【めっき処理とは?】目的・仕組み・種類・特徴について徹底解説!

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化成処理

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なにかと聞き慣れない単語が多い板金業界の専門用語ですが、「めっき」という言葉は皆さん聞いたことがあるかと思います。

めっきと言うと、普段耳にするのは金めっきでできた偽物といったニュースをテレビやネットの記事で見る時でしょうか。しかし、製造業における「めっき」は、製品を加工した後に様々な特性を付与することができる、とても重要な表面処理方法の一種といえます。

今回から、前・後編に渡って、【表面処理】についての特集をいたします。前編のテーマは、「めっき処理」。製造業における「めっき」とは何か、めっきの目的や仕組み、種類をご紹介します。

めっき処理とは

めっき処理とは表面処理の一種で、金属を使って金属やガラスまたはプラスチックなどの表面に薄い膜をコーティングし、強度や耐久性を高めることを言います。

使い古した時計やスプーン・フォークなどが色あせているところを見たことはないでしょうか。それらはめっきが剥がれている状態なんですね。

「メッキ」?「めっき」?正しい表記とは

「めっき」は大抵の場合カタカナで書かれていますが、実はメッキは滅金(めっきん)からきている日本語で、正確にはひらがなで「めっき」と表記します。日常でよく見かけるのはカタカナ表記ばかりなので和製英語と思われがちだったりしますね。

ですが正式にはひらがななので、板金加工の業界内では「めっき」と表記されていることが多く、JIS規格でも「めっき」と書くことが正式な表記とされています。

しかし、普段見かける表記はカタカナばかりで、ひらがなだと読みにくいという理由もあり、近年ではカタカナでの表記も取り入れられることが増えてきました。

今では国語辞典でもメッキと表記されている場合が多くなってきており、そういった背景からどちらでもよいというのが現状になってきています。

言葉は時代によって変化していくものですが、めっきもその一つなんですね。

めっき処理と塗装の比較

めっきという加工をイメージしやすい表面処理の方法として塗装があります。加工の方法としてはめっきと塗装では全く様子が異なりますが、目的はめっきと同じく素材の表面をコーティングすることで錆びないようにしたり製品を綺麗に見せたりすることで製品の質を高めています。

また、めっきと塗装の違いは加工方法だけはなく、使用される材料にもあります。

塗装ではペンキの材料である樹脂や油を使い、めっきの場合は金属を溶かした液体を使用します。そして、その溶かした金属を水槽に素材をひたして、水に溶けている金属をくっつけるのです。

めっき処理の様子が分かる動画がありますので、こちらをご覧ください。

動画のように水槽に溶けた金属を素材にくっつけます。あまり輝いていなかった鉄の棒が水槽から出てくると綺麗な銀色になっているので不思議ですね。

めっき処理の3つの方法

めっき処理の方法には電気メッキと無電解めっきと置換めっきがあります。

めっき処理の方法

①電気めっき

②無電解めっき

③置換めっき

①電気めっき

先ほどご紹介した動画は電気めっきですね。電気めっきは電解めっきとも呼ばれます。

電気めっきは水槽内に電気を流してめっきをします。

電気めっきのメリットはコストが安いことといろいろな金属にめっきができること、そして短時間でめっきができることです。

反面、短所として均一にめっきができない、複雑な形状の製品には綺麗にめっきができないなどがあります。

②無電解めっき

無電解めっきは電気を使用せず素材にくっつけることを言います。無電解めっきは電気めっきとは対照的に、均一にめっきができることと複雑な形状の製品にめっきができることがメリットです。

短所はこれも電気めっきと反対で、コストが高いことめっきができる金属の種類が少ないこと、めっきに時間が掛かることがあげられます。

引用元:KIYOKAWA めっき教室

③置換めっき

置換めっきとは、水槽内で金属を溶かし、溶けた部分に素材が付着することでめっきが完了する方法です。溶けた金属の部分と付着した金属が置き換わる形になるのでそう呼ばれます。

置換めっきは耐食性が高い製品にすることができますが、金属と素材の密着が悪いこととめっきの厚さが限られることがデメリットとなっています。

以上、3種類のめっき処理方法をご紹介しましたが、どの方法も一長一短あるため、使用する金属によって適切な方法を選ぶ必要がありますね。

めっき処理の工程を解説

引用元:TECH JOURNEY

めっき処理の工程は、上図のように、前処理、本処理、後処理に分けることができます。

前処理工程では、めっきの十分な密着性確保を目的として、処理品に付着した汚れや油、スケールと呼ばれる酸化被膜などを取り除き、活性化して化学反応しやすい素地面を露出させます。

上図の溶剤洗浄、酸洗、アルカリ洗浄、電解洗浄は、どれも汚れや酸化被膜などを除去するための工程ですが、処理品の素材の種類やめっき処理前の加工履歴によって実施される処理は異なります。

汚れ等の除去後は、酸浸せきによって処理品の素地面を露出させますが、素地面は空気中や水中でも酸化被膜を形成してしまうような活性状態にあるため、本処理工程への迅速な移行が必要です。

その後、素材やめっきの種類によっては、酸やアルカリを次工程に持ち込むことを防ぐ中和処理、密着性向上を目的に下地めっきを施すストライクメッキなどを実施してから本処理工程に移行します。

なお、上図は、電気めっきの例ですが、無電解めっきでも置換めっきでも前処理工程や後処理工程に大きな違いはありません。

めっき処理の目的・メリット

めっきは耐食性や熱特性、摩耗性など様々な性質や機能を付与することができます。ものによってはめっきをしないで売りに出すとすぐ問題が出てしまうことが多いですが、めっきを施すことで丈夫で長持ちな商品となります。

日常生活の中でよく使う製品を例に、めっきをすることでどんな効果が付与されているのかを紹介していきましょう。

めっき処理の目的

①耐食性をつける

②熱特性を持たせる

③電気特性を持たせる

④摩耗性を持たせる

⑤装飾をほどこす

①耐食性をつける

耐食性とは金属が錆びにくい性質のことです。金属はもともと錆びさすい性質のものが多いので、めっき処理をほどこすことで錆びにくくします。

古い自転車や鉄の鎖が濃い茶色に変色してザラザラになっているところは誰しも見たことがあるかと思いますが、それは金属が空気や水にふれることで起こります。そうなると鉄がもろくなって強度が落ちてしまうので、耐食性の強い金属で膜を張ることで錆びの進行を抑えます。

あくまで錆びの進行を抑えるだけなのでまったく錆びなくなるわけではありませんが、めっき処理をすることでかなり金属の寿命を延ばすことができます。

②熱特性を持たせる

金属は鉄や銅などの影響で熱が通りやすいイメージがありますが、中には熱が通りにくい金属もあります。

例を挙げるとステンレスがそうですが、ステンレスはフライパンやなべといった、熱が通ってほしい製品に使われることも多いので、そういった製品にはめっき処理で熱特性を持たせて熱を通しやすくします。

反対に熱くなりすぎないように熱耐性を持たせることもあります。例えば、飛行機のエンジンや高温の中で作業が必要になる機械の部品がそうですね。

熱に強いステンレスで作れるのであれば問題はありませんが、ステンレスではどうしても製作に不向きな製品もあるので、その場合はめっき処理をすることで熱耐性を持たせます。

③電気特性を持たせる

金属はもともと電気を通しやすい物質なので、わざわざ通しやすくする必要はないと思われるかもしれませんが、細かい電子回路がある携帯電話やパソコンなどにはめっき処理をすることで電流を操作する必要があります。

電子回路内の部品と部品をつないだりS極とN極を切り替えたり、めっきをほどこすことで回路内の電気が通るようにするのです。

また金属以外の材料にも、プラスチックや樹脂などもともと電気を通さない物質にメッキをすることで通電性を持たせることもできます。

プラスチックにめっきと言うとイメージしづらいかもしれませんが、車の部品や水栓金具など日常的に見かけている物にも案外ほどこされていたりします。

④摩耗性を持たせる

摩耗(まもう)とは、歯車やねじなどの部品が摩擦によってすり減ることを言います。機械の中では激しく部品が削り合っているのでなるべく消耗を抑えるためにめっきで強度を高めます。

めっきで強度を上げるとは言っても、錆と同じで永続的に効果を得られるわけではありませんので定期的にメンテナンスは必要です。

⑤装飾をほどこす

めっきをする理由には、製品の見た目を美しくするという目的もあります。

スーパーや電化製品で売っている製品は、当然ながらどれも綺麗ですが、見た目が悪ければ売れ行きに影響してしまいます。アクセサリーや車のエンブレムなど見た目が重要な製品ならなおさらですね。

普段目に見えない機械内部の部品でも、その部品をメーカーが買う時に薄汚れていては不良品ではないかと心配になってしまいます。

製造した段階ではあまり綺麗でなくても、流通させる前にはめっきや研磨をして綺麗に見せることはとても重要なのです。

引用元:株式会社三協製作所

以上①~⑤の目的の他にも、めっきには水を弾きやすくしたり光の反射を抑えることで眩しくないようにしたりと色々な性質を付与できます。

金属の特性や加工方法だけでは高品質な製品を作るのは限界がありますが、めっき処理により様々な性質を付与できることで、作られる製品の幅をグッと広げることができるのです。

めっきに使う金属

めっきは金属以外にも、プラスチックやガラス、セラミックなど大抵の工業素材にほどこすことができますが、ではそのめっきをほどこすための素材には何が使われているのでしょうか。

おさらいになりますが、塗装に使われるのは油や樹脂で、めっきに使われるのは金属だけでしたね。

ではそれらのよくめっきに使われる金属5種を、身近な製品やテレビで見かけるものを例に出しながら紹介していきましょう。

めっきに使われる金属・代表5種

①金

②銀

③銅

④クロム

⑤ニッケル

①金

金めっきは主にアクセサリーやライターといった商品を綺麗に見せるために使用されます。商品が金ピカになるだけあって高級感がグッと増します。

ご存知の方もおられるかもしれませんが、実はオリンピックの金メダルも純金ではなく金メッキだったりします。金メダルは銀メダルの上に金のめっきをほどこして作られているんですね。

そのため、銀でできているだけあって重さは相応の重量感があるものの、値段にしてみると実は大したことなかったりします。

②銀

銀めっきがよく使用されているのは食器やアクセサリー、またはコネクタの接続部分などです。

銀色の食器は綺麗で使いやすいですよね。食器には金めっきが使われていることもありますが、金めっきの食器は見た目は綺麗でも少々高級すぎる感じがして少し使うのがもったいない気がしてしまいます。

先ほど金メダルの話が出ましたが、銀メダルはほぼ銀で作られています。少し別の成分も混ざっているため純銀というわけではありませんが、ほとんど銀素材です。他の成分が混ざっている理由はメダルが割れにくくなるように強度を増すためですね。

③銅

銅は電気や熱が通りやすい素材なので主に製品の下地メッキとして使われます。下地めっきというのは、まず製品に銅でめっきをして、その銅メッキの上に別のめっきをほどこすことです。

その電気や熱が通りやすい性質を活かして電鋳やプリント配線板に主に使われます。

電鋳(でんちゅう)とは製品の原版の表面に電気めっきを行い、表面のめっきをはがすことで、原版と反対面の形状のものを作る方法です。プリント配線板とは、はんだ付けの時に使う緑色の板のことですね。

引用元:IKEX EVENTR

銅は錆びやすい素材であるため単独で使われることはあまりなく、機能性を持たせるにしても装飾性を持たせるためにしても別の素材を混ぜて作られることが多くなります。

例によって銅メダルもほぼ銅素材ですが、やはり亜鉛やすずという別の素材が混ぜられています。

また、銅にはコストが比較的安いというメリットもあります。

④クロム

クロムは硬い素材でできており摩耗性が強いため、動きが激しくすり減りやすい自動車の部品や機械部品の計器などによく使われます。また耐食性も非常に高いため、水道のパイプや自転車のチェーンなど水を被りやすい場所で使う場合に適しています。

他にはその硬さからゴルフクラブや車のエンブレムにもよく使用されますね。クロムで装飾された製品は通常の銀より高級感のある輝きを出すことができます。

⑤ニッケル

ニッケルは配合する金属によっていろいろな性質を付与できる便利な金属です。ニッケルと他の金属を混ぜることで錆びないように耐食性を付けたり、磁気をコントロールするため機能性を付与したり、滑らかな表面にするため装飾性が施されたりと活用の幅は様々。

身近にある重要な製品で言うと、眼鏡やパソコンのハードドライブを作るのに重宝されている素材です。

ただし、ニッケルは金属アレルギーの原因とされ、近年では使用が控えられている金属でもあります。

めっきの素材となる金属には他にも亜鉛やすずなどがあり、用途も多種多様です。めっきと言うと普段高級な代物を買う時ぐらいしか意識しませんが、実は私たちの周りにある日用品の多くにほどこされているのです。

まとめ

今回はめっきについてのみでしたが、表面処理にはめっき処理以外にもアルマイト処理や化成皮膜処理があります。

それらは次回の【表面加工特集・後編】でご紹介いたしましょう。

この記事を通じて皆さんのめっきについての知識が少しでも深まっていれば幸いです。

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