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品質管理

  • FTA(故障の木解析)とは?進め方・フォーマット

    FTAは潜在的にある品質・安全上の課題を洗い出し、その原因を突き止めて対策を行う解析方法です。今回は製造業におけるFTAについてや、実際に行う流れなどについて解説していきます。FTA(故障の木解析)とは?FTAは 「Fault Tree Analysis」の略で、フォルトツリー解析・故障の木解析とも呼ばれています。1960年代にアメリカのグループが考案して以来、信頼性の解析に広く普及されてきました。FTAについてFTAは設定した頂上事象の発生の原因や潜在的に発生の可能性がある原因を洗い出し、頂上事象の発生条件または要因の識別、解析をする方法です。FTAでの頂上事象は一般的に、性能低下、システムの機能損失、安全性、他の重要な運用上での特性劣化などが挙げられます。頂上事象とは予防したい事象を指します。クリスマスツリーを想像するとわかりやすいのですが、FTAの頂上事象はクリスマスツリーの先端、飾り付けの星のようなものです。これは階層の最上部に位置する事象となり、問題を分析するためのスタートポイントとなります。そして、クリスマスツリーの枝葉にある飾り付けの部分がその問題の発生条件や原因です。さらにツリーの枝葉の中でも特に目立つ飾り付けは、問題に対してどのような要因が発生確率を高めているのか、どう影響しているのかに関わる重要なポイントになる部分です。FTAの目的製造業における防止策や原因分析の方法は、FTA以外にもFMEAやなぜなぜ分析など様々な種類がありますが、FTAを行う目的は何でしょうか。JIS規格で記載されているFTAの目的は以下の通りです。− 頂上事象を発生させる原因又は原因の組合せの明確化 − 特定のシステム信頼性尺度が,所定の要求事項を満たすか否かの決定 − システム信頼度の実現可能な改善策を明確化するために,どの潜在的な故障モード又は要因が,システムの故障発生確率(不信頼度)又はシステムが修理可能な場合はアンアベイラビリティに最も強く影響しているかの決定 − システムの信頼性を改善する様々な設計代替案の解析及び比較 − 他の解析[例えば,マルコフ及び故障モード・影響解析(FMEA:failure mode and effects analysis)(以下,FMEAという。)]で行った仮定が妥当であるという実証− 安全問題を引き起こすことがある潜在的故障モードの明確化,対応する発生確率の評価及び低減策の可能性の評価 − 共通事象(例えば,図10のブリッジ回路FT図の中央の枝を参照)の識別 − 頂上事象の発生を最も高い可能性で引き起こす事象又は事象の組合せの探索 − 頂上事象の発生確率に対する基本事象の発生の影響の評価 − 事象の発生確率の計算 − 定常状態を仮定でき,かつ,実施する修理が互いに独立している(成功パス図/信頼性ブロック図に関する制約と同じ制約である)場合の,FT図によって表すシステム又はその構成品のアベイラビリティ及び故障率の計算(引用元:kikakurui.com)つまりFTAを使用する目的とは、頂上事象を発生させる原因や原因の組み合わせを明確化させることになります。FMEAとの違いFMEAとは材料や部品などの故障モードをスタートとし、製品の想定外の事故、故障を洗い出すボトムアップの解析ツールです。一方、FTAは製品の事故や故障をトップ事象におき、中間・基本事象を掘り下げて発生確率を予測、対策をするトップダウンの解析ツールです。(引用元:ものづくり.com)では、FTAとFMEAはそれぞれどのような場面に適しているのでしょうか。FTAは事故、故障が既知の流用度が高い製品の解析に最適です。製品の起こり得る事故や故障を想定した解析が可能となります。一方のFMEAは、比較的新規性が高い製品における未知の事故、故障といった、トップ事象の予測が困難な製品の解析に有効的です。導入のしやすさでいうと、FTAの方が受け入れやすいと言われています。FTAは既知の故障や事故が発生した場合の解析のため、一般的に使われる設計プロセスになじみやすいからです。FMEAは材料・部品の故障モードをスタートとし、想定外の故障や事故を抽出しますが、そもそもこのような考え方自体が受け入れ難く、理解が進んでいないことが現状です。○FMEAとFTAの比較項目FMEAFTA解析方法部品や材料の故障モードを列挙、想定外の事故や故障を洗い出し、システムへの影響を評価するボトムアップの解析方法製品の望ましくない事象をトップに置き、その因果関係を調査するトップダウンの解析方法解析の主体材料や部品を熟知したコンポーネント設計部門製品・システムの設計部門情報共有製品やシステムを熟知した設計部門との解析がマスト材料や部品を熟知した設計部門との解析がマスト設計プロセス設計プロセスに新しくボトムアップの解析プロセスを組み込む必要がある従来の設計プロセスに馴染むトップダウンの解析プロセス適用新規性が高い製品事故・故障が既知の流用度が高い製品成果未知の事故、故障などを防ぎ、対策ができる起こり得る事故や故障を想定した解析が可能参考:FMEA(故障モード影響解析)とは?評価法や実際の流れを解説FTAを実行する前に確認することFTAの目的や他の解析方法との違いが分かったところで、実行の前に確認しておくべきポイントを紹介します。FTAはいつ実行すればいいのかFTAは変化する時に行うのがベストです。具体的には、新商品を作る、設計変更をする、仕向け先が変わるといったタイミングが効果的です。特に安全に絡む問題は命に関わる事故につながる可能性があるため、事前に対策を立てることが大切です。また発生してしまった問題に対しての原因を突き止めるために、FTAを使用するケースもあります。FTAのフォーマットFTAのフォーマットは以下を参考にしながら作成していきましょう。Excelを使用すると作成しやすいです。(引用元:ぱぱろぐ)FTAの進め方FTAの進め方は6つのステップがあります。①FTAチームとリーダーを選ぶ②トラブルの原因になりそうな項目をリストアップ③洗い出した要因の調査④一次判定を行う⑤再現実験の施行、原因の特定①FTAチームとリーダーを選ぶまずは何らかのトラブルが起こった場合に対処、問題解決をするためのチームを選定します。組織内の各チームから、その分野に対する豊富な知識と経験のある人を選びましょう。同時にリーダーの選定も行います。リーダーがいれば意思決定の時間を割く手間が省けるからです。②トラブルの原因になりそうな項目をリストアップ上記フォーマットの分類2の欄を調査しつつ埋めていきます。少しでも原因と関係がありそうなものはとにかく列挙していきましょう。人の箇所は現場に詳しい人に聞くなど、チーム内で各カテゴリで詳しい人別に調査を行うとスムーズに進められます。③洗い出した要因の調査ある一つの要因に対して証拠になるためのデータを集めましょう。データは数値や記録など、あくまで客観的かつ具体的な調査結果を必要とします。人による証言や想像はここでは起用しません。④一次判定を行うステップ③で集めた証拠によってトラブルの原因ではないという具体的な証拠が挙げられれば、フォーマットの判定欄に「○」と記載していきます。証拠が不十分であったり、トラブルの原因だった場合は「×」と記載しましょう。ただし、会社によってこの「○」と「×」の意味が入れ替わって使われていることもあるので、齟齬がないように事前に確認しておいてください。⑤再現実験の施行上記④の項目で「×」になったものに対して、実際に再現させた時に同じトラブルが起こるかどうかを検証します。実験によって同じ現象が起こらなければ、洗い出した原因ではない可能性があり、もう一度別の原因を調査する必要があります。また、再現実験を行った結果、同じトラブルが再現できた場合は洗い出した原因で間違いありません。トラブルが起こらないように対策を練りましょう。FTAまとめFTAとは製造業界で広く使用される問題解析の方法です。FTAを導入することで課題を整理することができ、原因や問題の所在を明確にすることが可能です。また、客観的なデータを集めれば問題を論理的に解決できるでしょう。社内で問題の原因を突き止めたい・予防をしたいという方は、ぜひFTAを取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • FMEA(故障モード影響解析)とは?評価法や実際の流れを解説

    製造業界で広く使われている「FMEA」は「故障モード影響度解析」とも呼ばれ、リスクを洗い出し、排除するための管理方法の一つです。未然にリスクを防ぐことで品質を保ち、より安全に作業できることが目的とされています。今回はFMEAの基本から評価方法、実際の流れを紹介します。FMEA(故障モード影響解析)とは?FMEAは「Failure Mode and Effects Analysis」の略で、「故障モード影響解析」という意味があります。1940年代にアメリカ軍で導入されたのがきっかけと言われています。1960年代には宇宙開発分野で応用され、アポロ計画にもFMEAが導入されました。1970年代には自動車会社のフォード社が導入したのを皮切りに、日本でも製品作りの前にFMEAを検討するきっかけとなりました。FMEAについてFMEAは製品や製品完成までの製造過程で起こり得るリスクを設計の段階で評価し、リスクを取り除く方法を指します。事前に問題点を洗い出し、対策をすることで未然に被害を防ぐことが可能です。FMEAは設計段階では設計FMEA、作業段階は作業FMEAと呼ばれ、いろんな業務に適用されます。製造業界で広く呼ばれている「工程FMEA」は、FMEAの中でも製造工程管理に付随するものです。これは製造工程で起こり得る可能性がある不具合などを浮き彫りにすることで、トラブルを未然に防止します。FMEAの目的正常に製造工程内での作業や設備が働いていれば、製品のクオリティを維持することは難しくはありません。しかし、何らかの異常が発生した場合、品質維持が難しくなります。例えば、新しく導入した機械の異常を予測するのは困難ですが、経年劣化が原因の不具合はあらかじめ想定できます。つまり、品質管理を常に徹底するためには、異常事態に対する対策が欠かせません。このようなさまざまなトラブルや起こり得る不具合を未然に防ぐのがFMEAなのです。故障モードについてFMEAを行う中で欠かせないワードが「故障モード」です。故障モードとは、劣化・断線・摩耗といった製品の故障状態の形式分類を指します。実際にFMEAを導入するときに、プロセスごとに設備・方法・人・環境・部品の変化点を列挙し、その変化で起こる可能性がある不具合を検討していきます。例えば、製作ライン上である工程を担当する人が変わってしまう場合、技術不足が原因で不具合が起こる得るケースは、その懸念点を故障モードとしています。(引用元:高崎ものづくり技術研究所)FTAとの違いFTAはFMEAとよく間違われがちなので区別しておきましょう。FTAは「Fault Tree Analysis」の略で、「フォルトツリー解析」と呼ばれるものです。これは安全上、発生が望ましくない事象(トップ事象)を洗い出し、その原因を連鎖的に挙げていく解析手法です。FTAはトップ事象からの手法であるのに比べて、FMEAは故障モードによる懸念要素からのボトムアップ手法であるところに大きな違いがあります。(引用元:ものづくり.com)FMEAの評価方法FMEAはものづくりを安全に行うだけでなく、品質維持にとっても大変重要であることがわかりました。FMEAを実際に行う前には評価方法をあらかじめ定めておかなければいけません。以下ではFMEAの評価方法で一般的に使われている方法を紹介します。危険優先度指数(RPN)の相対評価法FMEAの評価方法は、危険優先度指数(RPN)が一般的に使われています。危険優先度指数は、S、O、Dの3つの指標の評価点を全部掛け合わせた指標です。相対評価法とは、点数が高いものから優先的に対策をすることを指します。・影響度(S)故障モードが発生した際に、工程・製品・顧客にどのような影響を与えるか、起こり得る被害の大きさを指します。例えば、人命に影響がある場合は10、影響が全くないケースは1と被害の大きさによってその数は増えていきます。・頻度(O)故障モードの起こりやすさを指し、故障モードの起こりにくい対策がされているかを評価します。故障モードが発生することが常に起こっている場合は10、事実上起こり得ないケースは1です。・検知度(D)設計期間中および工程で生産中に故障モードを検知できるかどうかの指標です。例えば、ボルトの締め忘れの故障モードを検討した場合、各工程でボルトをチェックすることになっていない、さらに試験中に折れてしまってもわからないというときに、検出可能性が全くないことになります。その場合、点数は10点です。工程FMEA実行の流れFMEAの評価方法を設定できたら、実際に行う流れを掴んでおきましょう。ここでは製造で特に大切な工程FMEA実行の流れについて解説します。①FMEAフォーマットの準備まず作業を始める前にFMEAフォーマットを作りましょう。基本的には、以下のような項目をチェックできる表を用います。フォーマットの形式は決まっていないので、使いやすいように変更して構いません。FMEAフォーマット☑︎工程☑︎作業名目☑︎具体的作業☑︎想定されるミス☑︎故障モード☑︎故障による影響☑︎影響度☑︎故障の発生原因☑︎発生度☑︎故障の検出方法☑︎検出度☑︎RPN(影響度×発生度×検出度)この段階では作業を大きな括りに分類します。例えば、「作業名目」「工程」に、「パーツ組立A」「組立」と記載します。②故障モードの決定次に「故障モード」と「想定されるミス」の項目を埋めていきます。例えば、「対象部分の接触不良」は故障モード、「部品の取り付けが甘い」は想定されるミスとなります。この工程で大切なポイントは、あくまで工程のミスの原因を洗い出すことです。「部品の結合がうまくいかない」といった不具合は設計FMEAの範囲内となるミスなので、ここではあくまで工程FMEA内の故障モードと混同しないように注意しましょう。③故障モードの分析・評価故障モードの分析と評価を行います。・故障による影響・影響度故障モードが発生した際に起こり得る影響の規模を10段階で以下のように数値化します。先述した「人命に関わるような致命的な影響」を10とし、そこから影響が全くないケースを1に設定します。10まったく機能しない9特定の条件下で機能しない8機能しないおそれがある7特定の条件下で機能が低下する6機能が低下するおそれがある5機能はするが、改善が不可欠4機能はするが、改善すべき3影響はないと見なせる2完全に無視できる程度の影響しかない1まったく影響がない・故障の発生原因・発生度発生度は故障が発生する頻度を指します。10毎回91日1回81週間に1回72週間に1回61か月に1回56か月に1回41年に1回33年に1回25年に1回1発生しないさらに上記のFMEAフォーマット内「故障の発生原因」の項目には「ネジ1と2が似ている」といった、そのミスが起こる原因を記載してみると良いでしょう。・検出度検出度とは検出できる確率を指します。10検出不可9工程での検出率=10%8工程での検出率=20%7工程での検出率=30%6工程での検出率=50%5工程での検出率=70%4後の工程で検出率=100%3次の工程で検出率=100%2作業途中で検出可能1作業途中で検出率=100%また、FMEAフォーマットの「故障検出方法」の項目には、「部品取り付け後、目視確認する」などの具体的な検出方法を記入します。ただし、100%とするのは機械で確実に検出した場合に限り、ヒトがチェックする場合は100%にはしません。・RPN上記の影響度・発生度・検出度で出した評価点を掛けていきます。そこで出た値がリスクの大きさを表す指標「RPN」となります。RPN=影響度×発生度×検出度例えば、影響度=8、発生度=4、検出度=5の場合、「8×4×5=160」でRPNは160になります。④改善の実施最後にこれまでの流れで出たRPNをもとに、対策するべき課題に優先度をつけて優先度が高いものから改善していきます。この改善の目標はRPNの数値を低くさせることです。そのためには影響度・発生度・検出度を下げる取り組みがマストになりますが、影響度を下げることはできません。なぜならその工程で目的とする製品が同じであれば、それに問題が生じた影響は変化しないからです。例えば、作業改善をしてある部品の取り付けミス発生頻度を減らせたところで、取り付けミスをしたときに生じた影響は変わりません。そのため、ここでいう改善はあくまでも発生度・検出度の数値を低下させることが目的となります。改善策を実際に行ったら、再度RPNを出して評価しましょう。RPNが100以下になるまで繰り返します。FMEAまとめFMEAは作業を安全に行い、高い品質の製品を作る上でとても大切な方法です。ぜひ、本記事で紹介したFMEA評価方法やフォーマットなどを参考にしながら、取り組んでみてください。

  • ISO14001とは【入門】わかりやすく解説

    ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称で、この組織によって定められた規格を「ISO規格」と言います。代表的な規格として、ISO9001(品質に関する規格)とISO14001(環境に関する規格)が挙げられます。ISO14000シリーズは、環境マネジメントシステム、環境監査、環境パフォーマンス評価、環境ラベル、ライフサイクルアセスメントなどの規格から構成されます。中でも、中心となるのが「環境マネジメントシステムの仕様」を規定しているISO14001です。今回は、ISO14001についてわかりやすく解説します。参考:【入門】ISO9001とは?簡単にわかりやすく!参考:ISO9001取得企業数の推移と取り組み例参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説ISO14001とは?ISO14001は、ISOによって定められた環境マネジメントシステム(Environmental Management System)の国際認証規格を指します。この規格は、企業における活動や、その結果として生じる製品、サービスが環境に及ぼす影響(リスク)を分析・管理し、環境負荷を低減する仕組みの構築を目的とした規格です。各企業が自社で環境に関する方針や目的・目標を設定し、環境を考慮した取り組みを行います。この他にも、ISO14001には環境に関する法令の遵守も含まれます。環境マネジメントシステムとは?ISO14001において環境マネジメントシステムとは、課題を改善する仕組みのことを指します。ISO14001では「ISO14001規格要求事項」が定められており、これに沿って環境マネジメントシステムを構築します。環境マネジメントシステムの基本的な構造は、PDCAから成り立ち「方針・計画(Plan)→実施(Do)→点検(Check)→是正・見直し(Act)」という過程を繰り返し、課題の解決及び改善を図ります。ISO14001の環境側面について環境側面とは、企業や組織の活動・サービスの中で、環境に影響を与える又は影響を与える可能性のある側面、要素を指します。環境側面の具体的な例としては、紙、電気、廃棄物などの環境負荷になるもののほか、リサイクル材料の活用、クリーンエネルギーの利用など環境に有益となる要素も含まれます。ISO14001における環境側面では、「著しい環境側面」つまり、さまざまな環境側面の中から特に大事であると考えられる課題を選定し、管理を行います。この課題は、各企業で設定される目標や方針に沿って選定されます。

  • 【入門】ISO9001とは?簡単にわかりやすく!

    ISO9001は、国際的に通用する品質マネジメントシステム規格のことです。ISO9001認証の取得は、品質の高い製品やサービスを提供するための仕組みを構築して運用し、その運用状況を適切に管理していることの証となります。取引先や顧客などからの信頼獲得やアピール、業務の効率化、企業体質の改善、従業員の意識向上などのメリットがありますが、取得と維持にコストがかかるというデメリットもあります。この記事では、そもそもISOとは何かというところから、ISO9001や品質マネジメントシステムの内容、ISO9001と業務改善についてもわかりやすく解説していきます。参考:ISO9001取得企業数の推移と取り組み例ISO9001とは何かISOとはISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)というスイス・ジュネーブに本部を置く非営利法人のことです。その名称の通り、日本国内だけでなく海外でも通用する、国際的に認められた国際規格を策定しています。つまり、ISOは、国際的な取引をスムーズにするため、世界中で同じ形状・寸法・材質・品質・性能・機能・安全性の製品やサービスを提供できるように規格を定めているのです。このISOが定めた国際規格を「ISO規格」と呼ぶほか、単に「ISO」と呼んでISO規格を指すこともあります。ISOは、特に電気や通信を除いた工業規格を策定しています。ISOが定める工業規格の中には、製品や部品の具体的な寸法や形状などを定めた「モノ規格」や、組織の品質活動や環境活動を管理するための仕組み(マネジメントシステム)を定めた「マネジメントシステム規格」などがあります。モノ規格については、例えば、以下が挙げられます。・ISO68…ネジ・ISO7010…非常口のマーク・ISO5800…フィルム感度・ISO/IEC7810…クレジット・キャッシュカードのサイズ私たちは、ISO規格に適合した製品を選ぶことで、世界中どこでも同等の製品を手に入れることができます。逆に、ISO規格に適合した製品は、世界の多くの国で標準的に使用されているものであり、販路を世界に広げることも可能となります。一方、マネジメントシステム規格には、例えば、以下のような規格があります。・ISO9001…商品やサービスの品質向上を目的とした品質マネジメントシステム規格・ISO14001…企業活動の環境に対する影響を最小限に留めることを目的とした環境マネジメントシステム規格・ISO27001… 情報の機密性・完全性・可用性を適切に管理し、情報を有効活用することを目的とした情報セキュリティマネジメント規格・ISO45001…労働安全衛生上のリスクを管理し、継続的に労働安全衛生システムの改善を図ることを目的とした労働安全衛生マネジメントシステム規格これらのマネジメントシステム規格は、企業全体のほか、事業所や工場、部門単位でも取得することが可能です。そして、この規格を取得した組織は、品質や環境などに関して、国際標準レベルの行き届いた管理を行っていることを示します。そのため、品質マネジメントシステム規格を取得した工場で生産された製品は、一定レベル以上の品質であることが期待できます。また、情報セキュリティマネジメント規格を取得した工場であれば、機密情報が徹底管理されていることが期待できるため、機密を含んだ部品の製造も安心して依頼することができるでしょう。参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説ISO9001とはISO9001とは、企業や工場が提供している製品やサービスの品質向上を目的としたマネジメントシステム規格のことです。つまり、ISO9001を取得している企業・工場は、製品・サービスの品質向上のため、製造過程から顧客への提供までのプロセスで、国際基準の管理体制を敷いていることを示します。それは、最終的に提供される製品・サービスについて、一定レベル以上の品質を保証していることを意味します。また、ISO9001では、品質のほか、顧客に対する価格や納期などについても定めており、最終的に顧客満足を達成することを目標としています。実際にISO9001を取得するには、ISOが発行している「ISO9001」に記載された「規格要求事項」の全てを満たす必要があります。具体的には、以下を実行することが必要です。1. 準備…担当者と工場や部門単位といったISO9001の取得範囲を決める2. 標準化…品質向上が可能で、規格要求事項を満たす、事業運営の手順やルールを決める3. 文書化…決定した手順やルールを文書化する4. 実行…文書化した手順やルールに沿って実行する5. 記録…実行した結果を文書に残す6. 評価…結果の有効性や効果を評価する7. 改善…問題点があれば見直すと共に、より良い方法に改善するISO9001に準拠するということは、この「標準化」で始まり「改善」で終わるプロセスを日常的に行っていくことです。そして、この一連のプロセスを行った後、問題がなければ、ISO審査機関の審査を受けます。組織が決めて実行したプロセスがISO9001の規格要求事項に適合し、ISO9001の仕組みが現場レベルでも機能していると認定されれば、ISO9001の認証取得となります。なお、ISOは国際規格を策定している機関ですので、ISOが発行しているISO9001は英文で書かれています。「JIS Q9001」は、それを日本工業標準調査会(JISC)が翻訳したもので、日本国内で円滑に利用するためにJIS規格として発行されています。品質マネジメントシステムとは品質マネジメントシステムとは、製造した製品や提供するサービスの品質を管理する仕組みのことです。つまり、品質マネジメントシステムの運用とは、製品の受注から製造、納品までの過程やサービスを考案して提供するまでの過程における手順やルールを予め決めて実行し、結果を評価して改善していく活動のことです。それにより、一定品質の製品・サービスをいつでもどのような顧客に対しても提供できるようにします。具体的には、上述した「標準化」から「改善」までのプロセスを何度も実行していくことですが、それはPDCAサイクルを回していくことと同義です(上図参照)。ISO9001と改善の機会についてISO9001に準拠した品質マネジメントシステムには、そのマネジメントシステムそのものを継続的に改善していく仕組みが備わっています。PDCAサイクルで言えば、「A」の「Act」で行われます。そのため、PDCAサイクルの一回りに一回、改善の機会があることになります。例えば、作業手順を簡素化したり、設備の配置を変更したりなど、少しでも事業や組織の運営が良くなれば、それは改善です。もちろん、適用した改善は、文書化した上で、その改善の有効性や効果を評価することが必要となります。この日常的な改善のほか、ISO9001には、マネジメントレビューという改善の機会があります。マネジメントレビューとは、日常的に実施してきた品質マネジメントシステムの運用について振り返りを行い、成果や問題点などを考察する経営管理活動のことです。必須の活動として、ISO9001の規格要求事項に記述されています。マネジメントレビューでは、以下のような項目に基づき、経営層が組織の品質マネジメントシステムを検証して、品質マネジメントシステムの変更や改善を指示します。・これまでの品質マネジメントシステムの運用の結果・市場状況や顧客要求の変化、法令規制要求事項の変更といった外部の変化から生じた課題・組織変更や新製品・サービスの導入、設計変更、工程変更といった内部の変化から生じた課題・顧客や購買先、外部委託先といった利害関係者からのフィードバック・内部監査や外部監査から提示された問題や課題これらの情報を元に、従来の品質マネジメントシステムを検証し、今後運用していく品質マネジメントシステムを再構築していくのです。

  • ISO9001取得企業数の推移と取り組み例

    ISO9001は、国際標準化機構 (International Organization for Standardization、ISO)によって定められた品質マネジメントシステムに関する国際規格です。顧客の満足度の向上を目的とした規格で、製品やサービスの品質向上に役立つマネジメントシステムとして、全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織において利用されています。参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説ISO9001取得企業数とその推移日本でのISO9001取得企業数は、以下のように推移しています。下表から分かるように、ISO9001の認証取得企業数は2007年以降、減少傾向にあります。<ISO9001の認証件数の推移>引用元:公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)ISO9001取得企業数(世界)世界のISO9001取得企業数は下表の通りです。<ISO9001取得企業数(上位10か国)>中国280,386イタリア95,812ドイツ47,868インド34,397日本33,330スペイン30,801イギリス25,292フランス21,696アメリカ20,956ブラジル17,952引用元:ISO Survey 2019 results – Number of certificates and sites per country and the number of sector overall Functions – ISOISO9001取得企業の取り組み例ISO9001取得企業では、以下のような品質の基本方針を定め、品質向上への取り組みが実施されています。・顧客の満足度の向上:顧客のニーズを捉え、顧客目線での製品・サービスの提供を行う。そのために、さらなる提案・改善を継続する。・品質の維持、向上:確実な品質で納期内に製品・サービスを提供するとともに、常に品質の維持・向上・改善を行う。・社会的責任への取り組み:法令・規制要求事項を遵守し、事故・災害の未然防止・再発防止に絶えず取り組む。・人財の育成と技術の継承:業務改善、生産性の向上のために、人財を育成、確保し、確かな技術と技能を保持・継承・発展させる。上記のような基本指針に基づいて、各企業において次のような取り組みが行われています。・問題・課題の是正措置を行う際は、マニュアルや手順書の内容を見直し必要な変更を加え、継続的に会社・現場の仕組み、ルールの改善を行う。・社内教育体制を整えることで、社員一人一人が品質の改善に積極的に関わる。・明確な目標を設定し、PDCAを回すことで目標の達成に向け、行動する。さらに、目標達成後も新たな課題に向け、改善を継続する。

  • 製造業の4Mとは?品質管理と変更管理|5M+1Eと6M

    製造業の4Mとは、製品の品質管理や生産ラインの改善などを行う上で重要な4つの要素のことです。4つの要素とは以下のことを指し、これらの単語の頭文字を取ったものが4Mです。①Man:人②Machine:機械③Material:材料④Method:方法製品の製造に関わる事項を4Mの各要素に分類することで、課題・問題の発見や解決、製造プロセスの改善などに役立ちます。また、4Mは、不具合の発生など、製造現場で起こる変化の対応策をシステム化する手法である「変更管理」にも活用できます。さらに、近年では、製品の多様化や複雑化に伴い、4Mに新たな要素を加えた「5M+1E」や「6M」などの考え方も生まれています。製造業の品質管理「4M」の定義引用元:アイアール技術者教育研究所4Mとは、上述したように「人」、「機械」、「材料」、「方法」のことを意味します。そもそも、品質管理とは、設計者が目標とする品質や顧客が求める品質を満たすための活動で、完成品の品質はもちろん、製造プロセスも管理の対象となります。4Mは、この品質管理の体制を構築・維持・改善する際や問題発生時に指針を与えるものです。品質を管理する上での必須の事柄や問題点などを4Mに分類することで、偏りや抜けのない洗い出しが可能となり、改善点・問題点を明確にすることができます。さらに、収集した4Mの情報を分析してルールを定め、実践していくことで品質管理を進めていきます。参考:QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み参考:製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方4M①Manまず、4Mの「Man」は、現場で製造に携わる「人」に注目したものです。例えば、一定の品質を維持するためには、作業員のスキルを管理することが重要です。製造プロセスには、工作機械の制御や製品の目視検査などの人が関わる作業があります。それらの作業の中には、特定のスキルが必要な場合があり、各作業に対してその作業のスキルを持った作業員が割り当てられていなくてはなりません。そのため、品質の維持には、作業員のスキルマップなどを作成して管理し、各作業に適切な作業員を割り当てるシステムを構築することが必要となります。4M②Machine4Mの「Machine」は、品質管理を進める上で、製品の製造に使われる「機械」に注目したものです。安定的に製品を製造するためには、機械や設備などの管理が必要となります。そのため、機械の性能や稼働率などをあらかじめ調査して分析しておくことが大切です。そして場合によっては、メンテナンスや点検の計画を立てる、新しい機械を導入する、機械のレイアウトを検討するなどの対策を講じます。4M③Material4Mの「Material」は、製品に使われる「材料」に注目したものです。製品を製造するには、様々な原材料や部品などを調達することが必要となります。これらの材料に関して、どのような材料を、どの仕入先から、どの程度の数を、どのような流通手段、どのような価格で購入しているかを管理することが大切です。特に品質管理上、材料が所定の規格を満足しているか、材料に欠陥がないか、材料の検査が実施されているかなどを把握しておくことが重要です。これらが抜けていると、製品の品質維持が困難になるのはもちろん、製造段階において事故やトラブルに繋がる恐れがあります。4M④Method4Mの「Method」は、製品を製造する「方法」に注目したものです。品質管理を進めるにあたっては、製品の各製造工程が決められた手順・方法で行われていることはもちろん、細かな作業の動作なども標準化しておくことが重要です。そのためのマニュアルなども作成しておき、各作業が同じ手順・方法で行われるように管理します。また、マニュアルなどは、見直しを図ることで、品質管理体制の改善に繋げることが可能です。「5M+1E」と「6M」近年、生産される製品の多様化や複雑化により、4Mの要素を考慮するだけでは不十分なケースが現れています。そのため、「5M+1E」や「6M」といった、さらなる要素を考慮した品質管理の考え方が広まっています。5M+1E①Man:人②Machine:機械③Material:材料④Method:方法⑤Measurement:検査・測定⑥Environment:環境「5M+1E」は、4Mに「検査・測定」を意味する「Measurement」と「環境」を意味する「Environment」を加えたものです。そもそも、4Mの「人」や「機械」、「方法」の中に「検査・測定」は含まれているものでした。しかし、近年では、品質管理に重要な項目として「検査・測定」を独立して管理することが一般的になっています。一方、温度や湿度、大気圧などを管理しなければ、品質の維持が困難になってきたと考えられたことで加えられたのが「環境」です。例えば、金属は温度によって膨張・収縮することから、精度の維持や寸法のバラツキ防止のためには加工時の温度を管理する必要があります。6M①Man:人②Machine:機械③Method:方法④Material:材料⑤Measurement:検査・測定⑥Management:マネジメント「6M」は、「5M+1E」の5Mに「マネジメント」を意味する「Management」を加えたものです。現在の製造業では、多様な商品を小ロットで製造する「多品種少量生産」が求められています。それに伴い、生産ラインが複雑化するとともに、生産ラインの変更に対する柔軟性も求められ始めています。そのため、製品によって次々と変わる生産ラインや作業内容などを管理することが必要となったのです。4Mを活用した「変更管理」4Mの考え方は、「変更管理」にも活用されており、変更管理を4Mで管理する手法を「4M変更管理」と呼びます。製造現場では、機械の入れ替えや材料の変更といった、定めた製造プロセスや作業手順・方法などの変更が必要となる事象がよく起こります。このような生産に影響する事象を4Mで分類した項目の変化と捉え、可能性のある変化を予測し、対応策をあらかじめ用意しておくことが4M変更管理です。例えば、変更管理の対象となる項目には、以下のようなものがあります。・Man(人):作業員の変更、ローテーションの変更、年休など・Machine(機械):工場の移動、機械・設備の新設・変更など・Material(材料):材料の変更、仕入先の変更など・Method(方法):製造方法の変更、製造条件の変更などこのような予測可能な変化に対し、影響や対応策をマニュアルなどに明文化して誰でも対応できるようにしておくことが重要です。しかし、原因が不明な機械の故障など、予測できない変化も製造現場では起こります。このような場合でも、ある程度のざっくりとした対応手順を用意しておくことが大切です。また、品質への影響が大きい項目から対応するなど、優先順位をつけた対応策を用意しておくと、より迅速な問題の解決や原因の特定に繋がります。

  • 品質管理・現場改善の基礎知識

    品質管理の基礎知識製造業の品質は「製品の品質」「業務の品質」が挙げられます。ISO9000の理解から、QCサークル活動などの品質向上のための具体的な取り組みを学びます。品質管理を学べる記事▶【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説▶RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!▶製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方▶QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み ▶ミルシート【基礎知識】内容と材料証明書、検査成績書との違い検査を学べる記事▶検査成績書について解説!サンプルもご紹介!▶非破壊検査のデメリット・種類一覧品質管理に関する記事をもっと見る:品質管理のカテゴリ|記事一覧現場改善の基礎知識製造業において、ムダ・ムラ・ムリ(ダラリ)を改善したり、環境を整えることは利益を確保するために必要不可欠です。現場を改善するためにはどんな考え方で具体的にどういった活動をすればよいのか、学びます。現場改善を学べる記事▶製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点▶製造業の5S活動とは?目的・目標・事例を学んで現場改善▶製造業のポカミス原因と対策まとめ現場改善に関する記事をもっと見る:現場改善のカテゴリ|記事一覧金属加工の基礎知識は下記の記事にまとまっています。【保存版】金属加工の教科書|製造業の基礎を身につける

  • 製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方

    QC7つ道具とは、製品の製造工程や品質に関わるさまざまなデータを整理・分析するためのツールで、品質管理(QC:Quality Control)において不可欠なツールの一つです。QC7つ道具は、チェックシート、グラフ、パレート図、ヒストグラム、管理図、散布図、特性要因図の7つから成り、それぞれの図が異なる特徴を持ちます。QC7つ道具を使ってデータを整理・分析することで、製造現場の「問題点の見える化」が可能となります。参考:QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点QC7つ道具とは?データ分析のための手法<パレート図>パレート図は、棒グラフ、折れ線グラフを用いた図です。棒グラフでは項目別に分けたデータを値の大きい順に、折れ線グラフでは累積比率(各項目のデータ数を累積数の合計で割った値)を記します。上図では、不良率についてのパレート図を示しています。棒グラフには、不良の発生要因を発生回数の多い順に、折れ線グラフでは各要因の累積発生比率を記しています。このようにパレート図では、ある問題に対して、最も影響を及ぼしている要因を一目で把握できるため、どの事項を優先して解決すべきかが明確になり、効率的に問題の解決につなげることができます。特性要因図引用元:株式会社キーエンス特性要因図は、問題(特性)の背景にある要因を書き出し可視化した図となります。上図のように、4M(Man:人、Machine:機械、Method:方法、Material:材料)の観点から問題の背景にある要因を示すことで、系統的に整理することができます。また、特性要因図は、その図の形状が魚の骨に似ていることから、フィッシュボーンチャート、フィッシュボーン図と呼ばれることもあります。特性要因図を用いて問題の原因を書き出し整理することで、問題の原因を絞り込み、推定することができます。ここで得られた推定原因について、次の項目で説明するグラフを用いることによって、より精密な分析・検証が可能となります。グラフグラフは、データを可視化した図です。グラフを用いることによって、データの比較や変化などが一目で分かるようになります。グラフにはさまざまな種類がありますが、品質管理(QC)には次のようなグラフがよく用いられます。<品質管理に使用される代表的なグラフ>・折れ線グラフ引用元:株式会社キーエンス折れ線グラフは、データの変動をみるもので、時間的変化や数値の変化を可視化することができます。・棒グラフ引用元:コンサルソーシング株式会社棒グラフは、数量の大小を示すもので、棒の長さによって数値を可視化し、比較することができます。・円グラフ引用元:コンサルソーシング株式会社円グラフは、データの内訳を比率ごとに示したもので、各項目を割合ごとに示し、項目別の割合を確認・比較するのに役立ちます。・帯グラフ引用元:コンサルソーシング株式会社帯グラフは、円グラフ同様、データの内訳を比率ごとに示したものです。ただし、上図のように、2つの帯グラフを並べることで、各項目ごとの全体に対する割合の変化なども可視化することが可能となります。・レーダーチャート引用元:株式会社キーエンスレーダーチャートは、項目別の評価を示したもので、全体のバランスをみるのに役立ちます。ヒストグラム引用元:株式会社キーエンスヒストグラムは、データを一定ごとの範囲に分け、その範囲に属するデータを度数として、棒グラフで表した図です。グラフの形状から、データの全体の分布状況や、ばらつき、ピーク値などを見ることができます。工程上の問題を特定することに用いられ、他にも、ヒストグラムの横軸に規格上限値及び下限値を設定することで、良品か不良品かを一目で把握できることから、品質検査などにもよく利用されています。散布図引用元:株式会社キーエンス散布図は、2つのデータをそれぞれ横軸・縦軸にとり、点としてプロットした図です。点の分布形状から、2項目の関係性を見るのに役立ちます。散布図の分布形状には、主に上図に示した3つの傾向があり、形状によりデータの関係性を把握することができます。<散布図の分布形状>・正の相関…右上がりの形状。横軸値が増加すると、縦軸値も増加する関係性にある。・負の相関…右下がりの形状。横軸値が増加すると、縦軸値は減少する関係性にある。・無相関…横軸値の変動と、縦軸値の変動に法則性が見られない。2つの項目は相関関係にない。例えば、横軸に加工条件(加工時間、温度、加工速度など)、縦軸に不良件数をとり散布図を作成することで、加工条件の変化による不良件数への影響を把握することができます。管理図引用元:株式会社キーエンス管理図は、上図のように目標値を中心線(CL:Center Line)、その上下に公差を示す上方管理限界線(UCL:Upper Control Limit)と下方管理限界線(LCL:Lower Control Limit)を設定し、データを時系列に沿って折れ線グラフとして示した図です。データの変化を調べ、データの平均やばらつきについて時系列で把握することが可能となります。また、上限値と下限値を設定することから、データが正常値内かどうか容易に判断することができます。また、時系列にデータを収集することで、どのタイミングで正常値から外れたか(アウト、管理外れ)が分かるため、異常原因の特定にも役立ちます。チェックシート引用元:株式会社キーエンスチェックシートは、あらかじめ設定した項目に対して、データを記入していく表です。チェックシートは、主に点検と記録の用途に分けられます。点検用のチェックシートでは、点検項目について漏れがないかなど、ポカミスを防止するのに用いられます。一方、記録用のチェックシートでは、問題解決において必要となるデータ収集に利用されます。例として、不良エラー記録用のチェックシートを上図に示しました。このように現場の状況を随時記入し得られたデータは、後ほど前述したさまざまな図を用いて、分析に利用されます。そのため、チェックシートを作成する際にはその後のデータの活用を見据えた上で、リスト項目を設定することが重要となります。参考:製造業のポカミス原因と対策

  • QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み 

    QCサークル活動とは、品質の向上を目指す取り組みで、日本においては1962年ごろから広く活用されています。「QC」とはQuality Control(品質管理)に由来しています。QCサークル活動では、全従業員をQCサークルという小規模のグループに分け、品質の改善を図ることで、品質の向上を目指します。製造業の品質向上とは?製造業における品質には、「製品の品質」や「業務の品質」が挙げられます。製品の品質について、ISO9000シリーズでは以下のように定義されています。「本来備わっている特性が要求事項を満たしている程度」引用元:ISO9000「3.1.1品質(quality)」製品の加工精度や、スループット、歩留まりなどが指標となり、最終的には製品を使用する顧客の満足度によって評価されます。業務の品質は、仕事の生産性、効率性、職場の環境などが指標となります。誰が業務を行っても品質が同じでバラツキがないように、業務プロセスを改善していくことが目的です。 製品や業務の品質を向上するために、ISO9000シリーズなどの品質マネジメントシステムが広く利用されています。この手法は、品質マネジメントシステムを構築した上で、改善を図っていくという「トップダウン」型の手法で、顧客の満足を目指して、品質の継続的な改善を図ります。参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説同じく、品質を向上する取り組みとして「QAサークル活動」があります。こちらは従業員が主体となって行う取り組みで、「ボトムアップ」型の手法となります。QCサークル活動とは?前述した通り、QCサークル活動とは、品質向上を達成するための取り組みです。QCサークル活動では、全従業員をQCサークルという小規模のグループに分け、品質の改善を図ることで、品質の向上につなげます。QCサークル活動の目的QCサークル活動の目的は、品質第一の生産、顧客及び従業員の満足度の向上、さらに生産工程、納期、コストなどの面における改善を行い、品質向上を目指すことです。QCサークル活動のメリットQCサークル活動のメリットには、次のような点が挙げられます。●現状の可視化:QCサークル活動では改善する点について、データを集め数値化、グラフ化した後、分析を行います。問題点について定量的に分析することで、何が問題なのかがより明確になり、従業員が現在の社内の状況を客観的に把握することが可能となります。●従業員のモチベーションの向上:従業員満足度向上がQCサークル活動の目的に含まれていること、また、従業員自らが主体となって活動を行うことから、社員のモチベーションのアップにつながります。●社内での情報共有:社内全体で活動を行うことによって、情報の共有も可能となります。QCサークル活動の実際の進め方・手順QCサークル活動では、基本的には同じ職場の中から少人数のグループを作り、グループ内で次のような手順で行っていきます。①テーマの選定現状の問題点から、改善を行う対象(テーマ)を決定します。進め方は、問題点の洗い出し→問題点の評価及び絞り込み→テーマ決定となります。問題点の洗い出しでは、例えば、製造業の生産ラインにおいては、不良率や設備効率などについて会社の生産ラインの目標値と現状の実績と比べると、どの項目で目標に達していないかがより明確となります。次に、問題点の絞り込みに当たっては、重要性、緊急性、費用、効果の総合的な観点から問題点について評価後、絞り込みを行い、その上でテーマを選定します。②現状の把握・目標設定テーマを選定した後は、問題点についてデータを収集し、整理することで、現状についての詳しい状態や傾向を把握します。その上で、何をいつまでにどれだけ改善するかという目標を決めていきます。データ収集においては、層別という手法がよく用いられます。層別とは、データを人、システム、手順、モノ、環境、時間などの要因ごとにグループ分けを行い、整理する方法です。また、データを収集した後は、グラフ化することで、問題点の絞り込みが容易になります。グラフには、「パレート図」がよく用いられます。パレート図は、棒グラフと折れ線グラフで表され、ある影響の度合いや問題の大きさを示すのに用いられます。下図に、不良率についてのパレート図を例として示しました。棒グラフでは、不良の発生要因を発生回数の多い順に並べ、折れ線グラフで各要因の累積発生比率を記しています。このようなグラフから、どの問題を優先的に解決すべきかを見つけ、目標の設定を行います。<パレート図の例>③活動計画の作成活動計画では、具体的な活動スケジュール及び主担当者を決定していきます。④原因の分析問題について原因の洗い出しを行い、推定される原因の検証を行います。原因の整理には、「特性要因図」が利用されます。特性要因図とは、ある問題に対してどのような要因が影響を及ぼしているかを洗い出して矢印でつないだものです。通常、下図のように、4M(Man:人、Machine:機械、Method:方法、Material:材料)の観点から、問題の背景にある要因を示すことで、より系統的に整理していきます。ここで特定された推定原因について、散布図、折れ線グラフ、棒グラフなどのグラフを用いて、原因をより精密に分析、検証します。<特性要因図の例>引用元:株式会社 産業革新研究所⑤対策の立案と実施原因が特定されたら、それに応じた対策の立案を行います。対策の立案には、「系統図」が役に立ちます。系統図は、目的と方策を段階的に展開し、図に表わすことによって、最適な対策(手段)を見出す手法として用いられます。系統図では、下図に示したように、目的を達成するための手段を追求し、対策案を立てていきます。対策の実施にあたっては、実施計画を作成し、スケジュール及び担当者を明確にした上で行います。<系統図の考え方>引用元:日本アイアール株式会社⑥効果の確認対策の効果を測定し、問題点が改善したかどうか評価を行います。⑦標準化と管理の定着効果が確認された場合には、改善を定着させるために工程表、作業要領書などに反映し、標準化(ルール化)を行います。さらに、結果のフォローも行うことで、改善を確実に定着させていきます。⑧反省・今後に向けて最後に、メンバー全員で反省点について話し合いを行い、達成しきれなかった課題を挙げ、次回以降の活動につなげます。

  • 非破壊検査のデメリット・種類一覧

    非破壊検査は、直接的に発見できない製品内部の欠陥などを、検査対象を壊すことなく検出する検査法です。様々な工業製品はもちろん、自動車や鉄道車両、航空機等の輸送機、工場の設備、建築物などの検査に活用されており、社会の安全や廃棄物の削減に役立っています。しかし、非破壊検査では、検査法の種類によって適用可能な物質や検出可能な欠陥が異なるなど制限があります。また、検査対象の性質や欠陥の状態などを検査結果から間接的に推察するため、どうしても不確実性が残ります。そこで、今回の記事では、非破壊検査の概要と種類について解説してきます。非破壊検査を依頼する場合や検査結果を確認する場合などで、参考にしていただければ幸いです。非破壊検査とは非破壊検査とは、対象物を破壊することなく検査する技術です。検査対象を傷つけたり検査対象の機能に悪影響を与えたりすることなく、割れ・空隙といった欠陥の有無や、形状・寸法などを調べることができます。破壊検査と異なり、検査品をそのまま使用できることが特徴です。主に、使用前の製品の「品質評価」、使用中の製品の「寿命評価」を目的に行われる検査手法です。品質評価は、製品が仕様を満足しているかを確認することで、製品の信頼性を担保するために行われます。一方、寿命評価は、製品の損傷や劣化状況を検出して余寿命を予測することです。安全に使用できる期間を予測したり、補修や交換などが必要かを判断したりするために行われます。そのほか、顧客からのクレームなどで、故障の要因を調査する場合などにも実施されます。しかし、欠陥などを間接的に発見する検査法であることから、ある程度の不確実性を伴います。そのため、検査対象には、どのような欠陥が生じるのか、またそのとき、適用した非破壊検査法によってどのような検査結果が得られるかなどの知識や経験が重要となります。つまり、非破壊検査法の種類を選ぶにあたっては、検査の目的や対象物の材質・形状などを考慮するのはもちろん、存在する欠陥の状態などを予め予測することが必要です。放射線透過試験(RT)放射線透過試験(Radiographic Test)は、対象物に一様な強さの放射線を照射し、物質に吸収される放射線量の差をフィルムに撮影することで、内部の欠陥や対象物の厚みを検出する方法です。レントゲンと同じ原理を用いています。鋳造品に生じる引け巣(鋳造品の内部に残る気泡)、溶接部に生じるブローホール(溶着金属中に生じる空洞)や溶込み不良などが存在する箇所では、放射線が透過しやすくなりフィルムにその輪郭が現像されます。金属だけでなく、非金属の検査にも用いることができます。素材内部の空洞などの検出が得意ですが、厚みのある対象の検査には、高いエネルギーを持つ放射線の照射が必要となるため、専用の検査装置を用意しなくてはなりません。また、空洞が生じない、表面のキズや密着した割れなどを検出することが不得手です。さらに、放射線の安全管理には十分な注意が必要となります。超音波探傷試験(UT)引用元:非破壊検査株式会社超音波探傷試験(Ultrasonic Test)は、固体と液体又は気体の境界面で反射されやすい超音波の性質を活用した検査法です。反射された超音波(エコー)の大きさからキズの大きさを、エコーが戻ってくる時間からキズの位置を推定することができます(上図参照)。厚さの測定にも使用可能です。主に溶接部や鍛造品などの内部キズの検出に用いられる方法です。素材内部に生じた割れなどの検出に適しており、特に平板状の欠陥の検出が得意です。また、超音波は、到達距離が長く、厚さ数メートルの製品でも探傷が可能です。しかし、球状のキズや空洞に対しては、エコーが四方八方に反射してしまうために検出が困難です。複雑な形状の検査にも適していません。また、オーステナイト系鋼や鋳造品といった粗粒材(金属組織のサイズのバラツキが大きい材料)に対しても、この検査法は向いていません。それは、組織の境界で発生する微小なエコーが乱雑に広がり、検出すべきエコーを減衰させるからです。磁気探傷試験(MT)引用元:非破壊検査株式会社磁気探傷試験(Magnetic Test)は、磁性体の性質を利用して、表層部の欠陥を検出する検査法です。磁化された磁性体は、表層部に欠陥が存在すると、上図のように外部へ漏洩磁束を生じます。これを、下図のように磁場に反応する磁粉などで検出することで、欠陥の位置や状態を測ります。引用元:非破壊検査株式会社磁性体のみに適用可能な検査法で、表面や表面直下の欠陥を検出するために実施されます。感度が良い方法で、肉眼で直接観察できるという利点があります。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼など、非磁性材料の検査には適用できません。浸透探傷試験(PT)引用元:日東金属工業株式会社浸透探傷試験(Penetrant Test)は、毛細管現象を利用して、表面に開口している欠陥を目視でも判別しやすい像にして検出する検査法です。その検査法は、大きく以下の4つの工程に分けることができます(上図参照)。浸透探傷試験の4工程①浸透処理 表面に浸透液を塗布することで、欠陥内部を浸透液で満たす。②除去処理 欠陥部以外に付着している浸透液を取り除く。③現像処理 表面付近の表面張力を強めるための微粉末(現像剤)を薄く塗布する。④観察 毛細管現象によって欠陥内部の浸透液が吸い上げられ、指示模様を形成するので、これを観察する。金属でも非金属でも適用できる方法で、複雑な形状でも検査が可能です。しかし、指示模様から欠陥の幅や深さを求めることはできません。また、表面が粗い素材や多孔質材料には適用できません。電磁誘導探傷試験(ET)電磁誘導探傷試験(Eddy current Test)は、検査対象の表面に交流を通じたコイルを接近させ、電磁誘導現象によって生じる渦電流の変化から欠陥を検出する検査法です。表面や表面直下に生じたキズの検出に用いられます。また、導電率の違いを検出することで、膜厚測定や材料判別などにも使用することができます。板やインゴットの表面欠陥のほか、線・棒・管状の対象物の欠陥も検出可能です。線・棒状の対象物には、コイルを対象物に巻くことで、管状の対象物には、コイルを内挿することで検査することができます。前処理や後処理が不要で、検査結果が電気的出力として得られるため、自動化することが可能です。ただし、検査法の性質上、不導体の検査には適用できず、内部キズの検出も困難です。また、形状が複雑な対象の検査には向いていません。アコースティックエミッション(AE)引用元:株式会社レックスアコースティックエミッション(Acoustic Emission)は、材料が変形したり割れたりする際に発する弾性波から欠陥を検出する検査法です(上図参照)。材料表面にセンサなどの検査機器を設置し、発生する弾性波を受動的に検出します。ほかの非破壊検査とは異なり、稼働中の製品や設備を常時監視する形で行われます。稼働中のものを診断可能で、欠陥の発生や進展をリアルタイムに観測できるのが利点です。材質を問わず適用可能で、感度が高いという特徴もあります。しかし、検査機器が製品の付属品となるため、コストが高くなります。また、高感度であるがゆえに、電磁ノイズに弱い、高温環境下では計測できないなどの問題があります。スンプ法(SUMP)スンプ法(Suzuki’s Universal Micro Printing method)は、検査対象の表面の凹凸をアセチルセルロース膜(レプリカフィルム)に転写し、フィルムを顕微鏡で観察する検査法です。主に大型部品の表面欠陥や表面組織などを観察するために用いられます。応力腐食割れや粒界腐食、クリープ損傷などの検出や調査に有効な方法です。高度なエッチング技術と高精度な顕微鏡があれば、表面の状態を精度良く把握することができます。ただし、エッチング技術が必須で工程が多く、手間がかかる方法です。

  • FTA(故障の木解析)とは?進め方・フォーマット

    FTAは潜在的にある品質・安全上の課題を洗い出し、その原因を突き止めて対策を行う解析方法です。今回は製造業におけるFTAについてや、実際に行う流れなどについて解説していきます。FTA(故障の木解析)とは?FTAは 「Fault Tree Analysis」の略で、フォルトツリー解析・故障の木解析とも呼ばれています。1960年代にアメリカのグループが考案して以来、信頼性の解析に広く普及されてきました。FTAについてFTAは設定した頂上事象の発生の原因や潜在的に発生の可能性がある原因を洗い出し、頂上事象の発生条件または要因の識別、解析をする方法です。FTAでの頂上事象は一般的に、性能低下、システムの機能損失、安全性、他の重要な運用上での特性劣化などが挙げられます。頂上事象とは予防したい事象を指します。クリスマスツリーを想像するとわかりやすいのですが、FTAの頂上事象はクリスマスツリーの先端、飾り付けの星のようなものです。これは階層の最上部に位置する事象となり、問題を分析するためのスタートポイントとなります。そして、クリスマスツリーの枝葉にある飾り付けの部分がその問題の発生条件や原因です。さらにツリーの枝葉の中でも特に目立つ飾り付けは、問題に対してどのような要因が発生確率を高めているのか、どう影響しているのかに関わる重要なポイントになる部分です。FTAの目的製造業における防止策や原因分析の方法は、FTA以外にもFMEAやなぜなぜ分析など様々な種類がありますが、FTAを行う目的は何でしょうか。JIS規格で記載されているFTAの目的は以下の通りです。− 頂上事象を発生させる原因又は原因の組合せの明確化 − 特定のシステム信頼性尺度が,所定の要求事項を満たすか否かの決定 − システム信頼度の実現可能な改善策を明確化するために,どの潜在的な故障モード又は要因が,システムの故障発生確率(不信頼度)又はシステムが修理可能な場合はアンアベイラビリティに最も強く影響しているかの決定 − システムの信頼性を改善する様々な設計代替案の解析及び比較 − 他の解析[例えば,マルコフ及び故障モード・影響解析(FMEA:failure mode and effects analysis)(以下,FMEAという。)]で行った仮定が妥当であるという実証− 安全問題を引き起こすことがある潜在的故障モードの明確化,対応する発生確率の評価及び低減策の可能性の評価 − 共通事象(例えば,図10のブリッジ回路FT図の中央の枝を参照)の識別 − 頂上事象の発生を最も高い可能性で引き起こす事象又は事象の組合せの探索 − 頂上事象の発生確率に対する基本事象の発生の影響の評価 − 事象の発生確率の計算 − 定常状態を仮定でき,かつ,実施する修理が互いに独立している(成功パス図/信頼性ブロック図に関する制約と同じ制約である)場合の,FT図によって表すシステム又はその構成品のアベイラビリティ及び故障率の計算(引用元:kikakurui.com)つまりFTAを使用する目的とは、頂上事象を発生させる原因や原因の組み合わせを明確化させることになります。FMEAとの違いFMEAとは材料や部品などの故障モードをスタートとし、製品の想定外の事故、故障を洗い出すボトムアップの解析ツールです。一方、FTAは製品の事故や故障をトップ事象におき、中間・基本事象を掘り下げて発生確率を予測、対策をするトップダウンの解析ツールです。(引用元:ものづくり.com)では、FTAとFMEAはそれぞれどのような場面に適しているのでしょうか。FTAは事故、故障が既知の流用度が高い製品の解析に最適です。製品の起こり得る事故や故障を想定した解析が可能となります。一方のFMEAは、比較的新規性が高い製品における未知の事故、故障といった、トップ事象の予測が困難な製品の解析に有効的です。導入のしやすさでいうと、FTAの方が受け入れやすいと言われています。FTAは既知の故障や事故が発生した場合の解析のため、一般的に使われる設計プロセスになじみやすいからです。FMEAは材料・部品の故障モードをスタートとし、想定外の故障や事故を抽出しますが、そもそもこのような考え方自体が受け入れ難く、理解が進んでいないことが現状です。○FMEAとFTAの比較項目FMEAFTA解析方法部品や材料の故障モードを列挙、想定外の事故や故障を洗い出し、システムへの影響を評価するボトムアップの解析方法製品の望ましくない事象をトップに置き、その因果関係を調査するトップダウンの解析方法解析の主体材料や部品を熟知したコンポーネント設計部門製品・システムの設計部門情報共有製品やシステムを熟知した設計部門との解析がマスト材料や部品を熟知した設計部門との解析がマスト設計プロセス設計プロセスに新しくボトムアップの解析プロセスを組み込む必要がある従来の設計プロセスに馴染むトップダウンの解析プロセス適用新規性が高い製品事故・故障が既知の流用度が高い製品成果未知の事故、故障などを防ぎ、対策ができる起こり得る事故や故障を想定した解析が可能参考:FMEA(故障モード影響解析)とは?評価法や実際の流れを解説FTAを実行する前に確認することFTAの目的や他の解析方法との違いが分かったところで、実行の前に確認しておくべきポイントを紹介します。FTAはいつ実行すればいいのかFTAは変化する時に行うのがベストです。具体的には、新商品を作る、設計変更をする、仕向け先が変わるといったタイミングが効果的です。特に安全に絡む問題は命に関わる事故につながる可能性があるため、事前に対策を立てることが大切です。また発生してしまった問題に対しての原因を突き止めるために、FTAを使用するケースもあります。FTAのフォーマットFTAのフォーマットは以下を参考にしながら作成していきましょう。Excelを使用すると作成しやすいです。(引用元:ぱぱろぐ)FTAの進め方FTAの進め方は6つのステップがあります。①FTAチームとリーダーを選ぶ②トラブルの原因になりそうな項目をリストアップ③洗い出した要因の調査④一次判定を行う⑤再現実験の施行、原因の特定①FTAチームとリーダーを選ぶまずは何らかのトラブルが起こった場合に対処、問題解決をするためのチームを選定します。組織内の各チームから、その分野に対する豊富な知識と経験のある人を選びましょう。同時にリーダーの選定も行います。リーダーがいれば意思決定の時間を割く手間が省けるからです。②トラブルの原因になりそうな項目をリストアップ上記フォーマットの分類2の欄を調査しつつ埋めていきます。少しでも原因と関係がありそうなものはとにかく列挙していきましょう。人の箇所は現場に詳しい人に聞くなど、チーム内で各カテゴリで詳しい人別に調査を行うとスムーズに進められます。③洗い出した要因の調査ある一つの要因に対して証拠になるためのデータを集めましょう。データは数値や記録など、あくまで客観的かつ具体的な調査結果を必要とします。人による証言や想像はここでは起用しません。④一次判定を行うステップ③で集めた証拠によってトラブルの原因ではないという具体的な証拠が挙げられれば、フォーマットの判定欄に「○」と記載していきます。証拠が不十分であったり、トラブルの原因だった場合は「×」と記載しましょう。ただし、会社によってこの「○」と「×」の意味が入れ替わって使われていることもあるので、齟齬がないように事前に確認しておいてください。⑤再現実験の施行上記④の項目で「×」になったものに対して、実際に再現させた時に同じトラブルが起こるかどうかを検証します。実験によって同じ現象が起こらなければ、洗い出した原因ではない可能性があり、もう一度別の原因を調査する必要があります。また、再現実験を行った結果、同じトラブルが再現できた場合は洗い出した原因で間違いありません。トラブルが起こらないように対策を練りましょう。FTAまとめFTAとは製造業界で広く使用される問題解析の方法です。FTAを導入することで課題を整理することができ、原因や問題の所在を明確にすることが可能です。また、客観的なデータを集めれば問題を論理的に解決できるでしょう。社内で問題の原因を突き止めたい・予防をしたいという方は、ぜひFTAを取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • FMEA(故障モード影響解析)とは?評価法や実際の流れを解説

    製造業界で広く使われている「FMEA」は「故障モード影響度解析」とも呼ばれ、リスクを洗い出し、排除するための管理方法の一つです。未然にリスクを防ぐことで品質を保ち、より安全に作業できることが目的とされています。今回はFMEAの基本から評価方法、実際の流れを紹介します。FMEA(故障モード影響解析)とは?FMEAは「Failure Mode and Effects Analysis」の略で、「故障モード影響解析」という意味があります。1940年代にアメリカ軍で導入されたのがきっかけと言われています。1960年代には宇宙開発分野で応用され、アポロ計画にもFMEAが導入されました。1970年代には自動車会社のフォード社が導入したのを皮切りに、日本でも製品作りの前にFMEAを検討するきっかけとなりました。FMEAについてFMEAは製品や製品完成までの製造過程で起こり得るリスクを設計の段階で評価し、リスクを取り除く方法を指します。事前に問題点を洗い出し、対策をすることで未然に被害を防ぐことが可能です。FMEAは設計段階では設計FMEA、作業段階は作業FMEAと呼ばれ、いろんな業務に適用されます。製造業界で広く呼ばれている「工程FMEA」は、FMEAの中でも製造工程管理に付随するものです。これは製造工程で起こり得る可能性がある不具合などを浮き彫りにすることで、トラブルを未然に防止します。FMEAの目的正常に製造工程内での作業や設備が働いていれば、製品のクオリティを維持することは難しくはありません。しかし、何らかの異常が発生した場合、品質維持が難しくなります。例えば、新しく導入した機械の異常を予測するのは困難ですが、経年劣化が原因の不具合はあらかじめ想定できます。つまり、品質管理を常に徹底するためには、異常事態に対する対策が欠かせません。このようなさまざまなトラブルや起こり得る不具合を未然に防ぐのがFMEAなのです。故障モードについてFMEAを行う中で欠かせないワードが「故障モード」です。故障モードとは、劣化・断線・摩耗といった製品の故障状態の形式分類を指します。実際にFMEAを導入するときに、プロセスごとに設備・方法・人・環境・部品の変化点を列挙し、その変化で起こる可能性がある不具合を検討していきます。例えば、製作ライン上である工程を担当する人が変わってしまう場合、技術不足が原因で不具合が起こる得るケースは、その懸念点を故障モードとしています。(引用元:高崎ものづくり技術研究所)FTAとの違いFTAはFMEAとよく間違われがちなので区別しておきましょう。FTAは「Fault Tree Analysis」の略で、「フォルトツリー解析」と呼ばれるものです。これは安全上、発生が望ましくない事象(トップ事象)を洗い出し、その原因を連鎖的に挙げていく解析手法です。FTAはトップ事象からの手法であるのに比べて、FMEAは故障モードによる懸念要素からのボトムアップ手法であるところに大きな違いがあります。(引用元:ものづくり.com)FMEAの評価方法FMEAはものづくりを安全に行うだけでなく、品質維持にとっても大変重要であることがわかりました。FMEAを実際に行う前には評価方法をあらかじめ定めておかなければいけません。以下ではFMEAの評価方法で一般的に使われている方法を紹介します。危険優先度指数(RPN)の相対評価法FMEAの評価方法は、危険優先度指数(RPN)が一般的に使われています。危険優先度指数は、S、O、Dの3つの指標の評価点を全部掛け合わせた指標です。相対評価法とは、点数が高いものから優先的に対策をすることを指します。・影響度(S)故障モードが発生した際に、工程・製品・顧客にどのような影響を与えるか、起こり得る被害の大きさを指します。例えば、人命に影響がある場合は10、影響が全くないケースは1と被害の大きさによってその数は増えていきます。・頻度(O)故障モードの起こりやすさを指し、故障モードの起こりにくい対策がされているかを評価します。故障モードが発生することが常に起こっている場合は10、事実上起こり得ないケースは1です。・検知度(D)設計期間中および工程で生産中に故障モードを検知できるかどうかの指標です。例えば、ボルトの締め忘れの故障モードを検討した場合、各工程でボルトをチェックすることになっていない、さらに試験中に折れてしまってもわからないというときに、検出可能性が全くないことになります。その場合、点数は10点です。工程FMEA実行の流れFMEAの評価方法を設定できたら、実際に行う流れを掴んでおきましょう。ここでは製造で特に大切な工程FMEA実行の流れについて解説します。①FMEAフォーマットの準備まず作業を始める前にFMEAフォーマットを作りましょう。基本的には、以下のような項目をチェックできる表を用います。フォーマットの形式は決まっていないので、使いやすいように変更して構いません。FMEAフォーマット☑︎工程☑︎作業名目☑︎具体的作業☑︎想定されるミス☑︎故障モード☑︎故障による影響☑︎影響度☑︎故障の発生原因☑︎発生度☑︎故障の検出方法☑︎検出度☑︎RPN(影響度×発生度×検出度)この段階では作業を大きな括りに分類します。例えば、「作業名目」「工程」に、「パーツ組立A」「組立」と記載します。②故障モードの決定次に「故障モード」と「想定されるミス」の項目を埋めていきます。例えば、「対象部分の接触不良」は故障モード、「部品の取り付けが甘い」は想定されるミスとなります。この工程で大切なポイントは、あくまで工程のミスの原因を洗い出すことです。「部品の結合がうまくいかない」といった不具合は設計FMEAの範囲内となるミスなので、ここではあくまで工程FMEA内の故障モードと混同しないように注意しましょう。③故障モードの分析・評価故障モードの分析と評価を行います。・故障による影響・影響度故障モードが発生した際に起こり得る影響の規模を10段階で以下のように数値化します。先述した「人命に関わるような致命的な影響」を10とし、そこから影響が全くないケースを1に設定します。10まったく機能しない9特定の条件下で機能しない8機能しないおそれがある7特定の条件下で機能が低下する6機能が低下するおそれがある5機能はするが、改善が不可欠4機能はするが、改善すべき3影響はないと見なせる2完全に無視できる程度の影響しかない1まったく影響がない・故障の発生原因・発生度発生度は故障が発生する頻度を指します。10毎回91日1回81週間に1回72週間に1回61か月に1回56か月に1回41年に1回33年に1回25年に1回1発生しないさらに上記のFMEAフォーマット内「故障の発生原因」の項目には「ネジ1と2が似ている」といった、そのミスが起こる原因を記載してみると良いでしょう。・検出度検出度とは検出できる確率を指します。10検出不可9工程での検出率=10%8工程での検出率=20%7工程での検出率=30%6工程での検出率=50%5工程での検出率=70%4後の工程で検出率=100%3次の工程で検出率=100%2作業途中で検出可能1作業途中で検出率=100%また、FMEAフォーマットの「故障検出方法」の項目には、「部品取り付け後、目視確認する」などの具体的な検出方法を記入します。ただし、100%とするのは機械で確実に検出した場合に限り、ヒトがチェックする場合は100%にはしません。・RPN上記の影響度・発生度・検出度で出した評価点を掛けていきます。そこで出た値がリスクの大きさを表す指標「RPN」となります。RPN=影響度×発生度×検出度例えば、影響度=8、発生度=4、検出度=5の場合、「8×4×5=160」でRPNは160になります。④改善の実施最後にこれまでの流れで出たRPNをもとに、対策するべき課題に優先度をつけて優先度が高いものから改善していきます。この改善の目標はRPNの数値を低くさせることです。そのためには影響度・発生度・検出度を下げる取り組みがマストになりますが、影響度を下げることはできません。なぜならその工程で目的とする製品が同じであれば、それに問題が生じた影響は変化しないからです。例えば、作業改善をしてある部品の取り付けミス発生頻度を減らせたところで、取り付けミスをしたときに生じた影響は変わりません。そのため、ここでいう改善はあくまでも発生度・検出度の数値を低下させることが目的となります。改善策を実際に行ったら、再度RPNを出して評価しましょう。RPNが100以下になるまで繰り返します。FMEAまとめFMEAは作業を安全に行い、高い品質の製品を作る上でとても大切な方法です。ぜひ、本記事で紹介したFMEA評価方法やフォーマットなどを参考にしながら、取り組んでみてください。

  • ISO14001とは【入門】わかりやすく解説

    ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称で、この組織によって定められた規格を「ISO規格」と言います。代表的な規格として、ISO9001(品質に関する規格)とISO14001(環境に関する規格)が挙げられます。ISO14000シリーズは、環境マネジメントシステム、環境監査、環境パフォーマンス評価、環境ラベル、ライフサイクルアセスメントなどの規格から構成されます。中でも、中心となるのが「環境マネジメントシステムの仕様」を規定しているISO14001です。今回は、ISO14001についてわかりやすく解説します。参考:【入門】ISO9001とは?簡単にわかりやすく!参考:ISO9001取得企業数の推移と取り組み例参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説ISO14001とは?ISO14001は、ISOによって定められた環境マネジメントシステム(Environmental Management System)の国際認証規格を指します。この規格は、企業における活動や、その結果として生じる製品、サービスが環境に及ぼす影響(リスク)を分析・管理し、環境負荷を低減する仕組みの構築を目的とした規格です。各企業が自社で環境に関する方針や目的・目標を設定し、環境を考慮した取り組みを行います。この他にも、ISO14001には環境に関する法令の遵守も含まれます。環境マネジメントシステムとは?ISO14001において環境マネジメントシステムとは、課題を改善する仕組みのことを指します。ISO14001では「ISO14001規格要求事項」が定められており、これに沿って環境マネジメントシステムを構築します。環境マネジメントシステムの基本的な構造は、PDCAから成り立ち「方針・計画(Plan)→実施(Do)→点検(Check)→是正・見直し(Act)」という過程を繰り返し、課題の解決及び改善を図ります。ISO14001の環境側面について環境側面とは、企業や組織の活動・サービスの中で、環境に影響を与える又は影響を与える可能性のある側面、要素を指します。環境側面の具体的な例としては、紙、電気、廃棄物などの環境負荷になるもののほか、リサイクル材料の活用、クリーンエネルギーの利用など環境に有益となる要素も含まれます。ISO14001における環境側面では、「著しい環境側面」つまり、さまざまな環境側面の中から特に大事であると考えられる課題を選定し、管理を行います。この課題は、各企業で設定される目標や方針に沿って選定されます。

  • 【入門】ISO9001とは?簡単にわかりやすく!

    ISO9001は、国際的に通用する品質マネジメントシステム規格のことです。ISO9001認証の取得は、品質の高い製品やサービスを提供するための仕組みを構築して運用し、その運用状況を適切に管理していることの証となります。取引先や顧客などからの信頼獲得やアピール、業務の効率化、企業体質の改善、従業員の意識向上などのメリットがありますが、取得と維持にコストがかかるというデメリットもあります。この記事では、そもそもISOとは何かというところから、ISO9001や品質マネジメントシステムの内容、ISO9001と業務改善についてもわかりやすく解説していきます。参考:ISO9001取得企業数の推移と取り組み例ISO9001とは何かISOとはISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)というスイス・ジュネーブに本部を置く非営利法人のことです。その名称の通り、日本国内だけでなく海外でも通用する、国際的に認められた国際規格を策定しています。つまり、ISOは、国際的な取引をスムーズにするため、世界中で同じ形状・寸法・材質・品質・性能・機能・安全性の製品やサービスを提供できるように規格を定めているのです。このISOが定めた国際規格を「ISO規格」と呼ぶほか、単に「ISO」と呼んでISO規格を指すこともあります。ISOは、特に電気や通信を除いた工業規格を策定しています。ISOが定める工業規格の中には、製品や部品の具体的な寸法や形状などを定めた「モノ規格」や、組織の品質活動や環境活動を管理するための仕組み(マネジメントシステム)を定めた「マネジメントシステム規格」などがあります。モノ規格については、例えば、以下が挙げられます。・ISO68…ネジ・ISO7010…非常口のマーク・ISO5800…フィルム感度・ISO/IEC7810…クレジット・キャッシュカードのサイズ私たちは、ISO規格に適合した製品を選ぶことで、世界中どこでも同等の製品を手に入れることができます。逆に、ISO規格に適合した製品は、世界の多くの国で標準的に使用されているものであり、販路を世界に広げることも可能となります。一方、マネジメントシステム規格には、例えば、以下のような規格があります。・ISO9001…商品やサービスの品質向上を目的とした品質マネジメントシステム規格・ISO14001…企業活動の環境に対する影響を最小限に留めることを目的とした環境マネジメントシステム規格・ISO27001… 情報の機密性・完全性・可用性を適切に管理し、情報を有効活用することを目的とした情報セキュリティマネジメント規格・ISO45001…労働安全衛生上のリスクを管理し、継続的に労働安全衛生システムの改善を図ることを目的とした労働安全衛生マネジメントシステム規格これらのマネジメントシステム規格は、企業全体のほか、事業所や工場、部門単位でも取得することが可能です。そして、この規格を取得した組織は、品質や環境などに関して、国際標準レベルの行き届いた管理を行っていることを示します。そのため、品質マネジメントシステム規格を取得した工場で生産された製品は、一定レベル以上の品質であることが期待できます。また、情報セキュリティマネジメント規格を取得した工場であれば、機密情報が徹底管理されていることが期待できるため、機密を含んだ部品の製造も安心して依頼することができるでしょう。参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説ISO9001とはISO9001とは、企業や工場が提供している製品やサービスの品質向上を目的としたマネジメントシステム規格のことです。つまり、ISO9001を取得している企業・工場は、製品・サービスの品質向上のため、製造過程から顧客への提供までのプロセスで、国際基準の管理体制を敷いていることを示します。それは、最終的に提供される製品・サービスについて、一定レベル以上の品質を保証していることを意味します。また、ISO9001では、品質のほか、顧客に対する価格や納期などについても定めており、最終的に顧客満足を達成することを目標としています。実際にISO9001を取得するには、ISOが発行している「ISO9001」に記載された「規格要求事項」の全てを満たす必要があります。具体的には、以下を実行することが必要です。1. 準備…担当者と工場や部門単位といったISO9001の取得範囲を決める2. 標準化…品質向上が可能で、規格要求事項を満たす、事業運営の手順やルールを決める3. 文書化…決定した手順やルールを文書化する4. 実行…文書化した手順やルールに沿って実行する5. 記録…実行した結果を文書に残す6. 評価…結果の有効性や効果を評価する7. 改善…問題点があれば見直すと共に、より良い方法に改善するISO9001に準拠するということは、この「標準化」で始まり「改善」で終わるプロセスを日常的に行っていくことです。そして、この一連のプロセスを行った後、問題がなければ、ISO審査機関の審査を受けます。組織が決めて実行したプロセスがISO9001の規格要求事項に適合し、ISO9001の仕組みが現場レベルでも機能していると認定されれば、ISO9001の認証取得となります。なお、ISOは国際規格を策定している機関ですので、ISOが発行しているISO9001は英文で書かれています。「JIS Q9001」は、それを日本工業標準調査会(JISC)が翻訳したもので、日本国内で円滑に利用するためにJIS規格として発行されています。品質マネジメントシステムとは品質マネジメントシステムとは、製造した製品や提供するサービスの品質を管理する仕組みのことです。つまり、品質マネジメントシステムの運用とは、製品の受注から製造、納品までの過程やサービスを考案して提供するまでの過程における手順やルールを予め決めて実行し、結果を評価して改善していく活動のことです。それにより、一定品質の製品・サービスをいつでもどのような顧客に対しても提供できるようにします。具体的には、上述した「標準化」から「改善」までのプロセスを何度も実行していくことですが、それはPDCAサイクルを回していくことと同義です(上図参照)。ISO9001と改善の機会についてISO9001に準拠した品質マネジメントシステムには、そのマネジメントシステムそのものを継続的に改善していく仕組みが備わっています。PDCAサイクルで言えば、「A」の「Act」で行われます。そのため、PDCAサイクルの一回りに一回、改善の機会があることになります。例えば、作業手順を簡素化したり、設備の配置を変更したりなど、少しでも事業や組織の運営が良くなれば、それは改善です。もちろん、適用した改善は、文書化した上で、その改善の有効性や効果を評価することが必要となります。この日常的な改善のほか、ISO9001には、マネジメントレビューという改善の機会があります。マネジメントレビューとは、日常的に実施してきた品質マネジメントシステムの運用について振り返りを行い、成果や問題点などを考察する経営管理活動のことです。必須の活動として、ISO9001の規格要求事項に記述されています。マネジメントレビューでは、以下のような項目に基づき、経営層が組織の品質マネジメントシステムを検証して、品質マネジメントシステムの変更や改善を指示します。・これまでの品質マネジメントシステムの運用の結果・市場状況や顧客要求の変化、法令規制要求事項の変更といった外部の変化から生じた課題・組織変更や新製品・サービスの導入、設計変更、工程変更といった内部の変化から生じた課題・顧客や購買先、外部委託先といった利害関係者からのフィードバック・内部監査や外部監査から提示された問題や課題これらの情報を元に、従来の品質マネジメントシステムを検証し、今後運用していく品質マネジメントシステムを再構築していくのです。

  • ISO9001取得企業数の推移と取り組み例

    ISO9001は、国際標準化機構 (International Organization for Standardization、ISO)によって定められた品質マネジメントシステムに関する国際規格です。顧客の満足度の向上を目的とした規格で、製品やサービスの品質向上に役立つマネジメントシステムとして、全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織において利用されています。参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説ISO9001取得企業数とその推移日本でのISO9001取得企業数は、以下のように推移しています。下表から分かるように、ISO9001の認証取得企業数は2007年以降、減少傾向にあります。<ISO9001の認証件数の推移>引用元:公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)ISO9001取得企業数(世界)世界のISO9001取得企業数は下表の通りです。<ISO9001取得企業数(上位10か国)>中国280,386イタリア95,812ドイツ47,868インド34,397日本33,330スペイン30,801イギリス25,292フランス21,696アメリカ20,956ブラジル17,952引用元:ISO Survey 2019 results – Number of certificates and sites per country and the number of sector overall Functions – ISOISO9001取得企業の取り組み例ISO9001取得企業では、以下のような品質の基本方針を定め、品質向上への取り組みが実施されています。・顧客の満足度の向上:顧客のニーズを捉え、顧客目線での製品・サービスの提供を行う。そのために、さらなる提案・改善を継続する。・品質の維持、向上:確実な品質で納期内に製品・サービスを提供するとともに、常に品質の維持・向上・改善を行う。・社会的責任への取り組み:法令・規制要求事項を遵守し、事故・災害の未然防止・再発防止に絶えず取り組む。・人財の育成と技術の継承:業務改善、生産性の向上のために、人財を育成、確保し、確かな技術と技能を保持・継承・発展させる。上記のような基本指針に基づいて、各企業において次のような取り組みが行われています。・問題・課題の是正措置を行う際は、マニュアルや手順書の内容を見直し必要な変更を加え、継続的に会社・現場の仕組み、ルールの改善を行う。・社内教育体制を整えることで、社員一人一人が品質の改善に積極的に関わる。・明確な目標を設定し、PDCAを回すことで目標の達成に向け、行動する。さらに、目標達成後も新たな課題に向け、改善を継続する。

  • 製造業の4Mとは?品質管理と変更管理|5M+1Eと6M

    製造業の4Mとは、製品の品質管理や生産ラインの改善などを行う上で重要な4つの要素のことです。4つの要素とは以下のことを指し、これらの単語の頭文字を取ったものが4Mです。①Man:人②Machine:機械③Material:材料④Method:方法製品の製造に関わる事項を4Mの各要素に分類することで、課題・問題の発見や解決、製造プロセスの改善などに役立ちます。また、4Mは、不具合の発生など、製造現場で起こる変化の対応策をシステム化する手法である「変更管理」にも活用できます。さらに、近年では、製品の多様化や複雑化に伴い、4Mに新たな要素を加えた「5M+1E」や「6M」などの考え方も生まれています。製造業の品質管理「4M」の定義引用元:アイアール技術者教育研究所4Mとは、上述したように「人」、「機械」、「材料」、「方法」のことを意味します。そもそも、品質管理とは、設計者が目標とする品質や顧客が求める品質を満たすための活動で、完成品の品質はもちろん、製造プロセスも管理の対象となります。4Mは、この品質管理の体制を構築・維持・改善する際や問題発生時に指針を与えるものです。品質を管理する上での必須の事柄や問題点などを4Mに分類することで、偏りや抜けのない洗い出しが可能となり、改善点・問題点を明確にすることができます。さらに、収集した4Mの情報を分析してルールを定め、実践していくことで品質管理を進めていきます。参考:QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み参考:製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方4M①Manまず、4Mの「Man」は、現場で製造に携わる「人」に注目したものです。例えば、一定の品質を維持するためには、作業員のスキルを管理することが重要です。製造プロセスには、工作機械の制御や製品の目視検査などの人が関わる作業があります。それらの作業の中には、特定のスキルが必要な場合があり、各作業に対してその作業のスキルを持った作業員が割り当てられていなくてはなりません。そのため、品質の維持には、作業員のスキルマップなどを作成して管理し、各作業に適切な作業員を割り当てるシステムを構築することが必要となります。4M②Machine4Mの「Machine」は、品質管理を進める上で、製品の製造に使われる「機械」に注目したものです。安定的に製品を製造するためには、機械や設備などの管理が必要となります。そのため、機械の性能や稼働率などをあらかじめ調査して分析しておくことが大切です。そして場合によっては、メンテナンスや点検の計画を立てる、新しい機械を導入する、機械のレイアウトを検討するなどの対策を講じます。4M③Material4Mの「Material」は、製品に使われる「材料」に注目したものです。製品を製造するには、様々な原材料や部品などを調達することが必要となります。これらの材料に関して、どのような材料を、どの仕入先から、どの程度の数を、どのような流通手段、どのような価格で購入しているかを管理することが大切です。特に品質管理上、材料が所定の規格を満足しているか、材料に欠陥がないか、材料の検査が実施されているかなどを把握しておくことが重要です。これらが抜けていると、製品の品質維持が困難になるのはもちろん、製造段階において事故やトラブルに繋がる恐れがあります。4M④Method4Mの「Method」は、製品を製造する「方法」に注目したものです。品質管理を進めるにあたっては、製品の各製造工程が決められた手順・方法で行われていることはもちろん、細かな作業の動作なども標準化しておくことが重要です。そのためのマニュアルなども作成しておき、各作業が同じ手順・方法で行われるように管理します。また、マニュアルなどは、見直しを図ることで、品質管理体制の改善に繋げることが可能です。「5M+1E」と「6M」近年、生産される製品の多様化や複雑化により、4Mの要素を考慮するだけでは不十分なケースが現れています。そのため、「5M+1E」や「6M」といった、さらなる要素を考慮した品質管理の考え方が広まっています。5M+1E①Man:人②Machine:機械③Material:材料④Method:方法⑤Measurement:検査・測定⑥Environment:環境「5M+1E」は、4Mに「検査・測定」を意味する「Measurement」と「環境」を意味する「Environment」を加えたものです。そもそも、4Mの「人」や「機械」、「方法」の中に「検査・測定」は含まれているものでした。しかし、近年では、品質管理に重要な項目として「検査・測定」を独立して管理することが一般的になっています。一方、温度や湿度、大気圧などを管理しなければ、品質の維持が困難になってきたと考えられたことで加えられたのが「環境」です。例えば、金属は温度によって膨張・収縮することから、精度の維持や寸法のバラツキ防止のためには加工時の温度を管理する必要があります。6M①Man:人②Machine:機械③Method:方法④Material:材料⑤Measurement:検査・測定⑥Management:マネジメント「6M」は、「5M+1E」の5Mに「マネジメント」を意味する「Management」を加えたものです。現在の製造業では、多様な商品を小ロットで製造する「多品種少量生産」が求められています。それに伴い、生産ラインが複雑化するとともに、生産ラインの変更に対する柔軟性も求められ始めています。そのため、製品によって次々と変わる生産ラインや作業内容などを管理することが必要となったのです。4Mを活用した「変更管理」4Mの考え方は、「変更管理」にも活用されており、変更管理を4Mで管理する手法を「4M変更管理」と呼びます。製造現場では、機械の入れ替えや材料の変更といった、定めた製造プロセスや作業手順・方法などの変更が必要となる事象がよく起こります。このような生産に影響する事象を4Mで分類した項目の変化と捉え、可能性のある変化を予測し、対応策をあらかじめ用意しておくことが4M変更管理です。例えば、変更管理の対象となる項目には、以下のようなものがあります。・Man(人):作業員の変更、ローテーションの変更、年休など・Machine(機械):工場の移動、機械・設備の新設・変更など・Material(材料):材料の変更、仕入先の変更など・Method(方法):製造方法の変更、製造条件の変更などこのような予測可能な変化に対し、影響や対応策をマニュアルなどに明文化して誰でも対応できるようにしておくことが重要です。しかし、原因が不明な機械の故障など、予測できない変化も製造現場では起こります。このような場合でも、ある程度のざっくりとした対応手順を用意しておくことが大切です。また、品質への影響が大きい項目から対応するなど、優先順位をつけた対応策を用意しておくと、より迅速な問題の解決や原因の特定に繋がります。

  • 品質管理・現場改善の基礎知識

    品質管理の基礎知識製造業の品質は「製品の品質」「業務の品質」が挙げられます。ISO9000の理解から、QCサークル活動などの品質向上のための具体的な取り組みを学びます。品質管理を学べる記事▶【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説▶RoHS指令について詳細を解説!対象範囲についてもご紹介!▶製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方▶QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み ▶ミルシート【基礎知識】内容と材料証明書、検査成績書との違い検査を学べる記事▶検査成績書について解説!サンプルもご紹介!▶非破壊検査のデメリット・種類一覧品質管理に関する記事をもっと見る:品質管理のカテゴリ|記事一覧現場改善の基礎知識製造業において、ムダ・ムラ・ムリ(ダラリ)を改善したり、環境を整えることは利益を確保するために必要不可欠です。現場を改善するためにはどんな考え方で具体的にどういった活動をすればよいのか、学びます。現場改善を学べる記事▶製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点▶製造業の5S活動とは?目的・目標・事例を学んで現場改善▶製造業のポカミス原因と対策まとめ現場改善に関する記事をもっと見る:現場改善のカテゴリ|記事一覧金属加工の基礎知識は下記の記事にまとまっています。【保存版】金属加工の教科書|製造業の基礎を身につける

  • 製造業の品質管理!QC7つ道具の使い方

    QC7つ道具とは、製品の製造工程や品質に関わるさまざまなデータを整理・分析するためのツールで、品質管理(QC:Quality Control)において不可欠なツールの一つです。QC7つ道具は、チェックシート、グラフ、パレート図、ヒストグラム、管理図、散布図、特性要因図の7つから成り、それぞれの図が異なる特徴を持ちます。QC7つ道具を使ってデータを整理・分析することで、製造現場の「問題点の見える化」が可能となります。参考:QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み参考:製造業の生産性を見える化で改善するための重要視点QC7つ道具とは?データ分析のための手法<パレート図>パレート図は、棒グラフ、折れ線グラフを用いた図です。棒グラフでは項目別に分けたデータを値の大きい順に、折れ線グラフでは累積比率(各項目のデータ数を累積数の合計で割った値)を記します。上図では、不良率についてのパレート図を示しています。棒グラフには、不良の発生要因を発生回数の多い順に、折れ線グラフでは各要因の累積発生比率を記しています。このようにパレート図では、ある問題に対して、最も影響を及ぼしている要因を一目で把握できるため、どの事項を優先して解決すべきかが明確になり、効率的に問題の解決につなげることができます。特性要因図引用元:株式会社キーエンス特性要因図は、問題(特性)の背景にある要因を書き出し可視化した図となります。上図のように、4M(Man:人、Machine:機械、Method:方法、Material:材料)の観点から問題の背景にある要因を示すことで、系統的に整理することができます。また、特性要因図は、その図の形状が魚の骨に似ていることから、フィッシュボーンチャート、フィッシュボーン図と呼ばれることもあります。特性要因図を用いて問題の原因を書き出し整理することで、問題の原因を絞り込み、推定することができます。ここで得られた推定原因について、次の項目で説明するグラフを用いることによって、より精密な分析・検証が可能となります。グラフグラフは、データを可視化した図です。グラフを用いることによって、データの比較や変化などが一目で分かるようになります。グラフにはさまざまな種類がありますが、品質管理(QC)には次のようなグラフがよく用いられます。<品質管理に使用される代表的なグラフ>・折れ線グラフ引用元:株式会社キーエンス折れ線グラフは、データの変動をみるもので、時間的変化や数値の変化を可視化することができます。・棒グラフ引用元:コンサルソーシング株式会社棒グラフは、数量の大小を示すもので、棒の長さによって数値を可視化し、比較することができます。・円グラフ引用元:コンサルソーシング株式会社円グラフは、データの内訳を比率ごとに示したもので、各項目を割合ごとに示し、項目別の割合を確認・比較するのに役立ちます。・帯グラフ引用元:コンサルソーシング株式会社帯グラフは、円グラフ同様、データの内訳を比率ごとに示したものです。ただし、上図のように、2つの帯グラフを並べることで、各項目ごとの全体に対する割合の変化なども可視化することが可能となります。・レーダーチャート引用元:株式会社キーエンスレーダーチャートは、項目別の評価を示したもので、全体のバランスをみるのに役立ちます。ヒストグラム引用元:株式会社キーエンスヒストグラムは、データを一定ごとの範囲に分け、その範囲に属するデータを度数として、棒グラフで表した図です。グラフの形状から、データの全体の分布状況や、ばらつき、ピーク値などを見ることができます。工程上の問題を特定することに用いられ、他にも、ヒストグラムの横軸に規格上限値及び下限値を設定することで、良品か不良品かを一目で把握できることから、品質検査などにもよく利用されています。散布図引用元:株式会社キーエンス散布図は、2つのデータをそれぞれ横軸・縦軸にとり、点としてプロットした図です。点の分布形状から、2項目の関係性を見るのに役立ちます。散布図の分布形状には、主に上図に示した3つの傾向があり、形状によりデータの関係性を把握することができます。<散布図の分布形状>・正の相関…右上がりの形状。横軸値が増加すると、縦軸値も増加する関係性にある。・負の相関…右下がりの形状。横軸値が増加すると、縦軸値は減少する関係性にある。・無相関…横軸値の変動と、縦軸値の変動に法則性が見られない。2つの項目は相関関係にない。例えば、横軸に加工条件(加工時間、温度、加工速度など)、縦軸に不良件数をとり散布図を作成することで、加工条件の変化による不良件数への影響を把握することができます。管理図引用元:株式会社キーエンス管理図は、上図のように目標値を中心線(CL:Center Line)、その上下に公差を示す上方管理限界線(UCL:Upper Control Limit)と下方管理限界線(LCL:Lower Control Limit)を設定し、データを時系列に沿って折れ線グラフとして示した図です。データの変化を調べ、データの平均やばらつきについて時系列で把握することが可能となります。また、上限値と下限値を設定することから、データが正常値内かどうか容易に判断することができます。また、時系列にデータを収集することで、どのタイミングで正常値から外れたか(アウト、管理外れ)が分かるため、異常原因の特定にも役立ちます。チェックシート引用元:株式会社キーエンスチェックシートは、あらかじめ設定した項目に対して、データを記入していく表です。チェックシートは、主に点検と記録の用途に分けられます。点検用のチェックシートでは、点検項目について漏れがないかなど、ポカミスを防止するのに用いられます。一方、記録用のチェックシートでは、問題解決において必要となるデータ収集に利用されます。例として、不良エラー記録用のチェックシートを上図に示しました。このように現場の状況を随時記入し得られたデータは、後ほど前述したさまざまな図を用いて、分析に利用されます。そのため、チェックシートを作成する際にはその後のデータの活用を見据えた上で、リスト項目を設定することが重要となります。参考:製造業のポカミス原因と対策

  • QCサークル活動とは?品質の向上をめざす取り組み 

    QCサークル活動とは、品質の向上を目指す取り組みで、日本においては1962年ごろから広く活用されています。「QC」とはQuality Control(品質管理)に由来しています。QCサークル活動では、全従業員をQCサークルという小規模のグループに分け、品質の改善を図ることで、品質の向上を目指します。製造業の品質向上とは?製造業における品質には、「製品の品質」や「業務の品質」が挙げられます。製品の品質について、ISO9000シリーズでは以下のように定義されています。「本来備わっている特性が要求事項を満たしている程度」引用元:ISO9000「3.1.1品質(quality)」製品の加工精度や、スループット、歩留まりなどが指標となり、最終的には製品を使用する顧客の満足度によって評価されます。業務の品質は、仕事の生産性、効率性、職場の環境などが指標となります。誰が業務を行っても品質が同じでバラツキがないように、業務プロセスを改善していくことが目的です。 製品や業務の品質を向上するために、ISO9000シリーズなどの品質マネジメントシステムが広く利用されています。この手法は、品質マネジメントシステムを構築した上で、改善を図っていくという「トップダウン」型の手法で、顧客の満足を目指して、品質の継続的な改善を図ります。参考:【ISO認証とは?】メリット・デメリットも合わせて分かりやすく解説同じく、品質を向上する取り組みとして「QAサークル活動」があります。こちらは従業員が主体となって行う取り組みで、「ボトムアップ」型の手法となります。QCサークル活動とは?前述した通り、QCサークル活動とは、品質向上を達成するための取り組みです。QCサークル活動では、全従業員をQCサークルという小規模のグループに分け、品質の改善を図ることで、品質の向上につなげます。QCサークル活動の目的QCサークル活動の目的は、品質第一の生産、顧客及び従業員の満足度の向上、さらに生産工程、納期、コストなどの面における改善を行い、品質向上を目指すことです。QCサークル活動のメリットQCサークル活動のメリットには、次のような点が挙げられます。●現状の可視化:QCサークル活動では改善する点について、データを集め数値化、グラフ化した後、分析を行います。問題点について定量的に分析することで、何が問題なのかがより明確になり、従業員が現在の社内の状況を客観的に把握することが可能となります。●従業員のモチベーションの向上:従業員満足度向上がQCサークル活動の目的に含まれていること、また、従業員自らが主体となって活動を行うことから、社員のモチベーションのアップにつながります。●社内での情報共有:社内全体で活動を行うことによって、情報の共有も可能となります。QCサークル活動の実際の進め方・手順QCサークル活動では、基本的には同じ職場の中から少人数のグループを作り、グループ内で次のような手順で行っていきます。①テーマの選定現状の問題点から、改善を行う対象(テーマ)を決定します。進め方は、問題点の洗い出し→問題点の評価及び絞り込み→テーマ決定となります。問題点の洗い出しでは、例えば、製造業の生産ラインにおいては、不良率や設備効率などについて会社の生産ラインの目標値と現状の実績と比べると、どの項目で目標に達していないかがより明確となります。次に、問題点の絞り込みに当たっては、重要性、緊急性、費用、効果の総合的な観点から問題点について評価後、絞り込みを行い、その上でテーマを選定します。②現状の把握・目標設定テーマを選定した後は、問題点についてデータを収集し、整理することで、現状についての詳しい状態や傾向を把握します。その上で、何をいつまでにどれだけ改善するかという目標を決めていきます。データ収集においては、層別という手法がよく用いられます。層別とは、データを人、システム、手順、モノ、環境、時間などの要因ごとにグループ分けを行い、整理する方法です。また、データを収集した後は、グラフ化することで、問題点の絞り込みが容易になります。グラフには、「パレート図」がよく用いられます。パレート図は、棒グラフと折れ線グラフで表され、ある影響の度合いや問題の大きさを示すのに用いられます。下図に、不良率についてのパレート図を例として示しました。棒グラフでは、不良の発生要因を発生回数の多い順に並べ、折れ線グラフで各要因の累積発生比率を記しています。このようなグラフから、どの問題を優先的に解決すべきかを見つけ、目標の設定を行います。<パレート図の例>③活動計画の作成活動計画では、具体的な活動スケジュール及び主担当者を決定していきます。④原因の分析問題について原因の洗い出しを行い、推定される原因の検証を行います。原因の整理には、「特性要因図」が利用されます。特性要因図とは、ある問題に対してどのような要因が影響を及ぼしているかを洗い出して矢印でつないだものです。通常、下図のように、4M(Man:人、Machine:機械、Method:方法、Material:材料)の観点から、問題の背景にある要因を示すことで、より系統的に整理していきます。ここで特定された推定原因について、散布図、折れ線グラフ、棒グラフなどのグラフを用いて、原因をより精密に分析、検証します。<特性要因図の例>引用元:株式会社 産業革新研究所⑤対策の立案と実施原因が特定されたら、それに応じた対策の立案を行います。対策の立案には、「系統図」が役に立ちます。系統図は、目的と方策を段階的に展開し、図に表わすことによって、最適な対策(手段)を見出す手法として用いられます。系統図では、下図に示したように、目的を達成するための手段を追求し、対策案を立てていきます。対策の実施にあたっては、実施計画を作成し、スケジュール及び担当者を明確にした上で行います。<系統図の考え方>引用元:日本アイアール株式会社⑥効果の確認対策の効果を測定し、問題点が改善したかどうか評価を行います。⑦標準化と管理の定着効果が確認された場合には、改善を定着させるために工程表、作業要領書などに反映し、標準化(ルール化)を行います。さらに、結果のフォローも行うことで、改善を確実に定着させていきます。⑧反省・今後に向けて最後に、メンバー全員で反省点について話し合いを行い、達成しきれなかった課題を挙げ、次回以降の活動につなげます。

  • 非破壊検査のデメリット・種類一覧

    非破壊検査は、直接的に発見できない製品内部の欠陥などを、検査対象を壊すことなく検出する検査法です。様々な工業製品はもちろん、自動車や鉄道車両、航空機等の輸送機、工場の設備、建築物などの検査に活用されており、社会の安全や廃棄物の削減に役立っています。しかし、非破壊検査では、検査法の種類によって適用可能な物質や検出可能な欠陥が異なるなど制限があります。また、検査対象の性質や欠陥の状態などを検査結果から間接的に推察するため、どうしても不確実性が残ります。そこで、今回の記事では、非破壊検査の概要と種類について解説してきます。非破壊検査を依頼する場合や検査結果を確認する場合などで、参考にしていただければ幸いです。非破壊検査とは非破壊検査とは、対象物を破壊することなく検査する技術です。検査対象を傷つけたり検査対象の機能に悪影響を与えたりすることなく、割れ・空隙といった欠陥の有無や、形状・寸法などを調べることができます。破壊検査と異なり、検査品をそのまま使用できることが特徴です。主に、使用前の製品の「品質評価」、使用中の製品の「寿命評価」を目的に行われる検査手法です。品質評価は、製品が仕様を満足しているかを確認することで、製品の信頼性を担保するために行われます。一方、寿命評価は、製品の損傷や劣化状況を検出して余寿命を予測することです。安全に使用できる期間を予測したり、補修や交換などが必要かを判断したりするために行われます。そのほか、顧客からのクレームなどで、故障の要因を調査する場合などにも実施されます。しかし、欠陥などを間接的に発見する検査法であることから、ある程度の不確実性を伴います。そのため、検査対象には、どのような欠陥が生じるのか、またそのとき、適用した非破壊検査法によってどのような検査結果が得られるかなどの知識や経験が重要となります。つまり、非破壊検査法の種類を選ぶにあたっては、検査の目的や対象物の材質・形状などを考慮するのはもちろん、存在する欠陥の状態などを予め予測することが必要です。放射線透過試験(RT)放射線透過試験(Radiographic Test)は、対象物に一様な強さの放射線を照射し、物質に吸収される放射線量の差をフィルムに撮影することで、内部の欠陥や対象物の厚みを検出する方法です。レントゲンと同じ原理を用いています。鋳造品に生じる引け巣(鋳造品の内部に残る気泡)、溶接部に生じるブローホール(溶着金属中に生じる空洞)や溶込み不良などが存在する箇所では、放射線が透過しやすくなりフィルムにその輪郭が現像されます。金属だけでなく、非金属の検査にも用いることができます。素材内部の空洞などの検出が得意ですが、厚みのある対象の検査には、高いエネルギーを持つ放射線の照射が必要となるため、専用の検査装置を用意しなくてはなりません。また、空洞が生じない、表面のキズや密着した割れなどを検出することが不得手です。さらに、放射線の安全管理には十分な注意が必要となります。超音波探傷試験(UT)引用元:非破壊検査株式会社超音波探傷試験(Ultrasonic Test)は、固体と液体又は気体の境界面で反射されやすい超音波の性質を活用した検査法です。反射された超音波(エコー)の大きさからキズの大きさを、エコーが戻ってくる時間からキズの位置を推定することができます(上図参照)。厚さの測定にも使用可能です。主に溶接部や鍛造品などの内部キズの検出に用いられる方法です。素材内部に生じた割れなどの検出に適しており、特に平板状の欠陥の検出が得意です。また、超音波は、到達距離が長く、厚さ数メートルの製品でも探傷が可能です。しかし、球状のキズや空洞に対しては、エコーが四方八方に反射してしまうために検出が困難です。複雑な形状の検査にも適していません。また、オーステナイト系鋼や鋳造品といった粗粒材(金属組織のサイズのバラツキが大きい材料)に対しても、この検査法は向いていません。それは、組織の境界で発生する微小なエコーが乱雑に広がり、検出すべきエコーを減衰させるからです。磁気探傷試験(MT)引用元:非破壊検査株式会社磁気探傷試験(Magnetic Test)は、磁性体の性質を利用して、表層部の欠陥を検出する検査法です。磁化された磁性体は、表層部に欠陥が存在すると、上図のように外部へ漏洩磁束を生じます。これを、下図のように磁場に反応する磁粉などで検出することで、欠陥の位置や状態を測ります。引用元:非破壊検査株式会社磁性体のみに適用可能な検査法で、表面や表面直下の欠陥を検出するために実施されます。感度が良い方法で、肉眼で直接観察できるという利点があります。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼など、非磁性材料の検査には適用できません。浸透探傷試験(PT)引用元:日東金属工業株式会社浸透探傷試験(Penetrant Test)は、毛細管現象を利用して、表面に開口している欠陥を目視でも判別しやすい像にして検出する検査法です。その検査法は、大きく以下の4つの工程に分けることができます(上図参照)。浸透探傷試験の4工程①浸透処理 表面に浸透液を塗布することで、欠陥内部を浸透液で満たす。②除去処理 欠陥部以外に付着している浸透液を取り除く。③現像処理 表面付近の表面張力を強めるための微粉末(現像剤)を薄く塗布する。④観察 毛細管現象によって欠陥内部の浸透液が吸い上げられ、指示模様を形成するので、これを観察する。金属でも非金属でも適用できる方法で、複雑な形状でも検査が可能です。しかし、指示模様から欠陥の幅や深さを求めることはできません。また、表面が粗い素材や多孔質材料には適用できません。電磁誘導探傷試験(ET)電磁誘導探傷試験(Eddy current Test)は、検査対象の表面に交流を通じたコイルを接近させ、電磁誘導現象によって生じる渦電流の変化から欠陥を検出する検査法です。表面や表面直下に生じたキズの検出に用いられます。また、導電率の違いを検出することで、膜厚測定や材料判別などにも使用することができます。板やインゴットの表面欠陥のほか、線・棒・管状の対象物の欠陥も検出可能です。線・棒状の対象物には、コイルを対象物に巻くことで、管状の対象物には、コイルを内挿することで検査することができます。前処理や後処理が不要で、検査結果が電気的出力として得られるため、自動化することが可能です。ただし、検査法の性質上、不導体の検査には適用できず、内部キズの検出も困難です。また、形状が複雑な対象の検査には向いていません。アコースティックエミッション(AE)引用元:株式会社レックスアコースティックエミッション(Acoustic Emission)は、材料が変形したり割れたりする際に発する弾性波から欠陥を検出する検査法です(上図参照)。材料表面にセンサなどの検査機器を設置し、発生する弾性波を受動的に検出します。ほかの非破壊検査とは異なり、稼働中の製品や設備を常時監視する形で行われます。稼働中のものを診断可能で、欠陥の発生や進展をリアルタイムに観測できるのが利点です。材質を問わず適用可能で、感度が高いという特徴もあります。しかし、検査機器が製品の付属品となるため、コストが高くなります。また、高感度であるがゆえに、電磁ノイズに弱い、高温環境下では計測できないなどの問題があります。スンプ法(SUMP)スンプ法(Suzuki’s Universal Micro Printing method)は、検査対象の表面の凹凸をアセチルセルロース膜(レプリカフィルム)に転写し、フィルムを顕微鏡で観察する検査法です。主に大型部品の表面欠陥や表面組織などを観察するために用いられます。応力腐食割れや粒界腐食、クリープ損傷などの検出や調査に有効な方法です。高度なエッチング技術と高精度な顕微鏡があれば、表面の状態を精度良く把握することができます。ただし、エッチング技術が必須で工程が多く、手間がかかる方法です。