SUS430は、フェライト系ステンレスの代表的な材料です。クロム(Cr)を16~18%含むことから、18Crステンレス(18クロムステンレス)と呼ばれています。
レアメタルで高価な材料であるニッケル(Ni)を含まないため、安価で手に入れられるほか、耐食性に優れているので、幅広い用途で使われています。
ただしSUS430は、焼入れで硬くすることができません。また、475℃付近の高温状態が続くと、硬さが向上する代わりに延性と靭性が低下する、「475℃脆化」を起こすため、溶接する際は注意が必要です。
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SUS430の化学成分
<SUS430の化学成分(単位:%)>
種類の記号 | C | Si | Mn | P | S | Cr | Mo | N | Al |
SUS430 | 0.12 以下 | 0.75 以下 | 1.00 以下 | 0.040 以下 | 0.030 以下 | 16.00~ 18.00 | – | – | – |
※Niは0.60%を超えてはならない。
引用元:JIS G 4303:2012
SUS430は、マルテンサイト系ステンレスより、クロム(Cr)の含有率が比較的高い材料です。耐食性は、オーステナイト系ステンレスに劣るものの、マルテンサイト系ステンレスよりは優れています。
また、耐高温腐食性に優れているほか、腐食環境下で材料に亀裂が入る「応力腐食割れ」が発生しにくいのも特徴です。
SUS430の磁性の強さ、用途
フェライト系ステンレスであるSUS430は、強い磁性を持ちます。一般的にオーステナイト系ステンレス以外(フェライト系・マルテンサイト系など)の種類は磁性を持つので、ステンレス鋼の種類を判別するために磁石を使うことがあります。
SUS430は安価かつ、耐食性や耐熱性のある材料のため、主にスプーンやフォークといった日用品や、冷蔵庫などの家電部品、厨房機器などの用途に使われています。
SUS430の機械的性質(加工性)
<SUS430の焼きなまし状態の機械的性質>
種類 | 耐力 Mpa (N/mm2) | 引張強さ Mpa (N/mm2) | 伸び | 絞り | 硬さ | ||
HBW | HRBS又はHRBW | HV | |||||
SUS430 | 205以上 | 450以上 | 22以上 | 50以上 | 183以下 | 90以下 | 200以下 |
引用元:JIS G 4303:2012
SUS430は、フェライト系ステンレスのなかでは、引張強さの数値が高い材料です。ただし、引張強さと伸び率はSUS304に劣ります。オーステナイト系ステンレスのように変態も発生しない材料のため、加工しやすい特徴があります。