044.625.286.03d2ねじの谷径最大2.182.643.103.584.174.88最小2.082.512.953.433.994.70ねじの呼びST2.9ST3.5ST4.2ST4.8ST5.5ST6.3Pピッチ約1.11.31.41.61.81.8a不完全ねじ部長さ最大1.11.31.41.61.81.8da不完全ねじ部径最大3.54.14.95.66.37.3dcつば径最大6.38.38.810.51113.5最小5.87.68.19.81012.2cつば厚さ最小0.40.60.80.911s二面幅最大4.005.507.008.008.0010.00最小3.825.326.787.787.789.78e対角寸法最小4.285.967.598.718.7110.95k頭部高さ最大2.83.44.14.35.45.9最小2.53.03.63.84.85.3kw六角部の有効高さ最小1.31.51.82.22.73.1r1首下丸み半径最小0.10.10.20.20.250.25r2つば上丸み半径最大0.20.250.30.30.40.5穴あけの範囲(適用板厚)以上0.70.71.751.751.752以下1.92.2534.45.256上表の「不完全ねじ部長さ(a)」は完全なねじ山が存在する最初のねじ山の位置から頭部座面までの長さ、「六角部の有効高さ(kw)」は頭部高さ(k)からつば厚さ(c)と頭部上面の凹みの深さを差し引いた高さ、「穴あけの範囲(適用板厚)」は適用可能な板厚のことで締結対象となる全ての部材の合計板厚(板と板との間に空間がある場合は空間の距離も含める)です。ねじの呼びST2.9ST3.5ST4.2ST4.8ST5.5ST6.3l(呼び長さ)lg(頭部座面から完全ねじまでの長さ)呼び長さ最小最大最小9.58.7510.253.252.85――――1312.113.96.66.24.33.7――1615.116.99.69.27.35.85―19182012.512.110.38.787222123―15.113.311.71110252426―18.116.314.714133230.7533.25――2321.521203836.7539.25――2927.527264543.7546.25―――34.534335048.7551.25―――39.53938「頭部座面から完全ねじまでの長さ(lg)」は、頭部座面から完全なねじ山が存在する最後のねじ山の位置までの長さです。ドリルねじでは、切り屑の排出性向上などを目的にスレッドカットと呼ばれるねじ山に対する切り欠きが施される場合があり、lgでは、このようなねじ山は除かれます。ドリルねじの強度ドリルねじは、しっかりとした締結が可能で、長期にわたって高い強度を維持することができます。ここでは、ドリルねじの引抜力・単体せん断力・単体引張破断力・単体ねじり強さの実験値をご紹介します。なお、ここでの値は、代表的な特性値であり、メーカーや製品によって若干異なる場合があります。引抜力引抜力は、材料にねじ込んだドリルねじの頭部を引き抜く方向に引き上げ、ドリルねじ又は材料が破壊したときの最大荷重を測定します(下図右図参照)。下図左表は、ドリルねじを鋼板にねじ込んだときの引張力です。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会単体せん断力単体せん断力は、ドリルねじの完全ねじ山が存在するねじ部に対して垂直方向に力を加え、ドリルねじが破断したときの最大荷重を測定します(下図右図参照)。下図左表がドリルねじの単体せん断力です。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会単体引張破断力単体引張破断力は、ドリルねじのドリル部をチャックで完全に固定して、頭部を引っ掛けて軸方向に引き上げ、ドリルねじが破断したときの最大荷重を測定します(下図右図参照)。下図左表がドリルねじの単体引張破断力となります。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会単体ねじり強さ単体ねじり強さは、ドリルねじをバイス(万力)で完全に固定し、頭部を締め付け方向に回転させてねじり力を加え、ドリルねじがねじ切れたときの最大トルク値を測定します(下図右図参照)。下図左表がドリルねじの単体ねじり強さです。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会ドリルねじの使い方ドリルねじのサイズの選び方ドリルねじを使用する際にまず問題になるのは、締結対象の板厚に対するドリルねじのサイズ選びです。JIS規格準拠の製品を使うのであれば、締結対象の板厚(適用板厚)がJIS規格の「穴あけの範囲」にあるサイズのドリルねじを選択することで、問題なく締結することができます。ただし、適用板厚(T)は、基本的に穴をあけて締結する全ての部材の合計板厚となります。しかし、上部の部材などにねじの呼び径よりも大きな先穴があいている場合は、その部材の板厚を合計板厚から除いたものが適用板厚(T)となります(下図参照)。引用元:正しく使おうドリルねじ(上)「ドリルねじとは」一般社団法人 日本金属屋根協会JIS規格に記載されていないドリルねじを使用する場合は、以下の2点を満たすサイズのドリルねじを選ぶ必要があります。・適用板厚(T)<パイロット部長(ドリル部)・最小働き長<適用板厚(T)<最大働き長適用板厚の厚みよりも長いパイロット部を持つドリルねじを選ぶ理由は、下図のように、下穴あけとタップ立てが同時に進行してしまうことがあるからです。●上部鋼板と下地鋼板の間に木質材やボード類を挟んで締結する場合引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会●ボード類や木質材を下地鋼板に締結する場合引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会ただし、下図のように、リーマ付きのドリルねじを使用してボード類・木質材を下地鋼板に締結する場合では、ボード類・木質材にタップ立てが行われることはないため、ドリルねじのパイロット部が適用板厚より短くても締結することができます。引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会また、しっかりと締結するためには、最上部の締結対象がドリルねじの頭部によって押さえ付けられ、最下部の締結対象がドリルねじの完全なねじ山に掛かっている必要があります。この条件を表したのが、上述の「最小働き長<適用板厚(T)<最大働き長」です。下図に、ドリルねじの働き長をタイプ毎に示しています。なお、下図のPは、ねじのピッチです。先端側の3山(3P)は、スレッドカットなどの存在によってねじ山が不完全であることが多く、通常は働き長に含みません。引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会ドリルねじの基本的な締結方法ドリルねじの締結は、基本的に以下の手順で進めます(上図参照)。締結対象へ垂直となるようにドリルねじを押し当てます。ドライバーを弱い力で押し当て、最初は低速回転でドライバーを起動します。回転速度を徐々に上げると同時に、押す力を強めていき、穴をあけます。穴があいたら、高速回転を維持しながらも弱めの力で押して、ドリルねじをねじ込んでいきます。タップが立てられていくこの過程では、回転に合わせてドリルねじが自然に沈み込んでいくので、ドライバー先端が駆動部から離れてしまわないように注意します。締結対象とドリルねじの座面が密着したときに生じる音を確認したら、ドライバーを停止します。ドリルねじを木材に使うには【木ねじの代替品】ドリルねじは、木ねじやコーススレッド、万能ねじなどの木用ねじの代替品として、木材同士の締結に使うことができます(下図参照)。しかし、木用ねじと比べると、ねじ山が低いためにねじ山の木材への食い込みが小さく、材木同士の保持力には劣ります。また、木材が経年変化で木痩せしていくことを考えると、そのねじ山の低さから保持力の持続性も低いことが予想されます。さらに、ドリルねじは、木用ねじよりもピッチが小さいため、ねじ締めの作業性は良くありません。とは言え、それらの違いはそれほど大きくなく、高強度が要求されるような締結でない限りは問題なく締結することが可能です。引用元:ネジの百科事典「ドリルねじ」株式会社ツルガドリルねじとタッピングねじの違いドリルねじとタッピングねじの違いは、上述したようにドリル部の有無です(上図のAタッピング参照)。そのため、タッピングねじを使用する際は、ねじ締めの前に予め下穴をあけておく必要があります。その下穴の径は、ねじの呼び径の約70%~95%程度が普通で、穴をあける部材が厚いほど大きな径の下穴をあける必要があります。例えば、呼び径3.5のタッピングねじ1種(Aタッピング)の場合、板厚が0.6mmならば直径2.6mmの下穴を、板厚が1.2mmならば直径2.9mmの下穴をあけることが推奨されます。そのほか、タッピングねじは、ドリル部が無いことから、ねじの呼び長さに対する働き長の割合が大きく、ねじを締めた後に無用の産物となるドリル部を収める空間が不要という利点があります。

  • 電縫管(溶接管)とは?規格、特徴、製造方法、腐食の対策方法

    管(パイプ)は、上下水道や化学プラントなどの配管設備、自動車のドライブシャフトや産業機械のシリンダーなどに用いられている、私たちの生活に欠かすことのできない部材・部品です。その中でも電縫管は、板を丸めて長手方向に沿って縫い合わせるように電気抵抗溶接することで成形するパイプです。生産性が高い上に、生産コストも低く、寸法精度に優れており、強度も高くなっています。最も幅広い用途に使われているパイプで、配管をはじめ、自動車部品、機械部品、建築物などに用いられています。この記事では、電縫管について解説していきます。特徴や用途、規格、製造工程など、電縫管に関する様々な事項について詳しく説明しますので参考にしてください。電縫管(溶接管)とは?特徴と用途電縫管とは、電気抵抗溶接の一種である縫合せ溶接と呼ばれる溶接法を使用して製造した鋼管のことです。電気抵抗溶接鋼管とも呼ばれます。電縫管の製造では、鋼帯コイルを連続的に引き出し、引き出した先で鋼帯を円筒状に成形して、円筒状となった鋼帯の端を溶接することで、鋼管の継ぎ目となる部分を接合してパイプにします。電縫管は、鋼帯から作製するため、肉厚の薄いパイプの製造に最適です。大量生産に向いており、コイルの引き出しと円筒形状への成形、継ぎ目の溶接などの一連の工程を連続的に行うことから、高い生産性を確保することができます。継目部(シーム部)については、溶接痕(溶接ビード)が発生してしまいますが、溶接ビードを削り取ることで滑らかに仕上げることが可能です(上図参照)。一方、シーム部以外については、シーム部周辺の溶接熱が影響した部分を除いて、素材そのままの表面性状が維持されます。また、溶接接合したシーム部の強度が懸念されることがありますが、近年の技術の高度化により、高強度かつ高品質、高精度なパイプの製造が可能となっています。材質については、多くが炭素鋼で、低炭素鋼のS10Cから、高炭素鋼のS50Cまで、様々な炭素含有量の炭素鋼が用途に合わせて使い分けられています。そのほか、ステンレス鋼やクロムモリブデン鋼、高マンガン鋼などの合金鋼も用いられます。製造可能な寸法は幅広く、外径は6.35mm~700mm、肉厚は0.6mm~28.0mm、長さは20m程度までの製品が鉄鋼メーカーなどで製造されています。参考:抵抗溶接について!原理や特徴を解説しています!電縫管の規格電縫管は、電気抵抗溶接によって製造された鋼管として、以下のJIS規格に規定されています。・JIS A 5525 鋼管ぐい・JIS A 5530 鋼管矢板・JIS C 8305 鋼製電線管・JIS G 3441 機械構造用合金鋼鋼管・JIS G 3442 水配管用亜鉛めっき鋼管・JIS G 3443 水輸送用塗覆装鋼管・JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管・JIS G 3445 機械構造用炭素鋼鋼管・JIS G 3446 機械構造用ステンレス鋼鋼管・JIS G 3447 ステンレス鋼サニタリー管・JIS G 3448 一般配管用ステンレス鋼管・JIS G 3452 配管用炭素鋼管・JIS G 3454 圧力配管用炭素鋼鋼管・JIS G 3456 高温配管用炭素鋼管・JIS G 3459 配管用ステンレス鋼管・JIS G 3460 低温配管用鋼管・JIS G 3461 ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管・JIS G 3462 ボイラ・熱交換器用合金鋼管・JIS G 3463 ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管・JIS G 3464 低温熱交換器用鋼管・JIS G 3466 一般構造用角形鋼管・JIS G 3472 自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管・JIS G 3473 シリンダチューブ用炭素鋼鋼管・JIS G 3474 鉄塔用高張力鋼管・JIS G 3475 建築構造用炭素鋼管・JIS G 3478 一般機械構造用炭素鋼鋼管・JIS G 3479 焼入性を保証した機械構造用鋼管電縫管は、その製造方法である「電気抵抗溶接」を表す記号として「E」が割り当てられており、鋼管の種類を示す記号の後に付けることと定められています。また、鋼管の仕上げ方法を表す記号も下表のように定められており、製造方法の記号の後に付けることとされています。仕上げ方法記号説明熱間仕上げH溶接後、鋼管を連続加熱炉に通して加熱したもののこと。絞り圧延機や冷牽設備で鋼管を引き伸ばす際や、金属組織の均一化を図る際に行われる。冷間仕上げと比べると寸法精度や表面性状に劣る。冷間仕上げC溶接後、加熱することなく、鋼管を金型に通して加圧し、形状を矯正したもののこと。強度や寸法精度が向上し、表面性状が良くなるものの、靭性は低下する。電気抵抗溶接ままG溶接後そのままの鋼管のこと。シーム部だけが加熱された状態であることから、素材そのままの表面性状が維持される。そのため、電縫管は、鋼管の種類を示す記号の後に以下のどれかを表示することが必要となります。・−E−H…熱間仕上電気抵抗溶接鋼管・−E−C…冷間仕上電気抵抗溶接鋼管・−E−G…電気抵抗溶接まま鋼管例えば、炭素鋼やステンレス鋼を素材とする鋼管では、以下のような表記が考えられます。・SGP−E−H…一般機械構造用炭素鋼のS45CTKを材質とする熱間仕上電気抵抗溶接鋼管・SUS304TP−E−G…配管用ステンレス鋼のSUS304TPを材質とする電気抵抗溶接まま鋼管参考:SUS304TP|jis規格の違いと使い分け、スケジュール番号電縫管の用途電縫管は元々、ガス管・水道管などの配管やガードレール・支柱などの構造物に用いられていました。しかし、近年の技術の向上によって、継ぎ目のないシームレス管が採用されていた、厳しい環境で用いられる油井掘削管やラインパイプ、高温環境で用いられるボイラやエンジン、精度の要求が高いドランスミッションやプロペラシャフトなどにも採用されるようになっています。電縫管の用途として、炭素鋼鋼管と合金鋼鋼管とを分けると、下表のようにまとめることができます。●炭素鋼鋼管規格名記号用途鋼管ぐいSKK鋼管杭鋼管矢板SKY鋼管矢板鋼製電線管-電線管水配管用亜鉛めっき鋼管SGPW水道用・給水用以外の空調用・消火用・排水用などの水配管水輸送用塗覆装鋼管STW上水道, 下水道, 工業用水道, 農業用水路一般構造用炭素鋼鋼管STK鉄塔, 足場, 支柱, 基礎杭機械構造用炭素鋼鋼管 STKM機械器具, 自動車, 自転車, 家具, 器具, その他の機械部品配管用炭素鋼鋼管SGP低圧の蒸気・上水以外の水・油・ガス・空気などの配管圧力配管用炭素鋼鋼管STPG350℃以下で用いる圧力配管高温配管用炭素鋼鋼管STPT350℃超で用いる配管低温配管用鋼管STPL0℃以下で用いる配管ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管STBボイラの水管・煙管・過熱器・空気予熱器, 化学工業・石油工業で用いる熱交換器, コンデンサ管, 触媒管低温熱交換器用鋼管STBL0℃以下で用いる熱交換器管・コンデンサ管一般構造用角形鋼管STKR土木・建築などの構造物の部材自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管STAM自動車構造用部品シリンダチューブ用炭素鋼鋼管STC油圧シリンダ・空気圧シリンダのシリンダチューブ鉄塔用高張力鋼管STKT送電鉄塔建築構造用炭素鋼鋼管STKN建築構造物の部材一般機械構造用炭素鋼鋼管S-CTK, S-CKTK機械部品参考:STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)とは?規格・特徴・比重●合金鋼鋼管規格名記号用途機械構造用ステンレス鋼鋼管SUS-TKA機械, 自動車, 自転車, 家具, 器具, 機械部品, 構造物の部材ステンレス鋼サニタリー管SUS-TBS酪農・食品工業・医療・医薬品工業などで用いるサニタリー管一般配管用ステンレス鋼鋼管SUS-TPD給水・給湯・排水・冷温水・消火用水などのための配管配管用ステンレス鋼鋼管SUS-TP耐食用・低温用・高温用・消火用などの配管ボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管SUS-TBボイラの過熱器, 化学工業・石油工業で用いる熱交換器, コンデンサ管, 触媒管機械構造用合金鋼鋼管SMn-TK, SMnC-TK, SCr-TK, SCM-TK, SNC-TK, SNCM-TKSACM-TK機械部品, 自動車部品ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管STBAボイラで用いる水管・煙管・過熱器・空気予熱器, 化学工業・石油工業などで用いる熱交換器, コンデンサ管, 触媒管焼入性を保証した機械構造用鋼管SMn-HTK, SMnC-HTK, SCr-HTK, SCM-HTK, SNC-HTK, SNCM-HTK機械部品, 自動車部品電縫管(溶接管)の製造方法と製造工程電縫管は、以下のような製造工程に従って生産されます。1. 鋼帯の引き出し2. 鋼帯の成形3. 電気抵抗溶接4. 溶接ビードの除去5. 鋼管のサイジング6. 鋼管の切断7. 鋼管の仕上げ1. 鋼帯の引き出し電縫管は、上述したように、薄鋼板をロール状に丸めた鋼帯コイルを素材として用います。この工程では、鋼帯をコイル材を巻き戻すアンコイラー(材料供給装置)で供給し、供給された鋼帯をピンチローラーなどの送り装置で引き出して、次工程に鋼帯を送ります。その過程で、場合によっては、鋼帯に以下の処理を施します。・ひずみ除去…レベラーによって鋼帯の上下方向から交互に変形を与えることで、巻きぐせなどのひずみを取り除く処理。・ループコントロール…アンコイラーと送り装置との間で生じる鋼帯のたるみを管理する処理(下図参照)。たるみの程度によっては、アンコイラーや送り装置に大きな負担が掛かり引き倒されてしまうことがある。引用元:MISUMI-VONA > 技術情報「コイル材のループコントロール(材料送り異常の検出 その10)」株式会社ミスミ・エッジ処理…鋼帯の端に形成されたバリなどを除去したり、鋼帯の端の形状を整えたりする処理のことで、溶接継目の溶け込み不良などを防止し、品質のバラツキを抑制する効果がある。2. 鋼帯の成形鋼帯コイルから引き出した鋼帯を円筒状に成形する工程です。この工程では、下図のように、連続的に供給される鋼帯を種々の曲率のロールによって幅方向に曲げることで、円筒状に成形します。引用元:BAB 2.pdf「Pipa dilas (butt-welded pipe)」Research Repository of UMY Repository3. 電気抵抗溶接円筒状に成形された鋼帯の端を高周波電気抵抗溶接で接合する工程です。この工程では、上図のように、鋼管の継ぎ目となる部分を突き合わせ、高周波電流を流して溶接温度まで加熱し、スクイズロールによって圧迫することで圧着します。この圧着は、局所的かつ瞬間的に行われるため、溶接熱が影響する範囲は小さく、高速な接合が可能です。なお、高周波電流の供給方法には、同心円状のコイルに鋼管を通して非接触で通電する誘導加熱法(下図左図)と電流供給装置を鋼管に接触させて通電する直接通電法(下図右図)があります。誘導加熱法は、鋼管の凹凸に影響を受けないために溶接欠陥が生じにくく、小径・薄肉の鋼管の溶接に向いています。しかし、電力効率は低いため、鋼管のサイズが大きくなると、溶接速度が低下します。一方、直接通電法は、電力効率が高いため、大口径管の溶接が可能です。しかし、口径が小さいと通電ができない場合がある上、凹凸があると接触不良によって溶接欠陥が発生することがあります。引用元:最近の電縫管溶接装置「高周波電流の供給方法」富士電機株式会社4. 溶接ビードの除去鋼管のシーム部の内外面に生じた溶接ビードを除去する工程です。この工程では、溶接直後のシーム部の内外面にバイトを当てて溶接ビードを除去します。内面の溶接ビード除去は、溶接点の手前側の管がまだ閉じられていない箇所からロッドを差し込み、バイトを当てることで実行します(下図参照)。なお、下図は、誘導加熱法によって高周波電流を供給しているケースで、インピーダーは、誘導電流を局所化し、溶接熱の影響範囲を小さくする役割があります。引用元:小径厚肉機械構造用鋼管「内面ビード切削」JFEスチール株式会社5. 鋼管のサイジング溶接ビードの除去が完了した後は、鋼管を水などで冷却し、鋼管の寸法を整えるサイジングを行います。サイジングは、ロールによって鋼管の形状を整えたり、丸管から角管へと形状を変化させたり、絞りを加えて管を引き伸ばしたりする工程です。6. 鋼管の切断連続的に製造している鋼管を切断工具を使用して一定の長さに切断する工程です。鋼管を切断した後は、鋼管の開口部の面取りを行い、検査を実行します。仕上げを行わない電気抵抗溶接まま鋼管としては、これで製造完了です。7. 鋼管の仕上げ仕上げを実行する場合は、鋼管の切断後にさらなる処理を施します。熱間仕上げを実施する場合は、金属組織の均一化を目的に、鋼管を連続加熱炉に通して加熱します。冷間仕上げを実施する場合は、寸法精度の向上を目的に、鋼管を金型に通して加圧し、形状を矯正します。電縫管のサイズ電縫管は、上述したように、幅広いサイズのラインナップが揃っていますが、他の方法で製造された鋼管も含めて比較すると、小径から中径で比較的薄肉のサイズのものが入手可能となっています。しかし、鋼管類の寸法は、外径・厚さ・長さのほかに、JIS規格にて「A呼称」と「B呼称」という呼び径が定められており、サイズの指定の仕方が分かりにくくなっています。さらに言うと、A呼称とB呼称は、それぞれミリメートルとインチの内径サイズを反映しているように見えるものの、そのサイズは正確ではなく、単に外径サイズごとに定められた、おおよその内径を示すものとしか見ることができません。そのため、鋼管の正確な内径は、外径から2倍した厚みを引くことで算出します。 また、現場では、鋼管のサイズをB呼称で呼ぶことが多く、B呼称の分母を「8」に固定した呼び方が「通称」として用いられています。例えば、B呼称で「1/8」であれば「1分(イチブ)」、「3/4  = 6/8」であれば「6分(ロクブ)」、「1 1/4 = 1 2/8」であれば「インチ2分(インチニブ)」と呼びます。以上を前提に、代表的かつ入手可能な寸法の電縫管を挙げたのが下表です。なお、下表の「厚さ」の列では、外径サイズごとの入手可能な厚さのおおよその範囲を示しています。外径 (mm)呼び径厚さ (mm)A呼称B呼称通称10.561/81分1.0~2.413.881/42分1.2~3.017.3103/83分1.2~3.221.7151/24分1.4~5.527.2203/46分1.4~7.034.0251インチ1.0~7.042.7321 1/4インチ2分1.2~9.048.6401 1/2インチ半1.2~9.060.55022インチ1.4~11.076.3652 1/22インチ半1.6~11.089.18033インチ1.6~12.0114.310044インチ2.3~12.0139.812555インチ2.3~12.0165.215066インチ3.0~12.0216.320088インチ3.0~16.1267.42501010インチ3.2~16.1318.53001212インチ3.8~17.5355.63501414インチ4.5~23.8400.0---4.5~23.8406.44001616インチ4.5~23.8457.24501818インチ5.5~23.8500.0---5.5~25.4508.05002020インチ5.5~23.8558.85502222インチ6.0~26.0600.0---6.0~26.0609.66002424インチ6.0~26.0660.46502626インチ6.0~25.4700.0---9.0~24.0電縫管の溝状腐食と対策方法水配管として用いられる電縫管では、シーム部のみが上図のようにV字形に腐食する「溝状腐食」が起きることがあります。この溝状腐食は、水分を含む液体の輸送配管に用いられる以下の炭素鋼鋼管で主に発生します。・配管用炭素鋼鋼管(SGP)・水配管用亜鉛めっき鋼管(SGPW)・圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)この現象は、水質に関係なく起こりますが、工業用水や海水の輸送に使用された電縫管で多く見られます。特に、海水輸送に用いられた電縫管では、溝状腐食速度が年間14.0mmにも達する事例が存在します。また、溝状腐食は、進行が速く、溝状腐食が発生した電縫管の約80%が使用開始後4年までに貫通して漏水に至っています。溝状腐食の発生原理溝状腐食は、シーム部の急速な加熱と冷却で生じる、金属組織の変化と鋼帯の肉厚中央部に存在していた硫化マンガン(MnS)系非金属介在物の金属表面への露出が原因で起こるとされています。表面が露出したMnS系非金属介在物の周辺には、腐食しやすい硫化鉄(FeS)が高い濃度で形成され、溝状腐食の起点となるからです。シーム部と母材との金属組織の違いも、電位差を生じさせることから溝状腐食の引き金となります。そして、溝状腐食が進行すると、溝の水分が淀んで酸素濃度が低下し、腐食の原因となる酸素濃淡電池作用が生じて腐食が進展します。さらに、MnS自体も不安定化して溶解し、腐食を加速する硫化水素などを生成して、溝を深くしていくのです。溝状腐食の対策方法近年では、溶接後の熱処理の適用や素材の化学成分の調整といった対策方法が考案され、実行されています。溝状腐食はそもそも、金属組織の変化や含有成分の偏りから生じる現象であり、熱処理によって金属組織を均一化することで、ある程度の溝状腐食抑制効果が得られます。ただし、熱処理温度は、鉄鋼の焼なまし温度である900℃程度が必要とされ、900℃以上に加熱して10分以上保持することで溝状腐食の発生を低減できます。溝状腐食は、硫黄(S)の含有量の低減と銅やニッケル、アルミなどの添加によっても抑制することができます。Sは含有率を0.002%以下に下げて、MnS量を低減することで、溝状腐食の発生を著しく減らすことが可能です。それに加えて、ニッケルを0.1%程度添加すれば、ほぼ溝状腐食は発生しないとされています。そのほか、銅やアルミ、カルシウム、ニオブなどの添加も有効です。鉄鋼メーカーからは、化学成分を調整したSGPやSGPW、STPGが耐溝状腐食電縫鋼管として販売されており、耐溝状腐食電縫鋼管には、溝状腐食無しを意味する「MN」が表示されています。鍛接管やシームレスパイプとの違い管(パイプ)は、製造方法の違いにより、電縫管と鍛接管、アーク溶接管、シームレス管に分類することができます。ここでは、電縫管の鍛接管やシームレス管との違いについて説明します。まず、鍛接管は、加熱した鋼帯を引き出しながら円筒状に成形し、その両端を圧着して接合したパイプのことです。生産性は比較的高く、大量生産に適していますが、シーム部の強度はそれほど高くありません。また、全体を加熱するため、スケールが発生しやすく、表面性状は良くありません。続いて、シームレス管は、円筒形状の金属塊を高温に加熱し、中心に金具を押し付けることで穴をあけて成形したパイプのことです。大量生産には向いていませんが、肉厚のパイプの製造に適しています。パイプに継目がないことから高強度ですが、高温に加熱するため、表面性状は電縫管に比べて劣ります。また、寸法精度がそれほど高くなく、管の同一断面の肉厚が非均一となる「偏肉」が発生するという欠点があります。参考:配管製作について解説!おすすめの業者も紹介!電縫管と鍛接管、シームレス管との違いをまとめると下表のようになります。電縫管鍛接管シームレス管サイズ6.35mm~700mm21.7mm~114.3mm6.35mm~952.5mm肉厚0.6mm~28.0mm2.8mm~4.5mm0.9mm~65.0mm強度比較的高い低い高い生産性高い比較的高い低いコスト低い低い高い表面性状良いやや悪い悪い寸法精度高い比較的高いやや低い製造法の記号−E−H, −E−C, −E−G−B−S−H, −S−C

  • 特殊ナットの種類一覧と特徴を紹介

    ナットとは、ボルトとワンセットで使用される工具のことで、物と物を締め付けて繋げる際に使用されます。一般的には外側が六角形のドーナツ型をしていて、内側にはボルトを締め付けるための螺旋状の溝が彫られています。ナットは六角形の物ばかりではありません。四角いものや爪がついたもの、底が丸くなっているものなど、意外に多くの種類が存在していることはご存知ですか?モノづくりでは、これらをまとめて「特殊ナット」と呼んでいます。特殊ナットの種類特殊ナットは、目的や用途に合わせてさまざまな種類があります。ボルトと合わせて使い、物と物を締め付けるという目的は変わらないのに、なぜそこまでたくさんの種類があるのでしょうか。それは、ボルトとナットがモノづくりの現場において、さまざまな用途で使用されているからです。木材に使用したい、簡単に緩まないようにしたい、液体に触れる場所に使いたいなど、作りたい物に合わせて作られた結果、さまざまな種類の特殊ナットが誕生しました。特殊ナットの種類と役割は下記の通りです。ゆるみ止めナットゆるみ止めナットはその名の通り、一度締めるとねじが緩みにくいような工夫が施されたナットのことで、一般的には「Uナット(セルフロッキングナット)」と「ハードロックナット」の2種類があります。●Uナット(セルフロッキングナット)Uナットは、フリクションリングと呼ばれる特殊バネが一体になったナットのことです。ボルトを絞めつけることによってフリクションリングがボルトのねじ山に達し、ねじ面を押さえつける仕組みになっています。バネの戻ろうとする力とボルト、ナットの引っ張り合う力によって生じる摩擦トルクがゆるみを防止する作用になっています。●ハードロックナットナットが緩む理由は、ボルトとナットの間にほんの少し空間があることが理由です。そのため、この空間をなくしてしまうことができれば、ナットは緩まないということになります。ハードロックナットは、構造が第一ナット、第二ナットに分かれており、第二ナットにクサビを打ち込むハンマーと同じ機能を持たせることで優れたゆるみ止め効果を持たせています。シールロックシールロックは、シーリング材を組み込むことで、締め付けた際にナットとの間隙をなくします。これにより、ゴムや樹脂などのワッシャーを取り付けることなく、油圧制御バルブや燃料ポンプなど、液状のものが流れる場所の締結が可能です。高気圧下でも気体・液体に対して高い効果を発揮する他、シーリング材によって耐熱性を求められる場所での使用も可能です。やきつかナットステンレスは熱伝導率が低く、熱膨張率が大きいため、摩擦熱によってねじが膨張し、動かなくなってしまうことがあります。これを、「焼き付き」と呼んでいます。やきつかナットは、ステンレス製のナットに多層メッキを施すことで焼き付きを防止したナットです。鬼目ナット(インサートナット)鬼目ナットは組み立て構造の家具に組み込むことを目的として開発されたナットです。「打ち込みタイプ」と「ねじ込みタイプ」の2種類があり、いずれも木材に下穴をあけ、挿入することで食い込んで固定されます。ねじにはツバ付とツバ無があり、ツバ付はツバがあることでねじが深く挿入され過ぎることを防ぐことができます。ツバ無はツバ付に比べて部材との密着性が高く、用途に合わせて埋め込み深さを調整することが可能です。エンザート(タッピングインサート)エンザートは、アルミやプラスチックなど、ねじ山が潰れやすい素材に組み込むインサートナットです。ナットの外側と内側がどちらもねじ山になっていて、強度の低い母材に対し、ねじ部分を補強する効果があります。ねじ山の潰れを防げるほか、母材に直接ネジ穴を作るのに比べてねじ部分の強度がアップします。スプリングナットスプリングナットは、六角ナットとばね台座が一体となったナットです。ナットのゆるみを防止するためにばね座金と合わせて使うことがありますが、別々にした場合、取り外した時に落下し、機械部品の故障や事故に繋がってしまうことがあります。こういった事態を、ばね座筋とナットを一体化させることで防ぐことができるため、自動車や産業機器、農業機械などの機械部品に多く使用されています。四角ナット・板ナット四角ナットは、その名の通り、四角形のカタチをしたナットのことでスクエアナットとも呼ばれています。正方形や長方形の他、立面から見るとT字のカタチをしたナットや、ダクトの形状に合わせ、横から見るとアーチを描いている形状のナットもありますが、平面から見た時に四角形のものは一般的に四角ナットに分類されます。また、見た目がほとんど変わらない「板ナット」は、四角ナットに比べて半分近く薄い特徴があります。用途などによっても異なりますが、一般的なもので厚さ1.8mm程度の薄めのものを板ナット、3.2mm程度の厚めのものを四角ナットと呼んでいます。なぜ厚みが違うだけで別の名前がついたのかというと、四角ナットは六角ナットを用途に合わせて四角に変化させたもの、板ナットは四角い板にねじ山がほしいという要望から生まれたもので、もともとの用途は大きく異なっていたからです。現在では混同して使われていることも多く、必要な厚みや寸法に合わせて使用されています。皿ばねナット皿ばねナットは、ナットとワッシャーが一体化した構造をしています。ワッシャーはドーム型になっていて、締め付けていくことで平たくなり、ゆるみ止め防止の効果を持っています。スプリングナット同様、ワッシャーと一体化させることで作業を簡略化させることができる上、ワッシャーが分離することによる故障や事故を防ぐ効果があります。爪付きTナット(ウィット)ねじ込みにくい薄い板の締め付けや、引張強度が必要な場合におすすめのナットです。テーブルの脚の取り付けなどに使われるほか、ボルダリングのクライミングホールドにも使われます。カレイナット圧入方式で薄板や溶接に不向きな母材にナットを取り付けるのに使用されます。ナットの首下が特殊な形状になっており、高い取り付け強度が得られるため、電機筐体や計器など、さまざまな筐体に使用されています。

  • SGPとは?種類、用途、性質、接続方法

    今回はSGPの基礎知識について解説します。SGPは、配管用炭素鋼鋼管のことで、水やガスなどの配管に使われています。市場に多く出回っているもので、ホームセンターでも入手が可能です。一口にSGPと言っても、めっきの有無で種類や用途も異なります。この記事ではSGPの各種類の特徴や、SGPの接続方法について見てみましょう。SGPとは?SGPとは、「配管用炭素鋼鋼管(Carbon steel pipes for ordinary piping)」と呼ばれる鋼管のことです。SGPの名前は「Steel Gas Pipe」の略称を表しています。SGPは、製管方法が電気抵抗溶接の場合「E」、鍛接の場合は「B」の記号が付きます。仕上げ方法によっても、熱間仕上げの場合は「H」、冷間仕上げの場合は「C」、電気抵抗溶接の場合は「G」の記号が付きます。(例:熱間仕上電気抵抗溶接鋼管の場合、SPG-E-Hの表記)配管用炭素鋼鋼管の主な用途は、JIS G 3452にて、「使用圧力の比較的低い蒸気、水(上水道用を除く)、油、ガス、空気などの配管に用いる」ものとして記載があります。SGPに適用される寸法は、外径10.5~508.0mmです。SGP管の種類引用元:日本水道鋼管協会 管の種類と用途SGPは白管と黒管の2種類があります。ここでは白と黒の違いについて見てみましょう。黒管黒管のSGPは、表面処理がなく、外観が黒く見えるタイプです。主な用途は、蒸気配管・油配管・エアー配管などです。白管白管のSGPは、耐食性を高めるために亜鉛めっきが施されており、パイプの外側と内側ともに白色になっています。主な用途は、工業用水配管・空調設備配管・衛生設備配管・消火用配管などです。白管に似たものとして、水配管用のパイプである「SGPW(水配管用亜鉛めっき鋼管)」もあります。SGPWは、見た目こそSGPの白管と同じパイプになりますが、亜鉛めっきの付着量が平均600g/m2以上と、JIS G 3442で規定されています。一方でSGPの白管は、亜鉛めっきの付着量に規定がありません。SGPの接続方法ここでは、SGPの代表的な接続方法である、ねじ接合と溶接接合の方法について紹介します。ねじ接合引用元:モノタロウ 建築設備配管工事の基礎講座 3-1 炭素鋼鋼管(SGP)の切削ねじ接合方法ねじ接合は、ねじ継手を使ったSGPの一般的な接続方法です。上図のようなねじ切り機によりパイプの両端をねじ加工し、ねじ継手を用いて接続します。ただし、ねじ接続は加工と施工上の都合により、小口径管(65A程度まで)の配管で利用されています。溶接接合SGPは、溶接にて接合する場合もあります。溶接接合は、口径の大きな管(65A~350A程度)や、強度が必要な場合、水密性・気密性などを要する場合に採用されます。溶接接合の方法にも種類があり、建築設備の施工ではガス溶接と被覆アーク溶接が一般的に利用されています。SGPの性質SGPの機械的性質と、化学的性質については以下の通りです。機械的性質●SGPの引張強さ及び伸び種類の記号引張強さ伸び%引張試験片引張試験方向厚さ3mmを超え4mm以下4mmを超え5mm以下5mmを超え6mm以下6mmを超え7mm以下7mmを超え8mm未満SGP290以上11号試験片管軸方向30以上30以上30以上30以上30以上12号試験片管軸方向24以上26以上27以上28以上30以上5号試験片管軸直角方向19以上20以上22以上24以上25以上※呼び径32A以下の管については、この表の伸びの規定は通用しないが、試験の結果を記録しておかなければならない。ただし、受渡当事者間の協定によって、伸びを規定してもよい。引用元:JIS G 3452:2019 配管用炭素鋼鋼管化学的性質●SGPの化学成分(単位:%)種類の記号PSSGP0.040以下0.040以下※必要に応じて上表に規定のない合金元素を添加してもよい。引用元:JIS G 3452:2019 配管用炭素鋼鋼管

  • カプラとは?種類や材質、用途、サイズを解説

    今回はカプラの基礎知識について解説します。カプラは気体や液体などの配管に使用されており、確実かつ簡単に配管の接続や分離が行えるものです。工場では配管を通して空気や水、油などの流体を用い、機械を動かします。流体は配管がしっかりと接続されていないと漏れてしまいますが、カプラを用いることで手間なくしっかりと接続を行えます。カプラとは引用元:おしごとはくぶつかん 工場などで欠かせないという「カプラ」って何?カプラとは、空気や油などの配管を素早く着脱するための継手・コネクターのことを指します。カプラの名称以外にも「カップリング」、「クイックジョイント」、「カチット」などと呼ぶ人もいます。カプラは対となるソケットとプラグをはめ込むと、しっかりとロックされ、中にあるバルブが自動的に開く仕組みです。そのため、ソケットとプラグを接続した状態だと流体が流れ、ロックを外して切り離すとバルブが閉じて流体が止まるようになっています。カプラの用途カプラは代表的な例として、エアーコンプレッサー本体のエアー吐出口に使用されています。スプレーガンなどのエアーツール側のプラグと繋ぎ合わせ、コンプレッサーからエアーを得ることができます。そのほかにも、水や油が流れる配管や医療用機械などのさまざまな用途で採用されています。カプラの種類カプラのオスとメス引用元:サンエイエアー.jp カプラについてカプラにはオスとメスの2種類があります。差し込む側のカプラがオス、差し込まれる側のカプラをメスと呼びます。オスのカプラはプラグ(Plug)とも呼び、アルファベットの「P」と表示されています。一方メスのカプラはソケット(Socket)とも呼ぶことから、アルファベットの「S」と表示されています。カプラのオスとメスは対になっており、機械側のカプラとエアー供給側のカプラが同じタイプのものでないと使用できない場合があるので注意が必要です。カプラのおねじ、めねじ、ホース、ナットについて引用元:モノタロウ カプラの基礎知識と選定ポイントカプラにはねじを搭載したものがあります。この場合、オスのカプラは「おねじ」、メスのカプラには「めねじ」がそれぞれ搭載されています。おねじを搭載したカプラはメール(Male)という意味から「M」のアルファベットで表示されます。めねじを搭載したカプラはフィメール(Female)という意味から「F」のアルファベットで表示されています。例を挙げると、「PM」と表示されたカプラは、プラグ(P)とメール(M)を表示しているため、プラグ側のおねじを意味します。カプラのパッキンカプラはパッキン付きのものがあります。パッキンを搭載したカプラは、ジョイント部分から流体が漏れないように密閉性を高めることができます。パッキン付きのカプラは「F」のアルファベットが表示されています。例えば「PFF」という表示がされたものは、カプラのオスにめねじとパッキンが搭載されていることを意味します。カプラのサイズと流路内径カプラのサイズは一般的に2分(ニブ)や3分(サンブ)といった呼び方をします。〇分に入る数値はインチ表記した際、分母の8に固定したときの値が入ります。(例:3/8インチ→3分、1/4インチ→2分)サイズが8分のときはインチと呼びます。インチmm分1インチ25.4mm-1/2インチ12.7mm4分3/8インチ9.525mm3分1/4インチ6.35mm2分1/8インチ3.175mm1分カプラの材質カプラの材質は、鋼鉄・真鍮・ステンレスがあります。使用流体に対するカプラの適応材質は以下を参考にしてみてください。・使用流体と適応材質の一例流体名鋼鉄真鍮ステンレス空気〇〇〇酸素〇〇〇炭酸〇〇〇工業用水△〇〇硝酸ナトリウム〇△〇塩化ナトリウム×△△〇:使用可能/×:使用不可/△:使用条件によって制限引用元:モノタロウ カプラの基礎知識と選定ポイント平行ねじとテーパねじの違い引用元:PRO HONPO カプラの基礎知識カプラには平行ねじ(ストレートねじ)とテーパねじがあります。それぞれの形状を見てみると、上図左のテーパねじは根本にいくほど太くなっており、上図右の平行ねじは先端から根本にかけて平行なのが特徴です。テーパねじは、対応するめねじに締め付けると隙間が少なくなり、シール材と併用することでシールできます。テーパねじは、主にシール材と併用して、普段は取り外しを行わない箇所に使用します。平行ねじは、対応するめねじも平行になっていて、シールするにはガスケットを用います。平行ねじは、主にガスケットなどで漏れを防ぎ、取り外しが頻繁に行われる箇所で使われています。管用平行ねじと管用テーパねじの表示および規格は以下の通りです。ねじの種類新JIS規格ISO規格旧JIS規格JIS規格管用平行ねじおねじG(A)(B)PFJIS B 0202管用平行ねじめねじGPF管用テーパねじテーパおねじRPTJIS B 0203管用テーパねじテーパめねじRcPT平行めねじRpPS管用平行ねじは、新JIS規格とISO規格で「G」のアルファベットを使って表します。製品仕様欄には有効径による等級によっては「A」もしくは「B」を付け加えます。製品によっては、管用平行ねじの旧JIS規格である「PF」で表示している場合もあります。管用テーパねじは、新JIS規格とISO規格で「R」と「Rc」を使って表します。テーパおねじに対して平行めねじを使用する際は「Rp」で表されたものを使用します。「Rp」は管用平行ねじとは寸法許容差が異なるため、別物として扱われます。製品によっては、管用テーパねじの旧JIS規格である「PT」、「PS」で表示している場合もあります。

  • プランジャーの役割、種類、特徴、用途

    プランジャーは、突っ込む物や押し込む物を意味する英語の「Plunger」から来ている言葉です。機械工業の分野では、以下のような筒や穴に出し入れして用いる様々な部品がプランジャーと呼ばれます。・ディーゼルエンジンにおける燃料を高圧で噴射する噴射ポンプの棒状の構成部品。筒状のポンプ内部で軸方向に往復運動することで燃料を圧送する。・プランジャーポンプの棒状の構成部品。ポンプ内部を往復運動することで流体を引き込んで押し出す。・エレベーターにおける油圧ジャッキの棒状の構成部品。油圧ジャッキのシリンダー内部を往復運動することでワイヤーを通してカゴを押し上げ、引き下げてカゴを昇降させる。・注射器の注射筒(シリンジ)に充填された薬剤などを押し込む注射桿と呼ばれる部分のこと。・機械・材料などの位置決めや固定などを行うための機械部品。このように様々な分野で用いられるプランジャーですが、この記事では、最後に挙げた、位置決めや固定などに用いられるプランジャーに焦点を当て、その種類や特徴、役割、用途などについて解説していきます。プランジャーとはプランジャーとは、装置・器具の位置決めや固定、ワークの突き出しなどのために用いられる機械要素部品のことです。円筒形状で、先端にボール又はピンを備えています。そのボール(ピン)は、荷重を掛けると本体内部に沈み込みますが、スプリングを内蔵しているため、荷重が解けるとバネの力で元に戻ります。プランジャーは、取付けタイプの違いにより構造が異なります。ねじ込み取付けタイプでは、円筒の側面にはネジ山が、ボール(ピン)の逆側の先にはマイナス溝や六角穴などが形造られています。つまり、ねじ込み取付けタイプのプランジャーは、ネジ穴を作っておけば、ドライバーやレンチなどでねじ込むだけで取り付けが可能です。ねじ込み取付けタイプの中には、ピンがある先端に専用工具でのねじ込みが可能な専用溝が存在するものがあり、その場合は貫通していない止まり穴に対しても取り付けることができます(下図参照)。引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーション差し込み取付けタイプもあり、このタイプのプランジャーは、円筒側面の構造が平滑です。差し込み取付けタイプは、プランジャーがピッタリと嵌まる穴を作り、その穴に差し込む又は圧力を掛けて押し込むことで取り付けます。このタイプは、止まり穴に取り付けることが容易です。プランジャーの材質には、主にスチールとステンレスが採用されています。ただし大抵、プランジャー本体とボール(ピン)、スプリングの材質は異なります。例えば、スチール製の場合、本体は加工性が良好なSUM22Lなどにサビ防止の黒染めといった表面処理が施された鋼材、ボール(ピン)はSUJ2などの硬く耐摩耗性が高い鋼材、スプリングはSWP-Bなどのバネ用鋼を材質とする製品が多く流通しています。そのほか、本体とボール(ピン)が樹脂製のプランジャーや、ボール(ピン)のみが樹脂製のプランジャーなどがあり、樹脂製のプランジャーはキズを防止したい場合や絶縁したい場合などに使われます。参考:ばねの基礎 |ばねの種類やそれぞれの特徴を詳しく説明します!プランジャーの種類と特徴プランジャーの種類には、ボールを備えたボールプランジャーとピンを備えたピンプランジャー(スプリングプランジャー)、ピンの沈み込みをノブなどで操作するインデックスプランジャーがあります。ここでは、これらのプランジャーそれぞれの特徴について説明していきます。ボールプランジャーボールプランジャーは、先端にボールを備えたプランジャーです(上図参照)。先端のボールが自由に回転するものと、ボールが回転しないものがあります。ボールに接触している対象の摺動(滑らせて動かすこと)が行いやすく、摺動部(部品の間で互いに摺動する部分)の位置決めに適しています。また、ボールの部分は、水平方向からの荷重を受けても沈み込むため、スライドする機構の位置決めにも適しています。ピンプランジャーピンプランジャーは、先端にピンを備えたプランジャーです(上図参照)。ピンは、先が半球やテーパー(先細りになっていること)の円筒形のものがほとんどですが、シンプルな円筒形のものも存在します。ボールプランジャ―とは異なり、ストローク(ボール又はピンの本体内部への沈み込むことが可能な最大長さ)を長くできることから、様々なストローク長さの製品が用意されています。ピンへの横方向の荷重に対して高い耐久性を持つ製品もあり、そのような製品であれば、位置決め用の穴へピンを長めに嵌めてしっかりと固定することも可能です。参考:ピン製作のおすすめ工場をご紹介!ピン製作時のポイントについても解説!スプリングプランジャースプリングプランジャーは、スプリングを備えたプランジャーのことです。しかし、ボールプランジャ―ではなく、ピンプランジャーを指すことが多くなっています。とはいえ、メーカーによっては、ボールプランジャ―とピンプランジャーをまとめて表す言葉として使われることもあります。インデックスプランジャーインデックスプランジャーは、先端のピンの出し入れを手動で行うことができるプランジャーです。ピンがある先端の逆側に、ピンの沈み込み長さを操作できるノブを備えており、ノブを引くとピンが沈み、ノブを押すとピンが出て来ます(上図参照)。インデックスプランジャーのほとんどは、ピンプランジャーなどと同様にスプリングを内蔵しています。そのようなインデックスプランジャーでは、例えば、ピンを位置決め用の穴に当てることで、バネの作用で簡単にピンを穴に嵌めることができ、ノブを引くことで、容易に位置決めを解除することが可能です。そのため、位置決めや割り出しの解除を手動で行う装置・器具に適しています。また、インデックスプランジャーの中には、ピンを沈み込んだ状態で固定することができるロック付きのものもあります。このタイプのインデックスプランジャーでは、例えば、ノブを90度回すとピンの沈み込みがロックされ、ノブを逆に90度回すとピンのロックが解除されます(下図参照)。そのため、ピンを穴などに嵌めた後もしっかりと固定したい場合や、ワークの突き出しの長さを微調整したい場合などに最適です。引用元:役立つ技術情報「設計者のための インデックスプランジャ解説」鍋屋バイテック会社プランジャーを使用するメリットと役割プランジャーの主な役割は、機械のスライドする機構の位置決めや回転する機構の角度の割り出し、工作機械の工具・金型やワークなどの位置決めや割り出し、ストッパーです。そのほか、プレス加工における金型へ張り付いたワークの突き出し、部品や治具の一時的な固定などの役割もあります。プランジャーを使用するメリットは、装置・機器へボール又はピンのスプリングによる往復機構を容易に組み込めることです。プランジャーを使用しない場合、例えば、下図のように、ピンとバネ、バネの押さえ、嵌め込む穴を設計して用意し、組み込む必要があります。また、一度組み込んでしまうと、プランジャーとは異なり、取り外すことは困難です。一方、プランジャーを使用する場合は、嵌め込む穴を用意して取り付けるだけです。プランジャーの用途と使用例プランジャーは、工作機械や検査機器のほか、食品機械、包装機械、印刷機械、半導体製造装置といった様々な産業機械に利用されています。製品自体に使用されることは少なく、主に製品を製造する機械に用いられている部品です。プランジャーは、様々な製造機械の中で多様な機構を実現しています。例えば、ボールプランジャ―は、下図のような、穴に嵌め込まれたピラー(円筒状の部品)のストッパーに使うことができます。引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーションピンプランジャーの使用例としては、プレス加工時に金型へ張り付いたワークの突き出しが挙げられます。下図のように、ピンプランジャーを金型に組み込むことで、プレスの完了と同時に金型からワークを剥がすことが可能で、作業の効率化などが期待できます。引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーションインデックスプランジャーは、手動で位置決めを行うケースで用いられます。下図左図の使用例では、どの溝にプランジャーのピンを嵌め込むかによって、直線的にスライドするステージの位置を決定しています。下図右図の使用例では、回転ステージ側面のどの溝にプランジャーのピンを嵌め込むかによって、スライドするステージと同様に回転するステージの位置決めを行っています。引用元:MISUMI-VONA 技術情報「インデックスプランジャ選定のポイント(選定概要)」株式会社ミスミグループプランジャーの荷重・ストロークプランジャーの特性には、最小荷重と最大荷重、ストロークがあります。・最小荷重…プランジャーのボール又はピンが接地し、沈み込み始める際に必要な荷重・最大荷重…プランジャーのボール又はピンが本体内部に完全に沈み込んだ際の荷重・ストローク…ボール又はピンの本体内部への沈み込み可能な最大長さなお、プランジャーの荷重の単位には、ニュートン(N)が用いられます。プランジャーのボール又はピンが沈み込む荷重は、沈み込みが深くなっていくに従って、最小荷重から最大荷重へと直線的に変化します。そのため、プランジャーのバネ定数は、以下の式で表すことが可能です。プランジャーのバネ定数K:バネ定数F0:最小荷重F2:最大荷重S2:ストロークまた、このバネ定数から、ボール又はピンの沈み込み深さに従って変化する荷重を以下の式で求めることができます。ボール又はピンの沈み込み深さに従って変化する荷重S:ボール又はピンの沈み込み深さF:ボール又はピンがS沈み込んだ際の荷重これらの式から理解できるように、最小荷重とバネ定数が小さいプランジャーが軽荷重用、大きいプランジャーが重荷重用です。また、最小荷重が過大だと、多少の荷重を加えてもボール又はピンが沈み込まないといったことが起きるので注意が必要です。

  • アジャスターボルトの規格、耐荷重、種類

    今回は、アジャスターボルトの基礎知識について解説します。アジャスターボルトは、作業台や機器などの脚に使う高さ調節に対応したボルトのことで、DIYでもよく採用されています。アジャスターボルトは、重荷重用や傾斜用などの幅広い種類をラインナップしており、用途に合わせた製品を選ばなくてはなりません。また、安全に使用するためにも、耐荷重をチェックしておく必要もあります。アジャスターボルトとは引用元:株式会社旭押捻子製作所 アジャスターボルトアジャスターボルトとは、「アジャストボルト」とも呼ばれる、自動販売機や作業台、計測機器などの足に取り付けるボルトのことです。材質は主にユニクロめっきや三価ホワイトなどの表面処理を施した鉄とステンレスを採用しています。アジャスターボルトは、土台である受け皿に加えて、ボルトナットの機構を搭載しています。これにより水平や勾配を付けることが可能で、自在に高さ調節を行えます。アジャスターボルトは、地面に段差がある場所での設置に適しています。通常、段差がある場所に機器を設置しようとすると、水平に設置できません。しかし、高さ調節が可能なアジャスターボルトを使えば、段差のある環境でも機器を水平な状態に保ちながら設置できます。また、DIYで建物を傷つけずに柱を立てたり、ツッパリ棒代わりに使用して家具の転倒防止をしたりといった使い方をすることもあります。アジャスターボルトの規格と耐荷重アジャスターボルトは製品ごとに異なる耐荷重が設定されています。選定の際は、製品規格をよく確認して、使用機器や用途に合う十分な耐荷重を備えたボルトを選びましょう。例えば1本あたりの耐荷重が500kgfだった場合、4本のアジャスターボルトで支えるとなると耐荷重の合計が4本×500kgfで2000kgfとなりますが、4本のアジャスターボルトに均等に荷重がかかるとは限りません。そのため、アジャスターボルトの選定の際は、安全のためにも余裕のある許容荷重の製品を選ぶ必要があります。アジャスターボルトの種類アジャスターボルトは、用途によってさまざまな種類をラインナップしています。ここでは、代表的なアジャスターボルトをいくつかご紹介します。重荷重用引用元:ねじコンシェル.com アジャストボルト 重量物用重荷重用のアジャスターボルトは、標準のアジャスターボルトに比べて、より耐荷重を向上させたタイプです。標準的受け皿タイプのほかに、床への接着面積を広くしたワイドタイプをラインナップしているものもあります。重荷重用のアジャスターボルトは、主に自動販売機や制御盤、機械設備などに採用されています。アンカー固定用引用元:ねじコンシェル.com アジャストボルト 固定用アンカー固定用のアジャスターボルトは、台座部分にアンカーで固定するための穴が設けられています。アンカー固定用は、あと施工アンカーなどを用いて床面にしっかりと固定できるため、振動などによる機器の位置ズレを防止できます。傾斜用引用元:サン・ファスナー部品株式会社 傾斜面設置タイプ サンアジャストボルト PAT.P傾斜用のアジャスターボルトは、ボルト部分が土台から自由に傾斜が付けられるタイプです。傾斜を付けられる詳細な角度は製品によって異なります。標準のアジャスターボルトの場合、地面が水平でないと設置ができませんが、傾斜用であれば、多少傾斜のある地面でも機器を設置できるようになります。アジャスターボルトの受け皿と固定金具引用元:モノタロウ アジャスターボルトの特長アジャスターボルトは、ボルトナットに加えて、ベースと呼ばれる受け皿部分で構成されています。使用する環境に応じて、すべり止めタイプや床面保護タイプ、振動止タイプなどのベースを使い分けます。なかには重荷重用でベースの接地面を広く設計したワイドタイプもあります。引用元:MEKASYS アジャスタボルト用脚止め金具/プレートまた、アジャスターボルトは、オプション品として後付けで装着できる固定金具もあります。固定金具は、アンカーボルト固定用の穴を搭載しているほか、端部に六角レンチのような切り欠きが設けられています。固定金具をアジャスターボルトに装着することで、振動などのトラブルにより、高さ調整用ボルトが動くことを防止できます。

  • グリスニップル(グリースニップル)の規格、種類、構造

    今回はグリスニップルの規格・種類・構造について解説します。ニップルとは、棒やパイプの機械部品同士を接続するための管上の部品を指します。そのなかでもグリスニップル(グリースニップル)は、機械の可動部分にグリスを供給するために必要な部品です。一口にグリスニップルと言っても、A型・B型・C型などの種類があります。グリスニップル(グリースニップル)とは?グリスニップル(グリースニップル)とは、機械の可動部分にグリスを供給する配管の注入口になる部品のことです。グリスニップルの供給口は逆止弁構造になっているので、グリスガンから圧力をかけて配管に注入した際に、グリスが逆流してくることがありません。グリスニップルの材質には、主に鉄・ステンレス・真鍮が採用されています。グリスニップルの主な用途は、重機などの機械の軸受け部分に採用されています。グリスの注入箇所は作業性に乏しい箇所に配置されている場合があるので、使用する環境によって作業性のよい製品を選定する必要があります。引用元:MiSUMi-VONA 技術情報 グリスガンの種類と特長グリスを注入するにはグリスガンや専用のホースを使用します。グリスガンはストレートタイプとピストルタイプがあり、ピストルタイプは片手でもグリスを注入できます。グリスガン・グリスガン用ホース・グリスニップルは、それぞれ先端の形状が合うものを使う必要があるので選定の際は注意してください。グリスニップル(グリースニップル)の構造引用元:astamuse グリースニップルの逆止弁開放治具グリスニップの本体にはスチールボールとスプリングが内蔵されています。スプリングが、グリスニップルの先端にスチールボールを押し付けることで、逆流を防止します。グリスニップルは、グリスを注入するときの外からかけた圧力により、スチールボールが奥へと押し込まれて注入できる仕組みです。グリスニップル(グリースニップル)規格とサイズの測り方グリスニップルは、【JIS B 1575:グリースニップル】のJIS規格があります。グリスニップルの形状および寸法は、JIS規格にて決められています。しかし、メーカーによってはJIS規格に則ったものではなく、自社規格にて製造した製品もあります。正しく使うためにも、選定の際はグリスニップルとグリスガンなどの規格が合っているかを確認するようにしましょう。グリスニップルにはミリねじのもの以外に、インチでサイズ表記している管用ねじを採用している製品もあります。ミリねじや管用ねじは、サイズやねじのピッチが近いものがあり、見た目だけでは判断しにくい場合があります。これらを判別したい場合は、ノギスを使って六角の二面幅を測定し、製品仕様と見比べて判断します。グリスニップル(グリースニップル)の種類グリスニップルは本体の形状の種類により、A型・B型・C型の種類に分類されます。また、これら以外にも先端形状が異なるピンタイプやボタンヘッドと呼ばれる形状のものもあります。A型・B型・C型の違いA型はグリスガンをまっすぐ押し当てて注入するタイプです。B型は本体が斜め、C型は本体がL字になっているのが特徴です。A型が使いにくい作業環境で、B型やC型を採用します。それぞれの形状は以下の画像を参考にしてください。・A型:本体がストレートになったタイプ引用元:MiSUMi-VONA グリスニップル A型・B型:本体が斜めになったタイプ引用元:MiSUMi-VONA 注油器シリーズ ステンレスグリースニップル B型・C型:本体がL字になったタイプ引用元:MiSUMi-VONA 注油器シリーズ ステンレスグリースニップル C型

  • 六角ナットの規格、種類、特徴、用途

    今回は、六角ナットの規格や種類、特徴などを解説します。六角ナットは、おねじを持つものと組み合わせて使うことで、部材を固定できる部品です。六角ナットは大きいサイズから小さいサイズまで幅広くあり、あらゆる製品で活用されています。ただし使用する際には、いくつか注意点もあります。六角ナットとは?特徴と用途ナット類は、基本的にボルト類などのおねじを持つものと組み合わせて、部材を固定します。ナット類のなかでも六角ナットは標準的なタイプで、幅広いシーンで採用されています。六角ナットは、精密機器や橋梁、船舶などのほか、一般生活のなかでも多く使わています。六角ナットのねじ穴は貫通穴である特性上、ボルト類を通すとねじ部分が飛び出てしまいます。そのため、人が接触するような場所だとケガをする可能性があるため、使う場所には注意が必要です。引用元:宇都宮螺子株式会社 六角ナットまた、ナット類は部材の振動などによりゆるんでしまいます。ゆるみを避けるためには、上図のように六角ナットを2個使用する「ダブルナット」を採用する、ばね座金と組み合わせて使うなどの方法があります。六角ナットは、部材との気密性を高めるためや、部材をキズ付けないために、座金(ワッシャー)と組み合わせて使用します。座金には、標準的なタイプである「平座金」や、ゆるみ止め効果が期待できる「ばね座金」などがあります。引用元:トップ工業株式会社 コンビネーションレンチ六角ナットの締め付けにはスパナ、またはメガネレンチなどを使用します。工具の六角形状の部分を六角ナットにはめ込み、回転させることで締め付けが可能です。ただし、締め付けの際は、六角ナットのサイズによって、使う工具もサイズを合わせなければなりません。また、スパナで締め付けを繰り返すと、ナットを痛める場合があるので注意してください。ナットの痛みを避けたい場合は、メガネレンチを使用するのがおすすめです。あらゆるサイズの六角ナットに対応したい場合は、サイズ調整が可能なモンキースパナが便利です。六角ナットの規格とねじサイズ六角ナットの主な規格は以下の通りです。・六角ナット:JIS B 1181・六角袋ナット:JIS B 1183・フランジ付き六角ナット:JIS B 1190これらはミリねじのナット規格ですが、市場ではインチねじ(ユニファイねじ)用のナットも流通しています。強度区分JIS規格品のナットとボルトには強度区分が規定されています。強度区分とは、ナットやボルトにどれくらいまでの力がかかっても壊れないかを示す数値のことです。●ボルトの強度区分引用元:TONE 強度と強度区分について鋼製のボルトには、3.6、4.6、4.8、5.6、5.8、6.8、8.8、9.8、10.9、12.9の強度区分があります。ボルトの強度区分の数値は、12.9を例に挙げると、12は1200N/mm2の最小引張強さ、9は1200の0.9倍の値(1080N/mm2)まで塑性変形しないこと(降伏点または耐力の数値)を意味しています。ステンレス鋼のボルトは、A2-70のように鋼種区分であるA2などの記号と、強度区分である70などの数値を組み合わせて表示されています。鋼種区分の分類については上図の通りです。強度区分については、70と表示されているものの場合、最小引張強さが700N/mm2であることを意味します。●ナットの強度区分ナットは【JIS B 1052-2:炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ】規格によると、高さによって【並高さナット(スタイル1)・高ナット(スタイル2)・低ナット(スタイル0)】の3種類に分類されています。・並高さナット(スタイル1):ナットの高さの最小値が0.8D以上・高ナット(スタイル2):ナットの高さが約0.9D以上・低ナット(スタイル0):ナットの高さの最小値が0.45D以上0.8D未満ここでのDは、ねじの呼び径を意味しており、呼び径に対してナットの高さがどれくらい違うかによって分類がされています。ナットのスタイル、強度区分、ねじの呼び径の範囲の関係は以下の表の通りです。・並高さナット(スタイル1) ※ナットの高さの最小値が0.8D以上強度区分並高さナット(スタイル1)5M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×36M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×38M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×310M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M16×1.512M5×≦D≦M16・高ナット(スタイル2) ※ナットの高さが約0.9D以上強度区分高ナット(スタイル2)8M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×39M5≦D≦M3910M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×312M5×≦D≦M39、M8×1≦D≦M16×1.5・低ナット(スタイル0) ※ナットの高さの最小値が0.45D以上0.8D未満強度区分高ナット(スタイル2)04M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×305M5≦D≦M39、M8×1≦D≦M39×3引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじボルトの強度を十分に発揮させるためには、強度区分の合う適切なナットを使う必要があります。並高さナット(スタイル1) 及び高ナット(スタイル2)の強度区分に対して、組み合わせられるおねじ部品の最大強度区分の組み合わせは下表の通りです。・並高さナット(スタイル1)及び高ナット(スタイル2)とおねじ部品の強度区分との組合わせナットの強度区分組み合わせて用いることのできるおねじ部品の最大強度区分55.866.888.899.81010.91212.9引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじナットは、JIS規格にて強度区分と製造業者識別記号を表示する規定がされています。表示はナットの側面または座面に、くぼみ加工または刻印で施すか、外周の面取り部に浮き出しで施す決まりがあります。フランジ付きナットで、製造工程中にナットの頂面に表示できない場合は、フランジ上面に表示します。数字による表示記号の例は以下の通りです。・数字による表示記号の例・表示記号(代替記号)の例引用元:JIS B 1052-2:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-第2部:強度区分を規定したナット-並目ねじ及び細目ねじ六角ナットの種類と使い分け一般的な六角ナット引用元:宇都宮螺子株式会社 六角ナット一般的な六角ナットは、主に1種・2種・3種の3つのタイプがあります。1種:片面のみが面取りされている六角ナット2種:両面が面取りされている六角ナット3種:1種と2種に比べて厚みが小さい六角ナットこのなかでも、最も使用されているのが1種のナットです。1~3種以外に底部に座が付いた4種の六角ナットもありますが、他のタイプに比べて使われることが少ないです。高ナット(長ナット)高ナットは、六角ナットよりも全長が長いナットのことです。「長ナット」や「ロング六角ナット」とも呼ばれています。引用元:宇都宮螺子株式会社 高ナット高ナットは、上図左のように両側へおねじを取り付けて、長さを調節するために用います。また、プリント基板などを部材から浮かせるための、スペーサーの役割として用いる場合もあります。六角袋ナット引用元:WILCO.JP 鉄 袋ナット六角袋ナットは、六角ナットの片面が閉じている六角ナットのことです。「袋ナット」「キャップナット」「化粧ナット」とも呼ばれています。六角袋ナットは、六角ナットと違って、ボルトに締結した際にねじ部が露出するのを防げます。そのため、外観性や安全性を必要とする場合に採用されています。しかし、ナットの片側が塞がれていることから、ボルトの長さを調節する必要があります。六角袋ナットは【JIS B 1183:六角袋ナット】の規格にて、以下のように区別されています。1形:六角部とキャップ部とが一体形でねじの逃げ溝のないもの2形:六角部とキャップ部とが一体形でねじの逃げ溝のあるもの3形:六角部とキャップ部とを溶接したもの六角袋ナットの多くは、2種の六角ナットの上から球状のキャップ部を溶接して作られており、主に3形2種の製品が流通しています。また、六角袋ナットはJIS規格にて「六角袋ナット」と「小形六角袋ナット」の2種類に分けられています。六角袋ナットの二面幅÷ねじの呼び径=1.45以上のものを「六角袋ナット」、1.45未満のものを「小形六角袋ナット」と分類しています。(ただし、呼び径8mmの小形六角袋ナットは例外で1.45以上)細かく分類したときの六角袋ナットは、小形六角袋ナットと区別して呼ぶ場合、「並形六角袋ナット」と呼ばれます。フランジ付き六角ナットフランジ付き六角ナットは、六角ナットの底面にフランジが付いたもののことを指します。六角ナット等は部材との気密性を高めるために座金と併せて使用することが多くありますが、フランジ付き六角ナットは、フランジが座金の役目を果たします。また、フランジ付き六角ナットには、裏側に「セレート」と呼ばれるゆるみ止め防止機能が備わっているタイプもあります。セレートを搭載したフランジ付き六角ナットは、ゆるみ止め効果が期待できる分、部材をキズ付けてしまう可能性があるため注意が必要です。フランジ付き六角ナットは、主に作業効率や外観性の向上を目的として採用されます。通常、六角ナットを取り付ける際は、座金をセットしてからナットを締め付けます。一方でフランジ付き六角ナットは、座金をセットする手間が省けるため、作業効率の向上が期待できます。また、座金をセットした六角ナットよりも、フランジ付き六角ナットを使用したときの見た目を好む設計者が多く、外観性の向上を目的として使用されることもあります。参考:フランジとは?種類・形状・規格・材質など詳しく解説

  • 六角穴付きボルトの種類、規格、長さ、材質

    今回は、六角穴付きボルトの種類や規格などについて解説します。六角穴付きボルトは、ボルトの頭部に六角穴があいたボルトのことを指します。六角穴付きボルトは、決まったサイズの六角棒スパナでないと締め付けできないことから、強い締め付けが可能です。また、わずかなスペースでも締め付けられるほか、外観性の良さなどを理由に使う場合も多くあります。六角穴付きボルトとは?特徴と用途六角穴付きボルトとは、円筒状の頭に六角穴があいているボルトのことです。「キャップボルト」、「キャップスクリュー」、「ソケットスクリュー」とも呼ばれています。六角穴付きボルトは、狭い場所でのボルト締結が可能なだけでなく、外観の良さからデザイン性が求められるシーンでも活用されています。用途は、機械や電気部品などが代表的です。引用元:宇都宮螺子株式会社 六角穴付ボルト(キャップボルト)六角穴付きボルトを締め付けるには、上図のような六角棒スパナが必要です。六角棒スパナは「六角レンチ」と呼ばれることもあります。六角穴付きボルトは、サイズの合った六角棒スパナでしか締め付けが行えない分、ボルト穴を舐めることなくしっかりと締め付けられます。また、頭の上から六角棒スパナを差し込み、回転させて締め付ける方式のため、六角ボルト用のスパナと違って作業スペースが少なく済むのもメリットです。引用元:KTC 六角棒レンチ類六角棒スパナには、先端の形状が六角の標準タイプと、ボール状になったボールポイントがあります。ボールポイントは、斜めからでも六角穴に挿入および締め付けが可能で、上図のように奥まった場所などに使えます。しかし、斜めから締め付けを行う分、力強く締結するのは難しい特徴があります。そのため、基本的に奥まった場所の締め付けを行わない場合は、強い締め付けが可能な標準タイプの六角棒スパナを使います。六角穴付きボルトの種類六角穴付きボルトは、ねじ頭の形状などにより、さまざま種類があります。キャップボルト引用元:株式会社八幡ねじ 六角穴付ボルト 半ねじ 鉄 三価黒亜鉛 キャップ・キャップボルト RoHs対応キャップボルトは、六角穴付きボルトと同じもののことです。ねじの頭が円筒状になっているのが特徴で、平らな箇所や頭が出ないように座ぐりを設けた母材に使用します。六角穴付き皿ボルト引用元:WILCO.JP UFC-0000 ステンレス 六角穴付き皿ボルト六角穴付き皿ボルトは、頭部上面が平らで、座面が円錐形状になった六角穴付きボルトです。六角穴付き皿ボルトは、「皿キャップ」とも呼ばれています。六角穴付き皿ボルトは、通常の六角穴付きボルトと違って皿座ぐりした母材に使用します。六角穴付き皿ボルトは皿子ねじと用途がほぼ同じですが、皿小ねじに比べてねじの呼び径が大きいものもラインナップしています。引用元:宇都宮螺子株式会社 六角穴付皿ボルト(皿キャップ)また、通常の六角穴付きボルトは首下からの長さを「呼び長さ」としますが、六角穴付き皿ボルトの呼び長さは、本体の全長を表している点に注意が必要です。六角穴付きボタンボルト引用元:WILCO.JP ステンレス 六角穴付きボタンボルト六角穴付きボタンボルトは、丸みのある頭が特徴の六角穴付きボルトです。「ボタンキャップ」とも呼ばれています。六角穴付きボタンボルトは、六角穴付きボルトに比べて頭の高さが低く、幅は広い特徴があります。そのため、六角穴付きボルトよりも、頭部を目立たなくしたい場合に多く採用されています。全長指定六角穴付ボルト引用元:MiSUMi-VONA 全長指定六角穴付ボルト全長指定六角穴付きボルトは、使用用途に合わせてL寸法の長さを指定できる六角穴付きボルトです。一般的に、六角穴付きボルトの呼び長さは、20mmを超えるものだと5mmや10mm単位で長さが異なります。しかし、全長指定六角穴付きボルトは、1mm単位での長さ指定が可能です。締め付ける母材に対して、ちょうどいい長さの六角穴付きボルトが必要な方に適しています。全ねじタイプ引用元:ねじコンシェル.com 六角穴付全ねじタイプは、通常半ねじになる六角穴付きボルトに対して、全ねじに加工を施したものです。「全ねじ」とは、首下部分が全てねじ切りされたボルトのことを指します。通常、短いサイズの六角穴付きボルトは全ねじになっていますが、長さのあるものだと半ねじのタイプに切り替わります。「半ねじ」とは、全ねじとは逆で、首下が途中までねじ切りされているタイプのことを指します。六角穴付きボルトは、規格によってねじ部分の長さに決まりがあります。ボルトの名前に「全ねじ」と記載されているものは、基本的に半ねじである規格品に対して、全ねじに加工したもののことを指しています。低頭タイプ引用元:株式会社アンスコ 六角穴付き低頭ボルト低頭タイプは、通常の六角穴付きボルトに比べて、頭が低い特徴があります。六角穴付きボルトよりも省スペースでボルトを使用したい場合に採用されています。低頭は製品によって頭のサイズが異なりますが、なかにはより頭を低くした「超低頭タイプ」もあります。六角穴付きボルトの長さ、規格、寸法、強度区分六角穴付きボルトの規格六角穴付きボルトは、JIS規格にて寸法や強度区分が定められています。六角穴付きボルトの主な規格は以下の通りです。・六角穴付きボルト:JIS B 1176・六角穴付き皿ボルト:JIS B 1194・六角穴付きボタンボルト:JIS B 1174六角穴付きボルトの形状と寸法六角穴付きボルトの寸法については以下の通りです。※注1:六角穴の口元には、僅かな丸み又は面取りがあってもよい。※注2:ねじ先は、JIS B 1003に規定する面取り先とする。ただしM4以下は、あら先でもよい。※注3:頭部頂面の角部は、丸み又は面取りとし、その選択は製造業者の任意とする。    頭部座面の角部は、dwまでの丸み又は面取りとし、ばり、かえりなどがあってはならない。引用元:三木プーリ 六角穴付きボルト(キャップボルト/キャップスクリュー)の形状・寸法 規格一覧表(JIS B 1176:2014抜粋)・六角穴付きボルト(並目ねじ)の寸法 表1(単位mm)※ねじの呼びに括弧を付けたものは、なるべく用いない。参考:JIS B 1176:2014 六角穴付きボルト・六角穴付きボルト(並目ねじ)の寸法 表2(単位mm)※一般に流通している呼び長さの範囲は網掛け部分である。さらに網掛け内の数値がない範囲は全ねじ(首下部の不完全ねじ部の長さは3ピッチ以内)を表わす。※ねじの呼びに括弧を付けたものは、なるべく用いない。参考:JIS B 1176:2014 六角穴付きボルト六角穴付きボルトの強度区分六角穴付きボルトの強度区分は以下の通りです。・六角穴付きボルトの強度区分(並目ねじ)材料鋼ステンレス鋼非鉄金属機械的性質強度区分d<3mm:受渡当事者間の協定による。3mm≦d≦39mm:8.8、10.9、12.9d>39mm:受渡当事者間の協定による。d≦24mm:A2-70、A3-70、A4-70、A5-7024mm<d≦39mm:A2-50、A3-50、A4-50、A5-50d>39mm:受渡当事者間の協定による。受渡当事者間の協定による。適用規格JIS B 1051JIS B 1054-1JIS B 1057引用元:JIS B 1176:2014 六角穴付きボルト鋼のボルトの場合、例えば10.9の強度区分が表示されているものは、「10」が1000N/mm2の引張強さを表し、「9」は引張強さに対して90%の荷重(900N/mm2)が降伏点であることを示しています。引用元:ネジのトミモリ 強度区分ステンレス鋼のボルトの場合、A2やA3は鋼種の種類を表しています。ハイフンの後ろにつく数字は、引張強さを示します。例えば、A2-70と記載されているものは、オーステナイト系ステンレス鋼で、700N/mm2の引張強さがあることを意味します。六角穴付きボルトの材質六角穴付きボルトの主な材質は、鋼とステンレス鋼の2種類があります。鋼は一般的に鉄とも呼ばれている材質で、十分な強度を有しているほか、市場に多く出回っていることから、経済性に優れています。ただし、ステンレス鋼に比べて耐食性に乏しいため、表面処理が必要です。表面処理の種類は、黒色酸化被膜やユニクロめっきなどがあります。ステンレス鋼は、鋼に比べてコスト面に劣りますが、十分な強度と優れた耐食性を有しています。腐食しやすい環境下では、ステンレス鋼を採用する場合が多いです。六角穴付きボルトを使用する際は、使用する環境や価格面などから、適切な材質を選ぶようにしましょう。参考:ユニクロめっきとは!?亜鉛めっき/クロメートとの違い

  • 【ドリルねじ】種類・規格・サイズ・強度・使い方

    ドリルねじは、鉄骨造の建築物や板金加工製品などで主に用いられているねじです。ねじの先端に金属板へ穴をあけることが可能なドリルが付属しており、ドリルねじ一本で穴あけからねじ穴作成、ねじ締めまでを行うことができます。鋼板同士を締結したり、木材やボード類を鋼板に固定したりする場合に特に有用であり、保持力と耐久性、そして作業性に優れた多機能ねじとして幅広く利用されています。この記事では、このドリルねじとは何かというところから、種類、規格、サイズ、強度や使い方まで、詳しく解説していきます。ドリルねじとはドリルねじとは、上図のような、ねじ切りが可能なねじ部と穴あけが可能な先端部分を持つねじのことです。タッピングねじに切れ刃形状のドリル部を付属させたものとも言えます。すなわち、ドリルねじは、それだけで、以下の3つの機能を発揮することが可能です。・下穴あけ…ドリル部によってタップ立てに必要な下穴をあける。ねじの呼び径毎に適切な下穴のサイズがある。(下図左図参照)・タップ立て…ねじ部によって下穴に雌ねじのねじ山を作る。(下図中央図参照)・締め付け…別個の部材を締結して固定する。(下図右図参照)引用元:正しく使おうドリルねじ(上)「ドリルねじとは」一般社団法人 日本金属屋根協会ドリルねじのメリット・デメリットそのため、ドリルねじは、ねじ打ちの際、予め下穴をあけておく必要はなく、効率的な締結作業が可能です。また、下穴のサイズを間違えるといったミスも防ぐことができます。さらに、ドリルねじによって作られた雌ねじは、そのドリルねじの雄ねじに専用の雌ねじとしてピッタリと嵌まるため、釘などに比べて高い保持力と長期使用に耐えうる優れた持続性を示します。ただし、ねじ打ちに大きな力が必要なため、手工具による手動でのねじ打ち作業は困難です。従って、ねじ打ち作業には、電動ドライバーなどの電動工具が必須となります。しかし、電動工具であっても、インパクトドライバーはドリルねじのねじ打ちに向いておらず、頭飛び(ねじの頭部が取れること)を起こすことがあります。やむを得ず、インパクトドライバーを使用する場合は、締め過ぎに注意が必要です。また、ドリルねじは、タッピングねじと同様、自らのネジ部でタップ立てを行うため、頻繁に着脱するような箇所には向いていません。ドリルねじの材質ドリルねじの材質には、主に炭素鋼とステンレス鋼が用いられています。炭素鋼では、冷間にて圧造することで製造するSWCH18A〜SWCH22Aがドリルねじによく使われている素材です。これらの炭素鋼は、マンガンの量を多くすることで、耐摩耗性や衝撃強度、引張強さなどの向上を図ったもので、品質の高いアルミキルド鋼(末尾のAにて指定)から製造されます。なお、「18」や「22」などの数値は炭素の含有量を示し、「18」ならばおよそ0.18%の炭素を含みます。ステンレス鋼では、主にマルテンサイト系ステンレスのSUS410やオーステナイト系ステンレスのSUS305J1・SUS304J3・SUSXM7などがドリルねじに使われています。共に耐食性の高い素材ですが、より高い強度が必要な場合には焼入れが可能なマルテンサイト系が、より高い耐食性が必要な場合にはオーステナイト系が採用されます。また、締結対象が鋼板などの硬い素材ならマルテンサイト系を、アルミ材などの比較的軟らかい素材ならオーステナイト系を使用することが多くなっています。参考:【SUS(ステンレス)種類と見分け方】用途・特徴を専門家が徹底解説!参考:SUSXM7(ステンレス鋼)成分、磁性、機械的性質、比重ドリルねじの用途ドリルねじは、あらゆる箇所の締結に用いられていますが、特に建設業と金属加工業での用途が多くなっています。具体的には、鋼板を鋼板に締結したり、ボード類や木質材を下地鋼板に締結したり、上部鋼板と下地鋼板の間に木質材やボード類を挟んで締結したりする場合に用いられ、締結対象の材料や組み合わせなどに応じて適切な種類のドリルねじが選ばれます。建設業の用途例としては、建築物の外壁・屋根・床の施工、窓枠の取り付け、看板の取り付けなどが挙げられます。一方、金属加工業では、板金工事や金属製品の組立などに用いられています。ドリルねじの種類ドリルねじには様々な種類がありますが、ドリル部とネジ部、頭部の形状によって種類を分けることが可能です。まず、ドリル部の形状には、以下の3タイプがあります。・標準タイプ…先端にドリルのみが付いているタイプ。・リーマ付き…ドリルで空けられた穴の径を広げるための刃である「リーマ(ヒレ)」が付いているタイプ。木材などの軟質材を下地鋼板に締結する場合などに用いられ、軟質材の穴径だけをねじ外径よりも大きくすることで、損傷しやすい軟質材へタップ立てを適用しないようにします(下図左図参照)。軟質材の穴を広げた後、リーマは硬い下地鋼板に達して飛散しますので、鋼板の穴が拡張されることはありません(下図中央図参照)。・パイロット(PL)付き…ねじ部とドリル部の先端との間隔を延長するための平滑な軸が付いているタイプ(下図右図参照)。平滑な軸の部分とドリル部をまとめた部分は、パイロット部と呼ばれます。パイロット部(ドリル部)に長さが必要な理由は、ドリルねじの打ち込み時、下穴が開け終わる前にネジ部が取付部材へ達してしまうと、ねじ部が食い込んで取付部材が浮き上がってしまうためです。引用元:正しく使おうドリルねじ(上)「ドリルねじとは」一般社団法人 日本金属屋根協会ドリルねじのねじ部には、以下の2タイプがよく使われています。・タッピングねじ山…並目のねじ山。ねじ締めの作業性が良好です。・マシンねじ山…細目のねじ山。保持力が高いため、締結対象が薄くても固定可能です。また、保持力を確保しやすいため、タッピングねじ山に比べて、ねじ外径を小さくすることができます。そして、ドリルねじの頭部の種類には、代表的なものだけでも以下のようなものがあります。PAN(なべ頭)ドリルねじPANドリルねじは、なべ底のような丸みを帯びた頭部を持つドリルねじです。その形状から、「なべ頭ドリルねじ」や「なべドリルねじ」とも呼ばれます。最も多く流通しているドリルねじで、駆動部の形状は十字穴であるのが一般的です。なお、十字穴が付いたねじ全般に言えることですが、十字穴は、ねじを回転させたときにドライバーやビットの先端が外れる「カムアウト」が起きやすく、カムアウトが原因で十字穴が潰れてしまうこともあります。カムアウトは、ドライバー・ビットのねじに対する、押す力が足りなかったり、軸がぶれていたり、サイズが合っていなかったりする場合に発生するので注意が必要です。皿頭ドリルねじ皿頭ドリルねじは、頭部の上面が平らで、円錐を引っ繰り返したような形の頭部を持つドリルねじです。その多くは、PANドリルねじと同じく、駆動部の形状が十字穴となっています。ねじの取付位置に皿モミ加工を施しておくことで、頭部の上面と取付部材とを面一にすることができます。ねじの頭部による引っ掛かりをなくしたい箇所や外観を良くしたい箇所などに用いられます。参考:皿モミ加工とは?一般的な寸法や加工方法について専門家が解説!HEX(六角頭)ドリルねじHEXドリルねじは、六角柱形状の頭部を持つドリルねじです。六角ボルトのドリルねじ版とも言えます。六角頭ドリルねじや六角ドリルねじとも呼ばれます。頭部の外側からスパナや六角ソケットビットで締めるため、トルク伝達力が大きく、カムアウトの心配もありません。そのため、大きなトルクが必要な太径ねじに適しています。ただし、十字穴が付いているものもあり、その場合は十字穴をねじ締めに利用することが可能です。平頭ドリルねじ平頭ドリルねじは、円柱形状の薄い頭部を持つドリルねじです。頭部の高さが低いため、頭部による出っ張りが目立ちにくく、頭部の突き出しを最小にしたい箇所に使われます。なお、平頭ドリルねじの頭部の厚みは、製品によって様々です。頭部が薄い平頭ドリルねじでは、頭部高さが1.0mmのものもあり、「薄平頭ドリルねじ」や「極薄平頭ドリルねじ」などの名称で販売されています。トラス頭ドリルねじトラス頭ドリルねじは、緩やかな丸い形状の頭部を持つドリルねじです。PANドリルねじと比べて、頭部の高さが低く、頭部の径が大きくなっています。頭部径が大きいために着座面が広く、先穴(上部の取付部材に対する予めあけておく穴のこと)やバカ穴の径がある程度大きい場合でも部材の締結が可能です(下図参照)。ドリルねじの規格とサイズドリルねじは、JIS規格(JIS B 1124 2015)にて「タッピンねじのねじ山をもつドリルねじ」として規定されています。特に規格化されているのは、以下の4種類です。・つば付き六角ドリルねじ・十字穴付きなべドリルねじ・十字穴付き皿ドリルねじ ・十字穴付き丸皿ドリルねじこれらのそれぞれに対して、以下の呼び径のドリルねじがあります。・ST2.9・ST3.5・ST4.2・ST4.8・ST5.5・ST6.3さらに、呼び径毎に、以下の呼び長さのいくつかが規定されており、同径のドリルねじでも多様な板厚に対応できるようになっています。・9.5mm・13mm・16mm・19mm・22mm・25mm・32mm・38mm・45mm・50mm例えば、つば付き六角ドリルねじのサイズは、JIS規格で以下のように規定されています。なお、以下では、「JIS B 1124 2015」のほか、「JIS B 1007 2015」も参照しています。単位:mmねじの呼びST2.9ST3.5ST4.2ST4.8ST5.5ST6.3d1ねじの外径(呼び径)最大2.903.534.224.805.466.25最小2.763.354.044.625.286.03d2ねじの谷径最大2.182.643.103.584.174.88最小2.082.512.953.433.994.70ねじの呼びST2.9ST3.5ST4.2ST4.8ST5.5ST6.3Pピッチ約1.11.31.41.61.81.8a不完全ねじ部長さ最大1.11.31.41.61.81.8da不完全ねじ部径最大3.54.14.95.66.37.3dcつば径最大6.38.38.810.51113.5最小5.87.68.19.81012.2cつば厚さ最小0.40.60.80.911s二面幅最大4.005.507.008.008.0010.00最小3.825.326.787.787.789.78e対角寸法最小4.285.967.598.718.7110.95k頭部高さ最大2.83.44.14.35.45.9最小2.53.03.63.84.85.3kw六角部の有効高さ最小1.31.51.82.22.73.1r1首下丸み半径最小0.10.10.20.20.250.25r2つば上丸み半径最大0.20.250.30.30.40.5穴あけの範囲(適用板厚)以上0.70.71.751.751.752以下1.92.2534.45.256上表の「不完全ねじ部長さ(a)」は完全なねじ山が存在する最初のねじ山の位置から頭部座面までの長さ、「六角部の有効高さ(kw)」は頭部高さ(k)からつば厚さ(c)と頭部上面の凹みの深さを差し引いた高さ、「穴あけの範囲(適用板厚)」は適用可能な板厚のことで締結対象となる全ての部材の合計板厚(板と板との間に空間がある場合は空間の距離も含める)です。ねじの呼びST2.9ST3.5ST4.2ST4.8ST5.5ST6.3l(呼び長さ)lg(頭部座面から完全ねじまでの長さ)呼び長さ最小最大最小9.58.7510.253.252.85――――1312.113.96.66.24.33.7――1615.116.99.69.27.35.85―19182012.512.110.38.787222123―15.113.311.71110252426―18.116.314.714133230.7533.25――2321.521203836.7539.25――2927.527264543.7546.25―――34.534335048.7551.25―――39.53938「頭部座面から完全ねじまでの長さ(lg)」は、頭部座面から完全なねじ山が存在する最後のねじ山の位置までの長さです。ドリルねじでは、切り屑の排出性向上などを目的にスレッドカットと呼ばれるねじ山に対する切り欠きが施される場合があり、lgでは、このようなねじ山は除かれます。ドリルねじの強度ドリルねじは、しっかりとした締結が可能で、長期にわたって高い強度を維持することができます。ここでは、ドリルねじの引抜力・単体せん断力・単体引張破断力・単体ねじり強さの実験値をご紹介します。なお、ここでの値は、代表的な特性値であり、メーカーや製品によって若干異なる場合があります。引抜力引抜力は、材料にねじ込んだドリルねじの頭部を引き抜く方向に引き上げ、ドリルねじ又は材料が破壊したときの最大荷重を測定します(下図右図参照)。下図左表は、ドリルねじを鋼板にねじ込んだときの引張力です。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会単体せん断力単体せん断力は、ドリルねじの完全ねじ山が存在するねじ部に対して垂直方向に力を加え、ドリルねじが破断したときの最大荷重を測定します(下図右図参照)。下図左表がドリルねじの単体せん断力です。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会単体引張破断力単体引張破断力は、ドリルねじのドリル部をチャックで完全に固定して、頭部を引っ掛けて軸方向に引き上げ、ドリルねじが破断したときの最大荷重を測定します(下図右図参照)。下図左表がドリルねじの単体引張破断力となります。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会単体ねじり強さ単体ねじり強さは、ドリルねじをバイス(万力)で完全に固定し、頭部を締め付け方向に回転させてねじり力を加え、ドリルねじがねじ切れたときの最大トルク値を測定します(下図右図参照)。下図左表がドリルねじの単体ねじり強さです。引用元:ドリルねじの正しい使い方 第5版「ドリルねじの性能」日本ドリルねじ協議会ドリルねじの使い方ドリルねじのサイズの選び方ドリルねじを使用する際にまず問題になるのは、締結対象の板厚に対するドリルねじのサイズ選びです。JIS規格準拠の製品を使うのであれば、締結対象の板厚(適用板厚)がJIS規格の「穴あけの範囲」にあるサイズのドリルねじを選択することで、問題なく締結することができます。ただし、適用板厚(T)は、基本的に穴をあけて締結する全ての部材の合計板厚となります。しかし、上部の部材などにねじの呼び径よりも大きな先穴があいている場合は、その部材の板厚を合計板厚から除いたものが適用板厚(T)となります(下図参照)。引用元:正しく使おうドリルねじ(上)「ドリルねじとは」一般社団法人 日本金属屋根協会JIS規格に記載されていないドリルねじを使用する場合は、以下の2点を満たすサイズのドリルねじを選ぶ必要があります。・適用板厚(T)<パイロット部長(ドリル部)・最小働き長<適用板厚(T)<最大働き長適用板厚の厚みよりも長いパイロット部を持つドリルねじを選ぶ理由は、下図のように、下穴あけとタップ立てが同時に進行してしまうことがあるからです。●上部鋼板と下地鋼板の間に木質材やボード類を挟んで締結する場合引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会●ボード類や木質材を下地鋼板に締結する場合引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会ただし、下図のように、リーマ付きのドリルねじを使用してボード類・木質材を下地鋼板に締結する場合では、ボード類・木質材にタップ立てが行われることはないため、ドリルねじのパイロット部が適用板厚より短くても締結することができます。引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会また、しっかりと締結するためには、最上部の締結対象がドリルねじの頭部によって押さえ付けられ、最下部の締結対象がドリルねじの完全なねじ山に掛かっている必要があります。この条件を表したのが、上述の「最小働き長<適用板厚(T)<最大働き長」です。下図に、ドリルねじの働き長をタイプ毎に示しています。なお、下図のPは、ねじのピッチです。先端側の3山(3P)は、スレッドカットなどの存在によってねじ山が不完全であることが多く、通常は働き長に含みません。引用元:正しく使おうドリルねじ(下)「ドリルねじの使い方」一般社団法人 日本金属屋根協会ドリルねじの基本的な締結方法ドリルねじの締結は、基本的に以下の手順で進めます(上図参照)。締結対象へ垂直となるようにドリルねじを押し当てます。ドライバーを弱い力で押し当て、最初は低速回転でドライバーを起動します。回転速度を徐々に上げると同時に、押す力を強めていき、穴をあけます。穴があいたら、高速回転を維持しながらも弱めの力で押して、ドリルねじをねじ込んでいきます。タップが立てられていくこの過程では、回転に合わせてドリルねじが自然に沈み込んでいくので、ドライバー先端が駆動部から離れてしまわないように注意します。締結対象とドリルねじの座面が密着したときに生じる音を確認したら、ドライバーを停止します。ドリルねじを木材に使うには【木ねじの代替品】ドリルねじは、木ねじやコーススレッド、万能ねじなどの木用ねじの代替品として、木材同士の締結に使うことができます(下図参照)。しかし、木用ねじと比べると、ねじ山が低いためにねじ山の木材への食い込みが小さく、材木同士の保持力には劣ります。また、木材が経年変化で木痩せしていくことを考えると、そのねじ山の低さから保持力の持続性も低いことが予想されます。さらに、ドリルねじは、木用ねじよりもピッチが小さいため、ねじ締めの作業性は良くありません。とは言え、それらの違いはそれほど大きくなく、高強度が要求されるような締結でない限りは問題なく締結することが可能です。引用元:ネジの百科事典「ドリルねじ」株式会社ツルガドリルねじとタッピングねじの違いドリルねじとタッピングねじの違いは、上述したようにドリル部の有無です(上図のAタッピング参照)。そのため、タッピングねじを使用する際は、ねじ締めの前に予め下穴をあけておく必要があります。その下穴の径は、ねじの呼び径の約70%~95%程度が普通で、穴をあける部材が厚いほど大きな径の下穴をあける必要があります。例えば、呼び径3.5のタッピングねじ1種(Aタッピング)の場合、板厚が0.6mmならば直径2.6mmの下穴を、板厚が1.2mmならば直径2.9mmの下穴をあけることが推奨されます。そのほか、タッピングねじは、ドリル部が無いことから、ねじの呼び長さに対する働き長の割合が大きく、ねじを締めた後に無用の産物となるドリル部を収める空間が不要という利点があります。