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    金属加工の塗装の依頼方法のコツ!

    過去の記事で、各塗装方法の特徴、メリット・デメリットを解説してきました。※気になる方は、こちらの記事をご覧ください。こちらの記事では、実際に工場へ塗装を依頼する方法と、NG例を紹介します。【6分でわかる】塗装の依頼方法工場さんに塗装をお願いするときのコツを簡単に動画で解説しています!6分程度でサクッと見れるので、お時間が無い方はぜひご覧ください!YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください!一言で「塗装」と依頼するだけでは見積がつきません。下記の項目を埋めて、初めて見積や加工ができるようになります。①どの製品に塗装するのか図面を用意する②個数③色を指定④艶の具合⑤塗装方法 ※指定なしでもOK⑥用途①製品の図面を用意するサイズ・形状・材質がしっかり記載された図面を用意しましょう。サイズ・形状により、用意する塗料の量が変わります。材質により、塗装金額が変わる場合もございます。また、塗装する際は吊り下げて塗装をすることが大半です。必ず吊り穴となる穴があるように設計しましょう。穴のない製品で塗装を依頼すると、工場から吊り穴の追加をお願いされることが大半です。必ずチェックしましょう!②個数個数が多ければ多いほど製品1個あたりの塗装費は安くなります。さらに、用意するべき塗料の量も左右されるため、必ず記載しましょう。③色の指定塗装できる色は様々で、原色のものもあれば調色してご希望の色に合わせることもあります。「黒」や「白」というオーダーであればわかりやすいのですが、「緑」というオーダーであれば、工場も困ってしまいます。例えば「緑」という色でもこのように様々な「緑」があります。どの「緑」かわかるように、予め色を細かく指定しましょう。色の指定方法は大きく4つあります。マンセル値で指定マンセル値は、数字とアルファベットで色を表しています。R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)、と基本の5色相とその中間色で計10色相をアルファベットで表します。中間色とはYRの場合はR(赤)とY(黄)の中間になるので、オレンジになります。各色相は、主に2.5、5、7.5、10と数字を刻みます。5Bあたりにつきましては、青緑色になっており、一般的に青と想像できる色とずれていますのでご注意ください。また、明度と彩度も数字で表します。明度は黒を0、白を10として11段階に分割しています。しかしながら、完璧な黒、完璧な白は再現できないため、0や10はなく、最も暗い黒で1.0、最も明るい白で9.5になります。彩度は鮮やかさを0から14程度までの数値で表します。白や黒といった無彩色に近い、色味の薄い色ほど0に近く、鮮やかな色ほど数値が大きくなります。最も鮮やかな色の数値は色相によって異なり、赤は14〜16程度ありますが、青は8程度になります。ご希望の色の数値を確認したい場合は、マンセル値測定器を使うか、色見本から選択してみてください。通称:「日塗工」の色見本帳から色を選択する「日塗工」とは、一般社団法人日本塗料工業会の通称です。色見本帳を見ながら色を選択できます。「色票番号」という各色をアルファベットと数字で組み合わせた番号で色を指定します。1995年を境に色票番号の表記ルールが変わっています。現行の番号と表記が違う場合はご注意ください。色見本帳は2年毎に最新版が発行されています。こちらのページを書いた2022年4月ですと、最新版は2021年版になります。また、色見本帳の有効期限は3年と設定されています。塗料の色にも色見本帳の色にも経年劣化があり、数年経てば原色を保っていることがありませんので、色の打ち合わせは最新版でのお話をおすすめします。参考:一般社団法人 日本塗料工業会色見本サンプルを工場に送るすでに塗装されたものを塗装工場に送り、同じような色に調色してもらえるよう塗装を依頼できます。サンプルは見積依頼をする際に同意を得る前に送るのではなく、必ず工場の同意を得てから小さいサイズのものを送りましょう。色にこだわりがない場合は…こだわりがない場合は、こだわりがない旨を伝えましょう。ある程度色の希望を伝えつつ、下記のように伝えてみましょう。例)「白に近い色であれば大丈夫です。」「鮮やかな青でお願いします。塗料はあり合わせのもので大丈夫です。ない場合は原色の青でお願いします。」色の希望もない場合は、白・黒・ベージュから選択してみましょう。この3色は、よく塗装される色です。そのため、塗料を在庫している可能性が非常に高いです。都度塗料を調達する必要がなくなる可能性が高いため、塗装費が他の色と比べて安価になる可能性が高いです。どの色の指定方法も厳密にいえば、色の差が発生してしまいます。複数の部品を塗装し、組付けして、色のわずかな差が気になるようでしたら、塗装のみ同じ塗装工場へ出せるように手配するのがオススメです。④艶の具合色を選択したら次は艶です。艶の具合は、艶あり・艶なし・半艶(五分艶)・〇分艶と指定します。艶の有無は塗料に艶消し剤を入れて作っていきます。そのため、艶ありより艶なしの方が艶消し剤を入れる段取り分高価になります。艶の有無でも単価に差が生じますので、必ず指定しましょう。⑤塗装方法(指定なしでもOK)様々な塗装方法があります。各塗装方法やメリットデメリットはこちらの記事で解説しています。吹付塗装、焼付塗装、粉体塗装、電着塗装など様々な塗装方法があります。特に指定がない場合は一般的に吹付塗装か焼付塗装になります。もし、シボ加工のように表面に凹凸を出すような特殊な塗装をご希望の場合は必ず記載しましょう。対応可能な工場が限られてくる上に、通常の塗装より高価になります。⑥用途簡単で構いませんので記載しましょう。塗料にも屋内用と屋外用があります。それ以外にも用途別で塗料がラインナップされています。屋内用か屋外用かだけでも記載しましょう。塗装の依頼は、図面、個数、色、艶、塗装方法、用途の項目を揃えることでスムーズに依頼ができるようになります。一つでも欠けてしまうと見積がつかなくなる可能性が高くなりますので、必ず依頼前に確認しましょう。図番:ABC-333個数:30個色:2.5Y8/1.5艶:艶あり塗装方法:焼付塗装用途:屋内用図面に記載する箇所がない場合は、上記のように記載するとわかりやすくなります。いかがでしたか?Mitsuriでは塗装も含めた金属加工を依頼できます。見積依頼はこちらから!

  • 化成処理とは?種類ごとの特徴を解説

    防錆や金属の皮膜処理について調べていると化成処理という言葉を目にします。めっきと同じような処理のため「何が違うの?」「どんな特徴があるの?」といった疑問が生まれてくるかもしれません。今回は、化成処理とはどのような処理なのか、種類、目的などについて、詳しく解説していきます。化成処理とは化成処理は、金属をはじめとする加工物を溶液に浸透させて皮膜を作る表面処理のひとつです。表面に処理剤を用いて化学反応を起こさせることで、元の素材とは違った性質を与えることができます。耐食性に加えて外観の向上も見られるほか、下地として処理をすることで塗装との密着性を上げる目的としても活用されます。同じような処理方法のめっきと同列で扱われることもありますが、化成処理は化学薬品を使用したり、電気化学を応用したり、科学的方法を用いて素材に皮膜を生成するため、めっきとは別の処理として考えられることも少なくありません。化成処理の種類化成処理にはいくつか種類がありますが、その中でも代表的な4種類をご紹介します。リン酸塩処理・主に鉄鋼製品に対して採用される・リン酸塩系の処理液を用いて表面を化学反応させ、皮膜を生成する・表面保護効果に加え、塗料との親和性を高める効果があるリン酸塩処理はパーカー処理やパルホス処理とも呼ばれ、鉄をはじめとする金属系の加工物をリン酸塩系の処理液に浸漬させることで表面を化学反応させる化成処理です。使用される処理液は、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム等の種類があり、それぞれに異なる特徴を持っています。処理方法によって種類は異なりますが、いずれも表面に凹凸のある皮膜が生成される特徴があります。錆をはじめとする腐食を抑える表面保護効果に加え、塗料との親和性を高めることもできるため、塗装の下地処理としても多く活用されます。最も多く用いられているリン酸亜鉛処理は、さまざまな素材に対応できますが、処理液によっては鉄鋼製品以外には使用できないものもあるため注意が必要です。⇒リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説クロメート処理・主に亜鉛めっきが施された加工物の後処理に用いられる・六価クロム、三価クロムを含む処理液を用いた化成処理・自己修復性の皮膜によって耐食性の向上や変色防止の効果があるクロメート処理には黄銅、亜鉛、アルミニウムなどが主に使用されます。加工物を六価クロム、もしくは三価クロムを用いた含む溶液に浸漬させ、表面に酸化皮膜を生成する化成処理です。クロメート処理によって得られる酸化被膜は自己修復性を持っており、他の皮膜に比べて高い耐食性を示します。さらに、塗装の代替としても使える着色クロメートや、塗装の前処理として活用できる塗装下地クロメートなど、幅広い活用法が見込めるとして注目を集めています。クロメート処理は素材に直接処理を施すだけでなく、亜鉛めっきが施された加工物の後処理として行われることも少なくありません。これは亜鉛が変色しやすく指紋などがつきやすい性質を持っているからです。亜鉛めっきは特に、湿気のある環境では白色斑点などを生じやすい欠点を持っています。合わせてクロメート処理を施すことで、光沢性と耐食性を付加できるため、電気亜鉛めっきでは不可欠な技術となっています。この他、アルミやマグネシウムの処理に採用される場合は塗装との密着性向上を、無電解ニッケルめっきの後処理に採用する場合は耐食性と変色防止を目的とするなど、素材に応じてさまざまな用途で活用されています。⇒三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違いジンケート処理・アルミニウム合金に対し、めっきの前処理として用いられる・ジンケート(亜塩酸塩)を使った薬液に浸漬させる化成処理・アルミの酸化皮膜を溶かし、亜鉛皮膜を形成させることでめっきの密着不良を解消するジンケート処理は主にアルミニウムやマグネシウムなどの合金に対し、前処理として採用される化成処理です。近年、自動車をはじめとするさまざまな製品に対し、軽量化を目的としてアルミニウムが採用されています。このアルミニウム合金にめっき処理を施す際、前処理としてジンケート処理が不可欠です。アルミニウム合金の表面に、耐摩耗性や装飾性の向上を目的にめっき処理が行われます。しかし、アルミニウム合金は大気中の酸素によって緻密で強固な酸化被膜を形成する特性があります。この酸化被膜はめっきの密着性を阻害してしまうため、ジンケート処理を2回行うダブルジンケート処理によって密着不良を回避しています。黒染め処理・鉄鋼製品に対し、1~2μmの薄い酸化被膜を生成させる・アルカリ水溶液を使った化成処理で、黒色の皮膜が生成される・耐食性・耐熱性を持っている上に見栄えが良く、コストも安い黒染め処理は、アルカリ水溶液に鉄鋼系の加工品を浸漬させることで、表面に耐食性のある黒色の酸化皮膜を生成させる化成処理です。他の化成処理に比べて耐食性の効果は低めですが、皮膜の厚さが約1~2μmと薄く、コストが低いメリットがあります。実際には黒く染めている訳ではなく、鉄の表面が酸化して四酸化三鉄の皮膜で覆われることで黒く変色していますが、見栄えが良い上に防錆効果もあるため、黒く染める用途として採用されることも少なくありません。黒染め処理によって生成される皮膜はめっきや塗装に比べると非常に薄いですが、剥離の心配がなく、経年変化においても寸法精度がほとんど変わりません。また、見た目の美しさや耐熱性の高さ、価格の安さなど、多くのメリットを持ち合わせています。さらに、錆びている製品に対しても、酸洗い処理などによって錆を落とした後で黒染め処理をすることができ、汎用性が高い点も魅力のひとつです。⇒金属の黒染め加工とは?効果と材料向き不向き

  • リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説

    リン酸塩処理は、リン酸塩の処理液を用いて素材の表面を化学反応させることで皮膜を形成させる化成処理です。金属の錆を防止したり素材を強化したりできるため、金属加工の種類のひとつとして用いられてきました。リン酸塩処理は別名「リン酸塩皮膜処理」、処理の種類ごとに「リン酸マンガン皮膜」「リン酸亜鉛皮膜」「リューブライト」とも呼ばれます。また、リン酸塩処理を工業用途で本格的に発展させたパーカー兄弟の姓を取った「パーカーライジング」「パーカー処理」という名前も浸透しています。リン酸塩処理は用いるリン酸塩の種類によっても強度や効果が異なるため、目的や用途に応じた処理が必要です。今回は、リン酸塩処理の種類や工程、用途などについて解説していきます。リン酸塩処理とはリン酸塩処理は、鉄をはじめとする金属系の加工物に施す化成処理の一種です。表面を化学反応させることで皮膜を生成し、元の素材とは異なる性質を付与できるため、古くは武器や道具の錆・塗料の剥離防止などの目的で用いられてきました。現在でもその目的は変わらず、自動車部品をはじめとする工業製品に対して広く採用されています。リン酸塩処理は錆を含めた腐食の進行を抑える表面保護効果として塗装の下地に用いられることが多いですが、それ以外にも金属加工時に潤滑剤と併用することで塑性加工を容易にする目的でも用いられます。リン酸塩処理の種類リン酸塩処理には、リン酸亜鉛処理が最も多く用いられますが、その他にも全部で4種類の処理があります。それぞれ異なる特徴があるため、処理の成分や利点などをご紹介します。リン酸亜鉛処理リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理の中で最も多く用いられている処理方法で、主成分はリン酸イオンと亜鉛イオンで構成されます。結晶性の皮膜を形成することで耐食性、密着性を大きく向上させる効果があり、鉄鋼や亜鉛製品の塗装下地や冷間鍛造の潤滑皮膜として使用されます。また、熔解亜鉛めっきを施したスチール製品は、美観をより重厚感や高級感のあるものに変化できるため、仕上がりに自然な質感が求められる製品にも採用されます。リン酸亜鉛処理は経年変化で少しずつ変色が見られ、濃淡が落ち着いて周囲の景観と調和してくる傾向があります。処理温度60度以下のものが多く、常温で処理ができるものもあり、使いやすいことも採用されやすい理由のひとつとなっています。リン酸カルシウム処理リン酸カルシウム処理は、リン酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンから構成されており、結晶性の皮膜を形成します。同じ結晶性皮膜を構成するリン酸亜鉛処理に比べて耐熱温度が高く、高温で焼き付ける塗装下地に適しています。リン酸カルシウム処理は冷間鍛造による潤滑皮膜として用いられることもありますが、鉄鋼製品に対して用いられることが多く、処理温度は80度~90度と高いのが難点とされています。リン酸鉄処理リン酸鉄処理の主成分はリン酸イオンで、他のリン酸塩処理と違い、非晶質の皮膜が形成される特徴があります。形成される皮膜は1μm以下と非常に薄く、干渉色によって青や黄色などの皮膜外観になります。皮膜成分はリン酸鉄で、皮膜の成分に鉄を必要とするため、適応素材は鉄鋼製品に限定されます。リン酸鉄処理はリン酸亜鉛処理に比べて耐食性に劣りますが、何も処理しない場合に比べると耐食性は高いです。加えて塗装密着性も得られ、他のリン酸塩処理に比べて安価で溶液管理がしやすいため、塗装下地として好んで選ばれる傾向があります。リン酸マンガン処理リン酸マンガン処理の主成分はリン酸イオンとマンガンイオンから構成されており、結晶性の皮膜が形成されます。皮膜の主成分はヒューリオライトで、リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く、表面の粒子が粗い特徴があります。リン酸マンガン処理は耐摩耗性に優れ潤滑作用が大きいことから、ギアやピストン、ベアリングをはじめとする摺動部品に多く採用されます。リン酸鉄処理と同様、加工は鉄製品に限定されるほか、処理温度も80度~90度と高く、処理時間も5~30分程度かかってしまう欠点があります。リン酸塩処理の工程リン酸塩処理の工程は主に以下の5つに分けられます。1.アルカリ脱脂剤を用いた洗浄2.水によるすすぎ洗い3.リン酸塩による処理4.水によるすすぎ洗い5.熱温風による乾燥1と3の工程で薬剤が使用され、各処理に合わせて1分から長い場合は10分以上かけるものもあります。また、防錆、塗装、塑性加工などの目的に応じて処理が異なります。リン酸塩処理の目的が防錆である場合は、表面に防錆油を塗布します。塗装が目的の場合は電着塗装や溶剤塗装と同一ライン内で施され、必要に応じて上塗り塗装まで続けてなされます。塑性加工が目的の場合、乾燥前に追加工程としてステアリン酸ナトリウムを主成分とする石鹸処理が施されます。

  • 塗装とは?金属加工の塗装について解説!

    塗装と聞くと、金属をはじめとするさまざまな物に色を塗り、見た目をキレイにするイメージがありますが、それ以外にも金属をコーティングすることで保護する役割を持っています。そのため、めっきと比較されることも少なくありません。今回の記事では、塗装の特徴や種類、メリット・デメリットやめっきとの違いなどをご紹介します。金属製品を装飾したり、保護・防錆をしたりすることを目的に塗装を考えている方は、どういった種類の塗装をするのが適しているのかも含め、ぜひ参考にしてください。塗装とは塗装とは、物体に塗料を塗って塗膜を形成させることを言います。とりわけ、金属製品への塗装は、装飾に加え、コーティングによる保護を目的に用いられます。特に、錆による劣化は金属の天敵となるため、水からの保護が欠かせません。他にも、汚れや油など、さまざまなものから守るための役割を持っています。塗装の多くは常温・大気下で皮膜となる塗料を塗布することができます。一般的にはハケやローラーなどを用いて塗布する印象が強いですが、金属部品の加工にはさまざまな種類の塗装が存在しています。塗装の種類金属加工における塗装は、ただ単純に金属に色を塗れば良いというわけではありません。なぜなら、金属によって相性の良い塗装と相性の悪い塗装があるからです。もし、適切な塗装方法を選択しなかった場合、せっかく塗った塗料がすぐに剝がれてしまい、見た目が悪くなるだけでなく、目的の「保護」の役割を果たせなくなってしまう可能性があります。そのため、製品をキレイに保つためには目的に合った塗装方法を選択肢することが重要と言えます。下記は、金属加工における一般的な塗装の種類です。溶剤塗装溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に樹脂や顔料を混ぜた塗料を塗布する方法のこと。塗装の中で最もスタンダードな方法で、ハケやスプレー、ペイントローラーを使って物体に塗料を塗っていきます。溶剤塗装は他に比べて塗料が安く、製品単価を下げられるメリットがあります。ただし、有機溶剤には中毒性があり、大気汚染などの危険性があるため取り扱い方法に注意が必要です。⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!焼付塗装焼付塗装は、塗料に熱を加え揮発させることで、乾いたときに硬化し、強度を高める塗装方法のことです。皮膜を硬化させるにあたって100度~200度を超える高温にする必要があります。焼付塗装は製品と塗膜の密着性が高く、温度や湿度、風雨などに晒される屋外の環境下で高い効果を発揮できるため、自動車などのボディの下塗りにも用いられます。メラミン、フッ素、アクリルと、焼付塗装にも大きく分けて3つの種類があり、それぞれに塗装温度や硬化、安全性などに違いがあるので、目的に応じて選択が必要です。電着塗装電着塗装は、塗料が入った液体の中に加工物を入れ電気を流すことで、塗料を加工物に付着させ、塗膜を形成させる方法です。ハケやローラー、スプレーなどではムラができてしまいやすい、複雑な形状の素材にも均一な塗膜を形成させることができるほか、膜厚をはじめとする処理条件も管理しやすいため、大量生産に向いている塗装方法です。一方で、塗装をするために設備をはじめさまざまな準備が必要となるため、小ロットの生産には不向きと言えます。静電塗装静電塗装は、帯電した塗料を利用することで、静電気によって塗料が加工物に引き寄せられ、塗膜を形成する方法です。塗料を効率よく付着させることができ、均一で美しい仕上がりの塗膜になる特徴があります。一方で、高電圧の作業が必要となるため、感電や火災などの事故が発生しないよう、十分に注意しながら作業を進める必要があります。基本的には手作業よりも産業用ロボットなどを用いたライン生産方式が適しており、自動車の車体や家電、OA機器などの塗装に用いられます。粉体塗装粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気によって付着させた後、加熱溶解することで塗膜を形成する方法です。他の塗装は一般的に液状の塗料が用いられますが、それに比べてより厚い塗膜を形成しやすい特徴があります。さらに、塗料の入れ替えがしやすく、吹き付けた後、飛散した塗料を回収・再利用しやすいため、高い塗料を無駄なく活用することができます。自動車や家電製品などのライン生産に多く用いられます。塗装処理の工程塗装は主に、前処理、調合、塗布、乾燥の4ステップに分かれています。これは、溶剤塗装から粉体塗装まで、まったく異なる塗料を用いても基本的に変わることはありません。各工程において、どのような作業が発生しているのか、詳しく解説していきます。1.前処理前処理は、加工物に塗料をしっかりと密着させるための処理のこと。具体的には、材料表面の油や錆、異物などを取り除いてキレイにする作業のことです。例えば、過去に塗られていた塗装や錆をやすりなどで削っていったんキレイにする作業も前処理のひとつです。もし、前処理をしないまま作業を進めてしまうと、せっかく塗った塗料が塗装後に剥がれやすくなるなど、不具合が発生しやすくなるため、塗装後の製品をキレイなまま長持ちさせるためにも重要な工程と言えます。前処理は、研磨による機械的処理と、表面を皮膜で覆う科学的処理の2種類があります。目的や用途、加工物の状態などによってどちらをチョイスすれば良いかも変わります。2.調合調合は、塗料の準備の工程です。機能性を高めるために複数の塗料を混合したり、目的に合わせて色を調整したりするために、異なる塗料を調合することも少なくありません。また、塗装方法や作業環境に応じてシンナーの希釈剤を入れて塗料を調整することもあります。エナメルをはじめとする顔料を含んだ塗料は沈殿している場合があるため、色むらをなくすためにしっかり撹拌して使用する必要があります。また、手作業で塗料を混合する場合、比率を間違えると乾燥不良や塗膜の欠陥が出る可能性があるため、正確な作業が求められます。3.塗布塗布は、製品に塗料を付着させる工程のことです。材料に応じて塗ったり吹き付けたり、上述した塗装方法を用いて加工物に塗膜を形成させます。また、目的に応じて下塗り、中塗り、上塗りなど、複数回に分けて塗料を塗布することもあります。塗布工程は、仕上がりの見た目の美しさや均一性など、製品の品質に大きく影響するため、最も重要な工程と言えます。製品をキレイな状態で長持ちさせるためには、相性の良い塗装方法を選択し、適切に作業を進めることが大切です。4.乾燥塗料は乾燥することで塗膜の役割を果たす、いわゆるコーティングへと変化します。そのためには、常温乾燥、または加熱乾燥が必要です。常温乾燥にも、何もせずに一定期間置いておく自然乾燥と、紫外線や電子線を照射して乾燥させる方法の2種類があります。また、加熱乾燥では熱風や赤外線、電磁誘導など、複数の乾燥方法が用いられています。乾燥方法も、塗装の種類に適したカタチで行わなければ、穴があいてしまったり、硬化状態が悪かったりと、塗膜に欠陥が発生してしまう可能性があります。塗装のメリット・デメリット塗装には、めっきをはじめとする他の表面処理に比べたメリット・デメリットが存在します。●塗装のメリット・常温・大気下で塗布することができるため、汎用性が高い・塗装方法によっては現地で作業ができる・大きさに影響されにくく、大小さまざまなものに表面処理を施すことができる・金属だけでなく、ガラスやセラミック、木材などにも塗布できる・方法や塗料の種類が多いため、選択肢が多い・塗装の膜厚を薄いものから厚いものまである程度調整できる・塗り直しができる・めっきに比べてコストが安い●塗装のデメリット・製品と塗膜の密着性が他の表面加工に比べて高くない・作業者のスキルによって表面にムラが発生しやすい・めっきに比べると強度が低く、損傷しやすい・めっきに比べて剥がれやすい塗装とめっきの違いメリット・デメリットから見ても分かるように、塗装は処理方法や効果の関係上、めっきと比較されがちです。これは、塗装とめっきがいずれも表面に膜を形成し、装飾性を高めつつ、加工品を保護する役割を持っているからです。塗装に比べてめっきの方が高価な分、保護効果が高く長持ちします。一方、塗装はめっきに比べて剥がれやすい、損傷しやすいなどのデメリットはあるものの、塗り直しによって保護効果を再度高めることができるため、メンテナンスを加えることで長持ちさせることが可能です。また、めっきは取り扱う金属の種類やサイズ、環境などによって対応できない場合があり、塗装ほど汎用性に優れていません。それぞれの特徴を詳しく理解した上で、どちらをチョイスした方が良いか判断したい場合は、下記記事でより詳しい情報をチェックしておきましょう。⇒めっきと塗装の違いは?それぞれの特徴、めっき塗装に関しても解説!

  • 粉体塗装とは?特徴、種類、メリット・デメリット

    粉体塗装とは、パウダー状の塗料を金属に直接付着させて加熱し、乾燥させて固めることで塗膜とする塗装法です。一般的な塗装に用いられる有機溶剤を全く使用しないため、環境や人体への影響が小さく、環境保全や健康増進への取り組みが強化されている現在、注目が集まっています。また、省資源性にも優れるほか、自動化しやすいという特徴もあります。これらの理由から、溶剤塗装からの転換が進んでおり、その市場は拡大しています。この記事では、粉体塗装とは何かというところから、その方法や種類、特徴、メリット・デメリットまで、詳しく解説していきます。粉体塗装とは粉体塗装とは、パウダーコーティングとも呼ばれる、粉末状の塗料を用いる塗装のことです。細かく粉砕して粉状にした塗料(粉体塗料)を、塗装対象物に直接付着させ、高温で溶かしてから、乾燥させて固めることで塗膜を形成します。加熱して固化させることで塗膜を形成することから、焼付塗装の一種でもあります。参考:焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!粉体塗料には、エポキシやポリエステルなどを含む熱硬化性のものと、ポリエチレンやナイロンなどを含む熱可塑性のものがあります。粉体塗料は、これら樹脂のほか、顔料、添加剤をパウダー状にしたものから構成されており、溶剤塗料や水性塗料の成分である有機溶剤や水などの溶媒は含みません。なお、ここでの添加剤とは、硬化剤や乾燥剤、消泡剤、フィラー(充填剤)などで、塗料の流動性・湿潤性の調整や塗料の脱気(空気を除去すること)などの機能を持ちます。粉体塗装は、他の種類の塗装と同じく、塗装対象物の防錆や着色、耐候性向上、美観向上、機能性付与などが目的です。また、溶剤塗装に比べて、環境汚染や健康被害、火災などのリスクが低いため、溶剤塗装からの転換が進んでいます。参考:溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!粉体塗装の方法粉体塗装の方法には、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法があります。●静電粉体塗装法参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合静電粉体塗装法は、アースに繋げてプラスに帯電させた塗装対象物へ、スプレーガンにてマイナスに帯電させた粉体塗料を噴射することで、塗料を静電的に対象物へ付着させる方法です。この塗装法では、一般的に熱硬化性粉体塗料を使用し、加熱によって架橋と呼ばれる化学反応を誘起することで硬い塗膜を形成します。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動することはありません。この塗装法では、以下の工程に従って塗装を行います。1. 前処理…油脂成分を除去するアルカリ脱脂処理や錆を落とす酸洗処理、薬液などを洗い流す水洗処理を実施する処理工程。塗装の密着性向上を目的としており、素材によっては、塗膜のさらなる品質向上のために化成処理なども行う。2. 水切り乾燥…乾燥炉で塗装対象物に付着した水分を完全に除去する処理工程。ブリスター(塗装膜下に残存した水分によって生じる気泡)と呼ばれる外観不良の発生を防止する。3. 粉体塗装…粉体塗料を静電引力によって対象物に付着させる処理工程。4. 焼付乾燥…塗装対象物に付着した塗料を180~200℃の高温に加熱した焼付炉で焼き付け乾燥させる処理工程。5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。静電粉体塗装法は、流動浸漬塗装法と比較すると、以下のような特徴を持ちます。・塗装対象物の形状やサイズに対してあまり制約がない。・均一な膜厚が得やすい。・膜厚の調節が可能(30〜150μm)。・電気を通さない素材には塗装できない。参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!●流動浸漬塗装法参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合流動浸漬塗装法は、事前に加熱した塗装対象物を、粉体塗料を圧縮空気によって流動させた流動浸漬槽と呼ばれる容器に入れることで、塗料を対象物の熱で溶かして付着させる方法です。この塗装法では、一般的に熱可塑性粉体塗料が使用されます。熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して形状を変えることができ、冷却によって固化して塗膜とすることができる塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すると、再び軟化・溶融して固化します。この塗装の工程は、以下の通りです。1. 前処理…塗装の密着性向上を目的に、脱脂処理や酸洗処理、化成処理、水洗処理などを行う処理工程。2. 予備加熱…塗装対象物を塗料の融点以上の温度に予熱する処理工程。3. 流動浸漬…予熱した対象物を流動浸漬槽に入れることで、粉体塗料を対象物に接触させて溶かし付着させる処理工程。4. 後加熱…塗膜の平滑性向上を目的に、塗装対象物に付着した塗料を融点以上の温度に加熱する処理工程。5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。流動浸漬塗装法は、静電粉体塗装法と比べて、以下のような特徴を持ちます。・塗装対象物のサイズが流動浸漬槽のサイズ以下に制限される・塗装対象物が複雑な形状である場合、膜厚が不均一になりやすい。・厚膜が一度の塗装で得られる(200〜1500μm)。・厚膜の塗装が容易。・粉体塗料の回収装置が不要。・予熱を必要とする。・膜厚の調節が難しい。・電気を通さない素材にも塗装できる。粉体塗装の用途粉体塗装は、金属素材の製品を中心に、様々な分野で採用されています。その使用分野は、下図に見られるように、金属家具や電気機器、建設・産業機械、機械・器具の割合が大きくなっています。粉体塗装の具体的な使用例は、下表の通りとなっており、特に工業塗装に多く採用されています。<粉体塗装の分野別使用例>使用分野使用例金属家具机, 椅子, 陳列棚, 書架, ロッカー, 業務用ワゴン, ベッド電気機器分電盤, 配電盤, ラジエーター, 柱上トランス, 電力計, 発電機, モーター, ガス給湯器建設・産業機械パワーショベル, フォークリフト, FA機器, 工作機械, 包装機, ボンベ, 農業機械機械・器具医療用品, 現像機, 精密機器, IT機器, 事務機家電製品レンジ, レンジフード, エアコン, 冷蔵庫, 洗濯機, 暖房機, ミシン, 照明器具, 電話機道路資材ガードレール, ガードパイプ, 橋梁手摺り, 欄干, 標識用ポール, 信号機, 照明柱水道資材鋼管, 鋳鉄管, 異形管, ニップル, 仕切弁, 継ぎ手, 水栓金具, メーター建築資材フェンス, 門扉, 手摺り, 面格子, 住宅鉄骨, シャッター, カーテン, ウォール, パーテーション, 雨樋金具, 鉄筋バー自動車部品ボディー, ワイパー, バンパー, スプリング, ホイール, ブレーキドラム, ブレーキパッド, オイルフィルター, エンジンブロック, ルーフレール, ドライブシャフト, トラック荷台部分, その他農業資材, 家庭用品, 消火器, ガーデニング用品粉体塗装の特徴粉体塗装には、様々な特徴があります。ここでは、溶剤塗装や水性塗装と比較したときの粉体塗装の特徴について説明します。参考:金属加工の板金塗装の見積りについて解説!塗装の種類ごとについてもご紹介!塗膜の強度と耐久性が高い粉体塗装は、塗膜の強度および耐久性が高いという特徴があります。粉体塗装では、一度の塗装で厚膜の塗膜を形成することができます。その膜厚は、静電粉体塗装法で最大150μm、流動浸漬塗装法では最大1500μmにも達します。それは、一度の溶剤塗装による塗膜の厚さ約20μmと比較すると、数倍から数十倍の厚みに相当します。また、焼付塗装の一種であることから、塗膜自体の強度が高く、柔軟性にも優れます。つまり、粉体塗装では、高強度で柔軟な分厚い塗膜が得られるのです。従って、粉体塗装の塗膜は、傷が付きにくい上、温度・湿度変化が激しい環境でも、伸縮しやすいことにより、ヒビ割れや剥離などが発生しにくくなっています。それは、耐久性に優れ、寿命も長くなることを意味します。塗膜の性能が高い粉体塗装の塗膜は、耐食性や耐候性、耐薬品性などの性能にも優れます。粉体塗装では、その塗装方法から、塗装ムラが起きにくく、ピンホール(塗装面に生じる小穴)も発生しにくい塗膜となります。さらに、塗膜が分厚く、高い強度と耐久性を持つことも相まって、塗膜下の金属が空気に触れにくく、降雨なども塗膜下に浸透しにくくなっています。そのため、粉体塗装の塗膜は、防錆性能をはじめとする塗装対象物の保護機能を高いレベルで発揮するのです。塗料に溶媒を含まない参照元:粉体塗装について「粉体塗装(パウダーコーティング)とは?」有限会社シリウス粉体塗料は、溶媒を含まないという特徴があります。溶剤塗装や水性塗装の塗料は、顔料・樹脂・添加剤といった塗膜を形成する成分以外に、これらの成分を溶解または分散させるシンナーなどの有機溶剤や水分を含んでいます。これらの溶媒は、塗料を塗装対象物に接着する役割を持っており、焼き付けや乾燥などの過程で揮発します(上右図参照)。一方、粉体塗料は、塗膜を形成する成分のみから構成されています。そして、塗装の際には、溶媒の代わりに電気や熱の効果を利用することで、塗装対象物に付着させているのです(上左図参照)。塗料の回収・再利用が可能粉体塗装では、塗装時に塗装対象物に付着しなかった塗料を回収して再利用することが可能です。粉体塗料は、溶剤塗料の有機溶剤や水性塗料の水のような揮発成分を含まないため、熱影響を受けなければ、変質することはほとんどありません。そのため、静電粉体塗装で噴射した塗料も、流動浸漬塗装法で流動させた塗料も回収すれば、再度使用することができます。その点、溶剤塗料や水性塗料は、溶媒が揮発すると塗料が変質してしまうことがあり、多くの場合、変質してしまった塗料は再度使用することはできません。しかし、塗料を調整して揮発性を低下させても、乾燥して硬化するまでの時間が長くなり、作業性が下がってしまいます。塗料に揮発性有機化合物(VOC)を含まない引用元:低VOC塗料の現状と今後「塗料からの溶剤(VOC)の蒸発」経済産業省 近畿経済産業局粉体塗料は、大気汚染や健康被害の原因となる揮発性有機化合物(VOC)を全く含みません。VOCは、揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物のことで、溶剤塗料には20~60%、水性塗料には0~10%含まれている物質です。溶剤塗料には、塗料に対して5~50%がさらに投入され、希釈溶剤(シンナー)として使用されます(上図参照)。その種類は、下表のように多様で、溶解する樹脂や用途に応じて塗料に混合されています。<溶剤塗料や水性塗料に含まれる代表的なVOCの種類と性質・用途>VOCの分類VOCの種類性質・用途アルコール系メタノール, エタノール, イソプロピルアルコール(IPA), イソブタノールラッカー塗料や添加剤などの溶解ケトン系アセトン, メチルエチルケトン(MEK), メチルイソブチルケトン(MIBK), シクロヘキサノン樹脂を強力に溶解エステル系酢酸エチル, 酢酸ブチル樹脂を比較的強く溶解エーテル系ブチルセロソルブ, ブチルカルビトール焼付塗料の仕上り向上・水性塗料にも使用炭化水素系脂肪族系ミネラルスピリット樹脂を比較的弱く溶解芳香族系トルエン, エチルベンゼン, キシレン多種類の樹脂を溶解、溶解性と乾燥性のバランスが良い混合系ソルベントナフサ焼付塗料用しかし、VOCは、以下のように大気汚染の原因となり、人体にも有害です。●大気環境への影響VOCは、大気中に拡散されると、光化学反応などを起こして変質します。変質したVOCは、光化学スモッグの原因となるほか、浮遊粒子状物質(SPM)を生成して、目や呼吸器などに悪影響を及ぼし、喘息やアレルギー疾患のリスクを増大させることが知られています。●室内環境における人体への影響VOCは、住宅の建材などから発生して、室内の空気を汚染し、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こすことがあります。●作業環境における人体への影響VOCは、塗装に従事する作業者に下表のような様々な症状を引き起こすことが報告されています。ただし、近年においては、毒性の高いVOCの使用が制限されており、以前よりも塗料の安全性は確保されています。<毒性の高いVOCによって引き起こされる症状>VOCの種類急性毒性慢性毒性メタノール粘膜刺激, 麻酔作用咳, めまい, 頭痛, 嘔吐, 脱力感, 眠気, 不眠, 視力障害, 神経系障害IPA皮膚刺激, 粘膜刺激眠気, 頭痛, 協調運動不能, 皮膚炎, 神経系障害, 腎臓障害, 血管障害, 肝臓障害, 脾臓障害MEK皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用呼吸器刺激, 咳, 息切れ, 頭痛, めまい, 視野狭窄, 嘔吐, 下痢, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害酢酸エチル粘膜刺激呼吸器刺激, 眠気, めまい, 咽頭痛, 咳, 頭痛, 意識混濁トルエン皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用咳, 咽頭痛, めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害, 肝臓障害エチルベンゼン皮膚刺激, 粘膜刺激咳, めまい, 意識混濁, 頭痛呼吸器障害, 神経系障害キシレン皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 呼吸器障害, 神経系障害塗装に器具・設備が必要粉体塗装は、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法の双方について、いくつかの器具・設備が必要です。<静電粉体塗装法の器具・設備>・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など)・粉体塗装ブース・静電粉体塗装機(静電ガン、静電コントローラー、ホース類など)・粉体塗料回収装置・焼付乾燥炉・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具・換気装置(塗装ブース用と建屋全体用の装置設置を推奨)<流動浸漬塗装法の器具・設備>・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など)・流動浸漬槽・加熱炉・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具・換気装置(建屋全体用の装置設置を推奨)なお、静電服と静電靴は、静電気による粉体塗料の着火によって発生する粉塵爆発の防止に必要な保護具です。粉塵爆発を防止するため、機器類の接地が必須であり、静電気対策床の設置なども推奨されます。現場施工が困難粉体塗装は、以下の理由から、工場などで施工しなくてはならず、現場での施工は現状の方法ではできません。・据え置き型の設備が必要・前処理に確実な洗浄や乾燥が必要・塗装処理時に粉塵対策が必須・焼き付け温度が高く、炉での加熱や乾燥が必要塗装作業の機械化・自動化に適している粉体塗装は、工場での施工が標準的であることもあり、機械化や自動化に向いた塗装法です。粉体塗装は、浸漬洗浄、炉での乾燥・加熱、静電引力や空気流動を利用した静電粉体塗装や流動浸漬塗装など、主要な処理工程の人手を排することが可能です。そのため、塗装対象物をフックに吊り下げるなどして、順番に洗浄槽、乾燥炉、塗装ブース、焼付乾燥炉と流していくことで、主要工程を完了させることができます。粉体塗料の種類粉体塗装では、様々な塗料が用いられますが、その塗料は、含有樹脂の熱に対する反応性から、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料の2種類に分類されます。熱硬化性粉体塗料熱硬化性粉体塗料は、加熱によって架橋反応を誘起することで、硬化する塗料です。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動しないという特徴があります。主に静電粉体塗装法で用いられる粉体塗料です。熱硬化性粉体塗料は、含有する樹脂の系統によって特徴や塗装条件が異なるため、用途に応じた塗料を選ぶことができます。下表は、代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、用途をまとめたものです。<代表的な熱硬化性粉体塗料の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途>樹脂系焼付温度焼付時間特徴用途エポキシ系130~200℃5~50分高耐食性, 高耐薬品性, 高密着性, 高耐水性, 高硬度, 絶縁性低耐候性家電, 自動車部品, 上下水道管, 電気部品, 重電機器, 船舶, エポキシポリエステル系150~200℃10~50分高耐食性, 高作業性, 高加工性, 高経済性低耐候性鋼製家具, 家電, 自動車部品, 建築資材, 事務機器, 家庭用品, 電気部品ポリエステル系140~230℃5~60分高耐候性, 高耐水性, 高作業性, 高加工性, 高経済性家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材, 鋼製家具, 重電機器, 建設機械, 農機具, 家庭用品アクリル系150~200℃8~50分高耐候性, 高耐汚染性, 高鮮映性, 低温硬化性家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材フッ素系160~360℃15~30分高耐候性、高耐光性、高耐薬品性, 高耐摩耗性、高耐熱性高層建築外装, 工業用部品, 家電, 厨房器具熱可塑性粉体塗料熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して変形し、冷却によって固化する塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すれば、再び軟化・溶融して固化するという特徴があります。主に流動浸漬塗装法で用いられる粉体塗料です。熱可塑性粉体塗料もまた、下表のように、いくつかの樹脂系があります。<代表的な熱可塑性樹脂の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途>樹脂系予熱温度後加熱温度特徴用途塩化ビニル系230~290℃200~320℃高耐候性, 高耐薬品性, 高耐食性, 高耐水性, 被覆性, 厚膜美装性道路資材, 建築資材ポリエチレン系260〜320℃200〜320℃高耐食性, 高耐候性, 高耐水性, 高耐久性, 高耐摩耗性, 被覆性家電, 上水道管, 建築資材, 道路資材, 重電機器, 家庭用品ナイロン系340〜430℃340〜370℃高耐油性, 高密着性, 耐摩耗性, 高耐衝撃性, 耐熱性, 絶縁性, 被覆性家電部品, 自動車部品, 配管, 機械部品, 鉄道部材, 家庭用品, 医療機器, 飲料水容器粉体塗装のメリット上述したように、粉体塗装には他の塗装法とは異なる多様な特徴がありますが、ここではその中でもメリットとなる特徴について紹介します。<塗膜について>・塗膜の強度が高い・塗膜の耐久性が高い・塗膜の性能が優れる・厚い塗膜の形成が可能・錆が発生しにくい<方法について>・一度の塗装で厚い塗膜を形成可能・塗料の回収・再利用が可能・塗装環境(温度・湿度など)の影響を受けにくい・塗料の焼付処理が短時間で済む・塗装の機械化・自動化が容易<塗料について>・塗料に有機溶剤(VOC)を含有しない・臭気がない(有機溶剤は臭気を放つ)<経済性について>・塗料を無駄なく使用できる・耐用年数が長い(15~20年)<安全性について>・VOCによる大気汚染や健康被害については考慮不要・VOCによる火災の発生リスクがない粉体塗装のデメリット一方、粉体塗装には、以下のようなデメリットがあります。<方法について>・薄い塗膜の形成が困難(一般に30μm以上)・焼付温度や予熱・加熱温度が高い・塗装後に色の調整ができない・色の微調整が難しい・現場施工が困難・塗り替えが困難<経済性について>・塗装設備が必要であるため、初期投資が掛かる<安全性について>・粉塵による健康被害のリスクがある・粉塵爆発の発生リスクがある

  • 亜鉛めっきとは?特徴や種類を解説

    今回は、亜鉛めっきの特徴や種類について解説します。亜鉛めっきは、鋼材の表面に亜鉛の皮膜を形成し、耐食性を得ることを指します。しかし、一口に亜鉛めっきと言っても、大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があり、それぞれで特性に違いがあります。亜鉛めっきとは亜鉛めっきとは、電気の作用で亜鉛をめっきしたり、溶融させた亜鉛に浸漬させて、鋼材をめっきしたりする手法のことです。亜鉛めっきを施した鋼材は、表面が銀白色の外観になり、錆びや腐食を防止できるようになります。亜鉛めっきの特徴亜鉛めっきは、主に鉄製品に対して処理を行います。亜鉛めっきを施すと、めっきの表面に不働態皮膜が形成されます。不働態皮膜とは、めっき層と鉄の素地に空気や水が侵入を防止し、錆びを生じにくくする皮膜のことです。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは不働態皮膜があると、犠牲防食作用と呼ばれる反応が得られます。犠牲防食は、表面に傷が付いて素地の鉄が露出した場合でも、周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出して電気科学的に保護し、鉄の腐食を保護します。亜鉛めっきの種類亜鉛めっきは大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があります。電気亜鉛めっき引用元:三和メッキ工業株式会社 亜鉛めっき電気亜鉛めっきは、鉄素地を亜鉛めっき液に浸してから、電気を通すことで亜鉛めっきを施す手法です。亜鉛めっき液中でプラス極にある亜鉛が電気の作用で溶解し、マイナス極である鉄に亜鉛皮膜を析出します。ただし、電気亜鉛めっきだけでは、亜鉛めっき皮膜が酸化し、腐食してしまう恐れがあります。そのため、一般的に亜鉛めっき皮膜の上にクロメート処理を施して、より亜鉛めっき皮膜の耐食性を向上させる場合が多いです。また、クロメート処理を施した場合は、導電性も高くなる傾向にあります。クロメート処理は、光沢クロメート(ユニクロ)・有色クロメート・黒色クロメート・三価クロメートなどがあり、種類によって異なる外観と特性が得られます。電気亜鉛めっきは、溶融亜鉛めっきに比べて膜厚が薄いため、自動車部品やコンピュータ部品のような精密機器に採用されることが多いです。参考:ユニクロめっきとは!?亜鉛めっき/クロメートとの違い参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!溶融亜鉛めっき引用元:マルコ工業株式会社 溶融亜鉛メッキ溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸漬させた後、冷却することで亜鉛めっきを施す手法です。その手法の様子から、別名「ドブ漬けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきは、塗装や電気めっきと異なり、亜鉛と鉄素地から形成される合金層が、亜鉛と鉄素地を強く結合するため、めっきが剝がれにくく、長期間耐食性が持続します。このことから、建築物やガードレールなどの幅広い用途で活用されています。また、溶融亜鉛めっきは、電気亜鉛めっきのようにクロメート処理を必要としません。溶融亜鉛めっきは、大きな製品の処理に適していますが、高温のめっき液に浸漬させるので、材料が反りやすくなります。加えて、膜厚が電気めっきよりも厚くなるので、精密部品への処理には適していません。参考:溶融亜鉛メッキとは?特徴、規格、加工工程を解説

  • 無電解ニッケルめっきとは?原理、用途、特性、メリット・デメリット

    今回は、無電解ニッケルめっきの原理、用途、特性、メリット・デメリットについて解説します。無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用を利用してニッケル金属の皮膜を形成する手法を指します。似たものに電気ニッケルめっきがありますが、無電解ニッケルめっきと、処理の方法だけでなく、成分や特性についても違いがあります。参考:ニッケルめっきとは?種類や特徴、メリット・デメリット無電解ニッケルめっきとは?引用元:株式会社センショー 無電解ニッケル無電解ニッケルめっきとは、電気ではなく、化学的還元作用にて材料にニッケル金属の皮膜を形成する手法のことで、別名「カニゼンめっき」や「化学ニッケル(化学Ni)」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、一般的にリンを含有しています。膜厚を均一にしやすい特徴があり、複雑な形状や寸法精度を要する製品に適しています。無電解ニッケルめっきの原理引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは無電解ニッケルめっきにおける、ニッケルの析出には、めっき液中のニッケルイオンと電子が必要です。無電解ニッケルめっきは、主に還元剤である次亜リン酸塩が添加されており、分解された次亜リン酸から発する電子が、ニッケルの析出に利用されています。還元されて析出したニッケルは、還元剤の分解触媒として作用し、めっき表面で連続的に分解反応とニッケルの析出を行います。この仕組みを「自己触媒還元めっき」と呼びます。無電解ニッケルめっきの用途無電解ニッケルめっきは、以下のような用途で使用されています。<無電解ニッケルめっきの用途>使用目的製品耐食性、耐摩耗性反応槽、輸送管、パイプ、ポンプ、金型自動車部品、船舶部品、航空部品はんだ付け、耐食性、導電性付与接点、シャフト、抵抗体サーミスタ、ディスク耐食性、硬さ、精密性、耐摩耗性ピストン、軸、シリンダー測定装置、変速機耐食性、非磁性、硬さ時計、カメラ、電子顕微鏡等の部品耐食性、耐摩耗性、硬さ金型、事務機、船舶航空、原子力等の部品無電解ニッケルめっきの分類無電解ニッケルめっきは、還元剤の種類により、ニッケル-リン系とニッケル-ホウ素系があります。ニッケル-リン系は細かく分けると「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」の3種類があります。低リンタイプ低リンタイプは、1~4%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。他の種類に比べて700Hvと硬度が高く、耐摩耗性と耐アルカリ性に優れていますが、耐食性は劣ります。中リンタイプ中リンタイプは、5~10%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。一般的に採用されることの多い種類で、無電解ニッケルめっきと言えば中リンタイプを示す場合が多くあります。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも他の無電解ニッケルめっきと比べて良好で、汎用性に優れています。高リンタイプ高リンタイプは、11~13%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、結晶構造が非晶質で、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。他のめっき種類に比べて光沢が少ないのも特徴です。無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素を0.2~1.0%程度含有する無電解ニッケルめっきです。はんだ付け性や硬度に優れています。また、400℃程度の熱処理では、変色しない特徴があります。ただし、めっき液が高価のため、他の種類に比べて処理コストがかかります。無電解ニッケルめっきのメリット●耐食性の向上無電解ニッケルめっきは、一般的に電気ニッケルめっきよりも耐食性に優れています。数%のリンを含有し、リンの含有率が多いほどピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。●均一な膜厚が得られやすい電気ニッケルめっきは、めっきする製品に対して、電気が弱くかかる部分と強くかかる部分に分かれてしまうので、均一な膜厚になりにくい特徴があります。一方で、無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用にて材料をめっきする手法のため、膜厚が均一になりやすいメリットがあります。●非金属材料にも対応可能無電解ニッケルめっきは、電気を使わないめっきなので、樹脂やセラミックなどの不導体に対しても対応が可能です。●電気ニッケルめっきと比べて耐摩耗性に優れる電気ニッケルめっきの硬度は、ビッカース硬さで200Hv程度、熱処理で500Hv程度の値です。一方で無電解ニッケルめっきの硬度は500Hv程度あり、熱処理を行うと最高1000Hv程度までの硬さが得られます。無電解ニッケルめっきのデメリット●電気ニッケルめっきに比べてコストが高い無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて材料費が高いほか、めっきの析出速度も遅いので、コストが高くなる傾向にあります。●めっき液の管理が難しい無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて浴組成の変動が大きく、扱いが難しいので、技術や知識を要します。無電解ニッケルめっきの特性機械的特性無電解ニッケルめっきは、硬度が高く、耐摩耗性に優れています。また、ねじを締め付ける際に摩擦の熱で溶着してしまう「かじり」についても防止する効果が期待できます。無電解ニッケルめっきの種類ごとの硬度については以下の通りです。<無電解ニッケルめっきの種類別硬度>めっき種類低リン中リン高リンホウ素硬度Hv熱処理前700550500780400℃,2h10009509501000引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?化学的特性無電解ニッケルめっきは、種類によって良好な耐食性、耐酸性、耐アルカリ性の特性を有しています。以下の表は、リン含有量による化学的特性の違いを示したものです。<めっきのリン含有別化学的特性>めっき種類低リン中リン高リン耐食性(塩水噴霧)やや劣る良好普通~良好耐酸性劣る普通良好耐アルカリ性良好普通劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電磁気的特性無電解ニッケルめっきは、導電率(比抵抗)、接触抵抗、磁性(非磁性)、電磁波防止の特性を有しています。めっきの種類による磁性の有無と、比抵抗の値については以下の通りです。<めっきの種類別比抵抗(導電率)と磁気特性>めっき種類低リン中リン高リンホウ素比抵抗 μΩ・cm30~6060~75150~2005~6磁気特性熱処理前磁性非磁性非磁性磁性280℃,2h磁性磁性非磁性磁性引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?光学的特性無電解ニッケルめっきは、めっきの処理液の違いにより、光沢が出るタイプと出ないタイプがあります。光を反射させたくない医療機器や光学機器などでは、光の反射率が低い黒色無電解ニッケルめっきが採用されることもあります。熱的特性無電解ニッケルめっきは、良好な耐熱性、熱伝導性、はんだ付け性の特性を有しています。以下の表は、無電解ニッケルめっきの中リンタイプの融点、熱伝導度、膨張係数を示したものです。融点熱伝導度膨張係数890℃0.0105cal/cm/s/℃13×10-6cm/cm/℃引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電気ニッケルめっきとの違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきは、めっき方法、皮膜成分、物性に違いがあります。●めっき方法の違い電気ニッケルめっきは、名前の通り電気を使ってめっき皮膜を形成する手法です。浴管理は無電解ニッケルめっきに比べて比較的容易のため、金額も安価な傾向にあります。しかし、電流分布によりめっきの厚みが変わるので、無電解ニッケルめっきと違って均一にめっきを付けるのが困難です。無電解ニッケルめっきは、化学反応にてめっきを施すため、均一にめっきを付けることが可能です。複雑な形状の製品に対してもめっきしやすい特徴があります。ただし、めっきの析出速度が遅い、浴管理が難しいなどの難点もあり、コスト面で電気ニッケルめっきに劣ります。●皮膜成分の違い電気ニッケルめっきは、およそ99.5%以上がニッケルでできているので、純ニッケルめっきとも呼べます。一方で無電解ニッケルめっきは、ニッケル90~95%、リン5~10%程度の割合でできた合金めっきになります。そのため「ニッケル-リン合金めっき」と呼ばれることもあります。●物性の違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきの物性の違いは以下の通りです。<無電解ニッケルと電気ニッケルの物性の違い>性質無電解ニッケル(Ni-P 中リンタイプ)電気ニッケル組織非結晶性(熱で結晶)微結晶性融点890℃(P;9%)1450℃電気抵抗60μΩ/cm(熱処理400℃で1/3に低下)約8.5μΩ/cm比重7.9(P;9%)7.7-8.7硬さHv500±50(析出状態)Hv900±100(400℃ 1Hr)Hv150-250(普通浴)Hv400-500(光沢浴)磁気特性非磁性強磁性耐食性電気ニッケルより優れるNi-Pより劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルメッキと電気ニッケルメッキの違い

  • 三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違い

    三価クロメートは、ヨーロッパなどで使用禁止となっているクロメート処理の代替として採用されている表面処理です。主に亜鉛めっきの防錆性能の向上や外観の色調変化などが目的で、通常は亜鉛めっきとセットで行われています。自動車や電気・電子、建築など、幅広い分野で使用されており、身近な例では、青銀色や黄金色、黒色のネジ・ボルト・ナット類が挙げられます。この記事では、三価クロメートとは何かというところから、種類や特徴、類似の加工方法であるクロメート処理(六価クロメート)やクロムめっきとの違いについて解説していきます。三価クロメートとは三価クロメートとは、三価クロムを含むものの六価クロムは含まない溶液に金属を浸すことによって、金属表面で化学反応を起こし、金属表面に防食効果などを発揮する皮膜を形成する化成処理のことです。「三価クロム化成処理」や「クロメートフリー処理」「とも呼ばれます。詳しくは後述しますが、単にクロメート処理と言う場合、六価クロムで皮膜を形成する化成処理を指します。しかし、この六価クロムは、生体に有害で、欧州などで規制されていることから、現在はクロメート処理から六価クロムを含まないクロメートフリー処理へと移行が進んでいます。そのため、最近では、クロメート処理を「六価クロメート処理」と六価クロムを用いることを明示して呼称したり、記述したりすることが多くなっています。三価クロメートの適用対象は、主に亜鉛めっきや亜鉛合金めっきが施された鋼材や金属製品で、めっきの後処理として施されるのが三価クロメートです(上図参照)。具体的には、溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっきが施されたもの、ガルバリウム鋼、ガルタイト鋼(ガルファン鋼)が素材のものなどが挙げられ、これらのめっき製品には、六価クロメート処理と三価クロメートのどちらかが適用されています。なお、ガルバリウム鋼とガルタイト鋼は、下表のめっき浴成分によってめっき処理された鋼です。<ガルバリウム鋼(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlSiAl, Si, Zn以外の元素Zn成分量 (%)50.0~60.01.0~3.05.0以下残部<ガルタイト鋼(溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlAl, Zn以外の元素Zn成分量 (%)4.0~5.51.0以下残部三価クロメートの用途は、亜鉛めっきや亜鉛合金めっきの用途とほとんど同じで、自動車や輸送機器、電気機器、建築部材、事務機などと幅広い分野に及んでいます。特に、自動車や電機などの輸出企業が取り扱う製品は、欧州市場などを考慮して、三価クロメートへの切り替えが進んでいます。しかし、建材・建築などの市場が国内中心の企業は、未だ六価クロメートが適用された製品を使用しています。三価クロメートの効果三価クロメートの主な効果は、耐食性の向上と外観の色調変化です。そもそも、その下地である亜鉛めっきには、以下のような優れた効果があります。▼鉄の表面を物理的に被覆して、腐食原因となる水と酸素を鉄の表面から遮断する。▼中性環境で酸化皮膜を形成し、良好な耐食性を発揮する。▼鉄の身代わりとなって錆びる犠牲的防食作用が働くため、亜鉛めっき皮膜にキズが生じて鉄素地が一部露出しても、防錆効果を発揮する。▼めっき処理の直後は、銀色(光沢のある灰色)を呈する。▼複雑な形状でも、均一な厚さでめっき皮膜を形成することができる。▼コストが低い。▼量産加工が容易。しかし、亜鉛めっきは、大気中で使用していると、時間経過とともに酸化皮膜が厚くなって光沢を失います。さらに、大気が汚染されていたり、湿度が高かったりするような腐食環境下では、亜鉛自身の腐食によって白錆を生成します。その点、亜鉛めっきの上に三価クロメートを施すと、その化成皮膜が空気に対して反応性のないバリヤー層として亜鉛めっきを保護する上、亜鉛の白錆発生も長期間防止するため、高い防錆効果が期待できます。また、三価クロメートの処理液や処理時間などを制御することによって、外観の色調をある程度変化させることが可能です。亜鉛めっき直後の銀色そのままの色調から、青白い色、淡い黄色、黒色というように、いくつかの色調を付与することができます。そのほか、三価クロメートには、以下のような効果もあります。▼塗料などの密着性向上。▼耐指紋性や防汚性が向上。▼亜鉛めっきのみよりも電気抵抗は高いが、導通性は維持される。三価クロメートの表記六価クロメートの表記がJIS規格(JIS H 8625:1993)にて定められているのに対し、三価クロメートの表記は、規定されていません。そのため、現状は六価クロメートのJIS規格に従って表記し、注釈として「三価クロメート」や「TC(Trivalent Chromate)」などと追記することが標準的となっています。例えば、電気めっきで鉄生地に8μm厚の亜鉛をめっきした後、淡黄色の三価クロメートを施す場合は、下記のように記述します。Ep-Fe/Zn 8/CM1B(三価クロメート)なお、「Ep」は電気めっきを表す記号で、クロメート処理(六価クロメート)の記号「CM」は色調によって下表のような種類があります。<クロメート皮膜の種類と表記・色合い>クロメート皮膜の種類記号代表的色合い光沢CM1A透明, 青味のある透明淡黄色CM1B淡黄色の干渉模様黄色CM2C黄色の干渉模様緑色CM2Dオリーブ, グリーン, ブロンズ, 褐色なお、三価クロメートと六価クロメートの双方に黒色のクロメート処理がありますが、これもJIS規格に規定されていないので、下記のように「三価黒クロメート」などと追記することになります。・Ep-Fe/Zn 8(三価黒クロメート)三価クロムめっきとの違い三価クロメートと類似した言葉に「三価クロムめっき」がありますが、三価クロムめっきはめっき処理を指すため、化成処理を指す三価クロメートとは全く異なります。三価クロムめっきは、三価クロムが安定的に存在するめっき浴に金属を浸し、電流を流すことで、金属表面にクロムのめっき皮膜を生成する表面処理法です。実際、三価クロムめっきと三価クロメートは、下表のように皮膜の化学組成が大きく異なります。ただし、下表の皮膜の化学組成は、一例であり、めっきはめっき浴に、化成処理は処理剤によって異なります。なお、三価クロメートの黒色以外の処理剤には、有機酸を含有する有機系とシリカを含有する無機シリカ系があります。<三価クロムめっきと三価クロメートの皮膜の化学組成>皮膜の種類三価クロムめっき皮膜三価クロム化成皮膜無機シリカ系有機系皮膜の化学組成Cr:91.3%C:2.7%O:2.0%S:4.0%Cr:20%O:55%Zn:20%Si:微量Co:微量Cr:22%O:55%Zn:18%C:5%Co:微量三価クロメートの種類と特徴三価クロメートは、色調の違いにより、大きく「三価白」と「三価黒」の2種類に分けられます。その色調の違いは、化成処理の処理剤や処理時間などによってコントロールされています。ただし、同じ色の処理剤でも、その成分や処理条件などは、処理剤によって異なります。そのため、処理剤のメーカーによって、色調も変わってくるので注意が必要です。三価白三価白は、銀色、青白色(青みを帯びた銀色)または淡黃色(黄みを帯びた銀色)の色調となるように調整された三価クロメートです。「三価白クロメート」や「三価ホワイト」とも呼ばれます。銀色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.02~0.05μm程度と薄く、クリアー(透明色)で、亜鉛めっきの色調がそのまま現れるように調整された三価クロメートです。「三価無色クロメート」と呼ばれることがあります。青白色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.05~0.3μm程度の厚みで、六価クロメートで青白色となる「ユニクロ」の代替となっている三価クロメートです。「三価ユニクロ」や「三価光沢クロメート」とも呼ばれています。淡黃色となるのは、三価クロム化成皮膜の膜厚を0.2~0.5μm程度とした三価クロメートです。「三価有色クロメート」とも呼ばれます。このように、三価白は、膜厚によって、銀色、青白色、淡黄色と色調が変化します。膜厚は耐食性にも影響し、皮膜が厚いほど、耐食性が高くなるという特徴があります。そのほか、三価白による化成皮膜は、損傷すると、皮膜中の成分と露出した亜鉛が反応し、自己修復する機能も備えています。三価黒三価黒は、黒色となるように調整された三価クロメートです。その処理剤に添加された硫黄とコバルトが反応し、黒味成分となる硫化コバルトへ変化することによって黒色が実現されています。「三価黒クロメート」や「三価ブラック」とも呼ばれます。三価黒による化成皮膜は、0.2~0.5μm程度の厚さです。この膜厚は、三価有色クロメートと同程度であることから、耐食性についても三価有色クロメートと同水準となっています。ただし、化成皮膜の表面は、微小な凹凸を形成するため、光が反射しにくく、光沢のないマットな仕上がりとなります。また、耐傷性が低いという欠点もあります。そのため、三価黒の化成皮膜には、多くの場合、三価黒の後処理としてクリアー塗装を施して、透明な塗膜でコーティングを行います。それにより、耐傷性を高めるとともに、光沢を付与して、光沢感のある美麗な黒色を実現しています。三価クロメートの種類と名称以上の三価クロメートの種類と名称をまとめると下表のようになります。<三価クロメートの名称と種類一覧>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色三価クロメートと六価クロメートの違い三価クロメートと六価クロメートの違いは、六価クロムの有無です。六価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムと六価クロムの双方を含有する一方、三価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムは含むものの、六価クロムはほぼ含有していません。毒性の有無上述したように、六価クロムは人体に対して強い毒性を示す一方、三価クロムには、毒性はありません。六価クロムは、接触や吸引、摂取によって、皮膚炎や皮膚潰瘍、吐き気、嘔吐、下痢などを引き起こし、消化器系に対しては胃腸炎・胃癌・大腸癌・肝臓障害、呼吸器系に対しては気道炎・呼吸障害・肺癌の原因となります。従って、六価クロメートの処理液については、作業者への付着はもちろん、周囲への飛散も避けることが必要です。処理液から水分が蒸発し、粉末状となった六価クロムが空気中に浮遊することがあるからです。地下に浸透し、井戸水などを汚染する可能性もあります。一方、三価クロムには、全く毒性はなく、自然界の河川や海洋などにも存在している物質です。有毒どころか、人間にとっては必須ミネラルであると考えられており、欠乏症ともなると糖の代謝異常を起こすとされています。参考:クロムの毒性(三価・六価)を解説規制の有無六価クロムは、世界の多くの国で使用禁止となっていますが、三価クロムの使用を禁止している国はありません。六価クロムは、下表で説明しているELV指令やWEEE指令、RoHS指令が施行されて以降、欧州連合(EU)域内で規制されています。<欧州連合(EU)域内の六価クロム規制>法令名施行年月内容ELV指令2000年10月自動車の廃棄処分時、製造者は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含む部品は取り外して保管し、環境に影響を与えないよう、再利用または処理しなくてはならない。2003年7月1日以降、市場に流通する自動車および自動車部品は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含有してはならない。WEEE指令2005年8月電気・電子機器の廃棄処分時、製造者は、六価クロムなどの有害物質を環境に影響を与えないように廃製品から除去しなくてはならない。RoHS指令2006年7月電気・電子機器の製造段階での、六価クロムなどの6つの有害物質の使用を原則禁止。2019年7月4つの有害物質が追加されて、合計10つの有害物質の使用を原則禁止。つまり、EU域内では、六価クロメートが使用された自動車や電気・電子機器は販売できません。ただし、どのような物質でも完全にゼロにすることは不可能なので、上表の法令でも最大許容含有量が定められています。その中で六価クロムは、0.1wt%(1000ppm)が最大許容含有量です。参考:RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!そのほか、中国や韓国、タイ、ベトナム、米国カリフォルニア州などにも、RoHS指令と類似の規制が存在します。一方、日本では、六価クロムの使用が禁止されているわけではありませんが、下表のような法令および基準が存在するため、六価クロムの取り扱いには注意が必要です。なお、下表は国の法令・基準であり、自治体によっては、より詳細で厳しい基準を条例で定めている場合があります。<日本における六価クロム規制>法令名基準名対象基準値環境基本法環境基準公共用水域 (注1)0.05mg/L以下 (注2)地下水0.05mg/L以下水質汚濁防止法排水基準工場排水など0.5mg/L以下土壌汚染対策法土壌環境基準土壌0.05mg/L以下注1. 公共用水域とは、河川や湖沼、海域、用水路などの公共利用のための水域や水路のこと。注2. 2022年4月1日から0.02mg/Lに改正。ただし、三価クロメートについても、硫酸クロム・硝酸クロム・酢酸クロムといった三価クロム化合物、硫酸コバルトといったコバルト化合物、硫酸ニッケルといったニッケル化合物など、多様な化学物質を処理液に含みます。そのため、これらの化学物質を含有する排水には、適切な処理が必要不可欠です。そして、その結果生じるスラッジからは、有効活用できる物質は最大限リサイクルし、廃棄物の量を最小限化することが必須となります。また、これらの化学物質は、PRTR(化学物質排出移動量届出)制度に基づく第1種指定化学物質に指定されています。PRTR制度は、これらの化学物質の排出量などを規制するものではありませんが、公共用水域や土壌といった環境への排出量と廃棄物としての外部への移動量を国に届け出することが義務付けられています。さらに、届出データは国によって公表されることになっているため、事業者は、化学物質を適正に管理することが重要です。色調の違い三価クロメートと六価クロメートでは、実現可能な色調も異なります。下表は、三価クロメートと六価クロメートの実現可能な色調をまとめたものです。六価クロメートの色調には、三価クロメートの色調にはない緑色などが存在し、六価クロメートの方が色調のバリエーションが多くなっています。また、それぞれの色調も、六価クロメートの方が鮮やかだったり、光沢が強かったりするなど、六価クロメートの方が優れているとされています。しかし、近年では、三価クロメートでも六価クロメートの色調をほぼ実現できるようになっているほか、三価クロメートで下表の色調以外の色調も表現できるようになっています。<三価クロメートと六価クロメートの色調>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色六価クロメートクロメート処理六価クロム化成処理光沢クロメートユニクロ銀色青白色淡黄色有色クロメート黄色黄金色虹色緑色クロメート緑色褐色黒色クロメート黒色耐食性の違い耐食性について、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等か、上回るとされています。下表は、三価クロム化成皮膜と六価クロム化成皮膜に対し、5%濃度の塩水を吹き付けたときの白錆発生までの時間を記載したものです。下表から、無色または光沢の化成皮膜では、三価クロメートの方が六価クロメートよりも耐食性が高く、有色や黒色の化成皮膜でも、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等以上の耐食性を示しています。<三価クロメートと六価クロメートの白錆発生にかかる時間>色調の種類塩水(5%濃度)噴霧時の白錆発生までの時間三価クロメート六価クロメート無色 (銀色), 光沢 (青白色)72〜120時間24〜72時間有色120〜360時間120〜240時間緑色ー240時間以上黒色120〜240時間120〜240時間また、三価クロム化成皮膜は、六価クロム化成皮膜に比べて、高温時の耐食性が高いという特徴があります。六価クロム化成皮膜は、約70℃以上の高温で皮膜にクラックが発生し、耐食性が著しく低下します。一方、三価クロム化成皮膜は、約200℃の高温でもクラックが発生しにくく、それ故に耐食性の低下が起こりません。自己修復機能の違い上述した三価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロム化成皮膜にも備わっており、六価クロム化成皮膜の自己修復機能の方が効果が高いとされています。六価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロムによって実現されます。六価クロム化成皮膜では、皮膜が傷付いた場合でも、六価クロムが溶出して露出した亜鉛めっきを被覆し、その部分を化成皮膜に変化させます。そのため、六価クロム化成皮膜では、色調に関わらず、自己修復機能が働きます。一方、三価クロム化成皮膜では、皮膜中の成分が亜鉛めっきと成膜反応を起こすことで、皮膜が再生されます。この成膜反応の反応性は、三価白クロメートの有機系で高く、無機シリカ系では低いために、有機系の方が自己修復機能の効果が高くなっています。なお、三価黒クロメートの化成皮膜には、自己修復機能はありません。コストの違い三価クロメートは、以下のような理由から、六価クロメートと比べると高コストになるとされています。●三価クロメートが六価クロメートよりも高コストになる理由・三価クロメートの処理剤が高価。・厳密なpH管理の必要性から処理液の管理が難しく、成膜反応が遅いことから処理時間も長くなるため、処理コストが高い。しかし、近年、六価クロメートから三価クロメートへの代替が進展したことで、三価クロメートのコストは低下してきており、需要が多い色調・性能の三価クロメートでは、六価クロメートと同程度のコストとなっています。ただし、需要の少ない色調の三価クロメートはまだ割高であり、トップコートなどで性能を高めた三価クロメートは、当然ながら高コストです。三価クロム化成皮膜からの六価クロムの溶出について以上のように、三価クロメートは、六価クロメートと様々な違いはあるものの、新たな処理剤の開発や処理方法の高度化、需要増によるコスト低下などにより、六価クロメートの代替としての役割を十分に果たしつつあります。しかし、三価クロム化成皮膜にコバルトを含有している場合、皮膜に六価クロムが含まれることがあります。これは、皮膜への水分の浸透などによってコバルトが不安定化して三価クロムを酸化し、六価クロムへと変化させることがあるからです。そして、三価クロム化成皮膜から六価クロムが溶出してしまう事例も発生しており、その対策が処理剤のメーカーなどにより進められています。ただし、注意点として、六価クロムが溶出した事例についても、その量はRoHS指令などで規定された最大許容含有量よりも微量であるため、特に規制に抵触したわけではなく、欧州などでの販売ができなくなったわけではありません。なお、このコバルトの不安定化は、以下のように不安定化の原因を排除することによって抑制することができます。●コバルトの不安定化を抑制する方法・三価クロム化成皮膜中のコバルト濃度の低減。・三価クロム化成皮膜のクラック発生の抑制。・三価クロム化成皮膜への水分の浸透を防止。そして、これらの実現には、以下のような対策が効果的です。・三価クロメートの処理液中のコバルト濃度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロメートの処理時間を短くし、処理温度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロム化成皮膜の乾燥温度を低くすることで、皮膜のクラック発生の低減が可能。・高温多湿環境下での保管や使用を禁止することで、皮膜への水分の浸透を防止することが可能。・三価クロメートの処理液にコバルトの酸化抑制剤を加えることで、コバルトの不安定化の抑制が可能。三価クロメートの処理剤の各メーカーは、これらを元に処理剤の改良を進めているほか、コバルトを含まない処理剤やクロム自体をも含まない処理剤の開発にも着手しています。

  • 溶融亜鉛めっきとは?特徴、規格、加工工程を解説

    溶融亜鉛めっきは、溶かした亜鉛に製品を浸漬させてめっきを施す手法で、錆びや腐食を防止するために行われます。溶融亜鉛めっきは、標識やガードレールなど、私たちの生活の身近な製品に採用されているめっき方法ですが、どのような仕組みで防錆効果を得ているのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、溶融亜鉛めっきの特徴や加工工程、規格などについて解説します。溶融亜鉛めっきとは引用元:株式会社小池テクノ 溶融めっきの概要と利点・欠点溶融亜鉛めっきとは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸し、表面に亜鉛皮膜を形成することです。別名「どぶ付けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきの特徴と用途鋼材は溶融亜鉛めっきを施すことで、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」の2つの効果が得られ、錆びや腐食を防止できるようになります。保護皮膜作用は、鋼材の表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜を形成することを指します。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは犠牲防食作用は、亜鉛めっきにキズが付いた場合、素地の鉄が露出してもキズの周囲に亜鉛が溶けだして保護し、鉄が腐食するのを防ぎます。また、溶融亜鉛めっきは、亜鉛と素地の鉄から形成される合金層により、互いの金属が強く結合しているため、めっきが剥がれにくい特徴もあります。溶融亜鉛めっきは、長期間に渡り錆びや腐食を防ぐ効果があるため、ガードレール・標識や照明などの柱・橋梁・各種金物など、さまざまな場所で活用されています。腐食環境の厳しいところでは、亜鉛めっきの上に塗装を施すこともあります。適切な塗装系を用いて亜鉛めっき上に塗装を施した場合、以下表のように耐用年数が通常の亜鉛めっきの2倍程度の効果が得られるとされています。<亜鉛めっき上に塗装した時の耐用年数(単位:年)>亜鉛付着量田園地帯海洋工業地帯g/m2めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食107~2294~1510~25    2~11    7~241~45~15305~48818~3735~5013~2825~465~612~30488~76335~6045~7028~4037~6015~2120~32引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装についてただし亜鉛は活性の高い金属で、鉄素地と同じ要領で塗装をすると塗膜が剥離しやすくなるため、エポキシ系などの密着性のよい塗装系を選択しなければなりません。参考として、日本溶融亜鉛鍍金協会で記述されている、亜鉛めっき面への塗装の実例を以下に示します。<亜鉛めっき面への塗装仕様>新設亜鉛めっき面への塗装仕様既設劣化亜鉛めっき面の塗装仕様工程塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料素地調整油分の付着は脱脂洗浄する。付着性を確保するためにスイープブラスト処理を行う。ブラスト処理が難しい、複雑形状の小部材は屋外で暴露し、白さびを除去した後塗装してもよい。表面に付着しているほこり、ゴミなどを清掃除去する。油分の付着は脱脂洗浄する。白さびは研掃たらしなどで除去し、赤錆発生部は電動工具でSIS St3に素地調整する。補修塗--亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗塩化ゴム系塗料下塗亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装について溶融亜鉛めっきのメリット溶融亜鉛めっきは以下のようなメリットがあります。・保護皮膜作用・犠牲防食作用により、錆びや腐食を防止する。・長い年月が経過してもめっきが剥がれにくい。・大気中であれば数十年にわたる耐用年数が期待できる。・めっき槽に浸漬できるものであれば、ボルト・ナットなどのサイズの小さな製品から、橋梁やガードレールなどの比較的大型の構造物までめっきが可能。溶融亜鉛めっきのデメリット溶融亜鉛めっきのデメリットは以下の通りです。・密閉した部分のある製品や、複雑な形状の製品はめっきできない場合がある。・海岸地帯や工業地帯では耐用年数が短くなる溶融亜鉛めっきは、密閉構造の製品や内部に空気がたまる箇所があると、浮力が働いてめっき槽への浸漬が難しくなるほか、内部の空気が膨張することで水蒸気爆発を起こしてしまいます。これらを避けるためにも、構造物には切り欠きや空気抜き孔が必要です。溶融亜鉛めっきの規格溶融亜鉛めっきの規格は、JIS規格の【JIS H 8641 溶融亜鉛めっき】があります。JIS H 8641:2007では、溶融亜鉛めっきの種類及び記号を以下のように記述しています。<溶融亜鉛めっきの種類及び記号>種類記号適用例(参考)1種 AHDZ A厚さ5mm以下の鋼材・鋼製品、高管類、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。1種 BHDZ B厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品、鋼管類及び鋳鍛造品類。2種 35HDZ 35厚さ1mm以上2mm以下の鋼材・鋼製品、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。2種 40HDZ 40厚さ2mmを超え3mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 45HDZ 45厚さ3mmを超え5mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 50HDZ 50厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 55HDZ 55過酷な腐食環境下で使用される鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。備考1,HDZ 55のめっきを要求するものは、素材の厚さ6mm以上であることが望ましい。素材の厚さが6mm未満のものに適用する場合は、事前に受渡当事者間の協定による。2,表中、適用例の欄で示す厚さ及び直径は、呼称寸法による。3,過酷な腐食環境は、海塩粒子濃度の高い海岸、凍結防止剤の散布される地域などをいう。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっきまた、溶融亜鉛めっきの種類及び記号ごとのめっき付着量は、JIS規格に規定された試験を行ったとき、以下の表に適合しなければなりません。<溶融亜鉛めっきの付着量及び硫酸銅試験回数>種類記号硫酸銅試験回数付着量g/m2平均めっき膜厚μm(参考)1種 AHDZ A4回-28~421種 BHDZ B5回-35~492種 35HDZ 35-350以上49以上2種 40HDZ 40-400以上56以上2種 45HDZ 45-450以上63以上2種 50HDZ 50-500以上69以上2種 55HDZ 55-550以上76以上備考1,めっき膜厚とは、めっき表面から素材表面までの距離をいう。2,1種A及び1種Bの平均めっき膜厚欄の数値は、硫酸銅試験回数から推定した最小めっき皮膜厚さの範囲を示す。3,平均めっき膜厚は、めっき皮膜の密度を7.2g/cm3として、付着量を除した値を示す。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっき溶融亜鉛めっきの加工工程引用元:新潟亜鉛工業株式会社 溶融亜鉛めっきとは? 加工工程溶融亜鉛めっきの基本的な加工工程は、以下のようにして行われています。1.脱脂処理:鉄鋼製品の表面に付着した油脂や塗料を除去するため、苛性ソーダ水溶液に浸します。2.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している脱脂液を洗い流します。3.酸洗処理:鉄鋼素材に付着した錆びやスケールを除去するため、塩酸または硫酸水溶液に浸します。4.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している酸洗液を洗い流します。5.フラックス処理:酸洗後の錆びの発生防止と、鉄と亜鉛の合金反応を促進させるため、加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に漬けて、素地表面にフラックス皮膜を形成させます。6.乾燥:亜鉛の飛散(スプラッシュ)を抑えるために乾燥させます。7.めっき:鉄鋼素材を溶融した亜鉛浴のなかに浸して皮膜を形成させます。鋼材の材質や形状によって最も適合するめっき条件を選択します。8.冷却:めっきを施した鉄鋼製品を温水で冷却します。冷却の工程により、鉄と亜鉛の合金層の成長を抑えます。

  • ニッケルめっきとは?種類や特徴、メリット・デメリット

    今回はニッケルめっきの種類や特徴について解説します。ニッケルめっきは、美しい外観と優れた耐食性を有しためっき処理で、電気コネクターやスイッチの装飾・防食、金めっきやクロムめっきの下地めっきなど、幅広い用途で採用されています。しかしニッケルめっきは、皮膜を析出させる手法の違いで「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」に分かれており、それぞれで特徴に違いがあります。参考:【めっき処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!ニッケルめっきとはニッケルめっきとは、その名前の通り、ニッケルの成分を用いためっきのことを指します。ニッケルは、適度な硬度と柔軟性があり、強磁性を示す金属です。ニッケルめっきを施すと、黄白色の美しい外観になるほか、優れた耐食性が得られます。ニッケルめっきは変色しにくいことから、美観性の向上を目的として利用されることが多くあります。対応する素材は、鉄鋼材料・銅・銅合金・ステンレス・アルミなどが代表的です。ニッケルめっきの種類と特徴ニッケルめっきには、大きく分けて「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」の2種類があります。電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎電解ニッケルめっきは、外部電源から供給される電気を利用してめっきを行う手法で、「電気ニッケルめっき」とも呼ばれています。上図のように、陽極のニッケル極板を用い、ニッケルを溶解させることで、陰極の材料にめっきを行います。電解ニッケルめっきは、ステンレス・銅素材への処理がしにくい特徴がありますが、前処理である「ニッケルストライクめっき」を施すことで、良好な皮膜を析出できるようになります。電気ニッケルめっきは、さらに細かく分類すると、「光沢ニッケルめっき」「半光沢ニッケルめっき」「無光沢ニッケルめっき」の3種類があります。●光沢ニッケルめっき光沢ニッケルめっきは、光沢のある黄白色の外観で、変色しにくい特徴があります。ただし、皮膜の硬度が高く、二次加工時のスポット溶接の不具合・カシメ加工でのめっき割れや、クラックなどの不良が発生しやすい点に注意が必要です。用途としては、金めっき・銀めっき・クロムめっきなどの光沢が必要な場合の下地めっきや、耐食性を必要とするめっきの下地、はんだ付けなどに採用されています。●半光沢ニッケルめっき半光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきと比べて光沢が控えめで、柔らかい特徴があります。また、光沢ニッケルめっきと組み合わせた2層のめっきである「ダブルニッケルめっき」を施すことで、より優れた耐食性を得られるようになります。引用元:株式会社三和鍍金 【連載】ダブルニッケルとは vol.2~電位差とガルバニック腐食~ダブルニッケルめっきは、材料の外層にある光沢ニッケルめっきを優先的に腐食させて、素地への腐食を遅らせることが可能です。半光沢ニッケルめっきは、はんだ付け製品に多く採用されています。ダブルニッケルめっきでは、優れた耐食性を有することから、自動車部品や機械部品、装飾部品などに採用されています。●無光沢ニッケルめっき無光沢ニッケルめっきは、その名前の通り光沢のないニッケルめっきです。光沢を出すために必要な添加剤の影響がないので、安定したニッケルめっきの皮膜が得られます。溶接性に優れ、折り曲げても割れにくいため、カシメ加工に強い特徴があります。ただし、表面に指紋が付きやすいほか、経年変化による変色が発生する場合があります。無電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎無電解ニッケルめっきは、電気を利用せず、化学的還元作用によりめっきを施す手法で、別名「カニゼンめっき」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、還元剤である次亜リン酸塩が酸化され、亜リン酸塩になります。このときに電子を放出してニッケルイオンを還元し、めっき皮膜になる仕組みです。無電解ニッケルめっきは、電解ニッケルめっきよりも均一に皮膜を析出できるので、寸法精度を要する製品や、複雑な形状の製品のめっきに適しています。ただし、他の表面処理に比べて単価が高い傾向にあります。無電解ニッケルめっきは、主にリンが含まれており、リンの含有量によって「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」に分類されます。リンの含有量が多いと、ピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。これらは熱処理を施すことで、析出時500~700Hvの硬度が、900〜1000Hv程度まで向上させられます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!また、無電解ニッケルめっきは、ホウ素を含有したものもあります。各種類の特性については以下の通りです。●低リンタイプ低リンタイプは、リン含有率が1~4%程度の無電解ニッケルめっきで、700Hv程度の優れた硬度と耐摩耗性を有していますが、耐食性には劣ります。●中リンタイプ中リンタイプは、リン含有率が5~10%程度で、最も一般的に採用されている無電解ニッケルめっきです。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも良好で、汎用性に優れています。●高リンタイプ高リンタイプは、リン含有率が11~13%程度で、耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。●無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素の含有率が0.2~1.0%の無電解ニッケルめっきで、はんだ付け性や硬度に優れています。ニッケルめっきのメリットとデメリットニッケルめっきは、美しい外観と、優れた耐食性を備えているのがメリットです。ダブルニッケルめっきや高リンタイプの無電解ニッケルめっきを用いれば、より高い耐食性が得られます。無電解ニッケルめっきでは、熱処理を行うことで、用途によっては硬質クロムめっきに匹敵するほどの硬度が得られます。一方で、ニッケルめっきのデメリットは、電解ニッケルめっきを施したときに、薄い膜厚しかつかないなど均一性に乏しいこと、パイプ内部などの電気が届かない箇所は皮膜が付きにくいことが挙げられます。複雑な形状や均一にめっきを施すのに適している無電解ニッケルめっきでは、コストが比較的大きくかかってしまう点もデメリットと言えます。

  • Mitsuri|金属加工

    金属加工の塗装の依頼方法のコツ!

    過去の記事で、各塗装方法の特徴、メリット・デメリットを解説してきました。※気になる方は、こちらの記事をご覧ください。こちらの記事では、実際に工場へ塗装を依頼する方法と、NG例を紹介します。【6分でわかる】塗装の依頼方法工場さんに塗装をお願いするときのコツを簡単に動画で解説しています!6分程度でサクッと見れるので、お時間が無い方はぜひご覧ください!YouTubeにて、金属加工Mitsuriチャンネル運営中!こちらからご覧ください!一言で「塗装」と依頼するだけでは見積がつきません。下記の項目を埋めて、初めて見積や加工ができるようになります。①どの製品に塗装するのか図面を用意する②個数③色を指定④艶の具合⑤塗装方法 ※指定なしでもOK⑥用途①製品の図面を用意するサイズ・形状・材質がしっかり記載された図面を用意しましょう。サイズ・形状により、用意する塗料の量が変わります。材質により、塗装金額が変わる場合もございます。また、塗装する際は吊り下げて塗装をすることが大半です。必ず吊り穴となる穴があるように設計しましょう。穴のない製品で塗装を依頼すると、工場から吊り穴の追加をお願いされることが大半です。必ずチェックしましょう!②個数個数が多ければ多いほど製品1個あたりの塗装費は安くなります。さらに、用意するべき塗料の量も左右されるため、必ず記載しましょう。③色の指定塗装できる色は様々で、原色のものもあれば調色してご希望の色に合わせることもあります。「黒」や「白」というオーダーであればわかりやすいのですが、「緑」というオーダーであれば、工場も困ってしまいます。例えば「緑」という色でもこのように様々な「緑」があります。どの「緑」かわかるように、予め色を細かく指定しましょう。色の指定方法は大きく4つあります。マンセル値で指定マンセル値は、数字とアルファベットで色を表しています。R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)、と基本の5色相とその中間色で計10色相をアルファベットで表します。中間色とはYRの場合はR(赤)とY(黄)の中間になるので、オレンジになります。各色相は、主に2.5、5、7.5、10と数字を刻みます。5Bあたりにつきましては、青緑色になっており、一般的に青と想像できる色とずれていますのでご注意ください。また、明度と彩度も数字で表します。明度は黒を0、白を10として11段階に分割しています。しかしながら、完璧な黒、完璧な白は再現できないため、0や10はなく、最も暗い黒で1.0、最も明るい白で9.5になります。彩度は鮮やかさを0から14程度までの数値で表します。白や黒といった無彩色に近い、色味の薄い色ほど0に近く、鮮やかな色ほど数値が大きくなります。最も鮮やかな色の数値は色相によって異なり、赤は14〜16程度ありますが、青は8程度になります。ご希望の色の数値を確認したい場合は、マンセル値測定器を使うか、色見本から選択してみてください。通称:「日塗工」の色見本帳から色を選択する「日塗工」とは、一般社団法人日本塗料工業会の通称です。色見本帳を見ながら色を選択できます。「色票番号」という各色をアルファベットと数字で組み合わせた番号で色を指定します。1995年を境に色票番号の表記ルールが変わっています。現行の番号と表記が違う場合はご注意ください。色見本帳は2年毎に最新版が発行されています。こちらのページを書いた2022年4月ですと、最新版は2021年版になります。また、色見本帳の有効期限は3年と設定されています。塗料の色にも色見本帳の色にも経年劣化があり、数年経てば原色を保っていることがありませんので、色の打ち合わせは最新版でのお話をおすすめします。参考:一般社団法人 日本塗料工業会色見本サンプルを工場に送るすでに塗装されたものを塗装工場に送り、同じような色に調色してもらえるよう塗装を依頼できます。サンプルは見積依頼をする際に同意を得る前に送るのではなく、必ず工場の同意を得てから小さいサイズのものを送りましょう。色にこだわりがない場合は…こだわりがない場合は、こだわりがない旨を伝えましょう。ある程度色の希望を伝えつつ、下記のように伝えてみましょう。例)「白に近い色であれば大丈夫です。」「鮮やかな青でお願いします。塗料はあり合わせのもので大丈夫です。ない場合は原色の青でお願いします。」色の希望もない場合は、白・黒・ベージュから選択してみましょう。この3色は、よく塗装される色です。そのため、塗料を在庫している可能性が非常に高いです。都度塗料を調達する必要がなくなる可能性が高いため、塗装費が他の色と比べて安価になる可能性が高いです。どの色の指定方法も厳密にいえば、色の差が発生してしまいます。複数の部品を塗装し、組付けして、色のわずかな差が気になるようでしたら、塗装のみ同じ塗装工場へ出せるように手配するのがオススメです。④艶の具合色を選択したら次は艶です。艶の具合は、艶あり・艶なし・半艶(五分艶)・〇分艶と指定します。艶の有無は塗料に艶消し剤を入れて作っていきます。そのため、艶ありより艶なしの方が艶消し剤を入れる段取り分高価になります。艶の有無でも単価に差が生じますので、必ず指定しましょう。⑤塗装方法(指定なしでもOK)様々な塗装方法があります。各塗装方法やメリットデメリットはこちらの記事で解説しています。吹付塗装、焼付塗装、粉体塗装、電着塗装など様々な塗装方法があります。特に指定がない場合は一般的に吹付塗装か焼付塗装になります。もし、シボ加工のように表面に凹凸を出すような特殊な塗装をご希望の場合は必ず記載しましょう。対応可能な工場が限られてくる上に、通常の塗装より高価になります。⑥用途簡単で構いませんので記載しましょう。塗料にも屋内用と屋外用があります。それ以外にも用途別で塗料がラインナップされています。屋内用か屋外用かだけでも記載しましょう。塗装の依頼は、図面、個数、色、艶、塗装方法、用途の項目を揃えることでスムーズに依頼ができるようになります。一つでも欠けてしまうと見積がつかなくなる可能性が高くなりますので、必ず依頼前に確認しましょう。図番:ABC-333個数:30個色:2.5Y8/1.5艶:艶あり塗装方法:焼付塗装用途:屋内用図面に記載する箇所がない場合は、上記のように記載するとわかりやすくなります。いかがでしたか?Mitsuriでは塗装も含めた金属加工を依頼できます。見積依頼はこちらから!

  • 化成処理とは?種類ごとの特徴を解説

    防錆や金属の皮膜処理について調べていると化成処理という言葉を目にします。めっきと同じような処理のため「何が違うの?」「どんな特徴があるの?」といった疑問が生まれてくるかもしれません。今回は、化成処理とはどのような処理なのか、種類、目的などについて、詳しく解説していきます。化成処理とは化成処理は、金属をはじめとする加工物を溶液に浸透させて皮膜を作る表面処理のひとつです。表面に処理剤を用いて化学反応を起こさせることで、元の素材とは違った性質を与えることができます。耐食性に加えて外観の向上も見られるほか、下地として処理をすることで塗装との密着性を上げる目的としても活用されます。同じような処理方法のめっきと同列で扱われることもありますが、化成処理は化学薬品を使用したり、電気化学を応用したり、科学的方法を用いて素材に皮膜を生成するため、めっきとは別の処理として考えられることも少なくありません。化成処理の種類化成処理にはいくつか種類がありますが、その中でも代表的な4種類をご紹介します。リン酸塩処理・主に鉄鋼製品に対して採用される・リン酸塩系の処理液を用いて表面を化学反応させ、皮膜を生成する・表面保護効果に加え、塗料との親和性を高める効果があるリン酸塩処理はパーカー処理やパルホス処理とも呼ばれ、鉄をはじめとする金属系の加工物をリン酸塩系の処理液に浸漬させることで表面を化学反応させる化成処理です。使用される処理液は、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム等の種類があり、それぞれに異なる特徴を持っています。処理方法によって種類は異なりますが、いずれも表面に凹凸のある皮膜が生成される特徴があります。錆をはじめとする腐食を抑える表面保護効果に加え、塗料との親和性を高めることもできるため、塗装の下地処理としても多く活用されます。最も多く用いられているリン酸亜鉛処理は、さまざまな素材に対応できますが、処理液によっては鉄鋼製品以外には使用できないものもあるため注意が必要です。⇒リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説クロメート処理・主に亜鉛めっきが施された加工物の後処理に用いられる・六価クロム、三価クロムを含む処理液を用いた化成処理・自己修復性の皮膜によって耐食性の向上や変色防止の効果があるクロメート処理には黄銅、亜鉛、アルミニウムなどが主に使用されます。加工物を六価クロム、もしくは三価クロムを用いた含む溶液に浸漬させ、表面に酸化皮膜を生成する化成処理です。クロメート処理によって得られる酸化被膜は自己修復性を持っており、他の皮膜に比べて高い耐食性を示します。さらに、塗装の代替としても使える着色クロメートや、塗装の前処理として活用できる塗装下地クロメートなど、幅広い活用法が見込めるとして注目を集めています。クロメート処理は素材に直接処理を施すだけでなく、亜鉛めっきが施された加工物の後処理として行われることも少なくありません。これは亜鉛が変色しやすく指紋などがつきやすい性質を持っているからです。亜鉛めっきは特に、湿気のある環境では白色斑点などを生じやすい欠点を持っています。合わせてクロメート処理を施すことで、光沢性と耐食性を付加できるため、電気亜鉛めっきでは不可欠な技術となっています。この他、アルミやマグネシウムの処理に採用される場合は塗装との密着性向上を、無電解ニッケルめっきの後処理に採用する場合は耐食性と変色防止を目的とするなど、素材に応じてさまざまな用途で活用されています。⇒三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違いジンケート処理・アルミニウム合金に対し、めっきの前処理として用いられる・ジンケート(亜塩酸塩)を使った薬液に浸漬させる化成処理・アルミの酸化皮膜を溶かし、亜鉛皮膜を形成させることでめっきの密着不良を解消するジンケート処理は主にアルミニウムやマグネシウムなどの合金に対し、前処理として採用される化成処理です。近年、自動車をはじめとするさまざまな製品に対し、軽量化を目的としてアルミニウムが採用されています。このアルミニウム合金にめっき処理を施す際、前処理としてジンケート処理が不可欠です。アルミニウム合金の表面に、耐摩耗性や装飾性の向上を目的にめっき処理が行われます。しかし、アルミニウム合金は大気中の酸素によって緻密で強固な酸化被膜を形成する特性があります。この酸化被膜はめっきの密着性を阻害してしまうため、ジンケート処理を2回行うダブルジンケート処理によって密着不良を回避しています。黒染め処理・鉄鋼製品に対し、1~2μmの薄い酸化被膜を生成させる・アルカリ水溶液を使った化成処理で、黒色の皮膜が生成される・耐食性・耐熱性を持っている上に見栄えが良く、コストも安い黒染め処理は、アルカリ水溶液に鉄鋼系の加工品を浸漬させることで、表面に耐食性のある黒色の酸化皮膜を生成させる化成処理です。他の化成処理に比べて耐食性の効果は低めですが、皮膜の厚さが約1~2μmと薄く、コストが低いメリットがあります。実際には黒く染めている訳ではなく、鉄の表面が酸化して四酸化三鉄の皮膜で覆われることで黒く変色していますが、見栄えが良い上に防錆効果もあるため、黒く染める用途として採用されることも少なくありません。黒染め処理によって生成される皮膜はめっきや塗装に比べると非常に薄いですが、剥離の心配がなく、経年変化においても寸法精度がほとんど変わりません。また、見た目の美しさや耐熱性の高さ、価格の安さなど、多くのメリットを持ち合わせています。さらに、錆びている製品に対しても、酸洗い処理などによって錆を落とした後で黒染め処理をすることができ、汎用性が高い点も魅力のひとつです。⇒金属の黒染め加工とは?効果と材料向き不向き

  • リン酸塩処理とは?種類と処理工程を解説

    リン酸塩処理は、リン酸塩の処理液を用いて素材の表面を化学反応させることで皮膜を形成させる化成処理です。金属の錆を防止したり素材を強化したりできるため、金属加工の種類のひとつとして用いられてきました。リン酸塩処理は別名「リン酸塩皮膜処理」、処理の種類ごとに「リン酸マンガン皮膜」「リン酸亜鉛皮膜」「リューブライト」とも呼ばれます。また、リン酸塩処理を工業用途で本格的に発展させたパーカー兄弟の姓を取った「パーカーライジング」「パーカー処理」という名前も浸透しています。リン酸塩処理は用いるリン酸塩の種類によっても強度や効果が異なるため、目的や用途に応じた処理が必要です。今回は、リン酸塩処理の種類や工程、用途などについて解説していきます。リン酸塩処理とはリン酸塩処理は、鉄をはじめとする金属系の加工物に施す化成処理の一種です。表面を化学反応させることで皮膜を生成し、元の素材とは異なる性質を付与できるため、古くは武器や道具の錆・塗料の剥離防止などの目的で用いられてきました。現在でもその目的は変わらず、自動車部品をはじめとする工業製品に対して広く採用されています。リン酸塩処理は錆を含めた腐食の進行を抑える表面保護効果として塗装の下地に用いられることが多いですが、それ以外にも金属加工時に潤滑剤と併用することで塑性加工を容易にする目的でも用いられます。リン酸塩処理の種類リン酸塩処理には、リン酸亜鉛処理が最も多く用いられますが、その他にも全部で4種類の処理があります。それぞれ異なる特徴があるため、処理の成分や利点などをご紹介します。リン酸亜鉛処理リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理の中で最も多く用いられている処理方法で、主成分はリン酸イオンと亜鉛イオンで構成されます。結晶性の皮膜を形成することで耐食性、密着性を大きく向上させる効果があり、鉄鋼や亜鉛製品の塗装下地や冷間鍛造の潤滑皮膜として使用されます。また、熔解亜鉛めっきを施したスチール製品は、美観をより重厚感や高級感のあるものに変化できるため、仕上がりに自然な質感が求められる製品にも採用されます。リン酸亜鉛処理は経年変化で少しずつ変色が見られ、濃淡が落ち着いて周囲の景観と調和してくる傾向があります。処理温度60度以下のものが多く、常温で処理ができるものもあり、使いやすいことも採用されやすい理由のひとつとなっています。リン酸カルシウム処理リン酸カルシウム処理は、リン酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンから構成されており、結晶性の皮膜を形成します。同じ結晶性皮膜を構成するリン酸亜鉛処理に比べて耐熱温度が高く、高温で焼き付ける塗装下地に適しています。リン酸カルシウム処理は冷間鍛造による潤滑皮膜として用いられることもありますが、鉄鋼製品に対して用いられることが多く、処理温度は80度~90度と高いのが難点とされています。リン酸鉄処理リン酸鉄処理の主成分はリン酸イオンで、他のリン酸塩処理と違い、非晶質の皮膜が形成される特徴があります。形成される皮膜は1μm以下と非常に薄く、干渉色によって青や黄色などの皮膜外観になります。皮膜成分はリン酸鉄で、皮膜の成分に鉄を必要とするため、適応素材は鉄鋼製品に限定されます。リン酸鉄処理はリン酸亜鉛処理に比べて耐食性に劣りますが、何も処理しない場合に比べると耐食性は高いです。加えて塗装密着性も得られ、他のリン酸塩処理に比べて安価で溶液管理がしやすいため、塗装下地として好んで選ばれる傾向があります。リン酸マンガン処理リン酸マンガン処理の主成分はリン酸イオンとマンガンイオンから構成されており、結晶性の皮膜が形成されます。皮膜の主成分はヒューリオライトで、リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く、表面の粒子が粗い特徴があります。リン酸マンガン処理は耐摩耗性に優れ潤滑作用が大きいことから、ギアやピストン、ベアリングをはじめとする摺動部品に多く採用されます。リン酸鉄処理と同様、加工は鉄製品に限定されるほか、処理温度も80度~90度と高く、処理時間も5~30分程度かかってしまう欠点があります。リン酸塩処理の工程リン酸塩処理の工程は主に以下の5つに分けられます。1.アルカリ脱脂剤を用いた洗浄2.水によるすすぎ洗い3.リン酸塩による処理4.水によるすすぎ洗い5.熱温風による乾燥1と3の工程で薬剤が使用され、各処理に合わせて1分から長い場合は10分以上かけるものもあります。また、防錆、塗装、塑性加工などの目的に応じて処理が異なります。リン酸塩処理の目的が防錆である場合は、表面に防錆油を塗布します。塗装が目的の場合は電着塗装や溶剤塗装と同一ライン内で施され、必要に応じて上塗り塗装まで続けてなされます。塑性加工が目的の場合、乾燥前に追加工程としてステアリン酸ナトリウムを主成分とする石鹸処理が施されます。

  • 塗装とは?金属加工の塗装について解説!

    塗装と聞くと、金属をはじめとするさまざまな物に色を塗り、見た目をキレイにするイメージがありますが、それ以外にも金属をコーティングすることで保護する役割を持っています。そのため、めっきと比較されることも少なくありません。今回の記事では、塗装の特徴や種類、メリット・デメリットやめっきとの違いなどをご紹介します。金属製品を装飾したり、保護・防錆をしたりすることを目的に塗装を考えている方は、どういった種類の塗装をするのが適しているのかも含め、ぜひ参考にしてください。塗装とは塗装とは、物体に塗料を塗って塗膜を形成させることを言います。とりわけ、金属製品への塗装は、装飾に加え、コーティングによる保護を目的に用いられます。特に、錆による劣化は金属の天敵となるため、水からの保護が欠かせません。他にも、汚れや油など、さまざまなものから守るための役割を持っています。塗装の多くは常温・大気下で皮膜となる塗料を塗布することができます。一般的にはハケやローラーなどを用いて塗布する印象が強いですが、金属部品の加工にはさまざまな種類の塗装が存在しています。塗装の種類金属加工における塗装は、ただ単純に金属に色を塗れば良いというわけではありません。なぜなら、金属によって相性の良い塗装と相性の悪い塗装があるからです。もし、適切な塗装方法を選択しなかった場合、せっかく塗った塗料がすぐに剝がれてしまい、見た目が悪くなるだけでなく、目的の「保護」の役割を果たせなくなってしまう可能性があります。そのため、製品をキレイに保つためには目的に合った塗装方法を選択肢することが重要と言えます。下記は、金属加工における一般的な塗装の種類です。溶剤塗装溶剤塗装は、シンナーなどの有機溶剤に樹脂や顔料を混ぜた塗料を塗布する方法のこと。塗装の中で最もスタンダードな方法で、ハケやスプレー、ペイントローラーを使って物体に塗料を塗っていきます。溶剤塗装は他に比べて塗料が安く、製品単価を下げられるメリットがあります。ただし、有機溶剤には中毒性があり、大気汚染などの危険性があるため取り扱い方法に注意が必要です。⇒溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!焼付塗装焼付塗装は、塗料に熱を加え揮発させることで、乾いたときに硬化し、強度を高める塗装方法のことです。皮膜を硬化させるにあたって100度~200度を超える高温にする必要があります。焼付塗装は製品と塗膜の密着性が高く、温度や湿度、風雨などに晒される屋外の環境下で高い効果を発揮できるため、自動車などのボディの下塗りにも用いられます。メラミン、フッ素、アクリルと、焼付塗装にも大きく分けて3つの種類があり、それぞれに塗装温度や硬化、安全性などに違いがあるので、目的に応じて選択が必要です。電着塗装電着塗装は、塗料が入った液体の中に加工物を入れ電気を流すことで、塗料を加工物に付着させ、塗膜を形成させる方法です。ハケやローラー、スプレーなどではムラができてしまいやすい、複雑な形状の素材にも均一な塗膜を形成させることができるほか、膜厚をはじめとする処理条件も管理しやすいため、大量生産に向いている塗装方法です。一方で、塗装をするために設備をはじめさまざまな準備が必要となるため、小ロットの生産には不向きと言えます。静電塗装静電塗装は、帯電した塗料を利用することで、静電気によって塗料が加工物に引き寄せられ、塗膜を形成する方法です。塗料を効率よく付着させることができ、均一で美しい仕上がりの塗膜になる特徴があります。一方で、高電圧の作業が必要となるため、感電や火災などの事故が発生しないよう、十分に注意しながら作業を進める必要があります。基本的には手作業よりも産業用ロボットなどを用いたライン生産方式が適しており、自動車の車体や家電、OA機器などの塗装に用いられます。粉体塗装粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気によって付着させた後、加熱溶解することで塗膜を形成する方法です。他の塗装は一般的に液状の塗料が用いられますが、それに比べてより厚い塗膜を形成しやすい特徴があります。さらに、塗料の入れ替えがしやすく、吹き付けた後、飛散した塗料を回収・再利用しやすいため、高い塗料を無駄なく活用することができます。自動車や家電製品などのライン生産に多く用いられます。塗装処理の工程塗装は主に、前処理、調合、塗布、乾燥の4ステップに分かれています。これは、溶剤塗装から粉体塗装まで、まったく異なる塗料を用いても基本的に変わることはありません。各工程において、どのような作業が発生しているのか、詳しく解説していきます。1.前処理前処理は、加工物に塗料をしっかりと密着させるための処理のこと。具体的には、材料表面の油や錆、異物などを取り除いてキレイにする作業のことです。例えば、過去に塗られていた塗装や錆をやすりなどで削っていったんキレイにする作業も前処理のひとつです。もし、前処理をしないまま作業を進めてしまうと、せっかく塗った塗料が塗装後に剥がれやすくなるなど、不具合が発生しやすくなるため、塗装後の製品をキレイなまま長持ちさせるためにも重要な工程と言えます。前処理は、研磨による機械的処理と、表面を皮膜で覆う科学的処理の2種類があります。目的や用途、加工物の状態などによってどちらをチョイスすれば良いかも変わります。2.調合調合は、塗料の準備の工程です。機能性を高めるために複数の塗料を混合したり、目的に合わせて色を調整したりするために、異なる塗料を調合することも少なくありません。また、塗装方法や作業環境に応じてシンナーの希釈剤を入れて塗料を調整することもあります。エナメルをはじめとする顔料を含んだ塗料は沈殿している場合があるため、色むらをなくすためにしっかり撹拌して使用する必要があります。また、手作業で塗料を混合する場合、比率を間違えると乾燥不良や塗膜の欠陥が出る可能性があるため、正確な作業が求められます。3.塗布塗布は、製品に塗料を付着させる工程のことです。材料に応じて塗ったり吹き付けたり、上述した塗装方法を用いて加工物に塗膜を形成させます。また、目的に応じて下塗り、中塗り、上塗りなど、複数回に分けて塗料を塗布することもあります。塗布工程は、仕上がりの見た目の美しさや均一性など、製品の品質に大きく影響するため、最も重要な工程と言えます。製品をキレイな状態で長持ちさせるためには、相性の良い塗装方法を選択し、適切に作業を進めることが大切です。4.乾燥塗料は乾燥することで塗膜の役割を果たす、いわゆるコーティングへと変化します。そのためには、常温乾燥、または加熱乾燥が必要です。常温乾燥にも、何もせずに一定期間置いておく自然乾燥と、紫外線や電子線を照射して乾燥させる方法の2種類があります。また、加熱乾燥では熱風や赤外線、電磁誘導など、複数の乾燥方法が用いられています。乾燥方法も、塗装の種類に適したカタチで行わなければ、穴があいてしまったり、硬化状態が悪かったりと、塗膜に欠陥が発生してしまう可能性があります。塗装のメリット・デメリット塗装には、めっきをはじめとする他の表面処理に比べたメリット・デメリットが存在します。●塗装のメリット・常温・大気下で塗布することができるため、汎用性が高い・塗装方法によっては現地で作業ができる・大きさに影響されにくく、大小さまざまなものに表面処理を施すことができる・金属だけでなく、ガラスやセラミック、木材などにも塗布できる・方法や塗料の種類が多いため、選択肢が多い・塗装の膜厚を薄いものから厚いものまである程度調整できる・塗り直しができる・めっきに比べてコストが安い●塗装のデメリット・製品と塗膜の密着性が他の表面加工に比べて高くない・作業者のスキルによって表面にムラが発生しやすい・めっきに比べると強度が低く、損傷しやすい・めっきに比べて剥がれやすい塗装とめっきの違いメリット・デメリットから見ても分かるように、塗装は処理方法や効果の関係上、めっきと比較されがちです。これは、塗装とめっきがいずれも表面に膜を形成し、装飾性を高めつつ、加工品を保護する役割を持っているからです。塗装に比べてめっきの方が高価な分、保護効果が高く長持ちします。一方、塗装はめっきに比べて剥がれやすい、損傷しやすいなどのデメリットはあるものの、塗り直しによって保護効果を再度高めることができるため、メンテナンスを加えることで長持ちさせることが可能です。また、めっきは取り扱う金属の種類やサイズ、環境などによって対応できない場合があり、塗装ほど汎用性に優れていません。それぞれの特徴を詳しく理解した上で、どちらをチョイスした方が良いか判断したい場合は、下記記事でより詳しい情報をチェックしておきましょう。⇒めっきと塗装の違いは?それぞれの特徴、めっき塗装に関しても解説!

  • 粉体塗装とは?特徴、種類、メリット・デメリット

    粉体塗装とは、パウダー状の塗料を金属に直接付着させて加熱し、乾燥させて固めることで塗膜とする塗装法です。一般的な塗装に用いられる有機溶剤を全く使用しないため、環境や人体への影響が小さく、環境保全や健康増進への取り組みが強化されている現在、注目が集まっています。また、省資源性にも優れるほか、自動化しやすいという特徴もあります。これらの理由から、溶剤塗装からの転換が進んでおり、その市場は拡大しています。この記事では、粉体塗装とは何かというところから、その方法や種類、特徴、メリット・デメリットまで、詳しく解説していきます。粉体塗装とは粉体塗装とは、パウダーコーティングとも呼ばれる、粉末状の塗料を用いる塗装のことです。細かく粉砕して粉状にした塗料(粉体塗料)を、塗装対象物に直接付着させ、高温で溶かしてから、乾燥させて固めることで塗膜を形成します。加熱して固化させることで塗膜を形成することから、焼付塗装の一種でもあります。参考:焼付塗装ならMitsuri!1コ〜お受けいたします!粉体塗料には、エポキシやポリエステルなどを含む熱硬化性のものと、ポリエチレンやナイロンなどを含む熱可塑性のものがあります。粉体塗料は、これら樹脂のほか、顔料、添加剤をパウダー状にしたものから構成されており、溶剤塗料や水性塗料の成分である有機溶剤や水などの溶媒は含みません。なお、ここでの添加剤とは、硬化剤や乾燥剤、消泡剤、フィラー(充填剤)などで、塗料の流動性・湿潤性の調整や塗料の脱気(空気を除去すること)などの機能を持ちます。粉体塗装は、他の種類の塗装と同じく、塗装対象物の防錆や着色、耐候性向上、美観向上、機能性付与などが目的です。また、溶剤塗装に比べて、環境汚染や健康被害、火災などのリスクが低いため、溶剤塗装からの転換が進んでいます。参考:溶剤塗装とは?特徴や粉体塗装との違いについて専門家が解説!粉体塗装の方法粉体塗装の方法には、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法があります。●静電粉体塗装法参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合静電粉体塗装法は、アースに繋げてプラスに帯電させた塗装対象物へ、スプレーガンにてマイナスに帯電させた粉体塗料を噴射することで、塗料を静電的に対象物へ付着させる方法です。この塗装法では、一般的に熱硬化性粉体塗料を使用し、加熱によって架橋と呼ばれる化学反応を誘起することで硬い塗膜を形成します。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動することはありません。この塗装法では、以下の工程に従って塗装を行います。1. 前処理…油脂成分を除去するアルカリ脱脂処理や錆を落とす酸洗処理、薬液などを洗い流す水洗処理を実施する処理工程。塗装の密着性向上を目的としており、素材によっては、塗膜のさらなる品質向上のために化成処理なども行う。2. 水切り乾燥…乾燥炉で塗装対象物に付着した水分を完全に除去する処理工程。ブリスター(塗装膜下に残存した水分によって生じる気泡)と呼ばれる外観不良の発生を防止する。3. 粉体塗装…粉体塗料を静電引力によって対象物に付着させる処理工程。4. 焼付乾燥…塗装対象物に付着した塗料を180~200℃の高温に加熱した焼付炉で焼き付け乾燥させる処理工程。5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。静電粉体塗装法は、流動浸漬塗装法と比較すると、以下のような特徴を持ちます。・塗装対象物の形状やサイズに対してあまり制約がない。・均一な膜厚が得やすい。・膜厚の調節が可能(30〜150μm)。・電気を通さない素材には塗装できない。参考:塗装前処理とは?目的や工程の流れについて専門家が解説!●流動浸漬塗装法参照元:粉体塗装とは? > 粉体塗装の紹介「塗装工程と塗装法」日本パウダーコーティング協同組合流動浸漬塗装法は、事前に加熱した塗装対象物を、粉体塗料を圧縮空気によって流動させた流動浸漬槽と呼ばれる容器に入れることで、塗料を対象物の熱で溶かして付着させる方法です。この塗装法では、一般的に熱可塑性粉体塗料が使用されます。熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して形状を変えることができ、冷却によって固化して塗膜とすることができる塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すると、再び軟化・溶融して固化します。この塗装の工程は、以下の通りです。1. 前処理…塗装の密着性向上を目的に、脱脂処理や酸洗処理、化成処理、水洗処理などを行う処理工程。2. 予備加熱…塗装対象物を塗料の融点以上の温度に予熱する処理工程。3. 流動浸漬…予熱した対象物を流動浸漬槽に入れることで、粉体塗料を対象物に接触させて溶かし付着させる処理工程。4. 後加熱…塗膜の平滑性向上を目的に、塗装対象物に付着した塗料を融点以上の温度に加熱する処理工程。5. 冷却…冷却して塗膜を形成する処理工程。流動浸漬塗装法は、静電粉体塗装法と比べて、以下のような特徴を持ちます。・塗装対象物のサイズが流動浸漬槽のサイズ以下に制限される・塗装対象物が複雑な形状である場合、膜厚が不均一になりやすい。・厚膜が一度の塗装で得られる(200〜1500μm)。・厚膜の塗装が容易。・粉体塗料の回収装置が不要。・予熱を必要とする。・膜厚の調節が難しい。・電気を通さない素材にも塗装できる。粉体塗装の用途粉体塗装は、金属素材の製品を中心に、様々な分野で採用されています。その使用分野は、下図に見られるように、金属家具や電気機器、建設・産業機械、機械・器具の割合が大きくなっています。粉体塗装の具体的な使用例は、下表の通りとなっており、特に工業塗装に多く採用されています。<粉体塗装の分野別使用例>使用分野使用例金属家具机, 椅子, 陳列棚, 書架, ロッカー, 業務用ワゴン, ベッド電気機器分電盤, 配電盤, ラジエーター, 柱上トランス, 電力計, 発電機, モーター, ガス給湯器建設・産業機械パワーショベル, フォークリフト, FA機器, 工作機械, 包装機, ボンベ, 農業機械機械・器具医療用品, 現像機, 精密機器, IT機器, 事務機家電製品レンジ, レンジフード, エアコン, 冷蔵庫, 洗濯機, 暖房機, ミシン, 照明器具, 電話機道路資材ガードレール, ガードパイプ, 橋梁手摺り, 欄干, 標識用ポール, 信号機, 照明柱水道資材鋼管, 鋳鉄管, 異形管, ニップル, 仕切弁, 継ぎ手, 水栓金具, メーター建築資材フェンス, 門扉, 手摺り, 面格子, 住宅鉄骨, シャッター, カーテン, ウォール, パーテーション, 雨樋金具, 鉄筋バー自動車部品ボディー, ワイパー, バンパー, スプリング, ホイール, ブレーキドラム, ブレーキパッド, オイルフィルター, エンジンブロック, ルーフレール, ドライブシャフト, トラック荷台部分, その他農業資材, 家庭用品, 消火器, ガーデニング用品粉体塗装の特徴粉体塗装には、様々な特徴があります。ここでは、溶剤塗装や水性塗装と比較したときの粉体塗装の特徴について説明します。参考:金属加工の板金塗装の見積りについて解説!塗装の種類ごとについてもご紹介!塗膜の強度と耐久性が高い粉体塗装は、塗膜の強度および耐久性が高いという特徴があります。粉体塗装では、一度の塗装で厚膜の塗膜を形成することができます。その膜厚は、静電粉体塗装法で最大150μm、流動浸漬塗装法では最大1500μmにも達します。それは、一度の溶剤塗装による塗膜の厚さ約20μmと比較すると、数倍から数十倍の厚みに相当します。また、焼付塗装の一種であることから、塗膜自体の強度が高く、柔軟性にも優れます。つまり、粉体塗装では、高強度で柔軟な分厚い塗膜が得られるのです。従って、粉体塗装の塗膜は、傷が付きにくい上、温度・湿度変化が激しい環境でも、伸縮しやすいことにより、ヒビ割れや剥離などが発生しにくくなっています。それは、耐久性に優れ、寿命も長くなることを意味します。塗膜の性能が高い粉体塗装の塗膜は、耐食性や耐候性、耐薬品性などの性能にも優れます。粉体塗装では、その塗装方法から、塗装ムラが起きにくく、ピンホール(塗装面に生じる小穴)も発生しにくい塗膜となります。さらに、塗膜が分厚く、高い強度と耐久性を持つことも相まって、塗膜下の金属が空気に触れにくく、降雨なども塗膜下に浸透しにくくなっています。そのため、粉体塗装の塗膜は、防錆性能をはじめとする塗装対象物の保護機能を高いレベルで発揮するのです。塗料に溶媒を含まない参照元:粉体塗装について「粉体塗装(パウダーコーティング)とは?」有限会社シリウス粉体塗料は、溶媒を含まないという特徴があります。溶剤塗装や水性塗装の塗料は、顔料・樹脂・添加剤といった塗膜を形成する成分以外に、これらの成分を溶解または分散させるシンナーなどの有機溶剤や水分を含んでいます。これらの溶媒は、塗料を塗装対象物に接着する役割を持っており、焼き付けや乾燥などの過程で揮発します(上右図参照)。一方、粉体塗料は、塗膜を形成する成分のみから構成されています。そして、塗装の際には、溶媒の代わりに電気や熱の効果を利用することで、塗装対象物に付着させているのです(上左図参照)。塗料の回収・再利用が可能粉体塗装では、塗装時に塗装対象物に付着しなかった塗料を回収して再利用することが可能です。粉体塗料は、溶剤塗料の有機溶剤や水性塗料の水のような揮発成分を含まないため、熱影響を受けなければ、変質することはほとんどありません。そのため、静電粉体塗装で噴射した塗料も、流動浸漬塗装法で流動させた塗料も回収すれば、再度使用することができます。その点、溶剤塗料や水性塗料は、溶媒が揮発すると塗料が変質してしまうことがあり、多くの場合、変質してしまった塗料は再度使用することはできません。しかし、塗料を調整して揮発性を低下させても、乾燥して硬化するまでの時間が長くなり、作業性が下がってしまいます。塗料に揮発性有機化合物(VOC)を含まない引用元:低VOC塗料の現状と今後「塗料からの溶剤(VOC)の蒸発」経済産業省 近畿経済産業局粉体塗料は、大気汚染や健康被害の原因となる揮発性有機化合物(VOC)を全く含みません。VOCは、揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物のことで、溶剤塗料には20~60%、水性塗料には0~10%含まれている物質です。溶剤塗料には、塗料に対して5~50%がさらに投入され、希釈溶剤(シンナー)として使用されます(上図参照)。その種類は、下表のように多様で、溶解する樹脂や用途に応じて塗料に混合されています。<溶剤塗料や水性塗料に含まれる代表的なVOCの種類と性質・用途>VOCの分類VOCの種類性質・用途アルコール系メタノール, エタノール, イソプロピルアルコール(IPA), イソブタノールラッカー塗料や添加剤などの溶解ケトン系アセトン, メチルエチルケトン(MEK), メチルイソブチルケトン(MIBK), シクロヘキサノン樹脂を強力に溶解エステル系酢酸エチル, 酢酸ブチル樹脂を比較的強く溶解エーテル系ブチルセロソルブ, ブチルカルビトール焼付塗料の仕上り向上・水性塗料にも使用炭化水素系脂肪族系ミネラルスピリット樹脂を比較的弱く溶解芳香族系トルエン, エチルベンゼン, キシレン多種類の樹脂を溶解、溶解性と乾燥性のバランスが良い混合系ソルベントナフサ焼付塗料用しかし、VOCは、以下のように大気汚染の原因となり、人体にも有害です。●大気環境への影響VOCは、大気中に拡散されると、光化学反応などを起こして変質します。変質したVOCは、光化学スモッグの原因となるほか、浮遊粒子状物質(SPM)を生成して、目や呼吸器などに悪影響を及ぼし、喘息やアレルギー疾患のリスクを増大させることが知られています。●室内環境における人体への影響VOCは、住宅の建材などから発生して、室内の空気を汚染し、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こすことがあります。●作業環境における人体への影響VOCは、塗装に従事する作業者に下表のような様々な症状を引き起こすことが報告されています。ただし、近年においては、毒性の高いVOCの使用が制限されており、以前よりも塗料の安全性は確保されています。<毒性の高いVOCによって引き起こされる症状>VOCの種類急性毒性慢性毒性メタノール粘膜刺激, 麻酔作用咳, めまい, 頭痛, 嘔吐, 脱力感, 眠気, 不眠, 視力障害, 神経系障害IPA皮膚刺激, 粘膜刺激眠気, 頭痛, 協調運動不能, 皮膚炎, 神経系障害, 腎臓障害, 血管障害, 肝臓障害, 脾臓障害MEK皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用呼吸器刺激, 咳, 息切れ, 頭痛, めまい, 視野狭窄, 嘔吐, 下痢, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害酢酸エチル粘膜刺激呼吸器刺激, 眠気, めまい, 咽頭痛, 咳, 頭痛, 意識混濁トルエン皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用咳, 咽頭痛, めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 意識喪失, 神経系障害, 腎臓障害, 肝臓障害エチルベンゼン皮膚刺激, 粘膜刺激咳, めまい, 意識混濁, 頭痛呼吸器障害, 神経系障害キシレン皮膚刺激, 粘膜刺激, 麻酔作用めまい, 意識混濁, 頭痛, 嘔吐, 呼吸器障害, 神経系障害塗装に器具・設備が必要粉体塗装は、静電粉体塗装法と流動浸漬塗装法の双方について、いくつかの器具・設備が必要です。<静電粉体塗装法の器具・設備>・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など)・粉体塗装ブース・静電粉体塗装機(静電ガン、静電コントローラー、ホース類など)・粉体塗料回収装置・焼付乾燥炉・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具・換気装置(塗装ブース用と建屋全体用の装置設置を推奨)<流動浸漬塗装法の器具・設備>・浸漬方式の洗浄設備(洗浄槽など)・流動浸漬槽・加熱炉・防塵マスクや防塵ゴーグル、静電服、静電靴などの保護具・換気装置(建屋全体用の装置設置を推奨)なお、静電服と静電靴は、静電気による粉体塗料の着火によって発生する粉塵爆発の防止に必要な保護具です。粉塵爆発を防止するため、機器類の接地が必須であり、静電気対策床の設置なども推奨されます。現場施工が困難粉体塗装は、以下の理由から、工場などで施工しなくてはならず、現場での施工は現状の方法ではできません。・据え置き型の設備が必要・前処理に確実な洗浄や乾燥が必要・塗装処理時に粉塵対策が必須・焼き付け温度が高く、炉での加熱や乾燥が必要塗装作業の機械化・自動化に適している粉体塗装は、工場での施工が標準的であることもあり、機械化や自動化に向いた塗装法です。粉体塗装は、浸漬洗浄、炉での乾燥・加熱、静電引力や空気流動を利用した静電粉体塗装や流動浸漬塗装など、主要な処理工程の人手を排することが可能です。そのため、塗装対象物をフックに吊り下げるなどして、順番に洗浄槽、乾燥炉、塗装ブース、焼付乾燥炉と流していくことで、主要工程を完了させることができます。粉体塗料の種類粉体塗装では、様々な塗料が用いられますが、その塗料は、含有樹脂の熱に対する反応性から、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料の2種類に分類されます。熱硬化性粉体塗料熱硬化性粉体塗料は、加熱によって架橋反応を誘起することで、硬化する塗料です。一度硬化した塗料は、再度加熱しても硬いままで、軟化・流動しないという特徴があります。主に静電粉体塗装法で用いられる粉体塗料です。熱硬化性粉体塗料は、含有する樹脂の系統によって特徴や塗装条件が異なるため、用途に応じた塗料を選ぶことができます。下表は、代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、用途をまとめたものです。<代表的な熱硬化性粉体塗料の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途>樹脂系焼付温度焼付時間特徴用途エポキシ系130~200℃5~50分高耐食性, 高耐薬品性, 高密着性, 高耐水性, 高硬度, 絶縁性低耐候性家電, 自動車部品, 上下水道管, 電気部品, 重電機器, 船舶, エポキシポリエステル系150~200℃10~50分高耐食性, 高作業性, 高加工性, 高経済性低耐候性鋼製家具, 家電, 自動車部品, 建築資材, 事務機器, 家庭用品, 電気部品ポリエステル系140~230℃5~60分高耐候性, 高耐水性, 高作業性, 高加工性, 高経済性家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材, 鋼製家具, 重電機器, 建設機械, 農機具, 家庭用品アクリル系150~200℃8~50分高耐候性, 高耐汚染性, 高鮮映性, 低温硬化性家電, 自動車部品, 道路資材, 建築資材フッ素系160~360℃15~30分高耐候性、高耐光性、高耐薬品性, 高耐摩耗性、高耐熱性高層建築外装, 工業用部品, 家電, 厨房器具熱可塑性粉体塗料熱可塑性粉体塗料は、加熱によって軟化・溶融して変形し、冷却によって固化する塗料です。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すれば、再び軟化・溶融して固化するという特徴があります。主に流動浸漬塗装法で用いられる粉体塗料です。熱可塑性粉体塗料もまた、下表のように、いくつかの樹脂系があります。<代表的な熱可塑性樹脂の樹脂系ごとの塗装条件・特徴・用途>樹脂系予熱温度後加熱温度特徴用途塩化ビニル系230~290℃200~320℃高耐候性, 高耐薬品性, 高耐食性, 高耐水性, 被覆性, 厚膜美装性道路資材, 建築資材ポリエチレン系260〜320℃200〜320℃高耐食性, 高耐候性, 高耐水性, 高耐久性, 高耐摩耗性, 被覆性家電, 上水道管, 建築資材, 道路資材, 重電機器, 家庭用品ナイロン系340〜430℃340〜370℃高耐油性, 高密着性, 耐摩耗性, 高耐衝撃性, 耐熱性, 絶縁性, 被覆性家電部品, 自動車部品, 配管, 機械部品, 鉄道部材, 家庭用品, 医療機器, 飲料水容器粉体塗装のメリット上述したように、粉体塗装には他の塗装法とは異なる多様な特徴がありますが、ここではその中でもメリットとなる特徴について紹介します。<塗膜について>・塗膜の強度が高い・塗膜の耐久性が高い・塗膜の性能が優れる・厚い塗膜の形成が可能・錆が発生しにくい<方法について>・一度の塗装で厚い塗膜を形成可能・塗料の回収・再利用が可能・塗装環境(温度・湿度など)の影響を受けにくい・塗料の焼付処理が短時間で済む・塗装の機械化・自動化が容易<塗料について>・塗料に有機溶剤(VOC)を含有しない・臭気がない(有機溶剤は臭気を放つ)<経済性について>・塗料を無駄なく使用できる・耐用年数が長い(15~20年)<安全性について>・VOCによる大気汚染や健康被害については考慮不要・VOCによる火災の発生リスクがない粉体塗装のデメリット一方、粉体塗装には、以下のようなデメリットがあります。<方法について>・薄い塗膜の形成が困難(一般に30μm以上)・焼付温度や予熱・加熱温度が高い・塗装後に色の調整ができない・色の微調整が難しい・現場施工が困難・塗り替えが困難<経済性について>・塗装設備が必要であるため、初期投資が掛かる<安全性について>・粉塵による健康被害のリスクがある・粉塵爆発の発生リスクがある

  • 亜鉛めっきとは?特徴や種類を解説

    今回は、亜鉛めっきの特徴や種類について解説します。亜鉛めっきは、鋼材の表面に亜鉛の皮膜を形成し、耐食性を得ることを指します。しかし、一口に亜鉛めっきと言っても、大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があり、それぞれで特性に違いがあります。亜鉛めっきとは亜鉛めっきとは、電気の作用で亜鉛をめっきしたり、溶融させた亜鉛に浸漬させて、鋼材をめっきしたりする手法のことです。亜鉛めっきを施した鋼材は、表面が銀白色の外観になり、錆びや腐食を防止できるようになります。亜鉛めっきの特徴亜鉛めっきは、主に鉄製品に対して処理を行います。亜鉛めっきを施すと、めっきの表面に不働態皮膜が形成されます。不働態皮膜とは、めっき層と鉄の素地に空気や水が侵入を防止し、錆びを生じにくくする皮膜のことです。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは不働態皮膜があると、犠牲防食作用と呼ばれる反応が得られます。犠牲防食は、表面に傷が付いて素地の鉄が露出した場合でも、周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出して電気科学的に保護し、鉄の腐食を保護します。亜鉛めっきの種類亜鉛めっきは大きく分けて「電気亜鉛めっき」と「溶融亜鉛めっき」の2種類があります。電気亜鉛めっき引用元:三和メッキ工業株式会社 亜鉛めっき電気亜鉛めっきは、鉄素地を亜鉛めっき液に浸してから、電気を通すことで亜鉛めっきを施す手法です。亜鉛めっき液中でプラス極にある亜鉛が電気の作用で溶解し、マイナス極である鉄に亜鉛皮膜を析出します。ただし、電気亜鉛めっきだけでは、亜鉛めっき皮膜が酸化し、腐食してしまう恐れがあります。そのため、一般的に亜鉛めっき皮膜の上にクロメート処理を施して、より亜鉛めっき皮膜の耐食性を向上させる場合が多いです。また、クロメート処理を施した場合は、導電性も高くなる傾向にあります。クロメート処理は、光沢クロメート(ユニクロ)・有色クロメート・黒色クロメート・三価クロメートなどがあり、種類によって異なる外観と特性が得られます。電気亜鉛めっきは、溶融亜鉛めっきに比べて膜厚が薄いため、自動車部品やコンピュータ部品のような精密機器に採用されることが多いです。参考:ユニクロめっきとは!?亜鉛めっき/クロメートとの違い参考:電気亜鉛めっきとは【3分でわかる】専門家がわかりやすく解説します!溶融亜鉛めっき引用元:マルコ工業株式会社 溶融亜鉛メッキ溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸漬させた後、冷却することで亜鉛めっきを施す手法です。その手法の様子から、別名「ドブ漬けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきは、塗装や電気めっきと異なり、亜鉛と鉄素地から形成される合金層が、亜鉛と鉄素地を強く結合するため、めっきが剝がれにくく、長期間耐食性が持続します。このことから、建築物やガードレールなどの幅広い用途で活用されています。また、溶融亜鉛めっきは、電気亜鉛めっきのようにクロメート処理を必要としません。溶融亜鉛めっきは、大きな製品の処理に適していますが、高温のめっき液に浸漬させるので、材料が反りやすくなります。加えて、膜厚が電気めっきよりも厚くなるので、精密部品への処理には適していません。参考:溶融亜鉛メッキとは?特徴、規格、加工工程を解説

  • 無電解ニッケルめっきとは?原理、用途、特性、メリット・デメリット

    今回は、無電解ニッケルめっきの原理、用途、特性、メリット・デメリットについて解説します。無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用を利用してニッケル金属の皮膜を形成する手法を指します。似たものに電気ニッケルめっきがありますが、無電解ニッケルめっきと、処理の方法だけでなく、成分や特性についても違いがあります。参考:ニッケルめっきとは?種類や特徴、メリット・デメリット無電解ニッケルめっきとは?引用元:株式会社センショー 無電解ニッケル無電解ニッケルめっきとは、電気ではなく、化学的還元作用にて材料にニッケル金属の皮膜を形成する手法のことで、別名「カニゼンめっき」や「化学ニッケル(化学Ni)」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、一般的にリンを含有しています。膜厚を均一にしやすい特徴があり、複雑な形状や寸法精度を要する製品に適しています。無電解ニッケルめっきの原理引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは無電解ニッケルめっきにおける、ニッケルの析出には、めっき液中のニッケルイオンと電子が必要です。無電解ニッケルめっきは、主に還元剤である次亜リン酸塩が添加されており、分解された次亜リン酸から発する電子が、ニッケルの析出に利用されています。還元されて析出したニッケルは、還元剤の分解触媒として作用し、めっき表面で連続的に分解反応とニッケルの析出を行います。この仕組みを「自己触媒還元めっき」と呼びます。無電解ニッケルめっきの用途無電解ニッケルめっきは、以下のような用途で使用されています。<無電解ニッケルめっきの用途>使用目的製品耐食性、耐摩耗性反応槽、輸送管、パイプ、ポンプ、金型自動車部品、船舶部品、航空部品はんだ付け、耐食性、導電性付与接点、シャフト、抵抗体サーミスタ、ディスク耐食性、硬さ、精密性、耐摩耗性ピストン、軸、シリンダー測定装置、変速機耐食性、非磁性、硬さ時計、カメラ、電子顕微鏡等の部品耐食性、耐摩耗性、硬さ金型、事務機、船舶航空、原子力等の部品無電解ニッケルめっきの分類無電解ニッケルめっきは、還元剤の種類により、ニッケル-リン系とニッケル-ホウ素系があります。ニッケル-リン系は細かく分けると「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」の3種類があります。低リンタイプ低リンタイプは、1~4%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。他の種類に比べて700Hvと硬度が高く、耐摩耗性と耐アルカリ性に優れていますが、耐食性は劣ります。中リンタイプ中リンタイプは、5~10%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。一般的に採用されることの多い種類で、無電解ニッケルめっきと言えば中リンタイプを示す場合が多くあります。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも他の無電解ニッケルめっきと比べて良好で、汎用性に優れています。高リンタイプ高リンタイプは、11~13%程度のリンを含有する無電解ニッケルめっきです。耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、結晶構造が非晶質で、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。他のめっき種類に比べて光沢が少ないのも特徴です。無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素を0.2~1.0%程度含有する無電解ニッケルめっきです。はんだ付け性や硬度に優れています。また、400℃程度の熱処理では、変色しない特徴があります。ただし、めっき液が高価のため、他の種類に比べて処理コストがかかります。無電解ニッケルめっきのメリット●耐食性の向上無電解ニッケルめっきは、一般的に電気ニッケルめっきよりも耐食性に優れています。数%のリンを含有し、リンの含有率が多いほどピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。●均一な膜厚が得られやすい電気ニッケルめっきは、めっきする製品に対して、電気が弱くかかる部分と強くかかる部分に分かれてしまうので、均一な膜厚になりにくい特徴があります。一方で、無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学的還元作用にて材料をめっきする手法のため、膜厚が均一になりやすいメリットがあります。●非金属材料にも対応可能無電解ニッケルめっきは、電気を使わないめっきなので、樹脂やセラミックなどの不導体に対しても対応が可能です。●電気ニッケルめっきと比べて耐摩耗性に優れる電気ニッケルめっきの硬度は、ビッカース硬さで200Hv程度、熱処理で500Hv程度の値です。一方で無電解ニッケルめっきの硬度は500Hv程度あり、熱処理を行うと最高1000Hv程度までの硬さが得られます。無電解ニッケルめっきのデメリット●電気ニッケルめっきに比べてコストが高い無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて材料費が高いほか、めっきの析出速度も遅いので、コストが高くなる傾向にあります。●めっき液の管理が難しい無電解ニッケルめっきは、電気ニッケルめっきに比べて浴組成の変動が大きく、扱いが難しいので、技術や知識を要します。無電解ニッケルめっきの特性機械的特性無電解ニッケルめっきは、硬度が高く、耐摩耗性に優れています。また、ねじを締め付ける際に摩擦の熱で溶着してしまう「かじり」についても防止する効果が期待できます。無電解ニッケルめっきの種類ごとの硬度については以下の通りです。<無電解ニッケルめっきの種類別硬度>めっき種類低リン中リン高リンホウ素硬度Hv熱処理前700550500780400℃,2h10009509501000引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?化学的特性無電解ニッケルめっきは、種類によって良好な耐食性、耐酸性、耐アルカリ性の特性を有しています。以下の表は、リン含有量による化学的特性の違いを示したものです。<めっきのリン含有別化学的特性>めっき種類低リン中リン高リン耐食性(塩水噴霧)やや劣る良好普通~良好耐酸性劣る普通良好耐アルカリ性良好普通劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電磁気的特性無電解ニッケルめっきは、導電率(比抵抗)、接触抵抗、磁性(非磁性)、電磁波防止の特性を有しています。めっきの種類による磁性の有無と、比抵抗の値については以下の通りです。<めっきの種類別比抵抗(導電率)と磁気特性>めっき種類低リン中リン高リンホウ素比抵抗 μΩ・cm30~6060~75150~2005~6磁気特性熱処理前磁性非磁性非磁性磁性280℃,2h磁性磁性非磁性磁性引用元:ヱビナ電化工業株式会社 無電解ニッケルめっきには、どの様な種類がありますか?光学的特性無電解ニッケルめっきは、めっきの処理液の違いにより、光沢が出るタイプと出ないタイプがあります。光を反射させたくない医療機器や光学機器などでは、光の反射率が低い黒色無電解ニッケルめっきが採用されることもあります。熱的特性無電解ニッケルめっきは、良好な耐熱性、熱伝導性、はんだ付け性の特性を有しています。以下の表は、無電解ニッケルめっきの中リンタイプの融点、熱伝導度、膨張係数を示したものです。融点熱伝導度膨張係数890℃0.0105cal/cm/s/℃13×10-6cm/cm/℃引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきとは電気ニッケルめっきとの違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきは、めっき方法、皮膜成分、物性に違いがあります。●めっき方法の違い電気ニッケルめっきは、名前の通り電気を使ってめっき皮膜を形成する手法です。浴管理は無電解ニッケルめっきに比べて比較的容易のため、金額も安価な傾向にあります。しかし、電流分布によりめっきの厚みが変わるので、無電解ニッケルめっきと違って均一にめっきを付けるのが困難です。無電解ニッケルめっきは、化学反応にてめっきを施すため、均一にめっきを付けることが可能です。複雑な形状の製品に対してもめっきしやすい特徴があります。ただし、めっきの析出速度が遅い、浴管理が難しいなどの難点もあり、コスト面で電気ニッケルめっきに劣ります。●皮膜成分の違い電気ニッケルめっきは、およそ99.5%以上がニッケルでできているので、純ニッケルめっきとも呼べます。一方で無電解ニッケルめっきは、ニッケル90~95%、リン5~10%程度の割合でできた合金めっきになります。そのため「ニッケル-リン合金めっき」と呼ばれることもあります。●物性の違い無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきの物性の違いは以下の通りです。<無電解ニッケルと電気ニッケルの物性の違い>性質無電解ニッケル(Ni-P 中リンタイプ)電気ニッケル組織非結晶性(熱で結晶)微結晶性融点890℃(P;9%)1450℃電気抵抗60μΩ/cm(熱処理400℃で1/3に低下)約8.5μΩ/cm比重7.9(P;9%)7.7-8.7硬さHv500±50(析出状態)Hv900±100(400℃ 1Hr)Hv150-250(普通浴)Hv400-500(光沢浴)磁気特性非磁性強磁性耐食性電気ニッケルより優れるNi-Pより劣る引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルメッキと電気ニッケルメッキの違い

  • 三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違い

    三価クロメートは、ヨーロッパなどで使用禁止となっているクロメート処理の代替として採用されている表面処理です。主に亜鉛めっきの防錆性能の向上や外観の色調変化などが目的で、通常は亜鉛めっきとセットで行われています。自動車や電気・電子、建築など、幅広い分野で使用されており、身近な例では、青銀色や黄金色、黒色のネジ・ボルト・ナット類が挙げられます。この記事では、三価クロメートとは何かというところから、種類や特徴、類似の加工方法であるクロメート処理(六価クロメート)やクロムめっきとの違いについて解説していきます。三価クロメートとは三価クロメートとは、三価クロムを含むものの六価クロムは含まない溶液に金属を浸すことによって、金属表面で化学反応を起こし、金属表面に防食効果などを発揮する皮膜を形成する化成処理のことです。「三価クロム化成処理」や「クロメートフリー処理」「とも呼ばれます。詳しくは後述しますが、単にクロメート処理と言う場合、六価クロムで皮膜を形成する化成処理を指します。しかし、この六価クロムは、生体に有害で、欧州などで規制されていることから、現在はクロメート処理から六価クロムを含まないクロメートフリー処理へと移行が進んでいます。そのため、最近では、クロメート処理を「六価クロメート処理」と六価クロムを用いることを明示して呼称したり、記述したりすることが多くなっています。三価クロメートの適用対象は、主に亜鉛めっきや亜鉛合金めっきが施された鋼材や金属製品で、めっきの後処理として施されるのが三価クロメートです(上図参照)。具体的には、溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっきが施されたもの、ガルバリウム鋼、ガルタイト鋼(ガルファン鋼)が素材のものなどが挙げられ、これらのめっき製品には、六価クロメート処理と三価クロメートのどちらかが適用されています。なお、ガルバリウム鋼とガルタイト鋼は、下表のめっき浴成分によってめっき処理された鋼です。<ガルバリウム鋼(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlSiAl, Si, Zn以外の元素Zn成分量 (%)50.0~60.01.0~3.05.0以下残部<ガルタイト鋼(溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼)のめっき浴>構成成分AlAl, Zn以外の元素Zn成分量 (%)4.0~5.51.0以下残部三価クロメートの用途は、亜鉛めっきや亜鉛合金めっきの用途とほとんど同じで、自動車や輸送機器、電気機器、建築部材、事務機などと幅広い分野に及んでいます。特に、自動車や電機などの輸出企業が取り扱う製品は、欧州市場などを考慮して、三価クロメートへの切り替えが進んでいます。しかし、建材・建築などの市場が国内中心の企業は、未だ六価クロメートが適用された製品を使用しています。三価クロメートの効果三価クロメートの主な効果は、耐食性の向上と外観の色調変化です。そもそも、その下地である亜鉛めっきには、以下のような優れた効果があります。▼鉄の表面を物理的に被覆して、腐食原因となる水と酸素を鉄の表面から遮断する。▼中性環境で酸化皮膜を形成し、良好な耐食性を発揮する。▼鉄の身代わりとなって錆びる犠牲的防食作用が働くため、亜鉛めっき皮膜にキズが生じて鉄素地が一部露出しても、防錆効果を発揮する。▼めっき処理の直後は、銀色(光沢のある灰色)を呈する。▼複雑な形状でも、均一な厚さでめっき皮膜を形成することができる。▼コストが低い。▼量産加工が容易。しかし、亜鉛めっきは、大気中で使用していると、時間経過とともに酸化皮膜が厚くなって光沢を失います。さらに、大気が汚染されていたり、湿度が高かったりするような腐食環境下では、亜鉛自身の腐食によって白錆を生成します。その点、亜鉛めっきの上に三価クロメートを施すと、その化成皮膜が空気に対して反応性のないバリヤー層として亜鉛めっきを保護する上、亜鉛の白錆発生も長期間防止するため、高い防錆効果が期待できます。また、三価クロメートの処理液や処理時間などを制御することによって、外観の色調をある程度変化させることが可能です。亜鉛めっき直後の銀色そのままの色調から、青白い色、淡い黄色、黒色というように、いくつかの色調を付与することができます。そのほか、三価クロメートには、以下のような効果もあります。▼塗料などの密着性向上。▼耐指紋性や防汚性が向上。▼亜鉛めっきのみよりも電気抵抗は高いが、導通性は維持される。三価クロメートの表記六価クロメートの表記がJIS規格(JIS H 8625:1993)にて定められているのに対し、三価クロメートの表記は、規定されていません。そのため、現状は六価クロメートのJIS規格に従って表記し、注釈として「三価クロメート」や「TC(Trivalent Chromate)」などと追記することが標準的となっています。例えば、電気めっきで鉄生地に8μm厚の亜鉛をめっきした後、淡黄色の三価クロメートを施す場合は、下記のように記述します。Ep-Fe/Zn 8/CM1B(三価クロメート)なお、「Ep」は電気めっきを表す記号で、クロメート処理(六価クロメート)の記号「CM」は色調によって下表のような種類があります。<クロメート皮膜の種類と表記・色合い>クロメート皮膜の種類記号代表的色合い光沢CM1A透明, 青味のある透明淡黄色CM1B淡黄色の干渉模様黄色CM2C黄色の干渉模様緑色CM2Dオリーブ, グリーン, ブロンズ, 褐色なお、三価クロメートと六価クロメートの双方に黒色のクロメート処理がありますが、これもJIS規格に規定されていないので、下記のように「三価黒クロメート」などと追記することになります。・Ep-Fe/Zn 8(三価黒クロメート)三価クロムめっきとの違い三価クロメートと類似した言葉に「三価クロムめっき」がありますが、三価クロムめっきはめっき処理を指すため、化成処理を指す三価クロメートとは全く異なります。三価クロムめっきは、三価クロムが安定的に存在するめっき浴に金属を浸し、電流を流すことで、金属表面にクロムのめっき皮膜を生成する表面処理法です。実際、三価クロムめっきと三価クロメートは、下表のように皮膜の化学組成が大きく異なります。ただし、下表の皮膜の化学組成は、一例であり、めっきはめっき浴に、化成処理は処理剤によって異なります。なお、三価クロメートの黒色以外の処理剤には、有機酸を含有する有機系とシリカを含有する無機シリカ系があります。<三価クロムめっきと三価クロメートの皮膜の化学組成>皮膜の種類三価クロムめっき皮膜三価クロム化成皮膜無機シリカ系有機系皮膜の化学組成Cr:91.3%C:2.7%O:2.0%S:4.0%Cr:20%O:55%Zn:20%Si:微量Co:微量Cr:22%O:55%Zn:18%C:5%Co:微量三価クロメートの種類と特徴三価クロメートは、色調の違いにより、大きく「三価白」と「三価黒」の2種類に分けられます。その色調の違いは、化成処理の処理剤や処理時間などによってコントロールされています。ただし、同じ色の処理剤でも、その成分や処理条件などは、処理剤によって異なります。そのため、処理剤のメーカーによって、色調も変わってくるので注意が必要です。三価白三価白は、銀色、青白色(青みを帯びた銀色)または淡黃色(黄みを帯びた銀色)の色調となるように調整された三価クロメートです。「三価白クロメート」や「三価ホワイト」とも呼ばれます。銀色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.02~0.05μm程度と薄く、クリアー(透明色)で、亜鉛めっきの色調がそのまま現れるように調整された三価クロメートです。「三価無色クロメート」と呼ばれることがあります。青白色となるのは、三価クロム化成皮膜が0.05~0.3μm程度の厚みで、六価クロメートで青白色となる「ユニクロ」の代替となっている三価クロメートです。「三価ユニクロ」や「三価光沢クロメート」とも呼ばれています。淡黃色となるのは、三価クロム化成皮膜の膜厚を0.2~0.5μm程度とした三価クロメートです。「三価有色クロメート」とも呼ばれます。このように、三価白は、膜厚によって、銀色、青白色、淡黄色と色調が変化します。膜厚は耐食性にも影響し、皮膜が厚いほど、耐食性が高くなるという特徴があります。そのほか、三価白による化成皮膜は、損傷すると、皮膜中の成分と露出した亜鉛が反応し、自己修復する機能も備えています。三価黒三価黒は、黒色となるように調整された三価クロメートです。その処理剤に添加された硫黄とコバルトが反応し、黒味成分となる硫化コバルトへ変化することによって黒色が実現されています。「三価黒クロメート」や「三価ブラック」とも呼ばれます。三価黒による化成皮膜は、0.2~0.5μm程度の厚さです。この膜厚は、三価有色クロメートと同程度であることから、耐食性についても三価有色クロメートと同水準となっています。ただし、化成皮膜の表面は、微小な凹凸を形成するため、光が反射しにくく、光沢のないマットな仕上がりとなります。また、耐傷性が低いという欠点もあります。そのため、三価黒の化成皮膜には、多くの場合、三価黒の後処理としてクリアー塗装を施して、透明な塗膜でコーティングを行います。それにより、耐傷性を高めるとともに、光沢を付与して、光沢感のある美麗な黒色を実現しています。三価クロメートの種類と名称以上の三価クロメートの種類と名称をまとめると下表のようになります。<三価クロメートの名称と種類一覧>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色三価クロメートと六価クロメートの違い三価クロメートと六価クロメートの違いは、六価クロムの有無です。六価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムと六価クロムの双方を含有する一方、三価クロメートの処理液や化成皮膜は、三価クロムは含むものの、六価クロムはほぼ含有していません。毒性の有無上述したように、六価クロムは人体に対して強い毒性を示す一方、三価クロムには、毒性はありません。六価クロムは、接触や吸引、摂取によって、皮膚炎や皮膚潰瘍、吐き気、嘔吐、下痢などを引き起こし、消化器系に対しては胃腸炎・胃癌・大腸癌・肝臓障害、呼吸器系に対しては気道炎・呼吸障害・肺癌の原因となります。従って、六価クロメートの処理液については、作業者への付着はもちろん、周囲への飛散も避けることが必要です。処理液から水分が蒸発し、粉末状となった六価クロムが空気中に浮遊することがあるからです。地下に浸透し、井戸水などを汚染する可能性もあります。一方、三価クロムには、全く毒性はなく、自然界の河川や海洋などにも存在している物質です。有毒どころか、人間にとっては必須ミネラルであると考えられており、欠乏症ともなると糖の代謝異常を起こすとされています。参考:クロムの毒性(三価・六価)を解説規制の有無六価クロムは、世界の多くの国で使用禁止となっていますが、三価クロムの使用を禁止している国はありません。六価クロムは、下表で説明しているELV指令やWEEE指令、RoHS指令が施行されて以降、欧州連合(EU)域内で規制されています。<欧州連合(EU)域内の六価クロム規制>法令名施行年月内容ELV指令2000年10月自動車の廃棄処分時、製造者は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含む部品は取り外して保管し、環境に影響を与えないよう、再利用または処理しなくてはならない。2003年7月1日以降、市場に流通する自動車および自動車部品は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムを含有してはならない。WEEE指令2005年8月電気・電子機器の廃棄処分時、製造者は、六価クロムなどの有害物質を環境に影響を与えないように廃製品から除去しなくてはならない。RoHS指令2006年7月電気・電子機器の製造段階での、六価クロムなどの6つの有害物質の使用を原則禁止。2019年7月4つの有害物質が追加されて、合計10つの有害物質の使用を原則禁止。つまり、EU域内では、六価クロメートが使用された自動車や電気・電子機器は販売できません。ただし、どのような物質でも完全にゼロにすることは不可能なので、上表の法令でも最大許容含有量が定められています。その中で六価クロムは、0.1wt%(1000ppm)が最大許容含有量です。参考:RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!そのほか、中国や韓国、タイ、ベトナム、米国カリフォルニア州などにも、RoHS指令と類似の規制が存在します。一方、日本では、六価クロムの使用が禁止されているわけではありませんが、下表のような法令および基準が存在するため、六価クロムの取り扱いには注意が必要です。なお、下表は国の法令・基準であり、自治体によっては、より詳細で厳しい基準を条例で定めている場合があります。<日本における六価クロム規制>法令名基準名対象基準値環境基本法環境基準公共用水域 (注1)0.05mg/L以下 (注2)地下水0.05mg/L以下水質汚濁防止法排水基準工場排水など0.5mg/L以下土壌汚染対策法土壌環境基準土壌0.05mg/L以下注1. 公共用水域とは、河川や湖沼、海域、用水路などの公共利用のための水域や水路のこと。注2. 2022年4月1日から0.02mg/Lに改正。ただし、三価クロメートについても、硫酸クロム・硝酸クロム・酢酸クロムといった三価クロム化合物、硫酸コバルトといったコバルト化合物、硫酸ニッケルといったニッケル化合物など、多様な化学物質を処理液に含みます。そのため、これらの化学物質を含有する排水には、適切な処理が必要不可欠です。そして、その結果生じるスラッジからは、有効活用できる物質は最大限リサイクルし、廃棄物の量を最小限化することが必須となります。また、これらの化学物質は、PRTR(化学物質排出移動量届出)制度に基づく第1種指定化学物質に指定されています。PRTR制度は、これらの化学物質の排出量などを規制するものではありませんが、公共用水域や土壌といった環境への排出量と廃棄物としての外部への移動量を国に届け出することが義務付けられています。さらに、届出データは国によって公表されることになっているため、事業者は、化学物質を適正に管理することが重要です。色調の違い三価クロメートと六価クロメートでは、実現可能な色調も異なります。下表は、三価クロメートと六価クロメートの実現可能な色調をまとめたものです。六価クロメートの色調には、三価クロメートの色調にはない緑色などが存在し、六価クロメートの方が色調のバリエーションが多くなっています。また、それぞれの色調も、六価クロメートの方が鮮やかだったり、光沢が強かったりするなど、六価クロメートの方が優れているとされています。しかし、近年では、三価クロメートでも六価クロメートの色調をほぼ実現できるようになっているほか、三価クロメートで下表の色調以外の色調も表現できるようになっています。<三価クロメートと六価クロメートの色調>クロム化成処理の名称クロム化成処理の種類処理の名称色調三価クロメートクロメートフリー処理三価クロム化成処理三価白三価白クロメート三価ホワイト三価無色クロメート銀色三価ユニクロ三価光沢クロメート青白色三価有色クロメート淡黄色三価黒三価黒クロメート三価ブラック黒色六価クロメートクロメート処理六価クロム化成処理光沢クロメートユニクロ銀色青白色淡黄色有色クロメート黄色黄金色虹色緑色クロメート緑色褐色黒色クロメート黒色耐食性の違い耐食性について、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等か、上回るとされています。下表は、三価クロム化成皮膜と六価クロム化成皮膜に対し、5%濃度の塩水を吹き付けたときの白錆発生までの時間を記載したものです。下表から、無色または光沢の化成皮膜では、三価クロメートの方が六価クロメートよりも耐食性が高く、有色や黒色の化成皮膜でも、三価クロメートは、六価クロメートと比べて同等以上の耐食性を示しています。<三価クロメートと六価クロメートの白錆発生にかかる時間>色調の種類塩水(5%濃度)噴霧時の白錆発生までの時間三価クロメート六価クロメート無色 (銀色), 光沢 (青白色)72〜120時間24〜72時間有色120〜360時間120〜240時間緑色ー240時間以上黒色120〜240時間120〜240時間また、三価クロム化成皮膜は、六価クロム化成皮膜に比べて、高温時の耐食性が高いという特徴があります。六価クロム化成皮膜は、約70℃以上の高温で皮膜にクラックが発生し、耐食性が著しく低下します。一方、三価クロム化成皮膜は、約200℃の高温でもクラックが発生しにくく、それ故に耐食性の低下が起こりません。自己修復機能の違い上述した三価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロム化成皮膜にも備わっており、六価クロム化成皮膜の自己修復機能の方が効果が高いとされています。六価クロム化成皮膜の自己修復機能は、六価クロムによって実現されます。六価クロム化成皮膜では、皮膜が傷付いた場合でも、六価クロムが溶出して露出した亜鉛めっきを被覆し、その部分を化成皮膜に変化させます。そのため、六価クロム化成皮膜では、色調に関わらず、自己修復機能が働きます。一方、三価クロム化成皮膜では、皮膜中の成分が亜鉛めっきと成膜反応を起こすことで、皮膜が再生されます。この成膜反応の反応性は、三価白クロメートの有機系で高く、無機シリカ系では低いために、有機系の方が自己修復機能の効果が高くなっています。なお、三価黒クロメートの化成皮膜には、自己修復機能はありません。コストの違い三価クロメートは、以下のような理由から、六価クロメートと比べると高コストになるとされています。●三価クロメートが六価クロメートよりも高コストになる理由・三価クロメートの処理剤が高価。・厳密なpH管理の必要性から処理液の管理が難しく、成膜反応が遅いことから処理時間も長くなるため、処理コストが高い。しかし、近年、六価クロメートから三価クロメートへの代替が進展したことで、三価クロメートのコストは低下してきており、需要が多い色調・性能の三価クロメートでは、六価クロメートと同程度のコストとなっています。ただし、需要の少ない色調の三価クロメートはまだ割高であり、トップコートなどで性能を高めた三価クロメートは、当然ながら高コストです。三価クロム化成皮膜からの六価クロムの溶出について以上のように、三価クロメートは、六価クロメートと様々な違いはあるものの、新たな処理剤の開発や処理方法の高度化、需要増によるコスト低下などにより、六価クロメートの代替としての役割を十分に果たしつつあります。しかし、三価クロム化成皮膜にコバルトを含有している場合、皮膜に六価クロムが含まれることがあります。これは、皮膜への水分の浸透などによってコバルトが不安定化して三価クロムを酸化し、六価クロムへと変化させることがあるからです。そして、三価クロム化成皮膜から六価クロムが溶出してしまう事例も発生しており、その対策が処理剤のメーカーなどにより進められています。ただし、注意点として、六価クロムが溶出した事例についても、その量はRoHS指令などで規定された最大許容含有量よりも微量であるため、特に規制に抵触したわけではなく、欧州などでの販売ができなくなったわけではありません。なお、このコバルトの不安定化は、以下のように不安定化の原因を排除することによって抑制することができます。●コバルトの不安定化を抑制する方法・三価クロム化成皮膜中のコバルト濃度の低減。・三価クロム化成皮膜のクラック発生の抑制。・三価クロム化成皮膜への水分の浸透を防止。そして、これらの実現には、以下のような対策が効果的です。・三価クロメートの処理液中のコバルト濃度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロメートの処理時間を短くし、処理温度を下げることで、皮膜中のコバルト濃度の低減が可能。・三価クロム化成皮膜の乾燥温度を低くすることで、皮膜のクラック発生の低減が可能。・高温多湿環境下での保管や使用を禁止することで、皮膜への水分の浸透を防止することが可能。・三価クロメートの処理液にコバルトの酸化抑制剤を加えることで、コバルトの不安定化の抑制が可能。三価クロメートの処理剤の各メーカーは、これらを元に処理剤の改良を進めているほか、コバルトを含まない処理剤やクロム自体をも含まない処理剤の開発にも着手しています。

  • 溶融亜鉛めっきとは?特徴、規格、加工工程を解説

    溶融亜鉛めっきは、溶かした亜鉛に製品を浸漬させてめっきを施す手法で、錆びや腐食を防止するために行われます。溶融亜鉛めっきは、標識やガードレールなど、私たちの生活の身近な製品に採用されているめっき方法ですが、どのような仕組みで防錆効果を得ているのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、溶融亜鉛めっきの特徴や加工工程、規格などについて解説します。溶融亜鉛めっきとは引用元:株式会社小池テクノ 溶融めっきの概要と利点・欠点溶融亜鉛めっきとは、高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸し、表面に亜鉛皮膜を形成することです。別名「どぶ付けめっき」とも呼ばれています。溶融亜鉛めっきの特徴と用途鋼材は溶融亜鉛めっきを施すことで、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」の2つの効果が得られ、錆びや腐食を防止できるようになります。保護皮膜作用は、鋼材の表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜を形成することを指します。引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 溶融亜鉛めっきとは犠牲防食作用は、亜鉛めっきにキズが付いた場合、素地の鉄が露出してもキズの周囲に亜鉛が溶けだして保護し、鉄が腐食するのを防ぎます。また、溶融亜鉛めっきは、亜鉛と素地の鉄から形成される合金層により、互いの金属が強く結合しているため、めっきが剥がれにくい特徴もあります。溶融亜鉛めっきは、長期間に渡り錆びや腐食を防ぐ効果があるため、ガードレール・標識や照明などの柱・橋梁・各種金物など、さまざまな場所で活用されています。腐食環境の厳しいところでは、亜鉛めっきの上に塗装を施すこともあります。適切な塗装系を用いて亜鉛めっき上に塗装を施した場合、以下表のように耐用年数が通常の亜鉛めっきの2倍程度の効果が得られるとされています。<亜鉛めっき上に塗装した時の耐用年数(単位:年)>亜鉛付着量田園地帯海洋工業地帯g/m2めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食めっきのみ二重防食107~2294~1510~25    2~11    7~241~45~15305~48818~3735~5013~2825~465~612~30488~76335~6045~7028~4037~6015~2120~32引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装についてただし亜鉛は活性の高い金属で、鉄素地と同じ要領で塗装をすると塗膜が剥離しやすくなるため、エポキシ系などの密着性のよい塗装系を選択しなければなりません。参考として、日本溶融亜鉛鍍金協会で記述されている、亜鉛めっき面への塗装の実例を以下に示します。<亜鉛めっき面への塗装仕様>新設亜鉛めっき面への塗装仕様既設劣化亜鉛めっき面の塗装仕様工程塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料塩化ゴム系樹脂塗料ポリウレタン樹脂塗料素地調整油分の付着は脱脂洗浄する。付着性を確保するためにスイープブラスト処理を行う。ブラスト処理が難しい、複雑形状の小部材は屋外で暴露し、白さびを除去した後塗装してもよい。表面に付着しているほこり、ゴミなどを清掃除去する。油分の付着は脱脂洗浄する。白さびは研掃たらしなどで除去し、赤錆発生部は電動工具でSIS St3に素地調整する。補修塗--亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗塩化ゴム系塗料下塗亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗塩化ゴム系塗料中塗ポリウレタン樹脂塗料用中塗上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗塩化ゴム系塗料上塗ポリウレタン樹脂塗料上塗引用元:日本溶融亜鉛鍍金協会 亜鉛めっき上の塗装について溶融亜鉛めっきのメリット溶融亜鉛めっきは以下のようなメリットがあります。・保護皮膜作用・犠牲防食作用により、錆びや腐食を防止する。・長い年月が経過してもめっきが剥がれにくい。・大気中であれば数十年にわたる耐用年数が期待できる。・めっき槽に浸漬できるものであれば、ボルト・ナットなどのサイズの小さな製品から、橋梁やガードレールなどの比較的大型の構造物までめっきが可能。溶融亜鉛めっきのデメリット溶融亜鉛めっきのデメリットは以下の通りです。・密閉した部分のある製品や、複雑な形状の製品はめっきできない場合がある。・海岸地帯や工業地帯では耐用年数が短くなる溶融亜鉛めっきは、密閉構造の製品や内部に空気がたまる箇所があると、浮力が働いてめっき槽への浸漬が難しくなるほか、内部の空気が膨張することで水蒸気爆発を起こしてしまいます。これらを避けるためにも、構造物には切り欠きや空気抜き孔が必要です。溶融亜鉛めっきの規格溶融亜鉛めっきの規格は、JIS規格の【JIS H 8641 溶融亜鉛めっき】があります。JIS H 8641:2007では、溶融亜鉛めっきの種類及び記号を以下のように記述しています。<溶融亜鉛めっきの種類及び記号>種類記号適用例(参考)1種 AHDZ A厚さ5mm以下の鋼材・鋼製品、高管類、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。1種 BHDZ B厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品、鋼管類及び鋳鍛造品類。2種 35HDZ 35厚さ1mm以上2mm以下の鋼材・鋼製品、直径12mm以上のボルト・ナット及び厚さ2.3mmを超える座金類。2種 40HDZ 40厚さ2mmを超え3mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 45HDZ 45厚さ3mmを超え5mm以下の鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 50HDZ 50厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。2種 55HDZ 55過酷な腐食環境下で使用される鋼材・鋼製品及び鋳鍛造品類。備考1,HDZ 55のめっきを要求するものは、素材の厚さ6mm以上であることが望ましい。素材の厚さが6mm未満のものに適用する場合は、事前に受渡当事者間の協定による。2,表中、適用例の欄で示す厚さ及び直径は、呼称寸法による。3,過酷な腐食環境は、海塩粒子濃度の高い海岸、凍結防止剤の散布される地域などをいう。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっきまた、溶融亜鉛めっきの種類及び記号ごとのめっき付着量は、JIS規格に規定された試験を行ったとき、以下の表に適合しなければなりません。<溶融亜鉛めっきの付着量及び硫酸銅試験回数>種類記号硫酸銅試験回数付着量g/m2平均めっき膜厚μm(参考)1種 AHDZ A4回-28~421種 BHDZ B5回-35~492種 35HDZ 35-350以上49以上2種 40HDZ 40-400以上56以上2種 45HDZ 45-450以上63以上2種 50HDZ 50-500以上69以上2種 55HDZ 55-550以上76以上備考1,めっき膜厚とは、めっき表面から素材表面までの距離をいう。2,1種A及び1種Bの平均めっき膜厚欄の数値は、硫酸銅試験回数から推定した最小めっき皮膜厚さの範囲を示す。3,平均めっき膜厚は、めっき皮膜の密度を7.2g/cm3として、付着量を除した値を示す。引用元:JIS H 8641:2007 溶融亜鉛めっき溶融亜鉛めっきの加工工程引用元:新潟亜鉛工業株式会社 溶融亜鉛めっきとは? 加工工程溶融亜鉛めっきの基本的な加工工程は、以下のようにして行われています。1.脱脂処理:鉄鋼製品の表面に付着した油脂や塗料を除去するため、苛性ソーダ水溶液に浸します。2.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している脱脂液を洗い流します。3.酸洗処理:鉄鋼素材に付着した錆びやスケールを除去するため、塩酸または硫酸水溶液に浸します。4.水洗:鉄鋼製品の表面に付着している酸洗液を洗い流します。5.フラックス処理:酸洗後の錆びの発生防止と、鉄と亜鉛の合金反応を促進させるため、加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に漬けて、素地表面にフラックス皮膜を形成させます。6.乾燥:亜鉛の飛散(スプラッシュ)を抑えるために乾燥させます。7.めっき:鉄鋼素材を溶融した亜鉛浴のなかに浸して皮膜を形成させます。鋼材の材質や形状によって最も適合するめっき条件を選択します。8.冷却:めっきを施した鉄鋼製品を温水で冷却します。冷却の工程により、鉄と亜鉛の合金層の成長を抑えます。

  • ニッケルめっきとは?種類や特徴、メリット・デメリット

    今回はニッケルめっきの種類や特徴について解説します。ニッケルめっきは、美しい外観と優れた耐食性を有しためっき処理で、電気コネクターやスイッチの装飾・防食、金めっきやクロムめっきの下地めっきなど、幅広い用途で採用されています。しかしニッケルめっきは、皮膜を析出させる手法の違いで「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」に分かれており、それぞれで特徴に違いがあります。参考:【めっき処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!ニッケルめっきとはニッケルめっきとは、その名前の通り、ニッケルの成分を用いためっきのことを指します。ニッケルは、適度な硬度と柔軟性があり、強磁性を示す金属です。ニッケルめっきを施すと、黄白色の美しい外観になるほか、優れた耐食性が得られます。ニッケルめっきは変色しにくいことから、美観性の向上を目的として利用されることが多くあります。対応する素材は、鉄鋼材料・銅・銅合金・ステンレス・アルミなどが代表的です。ニッケルめっきの種類と特徴ニッケルめっきには、大きく分けて「電解ニッケルめっき」と「無電解ニッケルめっき」の2種類があります。電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎電解ニッケルめっきは、外部電源から供給される電気を利用してめっきを行う手法で、「電気ニッケルめっき」とも呼ばれています。上図のように、陽極のニッケル極板を用い、ニッケルを溶解させることで、陰極の材料にめっきを行います。電解ニッケルめっきは、ステンレス・銅素材への処理がしにくい特徴がありますが、前処理である「ニッケルストライクめっき」を施すことで、良好な皮膜を析出できるようになります。電気ニッケルめっきは、さらに細かく分類すると、「光沢ニッケルめっき」「半光沢ニッケルめっき」「無光沢ニッケルめっき」の3種類があります。●光沢ニッケルめっき光沢ニッケルめっきは、光沢のある黄白色の外観で、変色しにくい特徴があります。ただし、皮膜の硬度が高く、二次加工時のスポット溶接の不具合・カシメ加工でのめっき割れや、クラックなどの不良が発生しやすい点に注意が必要です。用途としては、金めっき・銀めっき・クロムめっきなどの光沢が必要な場合の下地めっきや、耐食性を必要とするめっきの下地、はんだ付けなどに採用されています。●半光沢ニッケルめっき半光沢ニッケルめっきは、光沢ニッケルめっきと比べて光沢が控えめで、柔らかい特徴があります。また、光沢ニッケルめっきと組み合わせた2層のめっきである「ダブルニッケルめっき」を施すことで、より優れた耐食性を得られるようになります。引用元:株式会社三和鍍金 【連載】ダブルニッケルとは vol.2~電位差とガルバニック腐食~ダブルニッケルめっきは、材料の外層にある光沢ニッケルめっきを優先的に腐食させて、素地への腐食を遅らせることが可能です。半光沢ニッケルめっきは、はんだ付け製品に多く採用されています。ダブルニッケルめっきでは、優れた耐食性を有することから、自動車部品や機械部品、装飾部品などに採用されています。●無光沢ニッケルめっき無光沢ニッケルめっきは、その名前の通り光沢のないニッケルめっきです。光沢を出すために必要な添加剤の影響がないので、安定したニッケルめっきの皮膜が得られます。溶接性に優れ、折り曲げても割れにくいため、カシメ加工に強い特徴があります。ただし、表面に指紋が付きやすいほか、経年変化による変色が発生する場合があります。無電解ニッケルめっき引用元:アルファメック株式会社 無電解ニッケルめっきの基礎無電解ニッケルめっきは、電気を利用せず、化学的還元作用によりめっきを施す手法で、別名「カニゼンめっき」とも呼ばれています。無電解ニッケルめっきは、還元剤である次亜リン酸塩が酸化され、亜リン酸塩になります。このときに電子を放出してニッケルイオンを還元し、めっき皮膜になる仕組みです。無電解ニッケルめっきは、電解ニッケルめっきよりも均一に皮膜を析出できるので、寸法精度を要する製品や、複雑な形状の製品のめっきに適しています。ただし、他の表面処理に比べて単価が高い傾向にあります。無電解ニッケルめっきは、主にリンが含まれており、リンの含有量によって「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」に分類されます。リンの含有量が多いと、ピンホールが少なくなり、耐食性が向上します。これらは熱処理を施すことで、析出時500~700Hvの硬度が、900〜1000Hv程度まで向上させられます。参考:鋼の性質を変える【熱処理】とは?仕組みや種類について徹底解説!また、無電解ニッケルめっきは、ホウ素を含有したものもあります。各種類の特性については以下の通りです。●低リンタイプ低リンタイプは、リン含有率が1~4%程度の無電解ニッケルめっきで、700Hv程度の優れた硬度と耐摩耗性を有していますが、耐食性には劣ります。●中リンタイプ中リンタイプは、リン含有率が5~10%程度で、最も一般的に採用されている無電解ニッケルめっきです。通常は非磁性ですが、熱により磁性を示します。また、耐食性・耐摩耗性や各物性のバランスも良好で、汎用性に優れています。●高リンタイプ高リンタイプは、リン含有率が11~13%程度で、耐食性に優れているものの、はんだ付け性に劣ります。また、通常時および比較的高温で熱処理した状態でも非磁性を示します。●無電解ニッケル-ホウ素めっき無電解ニッケル-ホウ素めっきは、ホウ素の含有率が0.2~1.0%の無電解ニッケルめっきで、はんだ付け性や硬度に優れています。ニッケルめっきのメリットとデメリットニッケルめっきは、美しい外観と、優れた耐食性を備えているのがメリットです。ダブルニッケルめっきや高リンタイプの無電解ニッケルめっきを用いれば、より高い耐食性が得られます。無電解ニッケルめっきでは、熱処理を行うことで、用途によっては硬質クロムめっきに匹敵するほどの硬度が得られます。一方で、ニッケルめっきのデメリットは、電解ニッケルめっきを施したときに、薄い膜厚しかつかないなど均一性に乏しいこと、パイプ内部などの電気が届かない箇所は皮膜が付きにくいことが挙げられます。複雑な形状や均一にめっきを施すのに適している無電解ニッケルめっきでは、コストが比較的大きくかかってしまう点もデメリットと言えます。