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    【工場の人手不足問題】危機的な状況が続く原因と本質的な対策は?

    近年、日本中の工場で“人手不足”が深刻化。常時の採用活動に追われているメーカーも多い状況です。この記事では、日本の製造業界が人手不足に陥る、①根本的な原因②本質的な対策を提示いたします。記事に記載している内容を実践して頂くことで、工場への求人応募者を数倍に跳ね上げることも決して不可能ではない でしょう。日本の工場が人手不足に陥る原因日本の工場が人手不足になってしまう根本的な原因は、ザックリ言うと3つ。①東日本大震災の復興需要・東京オリンピックの建設需要②労働者人口の減少③製造業に対するイメージの悪化それぞれ説明してゆきます。①東日本大震災の復興需要・東京オリンピックの建設需要震災やオリンピックの影響で、とりわけ東日本の製造業は需要が多い状況。しかし需要が増えているにも関わらず、従業員数がそのままであれば、当然ながら人手不足に陥ってしまいます。工場の経営者の立場からしても、東京オリンピック後には景気が落ち込むと考えられるため、あまり好条件・好待遇で求人を出せないという事情があるでしょう。②労働者人口の減少少子化に伴い、労働者人工も減少しています。さらに現在は、かつてないほどの東京一極集中。地方で育った若者が、東京での就業を希望することも多いため、地方の工場が人材を確保するのは非常に困難です。③製造業に対するイメージの悪化おそらく製造業界におけるイメージ悪化が、人手不足の最大要因でしょう。高度経済成長期の製造業は“花形の職業”でしたが、現在における製造業のイメージはそれほど高くないというのが実情。製造業のイメージがこの数十年の間に、じわじわと下がってしまった理由を時代背景を踏まえた上で簡単にまとめると、以下のようになります。1.バブル崩壊後、大規模リストラと海外への製造拠点移動2.海外メーカーとの争いと技術者のモチベーション低下3.日本の製造メーカーも価格競争に巻き込まれることになった4.待遇を良くしないと求職者が来ない1.バブル崩壊後、大規模リストラと海外への製造拠点移動特別優れたマーケティング戦略を立てなくても、バブル時代の製造業は製品を簡単に売ることができました。しかしバブル崩壊後はモノが売れない時代に突入。製造業界に“冬の時代”が到来し、以前まで気にかけてなかった経費の大幅削減を余儀なくすることに。さらに日本人の賃金が上昇。国内生産したものを販売する際、海外製品に“価格負け”するようになりました。その結果、大手製造メーカーの多くは中国や東南アジアへ製造拠点を移すことに。幸いなことに海外で製造した製品であっても、日本の製造メーカーがしっかりと管理していれば、・一定の品質・手頃な価格を実現できました。しかし海外へ製造拠点が移ったことで、国内の工場では、・生産ラインの停止・工場の閉鎖といった大規模リストラが起こることに。バブル崩壊後の製造不況に畳みかけるように、日本人の雇用が奪われてゆきました。このようにして、日本の“古き良き製造業”は終焉を遂げたのです。2.海外メーカーとの争いと技術者のモチベーション低下日本の製造業が行った采配、・リストラ・海外生産の影響で業績が回復。ただし物が売れない状況は変わっておらず、ここにきてリストラの影響がジワジワと現れることに。技術者は“売れるモノ”しか作らせてもらえず、モチベーションが低下。凡庸なアイデアしか出せなくなったのです。かつての電機メーカーは、斬新な発想が受けて大ヒットした商品も多かったのですが、経営効率化の影響で遊び心を失ってしまいました。また海外の工場からも人材が流出。外資メーカーとして、日本企業のノウハウがそのまま転用される問題も出てきました。やはり現地の従業員からすれば、「日本メーカーは、我々の国で労働力をピンハネして作った製品を世界中で売っている」と解釈してしまうのも無理のないことです。バブル崩壊後の日本の大手製造業の戦略は、国内の経済だけでなく、海外の従業員をも疲弊させてしまったのです。3.日本の製造メーカーも価格競争に巻き込まれることになった日本の製造業は今まで、高品質の製品を高すぎない価格で売れたことが生命線でした。しかし近年の“検査値の改ざん問題”などから『日本の製品=高品質』という、長年疑うことすらしなかった“絶対的な方程式”が崩れ去ろうとしている現状があります。“検査値の改ざん”が世界的に報じらた以上、今後はより激しい価格競争の流れになるでしょう。そのような状況に陥ることに薄々気づいている人は多かったものの、根本的な打開策を提示しないままに進んでしまったため、現在の日本の製造業は厳しい状態にあります。4.待遇を良くしないと求職者が来ない労働人口が減少している現在、求職者は仕事を選び放題。求職者側の立場が強い“売り手市場”の状態です。今後の展望としては、好待遇を用意できない工場は採用活動を行ったところで、ほとんど応募者が集まらなくなるでしょう。【優秀な人材を募集したくても待遇を用意できず、人材が集まらないために業績が伸び悩み、待遇も改善しない】といった“負の循環”に入ってしまっているメーカーも多々。さらに人材が見つかったとしても、一人前になるまでに長期間を要する業界だという問題もあります。人材が一人前になる前に、待遇の悪さが原因で転職されてしまうことも日常茶判事。高待遇を維持するには、十分な利益をあげなければなりません。しかし、そのために長時間労働を従業員に強いた場合は、インターネットで“ブラック企業”の評判が広がり、採用応募者が大幅に減ってしまいます。製造業の人手不足の本質は“若者の不安”の現れ工場における人手不足の本質は、やはり“若者が抱く不安”にあると言えます。工場で働くことに対するネガティブなイメージを列挙すると、①3K(きつい・汚い・危険)な印象②給料が安そう③休日が少なそう④学ばないといけない専門知識も多そう⑤上司や先輩が怖そう⑥根性論がまかり通ってそう⑦社会的ステータスが低そう⑧異性にモテなさそうなどが挙げられます。しかしこれらは、あくまでも“単なるイメージ”。上記8点のネガティブなイメージに全く当てはまらない工場が存在するのも事実。工場に対する印象がポジティブなものに変われば、人材不足の問題はガラッと改善するはずです。政府も工場のイメージアップ戦略に積極的イメージアップ戦略によって人手不足問題を解決するにあたり、求職者への十分なアピールが大事。政府の「ものづくり白書」においても、【ものづくり人材の確保と育成】をモノづくり産業の大きな課題として挙げてます。その課題の打開策として政府は、①「専門的な技術を学べるポリテクカレッジ(職業能力開発大学校/職業能力開発短期大学校)のカリキュラム見直し」②「ものづくりマイスターと連携したモノづくりの魅力を発信するイベントの実施」③「女性技術者の育成」(※)などを挙げています。(※)モノづくり業界への女性進出“男くさい”印象を持たれがちな製造業ですが、近年は「理系女子(リケジョ)」が積極的に支援されてます。中部経済産業局は、ものづくり女子の活躍応援サイトを運営。製造業に携わる女性のPR活動を行ってます。日本の工場における人手不足問題への本質的な対策工場の人手不足問題を解決するにあたり、若者の工場に対するイメージアップを推し進めることが重要。要するに、工場に対するイメージを、①3K(きつい・汚い・危険)とは無縁②給料は意外と高い③休日は意外と多い④専門知識をしっかり学ぶと大企業以上にキャリアが安定 する⑤上司や先輩は優しくてイイ人 ⑥根性論ではなく、無理なく効果的な育成プラン でレベルアップできる⑦社会的ステータスが高い⑧実は異性にものすごくモテる といった風に、ポジティブなものに変えてゆく必要があります。具体的なイメージアップ戦略上記8つの素晴らしいイメージを若い人たちに伝えるために、「何をするべきか?」という疑問に対する回答は様々ですが、【積極的にメディアに露出】するのも得策と言えます。我々“Mitsuri”をはじめ、工場の魅力を最大限アピールするWebメディア がいくつか存在します。それらのWebメディアでは、アナタの工場の魅力を大量の求職者に向けて無料で効果的に宣伝できるのはもちろんのこと、競合する工場の魅力を分析する際にも役立ちます。Webメディアを積極的に活用することは、工場の人手不足問題の解決 に向けた“大きく確実な一歩”と言えるでしょう。

  • 溶接の知見を得よう【10の基本知見】知らないと恥ずかしいかも?基本質問集

    【5分でわかる】溶接記号の見方、書き方溶接記号の見方、書き方について動画でも解説しています!噛み砕いて解説しているので、ぜひ参考にしてください!Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください!溶接の知見には様々なものがありますが、その中でも必須の知見を「10の必須知見」としてまとめました。未経験者からベテランまで、溶接に関する有意義な情報を質問形式でご紹介しています。溶接の知見「10の必須知見」溶接に関する必須知見として10個挙げます。いずれも溶接関係者にとっては必須の重要な知見です。溶接の必須知見Q1. 溶接とは?Q2. 溶接工の平均給与はいくら?Q3. 溶接機にはどんなものがあるのか?Q4. アーク溶接とは?Q5. 溶接記号とは?Q6. 溶接面(マスク)を選ぶときのポイントは何?Q7. 溶接に関する資格は何があるのか?Q8. 溶接にはどんな種類があるのか?Q9. 溶接ビードとは?Q10. レーザー溶接のメリットとデメリットは?必須知見Q1. 溶接とは?溶接とは接合部が連続性を持つように、熱や圧力を加えて部材を接合することを言います。必要があれば溶加材を加えます。コラム 溶接の歴史金属接合(溶接)において、最も古い歴史を有しているのは「鍛接」です。約3000年前の時点で、金属同士をハンマーでたたけば接合すると認知されていました。古代エジプト王のツタンカーメンの棺は紀元前1350年ごろに埋められたとされていますが、棺の中から鍛接された鉄製の装飾品が見つかっています。必須知見Q2. 溶接工の平均給与はいくら?溶接工の平均月収は約33万円程度で、日本人全体の平均給与のやや上です。年代別に示すと、溶接工の平均給与未経験者の初任給15万円~20代25万円30代35万円40代40万円必須知見Q3. 溶接機にはどんなものがあるのか?IMAX60(アイマックス60)画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html初心者向け直流アーク溶接機でインバーター制御。手軽さは抜群、アークスタートも優良です。趣味で簡単な鉄製品を作ってみたい人向け。スキル次第ではフェンスや門扉も作成できます。専用溶接棒を使うことでステンレスも加工可能。薄物の板金加工には間違いのない製品です。IMAX120(アイマックス120)画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html中級者向け直流アーク溶接機でインバーター制御です。アークスタートはスムーズ、アークは安定しており使い勝手は抜群です。100V/200Vどちらでも使用可能です(入力電圧を感知して自動で切り替わります)。100V・15Aコンセントでも使用可、板金の厚さは0.8mm~3.0mmまで可能です。VICTRON130(ヴィクトロン130)画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html上級者向けバッテリー内臓のアーク溶接機でプロフェッショナル仕様です。重さはわずか34kgで、作業場での移動も楽にできます。必須知見Q4. アーク溶接とは?図1:アーク溶接とは アーク溶接は最もメジャーな溶接方式です。①溶接機本体から伸びているトーチにアーク溶接棒を取り付け、②溶接したい箇所にコツコツと当てるとアークスタートするシンプルな手順です。アークスタートの際、溶接棒が母材にくっついてしまうことがあり、初心者にはやや難しいです。溶接の際、母材だけでなく溶接棒も一緒に溶かして溶接する場合は、溶接棒が溶けるたびに交換しなければなりません。アーク溶接のメリット・デメリットメリット①ガスを使わないので風の影響を受けない②ケーブルを延長すれば動かしやすい③屋外での作業にも強い④鉄骨溶接や重機の修理にも良い⑤ボルトとナットの永久接合(溶接止め)にも最適⑥溶接機本体は安価で小型なものが多い⑦ホームセンターなどでも溶接機が売ってるデメリット①厚板を溶接する際は家庭用100Vでは厳しい②薄板を溶接するのは難易度が高く、穴が空いてしまうことも多々③溶接後にはフラックス(黒い残りカスのようなもの)が付着しており、剥がさないといけない④仕上がりが美しくない参考:アーク溶接【基礎】種類と原理!電圧設定・温度分布まで詳細解説必須知見Q5. 溶接記号とは?▲図2:溶接記号の一覧表例 ▲図3:溶接補助記号の一覧表 ▲図4:非破壊検査の記号一覧表  上記の溶接記号は頻繁に用いられる重要項目です。基本知識としてすべて暗記しておくのが望ましいです。参考:溶接記号の一覧【基礎講座】溶接指示を徹底理解!種類と書き方をマスターしよう【質問6】溶接面(マスク)を選ぶときのポイントは何?手持ち型溶接面画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3昔ながらの溶接面です。手持ち溶接面は自動遮光面に比べると圧倒的に安いのですが、両手を使えないため不便です。装着が遅かったり溶接面を丁寧に顔に当てないと、光が目に入る危険性もあります。通常は外側から、素ガラス・遮光ガラス・素ガラスと3枚並べて使用します。外側の素ガラスがスパッタで汚れたら捨てて、内側の素ガラスを外側に装着すれば安上りです。かぶり型溶接面画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3自動遮光面よりも遥かに低価格、両手を使えるのも便利です。初期コストを低くしたい人にオススメです。デメリットは、スパッタによって素ガラスが汚れることです。素ガラスが汚れると交換しなければならず、そのたびにコストが発生します。自動遮光面(ヘルメット取付型・キャップ型)画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3主に自動遮光面に実装されているのは、①明るさを変化させる液晶フィルターと②アークの点滅を検知する光センサです。液晶フィルターは、アーク点灯時に暗くなり、アーク消灯時に明るくなります。視界の明るさを自動的に調整してくれるのが特徴です。手持ち型の溶接面と異なり、作業中常に両手が空きます。 ※自動遮光面には2種類あります。ヘルメットに取り付けるヘルメット型、直接被るキャップ型です。状況によって使い分けましょう。溶接用ゴーグル画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3自動遮光面よりも軽量で、種々のヘルメットと合わせて使用できます。メガネの上からも着用可です。欠点はやや高価なところが挙げられます。 革製遮光面画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3革製の遮光面は、安価で折りたたんでコンパクトに収納できるメリットが人気です。その一方で、蒸れたり革独特の匂いがしたり、などのデメリットもあります。 必須知見Q7. 溶接に関する資格は何があるのか?溶接に関する資格として有名なものは以下の8つです。溶接の資格①ガス溶接技能者易ガスバーナーを用いて金属を接合するガス溶接を行う際に必要な国家資格です。この資格があることで、初めてガス溶接を行えます。②ガス溶接作業主任者難ガス溶接を行う際、主任として作業スケジュールを決定し、ワーカーに指示を出すための国家資格です。ガス溶接技能者の上位に位置づけされる資格で、実務経験3年以上で受験できます。③アーク溶接作業者易放電現象(アーク放電)を利用して金属をつなぎ合わせる「アーク溶接」を行うために必要な国家資格です。ガス溶接は3,000度ほどの炎を扱うのに対し、アーク溶接は約4,000度です。溶接する部材によって工法が異なります。④アルミニウム溶接技能者普通アルミニウム合金の溶接を行う専門的な知識と技能を認定する民間資格です。アルミニウム溶接は、ガス溶接やアーク溶接よりも難易度が高めです。アルミニウム溶接は自動車関連の現場などで需要が増えており、キャリアを安定させるという面でも有利な資格と言えます。⑤PC工法溶接技能者普通PC(プレキャスト鉄筋コンクリート)工法溶接の技能を認定する民間資格です。コンクリート組み立て建築の溶接現場で活かせます。⑥ボイラー溶接士難ボイラーの製造・改造・修理などの溶接が可能になる民間資格です。1年以上の溶接経験(ガス溶接など一部を除く)があれば受験できます。普通ボイラー溶接士、特別ボイラー溶接士の2種類あります。特別ボイラー溶接士は、普通ボイラー溶接士免許を受けた後、1年以上ボイラーなどの溶接実務があれば受験できます。⑦溶接管理技術者難溶接のスキルと知識だけでなく、施工計画や作業管理能力を有する技術者を認定する民間資格です。溶接技能者の上位資格とされており、官公庁からの工事受注に必要な資格です。特別級、1級、2級の3段階のレベルがあります。⑧溶接作業指導者難指導者的な役割を担う、溶接作業者を認定する民間資格です。溶接部門の班長、溶接工事の現場監督など、溶接作業者や溶接管理技術者に指示を出す重要ポジションを担います。参考:【溶接の資格】種類一覧!費用と取り方&難易度別!プロの溶接工が取っておくべき資格」必須知見Q8. 溶接にはどんな種類があるのか?   溶接は、融接・圧接・ろう接の大きく3種類に分かれます。(1)融接融接は、母材の溶接したい部分を加熱して、母材のみもしくは母材と溶加材(溶接棒)を溶かして接合する溶接です。参考:融接とは?代表的な種類とメリット・デメリットを解説(2)圧接圧接は、機械的な圧力を接合部に加えて接合する溶接です。参考:圧接とは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説(3)ろう接「ろう」と呼ばれる母材よりも融点の低い金属の溶かし、接合面のすきまに流し込んで接合する溶接です。・硬ろう(融点高め)を用いる:ろう付・軟ろう(融点低め)を用いる:はんだ付の2種類があります。参考:ろう付けとは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説必須知見Q9. 溶接ビードとは?「溶接ビード」とは、溶接後の接合部が“みみず腫れ”のようになった箇所を言います。ビードを適切にカット処理することで、製品の見栄えが良くなります。世の中にはビードマニアと呼ばれる、ビードの美しさに魅せられた人たちすらいます。必須知見Q10. レーザー溶接のメリットとデメリット近年、脚光を浴びているレーザー溶接のメリットとデメリットを以下にまとめました。レーザー溶接メリット①歪(ひずみ)が少ない⇒他の工法よりもピンポイントで加熱できるため、短時間で接合可能②光が熱源⇒電流、電圧、磁力などで、製品がダメージを受けにくい③微細な加工⇒他の工法では困難な微細加工も可能④異種材料間の溶接⇒融点の異なる異種材料の溶接が他工法と比較的容易にできる⑤非接触加工ができて、電極をメンテナンスしなくてよい⇒TIG溶接や抵抗溶接ではメンテナンス必須⑥分岐できる⇒レーザ溶接機が1台あれば、複数台の自動機に対応できるデメリット①溶接箇所の精度管理が必要⇒接合部の合金層にブローフォールやクラック等の溶接欠陥が発生しやすい②安全対策を十分に行わないと危険⇒日本工業規格「レーザ製品の放射安全基準」JIS C 6802を推奨まとめ溶接に関する10の知見をまとめました。未経験者はもちろん、ベテランさんも基本知識の確認に本記事をご利用ください。① Mitsuriでのお見積りは案件を公開して待つだけ!② 複数のお見積りが届く! ⇒金額重視or納期重視?ニーズに合うものを選べる!③ 案件の5割以上が1日以内に見積りを取得!溶接のご依頼にお悩みの方は、一度Mitsuriまでご相談ください。下の赤いボタンをクリックして、お気軽にお問い合わせください。

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    【テスト】綾瀬市に行ってきました。

    トップ画像引用元:綾瀬市はじめに先日、日刊工業新聞に次のような記事が載っていました。「町工場競う技能五輪 神奈川・綾瀬市が来月開催」神奈川県綾瀬市で、市内町工場の若手技能者育成を目的とした技能競技大会「あやせ技能五輪」が開かれる。自治体が中小製造業向けの技能大会を主催するのは珍しい。初開催となる今回は溶接作業の技能者を対象に行う。大会の模様は動画共有サイト「ユーチューブ」の市専用アカウントで後日発信する。日ごろ磨いてきた技術力を披露する機会を提供することで若手技能者のモチベーション向上を図り、市内製造業の活性化につなげる。引用元の記事にも書かれていますが、自治体が中小企業向けの技能大会を行うのは珍しいです。調べてみると、綾瀬市に関連した製造業関連企業のメディア掲載もとても多いことにも気がつきました。なぜなんだろう?綾瀬市の取り組みを聞いてみたくなり、訪問させていただきました。引用元:綾瀬市綾瀬市の工業の概要https://www.city.ayase.kanagawa.jp/hp/page000017400/hpg000017338.htm綾瀬市の工業は自動車関連産業が主力であり、2006年の工業統計表(経済産業省発表)をみると、本市における輸送用機械器具の製造品出荷額は、神奈川県内で4位、全国でも43位であることが分かります。 しかしながら、立地企業の大部分が資本金3億円以下及び従業者300人以下の中小企業であり、中でも従業員20人以下の小規模零細企業が多く、今後も県内上位の工業集積を維持しつつ、更なる成長を続けるためには、販路拡大や研究開発力など経営基盤の強化が重要な課題となっています。 そのため、市では平成22年12月に学識経験者・市内工業団体代表者・市内主要企業・関係行政機関等との協働により、今後10年間の本市工業の成長戦略を掲げた「綾瀬市産業振興マスタープラン」を策定しました。 同プランでは、綾瀬市工業の将来像を「持続可能な社会を支える創造的ものづくりネットワーク都市」と設定し、その具現化に向けた主要施策として、「ネットワークづくり」「産業の高度化と新産業の創出」「人材育成」「企業誘致」を掲げています。詳細については、下記関連リンク「綾瀬市産業振興マスタープラン」をご覧ください。工業都市を目指している。「あやせ工場プロジェクト」「綾瀬市工業施策の方向性 ~made in ayase・あやせ工場プロジェクト~ 」ものづくり技術の継承や経済状況による経営難といった問題を抱えつつも、今後の積極的な事業展開(下請けからの脱却等)を図っていきたいという意欲をもった中小企業の「競争力の中核となる独自の技術の活用、高度化、設備導入等の取り組み」に対して、アドバイスやマッチング、更には財政支援などの工業支援サイクルによって総合的な支援を行い、不況や経済事情に左右されない地域企業を育成し、made in ayase 製品を創出していきます。市内企業向け直接支援:1. 事業拡大の支援2. 技術の高度化・高付加価値化への支援3. 技術を活かした販路拡大支援4. 競争力のある技術への支援5. 新規創業・二次創業の支援6. 技術や企業集積を生かした新分野の進出市内企業向け間接支援:1.工業ブランド化支援2.企業間・地域連携3.就労対策様々な支援策が打ち出されていて、本年度に立ちあげたものだけで、10施策。その中の1つが「あやせ技能五輪事業」だったのですね。どの施策も興味深く、取り上げてみたいのですが、ここでは全体の方向性を紹介するにとどめます。綾瀬市工業の将来像:持続可能な社会を支える創造的ものづくりネットワーク都市具体的には、・綾瀬市が一つの工場となり、既存の工場が事業所となる、エコシステムの構築を目指している。あやせ工場『あやせ工匠塾』https://www.city.ayase.kanagawa.jp/hp/page000031500/hpg000031413.htm綾瀬では積極的に、ロケ地 リンク「空飛ぶタイヤ」動画:メイドインあやせ、早く手に取ってみたい。

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    【板金加工 切断】せん断やシャー切断などの切断加工を専門家が解説!

    板金製品の完成には、材料、図面、加工(機械)の3つが欠かせません。今回は板金加工で使用される加工について解説します。板金加工には、大きく分けて切る、曲げる、作るという加工方法があります。その中で、今回取り上げるのは切る(切断)です。板金加工ではせん断という加工方法があります。せん断と切断は近い概念ですが、違いも存在します。・では、両者はどのように違うのでしょうか。・また、せん断にはどのような特徴があるのでしょうか。この2点に着目し、以下、順を追って見ていきたいと思います。切断とせん断切断とせん断は、板材を切るという意味では同じ加工です。しかしながら、切断にはさまざまな方法があり、せん断は切断の中の一領域にすぎません。切断加工には、機械的に切削したり、熱的溶断(レーザー切断を含む)などによる除去切断と、引張り、曲げ、せん断といった破壊切断の2つがあります。今回取り上げるせん断加工は、破壊切断(非除去切断)に分類されます。ただし、せん断加工は単に板材を切るということにとどまりません。以下の図を見てください。せん断加工には、以上の5つの加工があります。それぞれの加工についての解説は別の機会で行うこととして、本記事では切断的加工について考えていきます。せん断加工とはシヤーせん断(英:shear)は、1909年にイギリスから平行刃せん断機(ギロチンシヤー)が日本に輸入され、シヤーによる加工が始まりました。日本のせん断加工は、100年以上の歴史を持っています。現在では、全工程を自動化したオートシャーまで登場しています。引用元:AmadaCompanyシヤーは金属のみならず、紙や、樹脂など様々な素材の加工にも利用されています。板金加工において、シャーはブランク加工で使用されます。ブランク加工とは、定尺材から必要寸法に切断してブランク材をつくりだす加工のことを指します。このブランク材に穴あけ、切り抜き加工後、曲げ工程を経て、溶接工程、組立工程を経て、板金製品が完成するわけです。ブランク材とはシリーズの第2回「板金加工、材料の基礎」で、板材がどのように作られるのかについて言及しました。この板材が成形された後に、製品にあった大きさに切断するせん断加工が行われるのは、上で述べた通りです。板金加工やプレス加工では、加工品を連続して高能率で製作します。したがって、同じ形状の金属板が必要になります。この同じ形状の金属板のことをブランク材と呼び、ブランク材を作る金属加工をブランク加工といいます。コイルや切り板などの金属素材からブランク板を切り出すブランク加工は、金属加工にとって非常に重要な工程です。単に加工素材としてのブランク板を安定して採取するのみならず、金属素材からできるだけムダなくブランク板を採取する必要もあるからです。ムダなくブランク板を採取ために、ブランク加工設計を考えなければなりません。せん断加工の原理せん断加工とは、一対の工具(パンチとダイ)により材料にせん断変形を与え、所望の形状や寸法に材料を分離する加工のことをいいます。引用元:モノタロウ加工の原理は、材料を接近した位置で、直角方向にお互いに逆方向の力を加えて割る点にあります。シヤーによるせん断の場合、パンチは上刃、ダイは下刃となります。下刃を固定刃にして上刃を可動させて板材をせん断するのが一般的です。上刃は板材面に対して刃を傾けて切り込むようにします。この傾きのことをシヤー角と呼びます。シヤー角は重要な概念ですので、そのメリットとデメリットについて、以下で確認してみたいと思います。シヤー角とはせん断をする際に、シヤー角を設けることでせん断力の軽減や長い板材を加工することが可能になります。シヤー角は薄板の場合は小さく、厚板の場合は大きく取ります。シヤー角を小さく設定することで、以下で述べる不良現象を軽減することができます。そのため、近年はシヤー角を小さく取る傾向にあります。ただし、ブレードの形状によってはシヤー角を落としすぎると上刃の下面で圧縮が生じて、板材上面が変形することがあります。また、せん断力が大きくなることから機械剛性を大きくする必要もあります。・板厚に対するシヤー角の標準値出典:遠藤順一編著『板金加工大全』日刊工業新聞社、2017年、60頁また製品精度とシヤー角は大きく影響します。以下で、JIS B0410で規定されている金属板せん断加工品の普通公差を示しておきます。JISや普通公差(公差)については、「板金加工、図面の基礎」をご覧ください(以下の3つの図はすべてkikakurui.comからの引用です)。・切断幅の普通寸法許容差引用元:kikakurui.com切断幅とは、シャーの刃で切断された辺とその対辺の距離のことをいいます。 切断長さとは、シャーの刃で切断された辺の長さのことをいいます。・真直度の普通公差引用元:kikakurui.com真直度とは、切断された辺の刃当たり部分の、幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさのことをいいます。・直角度の普通公差引用元:kikakurui.com直角度とは、長辺をデータム形体とし、データムに対して直角な幾何学的平面からの短辺の刃当たり部分の狂いの大きさのことをいいます(以下の図のf部分)。引用元:有限会社長井技研真直度や直角度を理解するためには、前回触れることのできなかった幾何公差の理解が不可欠です。データムも同様です。この点については、別記事で考察することとします。不良現象(ひずみ)シャー角は、板材に不良現象(ひずみ)を生じさせるというデメリットもあります。不良現象にはボウ、キャンバー、ツイストの3つがあります。①ボウ(反り)ボウとは、切り落とされた板材に発生する現象で、板厚方向に湾曲が生じるものです。一般的に、シヤー角を小さくすればボウの値は小さくなります。また、幅と板厚にも関係し、せん断幅が板厚の10倍以上になるとボウの発生が少なくなります。②ツイスト(ねじれ)ツイストとは、切り落とされた板材に発生する現象で、製品にねじれが生じるものです。ツイストはシヤー角が大きいほど大きくなります。また、せん断幅が小さくなると大きくなります。一般的には板厚の20倍以上のせん断幅があればねじれ発生による精度への影響を考慮しなくてよいとされています。③キャンバー(曲がり)キャンバーとは、断面がせん断幅に円弧状(扇形)に湾曲する現象です。一般的には板材の材質と残留応力が大きく影響します。せん断時には材料の残留応力が開放され、キャンバーが発生します。キャンバーの量はせん断幅に大きく影響します。切断加工についてわかったところで、・具体的に費用はどれくらい掛かるのか・納品まで期間はどれくらい掛かるのかなどについて気になる方もいらっしゃると思われます。そんな時はMitsuriにお任せ下さい!上・下刃のクリアランス(隙間)クリアランスの基本的な考え方続いて、クリアランスについて見てみたいと思います。せん断の場合、クリアランスは上刃と下刃の隙間のことを指します。クリアランスの設定はとても重要です。なせなら、クリアランスは、製品精度、せん断精度、断面の良否、刃物の劣化(寿命)と影響が多岐にわたるからです。・上刃が下降すると上下刃の間にある素材は圧縮力を受け(ダレの原因)、側面にある素材の表側面は引張りを受けます。・さらに下降すると上下刃は素材に食い込み、素材に対してせん断応力が生じ、すべり変形が生じます。せん断応力とはパンチに荷重(W)を加えると、材料の断面にずれようとするせん断力が働きます。材料のせん断強さ以上の力が加わると、材料内部ですべりが生じて、材料が打ちぬかれます。荷重(W)を受ける断面積(A)で割った値を「せん断応力」(T)といいます。 せん断応力(Τ)=荷重( W)/断面積(A) でせん断応力を計算することができます。これは平均せん断応力の算出方法で、実際に発生する最大せん断応力とは異なるので注意が必要です。せん断による変形が大きくなると上下刃の刃先付近から亀裂(割れ)が発生します。上下からの割れが結合すると素材が分離され、せん断加工の過程は終了します。ここで、素材を切断することができたというわけです。この際に、適切なクリアランスが設定されていないと上下の割れはうまく結合せず、クラックが製品内部に残ってしまいます。このクリアランスの設定の良否は、製品断面に現れます。クリアランスは一般にダイとパンチの片側の隙間をいいますが、前後左右が対象なNCタレットパンチプレスなどの金型の場合はは、ダイとパンチの差(両側の隙間)をいうこともあるので注意が必要です。クリアランス設定とせん断面の関係①クリアランスが適正の場合上下からのワレが適正に結合され、上下刃が食い込んで発生したせん断面と、割れによって発生した破断面が直線的につながっている場合、適正となります。②クリアランスが過小の場合クリアランス過小の場合、割れが行き違いになった後で結合します。素材の中央部に残された部分が上下刃で削られたり、せん断されることを、2次せん断といいます。素材中央付近にブツブツとした凸凹のような面が発生していると、クリアランスが過小であると判断できます。③クリアランスが過大の場合クリアランス過大の場合、ダレが大きくなり、素材に対して内面の引張力が大きくなり亀裂が早く発生するため、せん断面が小さく、破断面が大きくなります。引用元:有限会社長井技研「精密板金wiz」④シヤーにおけるクリアランス設定の基準以下で、既に取り上げた代表的な素材(材料)のクリアランス設定の目安を示しておきます。材質鋼板ステンレスアルミ合金SPCC,SGC,SPHC,SSSUS304,SUS430A1050P,A5052Pクリアランス%14~2216~2412~18引用元:村田ツール株式会社「板厚に対するクリアランスの割合<目安>」せん断面の形状以下でせん断面の形状を示しておきます。引用元:有限会社長井技研「精密板金wiz」だれ:刃物が食い込み圧下した表面部。せん断面:工具が食い込んだ部分。刃の側面で擦れて光沢がある。破断面:割れが発生して破断した部分。かえり(バリ):破断の端が残った部分。せん断面は重要な面で、せん断精度における寸法精度はこの面で決まります。まとめ いかがだったでしょうか。 板金加工の基本的な加工である切るにも様々な種類があることを理解してもらえたかと思います。また、切るの一種でしかないせん断がとても込み入った内容を持っていることもまた理解してもらえたかと思います。実際にせん断をしながら、理論を覚えていくことをおすすめします。現在では、個人でも手に入るような加工機械も登場しています。引用元:Sunhayato

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    板金加工とは何か?

    様々な角度から板金加工を見よう!Mitsuri編集部では、「ゼロからわかる!板金加工!」シリーズを連載しています。第1回では、「板金加工、基礎の基礎」と題して板金加工の全体像を俯瞰(ふかん)しました。そこでは、主として板金の加工方法に焦点を絞って解説をしました。しかし、実際の現場では加工方法というよりも、むしろ製品の完成に重きが置かれることが少なくありません。加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。 実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。  引用元:「板金加工、基礎の基礎」そこで、是非参照していただきたいのが、Mitsuriの兄弟サイトであるFabitの「板金加工とは何か?」の記事です。同記事では、Mitsuri記事で取り上げていない、以下のトピックについて解説しています。・手板金加工(手加工板金)・プレス加工・接合加工・手板金加工では、絞りや打ち出し加工などを解説しています。・プレス加工では、順送プレスやトランスファープレス、タンデムプレスを解説しています。・接合加工では、機械的、冶金的、そして接着的接合法を解説しています。 Mitsuriの「ゼロからわかる!板金加工!」シリーズとあわせて読んでいただけると、グッと理解が深まるはずです。Fabitとは?Fabitは、「日本一わかりやすい製造業紹介メディア」です。当メディアは製造業にスポットライトを当てて、今まで交わることのなかった工場と工場、工場とヒトが交わることにより、新しいイノベーションが生まれることを目指しています。  引用元:FabitとはMitsuriに興味を持っていただけた方は、是非Fabitもご覧ください。・Fabitでは、無料で簡単に工場を掲載することができます。・また、製造業・メーカーのことがわかる記事も掲載しています。Mitsuriと共に、Fabitもご愛顧いただけると幸いです。以上、Mitsuri編集部からでした!

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    第2回 板金加工、材料の基礎

    本シリーズは、板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、板金加工の理解が身につくことを目標にしています。対象とする読者は、知識ゼロのあなたです。板金製品の完成には、材料、図面、加工(機械)の3つが欠かせません。 シリーズ第2回目の今回は、板金加工で使用される材料について解説します。第1回で確認したように、板金加工は、金属の板材を加工するところから始まります。・では、板材はどのように作られるのでしょうか。・また、板材にはどのような種類・特徴があるのでしょうか。 この二点に焦点を絞り、以下、順を追って見ていきたいと思います。板材はどのようにつくられるのか。1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼・製鉄 鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。・銑鉄 この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。 ・鋼この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。・製鋼この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。引用元:中部鋼鈑株式会社2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延)製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。これが圧延加工の工程になります。一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。  引用元:日本冶金工業株式会社圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延)板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。このような薄板は冷間圧延によってつくられます。 冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。)また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。引用元:中部鋼鈑株式会社黒皮材とみがき材熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。 黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。 これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。板材を俯瞰(ふかん)する 1. 板材の種類 板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。 ・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。 ・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。  2. 板材の寸法、形状 板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク)1219×2438mm(4×8、シハチ)1524×3048mm(5×10、ゴトー) ・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。材料の特性 さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。 1. 炭素量で鉄の性質をコントロール 鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。) 2. 炭素量による性質の各特長 (1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。 (2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。 (3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。 (4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。 (5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。 3. 主要な5大元素 鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。 ・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。 以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。炭素鋼と合金鋼の区分け鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいますこれに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。 1. SPC材(冷間圧延鋼板) (1)概要: ・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。 (2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。(3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。 2. SS材(一般構造用圧延鋼材)(1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。(2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。(3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。内部応力とは内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。合金鋼炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。  SUS材(ステンレス材)(1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。①SUS304(18-8系ステンレス)ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。②SUS303(18-8系ステンレス)先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。SUS304と同じく非磁性です。非鉄鋼材料  1. アルミニウム鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。 「電気の缶詰~アルミニウム~」 概要奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。出演者名・所属機関名および協力機関名佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション引用元:サイエンスチャンネル2. アルミニウムの特徴アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。(1)軽さ:アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。(2)強さ:アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。(3)加工性:切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。(4)耐食性:ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。(5)導電率:電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。 (6)熱伝導率:熱伝導率は銀と銅についで高いです。(7)耐熱温度:アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。(8)光沢と非磁性:光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。3. 銅と銅合金銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。4. 銅の特徴銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。(1)導電率:銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。(2)熱伝導率:熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。(3)加工性:大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。(4)耐熱温度:200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。(5)耐食性:耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。(6)光沢:金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。(7)非磁性:非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。 5. 銅と合金銅の種類生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。(1)純銅純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。(2)黄銅(真鍮)黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。6. その他の非鉄金属材料チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。まとめ本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。

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    【板金加工】専門家が教える板金加工の「特徴・種類・材料」について!

    板金加工とは何か、という問いに答えることは決して簡単ではありません 。というのも、板金と呼ばれる業界や加工内容はとても広く、また関係する作業はそれぞれ独立し、複雑に絡み合っているからです。とはいえ、板金を無視することも簡単にはできません。なぜなら、私たちの生活は板金加工によってつくられた製品なしでは成り立たないからです。身の回りを見渡してみてください。スチールの机、ロッカー、書庫、キャビネット、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン、テレビ・・・。これらの製品には、ほとんど板金が使われています。そんな日常の中にも溶け込んでいる、板金加工とはどのようなものなのでしょうか?板金加工の特徴や種類、または材料まで専門家が徹底解説致します!板金加工とは?板金加工は、一般に金属の板を切ったり、曲げたりすることで製品をつくる加工方法のことをいいます。ここでは、板金の加工方法にこだわり、以下の定義を採用してみたいと思います。板金加工とは 、 金属加工の一分野である塑性加工の一領域で、 主として板材を切断、 抜きおよび曲げなどにより、 さまざまな形状(部品・製品)を作り出す加工方法である。 少し難しい定義ですが、一つずつ紐解いていきます。 金属加工とは金属加工とは文字通り、金属を材料として加工する分野のことを指します。 金属加工で使用する材料には、鉄鋼材料、アルミニウム系材料、銅系材料などがあります。これに対して、非金属加工で使用する材料には、プラスチック材料やセラミック材料などがあります。材料については、第2回の「板金加工、材料の基礎」で解説します。塑性加工とは塑性加工を理解するには、弾性変形と塑性変形という概念が欠かせません。 ・弾性変形とは材料に一定の力を加えると形が変形しますが、加えた力を取り去ると元に戻ることがあります。 これを弾性変形と言います。 ・塑性変形とはこれに対して、材料に一定以上の力を超えると力を取り去っても変形が残ります。このようにして起きた変形を塑性変形と言います。この塑性変形を利用した加工方法を塑性加工と呼びます。板金加工で行う、切断、抜き、曲げは、いずれも塑性加工に当たります。 板金加工と他の塑性加工との違い板金加工以外の塑性加工に、圧延、転造、押し出し・引抜き、鍛造、プレスなどがあります。板金加工と他の塑性加工との違いはあいまいといわれますが、それぞれの加工の概略を見ておくことはとても有益です。以下、簡単に見てみましょう。①圧延加工 回転するロールの間に材料を通すことで、ロールのすき間量まで薄くする加工方法です。圧延加工は平板だけではなく、さまざまな形状の成形も可能です。 この圧延加工によって、板金加工で使用される板材が成形されます。引用元:モノタロウ②転造加工丸い工作物を工具(ダイス)に強い力で押し付けながら回転させることで、工作物の表面をダイスの逆形状に成形する加工方法です。ねじや歯車はこの転造で加工されています。引用元:ユニオンツール株式会社③押し出し・引き抜き加工 押し出し加工とは、ほしい断面形状の穴のあいたダイスに材料を通すことで、長尺の製品をつくる加工です。レールやフレームなどはこの加工方法でつくられています。このダイスへの材料の通し方によって「押し出し加工」と「引き抜き加工」が区分されます。ⅰ. 押し出し加工 は、コンテナと呼ばれる筒状の容器に入れた材料に、力をかけてダイスから押し出すことで、ダイスにあいた穴形状の断面を持った形に成形する加工方法です。ⅱ. 引き抜き加工は、先の押し出し加工や圧延加工した材料を使用し、材料の先端を細めてダイスの穴に通してから、この先端をつかんで引っ張ることで、ダイスの穴形状に成形する加工方法です。引用元:東大阪市技術交流プラザ④鍛造鍛造は「鍛え造る」と書くように、ハンマやプレス機で金属に大きな力を加えることで成形すると同時に、金属組織の密度を高める加工方法です。板金加工は、基本的に板厚を変化させませんが、鍛造は厚さを変化させるという点で違いがあります。⑤プレス板金加工と他の塑性加工との区別はあいまいである、といいました。学会や業界団体、企業や製品などによって、区分がさまざまなのが実情です。このような事態に陥っている理由の一つに、全く同じ製品であっても、異なる加工方法によって作ることが可能である、ということが挙げられます。とりわけ板金加工とプレス加工は重なるところが多く、はっきりと区別するのは困難です。ただ、本記事では両者の強み、弱みに着目して、区別して考えてみたいと思います。この点については、後述の 「板金加工の特徴」で考察します。また、加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。本連載では、塑性加工としての板金加工について解説することに止めます。以下の動画では溶接まで踏み込んでいますが、板金加工の全体像をつかむ上で、有益です。是非視聴してみて下さい。 金属板でストーリーを組立てる~板金加工~ 概要モノづくりの現場で磨きをかけるその道の熟練者を追うドキュメンタリーシリーズ。埼玉県所沢市にある竹下工業では主に事務機器・空調機器・医療機械・配電盤などの筐体ならびにその部品を製作しています。板金加工は、機械化の進んだ分野で、レーザーカットマシンによる金属の板材を切断加工、タレットパンチプレスによる穴あけ加工、ベンディングと呼ばれる曲げ加工を施し、必要な箇所を溶接するというように、今や自動化・管理されています。番組では、熟練技能者の技が求められる溶接工程の技の魅力を紹介します。 出演者名・所属機関名および協力機関名> 竹下 力(竹下工業㈱),竹下 祐司(竹下工業㈱),今井 繁(竹下工業㈱),玉井 今朝治(竹下工業㈱),西村 幸弘(竹下工業㈱),高塚 正也(㈱青二プロダクション),竹下工業㈱引用元:サイエンスチャンネル板金加工の中身ここまで、金属加工における板金加工の位置づけについて確認してきました。ここから先は、板金加工の具体的な中身を見ていきたいと思います。板金加工は、手加工板金と機械板金(工場板金、精密板金)の2つに分類することができます。手加工板金とは 手加工板金は、その名が示す通り、主に人間の手の力を使用する加工方法です。手加工板金には、自動車板金 、 打ち出し板金 、 建築板金があります。 これらの板金で使用する道具を見てみると、板金加工が従来、手加工で行われてきたことがよくわかります。・手加工板金で使用する道具引用元:Tech Note「試作車ボディの板金職人、13種類の道具をどう使い分けるのか?」画像引用元の記事は、自動車板金についてかかれたものですが、とても内容の濃い記事です。一読をお勧めします。機械板金とは 手加工板金に対して、機械を使用する板金加工方法を機械板金とよびます。機械板金は、機械を使用するためには一定以上の敷地、つまり工場が必要であることから工場板金 、また機械によって精密な加工を実現できることから精密板金とも呼ばれます。機械板金による加工方法では、機械板金によってどのような加工が実現できるのでしょうか。機械板金には、切断加工、打ち抜き加工、曲げ加工、成形加工、絞り加工、特殊加工などの加工方法があります。これらの加工方法については、別の記事で詳しく解説します。切断加工にはレーザーマシン、抜き加工にはパンチングプレス、曲げ加工にはベンディングマシン、というように加工方法毎に対応した機械があります。本記事では、主に機械板金を取り上げ、手加工板金は別の連載で取り上げることとします。板金加工の特徴先に述べたように、板金加工(機械板金)とプレス加工は重なるところが非常に多いため、はっきりと区別できないとされています。企業内でも板金加工とプレス加工を区別しないところが増えてきています。しかしながら、ここではあえて板金加工とプレス加工を区別し、その相違について考えてみたいと思います。というのも、両者の相違に着目することで、板金加工の特徴が明確になると考えるからです。以下、見ていきたいと思います。プレス加工との違い 一般的に、板金加工とプレス加工の相違は、金型に集約することができます。板金加工が汎用金型(標準金型)を使用するのに対して、プレス加工は専用金型を使用します。日本金型協会では、以下のように金型を定義しています。金型とは、材料の塑性または流動性の性質を利用して、材料を成形加工して得るための、主として金属材料を用いてつくった型を総称します。例えば、自動車のボディーは金属板をプレス金型によって成形加工することによって出来上がります。また、電話機など樹脂製品はプラスチック材料を金型に射出成形すること出来上がります。このように、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成型加工用に使用されるものが金型で、金型の品質如何が製品の良否を 決定づけるものなのです。したがって、金型は製品の産みの親などといわれています。引用元:一般社団法人日本金型工業会プレス加工の強みと弱みプレス加工は、製品および工程ごとに専用の金型を作り、これを使用する点に特徴があります。これにより複雑で高精度の製品を早く、安く加工することができるのです。しかしながら、専用の金型を作るため、多量生産に向いており、生産数が少ないとそれに要した費用を償却するのが困難です。また、製品の形状および寸法などは金型で決まってしまうため、加工者の技量に左右されにくいという特徴があります。板金加工の強みと弱み板金加工は、上記プレス加工と逆の特徴を持っています。汎用金型および工具を使用することが多いため、特定の製品にかかる費用が安く、少量生産に適しています。しかし、生産性はプレス加工に比べ大幅に低くなるため、大量生産には向いていません。また、汎用金型を使用して工夫しながら加工するので、加工者の技量が重要な要素になってきます。金型という観点から見た、板金加工とプレス加工の差異は、以下のように示すことができます。 板材は一体どのように作られているの?1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼・製鉄 鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。・銑鉄 この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。 ・鋼この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。・製鋼この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。引用元:中部鋼鈑株式会社2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延)製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。これが圧延加工の工程になります。一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。  引用元:日本冶金工業株式会社圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延)板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。このような薄板は冷間圧延によってつくられます。 冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。)また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。引用元:中部鋼鈑株式会社黒皮材とみがき材熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。板材の種類を細かく分ける1. 板材の種類 板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。 ・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。 ・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。  2. 板材の寸法、形状 板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク)1219×2438mm(4×8、シハチ)1524×3048mm(5×10、ゴトー) ・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。材料の特性 さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。 1. 炭素量で鉄の性質をコントロール 鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。) 2. 炭素量による性質の各特長 (1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。 (2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。 (3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。 (4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。 (5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。 3. 主要な5大元素 鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。 ・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。 以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。炭素鋼と合金鋼の区分け鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいますこれに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。 1. SPC材(冷間圧延鋼板) (1)概要: ・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。 (2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。(3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。 2. SS材(一般構造用圧延鋼材)(1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。(2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。(3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。内部応力とは内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。合金鋼炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。  SUS材(ステンレス材)(1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。①SUS304(18-8系ステンレス)ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。②SUS303(18-8系ステンレス)先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。SUS304と同じく非磁性です。非鉄鋼材料  1. アルミニウム鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。 「電気の缶詰~アルミニウム~」 概要奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。出演者名・所属機関名および協力機関名佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション引用元:サイエンスチャンネル2. アルミニウムの特徴アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。(1)軽さ:アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。(2)強さ:アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。(3)加工性:切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。(4)耐食性:ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。(5)導電率:電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。 (6)熱伝導率:熱伝導率は銀と銅についで高いです。(7)耐熱温度:アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。(8)光沢と非磁性:光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。3. 銅と銅合金銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。4. 銅の特徴銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。(1)導電率:銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。(2)熱伝導率:熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。(3)加工性:大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。(4)耐熱温度:200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。(5)耐食性:耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。(6)光沢:金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。(7)非磁性:非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。 5. 銅と合金銅の種類生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。(1)純銅純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。(2)黄銅(真鍮)黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。6. その他の非鉄金属材料チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。地域のおすすめ板金加工工場板金加工についての理解が深まった所で、次に各地域のおすすめ板金加工工場をご紹介したいと思います。地域のおすすめ板金加工工場大阪のおすすめ板金加工工場神奈川のおすすめ板金加工工場東京のおすすめ板金加工工場埼玉のおすすめ板金加工工場栃木のおすすめ板金加工工場茨城のおすすめ板金加工工場千葉のおすすめ板金加工工場群馬のおすすめ板金加工工場静岡のおすすめ板金加工工場本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。次の記事:【板金加工 図面】図面の基礎を徹底解説!書き方・読み方・必要性

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    【工場の人手不足問題】危機的な状況が続く原因と本質的な対策は?

    近年、日本中の工場で“人手不足”が深刻化。常時の採用活動に追われているメーカーも多い状況です。この記事では、日本の製造業界が人手不足に陥る、①根本的な原因②本質的な対策を提示いたします。記事に記載している内容を実践して頂くことで、工場への求人応募者を数倍に跳ね上げることも決して不可能ではない でしょう。日本の工場が人手不足に陥る原因日本の工場が人手不足になってしまう根本的な原因は、ザックリ言うと3つ。①東日本大震災の復興需要・東京オリンピックの建設需要②労働者人口の減少③製造業に対するイメージの悪化それぞれ説明してゆきます。①東日本大震災の復興需要・東京オリンピックの建設需要震災やオリンピックの影響で、とりわけ東日本の製造業は需要が多い状況。しかし需要が増えているにも関わらず、従業員数がそのままであれば、当然ながら人手不足に陥ってしまいます。工場の経営者の立場からしても、東京オリンピック後には景気が落ち込むと考えられるため、あまり好条件・好待遇で求人を出せないという事情があるでしょう。②労働者人口の減少少子化に伴い、労働者人工も減少しています。さらに現在は、かつてないほどの東京一極集中。地方で育った若者が、東京での就業を希望することも多いため、地方の工場が人材を確保するのは非常に困難です。③製造業に対するイメージの悪化おそらく製造業界におけるイメージ悪化が、人手不足の最大要因でしょう。高度経済成長期の製造業は“花形の職業”でしたが、現在における製造業のイメージはそれほど高くないというのが実情。製造業のイメージがこの数十年の間に、じわじわと下がってしまった理由を時代背景を踏まえた上で簡単にまとめると、以下のようになります。1.バブル崩壊後、大規模リストラと海外への製造拠点移動2.海外メーカーとの争いと技術者のモチベーション低下3.日本の製造メーカーも価格競争に巻き込まれることになった4.待遇を良くしないと求職者が来ない1.バブル崩壊後、大規模リストラと海外への製造拠点移動特別優れたマーケティング戦略を立てなくても、バブル時代の製造業は製品を簡単に売ることができました。しかしバブル崩壊後はモノが売れない時代に突入。製造業界に“冬の時代”が到来し、以前まで気にかけてなかった経費の大幅削減を余儀なくすることに。さらに日本人の賃金が上昇。国内生産したものを販売する際、海外製品に“価格負け”するようになりました。その結果、大手製造メーカーの多くは中国や東南アジアへ製造拠点を移すことに。幸いなことに海外で製造した製品であっても、日本の製造メーカーがしっかりと管理していれば、・一定の品質・手頃な価格を実現できました。しかし海外へ製造拠点が移ったことで、国内の工場では、・生産ラインの停止・工場の閉鎖といった大規模リストラが起こることに。バブル崩壊後の製造不況に畳みかけるように、日本人の雇用が奪われてゆきました。このようにして、日本の“古き良き製造業”は終焉を遂げたのです。2.海外メーカーとの争いと技術者のモチベーション低下日本の製造業が行った采配、・リストラ・海外生産の影響で業績が回復。ただし物が売れない状況は変わっておらず、ここにきてリストラの影響がジワジワと現れることに。技術者は“売れるモノ”しか作らせてもらえず、モチベーションが低下。凡庸なアイデアしか出せなくなったのです。かつての電機メーカーは、斬新な発想が受けて大ヒットした商品も多かったのですが、経営効率化の影響で遊び心を失ってしまいました。また海外の工場からも人材が流出。外資メーカーとして、日本企業のノウハウがそのまま転用される問題も出てきました。やはり現地の従業員からすれば、「日本メーカーは、我々の国で労働力をピンハネして作った製品を世界中で売っている」と解釈してしまうのも無理のないことです。バブル崩壊後の日本の大手製造業の戦略は、国内の経済だけでなく、海外の従業員をも疲弊させてしまったのです。3.日本の製造メーカーも価格競争に巻き込まれることになった日本の製造業は今まで、高品質の製品を高すぎない価格で売れたことが生命線でした。しかし近年の“検査値の改ざん問題”などから『日本の製品=高品質』という、長年疑うことすらしなかった“絶対的な方程式”が崩れ去ろうとしている現状があります。“検査値の改ざん”が世界的に報じらた以上、今後はより激しい価格競争の流れになるでしょう。そのような状況に陥ることに薄々気づいている人は多かったものの、根本的な打開策を提示しないままに進んでしまったため、現在の日本の製造業は厳しい状態にあります。4.待遇を良くしないと求職者が来ない労働人口が減少している現在、求職者は仕事を選び放題。求職者側の立場が強い“売り手市場”の状態です。今後の展望としては、好待遇を用意できない工場は採用活動を行ったところで、ほとんど応募者が集まらなくなるでしょう。【優秀な人材を募集したくても待遇を用意できず、人材が集まらないために業績が伸び悩み、待遇も改善しない】といった“負の循環”に入ってしまっているメーカーも多々。さらに人材が見つかったとしても、一人前になるまでに長期間を要する業界だという問題もあります。人材が一人前になる前に、待遇の悪さが原因で転職されてしまうことも日常茶判事。高待遇を維持するには、十分な利益をあげなければなりません。しかし、そのために長時間労働を従業員に強いた場合は、インターネットで“ブラック企業”の評判が広がり、採用応募者が大幅に減ってしまいます。製造業の人手不足の本質は“若者の不安”の現れ工場における人手不足の本質は、やはり“若者が抱く不安”にあると言えます。工場で働くことに対するネガティブなイメージを列挙すると、①3K(きつい・汚い・危険)な印象②給料が安そう③休日が少なそう④学ばないといけない専門知識も多そう⑤上司や先輩が怖そう⑥根性論がまかり通ってそう⑦社会的ステータスが低そう⑧異性にモテなさそうなどが挙げられます。しかしこれらは、あくまでも“単なるイメージ”。上記8点のネガティブなイメージに全く当てはまらない工場が存在するのも事実。工場に対する印象がポジティブなものに変われば、人材不足の問題はガラッと改善するはずです。政府も工場のイメージアップ戦略に積極的イメージアップ戦略によって人手不足問題を解決するにあたり、求職者への十分なアピールが大事。政府の「ものづくり白書」においても、【ものづくり人材の確保と育成】をモノづくり産業の大きな課題として挙げてます。その課題の打開策として政府は、①「専門的な技術を学べるポリテクカレッジ(職業能力開発大学校/職業能力開発短期大学校)のカリキュラム見直し」②「ものづくりマイスターと連携したモノづくりの魅力を発信するイベントの実施」③「女性技術者の育成」(※)などを挙げています。(※)モノづくり業界への女性進出“男くさい”印象を持たれがちな製造業ですが、近年は「理系女子(リケジョ)」が積極的に支援されてます。中部経済産業局は、ものづくり女子の活躍応援サイトを運営。製造業に携わる女性のPR活動を行ってます。日本の工場における人手不足問題への本質的な対策工場の人手不足問題を解決するにあたり、若者の工場に対するイメージアップを推し進めることが重要。要するに、工場に対するイメージを、①3K(きつい・汚い・危険)とは無縁②給料は意外と高い③休日は意外と多い④専門知識をしっかり学ぶと大企業以上にキャリアが安定 する⑤上司や先輩は優しくてイイ人 ⑥根性論ではなく、無理なく効果的な育成プラン でレベルアップできる⑦社会的ステータスが高い⑧実は異性にものすごくモテる といった風に、ポジティブなものに変えてゆく必要があります。具体的なイメージアップ戦略上記8つの素晴らしいイメージを若い人たちに伝えるために、「何をするべきか?」という疑問に対する回答は様々ですが、【積極的にメディアに露出】するのも得策と言えます。我々“Mitsuri”をはじめ、工場の魅力を最大限アピールするWebメディア がいくつか存在します。それらのWebメディアでは、アナタの工場の魅力を大量の求職者に向けて無料で効果的に宣伝できるのはもちろんのこと、競合する工場の魅力を分析する際にも役立ちます。Webメディアを積極的に活用することは、工場の人手不足問題の解決 に向けた“大きく確実な一歩”と言えるでしょう。

  • 溶接の知見を得よう【10の基本知見】知らないと恥ずかしいかも?基本質問集

    【5分でわかる】溶接記号の見方、書き方溶接記号の見方、書き方について動画でも解説しています!噛み砕いて解説しているので、ぜひ参考にしてください!Youtubeにて、金属加工Mitsuriチャンネルを運営中!こちらからご覧ください!溶接の知見には様々なものがありますが、その中でも必須の知見を「10の必須知見」としてまとめました。未経験者からベテランまで、溶接に関する有意義な情報を質問形式でご紹介しています。溶接の知見「10の必須知見」溶接に関する必須知見として10個挙げます。いずれも溶接関係者にとっては必須の重要な知見です。溶接の必須知見Q1. 溶接とは?Q2. 溶接工の平均給与はいくら?Q3. 溶接機にはどんなものがあるのか?Q4. アーク溶接とは?Q5. 溶接記号とは?Q6. 溶接面(マスク)を選ぶときのポイントは何?Q7. 溶接に関する資格は何があるのか?Q8. 溶接にはどんな種類があるのか?Q9. 溶接ビードとは?Q10. レーザー溶接のメリットとデメリットは?必須知見Q1. 溶接とは?溶接とは接合部が連続性を持つように、熱や圧力を加えて部材を接合することを言います。必要があれば溶加材を加えます。コラム 溶接の歴史金属接合(溶接)において、最も古い歴史を有しているのは「鍛接」です。約3000年前の時点で、金属同士をハンマーでたたけば接合すると認知されていました。古代エジプト王のツタンカーメンの棺は紀元前1350年ごろに埋められたとされていますが、棺の中から鍛接された鉄製の装飾品が見つかっています。必須知見Q2. 溶接工の平均給与はいくら?溶接工の平均月収は約33万円程度で、日本人全体の平均給与のやや上です。年代別に示すと、溶接工の平均給与未経験者の初任給15万円~20代25万円30代35万円40代40万円必須知見Q3. 溶接機にはどんなものがあるのか?IMAX60(アイマックス60)画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html初心者向け直流アーク溶接機でインバーター制御。手軽さは抜群、アークスタートも優良です。趣味で簡単な鉄製品を作ってみたい人向け。スキル次第ではフェンスや門扉も作成できます。専用溶接棒を使うことでステンレスも加工可能。薄物の板金加工には間違いのない製品です。IMAX120(アイマックス120)画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html中級者向け直流アーク溶接機でインバーター制御です。アークスタートはスムーズ、アークは安定しており使い勝手は抜群です。100V/200Vどちらでも使用可能です(入力電圧を感知して自動で切り替わります)。100V・15Aコンセントでも使用可、板金の厚さは0.8mm~3.0mmまで可能です。VICTRON130(ヴィクトロン130)画像引用元:http://www.welder.co.jp/first/s1_3.html上級者向けバッテリー内臓のアーク溶接機でプロフェッショナル仕様です。重さはわずか34kgで、作業場での移動も楽にできます。必須知見Q4. アーク溶接とは?図1:アーク溶接とは アーク溶接は最もメジャーな溶接方式です。①溶接機本体から伸びているトーチにアーク溶接棒を取り付け、②溶接したい箇所にコツコツと当てるとアークスタートするシンプルな手順です。アークスタートの際、溶接棒が母材にくっついてしまうことがあり、初心者にはやや難しいです。溶接の際、母材だけでなく溶接棒も一緒に溶かして溶接する場合は、溶接棒が溶けるたびに交換しなければなりません。アーク溶接のメリット・デメリットメリット①ガスを使わないので風の影響を受けない②ケーブルを延長すれば動かしやすい③屋外での作業にも強い④鉄骨溶接や重機の修理にも良い⑤ボルトとナットの永久接合(溶接止め)にも最適⑥溶接機本体は安価で小型なものが多い⑦ホームセンターなどでも溶接機が売ってるデメリット①厚板を溶接する際は家庭用100Vでは厳しい②薄板を溶接するのは難易度が高く、穴が空いてしまうことも多々③溶接後にはフラックス(黒い残りカスのようなもの)が付着しており、剥がさないといけない④仕上がりが美しくない参考:アーク溶接【基礎】種類と原理!電圧設定・温度分布まで詳細解説必須知見Q5. 溶接記号とは?▲図2:溶接記号の一覧表例 ▲図3:溶接補助記号の一覧表 ▲図4:非破壊検査の記号一覧表  上記の溶接記号は頻繁に用いられる重要項目です。基本知識としてすべて暗記しておくのが望ましいです。参考:溶接記号の一覧【基礎講座】溶接指示を徹底理解!種類と書き方をマスターしよう【質問6】溶接面(マスク)を選ぶときのポイントは何?手持ち型溶接面画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3昔ながらの溶接面です。手持ち溶接面は自動遮光面に比べると圧倒的に安いのですが、両手を使えないため不便です。装着が遅かったり溶接面を丁寧に顔に当てないと、光が目に入る危険性もあります。通常は外側から、素ガラス・遮光ガラス・素ガラスと3枚並べて使用します。外側の素ガラスがスパッタで汚れたら捨てて、内側の素ガラスを外側に装着すれば安上りです。かぶり型溶接面画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3自動遮光面よりも遥かに低価格、両手を使えるのも便利です。初期コストを低くしたい人にオススメです。デメリットは、スパッタによって素ガラスが汚れることです。素ガラスが汚れると交換しなければならず、そのたびにコストが発生します。自動遮光面(ヘルメット取付型・キャップ型)画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3主に自動遮光面に実装されているのは、①明るさを変化させる液晶フィルターと②アークの点滅を検知する光センサです。液晶フィルターは、アーク点灯時に暗くなり、アーク消灯時に明るくなります。視界の明るさを自動的に調整してくれるのが特徴です。手持ち型の溶接面と異なり、作業中常に両手が空きます。 ※自動遮光面には2種類あります。ヘルメットに取り付けるヘルメット型、直接被るキャップ型です。状況によって使い分けましょう。溶接用ゴーグル画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3自動遮光面よりも軽量で、種々のヘルメットと合わせて使用できます。メガネの上からも着用可です。欠点はやや高価なところが挙げられます。 革製遮光面画像引用元:https://www.bildy.jp/mag/weldingmask/#3革製の遮光面は、安価で折りたたんでコンパクトに収納できるメリットが人気です。その一方で、蒸れたり革独特の匂いがしたり、などのデメリットもあります。 必須知見Q7. 溶接に関する資格は何があるのか?溶接に関する資格として有名なものは以下の8つです。溶接の資格①ガス溶接技能者易ガスバーナーを用いて金属を接合するガス溶接を行う際に必要な国家資格です。この資格があることで、初めてガス溶接を行えます。②ガス溶接作業主任者難ガス溶接を行う際、主任として作業スケジュールを決定し、ワーカーに指示を出すための国家資格です。ガス溶接技能者の上位に位置づけされる資格で、実務経験3年以上で受験できます。③アーク溶接作業者易放電現象(アーク放電)を利用して金属をつなぎ合わせる「アーク溶接」を行うために必要な国家資格です。ガス溶接は3,000度ほどの炎を扱うのに対し、アーク溶接は約4,000度です。溶接する部材によって工法が異なります。④アルミニウム溶接技能者普通アルミニウム合金の溶接を行う専門的な知識と技能を認定する民間資格です。アルミニウム溶接は、ガス溶接やアーク溶接よりも難易度が高めです。アルミニウム溶接は自動車関連の現場などで需要が増えており、キャリアを安定させるという面でも有利な資格と言えます。⑤PC工法溶接技能者普通PC(プレキャスト鉄筋コンクリート)工法溶接の技能を認定する民間資格です。コンクリート組み立て建築の溶接現場で活かせます。⑥ボイラー溶接士難ボイラーの製造・改造・修理などの溶接が可能になる民間資格です。1年以上の溶接経験(ガス溶接など一部を除く)があれば受験できます。普通ボイラー溶接士、特別ボイラー溶接士の2種類あります。特別ボイラー溶接士は、普通ボイラー溶接士免許を受けた後、1年以上ボイラーなどの溶接実務があれば受験できます。⑦溶接管理技術者難溶接のスキルと知識だけでなく、施工計画や作業管理能力を有する技術者を認定する民間資格です。溶接技能者の上位資格とされており、官公庁からの工事受注に必要な資格です。特別級、1級、2級の3段階のレベルがあります。⑧溶接作業指導者難指導者的な役割を担う、溶接作業者を認定する民間資格です。溶接部門の班長、溶接工事の現場監督など、溶接作業者や溶接管理技術者に指示を出す重要ポジションを担います。参考:【溶接の資格】種類一覧!費用と取り方&難易度別!プロの溶接工が取っておくべき資格」必須知見Q8. 溶接にはどんな種類があるのか?   溶接は、融接・圧接・ろう接の大きく3種類に分かれます。(1)融接融接は、母材の溶接したい部分を加熱して、母材のみもしくは母材と溶加材(溶接棒)を溶かして接合する溶接です。参考:融接とは?代表的な種類とメリット・デメリットを解説(2)圧接圧接は、機械的な圧力を接合部に加えて接合する溶接です。参考:圧接とは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説(3)ろう接「ろう」と呼ばれる母材よりも融点の低い金属の溶かし、接合面のすきまに流し込んで接合する溶接です。・硬ろう(融点高め)を用いる:ろう付・軟ろう(融点低め)を用いる:はんだ付の2種類があります。参考:ろう付けとは?代表的な種類や特徴、メリット・デメリットを解説必須知見Q9. 溶接ビードとは?「溶接ビード」とは、溶接後の接合部が“みみず腫れ”のようになった箇所を言います。ビードを適切にカット処理することで、製品の見栄えが良くなります。世の中にはビードマニアと呼ばれる、ビードの美しさに魅せられた人たちすらいます。必須知見Q10. レーザー溶接のメリットとデメリット近年、脚光を浴びているレーザー溶接のメリットとデメリットを以下にまとめました。レーザー溶接メリット①歪(ひずみ)が少ない⇒他の工法よりもピンポイントで加熱できるため、短時間で接合可能②光が熱源⇒電流、電圧、磁力などで、製品がダメージを受けにくい③微細な加工⇒他の工法では困難な微細加工も可能④異種材料間の溶接⇒融点の異なる異種材料の溶接が他工法と比較的容易にできる⑤非接触加工ができて、電極をメンテナンスしなくてよい⇒TIG溶接や抵抗溶接ではメンテナンス必須⑥分岐できる⇒レーザ溶接機が1台あれば、複数台の自動機に対応できるデメリット①溶接箇所の精度管理が必要⇒接合部の合金層にブローフォールやクラック等の溶接欠陥が発生しやすい②安全対策を十分に行わないと危険⇒日本工業規格「レーザ製品の放射安全基準」JIS C 6802を推奨まとめ溶接に関する10の知見をまとめました。未経験者はもちろん、ベテランさんも基本知識の確認に本記事をご利用ください。① Mitsuriでのお見積りは案件を公開して待つだけ!② 複数のお見積りが届く! ⇒金額重視or納期重視?ニーズに合うものを選べる!③ 案件の5割以上が1日以内に見積りを取得!溶接のご依頼にお悩みの方は、一度Mitsuriまでご相談ください。下の赤いボタンをクリックして、お気軽にお問い合わせください。

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    【テスト】綾瀬市に行ってきました。

    トップ画像引用元:綾瀬市はじめに先日、日刊工業新聞に次のような記事が載っていました。「町工場競う技能五輪 神奈川・綾瀬市が来月開催」神奈川県綾瀬市で、市内町工場の若手技能者育成を目的とした技能競技大会「あやせ技能五輪」が開かれる。自治体が中小製造業向けの技能大会を主催するのは珍しい。初開催となる今回は溶接作業の技能者を対象に行う。大会の模様は動画共有サイト「ユーチューブ」の市専用アカウントで後日発信する。日ごろ磨いてきた技術力を披露する機会を提供することで若手技能者のモチベーション向上を図り、市内製造業の活性化につなげる。引用元の記事にも書かれていますが、自治体が中小企業向けの技能大会を行うのは珍しいです。調べてみると、綾瀬市に関連した製造業関連企業のメディア掲載もとても多いことにも気がつきました。なぜなんだろう?綾瀬市の取り組みを聞いてみたくなり、訪問させていただきました。引用元:綾瀬市綾瀬市の工業の概要https://www.city.ayase.kanagawa.jp/hp/page000017400/hpg000017338.htm綾瀬市の工業は自動車関連産業が主力であり、2006年の工業統計表(経済産業省発表)をみると、本市における輸送用機械器具の製造品出荷額は、神奈川県内で4位、全国でも43位であることが分かります。 しかしながら、立地企業の大部分が資本金3億円以下及び従業者300人以下の中小企業であり、中でも従業員20人以下の小規模零細企業が多く、今後も県内上位の工業集積を維持しつつ、更なる成長を続けるためには、販路拡大や研究開発力など経営基盤の強化が重要な課題となっています。 そのため、市では平成22年12月に学識経験者・市内工業団体代表者・市内主要企業・関係行政機関等との協働により、今後10年間の本市工業の成長戦略を掲げた「綾瀬市産業振興マスタープラン」を策定しました。 同プランでは、綾瀬市工業の将来像を「持続可能な社会を支える創造的ものづくりネットワーク都市」と設定し、その具現化に向けた主要施策として、「ネットワークづくり」「産業の高度化と新産業の創出」「人材育成」「企業誘致」を掲げています。詳細については、下記関連リンク「綾瀬市産業振興マスタープラン」をご覧ください。工業都市を目指している。「あやせ工場プロジェクト」「綾瀬市工業施策の方向性 ~made in ayase・あやせ工場プロジェクト~ 」ものづくり技術の継承や経済状況による経営難といった問題を抱えつつも、今後の積極的な事業展開(下請けからの脱却等)を図っていきたいという意欲をもった中小企業の「競争力の中核となる独自の技術の活用、高度化、設備導入等の取り組み」に対して、アドバイスやマッチング、更には財政支援などの工業支援サイクルによって総合的な支援を行い、不況や経済事情に左右されない地域企業を育成し、made in ayase 製品を創出していきます。市内企業向け直接支援:1. 事業拡大の支援2. 技術の高度化・高付加価値化への支援3. 技術を活かした販路拡大支援4. 競争力のある技術への支援5. 新規創業・二次創業の支援6. 技術や企業集積を生かした新分野の進出市内企業向け間接支援:1.工業ブランド化支援2.企業間・地域連携3.就労対策様々な支援策が打ち出されていて、本年度に立ちあげたものだけで、10施策。その中の1つが「あやせ技能五輪事業」だったのですね。どの施策も興味深く、取り上げてみたいのですが、ここでは全体の方向性を紹介するにとどめます。綾瀬市工業の将来像:持続可能な社会を支える創造的ものづくりネットワーク都市具体的には、・綾瀬市が一つの工場となり、既存の工場が事業所となる、エコシステムの構築を目指している。あやせ工場『あやせ工匠塾』https://www.city.ayase.kanagawa.jp/hp/page000031500/hpg000031413.htm綾瀬では積極的に、ロケ地 リンク「空飛ぶタイヤ」動画:メイドインあやせ、早く手に取ってみたい。

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    【板金加工 切断】せん断やシャー切断などの切断加工を専門家が解説!

    板金製品の完成には、材料、図面、加工(機械)の3つが欠かせません。今回は板金加工で使用される加工について解説します。板金加工には、大きく分けて切る、曲げる、作るという加工方法があります。その中で、今回取り上げるのは切る(切断)です。板金加工ではせん断という加工方法があります。せん断と切断は近い概念ですが、違いも存在します。・では、両者はどのように違うのでしょうか。・また、せん断にはどのような特徴があるのでしょうか。この2点に着目し、以下、順を追って見ていきたいと思います。切断とせん断切断とせん断は、板材を切るという意味では同じ加工です。しかしながら、切断にはさまざまな方法があり、せん断は切断の中の一領域にすぎません。切断加工には、機械的に切削したり、熱的溶断(レーザー切断を含む)などによる除去切断と、引張り、曲げ、せん断といった破壊切断の2つがあります。今回取り上げるせん断加工は、破壊切断(非除去切断)に分類されます。ただし、せん断加工は単に板材を切るということにとどまりません。以下の図を見てください。せん断加工には、以上の5つの加工があります。それぞれの加工についての解説は別の機会で行うこととして、本記事では切断的加工について考えていきます。せん断加工とはシヤーせん断(英:shear)は、1909年にイギリスから平行刃せん断機(ギロチンシヤー)が日本に輸入され、シヤーによる加工が始まりました。日本のせん断加工は、100年以上の歴史を持っています。現在では、全工程を自動化したオートシャーまで登場しています。引用元:AmadaCompanyシヤーは金属のみならず、紙や、樹脂など様々な素材の加工にも利用されています。板金加工において、シャーはブランク加工で使用されます。ブランク加工とは、定尺材から必要寸法に切断してブランク材をつくりだす加工のことを指します。このブランク材に穴あけ、切り抜き加工後、曲げ工程を経て、溶接工程、組立工程を経て、板金製品が完成するわけです。ブランク材とはシリーズの第2回「板金加工、材料の基礎」で、板材がどのように作られるのかについて言及しました。この板材が成形された後に、製品にあった大きさに切断するせん断加工が行われるのは、上で述べた通りです。板金加工やプレス加工では、加工品を連続して高能率で製作します。したがって、同じ形状の金属板が必要になります。この同じ形状の金属板のことをブランク材と呼び、ブランク材を作る金属加工をブランク加工といいます。コイルや切り板などの金属素材からブランク板を切り出すブランク加工は、金属加工にとって非常に重要な工程です。単に加工素材としてのブランク板を安定して採取するのみならず、金属素材からできるだけムダなくブランク板を採取する必要もあるからです。ムダなくブランク板を採取ために、ブランク加工設計を考えなければなりません。せん断加工の原理せん断加工とは、一対の工具(パンチとダイ)により材料にせん断変形を与え、所望の形状や寸法に材料を分離する加工のことをいいます。引用元:モノタロウ加工の原理は、材料を接近した位置で、直角方向にお互いに逆方向の力を加えて割る点にあります。シヤーによるせん断の場合、パンチは上刃、ダイは下刃となります。下刃を固定刃にして上刃を可動させて板材をせん断するのが一般的です。上刃は板材面に対して刃を傾けて切り込むようにします。この傾きのことをシヤー角と呼びます。シヤー角は重要な概念ですので、そのメリットとデメリットについて、以下で確認してみたいと思います。シヤー角とはせん断をする際に、シヤー角を設けることでせん断力の軽減や長い板材を加工することが可能になります。シヤー角は薄板の場合は小さく、厚板の場合は大きく取ります。シヤー角を小さく設定することで、以下で述べる不良現象を軽減することができます。そのため、近年はシヤー角を小さく取る傾向にあります。ただし、ブレードの形状によってはシヤー角を落としすぎると上刃の下面で圧縮が生じて、板材上面が変形することがあります。また、せん断力が大きくなることから機械剛性を大きくする必要もあります。・板厚に対するシヤー角の標準値出典:遠藤順一編著『板金加工大全』日刊工業新聞社、2017年、60頁また製品精度とシヤー角は大きく影響します。以下で、JIS B0410で規定されている金属板せん断加工品の普通公差を示しておきます。JISや普通公差(公差)については、「板金加工、図面の基礎」をご覧ください(以下の3つの図はすべてkikakurui.comからの引用です)。・切断幅の普通寸法許容差引用元:kikakurui.com切断幅とは、シャーの刃で切断された辺とその対辺の距離のことをいいます。 切断長さとは、シャーの刃で切断された辺の長さのことをいいます。・真直度の普通公差引用元:kikakurui.com真直度とは、切断された辺の刃当たり部分の、幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさのことをいいます。・直角度の普通公差引用元:kikakurui.com直角度とは、長辺をデータム形体とし、データムに対して直角な幾何学的平面からの短辺の刃当たり部分の狂いの大きさのことをいいます(以下の図のf部分)。引用元:有限会社長井技研真直度や直角度を理解するためには、前回触れることのできなかった幾何公差の理解が不可欠です。データムも同様です。この点については、別記事で考察することとします。不良現象(ひずみ)シャー角は、板材に不良現象(ひずみ)を生じさせるというデメリットもあります。不良現象にはボウ、キャンバー、ツイストの3つがあります。①ボウ(反り)ボウとは、切り落とされた板材に発生する現象で、板厚方向に湾曲が生じるものです。一般的に、シヤー角を小さくすればボウの値は小さくなります。また、幅と板厚にも関係し、せん断幅が板厚の10倍以上になるとボウの発生が少なくなります。②ツイスト(ねじれ)ツイストとは、切り落とされた板材に発生する現象で、製品にねじれが生じるものです。ツイストはシヤー角が大きいほど大きくなります。また、せん断幅が小さくなると大きくなります。一般的には板厚の20倍以上のせん断幅があればねじれ発生による精度への影響を考慮しなくてよいとされています。③キャンバー(曲がり)キャンバーとは、断面がせん断幅に円弧状(扇形)に湾曲する現象です。一般的には板材の材質と残留応力が大きく影響します。せん断時には材料の残留応力が開放され、キャンバーが発生します。キャンバーの量はせん断幅に大きく影響します。切断加工についてわかったところで、・具体的に費用はどれくらい掛かるのか・納品まで期間はどれくらい掛かるのかなどについて気になる方もいらっしゃると思われます。そんな時はMitsuriにお任せ下さい!上・下刃のクリアランス(隙間)クリアランスの基本的な考え方続いて、クリアランスについて見てみたいと思います。せん断の場合、クリアランスは上刃と下刃の隙間のことを指します。クリアランスの設定はとても重要です。なせなら、クリアランスは、製品精度、せん断精度、断面の良否、刃物の劣化(寿命)と影響が多岐にわたるからです。・上刃が下降すると上下刃の間にある素材は圧縮力を受け(ダレの原因)、側面にある素材の表側面は引張りを受けます。・さらに下降すると上下刃は素材に食い込み、素材に対してせん断応力が生じ、すべり変形が生じます。せん断応力とはパンチに荷重(W)を加えると、材料の断面にずれようとするせん断力が働きます。材料のせん断強さ以上の力が加わると、材料内部ですべりが生じて、材料が打ちぬかれます。荷重(W)を受ける断面積(A)で割った値を「せん断応力」(T)といいます。 せん断応力(Τ)=荷重( W)/断面積(A) でせん断応力を計算することができます。これは平均せん断応力の算出方法で、実際に発生する最大せん断応力とは異なるので注意が必要です。せん断による変形が大きくなると上下刃の刃先付近から亀裂(割れ)が発生します。上下からの割れが結合すると素材が分離され、せん断加工の過程は終了します。ここで、素材を切断することができたというわけです。この際に、適切なクリアランスが設定されていないと上下の割れはうまく結合せず、クラックが製品内部に残ってしまいます。このクリアランスの設定の良否は、製品断面に現れます。クリアランスは一般にダイとパンチの片側の隙間をいいますが、前後左右が対象なNCタレットパンチプレスなどの金型の場合はは、ダイとパンチの差(両側の隙間)をいうこともあるので注意が必要です。クリアランス設定とせん断面の関係①クリアランスが適正の場合上下からのワレが適正に結合され、上下刃が食い込んで発生したせん断面と、割れによって発生した破断面が直線的につながっている場合、適正となります。②クリアランスが過小の場合クリアランス過小の場合、割れが行き違いになった後で結合します。素材の中央部に残された部分が上下刃で削られたり、せん断されることを、2次せん断といいます。素材中央付近にブツブツとした凸凹のような面が発生していると、クリアランスが過小であると判断できます。③クリアランスが過大の場合クリアランス過大の場合、ダレが大きくなり、素材に対して内面の引張力が大きくなり亀裂が早く発生するため、せん断面が小さく、破断面が大きくなります。引用元:有限会社長井技研「精密板金wiz」④シヤーにおけるクリアランス設定の基準以下で、既に取り上げた代表的な素材(材料)のクリアランス設定の目安を示しておきます。材質鋼板ステンレスアルミ合金SPCC,SGC,SPHC,SSSUS304,SUS430A1050P,A5052Pクリアランス%14~2216~2412~18引用元:村田ツール株式会社「板厚に対するクリアランスの割合<目安>」せん断面の形状以下でせん断面の形状を示しておきます。引用元:有限会社長井技研「精密板金wiz」だれ:刃物が食い込み圧下した表面部。せん断面:工具が食い込んだ部分。刃の側面で擦れて光沢がある。破断面:割れが発生して破断した部分。かえり(バリ):破断の端が残った部分。せん断面は重要な面で、せん断精度における寸法精度はこの面で決まります。まとめ いかがだったでしょうか。 板金加工の基本的な加工である切るにも様々な種類があることを理解してもらえたかと思います。また、切るの一種でしかないせん断がとても込み入った内容を持っていることもまた理解してもらえたかと思います。実際にせん断をしながら、理論を覚えていくことをおすすめします。現在では、個人でも手に入るような加工機械も登場しています。引用元:Sunhayato

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    板金加工とは何か?

    様々な角度から板金加工を見よう!Mitsuri編集部では、「ゼロからわかる!板金加工!」シリーズを連載しています。第1回では、「板金加工、基礎の基礎」と題して板金加工の全体像を俯瞰(ふかん)しました。そこでは、主として板金の加工方法に焦点を絞って解説をしました。しかし、実際の現場では加工方法というよりも、むしろ製品の完成に重きが置かれることが少なくありません。加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。 実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。  引用元:「板金加工、基礎の基礎」そこで、是非参照していただきたいのが、Mitsuriの兄弟サイトであるFabitの「板金加工とは何か?」の記事です。同記事では、Mitsuri記事で取り上げていない、以下のトピックについて解説しています。・手板金加工(手加工板金)・プレス加工・接合加工・手板金加工では、絞りや打ち出し加工などを解説しています。・プレス加工では、順送プレスやトランスファープレス、タンデムプレスを解説しています。・接合加工では、機械的、冶金的、そして接着的接合法を解説しています。 Mitsuriの「ゼロからわかる!板金加工!」シリーズとあわせて読んでいただけると、グッと理解が深まるはずです。Fabitとは?Fabitは、「日本一わかりやすい製造業紹介メディア」です。当メディアは製造業にスポットライトを当てて、今まで交わることのなかった工場と工場、工場とヒトが交わることにより、新しいイノベーションが生まれることを目指しています。  引用元:FabitとはMitsuriに興味を持っていただけた方は、是非Fabitもご覧ください。・Fabitでは、無料で簡単に工場を掲載することができます。・また、製造業・メーカーのことがわかる記事も掲載しています。Mitsuriと共に、Fabitもご愛顧いただけると幸いです。以上、Mitsuri編集部からでした!

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    第2回 板金加工、材料の基礎

    本シリーズは、板金に関する知識がゼロでも、読み進めていくことで、板金加工の理解が身につくことを目標にしています。対象とする読者は、知識ゼロのあなたです。板金製品の完成には、材料、図面、加工(機械)の3つが欠かせません。 シリーズ第2回目の今回は、板金加工で使用される材料について解説します。第1回で確認したように、板金加工は、金属の板材を加工するところから始まります。・では、板材はどのように作られるのでしょうか。・また、板材にはどのような種類・特徴があるのでしょうか。 この二点に焦点を絞り、以下、順を追って見ていきたいと思います。板材はどのようにつくられるのか。1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼・製鉄 鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。・銑鉄 この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。 ・鋼この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。・製鋼この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。引用元:中部鋼鈑株式会社2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延)製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。これが圧延加工の工程になります。一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。  引用元:日本冶金工業株式会社圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延)板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。このような薄板は冷間圧延によってつくられます。 冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。)また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。引用元:中部鋼鈑株式会社黒皮材とみがき材熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。 黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。 これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。板材を俯瞰(ふかん)する 1. 板材の種類 板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。 ・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。 ・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。  2. 板材の寸法、形状 板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク)1219×2438mm(4×8、シハチ)1524×3048mm(5×10、ゴトー) ・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。材料の特性 さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。 1. 炭素量で鉄の性質をコントロール 鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。) 2. 炭素量による性質の各特長 (1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。 (2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。 (3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。 (4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。 (5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。 3. 主要な5大元素 鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。 ・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。 以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。炭素鋼と合金鋼の区分け鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいますこれに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。 1. SPC材(冷間圧延鋼板) (1)概要: ・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。 (2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。(3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。 2. SS材(一般構造用圧延鋼材)(1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。(2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。(3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。内部応力とは内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。合金鋼炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。  SUS材(ステンレス材)(1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。①SUS304(18-8系ステンレス)ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。②SUS303(18-8系ステンレス)先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。SUS304と同じく非磁性です。非鉄鋼材料  1. アルミニウム鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。 「電気の缶詰~アルミニウム~」 概要奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。出演者名・所属機関名および協力機関名佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション引用元:サイエンスチャンネル2. アルミニウムの特徴アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。(1)軽さ:アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。(2)強さ:アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。(3)加工性:切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。(4)耐食性:ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。(5)導電率:電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。 (6)熱伝導率:熱伝導率は銀と銅についで高いです。(7)耐熱温度:アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。(8)光沢と非磁性:光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。3. 銅と銅合金銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。4. 銅の特徴銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。(1)導電率:銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。(2)熱伝導率:熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。(3)加工性:大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。(4)耐熱温度:200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。(5)耐食性:耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。(6)光沢:金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。(7)非磁性:非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。 5. 銅と合金銅の種類生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。(1)純銅純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。(2)黄銅(真鍮)黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。6. その他の非鉄金属材料チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。まとめ本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。

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    【板金加工】専門家が教える板金加工の「特徴・種類・材料」について!

    板金加工とは何か、という問いに答えることは決して簡単ではありません 。というのも、板金と呼ばれる業界や加工内容はとても広く、また関係する作業はそれぞれ独立し、複雑に絡み合っているからです。とはいえ、板金を無視することも簡単にはできません。なぜなら、私たちの生活は板金加工によってつくられた製品なしでは成り立たないからです。身の回りを見渡してみてください。スチールの机、ロッカー、書庫、キャビネット、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン、テレビ・・・。これらの製品には、ほとんど板金が使われています。そんな日常の中にも溶け込んでいる、板金加工とはどのようなものなのでしょうか?板金加工の特徴や種類、または材料まで専門家が徹底解説致します!板金加工とは?板金加工は、一般に金属の板を切ったり、曲げたりすることで製品をつくる加工方法のことをいいます。ここでは、板金の加工方法にこだわり、以下の定義を採用してみたいと思います。板金加工とは 、 金属加工の一分野である塑性加工の一領域で、 主として板材を切断、 抜きおよび曲げなどにより、 さまざまな形状(部品・製品)を作り出す加工方法である。 少し難しい定義ですが、一つずつ紐解いていきます。 金属加工とは金属加工とは文字通り、金属を材料として加工する分野のことを指します。 金属加工で使用する材料には、鉄鋼材料、アルミニウム系材料、銅系材料などがあります。これに対して、非金属加工で使用する材料には、プラスチック材料やセラミック材料などがあります。材料については、第2回の「板金加工、材料の基礎」で解説します。塑性加工とは塑性加工を理解するには、弾性変形と塑性変形という概念が欠かせません。 ・弾性変形とは材料に一定の力を加えると形が変形しますが、加えた力を取り去ると元に戻ることがあります。 これを弾性変形と言います。 ・塑性変形とはこれに対して、材料に一定以上の力を超えると力を取り去っても変形が残ります。このようにして起きた変形を塑性変形と言います。この塑性変形を利用した加工方法を塑性加工と呼びます。板金加工で行う、切断、抜き、曲げは、いずれも塑性加工に当たります。 板金加工と他の塑性加工との違い板金加工以外の塑性加工に、圧延、転造、押し出し・引抜き、鍛造、プレスなどがあります。板金加工と他の塑性加工との違いはあいまいといわれますが、それぞれの加工の概略を見ておくことはとても有益です。以下、簡単に見てみましょう。①圧延加工 回転するロールの間に材料を通すことで、ロールのすき間量まで薄くする加工方法です。圧延加工は平板だけではなく、さまざまな形状の成形も可能です。 この圧延加工によって、板金加工で使用される板材が成形されます。引用元:モノタロウ②転造加工丸い工作物を工具(ダイス)に強い力で押し付けながら回転させることで、工作物の表面をダイスの逆形状に成形する加工方法です。ねじや歯車はこの転造で加工されています。引用元:ユニオンツール株式会社③押し出し・引き抜き加工 押し出し加工とは、ほしい断面形状の穴のあいたダイスに材料を通すことで、長尺の製品をつくる加工です。レールやフレームなどはこの加工方法でつくられています。このダイスへの材料の通し方によって「押し出し加工」と「引き抜き加工」が区分されます。ⅰ. 押し出し加工 は、コンテナと呼ばれる筒状の容器に入れた材料に、力をかけてダイスから押し出すことで、ダイスにあいた穴形状の断面を持った形に成形する加工方法です。ⅱ. 引き抜き加工は、先の押し出し加工や圧延加工した材料を使用し、材料の先端を細めてダイスの穴に通してから、この先端をつかんで引っ張ることで、ダイスの穴形状に成形する加工方法です。引用元:東大阪市技術交流プラザ④鍛造鍛造は「鍛え造る」と書くように、ハンマやプレス機で金属に大きな力を加えることで成形すると同時に、金属組織の密度を高める加工方法です。板金加工は、基本的に板厚を変化させませんが、鍛造は厚さを変化させるという点で違いがあります。⑤プレス板金加工と他の塑性加工との区別はあいまいである、といいました。学会や業界団体、企業や製品などによって、区分がさまざまなのが実情です。このような事態に陥っている理由の一つに、全く同じ製品であっても、異なる加工方法によって作ることが可能である、ということが挙げられます。とりわけ板金加工とプレス加工は重なるところが多く、はっきりと区別するのは困難です。ただ、本記事では両者の強み、弱みに着目して、区別して考えてみたいと思います。この点については、後述の 「板金加工の特徴」で考察します。また、加工方法ではなく、製品の完成に焦点を当てて、板金加工と呼ぶ場合もあります。実際の製造現場では、塗装や溶接、組立まで行い、完成品を出荷することがあるためです。本連載では、塑性加工としての板金加工について解説することに止めます。以下の動画では溶接まで踏み込んでいますが、板金加工の全体像をつかむ上で、有益です。是非視聴してみて下さい。 金属板でストーリーを組立てる~板金加工~ 概要モノづくりの現場で磨きをかけるその道の熟練者を追うドキュメンタリーシリーズ。埼玉県所沢市にある竹下工業では主に事務機器・空調機器・医療機械・配電盤などの筐体ならびにその部品を製作しています。板金加工は、機械化の進んだ分野で、レーザーカットマシンによる金属の板材を切断加工、タレットパンチプレスによる穴あけ加工、ベンディングと呼ばれる曲げ加工を施し、必要な箇所を溶接するというように、今や自動化・管理されています。番組では、熟練技能者の技が求められる溶接工程の技の魅力を紹介します。 出演者名・所属機関名および協力機関名> 竹下 力(竹下工業㈱),竹下 祐司(竹下工業㈱),今井 繁(竹下工業㈱),玉井 今朝治(竹下工業㈱),西村 幸弘(竹下工業㈱),高塚 正也(㈱青二プロダクション),竹下工業㈱引用元:サイエンスチャンネル板金加工の中身ここまで、金属加工における板金加工の位置づけについて確認してきました。ここから先は、板金加工の具体的な中身を見ていきたいと思います。板金加工は、手加工板金と機械板金(工場板金、精密板金)の2つに分類することができます。手加工板金とは 手加工板金は、その名が示す通り、主に人間の手の力を使用する加工方法です。手加工板金には、自動車板金 、 打ち出し板金 、 建築板金があります。 これらの板金で使用する道具を見てみると、板金加工が従来、手加工で行われてきたことがよくわかります。・手加工板金で使用する道具引用元:Tech Note「試作車ボディの板金職人、13種類の道具をどう使い分けるのか?」画像引用元の記事は、自動車板金についてかかれたものですが、とても内容の濃い記事です。一読をお勧めします。機械板金とは 手加工板金に対して、機械を使用する板金加工方法を機械板金とよびます。機械板金は、機械を使用するためには一定以上の敷地、つまり工場が必要であることから工場板金 、また機械によって精密な加工を実現できることから精密板金とも呼ばれます。機械板金による加工方法では、機械板金によってどのような加工が実現できるのでしょうか。機械板金には、切断加工、打ち抜き加工、曲げ加工、成形加工、絞り加工、特殊加工などの加工方法があります。これらの加工方法については、別の記事で詳しく解説します。切断加工にはレーザーマシン、抜き加工にはパンチングプレス、曲げ加工にはベンディングマシン、というように加工方法毎に対応した機械があります。本記事では、主に機械板金を取り上げ、手加工板金は別の連載で取り上げることとします。板金加工の特徴先に述べたように、板金加工(機械板金)とプレス加工は重なるところが非常に多いため、はっきりと区別できないとされています。企業内でも板金加工とプレス加工を区別しないところが増えてきています。しかしながら、ここではあえて板金加工とプレス加工を区別し、その相違について考えてみたいと思います。というのも、両者の相違に着目することで、板金加工の特徴が明確になると考えるからです。以下、見ていきたいと思います。プレス加工との違い 一般的に、板金加工とプレス加工の相違は、金型に集約することができます。板金加工が汎用金型(標準金型)を使用するのに対して、プレス加工は専用金型を使用します。日本金型協会では、以下のように金型を定義しています。金型とは、材料の塑性または流動性の性質を利用して、材料を成形加工して得るための、主として金属材料を用いてつくった型を総称します。例えば、自動車のボディーは金属板をプレス金型によって成形加工することによって出来上がります。また、電話機など樹脂製品はプラスチック材料を金型に射出成形すること出来上がります。このように、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成型加工用に使用されるものが金型で、金型の品質如何が製品の良否を 決定づけるものなのです。したがって、金型は製品の産みの親などといわれています。引用元:一般社団法人日本金型工業会プレス加工の強みと弱みプレス加工は、製品および工程ごとに専用の金型を作り、これを使用する点に特徴があります。これにより複雑で高精度の製品を早く、安く加工することができるのです。しかしながら、専用の金型を作るため、多量生産に向いており、生産数が少ないとそれに要した費用を償却するのが困難です。また、製品の形状および寸法などは金型で決まってしまうため、加工者の技量に左右されにくいという特徴があります。板金加工の強みと弱み板金加工は、上記プレス加工と逆の特徴を持っています。汎用金型および工具を使用することが多いため、特定の製品にかかる費用が安く、少量生産に適しています。しかし、生産性はプレス加工に比べ大幅に低くなるため、大量生産には向いていません。また、汎用金型を使用して工夫しながら加工するので、加工者の技量が重要な要素になってきます。金型という観点から見た、板金加工とプレス加工の差異は、以下のように示すことができます。 板材は一体どのように作られているの?1. 鉄を生みだす製鉄と製鋼・製鉄 鉄は酸素と結びつき、安定した状態で鉄鉱石や砂鉄といった形で存在しています。そのため、鉄を取り出すためには、酸素を引き離すことが必要です。 この工程を「製鉄」といい、高さ100メートル以上もある高炉という設備を使います。炉の上から鉄鉱石と共に石炭を蒸し焼きにしたコークスを投入し、下から高圧の熱風を吹き込むことでコークスが燃えだします。この熱によって鉄鉱石を溶かします。・銑鉄 この時に、鉄は結びついていた酸素を手放し、炉の底にたまります。 これを「銑鉄」と呼びます。 この銑鉄には炭素や不純物が多く含まれています。 ・鋼この銑鉄をドロドロに溶けた状態のまま転炉という設備に移し、そこで酸素を吹きつけることで炭素量を適正量にコントロールし、不純物を除去します。このようにしてできた鉄を「鋼」(こう)といいます。・製鋼この鋼を溶けたまま連続鋳造設備に流し込み、さらに不純物を除去しつつ冷却していくことで、大きな塊にします。 このように不純物を取り除き、溶けた鉄を鋼片にする工程を「製鋼」といいます。引用元:中部鋼鈑株式会社2. 圧延機で鋼材をつくる(熱間圧延)製鉄工程と製鋼工程を通して鉄鉱石から鉄を取り出し、鋼にするところまで見ました。この鋼の塊は厚みが25cm近くあるので、このままでは用途が限られてしまいます。そこで、この鋼の塊から板や棒といった形状をつくります。これが圧延加工の工程になります。一旦冷えた鋼片を再度1000℃以上に熱し、軟らかくしてから、圧延機という設備に送ります。  引用元:日本冶金工業株式会社圧延機は、鋼片を上下のローラーに挟み込んで徐々に薄くしていきます。厚い板はその板形状のままで取り出します。1.2mm~19mmの板厚ではコイル状に巻き取り、これをホットコイルと呼びます。熱い状態で圧延加工するので、この工程を熱間圧延といい、できたものが熱延鋼板として出荷されます。板材だけではなく棒材、線材、断面形状が特殊な形鋼など、さまざまな形状もつくられます。3. さらに圧延して薄板をつくる(冷間圧延)板金加工に使われる板材には、さらに薄いものも求められます。このような薄板は冷間圧延によってつくられます。 冷間圧延は、先の圧延鋼板を使って常温で圧延加工してつくられ、できたものは冷延鋼板と呼ばれます。冷間という言葉には、冷やすイメージがつきまといますが、常温でおこなう工程です。冷間圧延では、1ミリの千分の一の極小レベルで厚みをコントロールするため、厚み精度に優れており、表面もなめらかできれいに仕上がります。あとで紹介するSPC材(冷間圧延鋼板)は、この工程でつくられた材料です。常温で圧延することにより金属組織が乱れて硬くなるため、圧延後に焼きなましという熱処理をおこない、内部のひずみを除去して軟らかくしています。(熱処理に関しては、別の記事で解説します。)また、さびを防ぐ亜鉛メッキ鋼板は、この冷延鋼板の表面にめっき処理をおこなったものです。引用元:中部鋼鈑株式会社黒皮材とみがき材熱間圧延鋼板は黒皮材、冷間圧延鋼板はみがき材と慣習的に区分されています。 酸化鉄によって生ずる黒皮は、手でさわって凸凹を感じるほど大きなことがあります。黒皮材は、寸法精度が必要なく見栄えも問わない建築材料などに使用されます。 他方で、製品や生産設備に使う場合には高い寸法精度やなめらかな表面が求められるので、黒皮を除去しなければなりません。これに対して、みがき材であれば、表面がなめらかできれいなのでそのまま使用することができます。 黒皮材よりみがき材の方が価格は高いのですが、黒皮材をそのまま表面を加工するコストと比較すると、みがき材の方を使用する方がメリットがあるとされています。板材の種類を細かく分ける1. 板材の種類 板金加工で使用される板材の多くは鉄鋼材料から構成されています。そこで、まず鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分けて、全体を俯瞰してみたいと思います。・鉄鋼材料には、軟鋼板、表面処理鋼板、ステンレス鋼板があります。・鋼板とは、文字通り板状に加工された鋼のことをいいます。・非鉄鋼材料には、アルミニウム板、銅板などあります。・軟鋼板としては、熱間圧延鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC) が代表的なもので、一般に「鉄板」 と呼ばれています。・鋼板(鉄板)は板厚によって、厚板(6mm以上)、中板(3mm以上6mm未満)、薄板(3mm未満)に分けることができます。・ステンレス鋼板は、鋼にクロムを12%以上添加したもので耐食性に優れています。・表面処理鋼板は、軟鋼材を母材として表面にめっきしたもの、あるいはめっきして更に塗装したものです。 ・アルミニウムは、軽く、伝熱性、導電性に優れています。 ・銅も、伝熱性、導電性に優れていますが、高価なため構造部品などに使われることはめったにありません。  2. 板材の寸法、形状 板金材料には、あらかじめ必要な寸法に切断されたスケッチ材と、寸法が規格で決められた定尺材があります。実務では、定尺材をそのまま使い、切断、穴あけ加工を行うのが一般的です。・軟鋼材の定尺材の寸法は、以下の3つが広く流通しています。 914×1829mm(3×6、サブロク)1219×2438mm(4×8、シハチ)1524×3048mm(5×10、ゴトー) ・ステンレス、アルミニウムの定尺材は以下のものが、広く流通しています。材料の特性 さて、いよいよ材料の特性について見ていきます。個別の材料について述べる前に、鉄鋼材料を考える上で基本となる2つの事柄について確認しておきたいと思います。 1. 炭素量で鉄の性質をコントロール 鉄もアルミニウムも純金属では軟らかすぎて用途が限られるため、他の成分を加えることで、実用に適した性質に変えていきます。鉄に最も影響を与えるのが炭素(C)です。加える炭素の量により軟らかい鉄から硬い鉄までつくり分けることができます。鉄鋼材料は、このように成分をコントロールされてできあがっています。また、鉄鋼材料はこの炭素量の大小によって分類されます。炭素量が0~0.02%が純鉄 、0.02~0.3%が軟鋼、0.3~2.1%が硬鋼、2.1~6.7%が鋳鉄です。純鉄は柔らかすぎて実務上の用途がないので、軟鋼から実用領域となります。軟鋼と硬鋼を分ける0.3%は、焼き入れ効果の有無と溶接可否の目安になります。(この溶接の詳細については、別記事で解説します。) 2. 炭素量による性質の各特長 (1)強さと硬さ:炭素量が増えるほど強く硬くなります。 (2)加工性:炭素量が増えるほど硬くなり、加工しにくくなります。 (3)焼き入れ効果:炭素量が少ないと、焼きは入らず、炭素量が増えるほど焼き入れの効果がでてきます。 (4)溶接性:0.3%以下は溶接が容易ですが、0.3%を超えると炭素の含有量が多いために溶接の熱で焼きが入り、焼き割れといった欠陥が生じやすいために溶接は避けます。 (5)溶融温度:炭素量が増えるほど溶ける温度は下がっていきます。 3. 主要な5大元素 鉄に加える成分の代表格は 炭素(C)で、その他に補助的な役割としてシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が入っており、これらを5大元素といいます。・炭素はなくてはならない存在で、強さと硬さの源泉です。・シリコンはけい素とも呼ばれ、弾性変形の上限値である降伏点と破断限界を示す引張り強さを増します。・マンガンは粘り強さを高め、焼きを入れやすくする元素です。 ・ここまでの3元素は鉄の性質を向上する大切な成分ですが、残りのリンと硫黄は基本的に有害な成分です。 以上の5つが鉄鋼材料の基本となる元素です。炭素鋼と合金鋼の区分け鋼は添加物の種類によって炭素鋼と合金鋼に分かれます。5大元素のみで構成されたものを「炭素鋼」といいますこれに対して、5大元素にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属を加えたものを 「合金鋼」といいます。合金鋼は高価な半面、優れた性質を持っています。身近に使われている合金鋼としては、ステンレス鋼を挙げることができます。 1. SPC材(冷間圧延鋼板) (1)概要: ・SPC(Steel Plate Coldの略)材は、0.4~3.2mmの薄板で、最大でも3.2.mmです。・冷蔵庫や洗濯機のボディなど家電製品などで、広く使用されています。 ・SPCは用途によって、SPCC(一般用)、SPCD(絞り用)、SPCE(深絞り用)などがあります。・このSPCCに電気亜鉛メッキを施したものがSECCです。 (2)強さ: 軟らかい板材なので、大きな力が加わる箇所には使用しません。(3)加工性: 加工性は良好です。平板のまま使うか、もしくは曲げ加工やプレス加工が中心です。 冷間圧延なのでとてもなめらかできれいな表面です。 表面は削らずにそのままの面を使います。 2. SS材(一般構造用圧延鋼材)(1)概要:SS(Steel Structureの略称)材は汎用材として、金属加工で最もよく使用される圧延鋼板です。安価で市販性も高く、鋼板、棒材、形鋼とバリエーションも多く揃っています。(2)強さ: 一般的に鋼材は、厚くなるほど降伏点が下がる傾向にあります。 これは、厚くなるほど圧延後に常温まで冷える時間が長くなり、そのことによる金属組織の変化が影響するためです。 しかし、一般環境下で使用する場合、この強さは相当の余裕度があるので、厚みによる降伏点の差異は、特に意識する必要はありません。(3)加工性: とても加工しやすい材料です。 SS材は材料の表面が良好なので、できるだけ表面をそのまま使用します。 というのも、表面を加工すると内部応力が解放されて、そりが発生する恐れがあるからです。内部応力とは内部応力とは、外から材料に力を加えた際に、内部で反作用として生じる力のことです。外部の力に応じて発生する力という意味で、内部応力(単に応力とも)と呼びます。内部応力には2つの種類があります。材料を引き延ばそうとする力が働く場合の引張応力と、縮めようとする圧縮応力です。 内部応力は部材ごとに違うので、実際に削ってみなければわかりません。合金鋼炭素鋼の5大元素に加えて他の金属を添加したものが **合金鋼** です。 合金の元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあります。  SUS材(ステンレス材)(1)概要: 合金鋼の中で最も身近に使われているのがステンレス鋼です。ステンレスはStainless、すなわち「汚れが少ない、さびが少ない」を意味し、五大元素にクロムとニッケルを加えた合金です。SUS(Steel Use Stainlessの略称)材の特徴は、何といってもさびに強い耐食性です。クロムと酸素が結びついた緻密な酸化膜(不動態被膜)が、金属表面をしっかり覆うことによって可能になります。以下、ステンレス鋼でよく使用されるSUS304とSUS303について、解説します。①SUS304(18-8系ステンレス)ステンレスの半分以上を占めるのが、このSUS304です。抜群の耐食性を活かして、台所のシンクや、機械部品にも使用されるオールマイティな品種です。耐熱性もあり、600℃まで使用でき、溶接も可能です。磁性がないので磁石につかないのが特徴です。ただし、曲げ加工などによる加工硬化があると、その個所は磁性を帯びることもあります。②SUS303(18-8系ステンレス)先のSUS304は耐食性が優れていますが、硬くて粘っこいために加工性があまりよくありません。そこで、有害成分とされているリンと硫黄を含ませることで加工性を向上させたものがこのSUS303です。耐食性は若干劣るものの、加工性が良い点は機械部品に適しています。SUS304と同じく非磁性です。非鉄鋼材料  1. アルミニウム鉄が鉄鉱石から酸素を離して取り出されるように、アルミニウムも鉱物のボーキサイトから取り出されます。鉄の場合に比べて、アルミニウムと酸素の結びつく力は、はるかに大きく、多くの電力を用いて電気分解をおこなう必要があります。しかし、アルミニウムには優れた特徴があるため、いまや鉄につぐ生産量となっています。以下の動画は、アルミニウムの特徴をよく説明してくれています。是非、視聴してみてください。 「電気の缶詰~アルミニウム~」 概要奇妙な骨董屋の周期表を模した棚を前に、少女と怪しい店長のシュールなやりとりを通じて、単なる記号の羅列ではない周期表の正体を探っていきます。元素の性質、発見の歴史をじっくりと見つめると、あたかも物語の人間関係相関図のように整理された元素たちの関係が見えてくるのです。シリーズ第10回は、「電気の缶詰~アルミニウム~」と題し、アルミニウム精錬の歴史と現在の利用例、アルミニウムの特徴を紹介します。出演者名・所属機関名および協力機関名佐藤瀬奈(オスカープロモーション)、コハ・ラ・スマート(個人)、オスカープロモーション引用元:サイエンスチャンネル2. アルミニウムの特徴アルミニウムの特徴は、鉄と比較することでよく理解できます。以下、その特徴を列挙します。(1)軽さ:アルミニウムの一番の特徴はその軽さです。鉄とその密度を比較すると約3分の1です。アルミニウムが工業製品として使われだしたのは、時代背景と関係しています。20世紀に入り、航空機生産の需要が高まると、アルミニウムはこの航空機の軽量化を最大の目的に進められます。航空機の機体は、その総重量の約70%がアルミニウム合金でできているといわれています。今では、地下鉄から新幹線、果ては人工衛星に至るまで広く使用されています。(2)強さ:アルミニウムは鉄に比べると弱くなります。しかし、7000系(亜鉛とマグネシウムの合金)のA7075は、炭素鋼のSS400を超える引っ張り強さがあります。剛性の指針である縦弾性係数は、どの品種も同じく鉄の3分の1なので、同じ力がかかると鉄の3倍の変形量が生じます。(3)加工性:切削の抵抗が小さく熱伝導性も良いために、切削熱を拡散できます。それゆえ、加工性は非常に優れています。 高速加工や大きな切込みも可能です。(4)耐食性:ステンレスと同じく大気中で自然に金属表面に酸化被膜を形成し、酸素と水分を遮断するので耐食性に優れます。さらには耐食性を向上させる必要があるときには、表面処理としてアルマイト処理をおこない、人工的に酸化被膜を形成します。(5)導電率:電気の流れやすさを示す導電率は銀、銅、金についで高い金属です。 (6)熱伝導率:熱伝導率は銀と銅についで高いです。(7)耐熱温度:アルミニウムの融点は約660℃です。また強さは200℃を超えると急激に下がるので、200℃を最高使用温度に設定します。(8)光沢と非磁性:光を良く反射するので外観が美しく、磁性をもたないことも大きな特徴です。3. 銅と銅合金銅は人類がはじめて手にした金属といわれています。鉄の溶融温度が約1500℃であるのに対して、銅は1000℃とかなり低いです。これが鉄よりも銅を早く手にした、といわれる理由です。日本でも約2000年前から農耕具や武器、貨幣、銅鐸などに使われました。現代では優れた伝導率や熱伝導性を活かして、情報通信や精密機器などの先端産業に使われています。4. 銅の特徴銅の特徴も、鉄と比較することでよく理解できます。大きな特徴は導電率と熱伝導率が抜群に良いことです。一方で高価なため、構造部品として使用することはありません。以下、その特徴を挙げてみます。(1)導電率:銅の最大の特徴はこの導電率の高さです。 銀につぐ性質のため、銅線として電気配線に使われています。(2)熱伝導率:熱の伝わりやすさは鉄鋼材料やアルミニウムよりも優れています。 そのため、鍋やフライパンなどの調理器具によく使用されています。 熱伝導率の高さから、熱が素早く均一に伝わるためです。(3)加工性:大昔から使われている理由のひとつが加工のしやすさです。 切削加工や圧延加工に適しています。 まためっきやはんだづけが容易な金属です。(4)耐熱温度:200℃を超えると軟化するため、通常200℃以下で使用します。例外的にベリウム鋼は耐熱性に優れており、600℃までは軟化しません。低温側の劣化はないので、問題なく使えます。(5)耐食性:耐食性に優れており、他の金属は苦手とする海水に対しても良好な耐食性をもっています。ただし硝酸や塩酸、硫酸にはおかされることには注意が必要です。(6)光沢:金以外で唯一黄色の光沢をもつ金属です。加工性がよく光沢があることから工芸品にも使われています。(7)非磁性:非磁性を活かした用途として、磁気厳禁の電気機器の背億定期や化学工業の防爆用工具として使われています。 5. 銅と合金銅の種類生産量の割合を見ると純銅が50%、黄銅が約40%で合わせて90%を占めています。ここでは、純銅と黄銅についてのみ解説します。(1)純銅純度は99.90%以上で、酸素の含有量によって3種類に分かれます。酸素の多い方から順にタフピッチ銅(CC1100)、りん脱酸銅(C1201、C1220)、無酸素銅(C1020)があります。無酸素銅は酸素が極小で不純物も除去された高純度の銅です。これらの純銅は高い導電率や熱伝導率を活かした銅線や電子機器材料に使用されます。(2)黄銅(真鍮)黄銅は銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれています。合金の比率によって銅と70%と亜鉛30%の70/30黄銅(C2600)、同じく65%と35%の65/35黄銅(C2680)、60%と40%の60/40黄銅(C2801)があります。銅の比率が下がるにつれて、引張り強さと硬さは増えていきます。一方で、銅の比率が60%未満になるともろさが出てくるため、ラインナップは60%以上になっています。C2600とC2680は伸びが大きいので、冷間加工性が良好で深絞り加工にも使用されます。亜鉛の量が多いほど、銅の比率が少なくなるので、価格も安くなります。6. その他の非鉄金属材料チタンとチタン合金、マグネシウムとマグネシウム合金などがあります。 この記事では割愛します。地域のおすすめ板金加工工場板金加工についての理解が深まった所で、次に各地域のおすすめ板金加工工場をご紹介したいと思います。地域のおすすめ板金加工工場大阪のおすすめ板金加工工場神奈川のおすすめ板金加工工場東京のおすすめ板金加工工場埼玉のおすすめ板金加工工場栃木のおすすめ板金加工工場茨城のおすすめ板金加工工場千葉のおすすめ板金加工工場群馬のおすすめ板金加工工場静岡のおすすめ板金加工工場本記事では、板金加工に使用する材料を俯瞰しました。材料の知識なしに板金加工を行うことはできません。さらに別の記事でより具体的な内容に踏み込んでみたいと思います。次回は、板金加工に欠かせない図面について考えてみたいと思います。次の記事:【板金加工 図面】図面の基礎を徹底解説!書き方・読み方・必要性