プランジャーの役割、種類、特徴、用途

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金属部品

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プランジャーは、突っ込む物や押し込む物を意味する英語の「Plunger」から来ている言葉です。機械工業の分野では、以下のような筒や穴に出し入れして用いる様々な部品がプランジャーと呼ばれます。

・ディーゼルエンジンにおける燃料を高圧で噴射する噴射ポンプの棒状の構成部品。筒状のポンプ内部で軸方向に往復運動することで燃料を圧送する。

・プランジャーポンプの棒状の構成部品。ポンプ内部を往復運動することで流体を引き込んで押し出す。

・エレベーターにおける油圧ジャッキの棒状の構成部品。油圧ジャッキのシリンダー内部を往復運動することでワイヤーを通してカゴを押し上げ、引き下げてカゴを昇降させる。

・注射器の注射筒(シリンジ)に充填された薬剤などを押し込む注射桿と呼ばれる部分のこと。

・機械・材料などの位置決めや固定などを行うための機械部品。

このように様々な分野で用いられるプランジャーですが、この記事では、最後に挙げた、位置決めや固定などに用いられるプランジャーに焦点を当て、その種類や特徴、役割、用途などについて解説していきます。

プランジャーとは

プランジャーとは、装置・器具の位置決めや固定、ワークの突き出しなどのために用いられる機械要素部品のことです。円筒形状で、先端にボール又はピンを備えています。そのボール(ピン)は、荷重を掛けると本体内部に沈み込みますが、スプリングを内蔵しているため、荷重が解けるとバネの力で元に戻ります。

プランジャーは、取付けタイプの違いにより構造が異なります。

ねじ込み取付けタイプでは、円筒の側面にはネジ山が、ボール(ピン)の逆側の先にはマイナス溝や六角穴などが形造られています。つまり、ねじ込み取付けタイプのプランジャーは、ネジ穴を作っておけば、ドライバーやレンチなどでねじ込むだけで取り付けが可能です。ねじ込み取付けタイプの中には、ピンがある先端に専用工具でのねじ込みが可能な専用溝が存在するものがあり、その場合は貫通していない止まり穴に対しても取り付けることができます(下図参照)。

引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーション

差し込み取付けタイプもあり、このタイプのプランジャーは、円筒側面の構造が平滑です。差し込み取付けタイプは、プランジャーがピッタリと嵌まる穴を作り、その穴に差し込む又は圧力を掛けて押し込むことで取り付けます。このタイプは、止まり穴に取り付けることが容易です。

プランジャーの材質には、主にスチールとステンレスが採用されています。ただし大抵、プランジャー本体とボール(ピン)、スプリングの材質は異なります。例えば、スチール製の場合、本体は加工性が良好なSUM22Lなどにサビ防止の黒染めといった表面処理が施された鋼材、ボール(ピン)はSUJ2などの硬く耐摩耗性が高い鋼材、スプリングはSWP-Bなどのバネ用鋼を材質とする製品が多く流通しています。

そのほか、本体とボール(ピン)が樹脂製のプランジャーや、ボール(ピン)のみが樹脂製のプランジャーなどがあり、樹脂製のプランジャーはキズを防止したい場合や絶縁したい場合などに使われます。

参考:ばねの基礎 |ばねの種類やそれぞれの特徴を詳しく説明します!

プランジャーの種類と特徴

プランジャーの種類には、ボールを備えたボールプランジャーとピンを備えたピンプランジャー(スプリングプランジャー)、ピンの沈み込みをノブなどで操作するインデックスプランジャーがあります。ここでは、これらのプランジャーそれぞれの特徴について説明していきます。

ボールプランジャー

ボールプランジャーは、先端にボールを備えたプランジャーです(上図参照)。先端のボールが自由に回転するものと、ボールが回転しないものがあります。ボールに接触している対象の摺動(滑らせて動かすこと)が行いやすく、摺動部(部品の間で互いに摺動する部分)の位置決めに適しています。また、ボールの部分は、水平方向からの荷重を受けても沈み込むため、スライドする機構の位置決めにも適しています。

ピンプランジャー

ピンプランジャーは、先端にピンを備えたプランジャーです(上図参照)。ピンは、先が半球やテーパー(先細りになっていること)の円筒形のものがほとんどですが、シンプルな円筒形のものも存在します。

ボールプランジャ―とは異なり、ストローク(ボール又はピンの本体内部への沈み込むことが可能な最大長さ)を長くできることから、様々なストローク長さの製品が用意されています。ピンへの横方向の荷重に対して高い耐久性を持つ製品もあり、そのような製品であれば、位置決め用の穴へピンを長めに嵌めてしっかりと固定することも可能です。

参考:ピン製作のおすすめ工場をご紹介!ピン製作時のポイントについても解説!

スプリングプランジャー

スプリングプランジャーは、スプリングを備えたプランジャーのことです。しかし、ボールプランジャ―ではなく、ピンプランジャーを指すことが多くなっています。とはいえ、メーカーによっては、ボールプランジャ―とピンプランジャーをまとめて表す言葉として使われることもあります。

インデックスプランジャー

インデックスプランジャーは、先端のピンの出し入れを手動で行うことができるプランジャーです。ピンがある先端の逆側に、ピンの沈み込み長さを操作できるノブを備えており、ノブを引くとピンが沈み、ノブを押すとピンが出て来ます(上図参照)。

インデックスプランジャーのほとんどは、ピンプランジャーなどと同様にスプリングを内蔵しています。そのようなインデックスプランジャーでは、例えば、ピンを位置決め用の穴に当てることで、バネの作用で簡単にピンを穴に嵌めることができ、ノブを引くことで、容易に位置決めを解除することが可能です。そのため、位置決めや割り出しの解除を手動で行う装置・器具に適しています。

また、インデックスプランジャーの中には、ピンを沈み込んだ状態で固定することができるロック付きのものもあります。このタイプのインデックスプランジャーでは、例えば、ノブを90度回すとピンの沈み込みがロックされ、ノブを逆に90度回すとピンのロックが解除されます(下図参照)。そのため、ピンを穴などに嵌めた後もしっかりと固定したい場合や、ワークの突き出しの長さを微調整したい場合などに最適です。

引用元:役立つ技術情報「設計者のための インデックスプランジャ解説」鍋屋バイテック会社

プランジャーを使用するメリットと役割

プランジャーの主な役割は、機械のスライドする機構の位置決めや回転する機構の角度の割り出し、工作機械の工具・金型やワークなどの位置決めや割り出し、ストッパーです。そのほか、プレス加工における金型へ張り付いたワークの突き出し、部品や治具の一時的な固定などの役割もあります。

プランジャーを使用するメリットは、装置・機器へボール又はピンのスプリングによる往復機構を容易に組み込めることです。プランジャーを使用しない場合、例えば、下図のように、ピンとバネ、バネの押さえ、嵌め込む穴を設計して用意し、組み込む必要があります。また、一度組み込んでしまうと、プランジャーとは異なり、取り外すことは困難です。一方、プランジャーを使用する場合は、嵌め込む穴を用意して取り付けるだけです。

プランジャーの用途と使用例

プランジャーは、工作機械や検査機器のほか、食品機械、包装機械、印刷機械、半導体製造装置といった様々な産業機械に利用されています。製品自体に使用されることは少なく、主に製品を製造する機械に用いられている部品です。

プランジャーは、様々な製造機械の中で多様な機構を実現しています。

例えば、ボールプランジャ―は、下図のような、穴に嵌め込まれたピラー(円筒状の部品)のストッパーに使うことができます。

引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーション

ピンプランジャーの使用例としては、プレス加工時に金型へ張り付いたワークの突き出しが挙げられます。下図のように、ピンプランジャーを金型に組み込むことで、プレスの完了と同時に金型からワークを剥がすことが可能で、作業の効率化などが期待できます。

引用元:プランジャー「プランジャーとは?」株式会社イマオコーポレーション

インデックスプランジャーは、手動で位置決めを行うケースで用いられます。下図左図の使用例では、どの溝にプランジャーのピンを嵌め込むかによって、直線的にスライドするステージの位置を決定しています。下図右図の使用例では、回転ステージ側面のどの溝にプランジャーのピンを嵌め込むかによって、スライドするステージと同様に回転するステージの位置決めを行っています。

引用元:MISUMI-VONA 技術情報「インデックスプランジャ選定のポイント(選定概要)」株式会社ミスミグループ

プランジャーの荷重・ストローク

プランジャーの特性には、最小荷重と最大荷重、ストロークがあります。

・最小荷重…プランジャーのボール又はピンが接地し、沈み込み始める際に必要な荷重

・最大荷重…プランジャーのボール又はピンが本体内部に完全に沈み込んだ際の荷重

・ストローク…ボール又はピンの本体内部への沈み込み可能な最大長さ

なお、プランジャーの荷重の単位には、ニュートン(N)が用いられます。

プランジャーのボール又はピンが沈み込む荷重は、沈み込みが深くなっていくに従って、最小荷重から最大荷重へと直線的に変化します。そのため、プランジャーのバネ定数は、以下の式で表すことが可能です。

プランジャーのバネ定数

K:バネ定数

F0:最小荷重

F2:最大荷重

S2:ストローク

また、このバネ定数から、ボール又はピンの沈み込み深さに従って変化する荷重を以下の式で求めることができます。

ボール又はピンの沈み込み深さに従って変化する荷重

S:ボール又はピンの沈み込み深さ

F:ボール又はピンがS沈み込んだ際の荷重

これらの式から理解できるように、最小荷重とバネ定数が小さいプランジャーが軽荷重用、大きいプランジャーが重荷重用です。また、最小荷重が過大だと、多少の荷重を加えてもボール又はピンが沈み込まないといったことが起きるので注意が必要です。

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