ポリアセタール樹脂(POM)種類・製法・特徴・加工方法

投稿 更新
Category:
樹脂加工

contents section

ポリアセタール樹脂(POM)は、耐衝撃性や耐摩耗性、機械的性質に優れるプラスチック素材です。さまざまな生活用品や、家電製品、機械部品、自動車部品、配管部品、ハードウェア部品、電子部品、電気部品などに用いられており、私たちの生活には欠かせない素材の一つです。今回は、ポリアセタール樹脂(POM)について、種類・製法・特徴・加工方法など幅広い内容について解説します。

参考:樹脂加工とは?素材の種類と加工方法

ポリアセタール樹脂(POM)とは

ポリアセタール樹脂は、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)の構造(-CH2O-)を持つポリマーであり、その略記号を用いてPOMと呼ばれています。ポリアセタール樹脂(POM)は、耐衝撃性や耐摩耗性に優れており、「エンジニアプラスチック(特に強度や耐熱性などの特性に優れるプラスチック)」に分類されます。このようなプラスチックは、プラスチックの最大の欠点である熱劣化性を改善した材料であり、金属の代替部品として幅広い用途に利用されています。

ポリアセタールとジュラコンとデルリンの違い

ポリアセタール樹脂(POM)は、複数の会社で製造されており、それぞれ製品名が異なります。代表的な製品として、ポリプラスチックス社のジュラコン®(DURACON®) とデュポン社が開発したデルリン®(Delrin®) が挙げられます。この2つの製品の違いは、分子構造です。ジュラコン®はコポリマーであるのに対し、デルリン®(Delrin®)はホモポリマーと呼ばれる分子構造を持ちます。

ポリアセタールの種類と製法

前述した通り、ポリアセタール樹脂(POM)は、分子構造によってホモポリマーとコポリマーに分類されます。それぞれの構造について製法と合わせて、以下説明します。

ホモポリマー

ホモポリマーの構造を持つポリアセタール樹脂(POM)は、上図のような分子構造を有します。ホモポリマーとは、モノマー(ポリマーを構成する化合物の単位)が一種類のポリマーを指します。ホルムアルデヒドを原料とし、重合を行って製造されます。

コポリマー

コポリマーの構造を持つポリアセタール樹脂(POM)は、上図のような分子構造を有します。コポリマーとは、二種類以上のモノマーから構成されるポリマーを指します。コポリマーは、ホルムアルデヒドから三量体であるトリオキサンを生成し、エチレンオキサイドなどのコモノマーとともに重合することで製造されます。

ポリアセタールの特徴と用途

ポリアセタール樹脂(POM)は、耐摩耗性、剛性や靭性などの機械的性質のほか、耐疲労性や耐クリープ性に優れる素材です。他にも、金属と比較して軽量な素材であることから、より軽い部品、製品の設計が可能となります。また、寸法安定性に優れ、精密部品への使用にも向いています。このような優れた特徴を有するポリアセタール樹脂(POM)は、金属に代わる素材として、さまざまな分野において採用されています。特に、耐久性が必要とされる部品に多用されています。

●ポリアセタール樹脂(POM)の主な用途

・ギヤ(歯車)やベアリング

・生活用品(ファスナー、クリップ、文房具)

・自動車部品(燃料ポンプ、ドアロック・ドアラッチ、シートベルトロック機構)

・機械部品(半導体製造装置部品、電子機器部品、産業機械部品)

・楽器(リコーダーや木管楽器など)

ポリアセタールの長所

ポリアセタール樹脂(POM)の優れた特徴についてご紹介します。

耐衝撃性

靭性が高いため衝撃への耐性に優れます。

耐熱性

耐熱温度は、ホモポリマー約85℃、コポリマー約105℃です。短時間であれば、150℃でも使用可能です。高温での使用のほか、低温耐性にも優れ零下40℃前後まで使用できます。

耐薬品性

薬品や溶剤への耐性に優れ、薬品による劣化の影響を受けにくい素材です。ただし、強酸には耐性がないため注意が必要です。

寸法安定性

寸法安定性に優れます。精密部品への使用にも最適です。

耐摩耗性

自己潤滑性が高い、つまり摩擦係数が極めて小さいためほとんど摩耗しません。ポリアセタール樹脂(POM)は、プラスチックの中でも特に耐摩耗性に優れる素材です。

ポリアセタールの短所

さまざまな優れた特徴を持つポリアセタール樹脂(POM)ですが、次のような短所もあります。

難燃性

ポリアセタール樹脂(POM)の分子構造には、酸素(O)が含まれます。そのため、酸化指数が高く燃えやすい材料であるため、注意が必要です。

耐候性

紫外線(UV)安定性が低く、屋外での使用など長時間紫外線にさらされるような環境においては素材が劣化し、色の変化や強度の低下などが発生します。そのため、屋外での使用には、安定剤やUV吸着剤などを含む製品を利用する必要があります。

接着性

接着性に優れず、塗装などを行うことが困難です。ただし、溶接は可能です。

ポリアセタールの加工方法

ポリアセタール(POM)の成形、接着・溶着の加工方法について、説明します。

射出成形・ブロー成形

ポリアセタール(POM)の主な成形加工方法として、射出成形とブロー成形が挙げられます。ポリアセタール(POM)は熱可塑性樹脂であるため、加熱によって軟化させ成形し、冷却して固化することができる素材で、成形加工性にも優れます。

参考:射出成形の仕組みやメリットを解説!他の加工法との比較も

接着と溶着

前述した通り、ポリアセタール(POM)は接着性には優れません。通常の接着剤を使用しての接着は極めて困難であるため、ポリアセタール(POM)の接着には特殊な方法を用いる必要があります。

一つ目の方法は、エッチングなどの表面加工を利用して、その後に接着剤を使用して接着する方法です。なお、エッチングとは化学薬品を利用して、化学反応による腐食作用によって、被加工物表面を溶解させる加工方法です。

また、溶着を用いる方法も有効です。溶着とは樹脂などの非鉄金属を接合する技術です。この方法を用いれば、ポリアセタール(POM)の接着が可能です。

参考:【エッチング加工とは?】価格や加工例、製造工程までご紹介!

ポリアセタールとナイロンの比較と使い分け

エンジニアプラスチックには、ポリアセタール樹脂(POM)のほかにもナイロンが挙げられます。ナイロンには、PA6(Polyamide 6)とPA66(Polyamide 6)が存在し、それぞれ6ナイロン、66ナイロンと呼ばれます。

<6ナイロン>

<66ナイロン>

上図に、6ナイロン、66ナイロンの分子構造を示しました。分子構造からわかる通り、ナイロン(ポリアミド系樹脂)はアミド結合(-CONH-)を有するポリマーです。ナイロンは、耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性に優れるほか、高い靱性・引っ張り強度を示します。特に、ナイロンの融点は6ナイロンが225℃、66ナイロンが265℃と、ポリアセタール樹脂(POM)をはじめとするその他のプラスチックよりも、高い融点を示します。そのため、金型を使用してナイロンを成形する際には、温度の管理をより注意して行う必要があります。また、ナイロンは吸水性があり、寸法安定性が低いという特徴があります。そのため、精密部品の製作には、寸法安定性の高いポリアセタール樹脂(POM)の使用が適切です。

Category:
樹脂加工
ものづくり補助金だけじゃない! 製造業におけるDX推進で活用できる助成金・補助金活用セミナー
ものづくり補助金だけじゃない! 製造業におけるDX推進で活用できる助成金・補助金活用セミナー

related post

関連記事