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  • ディスクグラインダーとは?特徴や種類を解説

    この記事を監修する専門家有限会社大川板金取締役 大川嘉雄 氏創業50年、板金加工・機械加工等の金属加工を手掛ける有限会社大川板金で取締役を務める。10年以上の金属加工でのキャリアを活かし、コンサルタントとしてMitsuriのアドバイザーを兼務。町工場の3K(きつい、汚い、危険)イメージを変え、カッコいい人達で溢れる職場を目指している。ディスクグラインダーは、工場やDIYでの作業に便利な電動工具です。ディスクと呼ばれる円板状の砥石を取り付けて、研磨・研削・切断などを行います。しかしディスクグラインダーは、本体だけでなく、砥石の種類も豊富なので、各種類がどのような特徴をもつのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ディスクグラインダーの本体やディスクの種類について解説します。ディスクグラインダーとは引用元:モノタロウ ディスクグラインダーの特長と使い方ディスクグラインダーとは、さまざまな材料を削るための電動工具のことです。現場によっては「サンダー」と呼ぶこともあります。用途は、金属や非金属の研磨・研削・サビ落とし・鏡面仕上げなどが代表的です。使用方法は、材料からディスクを離した状態で電源を入れ、ディスクの回転が安定してから、材料に当てて加工します。電源は、充電式のコードレスタイプと、AC電源を用いるコードタイプがあります。コードレスタイプは、充電さえしていれば、AC電源のない場所でも使用できるのがメリットです。メーカーによっては、同じシリーズの電動工具の充電池を使いまわせるものもあります。一方、コードタイプは電池切れの心配がなく、安定したパワーを出力できるのが魅力です。ディスクグラインダーの特徴ディスクグラインダーは、ディスクの取り替えにより、研削・研磨・切断・ツヤ出しが可能なほか、一般鋼・ステンレス・アルミなどの金属や木材・石材・ガラスなどの材料に対応できます。その汎用性の高さから、工場現場やDIYなどの幅広いシーンで活用されています。ディスクグラインダーの種類ディスクグラインダーの本体には、主に高速型・低速高トルク型・無段変速型の3種類があります。高速型高速型のディスクグラインダーは、最も一般的なタイプで、回転数が12000min-1程度のものになります。高速でディスクを回転させられるので、研削や研磨がスピーディーに行えます。ただし、その回転の速さから、必要以上に削りすぎてしまいやすい点に注意が必要です。低速高トルク型低速高トルク型のディスクグラインダーは、高速型に比べて回転数に劣るものの、高いトルクを有しています。パワーがあるので、石材やコンクリートなどの硬い材料を切断するのにぴったりです。また、低速の回転であることから、仕上げの磨き加工をするのにも適しています。無段変速型無段変速型は、加工する材料に合わせて、ディスクを任意の回転数(3000~11000min-1)に変更できます。切断・研磨・研削などの幅広いシーンで使える汎用性の高いタイプですが、その分値段は高い傾向にあります。砥石の種類ディスクグラインダーに搭載する砥石はさまざまな種類があり、用途に合わせて選ぶ必要があります。オフセット砥石引用元:株式会社ノリタケカンパニーリミテド オフセット砥石オフセット砥石は、サンダー掛けと言われる研削やバリ取り、研磨作業で使われている砥石です。孔の周りが隆起していて、砥石部分と段差が付いた形状のため、作業性と安全性に優れています。加工表面は粗めで、主に金属のバリ取り・ビード取り・面取り・表面研削などの作業に採用されています。フレキシブル砥石引用元:溶接市場 オフセット砥石フレキシブル砥石は、オフセット砥石に比べて厚みが2~3mmほど薄く、適度な弾性をもつ弾性砥石です。用途としては、鋼や鋳物、石材などの平面や曲面の研削、バリ取り、研磨作業が挙げられます。オフセット砥石よりもワークへのなじみがよく、薄い材料や曲線の材料の加工にも対応しやすいタイプです。多羽根ディスク引用元:HiKOKI テーパ式多羽根ディスク・木工サンダ多羽根ディスクは、羽根状の布やすりが等間隔に配置されたディスクです。用途としては、各種金属素材や木材の研削・研磨・サビ落としに用います。通常の研削砥石に比べて接触幅が広く、効率的に加工が行えるほか、やすりの隙間から空気を取り込み、冷却効果を得ることでワークが焼けにくい特徴があります。シースルーディスク引用元:株式会社レヂトン シースルーヂスクシースルーディスクは、砥石メーカーのレヂトンが取り扱うディスクで、多羽根ディスクに切れ込みが入っているのが特徴です。切れ込みから研削面を確認しながら削れるほか、目詰まりの防止や優れた放熱効果が期待できます。シースルーディスクは、主にステンレス・一般鋼材・薄板・超鋼・真鍮・アルミの研磨や研削の用途で採用されています。ナイロンディスク引用元:モノタロウ TRUSCO ニューナイロンディスク (高回転タイプ) 外径95mmナイロンディスクは、ナイロン繊維に砥石効果をもたせたディスクです。弾力があり、柔らかい素材のため、ワークを深く削らずに研磨できるほか、曲面部分の仕上げにも適しています。用途としては、金属の塗装前の仕上げや最終バフ前工程での研磨で使用します。ナイロンディスクと似たもので、「ナイロンミックスディスク」という製品もあります。ナイロンミックスディスクは、ナイロン繊維と研磨布をミックスしてできた繊維が、クッションの役割を果たし、目詰まりが起こりにくく、ペーパーのように表面を仕上げられます。フェルトディスク引用元:イチグチ フェルトディスク S/Hフェルトディスクは、バフ研磨で、金属材料のツヤ出しなどに適したディスクです。青棒や白棒などの固形研磨剤を使用して仕上げ磨きをすると、鏡面のように仕上がりがきれいになります。フェルトディスクには、研磨焼けが少なくて使いやすい「ソフトタイプ」と研磨の性能と耐久性に優れた「ハードタイプ」の2種類があります。カップブラシ引用元:ASKUL 鳴門屋 NSK ステンより線ネオカップブラシ C-21 1個 330-7697(直送品)カップブラシは、これまでご紹介したディスク形状とは異なり、カップ形状かつ、先端に銅線やステンレス線を搭載したタイプです。カップブラシを作業面に押し付けて回転させることで、広範囲を研磨できます。主な用途は、溶接作業の前後処理・バリ取り・サビ落とし・塗装剥離などが挙げられます。カップブラシは平面の研磨のみに使用するもので、コーナー部分などの研磨には使えません。平面以外を研磨したい場合は、「ベベルブラシ」と呼ばれる、毛材が斜めに押し付けられるタイプを用います。切断用砥石引用元:株式会社レヂトン 金の卵 オフセット型切断用砥石は、主に金属や石材などの切断を目的としたディスク砥石です。切削面に面精度が必要な場合や、ワークが欠けるのを避けたい場合などに使用します。金属用や非金属用など種類が多いので、切断したい材料に合わせて製品を選びます。なかには厚みが1mm以下の切断用砥石もあり、溝入れ加工などにも採用される場合があります。

  • タッチプローブとは?原理や種類を解説

    今回はタッチプローブの原理や種類について解説します。タッチプローブは、マシニングセンタなどの工作機械に搭載するセンサーのことで、原点出しや寸法の自動測定が可能になります。タッチプローブはモデルによって対応する工作機械が異なり、適切なタイプを選ばなくてはなりません。ここでは、タッチプローブがどのような原理で信号を伝達しているのか、どのような種類があるのかをを見てみましょう。参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説タッチプローブとはタッチプローブとは、NC工作機械で用いる接触式のセンサーのことを指します。タッチプローブをマシニングセンタなどの主軸に搭載し、ワークに接触させることで、原点出しや、加工後の寸法を高精度で自動計測できるようになります。ワークの寸法を正しく計測することで、精度の高い加工が実現し、加工不良を防止できるようになります。また、加工ワークの測定が正確かつ、手作業によるワークの位置決めが無くなることで、作業者の技術レベルによる違いも無くなり、ヒューマンエラーや段取り時間の削減も期待できます。タッチプローブの原理引用元:NKワークス株式会社 工作機械用 タッチプローブタッチプローブは、本体から出ている棒部分「スタイラス」の先端をワークやテーブルに接触させることで、精度の高い信号を出力し、数値制御装置(NC)やPC装置に伝達します。タッチプローブは通常、自動工具交換装置(ATC)に格納されており、計測の際に使用します。参考:自動工具交換装置(ATC)とは?ATCの種類と構造引用元:はじめの工作機械 タッチプローブとは|ワーク計測用タッチプローブの種類と原理伝達方式としては、有線方式のほかに、ワイヤレスで伝達する、赤外線方式・無線方式・誘電方式があります。赤外線方式は、赤外線を用いて測定信号を受信器に送る仕組みで、タッチプローブの通信方法のなかでもオーソドックスなタイプです。反射によりアクセスしにくい位置でも信号を受信しやすい特徴があります。無線方式は、無線通信を用いて測定信号を受信機に発信します。無線通信は2.4GHzのISM帯(商用周波数帯)を使用しており、通信範囲が広く、複雑な動きの5軸加工機でも安定した通信が可能です。誘電方式は、誘導コイルを用いて測定信号を受信機に発信します。誘電方式は、タッチプローブ本体と受信機を至近距離まで近づける必要があるので、レイアウトが限定されます。しかし、受信機からプローブへ電力供給するため、プローブ本体の電源が不要というメリットがあります。タッチプローブの種類タッチプローブは、マシニングセンタ以外にも、さまざまな工作機械に採用されています。タッチプローブは、モデルによって適した工作機械が異なります。研削盤用タッチプローブ引用元:株式会社メトロール CNC工作機械用 有線式 小型タッチプローブ[K3Sシリーズ]研削盤用タッチプローブは、研削盤で用いるタッチプローブです。円筒研削盤の砥石の摩耗検出や、NC平面研削盤のワーク高さ計測にも使われます。研削盤や旋盤などの手動で工具交換を行う工作機械は、ケーブル通信式のタッチプローブが採用されています。参考:研削盤とは?研削盤と研削加工の種類や切削加工との違いNC旋盤用タッチプローブ引用元:RENISHAW OLP40 旋盤用タッチプローブNC旋盤用タッチプローブは、NC旋盤に搭載されるタッチプローブです。主にワークの内径、外径、端面計測を行います。タレット(旋回する刃物台)に取り付けるため、ワイヤレス式のタッチプローブが主流です。ロボット用タッチプローブ引用元:株式会社メトロール CNCロボット用 有線式タッチプローブ[K3Mシリーズ]ロボット用タッチプローブは、ロボットアームや溶接ロボットで使われているタッチプローブです。主にワークの寸法計測、芯出し、位置決めを行います。簡易型タッチプローブ簡易型タッチプローブは、主に汎用工作機械で用いたり、ワークの段取り補助として使われたりする、アナログ式のタッチプローブを指します。種類としては、ダイヤルゲージで数値を読み取るものや、LEDで接触を知らせるものなどがあります。

  • クランプとは?種類と特徴を解説

    今回はクランプの種類とそれぞれの特徴について解説します。クランプは作業工具の一種で、接着剤の使用時に部材を手の代わりに押さえつけたり、加工時に部材が動かないようにするためのものです。一口にクランプといっても種類が豊富にあり、用途によって使用するものが異なります。ここではクランプにどのような種類があるのかを見てみましょう。クランプとはクランプとは、対象物を挟んで任意の状態に固定するための工具のことを指します。クランプは工場作業・機械工作・木工作業・DIYなどで行う、切断・研磨・穴あけ・組立・材料の接着などといったシーンで使われています。しっかりと固定した状態で作業を行う際は、1箇所だけ固定していると、対象物がズレたり、クランプが緩んだりしてしまうため、複数個のクランプで固定して作業を行います。クランプは強い力で固定するため、対象物が柔らかい材料の場合、キズや凹みができてしまいます。キズや凹みを避けたい場合は、クランプの口金が樹脂のものを使用する、当て木などを用意して保護するといいでしょう。クランプの種類と特徴C型クランプ引用元:Amazon CAMVATE C形クランプ サポート 卓マウント ネジ穴12点×1/4&3/8 RED適用C型クランプは、アルファベットのCのような形をしたクランプです。別名「シャコ万力」・「G型クランプ」・「B型クランプ」とも呼ばれています。C型クランプは、金属のくわえ部分とねじにより、強力に締め付けられるのが特徴です。ただし口幅の調整は、ねじの回転にて行うため、調整に時間がかかります。対象物が大きいものだと、クランプ本体のサイズも大きくなるので、最小限のスペースに抑えたい場合は適切なサイズを選ぶ必要があります。F型クランプ引用元:エスコ オンラインショップ  300mm F型クランプF型クランプは別名「L型クランプ」とも呼ばれるもので、アルファベットのFのような形をしたクランプです。くわえ部分をスライドさせ、ハンドルのねじを締め込むことで対象物を固定します。締め付け力はC型クランプに比べて乏しいものの、対象物の厚みに口幅を合わせやすいことから作業性に優れています。クイックバークランプ引用元:エスコ 0-450mm/ 92mm クイックバークランプクイックバークランプは、バーの口幅をスライドさせての調節が可能で、ハンドルを握ることで口が閉じて対象物を固定できます。製品によっては、口の部分を取り外して反対に取り付けることで、挟むのではなく押し広げるようにして固定できるものもあります。クイックバークランプは、ハンドルの操作だけで締め付けが可能なため、片手で作業できる手軽さが魅力です。もう片方の手は空いた状態になるので、作業性に優れており、初心者の方でも扱いやすいタイプです。スプリングクランプ引用元:AXEL 61-2431-42 スプリングクランプXV型 開き100mm XV5-100スプリングクランプは、別名「バネクランプ」とも呼ばれるもので、サイズの大きな洗濯バサミのような形状のクランプです。他の種類に比べて開く口幅が狭く、薄いもの同士を固定するのに適しています。また、対象物をキズ付けにくく、手軽に固定できるのが魅力です。ただし固定力は乏しいため、大きな負荷がかかる作業だと、固定したものがズレてしまう場合があります。コーナークランプ引用元:オフの店Web Shop 90° コーナークランプコーナークランプは、対象物の角を垂直に固定するクランプです。コーナークランプの上に固定するものを置いて、ねじを締め付けて固定します。額縁などのような直角なものの組立を行うのに適したタイプです。ベルトクランプ引用元:オフの店Web Shop フレームベルトクランプベルトクランプは、繊維のベルトにコーナーのパーツを搭載したクランプで、4つのコーナーを同時に外側から締め付けられます。4つのコーナーパーツに四角に組んだ材料を当てて、ベルトの長さを調節して固定します。ベルトの長さ分だけ調節ができるので、さまざまなサイズのものを固定できます。三方締めクランプ引用元:amazon WORKPRO 三方締めクランプ W032053AJ DIY用品・大工道具三方締めクランプは、上下と横方向1箇所の計三方向からの締め付けを行うクランプです。上図のように、ベースとなる材料を上下から挟み、もうひとつの材料を横方向から押さえることで固定します。2枚の板を挟む際に、横方向からのねじで端を揃えることもできます。三方締めクランプは使える用途が幅広く、しっかりと固定できる点が魅力です。ハタガネ引用元:モノタロウ 角利 真鍮ハタガネハタガネは、金属の角棒に小さなツメとねじを搭載したクランプで、F型クランプと構造が似ています。用途は、木工作業での接着時の固定や、同じ位置に印を付ける場合などです。押さえつけるツメが小さく、ひとつの箇所に力が偏らないためにも、基本的に2本1組で使います。額縁のような四方から締め付けを行う場合は、ハタガネを4本使って固定します。バイス引用元:株式会社ナベヤ 精密小型ボール盤バイス(ヤンキーバイス)バイスは、別名「万力」とも呼ばれるもので、口金に対象物を挟み、ハンドルを回すことで固定するタイプです。対象物を強く締め付けて固定できるので、負荷のかかる金属加工の切削や研磨などに多く使われています。参考:バイス(万力)種類・材質・用途パイプクランプ引用元:コメリドットコム K+ BUILD コメリ 46.6パイ 直交クランプパイプクランプは、主に単管パイプ(直径48.6mmの鋼管)と支柱を繋ぎとめるためのクランプです。主に建築現場の足場や棚、小屋の設置にて採用されています。パイプクランプは、主に「直交クランプ」と「自在クランプ」があります。直交クランプは、直交する単管パイプの固定に使うもので、2つの金具の向きが固定されたタイプです。自在クランプは、2つの金具の向きが自在に動くタイプで、交差する2本の単管パイプを任意の角度で固定できます。参考:【パイプ固定金具】種類と用途をカテゴリー別に紹介トグルクランプ引用元:Imao 横型トグルクランプトグルクランプは、てこの原理とトグル機構を利用したクランプで、予め固定された部材にトグルクランプを固定しておき、ハンドルを操作することで対象物を押さえつけて固定するタイプです。トグルクランプは、押さえの方向に対してハンドル方向が縦や横のものがあり、用途に応じて使い分けます。また、締結力や取付ベースもモデルによってさまざまなタイプがあります。

  • ガンドリル加工とは?特徴や適した材質を解説

    小さく深い止まり穴や細く長い貫通穴をあけるガンドリル加工と呼ばれる加工法があります。元は銃の穴をあけるために開発された方法ですが、他の穴あけ加工ではあけることができない深い穴を精度良くあけることができるため、近年多様な用途に採用されています。また、ガンドリル加工は、他の穴あけ加工に比べて、切り屑の排出性が良く、加工面も滑らかで、高速に深穴をあけることができるという利点があります。マシニングセンタなどの汎用性の高い工作機械でも、工具を用意すれば実施することができるため、通常の穴あけ加工の代わりに採用するケースも増えています。この記事では、ガンドリル加工の詳細や特徴、加工可能な材質、類似した加工法であるBTA加工との違いについて解説していきます。ガンドリル加工とはガンドリル加工とは、ガンドリルと呼ばれる小径・深穴加工用のドリルを用いた穴あけ加工のことです。小径の深い穴を高精度かつ高速度であけることができる加工法です。ガンドリルは、主にガンドリルマシンと呼ばれる専用の加工機に装着して用いられますが、最近はマシニングセンタなどに装着して使用できるものもあります。ガンドリルの名称の通り、元々は、ピストルやライフルといった銃の銃身の穴をあけるための加工法でした。しかし、現代では、高い精度が求められるシリンダーやシャフト、スピンドルといった機械部品などの加工にも採用されています。深穴は、JIS規格(JIS B 0106:2016)にて、長さと直径の比が4倍以上の穴と定義されています。しかし、近年、一般的なドリルでも比較的高い精度の深穴加工が可能となっていることから、穴の長さと直径の比が10倍以上の穴あけ加工を深穴加工とすることも多くなっています。ガンドリル加工は、深穴加工の中でも、穴径が1mmから30mm程度までの小径穴が対象です。加工可能な深さは、一般的に穴径の50倍から100倍程度までとなっています。なお、穴径が30mm以上の深穴はBTA(Boring & Trepanning Association)加工、穴径が1mm以下の深穴は微細深穴加工と呼ばれる加工法が採用されます。参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説ガンドリルの構造引用元:Q&A・技術情報「小径・深穴ガンドリルマシン「ガンフィーダ」についてのQ&A」株式会社スギノマシンガンドリルは、上図に見られるように、超硬刃部とシャンク、ドライバという3つの部位から構成されます。先端に切れ刃のある超硬刃部、続いてドリルの柄となるシャンク、後端にシャンクを保持して加工機と接続するドライバがあります。そして、ガンドリルの内部には切削油の流路、先端には切削油を噴射する油穴があり、超硬刃部とシャンクの側面には切り屑を排出するV字溝が刻まれています。ガンドリルは、先端の油穴から切削油を高圧噴射しながら高速回転することで、切り屑をV字溝を通して外部へ排出しながら穴を削り出します。参考:穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明!ガンドリルマシンの構造引用元:加工について「ガンドリル加工とBTA加工の違い」株式会社不二新製作所ガンドリルマシンは、大まかに、横向きに取り付けられたガンドリル、ガンドリルを高速回転させる駆動装置、ドリルブッシュ、切削油(クーラント)の循環機構から構成されます(上図参照)。ガンドリルマシンでは、ドリルブッシュは、ガンドリルをガイドして中心軸を安定させ、ガンドリルが加工穴の中心軸からずれることを防止します。切削油は、ポンプの働きによってガンドリルの先端から噴射され、切り屑と一緒に回収されてタンクに溜め置かれ、浄化されて再利用されます。これらの機構によって、ガンドリルマシンは、高精度かつ高速度な深穴加工を実現しています。参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリットマシニングセンタ用ガンドリル最近では、マシニングセンタ用のガンドリルとして、マシニングセンタのほか、NC旋盤やタレット旋盤、ボール盤などでも使用できるガンドリルを入手できるようになっています。ただし、マシニングセンタ用ガンドリルと言っても、その構造自体に異なる点はなく、先端から切削油を噴射しながら深穴を削り出す工具であることに違いはありません。しかし、ガンドリルマシンに存在するドリルブッシュがないため、深穴加工の際には、その代替として予めワークにガイド穴をあけておく必要があります。また、ガンドリルマシンを用いた場合ほどの精度は出ないため、加工可能な穴深さも小さくなっています。参考:ボール盤とは?構造、種類、フライス盤との違いガンドリル加工の用途ガンドリル加工は、自動車・家電などの薄型化・軽量化が進展し、電気機器・電子機器などの高精度化が強く求められるようになったことから、様々な分野の幅広い用途で採用されるようになっています。ガンドリル加工の用途例としては、例えば、以下が挙げられます。・食品…液体充填機、冷却器部品、酪農用搾乳機、食品製造機械部品・輸送機器…自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品・機械…スピンドル、シャフト、シリンダー、噴射機のノズル、油圧機器部品、減速機部品・電気…電機・電子機器部品、半導体関連熱版、液晶製造装置部品・建築…重機部品・金属加工…各種金型ガンドリル加工の特徴ガンドリル加工は、上述したように、一般的なドリル加工と様々な点で異なります。ここでは、ガンドリル加工の特徴について解説します。小径穴の深穴加工に特化しているガンドリル加工は、小径穴の深穴加工に特化した加工法です。対応している穴径は、メーカーによって異なりますが、1mm~32mmが標準的です。つまり、ガンドリルの刃径は、だいたい、この範囲内となっています。深い止まり穴や長い貫通穴をあけることが可能ガンドリル加工は、通常のドリルでは穴あけが不可能な、深い止まり穴や長い貫通穴をあけることができる加工法です。加工可能な深さはガンドリルによって違い、マシニングセンタ用ガンドリルよりも、ガンドリルマシン用ガンドリルの方が加工可能な深さの大きいものが揃っています。また、ガンドリルは、刃径が大きいものほど、加工可能な穴の深さも大きい傾向があります。下表は、マシニングセンタ用とガンドリルマシン用の既製品として入手できるガンドリルのサイズデータです。ただし、特注のガンドリル製作を受け付けているメーカーもあるので、ガンドリルが下表に記載されているサイズに限られているわけではありません。マシニングセンタ用刃径最大加工深さ加工深さ/刃径2804041604062404082803512410351442030184803024480203060020ガンドリルマシン用刃径最大加工深さ加工深さ/刃径130030023501753450150455013761000166815001871215001252417007032170053切り屑の排出性に優れるガンドリル加工は、切り屑の排出性が高いという特徴があります。深穴加工は、通常のドリルを単に長くしたツイストロングドリルでもできないわけではありません。しかし、ツイストロングドリルでは、切り屑はドリルのねじれ溝を通ってのみ排出されるため、排出効率が低くなっています。また、切削油も外部から供給するのみで、ドリルの先端に浸透しにくく、切り屑排出にもほとんど役立ちません。そのため、ツイストロングドリルで深穴をあける場合は、ドリルの送りを進行させては後退させるステップフィードで、後退させる度に切り屑を排出して、切り屑の詰まりを防ぐ必要があります。一方、ガンドリル加工では、切り屑は、ドリルの先端から高圧噴射される切削油と一緒に、ドリルのV字溝を通って流れ出ていきます。そのため、ガンドリル加工は、切り屑の詰まりや切り屑と加工面の干渉などが非常に少ない加工法となっています。また、切削油の循環性が高いことから、切削温度の上昇や工具摩耗の抑制効果も期待することができます。高精度の深穴加工が可能ガンドリル加工は、曲がりが小さく、高精度の深穴をあけることができる加工法です。加工穴の芯ズレの精度は、加工機・工具・加工条件・加工材料などによりますが、100mmの長さで0.1mm以下、ガンドリルマシンを用いれば100mmの長さで0.01mm以下を実現することも可能です。穴径の精度も高く、径公差は、下表のような許容誤差となるH7~H9程度となっています。穴径 (mm)公差等級 (μm)H7H8H93以下1014253~61218306~1015223610~1818274318~30213352穴の表面粗さが良好ガンドリル加工は、ツイストドリルによる穴あけ加工に比べ、表面粗さが良好な穴を成形することができます。ガンドリルは、超硬刃部の側面に滑らかな表面を持つガイドパッドを備えています。ガイドパッドは、ガンドリル加工の穴あけ加工中、穴内面に押し当てられて塑性変形と加工硬化を起こし、穴内面を滑らかに仕上げます。これをバニシング効果と呼びますが、この効果によって、穴内面の強度が向上するとともに、面粗度が良くなります。その面粗度は、通常の穴あけ加工の仕上げに用いられるリーマと同等以上のRa0.2~Ra3.2(0.2μm~3.2μm)程度です。なお、Raは、算術平均粗さと呼ばれる表面にある凹凸の高さの平均値で、小さいほど表面は滑らかとなります。ちなみに、リーマはRa0.8~Ra3.2程度、ツイストドリルはRa3.2~Ra12.5程度となっています。高速な深穴加工が可能ガンドリル加工は、上述したようにステップフィードすることなく、一度の送りだけで加工できるため、通常のドリルで深穴加工を行う場合に比べて、およそ3倍~5倍の速度で深穴加工を行うことが可能です。ただし、ガンドリルマシンではなく、マシニングセンタなどでガンドリル加工を行う場合は、深穴加工の前にガイド穴の穴あけ加工が必要であるため、その分の時間が掛かります。工具の再研削が可能ガンドリルは、再研磨が可能です。メーカーが再研磨を受け付けているので、切れ味が悪くなったり、加工回数が多くなったりしたら再研磨を依頼しましょう。また、ガンドリル専用の研磨機や汎用の研磨機に取り付けられるガンドリルの再研磨用アタッチメントを販売しているメーカーがあります。ガンドリルの使用回数が多く、ランニングコストが高くなっている場合は、再研磨機器の導入を検討してみると良いでしょう。ガンドリル加工に適した材質ガンドリル加工は、様々な材質の加工に対応しています。炭素鋼やステンレス鋼などの鉄鋼をはじめ、アルミや銅などの非鉄金属、耐熱鋼であるチタンやインコネルなどの難削材、焼入れした後の材料も加工可能です。その高い精度から、樹脂に対する深穴加工の引き合いも多くなっています。下表は、いくつかのガンドリルのメーカーサイトにて、対応可能な材質として記載されているものを纏めたものです。材質の分類材質名炭素鋼一般構造用圧延鋼材SS400低炭素鋼S10C~S28C中炭素鋼S30C~S55C高炭素鋼S55C~S75C合金鋼クロムモリブデン鋼SCM415, SCM420, SCM435, SCM440ニッケルクロムモリブデン鋼SNCM240, SNCM439クロム鋼SCr440軸受鋼高炭素クロム軸受鋼SUJ2工具鋼冷間ダイス鋼SKD11熱間ダイス鋼SKD62高速度工具鋼(ハイス鋼)モリブデン系SKH51ステンレス鋼マルテンサイト系SUS416, SUS420J2フェライト系SUS405, SUS430オーステナイト系SUS304, SUS316, SUS316L, SUS321, SUS630鋳鉄ねずみ鋳鉄FC250ダクタイル鋳鉄FCD400アルミ合金鍛造用A2017, A2024, A5052, A5056, A6061, A7075鋳物用AC2B, AC4C耐熱鋼チタン純チタン, チタン合金インコネルインコネル600ハステロイハステロイC276 銅純銅C1020 (無酸素銅), C1100 (タフピッチ銅)黄銅C2801プラスチックアクリル, 塩ビ, PEEK樹脂, エポキシ樹脂, ポリカーボネート, MCナイロン, PTFE, POMBTA加工との違いガンドリル加工とBTA加工は共に深穴加工の加工法ですが、小径の深穴加工はガンドリル加工、中・大径の深穴加工はBTA加工が適用されるのが標準的です。ガンドリル加工は穴径が1mm~30mmの場合、BTA加工は穴径が30mm以上の場合に採用されますが、特に決まっているわけではなく、メーカーによっては穴径50mmの深穴加工に対応したガンドリルやガンドリルマシンを販売しています。ガンドリル加工とBTA加工は、工具と加工機も異なります。BTA加工では、ボーリングバーと呼ばれる中空の工具とその先端に付いた刃物であるボーリングヘッド、専用の加工機であるBTAマシンを使用します。ボーリングバーが中空なのは、ガンドリル同様、切削油を流すためです。しかし、ボーリングバーは、ガンドリルとは逆に、先端のボーリングヘッドから切削油と一緒に切り屑を回収します。ガンドリルマシンとBTAマシンは類似した構造を持つ加工機ですが、BTAマシンは、切削油の循環がガンドリルマシンとは逆向きであり、オイルプレッシャーヘッドと呼ばれるガンドリルマシンにない装置を搭載しています(下図参照)。BTAマシンでは、切削油を穴あけ途中の穴とボーリングバーの隙間から高圧を掛けて注入し、ボーリングバーの先端のボーリングヘッドから切り屑と一緒に回収して循環させます。その切削油に圧力を掛ける装置がオイルプレッシャーヘッドです。引用元:BTA加工「BTA加工とは」日本高速削孔株式会社

  • 測定工具(測定機器)とは?種類と特徴を解説

    今回は測定工具・測定機器の主な種類と特徴について解説します。測定工具(測定機器)とは、対象物の寸法や重さなどの量を測るためのものです。金属加工の現場では、加工した製品が正しい形状や寸法で作られているかを検査するのに使用したり、加工中の材料が正確な位置にセットされているかをチェックしたりするのに利用されています。測定工具、測定機器とは測定工具、または測定機器とは、対象物の寸法や重さなどの量を、数値や符号を用いて表すもののことを指します。測定工具は、主に作業者が手に持って測るもののことを指します。ただし測定工具(測定機器)は、使用しているうちに数値のバラツキが大きくなり、正しく測定できなくなってしまいます。測定した数値が正しいものであることを証明するには、定期的に校正を行う必要があります。校正とは、標準器を用いて、測定機器で表示される数値と真の値の関係を求めることです。ただし校正は決まった周期が定められておらず、使用している企業ごとに周期が異なります。測定工具、測定機器の種類一覧ノギス引用元:Mitutoyo ABSデジマチックキャリパ CD-AXノギスは、寸法を測るためのもので、金属加工の現場で頻繁に使われている工具です。別名「キャリパ」とも呼ばれています。ノギスの先端部にあるジョウ(ツメ)を、測定したい場所にあてがうことで、寸法を測定できます。また、ジョウとは反対側にあるデプスバーを使えば、深さを測定することも可能です。寸法の表示形式は、主にデジタル式とアナログ式の2種類があります。デジタル式は上図のように、寸法が一目で確認できるため、誰でも扱いやすい特徴があります。一方で、アナログ式は寸法を読み取るのに慣れが必要ではあるものの、電池の残量を気にせず使える点が魅力です。これらは、使用している現場によって好みが分かれます。参考:ノギスの種類、構造と名称、精度マイクロメータ引用元:Mitutoyo 標準外側マイクロメータ M110マイクロメータは、ノギスと同様に寸法を測定するための工具です。アンビルおよびスピンドルと呼ばれる棒の測定面に対象物を挟んで寸法を測定します。測定面の幅の操作は、持ち手の部分にあるシンブルやラチェットストップを回転させて調節できます。上図の製品は、標準外側マイクロメータと呼ばれるもので、最も一般的なタイプです。測定したい箇所によっては、上図とは異なる形状のモデルを使用します。また、寸法の表示形式については、ノギスと同様にデジタル式とアナログ式の2種類があります。参考:マイクロメータの種類、構造と名称、精度ダイヤルゲージ引用元:Mitutoyo 標準形ダイヤルゲージ A (目量0.01 mm・測定範囲5 mm、バランス目盛)ダイヤルゲージは、寸法の変化や平行度、同軸度、同芯度などを測定するための工具です。単独では使用せず、スタンドなどに固定して対象物との位置関係を測ります。ダイヤルゲージは大きく分けて、スピンドル式とてこ式の2種類があります。スピンドル式は、先端にあるスピンドルを対象物に接触させて、上下した分の値を読み取るタイプで、旋盤やフライス盤などの金属加工において使われることが多いです。てこ式は、てこの原理を利用したタイプで、先端のスピンドルが動いた角度分の寸法変化を表示します。てこ式はスピンドル式に比べて分解能が高く、回転軸の振れや工作機械の精度検査のような、高い精度が求められる場面で利用されています。ピンゲージ引用元:株式会社アイゼン  ピンゲージ使用例ピンゲージは、精密な寸法に仕上げられた丸棒状の測定工具です。ピンゲージが加工穴にしっくりはまる直径であれば合格、といったような使い方が代表的で、その他にも傾斜角や穴ピッチの測定などにも採用されています。ピンゲージの材質は、鋼・超硬合金・セラミックスがあります。鋼は標準的なタイプなのに対し、超硬合金は耐久性に優れています。セラミックスは熱膨張に強くてサビないのがメリットです。形状は温度変化の影響を抑えるためにシャンク型を採用したタイプもあります。リングゲージ引用元:新潟精機株式会社 リングゲージリングゲージは、内径が精密な寸法に仕上げられたリング状の測定工具です。旋盤加工されたバー材などをリングゲージにはめ込んで検査を行うもので、ピンゲージとは逆の使い方になります。材質は鋼・超硬合金・セラミックスがあります。限界栓ゲージ引用元:新潟精機株式会社 測定・計測技術 限界栓ゲージ(限界プラグゲージ)限界栓ゲージは、穴の許容差の最小寸法である「通り」と、最大寸法である「止り」を備えた測定工具です。主に加工穴に差し込んで、通り側が通り、止り側が入らなければ合格、といった使い方をします。限界栓ゲージを用いた測定は、作業者によるバラツキがなく、公差の厳しい内径検査にて利用されています。ブロックゲージ引用元:新潟精機株式会社 測定・計測技術 ブロックゲージブロックゲージは、精密な寸法に仕上げられたブロック状の測定工具です。平行度も高く、マイクロメータなどの測定工具の校正にも利用されています。また、複数個のブロックゲージを組み合わせて、あらゆる寸法を作ることもできます。材質は鋼とセラミックスが代表的ですが、昨今ではサビの心配がないセラミックスが多く採用されています。すきまゲージ(シックネスゲージ)引用元:ミツワ株式会社 商品案内すきまゲージ(シックネスゲージ)は、名前の通りすきまを測定するための工具です。他の測定工具に比べて、微細な二平面の間隔を正確に測定できます。すきまゲージは厚みの異なる複数の板(リーフ)が1組になっていて、それぞれを二平面間に差し込むことで測定します。ハイトゲージ引用元:Mitutoyo デジマチックハイトゲージ HDS-Cハイトゲージは、基準面である定盤に設置して、部品などの高さを測る工具です。本尺(目盛り)を垂直になるように配置して、スクライバ(測定面)を上下させて高さを測定します。身長測定のように対象物を抑えるようにして測定したり、対象物にケガキを入れて測定したりといった使い方があり、数値を正しく読み取るには真正面からハイトゲージを目視する必要があります。数値の表示形式はデジタル式とアナログ式があります。水準器引用元:株式会社F.S.K 水準器の仕組み水準器は、別名「水平器」とも呼ばれるもので、地面に対して、対象物が水平に配置されているかを測るための工具です。水準器には、円筒のガラス容器の中にアルコールなどの液体と気泡が入っていて、気泡が変位した位置を見て、水平や傾斜を測定します。本体がマグネット付きで対象物に貼り付けて使うものや、表示形式がデジタル式のものなど、用途によってさまざまな種類や形状があります。水準器にV溝が付いたものは、パイプなどの円筒状のものの上に載せて測定することも可能です。角型水準器は、底面・上面・両側面の4面を測定面としたタイプで、平面や丸物の垂直を測定するために使用されます。平型水準器は、底面を測定面とし、平面や丸物の水平出しや、傾斜の測定に使用されています。粗さ計引用元:ティディエス株式会社 設備紹介 表面粗さ形状測定機粗さ計は、対象物の加工面の粗さを測定するための機器です。測定結果から得られた粗さ曲線をもとに、加工面の粗さを評価します。粗さ計は、触針にて測定する「接触式」と、レーザーなどを用いて測定する「非接触式」があります。多く採用されているのは接触式のタイプで、上図のように検出機と演算機が別々になった大型のモデルや、手軽に測定できるハンディタイプのモデルがあります。投影機引用元:Mitutoyo 測定投影機 PJ-H30投影機は、対象物を台に載せて下から光を当てることで、対象物の輪郭をスクリーンに拡大投影する測定機器です。投影された像は、正確な倍率で拡大されており、拡大した像の寸法を測ることで、実際のものの寸法を知ることができます。投影機を用いた測定は、対象物を非接触での測定が可能なほか、形状の小さなものや、複雑なものも測定できます。また、顕微鏡とは異なり、接眼レンズを除く必要がないので、複数人で観察できる点もメリットです。三次元測定機(CMM)引用元:Mitutoyo CNC三次元測定機 CRYSTA-Apex V1200シリーズ三次元測定機(Coordinate Measuring Machine:CMM)は、主にステージ上に配置した対象物に接触子を当てて、縦・横・高さから三次元の座標を取得し、高精度で寸法や位置関係、輪郭形状などを測定できる機器です。機器の形状は門型が一般的で、金型や機械部品の三次元測定や、測定したもののデータを3Dプリンターに利用するなどといった用途で利用されています。三次元測定機のメリットは、他の測定工具などでは困難な測定に対応できる点にあります。例えば、仮想点から特定の位置までの距離を測る場合、ノギスやマイクロメータでは正しく測定できません。しかし三次元測定器なら高い精度での測定が可能です。画像測定機引用元:Mitutoyo QV APEX 302/404/606 Pro画像測定機は、画像を用いて対象物の形状を測定する、非接触式の測定機器です。ステージ上に対象物をセットして画像を読み取り、エッジを検出して測定を行います。画像測定機は、主に精度が求められる製品の測定や、良否判定を行うのに利用されています。また、測定したデータをCADに流用することも可能です。モデルによっては、XY軸だけでなく、高さ方向のZ軸を測定できるものもあります。参考:CADとは?製造業界で使われている2DCAD・3DCADの種類も紹介レーザートラッカー引用元:TTS レーザートラッカーってどんな測定機?レーザートラッカーは、対象物に接触させたリフレクターにレーザー光を照射し、リフレクターから反射されたレーザー光が発光源に戻ることで、リフレクターの三次元座標を測定できる機器です。読み取られた三次元座標は、演算ソフトに転送されて、寸法や角度などが算出されます。レーザートラッカーは三次元測定機に比べて、大きな対象物の測定が可能です。例えば一般的に門型三次元測定器は数mの測定範囲なのに対して、レーザートラッカーは10mを超える対象物でも測定できます。そのため、大型設備により加工された切削品のような、大型サイズの対象物を測定する場合に利用されています。

  • 金型の構造と動作を詳しく解説

    今回は、プラスチックの製造にて使われる、射出成形用の金型の構造と動作について解説します。射出成形は、プラスチックなどの合成樹脂を加工するための方式で、金型に溶かした樹脂を流し込み、そのあとに冷却して固めたものを製品として利用します。ここでの金型とは、材料の塑性変形や流動性を利用して成形するための金属製の型を指しています。金型は射出成形以外にも、プレス・鍛造・鋳造などで利用されており、製造現場では欠かせないものとして活用されています。参考:【金型製作】金型の種類と基礎や流れについて徹底解説!!参考:射出成形の仕組みやメリットを解説!他の加工法との比較も金型の構造金型は、代表的なものに「2プレート」と「3プレート」のタイプがあります。ここではそれぞれの構造について解説します。2プレートの金型の構造引用元:MONOist 金型の作りや動きって、一体どうなってるの?2プレートの金型は、成形する上で重要となる「固定側型板」と「可動側型板」の2つのプレートにより樹脂を成形するタイプです。金型の構造は、大きく分けて「固定側」と「可動側」の2つがあります。上図では黄色の部分が固定側、水色の部分が可動側を表しており、樹脂はまだ流し込まれていない状態です。固定側は、射出成形機に固定される部分で、可動側は金型を開閉したときに可動する部分です。上図に樹脂を流し込むと、固定側と可動側のすき間に充填されて目的の製品が成形される仕組みです。次に金型を構成している各部品について見てみましょう。●固定側取付板:固定側型板をセットして、成型機の固定盤に取り付けるための板。●固定側型板(固定側主板):成形品の形を作るための板で、金型の主要となる部分。「雄型」や「キャビティプレート」とも呼ばれる。●可動側型板(可動側主板):固定側型板の対になる板で、同じく金型の主要となる部分。「雌型」や「コアプレート」とも呼ばれる。●スペーサーブロック:突出板が突出し動作できる空間を作るための部品。●突出板(エジェクタプレート):成形機のエジェクタ装置で突き上げて、成形品を取り出すための板。基本的に上板と下板の2枚構成で、上板にエジェクタピンやリターンピンなどをセットし、下板でこれらを押さえつけて固定します。●可動側取付板:可動側型板やスペーサーブロックなどをセットして、成形機の可動板に取り付けるための板。●ガイドピン:金型の開閉時に、固定側と可動側の位置合わせをするためのピンです。●ガイドブッシュ:ガイドピンがはまり合うブッシュ。●リターンピン:突き出した突出板を元の位置に戻し、突出しのバランスを保つためのピン。金型を閉じる際、固定側型板を押し当てることで、突出板が元の位置に戻ります。上記のような金型の外周部を構成する部品を、モールドベースと呼びます。モールドベースはメーカーから規格化されたものが販売されており、これらを利用することで短納期化や低コスト化が可能になります。そのため、金型を設計する際は、なるべく販売されているモールドベースを利用するのが理想的です。また、2プレートの金型には、上図右に記載されている以下の部品も備わっています。●ロケートリング:金型を成形機へ取り付ける際に、位置決めをするためのリング。●スプルーブッシュ:金型に材料である樹脂を流し込むための通り道。成形機のノズルと接触する部分で摩耗が激しいことから、直接金型には加工せず、交換可能な構造になっています。●突き出しピン(エジェクタピン):成形品を金型から突き出すためのピン。2プレートの金型はこれらの部品から構成されていますが、上記でご紹介したものは基本的な部品欄で、これら以外のものを搭載している場合もあります。3プレートの金型の構造引用元:製品設計知識 スプルー/sprue3プレートの金型は、2プレートの金型に搭載している固定側型板と可動側型板の2枚に加えて、「ランナーストリッパープレート」の計3枚の主要プレートから構成されているタイプです。3プレートの金型は、成形品の不要な部分であるスプルーやランナーを自動で切り離して製品を取り出せます。また、樹脂の注入口を複数設けやすく、1つの金型で複数の成形品を作りやすい特徴があります。金型の動作続いて2プレートと3プレート金型の動作について見てみましょう。2プレートの金型の動作2プレート金型の動作の参考として、以下の動画を添付します。引用元:Paulson Training Programs, Inc. NEW - Lesson 2-HD - Injection Molds - Their Parts and Operation-The Technology of Injection Molding2プレートの金型を使った樹脂成形では、始めに樹脂を成形機から射出し、金型内へ充填させます。次に充填された樹脂を固化させるために冷却。最後に固化された樹脂は金型を抜型したあとにエジェクタピンにて押し出されます。3プレートの金型の動作3プレート金型の動作の参考として、以下の動画を添付します。引用元:SOSITAR MOULD Hot runner mold vs cold runner mold ( two plate mold vs three plate mold)動画では2プレートと3プレート金型の比較がされています。3プレートの金型は動画を見ると分かるように、金型を抜型した際、成形品のスプルーとランナーが自動的にカットされる仕組みです。

  • カウンターシンクとは?種類ごとの特徴や面取りカッターとの違い

    今回はカウンターシンクの種類ごとの特徴や面取りカッターとの違いについて解説します。カウンターシンクは、主に穴加工のあとに面取りやバリ取りを行うための刃物のことを指します。比較的安価で入手できるので、穴の面取りをする際に頻繁に使われています。カウンターシンクとは引用元:大洋ツール株式会社 超硬3枚刃カウンターシンクカウンターシンクとは、面取りやバリ取りをするための刃物のことを指します。面取りは加工物の角でケガをしたり、ものが破損するのを防ぐ目的で行います。カウンターシンクはキノコのような形状が特徴的で、ツイストドリルなどで穴加工をした後のエッジのカエリやバリを取り除いたり、面取りをしたりする目的でカウンターシンクを用います。カウンターシンクの材質は、超硬のものもありますが、主にハイスが採用されています。コストが比較的安く済むので、ちょっとした面取りをするのにカウンターシンクが使われています。製品によってはハイスにチタンコーティングなどを施しており、耐摩耗性を向上しています。面取りできる刃物にはリーディングドリルもありますが、リーディングドリルは面取りに限らず、穴加工の際の位置決めに使用する刃物で、カウンターシンクとは異なる性質を持ちます。参考:リーディングドリルとは?用途、種類、切削条件カウンターシンクの種類と特徴カウンターシンクは製品によって、先端角の角度が60°・90°・120°などと異なります。基本的な皿モミ加工やバリ取り、面取りを行うのであれば、先端角90°のものが最適です。より大きな角度で面取りをしたい場合に先端角120°のものを用いるなど、目的によって使い分けます。製品によっては刃の分割数が不等分割されたものもあります。このタイプは切削抵抗を軽減し、ビビリが少ないことから、面取り精度の向上が期待できます。次にカウンターシンクの種類とそれぞれの特徴について見てみましょう。ロングシャンクタイプ引用元:株式会社ライノス 製品詳細 【HSSカウンターシンク】3枚刃 ロングシャンク 90°《No.19092》ロングシャンクタイプは、シャンクが長いカウンターシンクです。シャンクが長いことで、深さのあるワークに対しても加工がしやすいほか、工具とワークが干渉しにくい特徴があります。TiNコーティングタイプ引用元:株式会社丸藤TiNコーティングタイプは、チタンコーティングを施したカウンターシンクです。TiNコーティングはドリルやカッターなどの切削工具に多く採用されており、安定した膜質と耐摩耗性が得られます。TiNコーティングされた切削工具は、外観が黄金色になっているのが特徴です。Vコーティングタイプ引用元:MiSUMi-VONA V-UCS 穴面取り カウンタ-シンク VコーティングVコーティングタイプは、TiN層にTiCN層(炭窒化チタン)を被膜させた複層構造のカウンターシンクです。TiNコーティングに比べてコストが高いものの、より高い硬度が得られるため、工具の長寿命化が期待できます。VコーティングタイプはTiNコーティングの黄金色と違い、外観が茶色やグレー色になっています。穴あきタイプ引用元:株式会社ライノス 製品詳細 【HSSカウンターシンク】穴あきカウンターシンク 60°《No.21811》穴あきタイプは、刃部に貫通穴が開いているカウンターシンクです。穴の部分が刃になっていて、切削したときに切粉が排出しやすいほか、非鉄金属や軟質材料に対してキレイに面取りができるのも特徴です。また、貫通穴はオイルホールの役割を担い、加工の際にオイルを刃先へ供給しやすく、仕上がり面を高精度で加工できる製品もあります。面取りカッターとの違いカウンターシンクと面取りカッターは、どちらもバリ取りや面取り加工をするための刃物のことを指しており、ほとんど違いはありません。傾向として、カウンターシンクは皿モミ加工を目的とした工具、面取りカッターは皿モミに限らずパイプ端部などのさまざまな面取り加工の工具の総称を指すことが多いです。参考:【面取りカッター】種類、材質、サイズ、角度

  • 超硬ロータリーバー(超硬バー)とは?種類、形状、サイズ、回転数

    今回は超硬ロータリーバーの刃の種類や、回転数などの注意点について解説します。超硬ロータリーバー(超硬バー)とは、エアーグラインダーなどの回転工具の先端に取り付けて使用する工具のことです。主な用途として、製品の成型やバリ取りの仕上げ加工などが挙げられます。超硬ロータリーバーは、名前の通り刃の材質は超硬が採用されていますが、シャンク部については超硬以外にも鉄製を採用したものもあります。刃が超硬素材であるメリットは、ステンレスなどの切削が難しい材料でも加工ができる点です。ただし超硬ロータリーバーを使用する際は、目的の効果を得るために、使用する刃の種類や刃の回転数などについて注意を払わなければなりません。超硬ロータリーバーの刃の種類超硬ロータリーバーの刃の種類は、主ににスパイラルカット・クロスカット・アルミカットの3つがあります。メーカーによっては、ダイヤモンドカットやチップブレーカーカットといった特殊なタイプもラインナップしている場合もあります。スパイラル(シングル)カット引用元:ムラキの最先端工具 機械工具部 製品情報 超硬ロータリーバースパイラル(シングル)カットは、一方向の刃で構成されたタイプです。刃数はエンドミルなどと比べて多く、加工面がキレイに仕上がる特徴があります。ただし、針状の切粉が排出されるため、手作業で扱うには注意が必要です。クロス(ダブル)カット引用元:ムラキの最先端工具 機械工具部 製品情報 超硬ロータリーバークロス(ダブル)カットは、スパイラルカットの刃に対して、もう一方向の刃を付加したタイプです。スパイラルカットに比べて切粉が粉状になるほか、作業時のブレも最小限に抑えられるので、安全に使いやすい特徴があります。ただし、チップポケットが小さいため、アルミや樹脂のような融点の低い材質に用いると、目詰まりしやすくなります。アルミカット引用元:ムラキの最先端工具 機械工具部 製品情報 超硬ロータリーバーアルミカットは、シングルカットのように一方向のみの刃ではあるものの、刃の数が少なくて深さのあるタイプです。これにより切削量とチップポケットが大きく、アルミのような融点の低い材質でも目詰まりしにくい特徴があります。ただし、加工面の仕上がりはシングルカットに比べて粗くなりやすい点に注意が必要です。ダイヤモンドカット引用元:株式会社スーパーツール 超硬バー ダイアモンドカットダイヤモンドカットは、独自の刃形状を採用した特殊なタイプです。刃物が不用意にワークに食い込むことがなく、滑らかに加工を行えます。切粉も細かくなるので、難削材の加工に適しています。チップブレーカーカット引用元:MiSUMi-VONA 超硬カッターチップカットカーバイドバーチップブレーカーカットは、切粉を細かく分断するためのチップブレーカーを搭載した特殊なタイプです。切削抵抗も少なく、切削時の振れも軽減できます。超硬ロータリーバーの刃の形状超硬ロータリーバーは、製品によって刃の形状が大きく異なります。メーカーごとに形状の呼び方も異なるものの、形状の種類についてはほとんど違いはありません。円筒型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介円筒型は、円筒かつ刃先が平らな形状をしたものを指します。外周部分に刃があるので、軸方向に対して垂直に押し当てるようにして加工します。製品によっては先端にも刃が付いていて、軸方向に対しても加工できるタイプがあります。先丸円筒型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介先丸円筒型は、刃が円筒型かつ、先端が丸みを帯びた形状のものを指します。上図のように曲面の隅を加工するのに適しているほか、円筒型のように側面でも加工を行えます。楕円型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介楕円型は、刃の全体がタマゴのように丸みを帯びた形状のものを指します。上図のようにワークの曲面箇所を均一に加工したい場合に適しています。砲弾型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介砲弾型は、刃物が砲弾のように先端にいくにつれて先細になっているタイプです。曲面や細かな箇所などの、複雑な形状のものを加工するのに適しています。球型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介球型は、刃物が球体の形をしたタイプです。丸溝の箇所を加工するのに適しています。円錐型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介円錐型は、刃物が円錐形状のタイプです。円錐の角度が90°と60°のタイプがあり、V溝の加工や皿ザグリの箇所を加工するのに適しています。製品によっては逆円錐の形状をしたタイプもあります。シャンク径のサイズ寸法引用元:MiSUMi-VONA 技術情報超硬ロータリーバーの柄の部分をシャンクと呼びます。一般的に国内で取り扱われている超硬ロータリーバーのシャンク径は、直径3mmか直径6mmのものがほとんどです。超硬ロータリーバーを扱うときの注意点として、シャンクの突出し長さが最小になるように刃物を取り付ける必要があります。これにより芯振れやシャンクの歪みを防ぐことができます。超硬ロータリーバー(超硬バー)の回転数超硬ロータリーバーの推奨回転数は、各製品の仕様欄に掲載されているので、使用の際はそちらを確認するようにしましょう。ただし突出し量が長い場合は、先端の振れが大きくなることから、回転数を落とすなどの対応が必要です。回転数が合わない状態で使用すると、ビビりや目詰まりが発生しやすくなるので超硬ロータリーバーを使用する際は注意してください。

  • ホールソーの種類、用途、サイズ、規格

    ホールソーは、DIYや各種の工事、金属加工などで用いられている切削工具です。大口径の穴をあけるのに適しており、精度良く、短い時間、少ない電力で大きな穴をあけることができます。様々な材質のホールソーが市販されており、木材や樹脂材、金属材など、加工対象に合わせたラインナップがあります。サイズも多様ですが、ホールソーの外径が開口する穴の径となるため、穴径に合わせてホールソーを選定する必要があります。電動ドライバーやインパクトドライバーなどに装着して使用することが多く、手動で簡単に綺麗な穴をあけたいときに役立つでしょう。この記事では、このホールソーの詳細や用途などについて詳しく解説してきます。ホールソーの種類や種類毎の特徴、加工対象、サイズにも言及しますので、参考にしてください。ホールソーとは引用元:製品情報 > 切断・穿孔機器 > ダイヤモンドコアビット「H.S.S.ハイスホールソー(排水マス用)」レッキス工業株式会社ホールソーとは、木・樹脂・金属製の板材や樹脂・金属製の管材に大口径の穴をあけるための切削工具のことです。ホールソー全体は、上図のように円筒形状となっており、円筒の先端には円周に沿って刃が付いています。円筒の中心軸にはドリルが備え付けられており、ホールソーの刃とドリルが一緒に回転することで、穴の中心を維持しながら穴をあけることが可能です。なお、上図の有効長は、穴あけ可能な最大深さで、同時に穿孔可能な最大板厚を示します。また、切粉除去孔は、ホールソー側面の穴のことで、切削によって生じた切粉を排出する機能があります。ホールソーは、主に切削ビットとして電動ドリルや電動ドライバー、インパクトドライバーなどの電動工具に装着して手動で使用しますが、ボール盤やフライス盤、マシニングセンタなどの工作機械に装着して自動で使用するタイプのものもあります。引用元:製品紹介 > ホールソー「超硬ホールソー メタコアトリプル」ユニカ株式会社なお、ドリルではなく、ホールソーで穴をあけることのメリットは、上図から理解されるように、切削面積が小さいため、短時間、省エネルギーで穴あけが可能なことです。また、工具自体を比べると、ホールソーの方が工具を構成する素材の量が少なくて済みます。参考:穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明!ホールソーの用途用途としては、水道・ガス・エアコンなどの配管工事やコンセントやスイッチなどの取付穴の開口といった電気工事のほか、木工や樹脂加工、金属加工などが挙げられます。木工では家具などの生産に、樹脂加工ではFRP(繊維強化プラスチック)製のコンテナや塩ビ(ポリ塩化ビニル)樹脂製の機械カバーなどの製作に、金属加工ではステンレス製のキャビネットや内装パネルの製作などにホールソーが用いられています。ホールソーの価格帯価格帯は、1,000円程度から50,000円程度までと幅広く、材質の違いや精密性の高さ、サイズ、ドリルの有無などによって価格が違います。ドリルとセットになっていないものはドリルを別に用意する必要があります。材質は、安価な順に、炭素工具鋼、高速度工具鋼(ハイス)、超硬合金となっています。ただし、ハイス製のホールソーは、刃先のみがハイスで、円筒部がバネ鋼となっている「バイメタル」(2種類の金属を溶接などで接続した複合材)が使用されていることが多く、バイメタルホールソーとも呼ばれます。ホールソーとコアドリルの違い引用元:事業紹介「コアドリル工法」コンクリートコーリング株式会社なお、ホールソーと類似した工具にコアドリルがありますが、コアドリルは、鉄筋・無筋コンクリート材やサイディング材(外壁材)、石材、木材などが対象です(上図参照)。また、ホールソーであける穴よりも深い穴をあけるために用いられます。そのため、開口する穴が浅い場合にはホールソー、穴が深い場合にはコアドリルを使用すると良いでしょう。ホールソーの使用方法●確認事項ホールソーで穴あけを行う場合は、まず以下の事項の確認が必要です。・ホールソーが加工物の材質に対応しているかを確認します。・ホールソーのシャンク(柄部)の形状が取り付ける電動工具のチャック(工具の保持具)と合っているかを確認します。・ホールソーの有効長が加工物の厚さよりも小さいことを確認します。・ホールソーの径が開口する穴の径に合っているかを確認します。●使用手順そして、手動で取り扱う電動工具を使用する場合は、以下のような手順で穴をあけていきます。1. ホールソーを電動工具に取り付けます。2. 加工物の下に、ドリルやホールソーの刃を受けるための下地材を敷きます。3. 開口する穴の中心にマーキングとして印、または窪みを付けます。4. ドリルの先端を印、または窪みに当て、加工物と垂直になるように構えます。5. 電動工具のトリガーを少しずつ引きながら、低速回転から少しずつ回転数が上げていきます。6. ドリルは、ある程度の深さを掘り進むと、自動的にねじ込まれていきますので、大きな力を加えずに構えてセンター穴をあけていきます。7. ホールソーの刃が加工物に触れたら、再び低速回転にして回転数が徐々に上がっていくように穴をあけていきます。8. ドリルの推進力でホールソーの刃による加工も進行していきます。9. 穴が貫通したら作業終了です。●作業時の注意点作業時の注意点としては、以下が挙げられます。・ホールソーの刃よりもドリルの先端が突出しているので、加工物の下に敷いた下地材にはドリルによる穴が必ずあいてしまいます。そのため、下地材の板厚に余裕を持つなど、注意が必要です。・ある程度の厚みがある木材は、穴が貫通した際に亀裂や大きなバリが生じることがあります。その防止には、加工物の表と裏から半分の深さずつ穴あけを行って穴を貫通させることが有効です。・加工後のドリルやホールソーは、高温になっていることがあるので、しばらく素手では触れないようにしましょう。・加工中、切り屑などでホールソーの刃が目詰まりを起こすことがあるので、頻繁に切り屑を除去しながら穴あけを行いましょう。ホールソーの種類ホールソーの種類は、大きく木工用と金属加工用に分けることが可能で、金属加工用ではバイメタルホールソーと超硬ホールソーが代表的です。ここでは、一つで複数の穴径に対応している木工用ホールソー、刃の材質にハイスを使用しているバイメタルホールソー、バイメタルホールソーの上位互換とも言える超硬ホールソーについてご紹介します。木工用ホールソー引用元:先端工具>木工アクセサリ>フリーカッター「SK11 インパクト用木工ホールソー SIH-001」藤原産業株式会社木工用ホールソーは、木板やベニヤ板(合板)、コンクリートパネル(コンパネ)などの穴あけに用いられるホールソーです。塩ビやアクリル、発泡スチロールなどの樹脂の加工も可能ですが、通常、金属板の加工はできません。刃の材質は主に炭素工具鋼が用いられていますが、ステンレスのSUS420J2が用いられていることもあります。市販品は通常、口径の異なる薄目の刃が複数枚セットとなって販売されています(上図参照)。そして、刃となる円筒の側面部と刃の土台となる円筒の底面部が分離できるようになっており、底面部には、ドリルを中心に同心円状の溝があります。つまり、木工用ホールソーは、開口する穴の径に合った溝に刃を取り付けることで、様々な径の穴に対応できるのです。超硬ホールソー引用元:製品紹介 > ホールソー「超硬ホールソー メタコア」ユニカ株式会社超硬ホールソーは、刃部に超硬合金が使用されているホールソーのことです(上図参照)。鋼板やステンレス板、アルミ板などの金属板のほか、鋼管やステンレス管などの穴あけに用いられるホールソーです。木材や樹脂材の穴あけもできます。参考:アルミ板の穴あけに関してご紹介!必要な工具や工場の手法に関しても解説!参考:パイプの穴あけ加工を製品事例と共に徹底解説!特に、硬い金属板や厚い鋼板などが加工対象で、これらに対応できるように刃が高硬度で分厚く、耐摩耗性にも優れます。チッピング防止や摩耗対策、長寿命化のため、刃部にチタンなどがコーティングされているものもあります。なお、上図のドリルに巻き付いているバネは、下図のように、ドリルの貫通時にホールソーが勢い良く加工物に当たってしまうことを防止するために備え付けられています。引用元:製品紹介 > ホールソー「H.S.S ハイスホールソー」ユニカ株式会社ただし、木工用ホールソーとは違って、口径ごとにホールソーを用意しなくてはならず、ホールソー一つ一つの価格も高くなっています。バイメタルホールソー引用元:製品紹介 > ホールソー「H.S.S ハイスホールソー」ユニカ株式会社バイメタルホールソーは、上述したように、バイメタルと呼ばれる複合金属材料を材質とするホールソーのことです(上図参照)。刃先には主に高速での切削加工に適したハイスが、刃先以外には硬度と靭性のバランス良いバネ鋼などが用いられています。その刃は、薄いものから厚いものまであり、極薄のものであれば精密性の高い加工が可能です。刃の材質は、SKH51やSKH59といったモリブデン系高速度工具鋼などが用いられています。主に薄目の鋼板やステンレス板、アルミ板などの加工に用いられますが、木材や樹脂材の加工も可能です。しかし、超硬ホールソーに比べると、硬度や耐摩耗性に劣るので、分厚いステンレス板などの穴あけは推奨されません。ホールソーのサイズと規格一覧ホールソーには、公的に定められた規格はありませんが、電動工具や工作機械との接続部であるシャンクについてはメーカーに関わらず形状やサイズが統一されています。市販のホールソーは、インパクトドライバーの六角軸チャックに取り付けられるシャンク径6.35mmの六角軸シャンクか、電動ドリル・電動ドライバーのドリルチャックに取り付けられるシャンク径6~13mmのストレートシャンクであるものが大部分です。一方、開口する穴の大きさを決める口径と穿孔可能な最大の板厚を決める有効長、及び推奨される最大板厚の適応板厚は、ホールソーのメーカーや製品、種類によって様々です。市販されているホールソーの口径と有効長、適応板厚を種類毎に挙げると下表のようになっています。(単位:mm)木工用バイメタル超硬口径(外径)21~17012~17014~150 有効長12.5~15010~504~35適応板厚~150(電動工具)~3.2(電動工具)~4.5(電動工具)~25(工作機械)

  • ツーリング工具の構造、種類、規格

    ツーリングとは、工作機械に切削工具を設置させるため、間に入ってアダプターの役割を果たす工具のこと。ドリルやフライスなどの「ツール」の間に入ることから、「tooling」と表記されます。実際に金属を加工するのに必要なのは切削工具ですが、その性能を最大限に発揮させるためにはツールをしっかりと固定し、金属を削っている間も重心がブレず、力を正しく伝える必要があります。そのため、一般的な金属の切削では脱着のしやすさ、高硬度の金属や高精度な加工を要求される現場においては保持力や剛性などが求められるなど、状況や要求に応じてさまざまな需要があります。ツーリングの構造と仕組みフライス盤の場合、ツーリングはツールホルダ、ツールアダプタで構成されています。ツールホルダツールホルダは工作機械に直接つながるパーツの相称で、ツールアダプタを固定したまま状態を保てる「保持力」と重心がブレずに金属を切削できる「取り付け精度」などが求められます。ツールホルダには、加工工具によって凹状、凸状の2種類があり、凹状のものを「ホルダ」、凸状のものを「アーバ」と呼んでいます。ツールアダプタツールアダプタはドリルやフライス、アーバなどの加工工具とツールホルダの間に取り付けられる工具のこと。場合によって、ツールホルダと分離しているものと、一体型になっているものがあります。プルスタッドプルスタッドはツールホルダの後端に取り付けられ、工作機械の主軸穴に固定させるために用いられるボルトのことです。切削工具同様、工作機械に取り付けられる消耗品で、耐摩耗性に優れた素材を使用することで長期間、安定した加工を維持することができます。ツーリングの種類と特徴ツールホルダは保持力や剛性などが求められる一方、脱着のしやすさや熟練度など、方法によって違った特徴も持ち合わせています。それぞれに特徴の異なる5種類のツールホルダについてご紹介します。コレットチャックコレットチャックは最も一般的なツールホルダで、ドリルやエンドミルなど、幅広いツールに対応しています。すり割りと呼ばれる縦方向の切り込みが入った金具に切削工具を差し込み、外側から絞めつけることで工具を固定する仕組みとなっています。取り付け精度が高く、交換しやすいメリットを持っています。保持力が弱いため、高速回転の軽切削に向いています。ミーリングチャックニードルベアリングの力を使い、切削工具を締め付けて固定するツールホルダで、汎用性が高く、ストレートコレットを変更することでさまざまな工具に対応することが可能です。工具の保持力や剛性に優れているため、エンドミルを使った重切削に向いていますが、曲げ剛性に弱いため扱いには注意が必要です。サイドロックホルダストレートシャンクに対し、ホルダ側面からねじを締め付けて固定するホルダです。切削工具をねじで押さえつける単純な構造のため、取り付けがしやすく効率的に切削工具を脱着できます。高い保持力を持つ反面、剛性に弱いため、高いコストパフォーマンスを生かせる刃先交換式のドリルなどに向いています。油圧チャックホルダに油圧機構を取り入れたチャックのことで、ホルダ内部に充填されたオイルの力によってツールを固定します。保持力や取り付け精度、剛性など、さまざまな面に優れているため、高い精度を求められるリーマ加工などに適しています。また、簡単に脱着ができるため作業者に熟練度を必要としない点もメリットのひとつです。焼き嵌めチャックツールホルダ本体を加熱し、取付穴を熱膨張によって広げた上で挿入し、その後冷却し、元のサイズに戻すことで工具を締め付ける仕組みのホルダです。加熱にはバーナーや電熱ヒーター、高周波誘導加熱装置など、専用の加熱装置が用いられ、冷却は自然冷却や、エア冷却などで対応するのが一般的です。加熱・冷却に時間がかかるものの、構造自体はシンプルで保持力、精度、剛性にも優れており、主にマシニングセンタで使用されます。ツーリングの規格ツーリングには、旋盤やマシニングセンタなど、取り付ける切削機械によってさまざまな種類があります。その中から、多く用いられるNT、BT、BBT、HSKの4種類をご紹介します。NT(ナショナルテーパ)NTとは、ナショナルテーパのことで、主に汎用タイプの旋盤に使用されます。BTはプルスタッドを用いて固定されるのに対し、NTは引きねじで固定するのが一般的です。BT(ボトルグリップテーパ)BTとは、ボトルグリップテーパのことで、主にマシニングセンタに使用するツーリングのことを指します。プルスタッドを用いて強い力でツールホルダを固定する仕組みになっています。BBT(二面拘束テーパ)二面拘束のBTシャンクのことです。テーパ部に加え、ツールホルダのフランジ部分も拘束することで、シャンクをより強く固定します。これにより、BTで主軸とテーパ部分が密着した際に発生することがある熱膨張などによる食い込みを解消し、高速かつ高精度な加工を実現させています。 HSK(中空テーパ)主にマシニングセンタで使用される中空タイプのシャンクです。加工時に遠心力の影響を受けにくく、高速加工にも対応が可能。BTシャンクに比べ、高い精度を発揮します。

  • ディスクグラインダーとは?特徴や種類を解説

    この記事を監修する専門家有限会社大川板金取締役 大川嘉雄 氏創業50年、板金加工・機械加工等の金属加工を手掛ける有限会社大川板金で取締役を務める。10年以上の金属加工でのキャリアを活かし、コンサルタントとしてMitsuriのアドバイザーを兼務。町工場の3K(きつい、汚い、危険)イメージを変え、カッコいい人達で溢れる職場を目指している。ディスクグラインダーは、工場やDIYでの作業に便利な電動工具です。ディスクと呼ばれる円板状の砥石を取り付けて、研磨・研削・切断などを行います。しかしディスクグラインダーは、本体だけでなく、砥石の種類も豊富なので、各種類がどのような特徴をもつのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ディスクグラインダーの本体やディスクの種類について解説します。ディスクグラインダーとは引用元:モノタロウ ディスクグラインダーの特長と使い方ディスクグラインダーとは、さまざまな材料を削るための電動工具のことです。現場によっては「サンダー」と呼ぶこともあります。用途は、金属や非金属の研磨・研削・サビ落とし・鏡面仕上げなどが代表的です。使用方法は、材料からディスクを離した状態で電源を入れ、ディスクの回転が安定してから、材料に当てて加工します。電源は、充電式のコードレスタイプと、AC電源を用いるコードタイプがあります。コードレスタイプは、充電さえしていれば、AC電源のない場所でも使用できるのがメリットです。メーカーによっては、同じシリーズの電動工具の充電池を使いまわせるものもあります。一方、コードタイプは電池切れの心配がなく、安定したパワーを出力できるのが魅力です。ディスクグラインダーの特徴ディスクグラインダーは、ディスクの取り替えにより、研削・研磨・切断・ツヤ出しが可能なほか、一般鋼・ステンレス・アルミなどの金属や木材・石材・ガラスなどの材料に対応できます。その汎用性の高さから、工場現場やDIYなどの幅広いシーンで活用されています。ディスクグラインダーの種類ディスクグラインダーの本体には、主に高速型・低速高トルク型・無段変速型の3種類があります。高速型高速型のディスクグラインダーは、最も一般的なタイプで、回転数が12000min-1程度のものになります。高速でディスクを回転させられるので、研削や研磨がスピーディーに行えます。ただし、その回転の速さから、必要以上に削りすぎてしまいやすい点に注意が必要です。低速高トルク型低速高トルク型のディスクグラインダーは、高速型に比べて回転数に劣るものの、高いトルクを有しています。パワーがあるので、石材やコンクリートなどの硬い材料を切断するのにぴったりです。また、低速の回転であることから、仕上げの磨き加工をするのにも適しています。無段変速型無段変速型は、加工する材料に合わせて、ディスクを任意の回転数(3000~11000min-1)に変更できます。切断・研磨・研削などの幅広いシーンで使える汎用性の高いタイプですが、その分値段は高い傾向にあります。砥石の種類ディスクグラインダーに搭載する砥石はさまざまな種類があり、用途に合わせて選ぶ必要があります。オフセット砥石引用元:株式会社ノリタケカンパニーリミテド オフセット砥石オフセット砥石は、サンダー掛けと言われる研削やバリ取り、研磨作業で使われている砥石です。孔の周りが隆起していて、砥石部分と段差が付いた形状のため、作業性と安全性に優れています。加工表面は粗めで、主に金属のバリ取り・ビード取り・面取り・表面研削などの作業に採用されています。フレキシブル砥石引用元:溶接市場 オフセット砥石フレキシブル砥石は、オフセット砥石に比べて厚みが2~3mmほど薄く、適度な弾性をもつ弾性砥石です。用途としては、鋼や鋳物、石材などの平面や曲面の研削、バリ取り、研磨作業が挙げられます。オフセット砥石よりもワークへのなじみがよく、薄い材料や曲線の材料の加工にも対応しやすいタイプです。多羽根ディスク引用元:HiKOKI テーパ式多羽根ディスク・木工サンダ多羽根ディスクは、羽根状の布やすりが等間隔に配置されたディスクです。用途としては、各種金属素材や木材の研削・研磨・サビ落としに用います。通常の研削砥石に比べて接触幅が広く、効率的に加工が行えるほか、やすりの隙間から空気を取り込み、冷却効果を得ることでワークが焼けにくい特徴があります。シースルーディスク引用元:株式会社レヂトン シースルーヂスクシースルーディスクは、砥石メーカーのレヂトンが取り扱うディスクで、多羽根ディスクに切れ込みが入っているのが特徴です。切れ込みから研削面を確認しながら削れるほか、目詰まりの防止や優れた放熱効果が期待できます。シースルーディスクは、主にステンレス・一般鋼材・薄板・超鋼・真鍮・アルミの研磨や研削の用途で採用されています。ナイロンディスク引用元:モノタロウ TRUSCO ニューナイロンディスク (高回転タイプ) 外径95mmナイロンディスクは、ナイロン繊維に砥石効果をもたせたディスクです。弾力があり、柔らかい素材のため、ワークを深く削らずに研磨できるほか、曲面部分の仕上げにも適しています。用途としては、金属の塗装前の仕上げや最終バフ前工程での研磨で使用します。ナイロンディスクと似たもので、「ナイロンミックスディスク」という製品もあります。ナイロンミックスディスクは、ナイロン繊維と研磨布をミックスしてできた繊維が、クッションの役割を果たし、目詰まりが起こりにくく、ペーパーのように表面を仕上げられます。フェルトディスク引用元:イチグチ フェルトディスク S/Hフェルトディスクは、バフ研磨で、金属材料のツヤ出しなどに適したディスクです。青棒や白棒などの固形研磨剤を使用して仕上げ磨きをすると、鏡面のように仕上がりがきれいになります。フェルトディスクには、研磨焼けが少なくて使いやすい「ソフトタイプ」と研磨の性能と耐久性に優れた「ハードタイプ」の2種類があります。カップブラシ引用元:ASKUL 鳴門屋 NSK ステンより線ネオカップブラシ C-21 1個 330-7697(直送品)カップブラシは、これまでご紹介したディスク形状とは異なり、カップ形状かつ、先端に銅線やステンレス線を搭載したタイプです。カップブラシを作業面に押し付けて回転させることで、広範囲を研磨できます。主な用途は、溶接作業の前後処理・バリ取り・サビ落とし・塗装剥離などが挙げられます。カップブラシは平面の研磨のみに使用するもので、コーナー部分などの研磨には使えません。平面以外を研磨したい場合は、「ベベルブラシ」と呼ばれる、毛材が斜めに押し付けられるタイプを用います。切断用砥石引用元:株式会社レヂトン 金の卵 オフセット型切断用砥石は、主に金属や石材などの切断を目的としたディスク砥石です。切削面に面精度が必要な場合や、ワークが欠けるのを避けたい場合などに使用します。金属用や非金属用など種類が多いので、切断したい材料に合わせて製品を選びます。なかには厚みが1mm以下の切断用砥石もあり、溝入れ加工などにも採用される場合があります。

  • タッチプローブとは?原理や種類を解説

    今回はタッチプローブの原理や種類について解説します。タッチプローブは、マシニングセンタなどの工作機械に搭載するセンサーのことで、原点出しや寸法の自動測定が可能になります。タッチプローブはモデルによって対応する工作機械が異なり、適切なタイプを選ばなくてはなりません。ここでは、タッチプローブがどのような原理で信号を伝達しているのか、どのような種類があるのかをを見てみましょう。参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説タッチプローブとはタッチプローブとは、NC工作機械で用いる接触式のセンサーのことを指します。タッチプローブをマシニングセンタなどの主軸に搭載し、ワークに接触させることで、原点出しや、加工後の寸法を高精度で自動計測できるようになります。ワークの寸法を正しく計測することで、精度の高い加工が実現し、加工不良を防止できるようになります。また、加工ワークの測定が正確かつ、手作業によるワークの位置決めが無くなることで、作業者の技術レベルによる違いも無くなり、ヒューマンエラーや段取り時間の削減も期待できます。タッチプローブの原理引用元:NKワークス株式会社 工作機械用 タッチプローブタッチプローブは、本体から出ている棒部分「スタイラス」の先端をワークやテーブルに接触させることで、精度の高い信号を出力し、数値制御装置(NC)やPC装置に伝達します。タッチプローブは通常、自動工具交換装置(ATC)に格納されており、計測の際に使用します。参考:自動工具交換装置(ATC)とは?ATCの種類と構造引用元:はじめの工作機械 タッチプローブとは|ワーク計測用タッチプローブの種類と原理伝達方式としては、有線方式のほかに、ワイヤレスで伝達する、赤外線方式・無線方式・誘電方式があります。赤外線方式は、赤外線を用いて測定信号を受信器に送る仕組みで、タッチプローブの通信方法のなかでもオーソドックスなタイプです。反射によりアクセスしにくい位置でも信号を受信しやすい特徴があります。無線方式は、無線通信を用いて測定信号を受信機に発信します。無線通信は2.4GHzのISM帯(商用周波数帯)を使用しており、通信範囲が広く、複雑な動きの5軸加工機でも安定した通信が可能です。誘電方式は、誘導コイルを用いて測定信号を受信機に発信します。誘電方式は、タッチプローブ本体と受信機を至近距離まで近づける必要があるので、レイアウトが限定されます。しかし、受信機からプローブへ電力供給するため、プローブ本体の電源が不要というメリットがあります。タッチプローブの種類タッチプローブは、マシニングセンタ以外にも、さまざまな工作機械に採用されています。タッチプローブは、モデルによって適した工作機械が異なります。研削盤用タッチプローブ引用元:株式会社メトロール CNC工作機械用 有線式 小型タッチプローブ[K3Sシリーズ]研削盤用タッチプローブは、研削盤で用いるタッチプローブです。円筒研削盤の砥石の摩耗検出や、NC平面研削盤のワーク高さ計測にも使われます。研削盤や旋盤などの手動で工具交換を行う工作機械は、ケーブル通信式のタッチプローブが採用されています。参考:研削盤とは?研削盤と研削加工の種類や切削加工との違いNC旋盤用タッチプローブ引用元:RENISHAW OLP40 旋盤用タッチプローブNC旋盤用タッチプローブは、NC旋盤に搭載されるタッチプローブです。主にワークの内径、外径、端面計測を行います。タレット(旋回する刃物台)に取り付けるため、ワイヤレス式のタッチプローブが主流です。ロボット用タッチプローブ引用元:株式会社メトロール CNCロボット用 有線式タッチプローブ[K3Mシリーズ]ロボット用タッチプローブは、ロボットアームや溶接ロボットで使われているタッチプローブです。主にワークの寸法計測、芯出し、位置決めを行います。簡易型タッチプローブ簡易型タッチプローブは、主に汎用工作機械で用いたり、ワークの段取り補助として使われたりする、アナログ式のタッチプローブを指します。種類としては、ダイヤルゲージで数値を読み取るものや、LEDで接触を知らせるものなどがあります。

  • クランプとは?種類と特徴を解説

    今回はクランプの種類とそれぞれの特徴について解説します。クランプは作業工具の一種で、接着剤の使用時に部材を手の代わりに押さえつけたり、加工時に部材が動かないようにするためのものです。一口にクランプといっても種類が豊富にあり、用途によって使用するものが異なります。ここではクランプにどのような種類があるのかを見てみましょう。クランプとはクランプとは、対象物を挟んで任意の状態に固定するための工具のことを指します。クランプは工場作業・機械工作・木工作業・DIYなどで行う、切断・研磨・穴あけ・組立・材料の接着などといったシーンで使われています。しっかりと固定した状態で作業を行う際は、1箇所だけ固定していると、対象物がズレたり、クランプが緩んだりしてしまうため、複数個のクランプで固定して作業を行います。クランプは強い力で固定するため、対象物が柔らかい材料の場合、キズや凹みができてしまいます。キズや凹みを避けたい場合は、クランプの口金が樹脂のものを使用する、当て木などを用意して保護するといいでしょう。クランプの種類と特徴C型クランプ引用元:Amazon CAMVATE C形クランプ サポート 卓マウント ネジ穴12点×1/4&3/8 RED適用C型クランプは、アルファベットのCのような形をしたクランプです。別名「シャコ万力」・「G型クランプ」・「B型クランプ」とも呼ばれています。C型クランプは、金属のくわえ部分とねじにより、強力に締め付けられるのが特徴です。ただし口幅の調整は、ねじの回転にて行うため、調整に時間がかかります。対象物が大きいものだと、クランプ本体のサイズも大きくなるので、最小限のスペースに抑えたい場合は適切なサイズを選ぶ必要があります。F型クランプ引用元:エスコ オンラインショップ  300mm F型クランプF型クランプは別名「L型クランプ」とも呼ばれるもので、アルファベットのFのような形をしたクランプです。くわえ部分をスライドさせ、ハンドルのねじを締め込むことで対象物を固定します。締め付け力はC型クランプに比べて乏しいものの、対象物の厚みに口幅を合わせやすいことから作業性に優れています。クイックバークランプ引用元:エスコ 0-450mm/ 92mm クイックバークランプクイックバークランプは、バーの口幅をスライドさせての調節が可能で、ハンドルを握ることで口が閉じて対象物を固定できます。製品によっては、口の部分を取り外して反対に取り付けることで、挟むのではなく押し広げるようにして固定できるものもあります。クイックバークランプは、ハンドルの操作だけで締め付けが可能なため、片手で作業できる手軽さが魅力です。もう片方の手は空いた状態になるので、作業性に優れており、初心者の方でも扱いやすいタイプです。スプリングクランプ引用元:AXEL 61-2431-42 スプリングクランプXV型 開き100mm XV5-100スプリングクランプは、別名「バネクランプ」とも呼ばれるもので、サイズの大きな洗濯バサミのような形状のクランプです。他の種類に比べて開く口幅が狭く、薄いもの同士を固定するのに適しています。また、対象物をキズ付けにくく、手軽に固定できるのが魅力です。ただし固定力は乏しいため、大きな負荷がかかる作業だと、固定したものがズレてしまう場合があります。コーナークランプ引用元:オフの店Web Shop 90° コーナークランプコーナークランプは、対象物の角を垂直に固定するクランプです。コーナークランプの上に固定するものを置いて、ねじを締め付けて固定します。額縁などのような直角なものの組立を行うのに適したタイプです。ベルトクランプ引用元:オフの店Web Shop フレームベルトクランプベルトクランプは、繊維のベルトにコーナーのパーツを搭載したクランプで、4つのコーナーを同時に外側から締め付けられます。4つのコーナーパーツに四角に組んだ材料を当てて、ベルトの長さを調節して固定します。ベルトの長さ分だけ調節ができるので、さまざまなサイズのものを固定できます。三方締めクランプ引用元:amazon WORKPRO 三方締めクランプ W032053AJ DIY用品・大工道具三方締めクランプは、上下と横方向1箇所の計三方向からの締め付けを行うクランプです。上図のように、ベースとなる材料を上下から挟み、もうひとつの材料を横方向から押さえることで固定します。2枚の板を挟む際に、横方向からのねじで端を揃えることもできます。三方締めクランプは使える用途が幅広く、しっかりと固定できる点が魅力です。ハタガネ引用元:モノタロウ 角利 真鍮ハタガネハタガネは、金属の角棒に小さなツメとねじを搭載したクランプで、F型クランプと構造が似ています。用途は、木工作業での接着時の固定や、同じ位置に印を付ける場合などです。押さえつけるツメが小さく、ひとつの箇所に力が偏らないためにも、基本的に2本1組で使います。額縁のような四方から締め付けを行う場合は、ハタガネを4本使って固定します。バイス引用元:株式会社ナベヤ 精密小型ボール盤バイス(ヤンキーバイス)バイスは、別名「万力」とも呼ばれるもので、口金に対象物を挟み、ハンドルを回すことで固定するタイプです。対象物を強く締め付けて固定できるので、負荷のかかる金属加工の切削や研磨などに多く使われています。参考:バイス(万力)種類・材質・用途パイプクランプ引用元:コメリドットコム K+ BUILD コメリ 46.6パイ 直交クランプパイプクランプは、主に単管パイプ(直径48.6mmの鋼管)と支柱を繋ぎとめるためのクランプです。主に建築現場の足場や棚、小屋の設置にて採用されています。パイプクランプは、主に「直交クランプ」と「自在クランプ」があります。直交クランプは、直交する単管パイプの固定に使うもので、2つの金具の向きが固定されたタイプです。自在クランプは、2つの金具の向きが自在に動くタイプで、交差する2本の単管パイプを任意の角度で固定できます。参考:【パイプ固定金具】種類と用途をカテゴリー別に紹介トグルクランプ引用元:Imao 横型トグルクランプトグルクランプは、てこの原理とトグル機構を利用したクランプで、予め固定された部材にトグルクランプを固定しておき、ハンドルを操作することで対象物を押さえつけて固定するタイプです。トグルクランプは、押さえの方向に対してハンドル方向が縦や横のものがあり、用途に応じて使い分けます。また、締結力や取付ベースもモデルによってさまざまなタイプがあります。

  • ガンドリル加工とは?特徴や適した材質を解説

    小さく深い止まり穴や細く長い貫通穴をあけるガンドリル加工と呼ばれる加工法があります。元は銃の穴をあけるために開発された方法ですが、他の穴あけ加工ではあけることができない深い穴を精度良くあけることができるため、近年多様な用途に採用されています。また、ガンドリル加工は、他の穴あけ加工に比べて、切り屑の排出性が良く、加工面も滑らかで、高速に深穴をあけることができるという利点があります。マシニングセンタなどの汎用性の高い工作機械でも、工具を用意すれば実施することができるため、通常の穴あけ加工の代わりに採用するケースも増えています。この記事では、ガンドリル加工の詳細や特徴、加工可能な材質、類似した加工法であるBTA加工との違いについて解説していきます。ガンドリル加工とはガンドリル加工とは、ガンドリルと呼ばれる小径・深穴加工用のドリルを用いた穴あけ加工のことです。小径の深い穴を高精度かつ高速度であけることができる加工法です。ガンドリルは、主にガンドリルマシンと呼ばれる専用の加工機に装着して用いられますが、最近はマシニングセンタなどに装着して使用できるものもあります。ガンドリルの名称の通り、元々は、ピストルやライフルといった銃の銃身の穴をあけるための加工法でした。しかし、現代では、高い精度が求められるシリンダーやシャフト、スピンドルといった機械部品などの加工にも採用されています。深穴は、JIS規格(JIS B 0106:2016)にて、長さと直径の比が4倍以上の穴と定義されています。しかし、近年、一般的なドリルでも比較的高い精度の深穴加工が可能となっていることから、穴の長さと直径の比が10倍以上の穴あけ加工を深穴加工とすることも多くなっています。ガンドリル加工は、深穴加工の中でも、穴径が1mmから30mm程度までの小径穴が対象です。加工可能な深さは、一般的に穴径の50倍から100倍程度までとなっています。なお、穴径が30mm以上の深穴はBTA(Boring & Trepanning Association)加工、穴径が1mm以下の深穴は微細深穴加工と呼ばれる加工法が採用されます。参考:マシニングセンタの基礎知識と導入メリットを解説ガンドリルの構造引用元:Q&A・技術情報「小径・深穴ガンドリルマシン「ガンフィーダ」についてのQ&A」株式会社スギノマシンガンドリルは、上図に見られるように、超硬刃部とシャンク、ドライバという3つの部位から構成されます。先端に切れ刃のある超硬刃部、続いてドリルの柄となるシャンク、後端にシャンクを保持して加工機と接続するドライバがあります。そして、ガンドリルの内部には切削油の流路、先端には切削油を噴射する油穴があり、超硬刃部とシャンクの側面には切り屑を排出するV字溝が刻まれています。ガンドリルは、先端の油穴から切削油を高圧噴射しながら高速回転することで、切り屑をV字溝を通して外部へ排出しながら穴を削り出します。参考:穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明!ガンドリルマシンの構造引用元:加工について「ガンドリル加工とBTA加工の違い」株式会社不二新製作所ガンドリルマシンは、大まかに、横向きに取り付けられたガンドリル、ガンドリルを高速回転させる駆動装置、ドリルブッシュ、切削油(クーラント)の循環機構から構成されます(上図参照)。ガンドリルマシンでは、ドリルブッシュは、ガンドリルをガイドして中心軸を安定させ、ガンドリルが加工穴の中心軸からずれることを防止します。切削油は、ポンプの働きによってガンドリルの先端から噴射され、切り屑と一緒に回収されてタンクに溜め置かれ、浄化されて再利用されます。これらの機構によって、ガンドリルマシンは、高精度かつ高速度な深穴加工を実現しています。参考:切削油(クーラント液)の種類、成分、メリット・デメリットマシニングセンタ用ガンドリル最近では、マシニングセンタ用のガンドリルとして、マシニングセンタのほか、NC旋盤やタレット旋盤、ボール盤などでも使用できるガンドリルを入手できるようになっています。ただし、マシニングセンタ用ガンドリルと言っても、その構造自体に異なる点はなく、先端から切削油を噴射しながら深穴を削り出す工具であることに違いはありません。しかし、ガンドリルマシンに存在するドリルブッシュがないため、深穴加工の際には、その代替として予めワークにガイド穴をあけておく必要があります。また、ガンドリルマシンを用いた場合ほどの精度は出ないため、加工可能な穴深さも小さくなっています。参考:ボール盤とは?構造、種類、フライス盤との違いガンドリル加工の用途ガンドリル加工は、自動車・家電などの薄型化・軽量化が進展し、電気機器・電子機器などの高精度化が強く求められるようになったことから、様々な分野の幅広い用途で採用されるようになっています。ガンドリル加工の用途例としては、例えば、以下が挙げられます。・食品…液体充填機、冷却器部品、酪農用搾乳機、食品製造機械部品・輸送機器…自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品・機械…スピンドル、シャフト、シリンダー、噴射機のノズル、油圧機器部品、減速機部品・電気…電機・電子機器部品、半導体関連熱版、液晶製造装置部品・建築…重機部品・金属加工…各種金型ガンドリル加工の特徴ガンドリル加工は、上述したように、一般的なドリル加工と様々な点で異なります。ここでは、ガンドリル加工の特徴について解説します。小径穴の深穴加工に特化しているガンドリル加工は、小径穴の深穴加工に特化した加工法です。対応している穴径は、メーカーによって異なりますが、1mm~32mmが標準的です。つまり、ガンドリルの刃径は、だいたい、この範囲内となっています。深い止まり穴や長い貫通穴をあけることが可能ガンドリル加工は、通常のドリルでは穴あけが不可能な、深い止まり穴や長い貫通穴をあけることができる加工法です。加工可能な深さはガンドリルによって違い、マシニングセンタ用ガンドリルよりも、ガンドリルマシン用ガンドリルの方が加工可能な深さの大きいものが揃っています。また、ガンドリルは、刃径が大きいものほど、加工可能な穴の深さも大きい傾向があります。下表は、マシニングセンタ用とガンドリルマシン用の既製品として入手できるガンドリルのサイズデータです。ただし、特注のガンドリル製作を受け付けているメーカーもあるので、ガンドリルが下表に記載されているサイズに限られているわけではありません。マシニングセンタ用刃径最大加工深さ加工深さ/刃径2804041604062404082803512410351442030184803024480203060020ガンドリルマシン用刃径最大加工深さ加工深さ/刃径130030023501753450150455013761000166815001871215001252417007032170053切り屑の排出性に優れるガンドリル加工は、切り屑の排出性が高いという特徴があります。深穴加工は、通常のドリルを単に長くしたツイストロングドリルでもできないわけではありません。しかし、ツイストロングドリルでは、切り屑はドリルのねじれ溝を通ってのみ排出されるため、排出効率が低くなっています。また、切削油も外部から供給するのみで、ドリルの先端に浸透しにくく、切り屑排出にもほとんど役立ちません。そのため、ツイストロングドリルで深穴をあける場合は、ドリルの送りを進行させては後退させるステップフィードで、後退させる度に切り屑を排出して、切り屑の詰まりを防ぐ必要があります。一方、ガンドリル加工では、切り屑は、ドリルの先端から高圧噴射される切削油と一緒に、ドリルのV字溝を通って流れ出ていきます。そのため、ガンドリル加工は、切り屑の詰まりや切り屑と加工面の干渉などが非常に少ない加工法となっています。また、切削油の循環性が高いことから、切削温度の上昇や工具摩耗の抑制効果も期待することができます。高精度の深穴加工が可能ガンドリル加工は、曲がりが小さく、高精度の深穴をあけることができる加工法です。加工穴の芯ズレの精度は、加工機・工具・加工条件・加工材料などによりますが、100mmの長さで0.1mm以下、ガンドリルマシンを用いれば100mmの長さで0.01mm以下を実現することも可能です。穴径の精度も高く、径公差は、下表のような許容誤差となるH7~H9程度となっています。穴径 (mm)公差等級 (μm)H7H8H93以下1014253~61218306~1015223610~1818274318~30213352穴の表面粗さが良好ガンドリル加工は、ツイストドリルによる穴あけ加工に比べ、表面粗さが良好な穴を成形することができます。ガンドリルは、超硬刃部の側面に滑らかな表面を持つガイドパッドを備えています。ガイドパッドは、ガンドリル加工の穴あけ加工中、穴内面に押し当てられて塑性変形と加工硬化を起こし、穴内面を滑らかに仕上げます。これをバニシング効果と呼びますが、この効果によって、穴内面の強度が向上するとともに、面粗度が良くなります。その面粗度は、通常の穴あけ加工の仕上げに用いられるリーマと同等以上のRa0.2~Ra3.2(0.2μm~3.2μm)程度です。なお、Raは、算術平均粗さと呼ばれる表面にある凹凸の高さの平均値で、小さいほど表面は滑らかとなります。ちなみに、リーマはRa0.8~Ra3.2程度、ツイストドリルはRa3.2~Ra12.5程度となっています。高速な深穴加工が可能ガンドリル加工は、上述したようにステップフィードすることなく、一度の送りだけで加工できるため、通常のドリルで深穴加工を行う場合に比べて、およそ3倍~5倍の速度で深穴加工を行うことが可能です。ただし、ガンドリルマシンではなく、マシニングセンタなどでガンドリル加工を行う場合は、深穴加工の前にガイド穴の穴あけ加工が必要であるため、その分の時間が掛かります。工具の再研削が可能ガンドリルは、再研磨が可能です。メーカーが再研磨を受け付けているので、切れ味が悪くなったり、加工回数が多くなったりしたら再研磨を依頼しましょう。また、ガンドリル専用の研磨機や汎用の研磨機に取り付けられるガンドリルの再研磨用アタッチメントを販売しているメーカーがあります。ガンドリルの使用回数が多く、ランニングコストが高くなっている場合は、再研磨機器の導入を検討してみると良いでしょう。ガンドリル加工に適した材質ガンドリル加工は、様々な材質の加工に対応しています。炭素鋼やステンレス鋼などの鉄鋼をはじめ、アルミや銅などの非鉄金属、耐熱鋼であるチタンやインコネルなどの難削材、焼入れした後の材料も加工可能です。その高い精度から、樹脂に対する深穴加工の引き合いも多くなっています。下表は、いくつかのガンドリルのメーカーサイトにて、対応可能な材質として記載されているものを纏めたものです。材質の分類材質名炭素鋼一般構造用圧延鋼材SS400低炭素鋼S10C~S28C中炭素鋼S30C~S55C高炭素鋼S55C~S75C合金鋼クロムモリブデン鋼SCM415, SCM420, SCM435, SCM440ニッケルクロムモリブデン鋼SNCM240, SNCM439クロム鋼SCr440軸受鋼高炭素クロム軸受鋼SUJ2工具鋼冷間ダイス鋼SKD11熱間ダイス鋼SKD62高速度工具鋼(ハイス鋼)モリブデン系SKH51ステンレス鋼マルテンサイト系SUS416, SUS420J2フェライト系SUS405, SUS430オーステナイト系SUS304, SUS316, SUS316L, SUS321, SUS630鋳鉄ねずみ鋳鉄FC250ダクタイル鋳鉄FCD400アルミ合金鍛造用A2017, A2024, A5052, A5056, A6061, A7075鋳物用AC2B, AC4C耐熱鋼チタン純チタン, チタン合金インコネルインコネル600ハステロイハステロイC276 銅純銅C1020 (無酸素銅), C1100 (タフピッチ銅)黄銅C2801プラスチックアクリル, 塩ビ, PEEK樹脂, エポキシ樹脂, ポリカーボネート, MCナイロン, PTFE, POMBTA加工との違いガンドリル加工とBTA加工は共に深穴加工の加工法ですが、小径の深穴加工はガンドリル加工、中・大径の深穴加工はBTA加工が適用されるのが標準的です。ガンドリル加工は穴径が1mm~30mmの場合、BTA加工は穴径が30mm以上の場合に採用されますが、特に決まっているわけではなく、メーカーによっては穴径50mmの深穴加工に対応したガンドリルやガンドリルマシンを販売しています。ガンドリル加工とBTA加工は、工具と加工機も異なります。BTA加工では、ボーリングバーと呼ばれる中空の工具とその先端に付いた刃物であるボーリングヘッド、専用の加工機であるBTAマシンを使用します。ボーリングバーが中空なのは、ガンドリル同様、切削油を流すためです。しかし、ボーリングバーは、ガンドリルとは逆に、先端のボーリングヘッドから切削油と一緒に切り屑を回収します。ガンドリルマシンとBTAマシンは類似した構造を持つ加工機ですが、BTAマシンは、切削油の循環がガンドリルマシンとは逆向きであり、オイルプレッシャーヘッドと呼ばれるガンドリルマシンにない装置を搭載しています(下図参照)。BTAマシンでは、切削油を穴あけ途中の穴とボーリングバーの隙間から高圧を掛けて注入し、ボーリングバーの先端のボーリングヘッドから切り屑と一緒に回収して循環させます。その切削油に圧力を掛ける装置がオイルプレッシャーヘッドです。引用元:BTA加工「BTA加工とは」日本高速削孔株式会社

  • 測定工具(測定機器)とは?種類と特徴を解説

    今回は測定工具・測定機器の主な種類と特徴について解説します。測定工具(測定機器)とは、対象物の寸法や重さなどの量を測るためのものです。金属加工の現場では、加工した製品が正しい形状や寸法で作られているかを検査するのに使用したり、加工中の材料が正確な位置にセットされているかをチェックしたりするのに利用されています。測定工具、測定機器とは測定工具、または測定機器とは、対象物の寸法や重さなどの量を、数値や符号を用いて表すもののことを指します。測定工具は、主に作業者が手に持って測るもののことを指します。ただし測定工具(測定機器)は、使用しているうちに数値のバラツキが大きくなり、正しく測定できなくなってしまいます。測定した数値が正しいものであることを証明するには、定期的に校正を行う必要があります。校正とは、標準器を用いて、測定機器で表示される数値と真の値の関係を求めることです。ただし校正は決まった周期が定められておらず、使用している企業ごとに周期が異なります。測定工具、測定機器の種類一覧ノギス引用元:Mitutoyo ABSデジマチックキャリパ CD-AXノギスは、寸法を測るためのもので、金属加工の現場で頻繁に使われている工具です。別名「キャリパ」とも呼ばれています。ノギスの先端部にあるジョウ(ツメ)を、測定したい場所にあてがうことで、寸法を測定できます。また、ジョウとは反対側にあるデプスバーを使えば、深さを測定することも可能です。寸法の表示形式は、主にデジタル式とアナログ式の2種類があります。デジタル式は上図のように、寸法が一目で確認できるため、誰でも扱いやすい特徴があります。一方で、アナログ式は寸法を読み取るのに慣れが必要ではあるものの、電池の残量を気にせず使える点が魅力です。これらは、使用している現場によって好みが分かれます。参考:ノギスの種類、構造と名称、精度マイクロメータ引用元:Mitutoyo 標準外側マイクロメータ M110マイクロメータは、ノギスと同様に寸法を測定するための工具です。アンビルおよびスピンドルと呼ばれる棒の測定面に対象物を挟んで寸法を測定します。測定面の幅の操作は、持ち手の部分にあるシンブルやラチェットストップを回転させて調節できます。上図の製品は、標準外側マイクロメータと呼ばれるもので、最も一般的なタイプです。測定したい箇所によっては、上図とは異なる形状のモデルを使用します。また、寸法の表示形式については、ノギスと同様にデジタル式とアナログ式の2種類があります。参考:マイクロメータの種類、構造と名称、精度ダイヤルゲージ引用元:Mitutoyo 標準形ダイヤルゲージ A (目量0.01 mm・測定範囲5 mm、バランス目盛)ダイヤルゲージは、寸法の変化や平行度、同軸度、同芯度などを測定するための工具です。単独では使用せず、スタンドなどに固定して対象物との位置関係を測ります。ダイヤルゲージは大きく分けて、スピンドル式とてこ式の2種類があります。スピンドル式は、先端にあるスピンドルを対象物に接触させて、上下した分の値を読み取るタイプで、旋盤やフライス盤などの金属加工において使われることが多いです。てこ式は、てこの原理を利用したタイプで、先端のスピンドルが動いた角度分の寸法変化を表示します。てこ式はスピンドル式に比べて分解能が高く、回転軸の振れや工作機械の精度検査のような、高い精度が求められる場面で利用されています。ピンゲージ引用元:株式会社アイゼン  ピンゲージ使用例ピンゲージは、精密な寸法に仕上げられた丸棒状の測定工具です。ピンゲージが加工穴にしっくりはまる直径であれば合格、といったような使い方が代表的で、その他にも傾斜角や穴ピッチの測定などにも採用されています。ピンゲージの材質は、鋼・超硬合金・セラミックスがあります。鋼は標準的なタイプなのに対し、超硬合金は耐久性に優れています。セラミックスは熱膨張に強くてサビないのがメリットです。形状は温度変化の影響を抑えるためにシャンク型を採用したタイプもあります。リングゲージ引用元:新潟精機株式会社 リングゲージリングゲージは、内径が精密な寸法に仕上げられたリング状の測定工具です。旋盤加工されたバー材などをリングゲージにはめ込んで検査を行うもので、ピンゲージとは逆の使い方になります。材質は鋼・超硬合金・セラミックスがあります。限界栓ゲージ引用元:新潟精機株式会社 測定・計測技術 限界栓ゲージ(限界プラグゲージ)限界栓ゲージは、穴の許容差の最小寸法である「通り」と、最大寸法である「止り」を備えた測定工具です。主に加工穴に差し込んで、通り側が通り、止り側が入らなければ合格、といった使い方をします。限界栓ゲージを用いた測定は、作業者によるバラツキがなく、公差の厳しい内径検査にて利用されています。ブロックゲージ引用元:新潟精機株式会社 測定・計測技術 ブロックゲージブロックゲージは、精密な寸法に仕上げられたブロック状の測定工具です。平行度も高く、マイクロメータなどの測定工具の校正にも利用されています。また、複数個のブロックゲージを組み合わせて、あらゆる寸法を作ることもできます。材質は鋼とセラミックスが代表的ですが、昨今ではサビの心配がないセラミックスが多く採用されています。すきまゲージ(シックネスゲージ)引用元:ミツワ株式会社 商品案内すきまゲージ(シックネスゲージ)は、名前の通りすきまを測定するための工具です。他の測定工具に比べて、微細な二平面の間隔を正確に測定できます。すきまゲージは厚みの異なる複数の板(リーフ)が1組になっていて、それぞれを二平面間に差し込むことで測定します。ハイトゲージ引用元:Mitutoyo デジマチックハイトゲージ HDS-Cハイトゲージは、基準面である定盤に設置して、部品などの高さを測る工具です。本尺(目盛り)を垂直になるように配置して、スクライバ(測定面)を上下させて高さを測定します。身長測定のように対象物を抑えるようにして測定したり、対象物にケガキを入れて測定したりといった使い方があり、数値を正しく読み取るには真正面からハイトゲージを目視する必要があります。数値の表示形式はデジタル式とアナログ式があります。水準器引用元:株式会社F.S.K 水準器の仕組み水準器は、別名「水平器」とも呼ばれるもので、地面に対して、対象物が水平に配置されているかを測るための工具です。水準器には、円筒のガラス容器の中にアルコールなどの液体と気泡が入っていて、気泡が変位した位置を見て、水平や傾斜を測定します。本体がマグネット付きで対象物に貼り付けて使うものや、表示形式がデジタル式のものなど、用途によってさまざまな種類や形状があります。水準器にV溝が付いたものは、パイプなどの円筒状のものの上に載せて測定することも可能です。角型水準器は、底面・上面・両側面の4面を測定面としたタイプで、平面や丸物の垂直を測定するために使用されます。平型水準器は、底面を測定面とし、平面や丸物の水平出しや、傾斜の測定に使用されています。粗さ計引用元:ティディエス株式会社 設備紹介 表面粗さ形状測定機粗さ計は、対象物の加工面の粗さを測定するための機器です。測定結果から得られた粗さ曲線をもとに、加工面の粗さを評価します。粗さ計は、触針にて測定する「接触式」と、レーザーなどを用いて測定する「非接触式」があります。多く採用されているのは接触式のタイプで、上図のように検出機と演算機が別々になった大型のモデルや、手軽に測定できるハンディタイプのモデルがあります。投影機引用元:Mitutoyo 測定投影機 PJ-H30投影機は、対象物を台に載せて下から光を当てることで、対象物の輪郭をスクリーンに拡大投影する測定機器です。投影された像は、正確な倍率で拡大されており、拡大した像の寸法を測ることで、実際のものの寸法を知ることができます。投影機を用いた測定は、対象物を非接触での測定が可能なほか、形状の小さなものや、複雑なものも測定できます。また、顕微鏡とは異なり、接眼レンズを除く必要がないので、複数人で観察できる点もメリットです。三次元測定機(CMM)引用元:Mitutoyo CNC三次元測定機 CRYSTA-Apex V1200シリーズ三次元測定機(Coordinate Measuring Machine:CMM)は、主にステージ上に配置した対象物に接触子を当てて、縦・横・高さから三次元の座標を取得し、高精度で寸法や位置関係、輪郭形状などを測定できる機器です。機器の形状は門型が一般的で、金型や機械部品の三次元測定や、測定したもののデータを3Dプリンターに利用するなどといった用途で利用されています。三次元測定機のメリットは、他の測定工具などでは困難な測定に対応できる点にあります。例えば、仮想点から特定の位置までの距離を測る場合、ノギスやマイクロメータでは正しく測定できません。しかし三次元測定器なら高い精度での測定が可能です。画像測定機引用元:Mitutoyo QV APEX 302/404/606 Pro画像測定機は、画像を用いて対象物の形状を測定する、非接触式の測定機器です。ステージ上に対象物をセットして画像を読み取り、エッジを検出して測定を行います。画像測定機は、主に精度が求められる製品の測定や、良否判定を行うのに利用されています。また、測定したデータをCADに流用することも可能です。モデルによっては、XY軸だけでなく、高さ方向のZ軸を測定できるものもあります。参考:CADとは?製造業界で使われている2DCAD・3DCADの種類も紹介レーザートラッカー引用元:TTS レーザートラッカーってどんな測定機?レーザートラッカーは、対象物に接触させたリフレクターにレーザー光を照射し、リフレクターから反射されたレーザー光が発光源に戻ることで、リフレクターの三次元座標を測定できる機器です。読み取られた三次元座標は、演算ソフトに転送されて、寸法や角度などが算出されます。レーザートラッカーは三次元測定機に比べて、大きな対象物の測定が可能です。例えば一般的に門型三次元測定器は数mの測定範囲なのに対して、レーザートラッカーは10mを超える対象物でも測定できます。そのため、大型設備により加工された切削品のような、大型サイズの対象物を測定する場合に利用されています。

  • 金型の構造と動作を詳しく解説

    今回は、プラスチックの製造にて使われる、射出成形用の金型の構造と動作について解説します。射出成形は、プラスチックなどの合成樹脂を加工するための方式で、金型に溶かした樹脂を流し込み、そのあとに冷却して固めたものを製品として利用します。ここでの金型とは、材料の塑性変形や流動性を利用して成形するための金属製の型を指しています。金型は射出成形以外にも、プレス・鍛造・鋳造などで利用されており、製造現場では欠かせないものとして活用されています。参考:【金型製作】金型の種類と基礎や流れについて徹底解説!!参考:射出成形の仕組みやメリットを解説!他の加工法との比較も金型の構造金型は、代表的なものに「2プレート」と「3プレート」のタイプがあります。ここではそれぞれの構造について解説します。2プレートの金型の構造引用元:MONOist 金型の作りや動きって、一体どうなってるの?2プレートの金型は、成形する上で重要となる「固定側型板」と「可動側型板」の2つのプレートにより樹脂を成形するタイプです。金型の構造は、大きく分けて「固定側」と「可動側」の2つがあります。上図では黄色の部分が固定側、水色の部分が可動側を表しており、樹脂はまだ流し込まれていない状態です。固定側は、射出成形機に固定される部分で、可動側は金型を開閉したときに可動する部分です。上図に樹脂を流し込むと、固定側と可動側のすき間に充填されて目的の製品が成形される仕組みです。次に金型を構成している各部品について見てみましょう。●固定側取付板:固定側型板をセットして、成型機の固定盤に取り付けるための板。●固定側型板(固定側主板):成形品の形を作るための板で、金型の主要となる部分。「雄型」や「キャビティプレート」とも呼ばれる。●可動側型板(可動側主板):固定側型板の対になる板で、同じく金型の主要となる部分。「雌型」や「コアプレート」とも呼ばれる。●スペーサーブロック:突出板が突出し動作できる空間を作るための部品。●突出板(エジェクタプレート):成形機のエジェクタ装置で突き上げて、成形品を取り出すための板。基本的に上板と下板の2枚構成で、上板にエジェクタピンやリターンピンなどをセットし、下板でこれらを押さえつけて固定します。●可動側取付板:可動側型板やスペーサーブロックなどをセットして、成形機の可動板に取り付けるための板。●ガイドピン:金型の開閉時に、固定側と可動側の位置合わせをするためのピンです。●ガイドブッシュ:ガイドピンがはまり合うブッシュ。●リターンピン:突き出した突出板を元の位置に戻し、突出しのバランスを保つためのピン。金型を閉じる際、固定側型板を押し当てることで、突出板が元の位置に戻ります。上記のような金型の外周部を構成する部品を、モールドベースと呼びます。モールドベースはメーカーから規格化されたものが販売されており、これらを利用することで短納期化や低コスト化が可能になります。そのため、金型を設計する際は、なるべく販売されているモールドベースを利用するのが理想的です。また、2プレートの金型には、上図右に記載されている以下の部品も備わっています。●ロケートリング:金型を成形機へ取り付ける際に、位置決めをするためのリング。●スプルーブッシュ:金型に材料である樹脂を流し込むための通り道。成形機のノズルと接触する部分で摩耗が激しいことから、直接金型には加工せず、交換可能な構造になっています。●突き出しピン(エジェクタピン):成形品を金型から突き出すためのピン。2プレートの金型はこれらの部品から構成されていますが、上記でご紹介したものは基本的な部品欄で、これら以外のものを搭載している場合もあります。3プレートの金型の構造引用元:製品設計知識 スプルー/sprue3プレートの金型は、2プレートの金型に搭載している固定側型板と可動側型板の2枚に加えて、「ランナーストリッパープレート」の計3枚の主要プレートから構成されているタイプです。3プレートの金型は、成形品の不要な部分であるスプルーやランナーを自動で切り離して製品を取り出せます。また、樹脂の注入口を複数設けやすく、1つの金型で複数の成形品を作りやすい特徴があります。金型の動作続いて2プレートと3プレート金型の動作について見てみましょう。2プレートの金型の動作2プレート金型の動作の参考として、以下の動画を添付します。引用元:Paulson Training Programs, Inc. NEW - Lesson 2-HD - Injection Molds - Their Parts and Operation-The Technology of Injection Molding2プレートの金型を使った樹脂成形では、始めに樹脂を成形機から射出し、金型内へ充填させます。次に充填された樹脂を固化させるために冷却。最後に固化された樹脂は金型を抜型したあとにエジェクタピンにて押し出されます。3プレートの金型の動作3プレート金型の動作の参考として、以下の動画を添付します。引用元:SOSITAR MOULD Hot runner mold vs cold runner mold ( two plate mold vs three plate mold)動画では2プレートと3プレート金型の比較がされています。3プレートの金型は動画を見ると分かるように、金型を抜型した際、成形品のスプルーとランナーが自動的にカットされる仕組みです。

  • カウンターシンクとは?種類ごとの特徴や面取りカッターとの違い

    今回はカウンターシンクの種類ごとの特徴や面取りカッターとの違いについて解説します。カウンターシンクは、主に穴加工のあとに面取りやバリ取りを行うための刃物のことを指します。比較的安価で入手できるので、穴の面取りをする際に頻繁に使われています。カウンターシンクとは引用元:大洋ツール株式会社 超硬3枚刃カウンターシンクカウンターシンクとは、面取りやバリ取りをするための刃物のことを指します。面取りは加工物の角でケガをしたり、ものが破損するのを防ぐ目的で行います。カウンターシンクはキノコのような形状が特徴的で、ツイストドリルなどで穴加工をした後のエッジのカエリやバリを取り除いたり、面取りをしたりする目的でカウンターシンクを用います。カウンターシンクの材質は、超硬のものもありますが、主にハイスが採用されています。コストが比較的安く済むので、ちょっとした面取りをするのにカウンターシンクが使われています。製品によってはハイスにチタンコーティングなどを施しており、耐摩耗性を向上しています。面取りできる刃物にはリーディングドリルもありますが、リーディングドリルは面取りに限らず、穴加工の際の位置決めに使用する刃物で、カウンターシンクとは異なる性質を持ちます。参考:リーディングドリルとは?用途、種類、切削条件カウンターシンクの種類と特徴カウンターシンクは製品によって、先端角の角度が60°・90°・120°などと異なります。基本的な皿モミ加工やバリ取り、面取りを行うのであれば、先端角90°のものが最適です。より大きな角度で面取りをしたい場合に先端角120°のものを用いるなど、目的によって使い分けます。製品によっては刃の分割数が不等分割されたものもあります。このタイプは切削抵抗を軽減し、ビビリが少ないことから、面取り精度の向上が期待できます。次にカウンターシンクの種類とそれぞれの特徴について見てみましょう。ロングシャンクタイプ引用元:株式会社ライノス 製品詳細 【HSSカウンターシンク】3枚刃 ロングシャンク 90°《No.19092》ロングシャンクタイプは、シャンクが長いカウンターシンクです。シャンクが長いことで、深さのあるワークに対しても加工がしやすいほか、工具とワークが干渉しにくい特徴があります。TiNコーティングタイプ引用元:株式会社丸藤TiNコーティングタイプは、チタンコーティングを施したカウンターシンクです。TiNコーティングはドリルやカッターなどの切削工具に多く採用されており、安定した膜質と耐摩耗性が得られます。TiNコーティングされた切削工具は、外観が黄金色になっているのが特徴です。Vコーティングタイプ引用元:MiSUMi-VONA V-UCS 穴面取り カウンタ-シンク VコーティングVコーティングタイプは、TiN層にTiCN層(炭窒化チタン)を被膜させた複層構造のカウンターシンクです。TiNコーティングに比べてコストが高いものの、より高い硬度が得られるため、工具の長寿命化が期待できます。VコーティングタイプはTiNコーティングの黄金色と違い、外観が茶色やグレー色になっています。穴あきタイプ引用元:株式会社ライノス 製品詳細 【HSSカウンターシンク】穴あきカウンターシンク 60°《No.21811》穴あきタイプは、刃部に貫通穴が開いているカウンターシンクです。穴の部分が刃になっていて、切削したときに切粉が排出しやすいほか、非鉄金属や軟質材料に対してキレイに面取りができるのも特徴です。また、貫通穴はオイルホールの役割を担い、加工の際にオイルを刃先へ供給しやすく、仕上がり面を高精度で加工できる製品もあります。面取りカッターとの違いカウンターシンクと面取りカッターは、どちらもバリ取りや面取り加工をするための刃物のことを指しており、ほとんど違いはありません。傾向として、カウンターシンクは皿モミ加工を目的とした工具、面取りカッターは皿モミに限らずパイプ端部などのさまざまな面取り加工の工具の総称を指すことが多いです。参考:【面取りカッター】種類、材質、サイズ、角度

  • 超硬ロータリーバー(超硬バー)とは?種類、形状、サイズ、回転数

    今回は超硬ロータリーバーの刃の種類や、回転数などの注意点について解説します。超硬ロータリーバー(超硬バー)とは、エアーグラインダーなどの回転工具の先端に取り付けて使用する工具のことです。主な用途として、製品の成型やバリ取りの仕上げ加工などが挙げられます。超硬ロータリーバーは、名前の通り刃の材質は超硬が採用されていますが、シャンク部については超硬以外にも鉄製を採用したものもあります。刃が超硬素材であるメリットは、ステンレスなどの切削が難しい材料でも加工ができる点です。ただし超硬ロータリーバーを使用する際は、目的の効果を得るために、使用する刃の種類や刃の回転数などについて注意を払わなければなりません。超硬ロータリーバーの刃の種類超硬ロータリーバーの刃の種類は、主ににスパイラルカット・クロスカット・アルミカットの3つがあります。メーカーによっては、ダイヤモンドカットやチップブレーカーカットといった特殊なタイプもラインナップしている場合もあります。スパイラル(シングル)カット引用元:ムラキの最先端工具 機械工具部 製品情報 超硬ロータリーバースパイラル(シングル)カットは、一方向の刃で構成されたタイプです。刃数はエンドミルなどと比べて多く、加工面がキレイに仕上がる特徴があります。ただし、針状の切粉が排出されるため、手作業で扱うには注意が必要です。クロス(ダブル)カット引用元:ムラキの最先端工具 機械工具部 製品情報 超硬ロータリーバークロス(ダブル)カットは、スパイラルカットの刃に対して、もう一方向の刃を付加したタイプです。スパイラルカットに比べて切粉が粉状になるほか、作業時のブレも最小限に抑えられるので、安全に使いやすい特徴があります。ただし、チップポケットが小さいため、アルミや樹脂のような融点の低い材質に用いると、目詰まりしやすくなります。アルミカット引用元:ムラキの最先端工具 機械工具部 製品情報 超硬ロータリーバーアルミカットは、シングルカットのように一方向のみの刃ではあるものの、刃の数が少なくて深さのあるタイプです。これにより切削量とチップポケットが大きく、アルミのような融点の低い材質でも目詰まりしにくい特徴があります。ただし、加工面の仕上がりはシングルカットに比べて粗くなりやすい点に注意が必要です。ダイヤモンドカット引用元:株式会社スーパーツール 超硬バー ダイアモンドカットダイヤモンドカットは、独自の刃形状を採用した特殊なタイプです。刃物が不用意にワークに食い込むことがなく、滑らかに加工を行えます。切粉も細かくなるので、難削材の加工に適しています。チップブレーカーカット引用元:MiSUMi-VONA 超硬カッターチップカットカーバイドバーチップブレーカーカットは、切粉を細かく分断するためのチップブレーカーを搭載した特殊なタイプです。切削抵抗も少なく、切削時の振れも軽減できます。超硬ロータリーバーの刃の形状超硬ロータリーバーは、製品によって刃の形状が大きく異なります。メーカーごとに形状の呼び方も異なるものの、形状の種類についてはほとんど違いはありません。円筒型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介円筒型は、円筒かつ刃先が平らな形状をしたものを指します。外周部分に刃があるので、軸方向に対して垂直に押し当てるようにして加工します。製品によっては先端にも刃が付いていて、軸方向に対しても加工できるタイプがあります。先丸円筒型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介先丸円筒型は、刃が円筒型かつ、先端が丸みを帯びた形状のものを指します。上図のように曲面の隅を加工するのに適しているほか、円筒型のように側面でも加工を行えます。楕円型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介楕円型は、刃の全体がタマゴのように丸みを帯びた形状のものを指します。上図のようにワークの曲面箇所を均一に加工したい場合に適しています。砲弾型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介砲弾型は、刃物が砲弾のように先端にいくにつれて先細になっているタイプです。曲面や細かな箇所などの、複雑な形状のものを加工するのに適しています。球型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介球型は、刃物が球体の形をしたタイプです。丸溝の箇所を加工するのに適しています。円錐型引用元:SAKUSAKU 超硬ロータリーバーの用途って何? 刃先形状の種類についてもご紹介円錐型は、刃物が円錐形状のタイプです。円錐の角度が90°と60°のタイプがあり、V溝の加工や皿ザグリの箇所を加工するのに適しています。製品によっては逆円錐の形状をしたタイプもあります。シャンク径のサイズ寸法引用元:MiSUMi-VONA 技術情報超硬ロータリーバーの柄の部分をシャンクと呼びます。一般的に国内で取り扱われている超硬ロータリーバーのシャンク径は、直径3mmか直径6mmのものがほとんどです。超硬ロータリーバーを扱うときの注意点として、シャンクの突出し長さが最小になるように刃物を取り付ける必要があります。これにより芯振れやシャンクの歪みを防ぐことができます。超硬ロータリーバー(超硬バー)の回転数超硬ロータリーバーの推奨回転数は、各製品の仕様欄に掲載されているので、使用の際はそちらを確認するようにしましょう。ただし突出し量が長い場合は、先端の振れが大きくなることから、回転数を落とすなどの対応が必要です。回転数が合わない状態で使用すると、ビビりや目詰まりが発生しやすくなるので超硬ロータリーバーを使用する際は注意してください。

  • ホールソーの種類、用途、サイズ、規格

    ホールソーは、DIYや各種の工事、金属加工などで用いられている切削工具です。大口径の穴をあけるのに適しており、精度良く、短い時間、少ない電力で大きな穴をあけることができます。様々な材質のホールソーが市販されており、木材や樹脂材、金属材など、加工対象に合わせたラインナップがあります。サイズも多様ですが、ホールソーの外径が開口する穴の径となるため、穴径に合わせてホールソーを選定する必要があります。電動ドライバーやインパクトドライバーなどに装着して使用することが多く、手動で簡単に綺麗な穴をあけたいときに役立つでしょう。この記事では、このホールソーの詳細や用途などについて詳しく解説してきます。ホールソーの種類や種類毎の特徴、加工対象、サイズにも言及しますので、参考にしてください。ホールソーとは引用元:製品情報 > 切断・穿孔機器 > ダイヤモンドコアビット「H.S.S.ハイスホールソー(排水マス用)」レッキス工業株式会社ホールソーとは、木・樹脂・金属製の板材や樹脂・金属製の管材に大口径の穴をあけるための切削工具のことです。ホールソー全体は、上図のように円筒形状となっており、円筒の先端には円周に沿って刃が付いています。円筒の中心軸にはドリルが備え付けられており、ホールソーの刃とドリルが一緒に回転することで、穴の中心を維持しながら穴をあけることが可能です。なお、上図の有効長は、穴あけ可能な最大深さで、同時に穿孔可能な最大板厚を示します。また、切粉除去孔は、ホールソー側面の穴のことで、切削によって生じた切粉を排出する機能があります。ホールソーは、主に切削ビットとして電動ドリルや電動ドライバー、インパクトドライバーなどの電動工具に装着して手動で使用しますが、ボール盤やフライス盤、マシニングセンタなどの工作機械に装着して自動で使用するタイプのものもあります。引用元:製品紹介 > ホールソー「超硬ホールソー メタコアトリプル」ユニカ株式会社なお、ドリルではなく、ホールソーで穴をあけることのメリットは、上図から理解されるように、切削面積が小さいため、短時間、省エネルギーで穴あけが可能なことです。また、工具自体を比べると、ホールソーの方が工具を構成する素材の量が少なくて済みます。参考:穴開け加工とは【専門家が解説】タップ加工、リーマー加工との違いを説明!ホールソーの用途用途としては、水道・ガス・エアコンなどの配管工事やコンセントやスイッチなどの取付穴の開口といった電気工事のほか、木工や樹脂加工、金属加工などが挙げられます。木工では家具などの生産に、樹脂加工ではFRP(繊維強化プラスチック)製のコンテナや塩ビ(ポリ塩化ビニル)樹脂製の機械カバーなどの製作に、金属加工ではステンレス製のキャビネットや内装パネルの製作などにホールソーが用いられています。ホールソーの価格帯価格帯は、1,000円程度から50,000円程度までと幅広く、材質の違いや精密性の高さ、サイズ、ドリルの有無などによって価格が違います。ドリルとセットになっていないものはドリルを別に用意する必要があります。材質は、安価な順に、炭素工具鋼、高速度工具鋼(ハイス)、超硬合金となっています。ただし、ハイス製のホールソーは、刃先のみがハイスで、円筒部がバネ鋼となっている「バイメタル」(2種類の金属を溶接などで接続した複合材)が使用されていることが多く、バイメタルホールソーとも呼ばれます。ホールソーとコアドリルの違い引用元:事業紹介「コアドリル工法」コンクリートコーリング株式会社なお、ホールソーと類似した工具にコアドリルがありますが、コアドリルは、鉄筋・無筋コンクリート材やサイディング材(外壁材)、石材、木材などが対象です(上図参照)。また、ホールソーであける穴よりも深い穴をあけるために用いられます。そのため、開口する穴が浅い場合にはホールソー、穴が深い場合にはコアドリルを使用すると良いでしょう。ホールソーの使用方法●確認事項ホールソーで穴あけを行う場合は、まず以下の事項の確認が必要です。・ホールソーが加工物の材質に対応しているかを確認します。・ホールソーのシャンク(柄部)の形状が取り付ける電動工具のチャック(工具の保持具)と合っているかを確認します。・ホールソーの有効長が加工物の厚さよりも小さいことを確認します。・ホールソーの径が開口する穴の径に合っているかを確認します。●使用手順そして、手動で取り扱う電動工具を使用する場合は、以下のような手順で穴をあけていきます。1. ホールソーを電動工具に取り付けます。2. 加工物の下に、ドリルやホールソーの刃を受けるための下地材を敷きます。3. 開口する穴の中心にマーキングとして印、または窪みを付けます。4. ドリルの先端を印、または窪みに当て、加工物と垂直になるように構えます。5. 電動工具のトリガーを少しずつ引きながら、低速回転から少しずつ回転数が上げていきます。6. ドリルは、ある程度の深さを掘り進むと、自動的にねじ込まれていきますので、大きな力を加えずに構えてセンター穴をあけていきます。7. ホールソーの刃が加工物に触れたら、再び低速回転にして回転数が徐々に上がっていくように穴をあけていきます。8. ドリルの推進力でホールソーの刃による加工も進行していきます。9. 穴が貫通したら作業終了です。●作業時の注意点作業時の注意点としては、以下が挙げられます。・ホールソーの刃よりもドリルの先端が突出しているので、加工物の下に敷いた下地材にはドリルによる穴が必ずあいてしまいます。そのため、下地材の板厚に余裕を持つなど、注意が必要です。・ある程度の厚みがある木材は、穴が貫通した際に亀裂や大きなバリが生じることがあります。その防止には、加工物の表と裏から半分の深さずつ穴あけを行って穴を貫通させることが有効です。・加工後のドリルやホールソーは、高温になっていることがあるので、しばらく素手では触れないようにしましょう。・加工中、切り屑などでホールソーの刃が目詰まりを起こすことがあるので、頻繁に切り屑を除去しながら穴あけを行いましょう。ホールソーの種類ホールソーの種類は、大きく木工用と金属加工用に分けることが可能で、金属加工用ではバイメタルホールソーと超硬ホールソーが代表的です。ここでは、一つで複数の穴径に対応している木工用ホールソー、刃の材質にハイスを使用しているバイメタルホールソー、バイメタルホールソーの上位互換とも言える超硬ホールソーについてご紹介します。木工用ホールソー引用元:先端工具>木工アクセサリ>フリーカッター「SK11 インパクト用木工ホールソー SIH-001」藤原産業株式会社木工用ホールソーは、木板やベニヤ板(合板)、コンクリートパネル(コンパネ)などの穴あけに用いられるホールソーです。塩ビやアクリル、発泡スチロールなどの樹脂の加工も可能ですが、通常、金属板の加工はできません。刃の材質は主に炭素工具鋼が用いられていますが、ステンレスのSUS420J2が用いられていることもあります。市販品は通常、口径の異なる薄目の刃が複数枚セットとなって販売されています(上図参照)。そして、刃となる円筒の側面部と刃の土台となる円筒の底面部が分離できるようになっており、底面部には、ドリルを中心に同心円状の溝があります。つまり、木工用ホールソーは、開口する穴の径に合った溝に刃を取り付けることで、様々な径の穴に対応できるのです。超硬ホールソー引用元:製品紹介 > ホールソー「超硬ホールソー メタコア」ユニカ株式会社超硬ホールソーは、刃部に超硬合金が使用されているホールソーのことです(上図参照)。鋼板やステンレス板、アルミ板などの金属板のほか、鋼管やステンレス管などの穴あけに用いられるホールソーです。木材や樹脂材の穴あけもできます。参考:アルミ板の穴あけに関してご紹介!必要な工具や工場の手法に関しても解説!参考:パイプの穴あけ加工を製品事例と共に徹底解説!特に、硬い金属板や厚い鋼板などが加工対象で、これらに対応できるように刃が高硬度で分厚く、耐摩耗性にも優れます。チッピング防止や摩耗対策、長寿命化のため、刃部にチタンなどがコーティングされているものもあります。なお、上図のドリルに巻き付いているバネは、下図のように、ドリルの貫通時にホールソーが勢い良く加工物に当たってしまうことを防止するために備え付けられています。引用元:製品紹介 > ホールソー「H.S.S ハイスホールソー」ユニカ株式会社ただし、木工用ホールソーとは違って、口径ごとにホールソーを用意しなくてはならず、ホールソー一つ一つの価格も高くなっています。バイメタルホールソー引用元:製品紹介 > ホールソー「H.S.S ハイスホールソー」ユニカ株式会社バイメタルホールソーは、上述したように、バイメタルと呼ばれる複合金属材料を材質とするホールソーのことです(上図参照)。刃先には主に高速での切削加工に適したハイスが、刃先以外には硬度と靭性のバランス良いバネ鋼などが用いられています。その刃は、薄いものから厚いものまであり、極薄のものであれば精密性の高い加工が可能です。刃の材質は、SKH51やSKH59といったモリブデン系高速度工具鋼などが用いられています。主に薄目の鋼板やステンレス板、アルミ板などの加工に用いられますが、木材や樹脂材の加工も可能です。しかし、超硬ホールソーに比べると、硬度や耐摩耗性に劣るので、分厚いステンレス板などの穴あけは推奨されません。ホールソーのサイズと規格一覧ホールソーには、公的に定められた規格はありませんが、電動工具や工作機械との接続部であるシャンクについてはメーカーに関わらず形状やサイズが統一されています。市販のホールソーは、インパクトドライバーの六角軸チャックに取り付けられるシャンク径6.35mmの六角軸シャンクか、電動ドリル・電動ドライバーのドリルチャックに取り付けられるシャンク径6~13mmのストレートシャンクであるものが大部分です。一方、開口する穴の大きさを決める口径と穿孔可能な最大の板厚を決める有効長、及び推奨される最大板厚の適応板厚は、ホールソーのメーカーや製品、種類によって様々です。市販されているホールソーの口径と有効長、適応板厚を種類毎に挙げると下表のようになっています。(単位:mm)木工用バイメタル超硬口径(外径)21~17012~17014~150 有効長12.5~15010~504~35適応板厚~150(電動工具)~3.2(電動工具)~4.5(電動工具)~25(工作機械)

  • ツーリング工具の構造、種類、規格

    ツーリングとは、工作機械に切削工具を設置させるため、間に入ってアダプターの役割を果たす工具のこと。ドリルやフライスなどの「ツール」の間に入ることから、「tooling」と表記されます。実際に金属を加工するのに必要なのは切削工具ですが、その性能を最大限に発揮させるためにはツールをしっかりと固定し、金属を削っている間も重心がブレず、力を正しく伝える必要があります。そのため、一般的な金属の切削では脱着のしやすさ、高硬度の金属や高精度な加工を要求される現場においては保持力や剛性などが求められるなど、状況や要求に応じてさまざまな需要があります。ツーリングの構造と仕組みフライス盤の場合、ツーリングはツールホルダ、ツールアダプタで構成されています。ツールホルダツールホルダは工作機械に直接つながるパーツの相称で、ツールアダプタを固定したまま状態を保てる「保持力」と重心がブレずに金属を切削できる「取り付け精度」などが求められます。ツールホルダには、加工工具によって凹状、凸状の2種類があり、凹状のものを「ホルダ」、凸状のものを「アーバ」と呼んでいます。ツールアダプタツールアダプタはドリルやフライス、アーバなどの加工工具とツールホルダの間に取り付けられる工具のこと。場合によって、ツールホルダと分離しているものと、一体型になっているものがあります。プルスタッドプルスタッドはツールホルダの後端に取り付けられ、工作機械の主軸穴に固定させるために用いられるボルトのことです。切削工具同様、工作機械に取り付けられる消耗品で、耐摩耗性に優れた素材を使用することで長期間、安定した加工を維持することができます。ツーリングの種類と特徴ツールホルダは保持力や剛性などが求められる一方、脱着のしやすさや熟練度など、方法によって違った特徴も持ち合わせています。それぞれに特徴の異なる5種類のツールホルダについてご紹介します。コレットチャックコレットチャックは最も一般的なツールホルダで、ドリルやエンドミルなど、幅広いツールに対応しています。すり割りと呼ばれる縦方向の切り込みが入った金具に切削工具を差し込み、外側から絞めつけることで工具を固定する仕組みとなっています。取り付け精度が高く、交換しやすいメリットを持っています。保持力が弱いため、高速回転の軽切削に向いています。ミーリングチャックニードルベアリングの力を使い、切削工具を締め付けて固定するツールホルダで、汎用性が高く、ストレートコレットを変更することでさまざまな工具に対応することが可能です。工具の保持力や剛性に優れているため、エンドミルを使った重切削に向いていますが、曲げ剛性に弱いため扱いには注意が必要です。サイドロックホルダストレートシャンクに対し、ホルダ側面からねじを締め付けて固定するホルダです。切削工具をねじで押さえつける単純な構造のため、取り付けがしやすく効率的に切削工具を脱着できます。高い保持力を持つ反面、剛性に弱いため、高いコストパフォーマンスを生かせる刃先交換式のドリルなどに向いています。油圧チャックホルダに油圧機構を取り入れたチャックのことで、ホルダ内部に充填されたオイルの力によってツールを固定します。保持力や取り付け精度、剛性など、さまざまな面に優れているため、高い精度を求められるリーマ加工などに適しています。また、簡単に脱着ができるため作業者に熟練度を必要としない点もメリットのひとつです。焼き嵌めチャックツールホルダ本体を加熱し、取付穴を熱膨張によって広げた上で挿入し、その後冷却し、元のサイズに戻すことで工具を締め付ける仕組みのホルダです。加熱にはバーナーや電熱ヒーター、高周波誘導加熱装置など、専用の加熱装置が用いられ、冷却は自然冷却や、エア冷却などで対応するのが一般的です。加熱・冷却に時間がかかるものの、構造自体はシンプルで保持力、精度、剛性にも優れており、主にマシニングセンタで使用されます。ツーリングの規格ツーリングには、旋盤やマシニングセンタなど、取り付ける切削機械によってさまざまな種類があります。その中から、多く用いられるNT、BT、BBT、HSKの4種類をご紹介します。NT(ナショナルテーパ)NTとは、ナショナルテーパのことで、主に汎用タイプの旋盤に使用されます。BTはプルスタッドを用いて固定されるのに対し、NTは引きねじで固定するのが一般的です。BT(ボトルグリップテーパ)BTとは、ボトルグリップテーパのことで、主にマシニングセンタに使用するツーリングのことを指します。プルスタッドを用いて強い力でツールホルダを固定する仕組みになっています。BBT(二面拘束テーパ)二面拘束のBTシャンクのことです。テーパ部に加え、ツールホルダのフランジ部分も拘束することで、シャンクをより強く固定します。これにより、BTで主軸とテーパ部分が密着した際に発生することがある熱膨張などによる食い込みを解消し、高速かつ高精度な加工を実現させています。 HSK(中空テーパ)主にマシニングセンタで使用される中空タイプのシャンクです。加工時に遠心力の影響を受けにくく、高速加工にも対応が可能。BTシャンクに比べ、高い精度を発揮します。